説明

はんだバンプの形成方法及びその装置

【課題】微細狭ピッチ電子回路のはんだバンプ形成を可能にし、バンプ形状とバンプ高さの均一化を図る技術を提供する。
【解決手段】電極パッドに該当する部分が開口したマスク4の開口部を電子回路基板1の電極パッドの位置に合わせて貼り付けたワークを、高温の有機脂肪酸溶液10中に浸漬して静置しパッド部表面の酸化層を除去・清浄化するとともに有機脂肪酸の保護皮膜を形成せしめる第1のプロセスと、上部からはんだ粒子6を下方に向けて散布することにより、有機脂肪酸溶液10中で溶融状態のはんだ粒子をマスクの開口部から電極パッドに落下到達せしめはんだ粒子6を融着凝集融合させて、マスク開口部をはんだで満たす第2のプロセスと、スキージーによりマスク開口部最上面まで溶融はんだを充填する第3のプロセスと、はんだ皮膜を凝固させる第4のプロセスを行うことによりはんだバンプまたははんだ皮膜を形成させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に半導体ウエハー、半導体チップ、インターポーザー(配線基板)、半導体装置、実装基板(以下、これらを電子回路基板と弥す)の電極パッドまたはリードにはんだバンプまたははんだ皮膜を形成させる方法及びその装置に関するものであって、特に、微小面積の電極パッドまたはリードが狭ピッチで多数個配置された微細回路の電子回路基板にはんだバンプをまたははんだ皮膜を形成させる方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器はますます高集積高密度小型軽量化され、品質的に高信頼性が要求されている。これに相応して、とりわけ半導体チップ、ウエハー、半導体装置、抵抗器、コンデンサー、コネクターなどの電子部品も小型高密度化され、これらを実装基板に搭載しはんだ接合された電子装置もますます小型高密度化されている。
半導体装置の中でも、特にBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)の半導体チップやインターポーザー(配線基板)は、小型微小化に伴い、マトリックス状に配列された各電極パッドの面積は微小化され、また各電極パッド間ピッチも微小狭ピッチ化が進み、各電極パッドに形成されるはんだバンプもますます微小化されてきている。
しかしながら、例えば、はんだボールまたはソルダーペーストを用いる現行のはんだバンプ形成方法では、一般に電極パッドの最小幅は200μm、隣接電極パッド間ピッチは150μmが限界と言われており、これ以上微細、狭ピッチの微細回路にブリッジオーバーによるリーク不良のない、品質の安定したバンプを大量生産することは難しいと言われている。
【0003】
この電極パッドにはんだバンプを形成させる方法としては、一般的には、はんだボール搭載融着方式とソルダーペースト塗布融着方式が工業的に広く実用されている。
【0004】
はんだボール搭載融着方式では、先ず前処理として、通常、(1)ワークである半導体チップやインターポーザー(配線基板)の電極パッド以外をはんだレジスト膜で被覆した後、(2)電極パッドに粘着性のフラックスを塗布し、(3)電極パッドに対応する部分が穿孔加工されて開口孔を有するマスクを、該開口孔と電極パッドとの位置を合致させて重ねた上で、印刷用スキージーで所定の大きさのはんだボールをマスクの開口孔を通して各電極パッド上に振り込み、該フラックスの粘着性を利用してはんだボールを電極バッドに粘着させた後、該マスクを外し、(4)ワークをそのまま高温のフロー炉またはリフロー炉中を通過させることによりフラックスの還元力を利用して電極パッド表面の酸化膜とはんだボール表面の酸化膜を除去してはんだぬれ性を良くして、電極パッド表面にはんだを融着させてはんだバンプを形成させる。(特許文献1,2)
前記(3)のマスクとスキージーを使用する代わりに、電極パッド配列位置と同じ位置にはんだボール径より小さい孔が穿孔された治具を内部から真空(低圧)吸引して該穿孔部外側にはんだボールを吸着させる機構のボールマウンター機を使用して、はんだボールを吸着した該治具を各電極パッドの直上の配列位置まで移動させたのち、該治具内部の真空(低圧)を解除して、各はんだボールを一括して各電極パッド内に振り込み、前記フラックスの粘着性を利用してはんだボールを電極バッド部に粘着させた後、ボールマウンター治具を元の位置に移動させ、その後前記(4)の工程を経てワークの電極パッド表面にはんだを融着させてはんだバンプを形成させることも一部では行われている。(特許文献3)
これらのはんだボール搭載融着方式では、高温のフロー炉またはリフロー炉内でフラックスの化学作用を利用し電極表面の酸化膜とはんだボール表面の酸化膜を還元・活性化し、はんだぬれ性を改善して電極パッドにはんだボールを融着接合してはんだバンプを形成させているが、その際、フラックスが沸騰状態になり飛散するため、大気をも巻き込んで接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生ずることが多い。(非特許文献1)
このようなはんだ接合界面やはんだバンプ層内の微小な気泡や空隙を有する半導体装置やそれをプリント基板に搭載してなる電子装置は、特に長期に亘り高温暴露されると経時的に微小な気泡や空隙が転移し、更に所謂カーケンダルボイドの発生と相俟って、衝撃力が加わると接合破断を生ずる危険性が高く、接続品質信頼性が損なわれることが知られている。(非特許文献1,2,3,4)
また、フラックスを使用するので、フラックスの成分が接合界面やはんだバンプ内部に残留し、あるいは周囲に飛散したフラックス成分により、経時的腐食の原因にもなり、搭載された電子機器の故障を招くこともあり、長期品質信頼性の点でも必ずしも充分とは言い切れない。
また、マスク精度、はんだボール径のばらつき、更にはフローまたはリフロー条件のばらつきに因るはんだバンプ形状ならびにバンプ高さの不揃い(コプラナリティー)などのばらつきも大きく後工程での組立性に問題を生ずることも多い難点がある。
一方、特殊な方法としては、ワーク全面にソルダーレジストを塗布し、その上に耐熱性粘着剤で耐熱性マスク材を貼付け、該耐熱性マスク材の上方から電極パッド上にレーザー光線を照射して耐熱性マスク、耐熱性粘着剤、ソルダーレジストを貫通させ電極まで到達した穴を穿設して電極の一部を露出させ、穿設された全ての孔の中にはんだボールを挿入した後、前記(4)の工程を経てワークの電極パッド表面にはんだを融着させてはんだバンプを形成させる方法も提案されている。(特許文献4、5)
しかしながら、この方法でもフラックスを使用するため、はんだボールを電極パッドに融着接合する際、フラックスが沸騰状態になり飛散し、大気をも巻き込んで接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生ずる現象を回避することはできず、従って、経時的接続信頼性の問題、腐食性の問題がある。
【0005】
一方、ソルダーペースト塗布融着方式では、先ず前処理として、通常、(1)ワークである半導体チップやインターポーザー(配線基板)の電極パッド以外をはんだレジスト膜で被覆した後、(2)電極パッドに相当する部分のみ開孔された所定の厚さを有するマスクを、該開孔の位置と電極パッドの位置を合致させて載せた上で、スキージーなどを用いて開口部の電極パッド上に所定の厚さにソルダーペーストを塗布した後、該マスクを外し、(4)ワークをそのまま高温のフロー炉またはリフロー炉中を通過させることにより、ソルダーペースト中に存在するフラックス成分の還元力を利用して、電極パッド表面の酸化膜とはんだボール表面の酸化膜を除去しはんだぬれ性を良くして、該電極パッド表面にはんだを融着させてはんだバンプを形成させる。
しかしながら、この方法では均一で充分な大きさのバンプ形状を形成させることは難しいため、ソルダーペーストを塗布後、金属マスクなど使ってソルダーペーストの上にはんだボールを積載させてフロー炉またはリフロー炉を通過させることによりはんだバンプを形成させることが一般的である。これは、前記ソルダーペーストの上に半導体装置のバンプや、トランジスタ、コンデンサー、抵抗器などの電子部品のはんだ被覆されたアウターリードを電子回路基板上の電極パッド、ランド、またはリードに搭載してフロー炉またはリフロー炉を通過させることによりはんだ接合させる電子装置の表面実装の場合と同じ工法である。
このソルダーペースト塗布融着方式でも、高温のフロー炉またはリフロー炉内でソルダーペースト中に存在するフラックス成分の化学作用を利用し電極表面の酸化膜を還元し活性化すると共にはんだぬれ性を改善して、ソルダーペースト中に存在する粉状もしくは粒状はんだを溶融凝縮させながら電極パッド表面上に融着接合してはんだバンプを形成させている。このため、前記はんだボール搭載融着方式と同様に、フロー炉またはリフロー炉内ではフラックス成分が沸騰状態になり飛散するため、大気をも巻き込んで接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生ずることが多い。
従って、この場合も、はんだ接合界面やはんだバンプ層内の微小な気泡や空隙は、特に長期に亘り高温暴露されると経時的に転移し、更に所謂カーケンダルボイドの発生と相俟って、衝撃力が加わると接合破断を生ずる危険性が高く、接続品質信頼性が損なわれる。
また、ソルダーペースト中にはフラックス成分やいろいろな樹脂成分が含まれているため、それらの成分が接合界面やはんだバンプ内部に一部残留することも少なくなく、あるいは周囲に飛散したそれらの成分により、経時的腐食の原因になり、搭載された電子機器の故障を招くこともあり、長期品質信頼性の点でも必ずしも充分とは言い切れないことも同様である。
また、マスク精度、ソルダーペーストと塗布量のばらつき、更にはリフロー条件のばらつきに因るはんだバンプ形状ならびにバンプ高さの不揃い(コプラナリティー)などのばらつきも必ずしも小さいとは言えず、後工程での組立性に問題を生ずることも少なくない難点がある。
【0006】
一方、特殊な方法としては、ワーク全面にソルダーレジストを塗布し、その上に耐熱性粘着剤で耐熱性マスク材を貼付け、該耐熱性マスク材の上方から電極パッド上にレーザー光線を照射して耐熱性マスク、耐熱性粘着剤、ソルダーレジストを貫通させ電極まで到達した穴を穿設して電極の一部を露出させ、穿設された全ての穴の中にソルダーペーストを塗布した後、前記(4)の工程を経てワークの電極パッド表面にはんだを融着させてはんだバンプを形成させる方法も提案されている。(特許文献4,5)
しかしながら、この方法でも前述の通り、ソルダーペースト中にフラックス成分を使用するため、はんだボールを電極パッドに融着接合する際、フラックス成分が沸騰状態になり飛散し、大気をも巻き込んで接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生ずる現象を回避することはできず、従って、経時的接続信頼性の問題、腐食性の問題がある。
【0007】
更に、ソルダーペースト塗布融着方式の一種の変形方式として、バンプ高さを均一化し、コプラナリティーの不揃いを少なくして、多ピン狭ピッチの高密度半導体集積回路LSIのバンプを形成させるため、はんだ粉と沸点を有する添加剤を含有する樹脂を使用した一種のソルダーペーストを所定の厚さで実装基板の全面に塗布した後、その上に平板を当て固定し、前記添加剤を沸騰させて前記樹脂中に気泡を発生させ、前記気泡が前記樹脂中を対流することによって実装基板の電極上に前記はんだ粉を集合させてバンプを形成させる方法も提案されている。(特許文献6)
しかしながら、この方法も実質的にフラックス成分を含有させており、コプラナリティー(バンプの高さ)はほぼ均一化できるが、実質的には接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生ずる現象を回避することはできず、従って、経時的接続信頼性の問題、腐食性の問題を解決できるとはいえない。
【0008】
また、バンプサイズに打ち抜いたはんだ箔を、フラックスを含有する接着剤を介して電極パッドに配置してリフロー工程を経てバンプを形成させる方法も提案されている。(特許文献7)
この方法も実質的にフラックス成分を含有させており、コプラナリティー(バンプの高さ)はほぼ均一化できるが、実質的には接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生ずる現象を回避することはできず、従って、経時的接続信頼性の問題、腐食性の問題を解決できるとはいえない。
【0009】
一方、はんだ接合される電極パッド、ランドまたはリード部以外がソルダーレジストなどの保護膜で覆われているプリント基板の電極パッド、ランドまたはリードなどに、はんだ合金を接合する技術の1つに、溶融はんだ液の上層に高温の有機脂肪酸溶液を配した上下2層構造の貯槽を用いてはんだ接合する技術がある。(特許文献8,9)
この技術は、嘗て発明者らが長年の研究により開発したものであるが、まず前記プリント基板などのワークを上層の有機脂肪酸溶液に浸漬して電極パッド、ランドまたはリード表面の金属酸化物を洗浄除去し、清浄化された金属表面に有機脂肪酸による保護皮膜を形成させた後、下層の溶融はんだ液に浸漬して前記電極パッド、ランドまたはリードにマイクロボイドのない良好なはんだ接合を行い、次いで再びワークを上層の有機脂肪酸溶液中を通過させて引き上げる際に接合されたはんだ表面に有機脂肪酸の保護皮膜をコーティングするものである。
このはんだ接合方法ではフラックスを全く使用しないため、現行のはんだボール搭載融着方式とソルダーペースト塗布融着方式の難点であるはんだ接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生ずることは全くない。また、はんだ合金中の酸素濃度が10ppm以下のものを使用すると、経時的長期高温暴露後のカーケンダルボイドの発生が極めて少なく、接続信頼性が高く、耐衝撃破断性に優れたはんだ接合が得られることが判っている。(特許文献9)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】 特開平7−202403
【特許文献2】 特開平8−300613
【特許文献3】 特開平7−302796
【特許文献4】 特開平11−297890
【特許文献5】 特開2000−100863
【特許文献6】 特開2006−100775
【特許文献7】 特開平11−274203
【特許文献8】 特開2002−233994
【特許文献9】 特開WO2008−084673
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】 R.Aspandiar,”Void in Solder Joints”SMTA Northwest Chapt.Meeting(September 21,2005)
【非特許文献2】 C.Hillman”Long−term reliability of Pb−free electronics”Electronic Products p.69(September 2005)
【非特許文献3】 伴充行、島内優”電子部品の信頼性評価および不具合解析技術”JFE技報第13巻p.97−102、2006年8月
【非特許文献4】 石川信二他:”高温はんだとCu板の接合部におけるカーケンダルボイドの生成“、エレクトロニクス実装学会誌、第9巻4号p.269−277、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、電子回路基板の電極パッドまたはリード(以下、単にパッドと弥す)にはんだバンプまたははんだ皮膜を形成する方法として、従来から広く実用されているはんだボール搭載融着方式やソルダーペースト塗布融着方式、あるいはそれに類する先行技術の難点、即ち、フラックス成分を含有するが故の接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)を生ずる現象を回避し、経時的接続信頼性の問題、腐食性の問題、更には長期高温暴露後に経時的に発生するカーケンダルボイドの問題を解決し、更にはんだバンプまたははんだ皮膜形状とはんだバンプまたははんだ皮膜高さの均一化を図ることにより品質信頼性の高い電子部品の製造技術を提供すること、更にはパッド幅が100μm以下で、隣接回路ピッチが150μm以下の微細狭ピッチ電子回路用はんだバンプまたははんだ皮膜を工業的に安定量産できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、パッドに該当する部分が開口したマスクの該開口部を電子回路基板のパッド位置に合わせて貼り付けたワークを、高温の有機脂肪酸溶液中に浸漬し静置して、該有機脂肪酸の化学作用により該パッド部表面の酸化層を除去・清浄化するとともに、清浄化された該パッド金属表面に有機脂肪酸の保護皮膜を形成せしめる第1のプロセスと、上部からはんだ微粒子を下方に向けて散布することにより、高温の該有機脂肪酸液中で溶融状態のはんだ微粒子をマスクの開口部からワークの該パッド部表面に落下到達せしめて、該はんだ粒子を次々と融着凝集融合させて、マスク開口部がほぼはんだで満たされるかそれ以上にマスク上面に溶融はんだが溢れる状態にする第2のプロセスの後、スキージー、またはローラーなどにより該マスクの開口部最上面に溶融はんだが充填され、余剰の溶融はんだを除去する第3のプロセスとを経て、前記マスクを電子回路基板から外した後、はんだバンプまたははんだ皮膜高さを揃えるために所定の間隙を開けてワーク(電子回路基板)の上に金属平板を搭載した上で、静かにワークを引き上げて、はんだバンプを凝固させる第4のプロセスを行うことにより、はんだバンプを形成させる技術を提供するものである。
【0014】
本発明内容について、一例としてBGAのインターポーザー(配線基板)の電極パッドにはんだバンプを形成させる事例について、更に詳しく述べると、第1のプロセスにおいては、図1の露出している電極パッド2以外ははんだレジスト3で被覆されているBGAのインターポーザー(ワーク)1のパイロットホールと、自動制御式三次元移動装置のロボットアーム17の先端に取付けられている金属製ワーク固定平板治具16のパイロットピン18を利用して、ワーク1を金属製ワーク固定平板治具16の上に搭載し、同様にして、更にその上に図1のマスク4のパイロットホールと、前記パイロットピン18を利用して、マスク4をワーク1の上に搭載し、ワーク1の電極パッド2の位置とマスク4の開口部(貫通孔)5の位置を相互に重ね合わせて、それぞれを固定する(図20、図1、図2)。
具体的にマスク4を重ねたワーク1の固定方法の一事例としては、図20に示したように、ワーク4の長手の両縁端部を上部から金属製ホルダー19で押え付けて固定する。また、マスク4は第4のプロセスで単独に取外し出来るように、ワークよりも一回り小さい面積のものを使用して、その長手の両縁端部を上部から金属製固定板20で押え付けて固定する。
【0015】
その上で、自動制御式三次元移動装置でロボットアーム17を操作して、図9のように貯槽11に蓄えられた高温の有機脂肪酸溶液10の中の高温の下液層ゾーン中に、マスク4とワーク1が固定されている金属製ワーク固定平板治具16浸漬して、静置する。
該有機脂肪酸溶液10の中における金属製ワーク固定平板治具16の静置位置は水平でもよいし、角度0〜30度程度の範囲で傾斜させて静置してもよい。
このとき、露出している該ワークの電極パッド表面は有機脂肪酸の化学作用により反応して表面の酸化層が除去清浄化されるとともに、清浄化された金属表面に有機脂肪酸の保護皮膜が形成される。
【0016】
このプロセスで使用するマスクの材質は通常の広く使用されているステンレス、チタン、アルミニウム、モリブデン、タングステン、またはそれらの合金などのはんだが付着しにくい金属薄板、あるいははんだが付着し易い金属薄板であってもその表面にはんだが付着しにくい皮膜を形成処理したもの、更には、樹脂薄板、特殊加工紙(ペーパーマスク)でもよい。特に剛性と靭性が高いステンレスマスク、チタン合金マスク、アルミ合金マスク、耐熱樹脂マスク、ペーパーマスクなどが好適である。板厚はバンプ形成またははんだ被覆に必要な容量から算出して厚さを決める。開口孔は電子回路形成の工法として一般的なフォトエッチング法、レーザー加工、またはNC制御式穿孔機、放電加工、水流加工、金型による打ち抜き加工などによる精密穿孔加工により形成される。
【0017】
また、このプロセスで使用する有機脂肪酸は、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキ酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、などがよい。
これらの内、望ましくは180〜300℃で使用する溶媒に溶解し分解などせず安定している有機脂肪酸がよい。沸点が低い有機脂肪酸の場合は高圧にして使用することも可能であるが、安全性、実用性の点で好ましくはない。
経済性や取扱い上から工業的により実用に適するものは、例えば、炭素数13〜20の有機脂肪酸、即ち、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸などであり、本発明の目的に合致した効果が大きく、特に有用である。
有機脂肪酸は炭素数12以下でも使用可能ではあるが吸水性があり、高温で使用する関係からあまり好ましくないこと、更に接合後のはんだ表面に保護膜としてコーティングされても吸水性があるため長期保存時の品質に障害をもたらすこともあり好ましくない。また、炭素数21以上の有機脂肪酸でも使用は可能であるが、融点が高いこと及び浸透性が悪くまた取扱いし難く処理後のはんだ表面の防錆効果もやや不充分になる。特に望ましいのは、工業的にも大量に生産され使用されて入手もしやすい炭素数16のパルミチン酸、炭素数18のステアリン酸が最適であり、そのいずれか1種以上を1〜80重量%と残部が180℃〜350℃の高温領域で安定な油系溶媒からなる液温180〜300℃の溶液を使用すると本発明の効果も大きい。
本発明にカルボキシル基(−COOH)を有する有機脂肪酸溶液を使用する目的は、パッド、ランドおよびリードの金属表面をケン化反応により酸化膜を除去し清浄活性化することと、同時に清浄活性化された表面を保護すること、更には併用する酸素濃度10ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液の酸化を防止する役割を果たすとともに、形成されたはんだバンプおよびはんだ皮膜の表面にも化学吸着保護膜としてコーティングすることにある。この他に付随的に第1のプロセスでワークの保護膜表面に付着した余分な粒子をある程度洗い流す効果もある。尚、これらの作用、効果ならびに表面処理技術としては前述の通り、既に特許文献8および9により公知である。
【0018】
前記溶液中の有機脂肪酸の濃度については1質量%以下でも効果はあるが、連続して大量に処理する場合は補充管理などが煩雑なこと、また80質量%以上あるいは100質量%単体液でも本発明の効果はあり使用可能であるが、発煙性と臭気の問題もきつくなるため、好ましくは5〜80質量%である。
該有機脂肪酸溶液の液温は使用する溶融はんだ液の融点温度±50℃の範囲内であることが効率的で望ましい。但し、少なくとも本発明の第2のプロセス及び第3のプロセスにおける該有機脂肪酸溶液の液温は、使用する溶融はんだ液の融点温度以上の温度に保持されていることが必須条件である。上限温度は発火性、発煙性、安全性を考慮すると、320℃程度であるが、臭気の問題、及び省エネの観点からは使用する溶融はんだ液の融点温度〜+50℃の範囲内で使用することが望ましい。例えば、融点が217℃近辺の錫銀銅(Ag3.0質量%、Cu0.5質量%、残部Sn)3元系はんだ合金の場合であれば、はんだパン部接合、または形成に必要な該有機脂肪酸溶液の温度は250〜260℃が最適である。この場合のはんだ接合、ならびにバンプ形成の効率は、有機脂肪酸溶液の温度を260℃〜300℃まで上げた場合と有意差はない。
この点でも、本発明方法は、現行のはんだボール搭載融着方式とソルダーペースト塗布融着方式のようにはんだバンプ形成効率を上げるために、フロー炉、またはリフロー炉の実質ピーク温度を280〜350℃に上げて製造しているケースに較べて、エネルギー使用量は約10〜40%程度低減可能である。
また、本発明方法は、前記の通り第2のプロセス、第3のプロセスが行われる下液層ゾーンの有機脂肪酸溶液の温度と、第4のプロセスの後半の接合されたはんだバンプまたははんだ皮膜を凝固させる過程の上液層ゾーン有機脂肪酸溶液の温度とで、上液層に行くほど低温になるように温度勾配を付けることも、有効である。この場合の上液層の液温は使用するはんだの融点温度より低いことが好ましく、具体的には20〜50℃低いことが望ましい。
【0019】
また本発明に使用する有機脂肪酸の溶媒としては、前記有機化合物を溶かし前記高温領域で安定な溶媒であれば、鉱物油、植物油、合成油のいずれでもよいが、特に安定性、安全性、経済性、取扱い性の点でエステル合成油が最適である。高温で安定な溶媒を使用する目的と理由は、前記有機化合物の高温発煙性ならびに臭気の緩和抑制、更にははんだ接合処理後に過剰に付着した有機脂肪酸溶液を洗い落とす際の洗浄性がよいこと、また、若干ではあるが液粘性を下げ浸透性も改善される効果が大きいからである。その濃度は前記有機化合物濃度で決まる。
【0020】
本発明の第2のプロセスにおいては、図2、図10、または図14に示したように、上方からはんだ粒子6を高温の有機脂肪酸溶液10の下方に向けて散布することにより、該はんだ粒子6をマスクの開口部からワークの電極パッド部表面2に落下到達せしめて(図3)、該パッド表面2に該はんだ粒子6を次々と融着凝集融合させて溶融はんだ層7を形成させ(図4)、最終的には電極パッド2上のマスク開口部がほぼはんだで満たされるかそれ以上にマスク上面に溶融はんだが溢れる状態(図5、図11)にする。
散布するはんだ粒子の大きさは、ワークのパッド径または最小幅が0.2mm以上の比較的大きい場合は、数10μmφ〜パッド径または最小幅以下の粒径のはんだ粒子を散布すればよく、そのはんだ粒子は固体であっても、溶融はんだ粒子であってもよい。また、この場合のはんだ粒子散布方法は、図14のように有機脂肪酸溶液の外から万遍なく散布してもよいし、噴射ノズルを使用してはんだ粒子を有機脂肪酸溶液中に万遍なく分散沈降するように散布してもよい。前記噴射ノズルを使用する場合は、多孔ノズルから溶融はんだ粒を該有機酸溶液中に噴射させて万遍なく分散散布することが有効であり、特に1〜20μmφの微細溶融はんだ粒子を噴射するには超音波を利用するとよい。
【0021】
即ち、ワークのパッド径または最小幅が0.1mm以下の微小な場合は、数10μmφ以下の微小なはんだ粒子でないとマスクの開口部から電極パッド表面に到達することが出来ない。しかも、出来るだけ多くのはんだ微粒子を開口部内に沈降させなければならないので、1〜30μmφ程度のはんだ微粒子を沢山万遍なく散布する必要がある。
通常、30μm以下のはんだ微粒子を製造することは非常に難しい。このため、発明者らは試行錯誤でいろいろな方法を検討した結果、超音波振動子を取り付けたノズルから高温の有機脂肪酸溶液中に超音波振動をさせながら溶融はんだを噴射すると、特定の周波数の超音波発振により1〜20μmφ程度の溶融はんだ微粒子が安定して散布できることを突き止めた。これを利用して本発明の方法を行えば、隣接電極パッド間ピッチ40μm、パッド面積20μφの微小電極パッドですら、良好なはんだバンプを形成させることが出来ることを実際に検証した。
この場合の、溶融はんだ微粒子の粒径は超音波周波数に依存し、周波数が高ければ高いほど得られる微粒子の粒径は小さくなる傾向があり、例えば、周波数35kHzの場合は90%以上は1〜10μmφの微粒子が得られる。また、周波数22kHzの場合は粒度分布が広くなり3〜25μmφの粒子が90%を占める。
【0022】
図12においては、真上から超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置12により、下方のワーク1に溶融はんだ粒子6を噴射している事例を示したが、超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置12の向きは、角度をつけて斜上方からワーク1のある下方に向けて、溶融はんだ粒子6を噴射してすることも有効である。いずれの場合でも、ワーク1の表面に出来るだけ広範囲にかつ極力均一に溶融はんだ粒子6を散布しなければならないため、専用の自動制御式3次元移動装置のアームに超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置12を取付けて、ワーク1に万遍なく溶融はんだ粒子が広がるようにするとよい。
ワーク1と超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置12の距離は、噴射するノズルの位置と形状または溶融はんだの噴出量(溶融はんだの給液量)にも因るが、真上から真下に向けて溶融はんだを噴射する場合は、噴射される溶融はんだ粒子の拡がり角度が45〜90度の場合は、10〜30mm程度が望ましい。
【0023】
超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置12の具体的構造事例としては、図19に示したように、超音波出力ケーブル21が接続された超音波振動子22が冷却用フィンブースター23を介して接続された保持用ブースター24の先端に溶融はんだ注入用管路26とノズル27が導通している超音波ホーン25が取り付けられた構造の装置が挙げられる。
【0024】
本発明方法の第3のプロセスでは、図6、図12、図13、図15、または図16に示したように、スキージー8またはローラー15をマスクの上面に押し当てて、一方の端部から他方の端部に向けて移動させることにより、溶融はんだの充填量がやや不足している開口部には満杯になるように充填子ながら、マスク上面に溢れた余剰の溶融はんだを取り除き、マスクの全ての開口部が一様に充填された状態(図7、図13、図16)にする。
【0025】
本発明方法の第4のプロセスでは、図17に示したように、ワークを固定している金属製治具からマスク4を静かに外して取り除いた後に、溶融はんだバンプ9が電極パッド2に密着している状態のままのワークを金属製固定治具ごと台座から外して静かに貯槽外に取り出しはんだバンプを凝固させる(図8、図18)。
尚、溶融はんだバンプが完全に凝固するまえに、バンプ高さ調整用の金属平板をワーク固定用治具に押し当てて外溶融はんだバンプを凝固させると、均一な高さでコプラナリティの揃った良好なはんだバンプが形成される。
この操作は、上層部に行くほど低温になるように温度勾配がつけられた有機脂肪酸溶液中の上層部で行うと効果的である。
【0026】
本発明で使用する溶融はんだは、電子部品に広く使用されている通常のはんだでなんら問題はない。しかしながら、長期高温暴露された場合に生じやすいカーケンダルボイドを抑制するために、発明者らこれまで試行錯誤しながら種々研究した結果、例えば、酸素濃度が10ppm以下のはんだを使用し、有機脂肪酸溶液を上層に配した該溶融はんだ液に浸漬してはんだ接合させると、非常に効果があることを発明した。(特許文献9)
その後、前記酸素濃度は5ppm以下のはんだを用いるとカーケンダルボイドの発生を殆ど皆無にでき、更に効果的であることを検証したので、本発明においてもこれを適用してはんだ接合すると、経時的に120℃以上の高温で長期加熱後の耐衝撃破断性に優れた品質信頼性の高い電子部品、半導体装置、及び電子装置が得られる。
【発明の効果】
【0027】
上述の通り、本発明の方法は、はんだボール、はんだボールを振込むための吸着式ボールマウンター、更にフラックスを一切使用しないため、従来法の欠点であるフラックスの沸騰飛散による接合界面及びはんだ層内微小気泡・空隙発生がなく、かつ、有機脂肪酸溶液中ではんだ接合するので、その際、接合界面およびはんだ層内部への酸化物の巻き込みが全くないので、長期高温暴露後のカーケンダルボイド(マイクロボイド)の発生が圧倒的に少ない。従って、本発明方法によるはんだ接合部品は長期高温暴露後の耐衝撃破断性が格段に優れている。また、形成されるはんだバンプまたははんだ皮膜のはんだ量、形状、高さ(厚さ)を比較的自由に制御することが可能であり、かつそのばらつきを従来法より小さくできる効果がある。
更に、従来法では殆ど不可能なパッド径または最小幅0.02〜0.1mm、隣接パッド間ピッチ0.04から0.15mmの微小・狭ピッチ電子回路のバンプ形成が可能である。
また、ワークとはんだ粒子を有機脂肪酸溶液中で接合処理するため、その際大気を巻き込むこともなく、常にはんだをぬれ性の良い状態が保持されているので、はんだ酸化物の巻き込みもなく、出来上がったバンプまたはリードのはんだ表面には有機脂肪酸保護膜が自動的にコーティングされているので、その後の電子装置組立時のはんだぬれ性が従来法で製造された物より安定して優れている。
また、本発明方法では有機脂肪酸溶液中でバンプまたははんだ皮膜を形成させるメリットの1つに、隣接はんだバンプまたははんだ皮膜間のはんだブリッジが全く生じにくいことが挙げられる。これは有機脂肪酸溶液が隣接電極パッド間の溶融はんだの移動を抑制防止する効果を有することに起因している。このため、従来法では一般に0.1〜数%の頻度で発生する「隣接パッド間のはんだブリッジ不良」や「ミッシング不良」(電極パッドまたはリードの一部にはんだ欠落している不良)は全く皆無にできるので、それによる従来必要とされて来た膨大な手直し再生加工がほとんど不要になる。
また、前述の通り、本発明方法は、現行方法より低温で、かつ効率よくはんだバンプ形成が出来るため、エネルギー効率がよく、現行方法より少なくとも20%以上省エネ効果が期待できる。
以上の通り、本発明の効果は工業的に極めて価値が高いものである。
これを更に詳しく具体的事例で以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明の第1プロセスにおける実施形態として使用する電子回路基板とマスクの構造事例を模式的に示した平面図である。
【図2】 本発明の第1プロセスにおける実施形態として使用する電子回路基板にマスクを貼り付けた事例の断面を拡大して模式的に示した部分拡大断面図である。
【図3】 本発明の第2プロセスの初期段階における実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板に、上部から散布されるはんだ粒子が降り注がれている状態事例を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図4】 本発明の第2プロセスの中間段階における実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板に、上部から散布されるはんだ粒子が高温の有機脂肪酸溶液中で溶融はんだ粒子となり、マスクの開口部から電極パッド表面に達して密着接合し、その上に順次溶融はんだ粒子同志が融合して行く状態事例を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図5】 本発明の第2プロセスの最終段階における実施形態として、有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板の開口部がほぼ融合はんだで満たされた状態事例を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図6】 本発明の第3プロセスにおける実施形態として、有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板のマスク開口部の上部に溢れた余剰の溶融はんだをスキージーにより除去している中間段階の状態事例を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図7】 本発明の第3プロセスにおける実施形態例として、有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板のマスク開口部の上部に溢れた余剰の溶融はんだをスキージーにより除去した状態を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図8】 本発明の第4プロセスにおける実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板のマスクを剥がした後の電子回路基板上の電極パッドに形成されたはんだバンプの状態事例を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図9】 本発明の第1プロセスにおける実施形態として使用する電子回路基板にマスクを貼り付けた状態で、高温の有機脂肪酸溶液中に浸漬して静置固定した状態事例を模式的に示した断面図である。
【図10】 本発明の第2プロセスの初期段階における実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板に、上部から超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置によりはんだ粒子を散布して状態事例を模式的に示した断面図である。
【図11】 本発明の第2プロセスの最終段階における実施形態として、有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板に、上部から散布されるはんだ粒子が高温の有機脂肪酸溶液中で溶融はんだ粒子となり、マスクの開口部から電極パッド表面に達して密着接合し、その上に順次溶融はんだ粒子同志が融合して、マスク付き電子回路基板の開口部がほぼ融合はんだで満たされた状態事例を模式的に示した断面図である
【図12】 本発明の第3プロセスにおける実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板のマスク開口部の上部に溢れた余剰の溶融はんだをスキージーにより除去する構造状態事例を模式的に示した断面図である。
【図13】 本発明の第3プロセスにおける実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板のマスク開口部の上部に溢れた余剰の溶融はんだをスキージーにより完全に除去した状態事例を模式的に示した断面図である。
【図14】 本発明の第2プロセスの初期段階における実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板に、上部から固体のはんだ粒子を高温の有機脂肪酸溶液中に散布している状態事例を模式的に示した断面図である。
【図15】 本発明の第3プロセスにおける実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板のマスク開口部の上部に溢れた余剰の溶融はんだをローラーにより除去する構造状態事例を模式的に示した断面図である。
【図16】 本発明の第3プロセスにおける実施形態として、高温の有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板のマスク開口部の上部に溢れた余剰の溶融はんだをローラーにより完全に除去した状態事事例を模式的に示した断面図である。
【図17】 本発明の第4プロセスにおける前段の実施形態として、有機脂肪酸溶液中に静置されたマスク付き電子回路基板のマスクを剥がした状態事例を模式的に示した部分拡大断面図である。
【図18】 本発明の第4プロセスにおける後段の実施形態として、バンプが形成された電子回路基板を高温の有機脂肪酸溶液中から静かに引き上げて空気中に取り出した状態事例を模式的に示した断面図である。
【図19】 本発明の第2プロセスにおける溶融はんだ粒子散布方法の事例として、超音波振動子付き溶融はんだ粒子発生装置の構造形態を模式的に示した断面図である。
【図20】 本発明の第1プロセスにおけるワークとマスクを固定する治具及びそれを3次元的に移動搬送させる装置の実施形態事例を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 電子回路基板(半導体チップ、インターポーザー(配線基板)、ウエハー、半導体 装置、または実装基板)
2 電極パッドまたはリード
3 はんだレジスト
4 マスク
5 マスクの開口部(貫通孔)
6 溶融はんだ液
7 電極パッドまたはリード表面に接合した溶融はんだ粒子が融合して形成された溶融 はんだ層
8 スキージー
9 電極パッドまたはリード表面に接合したはんだバンプまたははんだ皮膜
10 有機脂肪酸溶液
11 有機脂肪酸溶液の貯槽
12 超音波発振機付き溶融はんだ粒子発生装置
13 スキーキー、スクレパー、またはローラーなどで取り除かれた余剰溶融はんだ
14 散布容器に入れられたはんだ粒子(固体)
15 ローラー
16 ワーク固定用金属製平板治具
17 自動制御式3次元移動装置(ロボット)に取り付けられたロボットアーム
18 パイロットピン
19 ワーク固定用専用ホルダー
20 マスク固定及びリムーブ用専用ホルダー
21 超音波出力ケーブル
22 超音波振動子
23 冷却用フィンブースター
24 保持用ブースター
25 超音波ホーン
26 溶融はんだ注入用管路(供給用導管路)
27 溶融はんだ噴射ノズル
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0030】
先ず、実施例1として、図1、図2及び図9のように、バンプを形成させる電子回路基板1(ワーク)として、外形サイズ10mmX10mmのBGAインターポーザー(外表面に直径0.32mmφの電極パッド(銅)が、0.60mmピッチでマトリックス状に380個整列。電極バット以外の部分ははんだレジストで覆われている)が2列×4個配置されているものを使用した。
はんだ組成は、Ag2.5質量%、Cu0.5質量%、残部Snからなる酸素濃度5ppm以下の3元系はんだ合金を使用した。
ワークへのバンプ形成は、先ず第1プロセスとして、電極パッド部2に該当する部分が開口したマスク4(厚さ0.5mmのステンレス製、開口径0.28mmφ)の該開口部5をワークの電極パット部2の位置に合わせて貼り付けたものを、専用のステンレス製固定治具に固定して、
上液層ゾーンの液温が170℃で下液層ゾーンの液温が260℃のステアリン酸溶液10(ステアリン酸濃度60質量%と残部合成エステル油からなる溶液)中にワークを浸漬して、前記下液層ゾーンの中にワークを静置した。この際、ワークの該電極パッド表面は該ステアリン酸溶液と接触することにより化学反応して、該電極パッド表面の酸化汚れが洗浄除去されるとともに、清浄化した表面には有機脂肪酸のコーティング層が形成される(第1のプロセス)。
次に、図10のように、ワークの30mm真上の下液層ゾーン内から、超音波振動子を取り付けたステンレス製溶融はんだ微粒子発生装置内の管路に前記組成の溶融はんだを給液して、該溶融はんだ微粒子発生装置内後方に設置されている超音波振動子により周波数22kHz,出力500Wの超音波振動を発生させながら、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子をワークが固定されている下方に向けて30秒間噴射しながら該溶融はんだ微粒子発生装置をワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した(図3、図4、図10)。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約3倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバー式カメラを挿入して、各開口部に溶融はんだがほぼ充填されていること(図5、図11)を画像処理したモニター画面で確認後(第2のプロセス)、スキージー8をマスクの上面に押し当てて、一方の端部から他方の端部に向けて移動させることにより、溶融はんだの充填量がやや不足している開口部には満杯になるように充填しながら、マスク上面に溢れた余剰の溶融はんだを取り除き、マスクの全ての開口部が一様に充填された状態(図7、図13)にした(第3のプロセス)。
その上で、マスクを外した後、バンプの高さを均一にするために0.30mmのギャップを開けて板厚2mmのステンレス平板をワークの上面に載せて、それを前記金属固定治具もろとも一体で固定台座から外して、ワークの水平を保持しながら、静かにステアリン酸溶液の上液層ゾーンに移動させて該バンプを凝固させた上で、ワークを液外に取り出した。(第4のプロセス)
【0031】
実施例2として、図1、図2及び図9のように、バンプを形成させる電子回路基板(ワーク)として、外形サイズ7mm×7mmのCSP(外表面に0.04mm□の電極パッド(銅めっきされている)が、0.08mmピッチでマトリックス状に3200個整列、電極バット以外の部分ははんだレジストで覆われている)が2列×4個並んだものを使用した。
はんだ組成は、Ag2.5質量%、Cu0.5質量%、Ni0.01質量%、Ge0.005質量%、残部Snからなる酸素濃度5ppm以下の5元系はんだ合金を使用した。
ワークへのバンプ形成は、先ず第1プロセスとして、電極パッド部2に該当する部分が開口したマスク4(厚さ0.06mmのステンレス製、開口径0.04mm□)の該開口部5をワークの電極パッド部2の位置に合わせて貼り付けたものを、専用のステンレス製固定治具に固定して、
上液層ゾーンの液温が170℃で下液層ゾーンの液温が260℃のステアリン酸溶液10(ステアリン酸濃度60質量%と残部合成エステル油からなる溶液)中にワークを浸漬して、前記下液層ゾーンの中にワークを静置した。この際、ワークの該電極パッド表面は該ステアリン酸溶液と接触することにより化学反応して、該電極パッド表面の酸化汚れが洗浄除去されるとともに、清浄化した表面には有機脂肪酸のコーティング層が形成される(第1のプロセス)。
次に、図10のように、ワークの30mm真上の下液層ゾーン内から、超音波振動子を取り付けたステンレス製溶融はんだ微粒子発生装置内の管路に前記組成の溶融はんだを給液して、該溶融はんだ微粒子発生装置内後方に設置されている超音波振動子により周波数35kHz,出力500Wの超音波振動を発生させながら、該溶融はんだ微粒子発生装置先端のノズル(口径2.0mmφ)から高温の有機脂肪酸溶液中に溶融はんだ微粒子をワークが固定されている下方に向けて60秒間噴射しながら該溶融はんだ微粒子発生装置をワークに万遍なく溶融はんだ微粒子が降りかかるように移動させながら散布した(図3、図4、図10)。散布量は全ての開口部が溶融はんだで完全に充填される理論容量値の約6倍量を散布した。
その後、前記下層部のワークの上部に光ファイバー式カメラを挿入して、各開口部に溶融はんだがほぼ充填されていること(図5、図11)を画像処理したモニター画面で確認後(第2のプロセス)、スキージー8をマスクの上面に押し当てて、一方の端部から他方の端部に向けて移動させることにより、溶融はんだの充填量がやや不足している開口部には満杯になるように充填しながら、マスク上面に溢れた余剰の溶融はんだを取り除き、マスクの全ての開口部が一様に充填された状態(図7、図13)にした(第3のプロセス)。
その上で、マスクを外した後、バンプの高さを均一にするために0.05mmのギャップを開けて板厚2mmのステンレス平板をワークの上面に載せて、それを前記金属固定治具もろとも一体で固定台座から外して、ワークの水平を保持しながら、静かにステアリン酸溶液の上液層ゾーンに移動させて該バンプを凝固させた上で、ワークを液外に取り出した。(第4のプロセス)
【0032】
実施例1,2の評価としては、先ず外観は40倍の双眼式実体顕微鏡で観察した結果、所謂ミッシングはなく、全てのバンプが均一に形成され、3次元自動測定器で測定した結果、実施例1については、バンプ高さは0.28±0.02mm(σ=0.004、n=50)の範囲に入っていた。また、実施例2については、同様にバンプ高さは0.043±0.005mm(σ=0.0007、n=50)の範囲に全て入っていた。
バンプの顕微鏡断面観察の結果は、常態においてもマイクロボイドは全くなく、また150℃240時間恒温加熱エージング後においても、所謂カーケンダルボイドの発生は皆無であった。
従って、本発明の方法を用いれば、現行のはんだボール搭載融着方式とソルダーペースト塗布融着方式のような、フラックス成分を使用するが故の、フラックス成分の沸騰飛散による大気も巻き込んだ接合界面やはんだ層内の所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)の発生はなく、経時的接続信頼性の問題、腐食性の問題、更に電極パッド幅0.1mm以下で隣接パッド間ピッチ0.12以下の微細狭ピッチ電子回路形成の問題も解決できる。
【産業上の利用の可能性】
【0033】
以上の通り、本発明は、はんだボール、ソルダーペースト、フラックス、金属マスク、更には高価な真空吸着式ボールマウンターもリフロー炉も全く使用せず、電極パッドに直接はんだバンプを形成させるため、従来法ならびにそれに類する先行技術の難点である、フラックス成分を含有するが故の接合界面やはんだ層内に所謂マイクロボイド(微小な気泡や空隙)発生現象を回避し、経時的接続信頼性の問題、腐食性の問題、更には長期高温暴露後に経時的に発生するカーケンダルボイドの問題を解決し、更に電極パッド径または最小幅0.02〜0.1mm、隣接パッド間ピッチ0.04〜0.15mmの微細狭ピッチ電子回路のはんだバンプ形成をも可能にし、しかもはんだバンプ形状とバンプ高さの均一化を図ることを可能にする技術を提供するものであり、工業的価値が極めて高い画期的な技術である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板の電極パッドまたはリードにはんだバンプまたははんだ皮膜を形成させる方法において、
電極パッドまたはリードに該当する部分が開口したマスクの該開口部を電子回路基板の電極パッドまたはリードの位置に合わせて貼り付けた後、これを高温の有機脂肪酸溶液中に浸漬して静置する過程で、該有機脂肪酸の化学作用により該電極パッドまたはリード表面の酸化層を除去・清浄化するとともに、清浄化された該電極パッドまたはリードの金属表面に有機脂肪酸の保護皮膜を形成せしめる第1のプロセスと、
上部からはんだ粒子を下方に向けて散布することにより、該有機脂肪酸液中で溶融状態のはんだ粒子をマスクの開口部から該電極パッドまたはリード表面に落下到達せしめて、該はんだ粒子を次々と融着凝集融合させて、マスク開口部がほぼはんだで満たされるかそれ以上にマスク上面に溶融はんだが溢れる状態にする第2のプロセスの後、
スキージー、またはローラーを該マスク上面に押し付けながら一方の端から他方の端に向けて移動させることにより、該マスクの開口部最上面まで溶融はんだを充填し、余剰の溶融はんだを除去する第3のプロセスとを経て、
前記マスクを電子回路基板から外した後、所定の間隙を空けて金属平板を電子回路基板の上に搭載して、静かに電子回路基板を引き上げて、はんだバンプまたははんだ皮膜を凝固させる第4のプロセスを行うことを特徴とする電子回路基板にはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる方法。
【請求項2】
前記請求項1のはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる方法において、使用する有機脂肪酸溶液としてパルミチン酸またはステアリン酸5〜80質量%と残部エステル合成油からなる溶液を使用することを特徴とする電子回路基板にはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる方法。
【請求項3】
前記請求項1のはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる方法において、はんだ粒子を散布する際、超音波振動子を有する溶融はんだ粒子発生装置を使用してはんだ粒子を散布することを特徴とする電子回路基板にはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる方法。
【請求項4】
前記請求項1のはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる方法において、使用する有機脂肪酸溶液は下層部がはんだの融点より高温に温度制御され、上層部に行くほど温度勾配がつけられて、上層部の温度が150〜200℃に温度制御されていることを特徴とする電子回路基板にはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる方法。
【請求項5】
電子回路基板の電極パッドまたはリードにはんだバンプまたははんだ皮膜を形成させる装置において、
複数の電極パッドまたはリードを有する電子回路基板の上に、該電極パッドまたはリード位置に対応した開口部を有するマスクをパイロットピンを介して重ね合わせて搭載し、それらを固定する金属製平板治具と、該金属製平板治具をロボットアームに取付けて三次元移動搬送を自動制御する装置と、有機脂肪酸溶液の入った貯槽と加熱機と温度制御システムで構成された処理装置と、はんだ粒子を散布する装置と、該有機脂肪酸溶液中で該マスク上の余剰な溶融はんだ液を排除する装置と、更にはんだバンプまたははんだ皮膜の高さを均一化する装置とを、有することを特徴とするはんだバンプまたはリード皮膜を形成させる装置。
【請求項6】
前記請求項5のはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる装置において、貯槽に溶融はんだ液とパルミチン酸またはステアリン酸5〜80質量%と残部エステル合成油からなる溶液が入れたことを特徴とするはんだバンプまたははんだ被膜形成装置。
【請求項7】
前記請求項5のはんだバンプまたははんだ被膜を形成させる装置において、はんだ粒子を散布する装置として、超音波発振子と、溶融はんだ粒子を噴出するノズルと連通する溶融はんだ液の給液導管路とを具備している装置を、専用のロボットアームに取り付けて3次元移動させながら使用することを特徴とする、はんだバンプまたははんだ被膜形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−40696(P2011−40696A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198919(P2009−198919)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(506356450)ホライゾン技術研究所株式会社 (8)
【Fターム(参考)】