説明

はんだバンプ形成方法

【課題】形状や高さにバラツキが発生するのを抑制して、高い信頼性ではんだ接合を行うことができるはんだバンプの形成方法を提供することである。
【解決手段】はんだペースト組成物を、基板上の電極が複数配列された領域にベタ塗りする工程と、ベタ塗りした前記はんだペースト組成物を加熱し、はんだを各電極表面に付着させてはんだバンプを形成する工程と、はんだバンプ形成後の基板を溶剤で洗浄する工程と、を含み、前記はんだペースト組成物は、フラックスを含有し、該フラックスは、アクリル系樹脂を含有し、該アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が0℃以下、酸価が30〜350mgKOH/g、重量平均分子量が2,000〜50,000、含有量がはんだペースト組成物の総量に対して5〜60重量%であり、かつ前記溶剤に対して可溶であるはんだバンプ形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の電極表面にはんだバンプを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の電極表面にはんだバンプを形成する方法として、樹脂マスクを利用する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法は、まず、基板上の電極周囲に樹脂マスクを形成し、この樹脂マスクによって囲まれた開口部内に露出する電極上にはんだペースト組成物(以下、「ペースト組成物」と言うことがある。)を充填する。ついで、充填したペースト組成物を加熱し、はんだを電極表面に付着させてはんだバンプを形成する。
【0003】
近時、電子機器はその小形軽量化が進み、搭載される電子部品も多ピン狭ピッチ化されている。これに伴い、基板もファインピッチ化されており、互いに隣接する電極間のピッチは狭い。そのため、樹脂マスクの開口部とファインピッチ化された基板の電極とが位置ずれし易く、はんだバンプを所定の位置に形成できないか、はんだバンプの形状や高さにバラツキを生じることがある。
【0004】
一方、はんだバンプの他の形成方法として、ペースト組成物をベタ塗りする方法がある。この方法は、基板上の電極が複数配列された領域にペースト組成物をベタ塗りして加熱し、個々の電極にはんだバンプを形成する方法である。この方法によれば、狭ピッチで配列された複数の電極を含む領域に、個々の電極の位置や形状を無視してラフにペースト組成物を塗布して加熱すればよく、ファインピッチ化された基板に好適である。
しかし、ペースト組成物をベタ塗りする方法には、形成されるはんだバンプの形状が均一になり難いという問題がある。
【0005】
一方、特許文献2には、セルロースを所定の割合で含有するペースト組成物をベタ塗りするはんだプリコート法が記載されている。
しかし、セルロースは電極表面へのはんだぬれ性を阻害する作用があり、形成されるはんだバンプの形状や高さにバラツキが発生し易い。はんだバンプの形状や高さにバラツキがあると、はんだ接合の信頼性が低下する。
【0006】
特許文献3には、電極側面を露呈し、かつ所定の体積比率のはんだ粒子を含有するペースト組成物をベタ塗りするはんだプリコート法が記載されている。特許文献4には、所定の比重の溶剤をフラックスに含有し、該フラックスを含有するペースト組成物をベタ塗りするはんだプリコート法が記載されている。
【0007】
しかし、特許文献3,4に記載されている方法であっても、必ずしも均一なはんだバンプを得られていないのが現状である。そのため、形状や高さにバラツキが発生するのを抑制して、高い信頼性ではんだ接合を行うことができるはんだバンプの形成方法の開発が望まれている。
【0008】
一方、特許文献5には、所定のアクリル系樹脂を含有するはんだ付け用フラックスが記載されている。
しかし、特許文献5には、基板上の電極が複数配列された領域にペースト組成物をベタ塗りして加熱し、個々の電極にはんだバンプを形成することについては、特に記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−44740号公報
【特許文献2】特開平5−391号公報
【特許文献3】特開平11−163504号公報
【特許文献4】特開2007−83253号公報
【特許文献5】特開平9−186442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、形状や高さにバラツキが発生するのを抑制して、高い信頼性ではんだ接合を行うことができるはんだバンプの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)はんだペースト組成物を、基板上の電極が複数配列された領域にベタ塗りする工程と、ベタ塗りした前記はんだペースト組成物を加熱し、はんだを各電極表面に付着させてはんだバンプを形成する工程と、はんだバンプ形成後の基板を溶剤で洗浄する工程と、を含み、前記はんだペースト組成物は、フラックスを含有し、該フラックスは、アクリル系樹脂を含有し、該アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が0℃以下、酸価が30〜350mgKOH/g、重量平均分子量が2,000〜50,000、含有量がはんだペースト組成物の総量に対して5〜60重量%であり、かつ前記溶剤に対して可溶であることを特徴とするはんだバンプ形成方法。
(2)前記はんだペースト組成物は、加熱によりはんだを析出させる析出型はんだペースト組成物である前記(1)記載のはんだバンプ形成方法。
(3)前記電極は、長手方向の一部に他よりも幅が広い幅広部を有し、該幅広部に前記はんだバンプを形成する前記(1)または(2)記載のはんだバンプ形成方法。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のはんだバンプ形成方法に使用することを特徴とするはんだペースト組成物。
なお、本発明における前記「ベタ塗り」とは、基板上の電極が複数配列された領域に、個々の電極の位置や形状を無視してラフにはんだペースト組成物を塗布することを意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、形状や高さにバラツキが発生するのを抑制して、高い信頼性ではんだ接合を行うことができるはんだバンプを形成することができるという効果がある。また、ペースト組成物をベタ塗りしてはんだバンプを形成するので、ファインピッチ化された基板に本発明を適用すると、その有用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a),(b)は、実施例における電極パターンを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のはんだバンプ形成方法は、はんだペースト組成物をベタ塗りする方法である。該ペースト組成物はフラックスを含有し、該フラックスはアクリル系樹脂を含有する。該アクリル系樹脂は、重合性不飽和基を有するモノマーとして、例えば(メタ)アクリル酸、その各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸およびそのエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル等を使用し、過酸化物等の触媒を用いて、塊状重合法、液状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等のラジカル重合により重合したものを使用するのが好ましい。
【0015】
前記(メタ)アクリル酸のエステルとしては、例えばt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、前記過酸化物触媒としては、例えばt−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。液状重合法を採用する場合のモノマーの滴下温度としては、120〜150℃程度が適当であり、130〜145℃であるのが好ましい。
【0016】
ここで、前記アクリル系樹脂は、後述するように特定のガラス転移温度、酸価、重量平均分子量および含有量を有し、かつ基板を洗浄する溶剤に対して可溶である。このアクリル系樹脂を含むペースト組成物を、基板上の電極が複数配列された領域にベタ塗りして加熱すると、形状や高さのバラツキが抑制されたはんだバンプを個々の電極表面に形成することができる。この理由としては、以下の理由が推察される。
【0017】
すなわち、はんだペースト組成物は、後述するようにはんだ粉末を含有する。該はんだ粉末は、加熱されるとペースト組成物中を対流し、個々のはんだ粒子が互いに融着するようになる。この融着を繰り返すことによってはんだ粒子は成長し、基板の電極表面に付着してはんだバンプになる。
【0018】
このとき、各はんだ粒子間の融着にバラツキがあり、それに起因して得られるはんだバンプの形状や高さにバラツキが生じると考えられる。前記アクリル系樹脂を含有すると、該アクリル系樹脂がはんだ粒子の表面に付着するようになる。この状態ではんだ粒子同士が融着を繰り返すと、はんだ粒子の表面積は順次小さくなり、これに伴いアクリル系樹脂の単位面積当たりの濃度は高くなっていく。その結果、アクリル系樹脂による立体障害が発生してはんだ粒子同士が融着し難い状態になり、はんだ粒子の成長が停止する。
【0019】
すなわち、前記アクリル系樹脂は、はんだ粒子同士の融着を制御する機能を有しており、これにより各はんだ粒子間における融着のバラツキが抑制され、はんだ粒子は均一に融着を繰り返して成長するようになる。また、前記アクリル系樹脂には、電極表面へのはんだぬれ性を向上させる効果もあり、それゆえはんだが電極表面へ選択的に付着するようになり、電極表面にはんだバンプが正確に形成されるようになる。
【0020】
したがって、前記アクリル系樹脂を含有すると、はんだ粒子同士の融着を制御する効果と、電極表面へのはんだぬれ性を向上させる効果とが相まって、形状や高さのバラツキが抑制されたはんだバンプが個々の電極表面に形成されるようになる。しかも、前記アクリル系樹脂は、基板を洗浄する溶剤に対して可溶であることから、基板の洗浄工程で洗浄除去され、その後の電子部品の実装に弊害をもたらすこともない。
【0021】
次に、アクリル系樹脂のガラス転移温度、酸価、重量平均分子量および含有量について順に説明する。アクリル系樹脂のガラス転移温度は0℃以下、好ましくは−10℃以下、より好ましくは−30℃以下である。これにより、アクリル系樹脂は室温(23℃)で液状になり、ベタ塗りに必要な流動性をペースト組成物に付与することができる。また、アクリル系樹脂自体が高い流動性を示すようになるので、はんだ粒子の表面に付着し易くなり、かつ基板の洗浄工程で洗浄除去され易くなる。
【0022】
ガラス転移温度の下限値としては、−70℃程度であるのが好ましい。ガラス転移温度は、後述する実施例における式により算出される理論ガラス転移温度である。ガラス転移温度を0℃以下とするには、例えばアクリル系樹脂を構成するモノマー組成を調整すればよい。
【0023】
アクリル系樹脂の酸価は30〜350mgKOH/g、好ましくは50〜250mgKOH/g、より好ましくは100〜200mgKOH/gである。これにより、アクリル系樹脂のはんだ粒子に対する親和性が高まり、アクリル系樹脂がはんだ粒子の表面に付着し易くなる。
【0024】
一方、酸価が30mgKOH/gより小さいと、アクリル系樹脂のはんだ粒子に対する親和性が低下し、アクリル系樹脂がはんだ粒子の表面に付着し難くなり、はんだバンプの形状や高さにバラツキが発生する。酸価が350mgKOH/gより大きいと、アクリル系樹脂がはんだ粒子の表面に過剰に付着し、はんだ粒子同士の融着を阻害し過ぎるようになるので、はんだバンプの形状や高さにバラツキが発生する。酸価は、固形分における酸価であり、中和滴定法で測定して得られる値である。酸価を前記範囲とするには、例えばアクリル系樹脂を構成するモノマー組成を調整すればよい。
【0025】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は2,000〜50,000、好ましくは2,000〜20,000、より好ましくは3,000〜10,000である。重量平均分子量が2,000より小さいと、アクリル系樹脂による立体障害が発生し難くなるので、はんだ粒子同士の融着が制御され難くなり、はんだバンプの形状や高さにバラツキが発生する。重量平均分子量が50,000より高いと、アクリル鎖が長くなり過ぎ、嵩高くなるため、立体障害が大きくなり、はんだ粒子同士の融着を阻害し過ぎるようになるので、はんだバンプの形状や高さにバラツキが発生する。
【0026】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られる測定値をポリスチレン換算した値である。重量平均分子量を前記範囲とするには、例えば触媒量や滴下温度等の反応条件を調整すればよい。
【0027】
アクリル系樹脂の含有量は、ペースト組成物の総量に対して5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%である。アクリル系樹脂の含有量が5重量%より少ないと、アクリル系樹脂を含有することによる効果が得られない。また、アクリル系樹脂の含有量が60重量%より多いと、ペースト組成物中にアクリル系樹脂が過剰に存在することになり、はんだ粒子同士の融着を阻害し過ぎるようになるので、はんだバンプの形状や高さにバラツキが発生する。
【0028】
アクリル系樹脂は、基板を洗浄する溶剤に対して可溶である。アクリル系樹脂を前記溶剤に可溶とするには、例えばアクリル系樹脂の酸価、重量平均分子量等を前記範囲で調整すればよく、これにより基板を洗浄するのに通常使用される溶剤に対して可溶になる。
【0029】
一方、フラックスは、上述のアクリル系樹脂に加えて、はんだ付け用フラックスに通常添加されている各種の公知の添加剤を含有する。該添加剤としては、例えばベース樹脂、チキソトロピー剤、活性剤、有機溶剤、酸化防止剤、防黴剤、つや消し剤等が挙げられる。
【0030】
前記ベース樹脂としては、例えばロジンおよびその誘導体、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂等の合成樹脂等が挙げられ、ロジンおよびその誘導体が好適である。前記ロジンとしては、例えばガムロジン、トールロジン、ウッドロジン等が挙げられ、その誘導体としては、例えば重合ロジン、水素添加ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂等が挙げられる。ロジンの等級に特に制限はなく、例えばWW級等が採用可能である。ベース樹脂の含有量は、ペースト組成物の総量に対して1〜20重量%程度が適当である。
【0031】
前記チキソトロピー剤としては、例えば硬化ひまし油、水素添加ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス等が挙げられる。チキソトロピー剤の含有量は、ペースト組成物の総量に対して1〜10重量%程度が適当である。
【0032】
前記活性剤としては、例えばエチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、アニリン等のハロゲン化水素酸塩、乳酸、クエン酸、ステアリン酸、アジピン酸、ジフェニル酢酸、安息香酸等の有機カルボン酸等が挙げられる。活性剤の含有量は、ペースト組成物の総量に対して1〜25重量%程度が適当である。
【0033】
前記有機溶剤としては、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、トルエン、テレピン油等の炭化水素系溶剤等が挙げられ、揮発性、活性剤の溶解性の点でアルコール系溶剤を主溶剤とするのが好ましい。有機溶剤の含有量は、ペースト組成物の総量に対して0〜20重量%程度が適当である。
【0034】
ペースト組成物は、上述のフラックスに加えて、はんだ粉末を含有する。該はんだ粉末の組成としては、例えば錫(Sn)−鉛(Pb)系、Sn−Ag(銀)系、Sn−Cu(銅)系等のはんだ合金粉末の他、Sn−Ag−In(インジウム)系、Sn−Ag−Bi(ビスマス)系、Sn−Ag−Cu系等の無鉛合金粉末等、もしくは単体のSnが挙げられる。また、これらのはんだ粉末は、それぞれ単独で使用できるほか、2種以上をブレンドして用いてもよく、例えばSn−Ag−In系とSn−Ag−Bi系とをブレンドし、Sn−Ag−In−Bi系等としてもよい。
【0035】
Sn−Ag系のはんだ合金粉末を例に挙げて説明すると、その組成中、Agの含有量は0.5〜5.0重量%であり、残部がSnであるのが好ましい。また、SnおよびAg以外の成分(In、Bi、Cu等)の含有量は0.1〜15重量%であるのがよい。はんだ合金粉末の具体例を挙げると、Sn−58Pb、Sn−3.5Ag、Sn−3.0Ag−0.5Cu、Sn−0.7Cu等が挙げられる。
【0036】
はんだ粉末の平均粒子径としては0.5〜30μmであるのが好ましく、1〜10μmであるのがより好ましい。前記平均粒子径は、粒度分布測定装置で測定して得られる値である。はんだ粉末の含有量は、ペースト組成物の総量に対して20〜60重量%程度が適当であり、30〜55重量%であるのが好ましい。
【0037】
また、ペースト組成物は、加熱によりはんだを析出させる析出型はんだペースト組成物であってもよい。これにより、ファインピッチ化された基板でも正確に電極上にはんだバンプを形成することができ、かつはんだバンプ中にボイドが発生するのを抑制することができる。
【0038】
析出型はんだペースト組成物は、例えばはんだ粉末として錫粉末と、有機酸の鉛塩等とを含むものであり、該組成物を加熱すると、有機酸鉛塩の鉛原子が錫原子と置換して遊離し、過剰の錫金属粉末中に拡散しSn‐Pb合金を形成するものである。
【0039】
析出型はんだ組成物は、上述のフラックスを含有し、かつ(a)錫粉末と、鉛、銅、銀等の金属塩とを含有したもの、あるいは(b)錫粉末と、銀イオンおよび銅イオンから選ばれる少なくとも1種と、アリールホスフィン類、アルキルホスフィン類およびアゾール類から選ばれる少なくも1種との錯体とを含有したもの等が挙げられる。前記(b)の錯体の具体例を挙げると、銀イオンおよびアゾール類の錯体である[Ag]+223-等が挙げられる。
【0040】
前記(a)の金属塩と(b)の錯体とは混合して使用することもでき、特に鉛を含有しない鉛フリーの析出型はんだペースト組成物を使用するのが好ましい。なお、本発明における前記「錫粉末」は、金属錫粉末の他、例えば銀を含有する錫−銀系の錫合金粉末や銅を含有する錫−銅系の錫合金粉末等をも含む概念である。
【0041】
析出型はんだペースト組成物中、前記錫粉末と前記金属塩または錯体との比率は、重量比で錫粉末:金属塩または錯体=99:1〜50:50程度が適当であり、97:3〜60:40であるのが好ましい。なお、析出型はんだ組成物のさらに詳しい説明は、例えば特開昭62−227593号公報、特開平1−157796号公報、特開2003−251494号公報等に記載されている。
【0042】
上述のはんだペースト組成物を用いる本発明のはんだバンプ形成方法は、以下の(i)〜(iii)の工程を含むものである。
(i)はんだペースト組成物を、基板上の電極が複数配列された領域にベタ塗りする工程。
(ii)ベタ塗りした前記はんだペースト組成物を加熱し、はんだを各電極表面に付着させてはんだバンプを形成する工程。
(iii)はんだバンプ形成後の基板を溶剤で洗浄する工程。
【0043】
(i)の工程において、ペースト組成物のベタ塗りは、例えばスクリーン印刷等により行うことができる。スクリーン印刷で使用するスクリーンマスクは、基板上の個々の電極ごとに開口したものではなく、複数の電極を含む広い領域に開口したものを使用すればよい。
【0044】
クワッドフラットパッケージ(QFP)を例に挙げて説明すると、電極が複数配列されたQFPの各辺ごとの形状に、またはそれらの辺を含むQFP全体の形状に開口するスクリーンマスクを使用する。そして、該スクリーンマスクの開口部から露出する複数の電極を含む広い領域に、個々の電極の位置や形状を無視してラフにペースト組成物を印刷すればよい。
【0045】
本発明は、ペースト組成物をベタ塗りするので、ファインピッチ化された基板に好適である。具体的には、互いに隣接する電極間のピッチが30〜60μm程度にファインピッチ化された基板にも対応することができる。また、電極の形状についても特に限定はなく、例えば後述する図1(a)に示すような長手方向の一部に他よりも幅が広い幅広部6を有する電極パターンを採用することもできる。
【0046】
(ii)の工程において、ベタ塗りしたペースト組成物の加熱は、例えば基板ごとリフロー炉を通過させることにより行うことができる。加熱時の最高温度としては、170〜280℃程度が適当である。加熱は、大気中で行ってもよく、N2、Ar、He等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。形成されるはんだバンプは、高さが通常10〜20μm程度であり、そのバラツキが少なく、形状も均一である。
【0047】
(iii)の工程において基板を洗浄すると、アクリル系樹脂を含有するフラックス等のペースト残渣を除去することができる。基板の洗浄は、はんだバンプ形成後の基板を洗浄溶剤に浸漬することにより行うことができる。また、この状態で超音波を照射してもよい。
【0048】
洗浄溶剤としては、基板を洗浄するのに通常使用される溶剤であればよく、特に限定されないが、アクリル系樹脂の溶解性の点で、グリコールエーテル類が好適である。該グリコールエーテル類としては、例えばグリコールのモノエーテル類、グリコールのジエーテル類、グリコールモノエーテルのエステル類等が挙げられる。中でもグリコールのモノエーテル類が好ましく、例えばジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル(ブチルカルビトール)等が好適である。また、洗浄溶剤を50〜70℃程度に加熱すると、洗浄性が向上するので好ましい。
【0049】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
<合成例1〜9および比較合成例1〜5>
まず、溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を表1,表2に示す割合でフラスコ内に添加した。ついで、窒素をフラスコ内に導入しながら約40分間かけて表1,表2に示す滴下温度まで溶剤を加熱し攪拌した。
【0051】
この滴下温度を維持した状態で、フラスコ内に、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、および過酸化物触媒(t−ブチルパーオキシベンゾエート)を表1,表2に示す割合で混合した混合物を2時間かけて滴下した。滴下後、さらに2時間かけて当該滴下温度で攪拌した。ついで、160℃まで昇温して1時間保持した。
【0052】
その後、脱溶剤工程にて溶剤を留去し、表1,表2に示すガラス転移温度、酸価および重量平均分子量を有する各アクリル系樹脂を得た。ガラス転移温度、酸価および重量平均分子量の各測定方法は、以下の通りである。
【0053】
〔ガラス転移温度〕
ガラス転移温度(Tg,絶対温度)は、式:1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn[式中、Tg1〜Tgnは、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)を示す。W1〜Wnは、各モノマーの重量分率を示す。]より算出した。
【0054】
〔酸価〕
中和滴定法により測定した。
【0055】
〔重量平均分子量〕
GPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算して得た。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
[実施例1〜12および比較例1〜7]
<はんだペースト組成物の調製>
まず、上記で得たアクリル系樹脂と、ヘキシルカルビトール、WW級トールロジン、および水素添加ひまし油とを、表3,表4に示す組み合わせおよび割合で混合して混合物を得た。ついで、この混合物を130℃で加熱して溶融し、室温(23℃)に冷却して粘性を有するフラックスを得た。
【0059】
実施例1〜11および比較例1〜7については、得られたフラックスとはんだ粉末とを、表3,表4に示す割合でコンディショニングミキサー((株)シンキー製の「あわとり練太郎」)を用いて混合し、各はんだペースト組成物を得た。なお、はんだ粉末は、平均粒子径3.0μmのSn−3.5Agを用いた。
【0060】
実施例12については、得られたフラックス45重量%と、錯体[Ag]+223-5重量%とを(株)ノリタケエンジニアリング製の3本ロールを使用して均一に混合して錯体混合フラックスを得た。この錯体混合フラックス50重量%と、錫粉末50重量%とを、コンディショニングミキサー((株)シンキー製の「あわとり練太郎」)を用いて混合し、析出型のはんだペースト組成物を得た。なお、錫粉末は、平均粒子径3.0μmのものを用いた。
【0061】
<はんだバンプの形成>
はんだバンプの形成には、半導体パッケージの基板を用いた。この基板には、以下に示す2種類の電極パターンのうちのいずれかが形成されている。
【0062】
電極パターン1:図1(a)に示すように、電極5が複数配列されている。各電極5は、長手方向の中央部7に両端部8,8よりも幅が広い幅広部6を有している。互いに隣接する幅広部6,6間のピッチL1は25μmである。幅広部6の幅W1は25μm、端部8の幅W2は15μmである。
【0063】
電極パターン2:図1(b)に示すように、電極10が複数配列されている。互いに隣接する電極10,10間のピッチL2は30μmである。電極10の幅W3は20μmである。
【0064】
はんだバンプの形成は、次のようにして行った。まず、電極パターン1,2のいずれかが形成された半導体パッケージの基板上に、各ペースト組成物をスクリーン印刷により120μmの厚さにベタ塗りした。ついで、最高温度260℃のリフロープロファイル(雰囲気/酸素濃度300ppm以下)を使用して、ベタ塗りしたペースト組成物を基板とともにリフロー炉を通過させて加熱し、各電極にはんだバンプを形成した。
【0065】
そして、はんだバンプ形成後の基板を60℃のブチルカルビトールを入れた超音波洗浄機に浸漬して超音波洗浄し、フラックス等のペースト残渣を除去した。超音波洗浄の条件は、以下の通りである。
周波数:38kHz
出力:1200W
洗浄時間:5分
【0066】
なお、合成例1〜9および比較合成例1〜5で得た各アクリル系樹脂について、ブチルカルビトールに対する溶解性を23℃で調べた。具体的には、各アクリル系樹脂をブチルカルビトール中に10〜90重量%の濃度になるように添加し、溶解状況を目視観察した。その結果、各アクリル系樹脂は、いずれも透明な溶液が得られたことから、ブチルカルビトールに対して可溶であった。
【0067】
<評価>
形成された各はんだバンプについて、その形状および高さを評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表3,表4に併せて示す。
【0068】
〔はんだバンプの形状〕
一基板あたり800個のはんだバンプについて、その形状を光学顕微鏡で観察した(倍率:45倍)。観察した形状は、以下の2種類である。
【0069】
(はんだバンプ形状A)
はんだバンプの頂部の形状を観察した。そして、はんだバンプの頂部が所定位置からずれて形成されたか、または頂部が2個以上形成された不良なはんだバンプの個数を測定し、不良発生率(%)を式:(不良なはんだバンプの個数)/(測定したはんだバンプの個数)×100より算出した。なお、評価基準は以下のように設定した。
◎:不良発生率が0%である。
○:不良発生率が3%以下である。
×:不良発生率3%より多い。
【0070】
(はんだバンプ形状B)
はんだバンプ全体の形状を観察した。そして、はんだバンプが欠落したか、またはブリッジを発生した不良なはんだバンプの個数を測定し、はんだバンプ形状Aと同じ式より不良発生率(%)を算出した。なお、はんだバンプの欠落とは、はんだバンプが電極表面の途中で切れることを意味する。また、はんだバンプのブリッジとは、隣接する電極間ではんだバンプがつながることを意味する。評価基準は、はんだバンプ形状Aと同じ基準を採用した。
【0071】
〔はんだバンプの高さ〕
(株)キーエンス製の焦点深度計を使用して、電極上に形成されたはんだバンプの高さを一基板あたり20点の所定箇所で測定し、その平均高さ、および標準偏差を算出した。各評価結果は、表3,表4中、「平均バンプ高さ」および「高さの標準偏差」として記載した。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
表3,表4から明らかなように、実施例1〜12は、形状のバラツキを抑制できており、かつ高さのバラツキも小さいのがわかる。この結果から、実施例1〜12によれば、高い信頼性ではんだ接合を行うことができると言える。
【0075】
一方、ガラス転移温度が0℃より高い比較例1、酸価が30mgKOH/gより小さい比較例2、酸価が350mgKOH/gより大きい比較例3、重量平均分子量が2,000より小さい比較例4、重量平均分子量が50,000より大きい比較例5、含有量が5重量%より少ない比較例6、および含有量が60重量%より多い比較例7は、形状にバラツキが発生するか、または高さのバラツキが大きい結果を示した。
【符号の説明】
【0076】
1,2 電極パターン
5,10 電極
6 幅広部
7 中央部
8 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだペースト組成物を、基板上の電極が複数配列された領域にベタ塗りする工程と、
ベタ塗りした前記はんだペースト組成物を加熱し、はんだを各電極表面に付着させてはんだバンプを形成する工程と、
はんだバンプ形成後の基板を溶剤で洗浄する工程と、を含み、
前記はんだペースト組成物は、フラックスを含有し、
該フラックスは、アクリル系樹脂を含有し、
該アクリル系樹脂は、
ガラス転移温度が0℃以下、
酸価が30〜350mgKOH/g、
重量平均分子量が2,000〜50,000、
含有量がはんだペースト組成物の総量に対して5〜60重量%であり、
かつ前記溶剤に対して可溶であることを特徴とするはんだバンプ形成方法。
【請求項2】
前記はんだペースト組成物は、加熱によりはんだを析出させる析出型はんだペースト組成物である請求項1記載のはんだバンプ形成方法。
【請求項3】
前記電極は、長手方向の一部に他よりも幅が広い幅広部を有し、該幅広部に前記はんだバンプを形成する請求項1または2記載のはんだバンプ形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のはんだバンプ形成方法に使用することを特徴とするはんだペースト組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−4347(P2012−4347A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138077(P2010−138077)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】