説明

ひずみ計測システムおよび無線式ひずみアンプ

【課題】計測現場におけるひずみなどの計測値が正常の範囲である期間は、計測現場に設置された子機の電源電池の消耗を徹底的に防止し、計測値が異常値等を示した時には、データ取得のインターバルを短縮して、リアルタイムに近い計測を実現する。
【解決手段】無線通信部120、ひずみアンプ部11およびひずみゲージ式センサ3は、各々、タイマー121によって制御されるスイッチSW1およびスイッチSW2がオンになった時点で、電池15の電源電力が供給されて作動可能となり、スイッチSW1およびスイッチSW2がオフになった時点で、電池15の電源電力が遮断されて作動不可能となる。スイッチSW1およびスイッチSW2をオフからオンにするタイミングを計るタイマー121の計時時間は、親機1が子機1から送信されたひずみ量データの大きさに応じて設定される。タイマー121は、電池15とは別のタイマー用電源で作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみ計測システムおよび無線式ひずみアンプに関し、ひずみ計測システムの子機または無線式ひずみアンプにおいて、電源の電池を節約することを意図したひずみ計測システムおよび無線式ひずみアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ひずみ計測装置は、自然環境の他、土木施設や建築物におけるひずみ量の計測に使用されている。計測対象となる計測現場のひずみ量は、当該ひずみ計測装置が設置された計測現場で計測されて、そのまま当該現場でデータが取得される場合の他、計測現場に設置されたひずみ計測装置で計測されたひずみ量を通信手段を介して遠隔地の親機に送信し、当該親機においてデータが取得される使用形態も多い。
子機が設置される計測現場は、作業者が足しげく訪れることができない場所であることが多いので、子機における電源電池の節約が重要課題となる。このため、子機において、データロガーに接続された送受信機の作動を所定の時間帯のみに制限する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、リアルタイムでの計測要求を満たすべき場合も存在するので、このような要求に応じる技術として、子機における電源にソーラー電源を使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、ひずみ計測装置を設置する計測現場に関する課題として、複数の計測現場の各々にひずみ計測装置を配置したいという要求も存在し、このような要求に応じる技術として、子機のひずみ計測装置におけるデータの通信インターフェースをUSB規格とし、このような複数の子機のデータを集中的に受けるUSB規格対応のハブを設置する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】「特開平6−268542号公報」
【特許文献2】「特開2005−182643号公報」
【特許文献3】「特開2007−12019号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記背景技術で述べた従来のひずみ計測装置にあっては、例えば、前述の特許文献1で開示された提案の場合、データロガーに接続された送受信機の作動は、予め設定された所定の時間帯のみに制限されるので、時々刻々と変化する計測現場のひずみ状況に対応させて臨機応変の時間間隔でデータを採取することができないという問題点があった。
また、データロガーに接続された送受信機の消費電力のみが電源電力の節約対象となっており、本発明のように、例えば、ホイートストンブリッジに組まれたひずみゲージ式センサが持続的に大電力を消費することに着目して、電源電力を節約することまでは行われていないので、子機であるひずみ計測装置の電源電力の節約は不十分であるという問題点が有った。
【0005】
請求項1に記載した本発明に係るひずみ計測システムは、計測現場の計測箇所に設置された子機と遠隔の地にある親機においても、当該現場の当該計測箇所において発生するひずみ等の物理量を的確に把握することができると共に、子機からは、ひずみゲージ式センサが設置された箇所における物理量が、前回子機から送信されたひずみ量に応じて親機が判断した時間間隔でもって計測されて親機に送信されることで、計測現場におけるひずみ等の物理量が正常である期間は、子機における電源電池の消耗を徹底的に防止することを可能にし、一方、親機には、必要に応じてデータ取得のインターバルを短縮することができる手段を与え、これにより、計測現場における物理量が異常値に達した時には、その事実を迅速且つ確実に把握することを可能にし、また、実際に計測現場における物理量が異常値に達した時には、リアルタイムに近いインターバルで計測現場の物理量をデジタルデータとして取得することを可能にしたひずみ計測システムを提供することを目的としている。
【0006】
本発明の請求項2の目的は、親機にデータ取得の時間間隔を変更指令する機能を与え、計測データが正常、注意および異常のいずれの状態にあるかを判定し、子機に対し適切に且つ迅速に指令を与えることを可能としたひずみ計測システムを提供することにある。
本発明の請求項3の目的は、特に、前記ひずみゲージ式センサが、4個の抵抗器から成るホイートストンブリッジで構成されている場合に、前記4個の抵抗器に常時電流が流れることによって大電力が消費されてしまう問題点を解消し、ひずみゲージをもって組まれたホイートストンブリッジ式のひずみゲージ式センサを使用する子機における電源電池の消耗を確実に防止することができるひずみ計測システムを提供することにある。
本発明の請求項4の目的は、特に、前記送信形式の計測データを、デジタルデータとして、通信路等の通信環境が悪化した場合であっても、子機が取得した計測データを、高い信頼度で親機に送信することができるひずみ計測システムを提供することにある。
本発明の請求項5の目的は、特に、前記子機と親機との交信手段が、単独の無線通信路から成る無線通信手段であるものとし、これにより、子機と親機の間の通信手段として、新たに通信ケーブルを敷設する必要が無く、安い設置コストで構築されるひずみ計測システムを提供することにある。
【0007】
本発明の請求項6の目的は、計測現場の計測箇所に設置される子機としての無線式ひずみアンプから親機に対し計測箇所における物理量を迅速且つ適切に伝送することができると共に、電源手段の消耗を極力節減化し長期に亘る計測を可能となし得る無線式ひずみアンプを提供することにある。
本発明の請求項7の目的は、計測データが正常の範囲か、注意すべき範囲かあるいは異常の範囲かに応じて迅速に対応して適切なデータを取得し、且つ電源手段の消耗を極力節減化し得る無線式ひずみアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した本発明に係るひずみ計測システムは、上述した目的を達成するために、ひずみゲージ式センサが検出する物理量を電気量に変換して計測データとして送信する子機と、前記子機と通信路を介して交信する親機と、を備えたひずみ計測システムであって、
前記子機において、
前記ひずみゲージ式センサが検出する物理量を送信形式の計測データに変換するデータ変換手段と、
前記送信形式の計測データを親機に送信する計測データ送信手段と、
前記親機から制御情報を受信する制御情報受信手段と、
前記ひずみゲージ式センサおよび前記各手段が備える全ての回路要素に電力を供給する電源手段と、
前記電源手段の電力を、前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路に投入し、または遮断するスイッチ手段と、
前記電源手段とは別のタイマー用電源を有し、前記電力の、遮断時点から投入時点までの時間間隔を計時して前記計時のスタート時点に前記スイッチ手段に対して前記電力の遮断を行わせる制御信号を送出すると共に、前記時間間隔の経過が計時された時点で前記スイッチ手段に対して前記電力の投入を行わせる制御信号を送出するタイマー手段と、
前記親機から受信した前記時間間隔を指令する後記制御情報に基づいて設定する間欠時間設定手段と、を備え、
前記親機において、
前記子機から送信される計測データを受信する計測データ受信手段と、
前記計測データに応じて、前記制御情報としての前記時間間隔を決定して前記子機に指令する間欠時間設定指令手段と、
前記制御情報を送信する制御情報送信手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載した本発明に係るひずみ計測システムは、前記間欠時間設定指令手段は、前記計測データが、正常状態の範囲にあるときは長い時間間隔に、異常状態の範囲にあるときは、リアルタイムに近い短い時間間隔に、注意すべき状態の範囲にあるときは、中間の適宜時間間隔に、それぞれ決定するように構成することを特徴としている。
また、請求項3に記載した本発明に係るひずみ計測システムは、前記ひずみゲージ式センサは、4つのひずみゲージをもってホイートストンブリッジに構成されたセンサまたは変換器であることを特徴としている。
また、請求項4に記載した本発明に係るひずみ計測システムは、前記送信形式の計測データが、デジタルデータであることを特徴としている。
さらに、請求項5に記載した本発明に係るひずみ計測システムは、前記子機と親機との交信手段が、単独の無線通信路から成る無線通信手段であることを特徴としている。
【0010】
また、請求項6に記載した本発明に係る無線式ひずみアンプは、上述した目的を達成するために、ひずみゲージ式センサが検出する物理量を電気量に変換して計測データとして親機に送信すると共に前記親機からの送信情報を受信する無線式ひずみアンプであって、
前記ひずみゲージ式センサが検出する物理量を送信形式の計測データに変換するデータ変換手段と、
前記送信形式の計測データを親機に送信する計測データ送信手段と、
前記親機から制御情報を受信する制御情報受信手段と、
前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路要素に電力を供給する電源手段と、
前記電源手段の電力を、前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路に投入し、また遮断スイッチ手段と、
前記電源手段とは別のタイマー用電源を有し、前記電力の、遮断時点から投入時点までの時間間隔を計時して前記計時のスタート時点に前記スイッチ手段に対して前記電力の遮断を行わせる制御信号を送出すると共に、前記時間間隔の経過が計時された時点で前記スイッチ手段に対して前記電力の投入を行わせる制御信号を送出するタイマー手段と、
前記親機から受信した時間間隔を指令する前記制御情報に基づいて前記時間間隔を設定する間欠時間設定手段と、
を備えたことを特徴としている。
また、請求項7に記載した本発明に係る無線式ひずみアンプは、前記間欠時間の時間間隔は、前記計測データが、正常状態の範囲にあるときは長い時間間隔に、異常状態の範囲にあるときは、リアルタイムに近い短い時間間隔に、注意すべき状態の範囲にあるときは、中間の適宜時間間隔に、それぞれ設定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ひずみゲージ式センサが検出する物理量を電気量に変換して計測データとして送信する子機と、前記子機と通信路を介して交信する親機と、を備えたひずみ計測システムであって、
前記子機において、
前記ひずみゲージ式センサが検出する物理量を送信形式の計測データに変換するデータ変換手段と、
前記送信形式の計測データを親機に送信する計測データ送信手段と、
前記親機から制御情報を受信する制御情報受信手段と、
前記ひずみゲージ式センサおよび前記各手段が備える全ての回路要素に電力を供給する電源手段と、
前記電源手段の電力を、前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路に投入し、または遮断するスイッチ手段と、
前記電源手段とは別のタイマー用電源を有し、前記電力の、遮断時点から投入時点までの時間間隔を計時して前記計時のスタート時点に前記スイッチ手段に対して前記電力の遮断を行わせる制御信号を送出すると共に、前記時間間隔の経過が計時された時点で前記スイッチ手段に対して前記電力の投入を行わせる制御信号を送出するタイマー手段と、
前記親機から受信した前記時間間隔を指令する後記制御情報に基づいて設定する間欠時間設定手段と、を備え、
前記親機において、
前記子機から送信される計測データを受信する計測データ受信手段と、
前記計測データに応じて、前記制御情報としての前記時間間隔を決定して前記子機に指令する間欠時間設定指令手段と、
前記制御情報を送信する制御情報送信手段と、
を備える構成としたので、計測現場の計測箇所に設置された子機と離隔された地に有る親機において、当該現場の当該計測箇所において発生する物理量を的確に把握することができると共に、子機からは、ひずみゲージ式センサが設置された箇所における物理量が、前回子機から送信された物理量の大きさに応じて親機が判断した時間間隔でもって計測されて親機に送信されるので、計測現場における物理量の大きさに応じて計測時間間隔が合理的に変更されるため、電源手段の消耗の節減と、計測データの的確な取得とを合理的に行い得るひずみ計測システムを提供することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記間欠時間設定指令手段は、前記計測データが、正常状態の範囲にあるときは長い時間間隔に、異常状態の範囲にあるときは、リアルタイムに近い短い時間間隔に、注意すべき状態の範囲にあるときは、中間の適宜時間間隔に、それぞれ決定するように構成したので、計測現場における物理量が正常である期間は、子機における電源電池の消耗を徹底的に防止することができると共に、親機は、必要に応じてデータ取得のインターバルを短縮することができることになり、計測現場における物理量が異常値に達した時には、その事実を確実且つ迅速に把握することが可能となり、また、実際に計測現場における物理量が異常値に達した時には、リアルタイムに近いインターバルで計測現場の物理量データを取得することが可能となるひずみ計測システムを提供することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、前記ひずみゲージ式センサは、4つのひずみゲージをもってホイートストンブリッジに構成されたセンサまたは変換器であるので、この4つのひずみゲージにより構成されたホイートストンブリッジに常時電流が流れることによって大電力が消費されてしまうことによる子機における電源電池の消耗を確実に防止して、電源電池を長持ちさせることができるひずみ計測システムを提供することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記送信形式の計測データは、デジタルデータであるので、通信路等の通信環境が悪化した場合であっても、子機が取得した計測データを、高い信頼度で親機に送信することができるひずみ計測システムを提供することができる。
さらに、請求項5に記載の発明によれば、子機と親機との交信手段は、単独の無線通信路から成る無線通信手段を通信手段として、新たに通信ケーブルを敷設する必要がなくなり、安い建設コスト(設置コスト)で、ひずみ計測システムを構築して提供することができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明によれば、ひずみゲージ式センサが検出する物理量を電気量に変換して計測データとして親機に送信すると共に前記親機からの送信情報を受信する無線式ひずみアンプであって、
前記ひずみゲージ式センサが検出する物理量を送信形式の計測データに変換するデータ変換手段と、
前記送信形式の計測データを親機に送信する計測データ送信手段と、
前記親機から制御情報を受信する制御情報受信手段と、
前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路要素に電力を供給する電源手段と、
前記電源手段の電力を、前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路に投入し、また遮断スイッチ手段と、
前記電源手段とは別のタイマー用電源を有し、前記電力の、遮断時点から投入時点までの時間間隔を計時して前記計時のスタート時点に前記スイッチ手段に対して前記電力の遮断を行わせる制御信号を送出すると共に、前記時間間隔の経過が計時された時点で前記スイッチ手段に対して前記電力の投入を行わせる制御信号を送出するタイマー手段と、
前記親機から受信した時間間隔を指令する前記制御情報に基づいて前記時間間隔を設定する構成としたので、遠隔の地(もちろん近傍であってもよい)に有る親機に対して、計測現場のひずみゲージ式センサが設置された計測箇所における物理量を的確に伝送することができると共に、前記ひずみゲージ式センサには、前回送信した計測データの大きさに応じて親機が判断した時間間隔でもってひずみ量を計測させ、その計測結果を計測データとして親機に送信することができるので、計測データの収集が的確で且つ無駄がなく、しかも電源手段の消耗を極力低減化し、長期に亘る計測が可能な無線式ひずみアンプを提供することができる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明によれば、前記間欠時間の時間間隔は、前記計測データが、正常状態の範囲にあるときは長い時間間隔に、異常状態の範囲にあるときは、リアルタイムに近い短い時間間隔に、注意すべき状態の範囲にあるときは、中間の適宜時間間隔に、それぞれ設定されるので、計測現場における物理量が正常である期間は、電源電池の消耗を徹底的に防止することができると共に、必要に応じてデータ取得のインターバルを短縮することができることになり、よって、計測現場における物理量が異常値に達した時には、その事実を確実に把握して、引き続き短い時間間隔で親機に伝送することが可能となり、また、実際に計測現場における物理量が異常値に達した時には、リアルタイムに近いインターバルで計測現場の物理量データを取得して、親機に伝送することが可能となる無線式ひずみアンプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のひずみ計測システムおよび無線ひずみアンプの最良の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一つの実施の形態に係るひずみ計測システムの要部の構成を示している。
同図において、本実施の形態のひずみ計測システムは、計測現場または計測現場付近に設置される子機1(本実施形態に係る無線式ひずみアンプ)と、子機1から計測データを受信すると共に子機1を制御する親機2と、計測現場の計測箇所に設置されて当該計測箇所のひずみ、変位、加速度、力、圧力、傾斜角等の物理量を計測するひずみゲージ式センサ3と、子機1と親機2との間を結ぶ通信路10と、を具備する。子機1は、ひずみゲージ式センサ3が検出した各種物理量(以下、「ひずみ量」と称する)に対応したアナログデータ信号を増幅するひずみアンプ部11と、親機2と通信するための無線通信部120と、電源手段としての電池15と、を備える。ひずみアンプ部11は、電池15の電力を後述する制御信号に従ってオン/オフするスイッチ手段としてのスイッチSW1と、電池15の電力をスイッチSW1を介して受け、ひずみゲージ式センサ3に一定電圧または一定電流でなるブリッジ電源を供給する電源部111と、アナログデータ信号を増幅するアンプ112と、を備える。
【0017】
さらに、無線通信部120は、ひずみアンプ部11から送出されるアナログデータ信号を後述するA/D変換器122によりデジタル信号に変換すると共に親機1から受信した制御情報を後述するタイマー121に設定するデータ制御部12(後述するデータ変換手段、間欠時間設定手段を含む)と、親機2に計測データを送信すると共に当該親機2からの制御信号を受信する送受信制御部13(後述する計測データ送信手段、制御情報受信手段を含む)と、無線の送受信に必要なアンテナ部14と、を備える。また、データ制御部12は、電池15の電力を各手段が備える回路および送受信制御部13の電源電力として取り入れるに際して当該電力を後述する制御信号に従ってオン/オフするスイッチ手段としてのスイッチSW2と、ひずみアンプ部11から送出されるアナログデータ信号をデジタルデータ変換手段としての信号に変換するA/D変換器122と、計時機能を備えると共にスイッチSW1,SW2を同時に制御する制御信号を送出するタイマー手段としてのタイマー121と、を備える。
【0018】
タイマー121は、計時のスタート時点においてスイッチSW1およびスイッチSW2を同時にオフにし、また、スイッチSW1およびスイッチSW2のオフ時点からオンにすべき時点までの期間(間欠時間)を計時して、オフとなっているスイッチSW1およびスイッチSW2を再びオンに制御するための制御信号をスイッチSW1およびスイッチSW2に送出する。
一方、親機2は、図示は省略したが、例えば、コンピュータを備えた通信端末装置で構成することができる。また、ひずみゲージ式センサ3は、同じ抵抗値を有する4枚のひずみゲージをもってホイートストンブリッジを組んだひずみゲージ式センサであるものとする。因みに、このひずみゲージ式センサは、半導体式ひずみセンサに比べて遙に消費電力量が多く、電池15に常時接続すると、電池15が蓄電している電力量を著しく消耗させ、短時間(実際の使用例では、2〜3時間程度)しかもたない。なお、送受信部13とアンテナ部14とをセットにしたものを、市販の装置で充当することができる。また、タイマー121は、電池15とは別のタイマー用の電源(一般には、電池15よりは小容量の電池)で作動するものとする。
【0019】
以下、本実施の形態に係るひずみ計測システムの要部の機能を説明する。
無線通信部120、ひずみアンプ部11およびひずみゲージ式センサ3は、各々、タイマー121によって制御されるスイッチSW1およびスイッチSW2がオンになった時点で、電池15の電源電力が供給されて作動可能となり、スイッチSW1およびスイッチSW2がオフになった時点で、電池15の電源電力が遮断されて作動不可能となる。この作動可能の期間において、計測現場の計測箇所に設置されたひずみゲージ式センサ3からは、当該計測箇所で発生しているひずみのひずみ量に対応した電圧値(または電流値。いずれもアナログ量)を有する電気信号がアンプ112に送出され、さらに、アンプ112で増幅されてデータ制御部12のA/D変換器122に送出される。A/D変換器122は、アンプ112から送出されたアナログ量の電気信号をデジタルデータ信号に変換して、送受信制御部13に送出する。計測データ送信手段としての送受信制御部13は、A/D変換器122から送出されたデジタルデータ信号を無線通信信号に変調してアンテナ部14に送出する。アンテナ部14は、送受信制御部13から送出されたデジタルデータの無線通信信号を無線信号(電磁波)として空中に発射し、親機2に向けて送信する。
【0020】
親機2は、無線通信部120から送信された無線信号を計測データ受信手段で受信してデジタルデータに復調し、この復調されたデジタルデータの内容を検証し、この検証結果に応じて間欠時間設定指令手段が子機1への制御信号(後述する)を決定して制御情報送信手段が、子機1に送信する。この検証事項には、ひずみゲージ式センサ3が設置された箇所におけるひずみのひずみ量が正常値の範囲内であるか、それとも注意すべき値に達したか、または異常値を示しているかの判断が含まれる。親機2の間欠時間設定指令手段は、タイマー121に設定する間欠時間(即ち、スイッチSW1およびスイッチSW2をオフからオンに転じさせるまでの期間)を制御信号情報として子機14に送信(指令)するが、前記ひずみ量が正常値の範囲内であれば、この間欠時間として最大値(ここではTとする)を決定し、前記ひずみ量が注意すべき値に達していれば、この間欠時間として中間値(ここではTとする)を決定し、前記ひずみ量が異常値を示していれば、この間欠時間として最小値(ここではTとする)を決定して子機1に指令する。
【0021】
この制御信号は、無線通信信号に変調されて子機2の無線通信部120に送信され、制御情報受信手段としての送受信部制御部13で復調されてデータ制御部12のタイマー121に伝達される。これにより、タイマー121には、親機2が判断した前記間欠時間が設定される。スイッチSW1およびスイッチSW2は、タイマー121の計時スタート時にタイマー121からの制御信号により同時にオフにされた後、この間欠時間の経過を計時したタイマー121からの制御信号を受けて再び同時にオンにされる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態に係るひずみ計測システムの動作を示すフローチャート図である。
以下、図1を参照し、図2に示すフローチャート図を使用して、本発明の実施の形態に係るひずみ計測システムの動作を説明する。
まず、子機1のデータ制御部12では、本システムの動作開始の初期状態であるか、若しくはタイマー121が間欠時間の経過を計時したことにより、タイマー121から、スイッチSW1およびスイッチSW2をオンにする信号をスイッチSW1およびスイッチSW2に送出し、これにより、オフであったスイッチSW1およびスイッチSW2がオンに転じて、電池15の電力が、子機1の、無線通信部120、ひずみアンプ部11およびひずみゲージ式センサ3の各々に供給され、これらの構成要素が動作可能となる(ステップS1)。
これにより、子機1のひずみアンプ部11は、計測現場の計測箇所に設置されたひずみゲージ式センサ3から、当該計測箇所で発生しているひずみのひずみ量に対応した電気信号としての電圧値(アナログ量)を増幅してデータ制御部12に送出する。データ制御部12は、この電気信号をデジタルデータ信号に変換して送受信制御部13に送出する(ステップS2)。
【0023】
次に、子機1の送受信制御部13は、このデジタルデータ信号を無線通信信号に変調し、アンテナ部14から無線信号(電磁波)として親機2に送信する(ステップS3)。
これを受けて、親機2は、受信した無線通信信号をデジタルデータ信号に復調し(ステップS4)、さらに、親機2は、この信号が示すデータを検証することにより、計測現場の計測箇所に設置されたひずみゲージ式センサ3が計測したひずみのひずみ量データが正常範囲内であるか否かを判断し、前記ひずみ量データが正常範囲内であればステップS7に移り、また、前記ひずみ量データが正常範囲内でなければステップS6に進む(ステップS5)。
ステップS6では、親機2は、前記ひずみ量が注意すべき値に達しているか否かまたは、注意すべき値を越えて異常値に達しているか否かを判断し、前記ひずみ量データが注意すべき値であればステップS8に移り、前記ひずみ量データが注意すべき値を越えて異常値を示した場合にはステップS9に進む。
上述したステップS7では、タイマー121へ伝達する制御信号として、タイマー121に設定される前記間欠時間を最大値(ここではTとする)に設定させる制御信号を生成し、ステップS10に移る。なお、Tは、例えば、1時間とすることとする。
【0024】
ステップS8では、タイマー121へ伝達する制御信号として、タイマー121に設定される前記間欠時間を中間値(ここではTとする)に設定させる制御信号を生成し、ステップS10に移る。なお、Tは、例えば、10分とする。
ステップS9では、タイマー121へ伝達する制御信号として、タイマー121に設定される前記間欠時間を最小値(ここではTとする)に設定させる制御信号を生成し、ステップS10に移る。なお、Tは、例えば、1分とする。
ステップS10では、親機2は、前記生成された間欠時間(T,T,Tのいずれか1つ)を送受信機により制御データとして子機1に送信する。
親機2から送信を受けて、子機1の無線通信部120は、アンテナ部14および送受信制御部13を介して前記制御信号を受信し(ステップS11)、データ制御部12により、受信した前記制御信号が示す間欠時間T,TおよびTのいずれかをタイマー121に設定する(ステップS12)。
【0025】
次に、子機1のデータ制御部12は、タイマー121をスタートさせる(ステップS13)。これにより、その直後にスイッチSW1およびスイッチSW2がオフにする信号が、タイマー121から、スイッチSW1およびスイッチSW2に送出される(ステップS14)。これにより、スイッチSW1およびスイッチSW2は共にオフとなり、電池15の電力は、子機1の、タイマー121を除く、無線通信部120、ひずみアンプ部11およびひずみゲージ式センサ3およびA/D変換器122の各々に供給されなくなり、これらの構成要素が動作停止する。
この間、タイマー121は、電池15とは別のタイマー用電源で作動しており、前記の停止時間が経過する時点を監視し、所定の間欠時間(T,T,Tのいずれか)が経過しない間は、ステップS14に戻り、電源OFFの状態を維持するが、ステップS13におけるスタート時点から前記の停止時間(間欠時間)が経過すると、再びステップS1に戻す(ステップS15)。
【0026】
本実施の形態に係るひずみ計測システムは、前記のとおり構成したので、子機1からは、ひずみゲージ式センサ3が設置された現場の計測箇所におけるひずみのひずみ量を、計測現場の近くあるいは遠隔の地にある親機2に送信することができる。また、この送信のタイミングおよびひずみ量の測定間隔は、前回子機1から送信されたひずみ量の大きさに応じて親機2が判断して決定するので、計測現場におけるひずみのひずみ量が正常である期間は、電池15の消耗を徹底的に防止することができると共に、親機2は、必要に応じてデータ取得のインターバルを短縮することができることになり、よって、計測現場におけるひずみのひずみ量が異常値に達した時には、その事実を迅速に且つ確実に把握することが可能となり、また、実際に計測現場におけるひずみのひずみ量が異常値に達した時には、リアルタイムに近いインターバル、例えば、30秒〜1分の間隔で計測現場のひずみ量データを取得することが可能となる。
【0027】
なお、本発明に係る無線式ひずみアンプの各構成要素の処理の少なくとも一部をコンピュータ制御により実行するものとし、かつ、上記処理を、図2のフローチャートで示した手順によりコンピュータに実行せしめるプログラムは、半導体メモリを始め、CD−ROMや磁気テープなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して頒布してもよい。そして、少なくともマイクロコンピュータ,パーソナルコンピュータ,汎用コンピュータを範疇に含むコンピュータが、上記の記録媒体から上記プログラムを読み出して、実行するものとしてもよい。
尚、本発明は、上述し且つ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
例えば、タイマー121に設定される間欠時間T,T,Tは、3種に限られるものではなく、2種あるいは4種、5種等適宜設定することができ、また、上述したT,TおよびTとして、1時間、10分および1分とした例を示したが、被測定対象の継続的な計測において、通常時と異常時あるいは警戒時に適切なデータが収集され、しかも電源電池の消耗(持続時間)との兼ね合いで適宜設定することができる。
【0028】
また、ひずみゲージ式センサは、構造物、地上、地中、水中等における物理量、例えば、ひずみ、変位、荷重、力、圧力、加速度、傾斜角、温度等の物理量を受けてひずみを生じる被測定対象物自体または起歪体の起歪部に添着され、上記ひずみに対応した抵抗変化を示すひずみゲージが、上記物理量を電気量に変換するひずみ計、変位変換器、荷重変換器、圧力変換器、加速度変換器、傾斜計、温度センサ等適用し得るものとする。
また、上記実施の形態においては、親機2側に、間欠時間設定指令手段と制御情報送信手段を設ける例につき説明したが、電池15の消耗、換言すれば計測持続時間が問題にならなければ、子機1側に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係るひずみ計測システムの要部の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一つの実施の形態に係るひずみ計測システムの動作を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0030】
1 子機
2 親機
3 ひずみゲージ式センサ
10 通信路
11 ひずみアンプ部
12 データ制御部
13 送受信制御部
14 アンテナ部
15 電池(子機の電源)
111 電源部
112 アンプ
120 無線通信部
121 タイマー
122 A/D変換器
SW1,SW2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひずみゲージ式センサが検出する物理量を電気量に変換して計測データとして送信する子機と、前記子機と通信路を介して交信する親機と、を備えたひずみ計測システムであって、
前記子機において、
前記ひずみゲージ式センサが検出する物理量を送信形式の計測データに変換するデータ変換手段と、
前記送信形式の計測データを親機に送信する計測データ送信手段と、
前記親機から制御情報を受信する制御情報受信手段と、
前記ひずみゲージ式センサおよび前記各手段が備える全ての回路要素に電力を供給する電源手段と、
前記電源手段の電力を、前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路に投入し、または遮断するスイッチ手段と、
前記電源手段とは別のタイマー用電源を有し、前記電力の、遮断時点から投入時点までの時間間隔を計時して前記計時のスタート時点に前記スイッチ手段に対して前記電力の遮断を行わせる制御信号を送出すると共に、前記時間間隔の経過が計時された時点で前記スイッチ手段に対して前記電力の投入を行わせる制御信号を送出するタイマー手段と、
前記親機から受信した前記時間間隔を指令する後記制御情報に基づいて設定する間欠時間設定手段と、を備え、
前記親機において、
前記子機から送信される計測データを受信する計測データ受信手段と、
前記計測データに応じて、前記制御情報としての前記時間間隔を決定して前記子機に指令する間欠時間設定指令手段と、
前記制御情報を送信する制御情報送信手段と、
を備えたことを特徴とするひずみ計測システム。
【請求項2】
前記間欠時間設定指令手段は、前記計測データが、正常状態の範囲にあるときは長い時間間隔に、異常状態の範囲にあるときは、リアルタイムに近い短い時間間隔に、注意すべき状態の範囲にあるときは、中間の適宜時間間隔に、それぞれ決定するように構成することを特徴とする請求項1に記載のひずみ計測システム。
【請求項3】
前記ひずみゲージ式センサは、4つのひずみゲージをもってホイートストン・ブリッジに構成されたセンサまたは変換器であることを特徴とする請求項1に記載のひずみ計測システム。
【請求項4】
前記送信形式の計測データは、デジタルデータであることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のひずみ計測システム。
【請求項5】
前記子機と前記親機との交信手段は、単独の無線通信路から成る無線通信手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のひずみ計測システム。
【請求項6】
ひずみゲージ式センサが検出する物理量を電気量に変換して計測データとして親機に送信すると共に前記親機からの送信情報を受信する無線式ひずみアンプであって、
前記ひずみゲージ式センサが検出する物理量を送信形式の計測データに変換するデータ変換手段と、
前記送信形式の計測データを親機に送信する計測データ送信手段と、
前記親機から制御情報を受信する制御情報受信手段と、
前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路要素に電力を供給する電源手段と、
前記電源手段の電力を、前記ひずみゲージ式センサおよび各手段が備える回路に投入し、また遮断スイッチ手段と、
前記電源手段とは別のタイマー用電源を有し、前記電力の、遮断時点から投入時点までの時間間隔を計時して前記計時のスタート時点に前記スイッチ手段に対して前記電力の遮断を行わせる制御信号を送出すると共に、前記時間間隔の経過が計時された時点で前記スイッチ手段に対して前記電力の投入を行わせる制御信号を送出するタイマー手段と、
前記親機から受信した時間間隔を指令する前記制御情報に基づいて前記時間間隔を設定する間欠時間設定手段と、
を備えたことを特徴とする無線式ひずみアンプ。
【請求項7】
前記間欠時間の時間間隔は、前記計測データが、正常状態の範囲にあるときは長い時間間隔に、異常状態の範囲にあるときは、リアルタイムに近い短い時間間隔に、注意すべき状態の範囲にあるときは、中間の適宜時間間隔に、それぞれ設定されることを特徴とする請求項5に記載の無線式ひずみアンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−234361(P2008−234361A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73641(P2007−73641)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【Fターム(参考)】