説明

ろう付け接合部の補修及び補修された物品

【課題】 再ろう付け工程の前に労力を要し、化学的、機械的にろう付け材を取り除いて第1の部材と第2の部材を完全に分解する必要性を排除することによって単純化された航空宇宙用アッセンブリの補修方法を提供する。
【解決手段】 ろう付け接合部の補修方法及びその結果得られる接合部であり、該方法は、航空宇宙用アッセンブリの第1の部材と第2の部材の間における接合部中の第1の接合材の不適合な部分を除去することと、その接合部を洗浄することを含む。第1の接合材の不適合な部分を除去するのにストリッピング液が使用される。接合部を洗浄するのに第1の洗浄液が使用され、第2の洗浄剤を使用することによって接合部はさらに洗浄される。再ろう付け工程の間、第2の接合材は、不適合な部分除去することによって残された空洞内へ移動し、第1の部材と第2の部材の間に残存した第1の接合材と第2の接合材を含む新たな接合部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付け接合部の補修及び補修された物品に関し、より詳細には、ろう付け接合部のろう付け材の一部を除去すること並びにろう付け接合部を洗浄することを含む、航空宇宙用構成部材などの物品のろう付け接合部を補修する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の航空宇宙用アッセンブリは、ろう付け結合によってアッセンブリに固定されるサブ・アッセンブリを備える。ガスタービン・エンジンにおいて、1つ又は2つのシュラウドに固定される、1つ又はより多くのエアフォイル・ベーンを有する圧縮機ベーン・アッセンブリは、そのようなろう付け物品の一例である。圧縮機ベーン・アッセンブリは、通常、エアフォイル・ベーンをシュラウドに固定するよう連結するろう付け材を有するろう付け接合部を有する。所定時間を超えてエンジンが作動する間に、ろう付け材は、亀裂したり、腐食したり、あるいはその他補修を必要とする不適切なろう付け接合部状態となったりする。
【0003】
不利な点として、従来のろう付け接合部の補修は、最初のろう付け材を(最初のろう付け接合部に伴う汚染物質に沿って)完全に除去することを必要とするのが常である。最初のろう付け材を完全に除去することにより、エアフォイル・ベーンはシュラウドから切り離されるようになる。従来の除去工程は、ろう付け材、腐食生成物、酸化生成物及びその他の汚染物質を、化学的及び/又は機械穿孔や放電加工などの機械的ストリッピング法によって完全に除去することを含んでなる。ろう付け材と汚染物質を完全に除去した後、接合部領域はニッケルめっきを施し、その後、エアフォイル・ベーンとシュラウドは、新たなろう付け材を用いて再ろう付けされる。この種の従来の補修工程は高価であり、手間がかかり、かつ時間のかかる作業である。
【0004】
そのため、従来技術の欠点及び短所を克服する、単純化された航空宇宙用アッセンブリの補修方法が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明により、再ろう付け工程の前に労力を要し、化学的、機械的にろう付け材を取り除いて第1の部材と第2の部材を完全に分解する必要性を排除することによって単純化された航空宇宙用アッセンブリの補修方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、
(a) 接合部から接合材の一部を除去する工程と、
(b) 接合部中に残存する接合材を洗浄する工程、
を含んでなることを特徴とする、航空宇宙用部品の接合部を補修する方法である。この接合部は、ろう付け接合部であってよい。また、航空宇宙用部品には、例えば、少なくとも1つのエアフォイル・ベーンと、少なくとも1つのシュラウドを有するベーン・アッセンブリがあげられ、接合材としてはニッケルベースのろう付け材があげられる。除去する工程(a)は、接合材の少なくとも不適合な部分を除去することを含み、その少なくとも不適合な部分は酸性のストリッピング液で溶解することによって除去してもよい。その際、ろう付け接合部の少なくとも適合な部分にマスキングをして、その部分が溶解されることや、マスクされていない不適合な部分が残ることを防ぐこともできる。接合材の残存する部分は、接合部の少なくとも2つの部材の間の構造的接合を与える。工程(b)は、具体的に、約775°Fから950°F、好ましくは約800°Fで洗浄する工程である。洗浄時間は2時間までであるが、その他の条件に応じて、5分から10分の間の場合もある。また、少なくとも前記洗浄液の副生成物か航空宇宙用部材の接合部からの汚染物質のいずれか一方を第2の洗浄液を用いて除去することを含んでもよい。第2の洗浄液を用いる工程は、2時間までの所定時間量の間、場合によっては3分から5分の間、かつ212°Fまで、あるいは60°Fから90°Fの間の所定温度で行われる。第2の洗浄液は少なくとも1種の酸を含んでもよい。酸の例としては硝酸があげられ、その量は約28容量%から50容量%、好ましくは、約40容量%である。また、第2の洗浄液はフッ化水素酸を含んでもよく、その量は1.5容量%から5.1容量%、好ましくは、約2.0容量%から3.0容量%である。第2の洗浄液は、100ガロンごとに、2.5ガロンまでの硝酸と、83ガロンまでのフッ化水素酸と130から140ポンドの無水塩化第二鉄と残余の水を含むものを提供してもよい。
【0007】
本発明の第2の態様は、
第1と第2のろう付け工程のそれぞれにおいて、第1と第2のろう付け材を少なくとも2つの部材の間に堆積させることと、
前記少なくとも2つの部材の間に、第1と第2のろう付け材を用いてろう付け接合部を形成すること、
を含んでなることを特徴とする、部材の接合方法である。第1と第2のろう付け接合工程のいずれか一方は、少なくとも2つの部材を使用した後に実施してよい。この方法の一例として、本質的に前記第1のろう付け材のみからなるろう付け接合部を形成し、その後、前記第1のろう付け材の一部を除去し、かつ、前記第1のろう付け材を除去したことによって残された空洞内に、第2のろう付け材を堆積させることを含むものであってよい。この方法は又、前記第1と第2のろう付け材の間に金属層を堆積させることを含んでもよい。第1と第2のろう付け材は互いの化学組成がほぼ同等であってよい。2つの部材としては、例として航空宇宙用部材があげられる。そのような部材としては、ガスタービン・エンジンのエアフォイル・ベーンとシュラウドなどが含まれる。また、第1のろう付け工程は、最初の製造工程、即ち、最初に部材が製造される間に行われ、かつ、第2のろう付け工程は部材の補修中に行われるものであってよい。
【0008】
本発明の第3の態様は、
ろう付け接合部の不適合な部分を除去することと、
前記不適合な部分を適合な部分と置き換えるために物品をろう付けすることを含み、
前記不適合な部分は前記ろう付け接合部全部より小さいことを特徴とする、ろう付け接合部を有する物品の補修方法である。この補修方法は、ろう付け接合部から他の部分を除去することなく不適合な部分だけを選択的に除去することを含む。その際、他の部分を除去するのを防ぐために、そのような他の部分をマスキングしてもよい。そのような他の部分とは、少なくとも第2のろう付け接合部か、又は不適合な部分を含まないろう付け接合部のうちのいずれか一方である。不適合な部分が除去された後もろう付け接合部が構造的接合を維持する。
【0009】
本発明の第4の態様は、
第1の航空宇宙用部材と、
接合部において第1の航空宇宙用部材に接合される第2の航空宇宙用部材を含み、前記接合部は、第1のろう付け工程による第1のろう付け材と第2のろう付け工程による第2のろう付け材とを含んでなることを特徴とする、航空宇宙用アッセンブリである。第1のろう付け工程と第2のろう付け工程は、異なる時間において別々に行われるものであってよい。また、第1のろう付け工程か又は第2のろう付け工程のいずれか一方が、第1の航空宇宙用部材と第2の航空宇宙用部材がガスタービン・エンジンに組み込まれた後に行われるものであってよい。また、このアッセンブリは、第1のろう付け材と第2のろう付け材の間に、ニッケルなどを含む金属層が含まれるものであってもよい。ここで、第1のろう付け材と第2のろう付け材は異なる組成を有してもよい。また、一例として、第1の航空宇宙用部材はエアフォイル・ベーンを含んでなり、かつ第2の航空宇宙用部材がシュラウドを含んでなるアッセンブリである。第1のろう付け工程は最初の製造工程、即ち、部材が最初に製造される間に行われ、かつ、第2のろう付け工程が補修中に行われるものであってもよい。
【0010】
本発明のろう付け接合部を補修する方法並びにそれによって補修された接合部は、航空宇宙用アッセンブリの第1の部材と第2の部材の間における接合部の、第1の接合材の不適合な部分を除去すること、及びその接合部を洗浄することを含んでなる。第1の接合材の不適合な部分を除去するのにストリッピング液を用いる。接合部を洗浄するのに第1の洗浄液を使用し、かつ、接合部をさらに洗浄するのに第2の洗浄液を使用する。再ろう付け工程の間、第1の接合部材と第2の接合部材を含む、第1の部材と第2の部材の間に新たな接合(接合部)を形成するために、除去工程において除去された不適合な部分によって残された空洞に第2の接合材を移動させる。
【0011】
一例において、ストリッピング液は、酸性であり、かつ、第1の接合材の不適合な部分を溶解するものである。接合部中に第1の部材と第2の部材の間の構造的結合を維持するのに残存する第1の接合材は、第1の部材が第2の部材から切り離されないよう十分残される。
【0012】
他の例において、第1の洗浄液は、接合部から残存するストリッピング液を取り除き、接合部中の汚染物質を溶解することによって接合部を洗浄する、アルカリ金属溶融塩浴を含む。
【0013】
また、別の例において、第2の洗浄液は、接合部から残存する第1の洗浄液を除去し、接合部からの汚染物質を溶解することによって接合部をさらに洗浄する、酸性溶液である。
【0014】
さらに別の例において、再ろう付けの間の第2の接合材のぬれ性及び流動を助長するために、第1の接合材と第2の接合材の間に金属層が堆積される。
【0015】
従って、本発明は、再ろう付け工程の前に、労力を要し、化学的及び機械的に接合材を除去するために第1の部材と第2の部材を完全に分解する必要性を排除することによって航空宇宙用アッセンブリの補修方法を単純化するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の様々な特徴並びに利点は、以下の、現時点で好ましい実施態様の詳細な説明から当業者等には明らかとなろう。詳細な説明に関連する図面については後述する。
【0017】
図1は、ガスタービン・エンジンで利用される航空宇宙用アッセンブリ10などの代表的な物品の概略的な断面図を示している。航空宇宙用アッセンブリ10は、ろう付け接合部16で第2の部材14に固定された第1の部材12を備えるが、この航空宇宙用アッセンブリ10には、追加の部材やさらなるろう付け接合部が包含され得ることは理解されよう。一例において、航空宇宙用アッセンブリ10は、圧縮機ベーン・アッセンブリなどのベーン・アセンブリであり、第1の部材12は、ニッケル基合金製の圧縮機シュラウドであり、第2の部材14は、ニッケル基合金製の圧縮機ベーンのエアフォイル翼であり、かつ、ろう付け接合部16は、ニッケル基合金ろう付け材料を含むものである。ここで使用する用語「ろう付け(braze)」は、公称温度約840°F(約448.889℃)より高い温度で実施される接合法によるもの、接合材料を液化し、2つの構成部材を液化することなく接合するよう液化した接合材料を十分に凝固する接合法によるもの、あるいは、少なくとも2つの異なる材料を接合する接合法によるもののいずれかの場合を意味する。
【0018】
ろう付け接合部16は、第1の部材12と第2の部材14の間に構造的接合を与えるろう付け材18を含み、また、不適合な部分20を含み得る。不適合な部分20の例には、亀裂部分、空洞部分、腐食部分、あるいは、航空宇宙用アッセンブリ10を現場で使用すること、や製造、又はその他の原因によって生じ得るその他の不備な部分を含む場合がある。不適合な部分20の一例において、不適合な部分の寸法は、通常、数マイクロメータ台の顕微鏡的な寸法から、数センチメートル台の肉眼的な寸法の範囲にある。
【0019】
図2は、ストリッピング液を用いて不適合な部分20を除去した後の航空宇宙用アッセンブリ10の例を示している。不適合な部分20を除去することによって、かつて不適合な部分20があった箇所に空洞22が残される。ストリッピング液を使用する前に、少なくともストリッピング液で除去すべきではないろう付け接合部16の一部分26含むベーン・アッセンブリにマスク24を適用する。マスク24は又、ベーン・アッセンブリのその他の部分も覆ってもよい。一例では、マスク24は、不適合な部分20を除くろう付け接合部16全体を覆う。これにより、部分26のろう付け材18を除去したり、あるいは何らかの悪影響を及ぼしたりすることなく選択的に不適合な部分20を有利に除去できる。他の例においては、マスクを使用しなくてもよく、又、航空宇宙用アッセンブリ10の補助的なろう付け接合部を覆うのに使用することもできる。
【0020】
他の例においては、第1の部材12が第2の部材14から分離しないよう第1の部材12と第2の部材14の間の構造的接合を維持するため、ストリッピング液の使用後にろう付け接合部16中に十分なろう付け材18が残存する。構造的接合を維持することにより、完全に分離させないことによる利点が得られ、かつそれにより第1の部材12と第2の部材14を再度組み立てる必要がなくなる。
【0021】
ストリッピング液の一例としては、酸性で、ろう付け接合部16の不適合な部分20を選択的に溶解するものである。即ち、ストリッピング液は、第1の部材12及び第2の部材14を構成する材料を溶解することなく、ろう付け材18を溶解する。ストリッピング液に航空宇宙用アッセンブリ10とろう付け接合部16をさらす時間は、不適合な部分20の寸法に相対する。さらす時間の例として、顕微鏡的な寸法の亀裂の場合で数日間台である。また、他の例では、さらす時間は、肉眼的な寸法の亀裂の場合で数分間台である。一般的に、小さい不適合な部分20にストリッピング液を浸透させることはより困難であり、そのため、小さい不適合な部分20中のろう付け材18をストリッピング液に溶解させて、溶解したろう付け材18を移動させて排除するのにより長い時間が必要となる場合が多い。ストリッピング工程によりいく分かの残滓Rが空洞22に残存する場合がある。いくつかの例において、この残滓Rは水洗、あるいはその他の除去法によって取り除かれる。
【0022】
図3は、洗浄工程中にある航空宇宙用アッセンブリ10の一例を示している。洗浄工程の前に、約900°F(約482.222℃)で燃焼することによってマスク24が部分26から除去されるが、酸性溶液やその他従来の除去技術を代わりに用いることも可能である。航空宇宙用アッセンブリ10は、所定の洗浄温度であるチャンバ34の内部にある間に、浸漬、すすぎ、吹き付けやその他のさらす方法によって洗浄液32にさらされる。洗浄工程中に、洗浄液32は、少なくとも残存しているストリッピング液、少なくともろう付け接合部16からのいく分かの汚染物質、及びろう付け接合部16に残存し得る残滓Rを取り除く。汚染物質には、酸化物、金属酸化物、腐食生成物、無機物質、現場での使用中に航空宇宙用アッセンブリ10に堆積した物質、及び後続の再ろう付け工程におけるろう付け材の流動性及び湿潤性を妨害する汚染物質が包含される。
【0023】
洗浄工程は、航空宇宙用アッセンブリ10の可縮性の清浄な表面に対して利益をもたらす。即ち、洗浄工程は、ろう付け材18のさらされた表面36と第1の部材12と第2の部材14のさらされた表面38から汚染物質を取り除く。清浄で、本質的に汚染物質のない表面36,38により、後続の再ろう付け工程における第1の部材12と第2の部材14の間の高品質なろう付け接合部の形成が助長される。ここで使用する用語「高品質(quality)」とは、ろう付け材を有するろう付け接合部が、概して、大きな空洞など、重大な肉眼で見えるような大きさの不適合な部分を含まないことを意味する。
【0024】
一例において、洗浄工程は、おおよそ775°F(約412.778℃)から950°F(約510℃)の範囲の所定の洗浄温度において、チャンバ34内で行われる。所定の洗浄温度範囲内において、洗浄液は汚染物質を溶解するため、ろう付け接合部16から汚染物質を除去することができる。他の例においては、所定の洗浄温度範囲内の選択された洗浄温度は、航空宇宙用アッセンブリ10を洗浄液32にさらす、洗浄時間に相対する。即ち、選択された洗浄温度が775°F(約412.778℃)付近である場合、ろう付け接合部16を洗浄するのに数時間から数日間を要し、また、選択された洗浄温度が950°F(約510℃)付近である場合、ろう付け接合部16を洗浄するのに数分間あるいは数秒間要するであろう。一例において、選択された洗浄温度が、約800°F(約426.667℃)であれば、後続の再ろう付け工程で第1の部材12と第2の部材14の間に高品質のろう付け接合部を形成するよう、十分量の汚染物質をろう付け接合部16から取り除くためには、洗浄液にさらす時間は5分から10分間である。
【0025】
洗浄液32の一例としては、アルカリ金属溶融塩浴が包含される。溶融塩浴は、主要な成分としてアルカリ金属を含むが、洗浄液32の他の例では、アルカリ金属に加えてさらに、改質化学物質及び/又はその他の塩を含む。好ましくは、洗浄液32のアルカリ金属は、アルカリ水酸化物又はアルカリ硝酸塩であるが、その他のアルカリ金属洗浄液を使用することも可能である。アルカリ金属洗浄液32は、2つの点でろう付け接合部16を洗浄することができる。第1に、アルカリ金属洗浄液32は、ろう付け接合部16中の汚染物質を溶解し、溶解された汚染物質を移動してろう付け接合部16から除く。第2に、アルカリ金属洗浄液32は又、ろう付け接合部16中に残存する酸性のストリッピング液を中和して運び去り、それにより、酸性のストリッピング液によってろう付け材18がさらに除去されたり、汚染物質の除去を妨害されたりするのを防ぐことができる。
【0026】
他の例においては、航空宇宙用アッセンブリ10のすすぎ及び急冷を行う追加の工程が、洗浄工程に付随する。航空宇宙用アッセンブリ10を、冷却水ですすぐことにより、少なくとも洗浄液32とろう付け接合部16からの溶解された汚染物質が除去され、かつ航空宇宙用アッセンブリ10が冷却される。
【0027】
図4は、第2の洗浄工程中にある航空宇宙用アッセンブリ10の一例を示している。航空宇宙用アッセンブリ10は、所定の第2の洗浄温度にあるチャンバ50の内部にある間に、浸漬、リンス、吹き付けあるいはその他のさらす方法によって第2の洗浄液48にさらされる。第2の洗浄工程の間、第2の洗浄液48は、残存する第1の洗浄液32と第1の洗浄工程による副生成物、並びに第1の洗浄工程でて残った汚染物質を除去する。従って、第2の洗浄工程は、航空宇宙用アッセンブリ10の表面をさらに洗浄する。即ち、第2の洗浄工程は、さらされた表面36,38から汚染物質をさらに除去し、かつ、後続の再ろう付け工程における第1の部材12と第2の部材14の間の高品質なろう付け接合部の形成を助長する。
【0028】
一例において、第2の洗浄工程は、おおよそ室温(60°F(約15.5556℃))から212°F(約100℃)までの間の所定の第2の洗浄温度において、チャンバ50内で行われる。所定の第2の洗浄温度において、第2の洗浄液は汚染物質を溶解するため、ろう付け接合部16から汚染物質を除去することができる。いくつかの例において、所定の第2の洗浄温度の範囲内で選択された第2の洗浄温度は、航空宇宙用アッセンブリ10を第2の洗浄液48にさらす洗浄時間に相対する。即ち、選択された第2の洗浄温度が室温付近であれば、ろう付け接合部16を洗浄するのに数時間を要し、また、選択された第2の洗浄温度が212°F(約100℃)付近であれば、ろう付け接合部16を洗浄するのに数分あるいは数秒を要する。一例において、選択された第2の洗浄温度が60°F(約15.5556℃)から90°F(約32.222℃)であるとき、後続の再ろう付け工程における第1の部材12と第2の部材14の間に高品質のろう付け接合部を形成するために、ろう付け接合部16から汚染物質をさらに除去するのにさらす洗浄時間は3分から5分である。
【0029】
一例において、第2の洗浄液48は、硝酸、フッ化水素酸及び水の組み合わせを有する酸性液を包含する。しかしながら、他の例では、第2の洗浄液48は、単一の酸、他の酸、及び/又は改質化学物質を包含する。好ましくは、第2の洗浄液48は、28容量%から50容量%の硝酸、1.5容量%から5.1容量%のフッ化水素酸、及び残余の水を含む。フッ化水素酸は、市販のものをそのまま第2の洗浄液48に添加してよく、通常、約49%から70%の濃度を有するが、他の濃度であってもよく、それに従って第2の洗浄液48中のフッ化水素酸の量を再計算してよい。いくつかの異なる酸の組み合わせを用いることにより、ろう付け接合部16に残存する汚染物質及び/又は、溶解されたろう付け接合部16中の種々の汚染物質を除去するのに役立つ。一例において、第2の洗浄液48は、約40容量%の硝酸、約2.0容量%から3.0容量%のフッ化水素酸、及び残余の水を含む。
【0030】
その他の、残存する洗浄液32と第2の洗浄工程による副生成物、並びに第1の洗浄工程で残存した汚染物質を除去するための代表的な第2の洗浄液48は、塩化第二鉄を含む。第2の洗浄液48は、100ガロン(約378.5リトル)ずつ、容積配合(bulk recipe)に従って製造される。容積配合には、2.5ガロン(約9.4625リットル)までの硝酸、83ガロン(約314.155リットル)までのフッ化水素酸、130ポンド(約58.968kg)から140ポンド(約63.504kg)の無水塩化第二鉄及び残余の水を含まれる。
【0031】
他の例において、航空宇宙用アッセンブリ10をすすぎかつ乾燥する追加の工程が第2の洗浄工程に付随する。航空宇宙用アッセンブリ10を水ですすぐことにより、第2の洗浄液の少なくとも一部及びろう付け接合部16中から溶解された汚染物質を除去することができる。乾燥には圧縮空気を航空宇宙用アッセンブリ10に吹き付けることを含み、それにより少なくとも残存するすすぎに用いられた水を除去することができる。航空宇宙用アッセンブリ10は、次の工程にすぐに供することができるよう、空気乾燥によってさらに乾燥することができる。
【0032】
図5は、再ろう付け工程中にある航空宇宙用アッセンブリ10の一例を示している。再ろう付け工程において、第2のろう付け材60が、ろう付け接合部16に隣接して配置される。第2のろう付け材60は、は、本質的にろう付け材18の組成と同等の組成を有するが、代替的に、ろう付け材18とは異なる組成を有することもできる。航空宇宙用アッセンブリ10、ろう付け接合部16及び第2のろう付け材60は、第2のろう付け材を液化するろう付け温度まで加熱され、図6に示すように、不適合な部分20を取り除いてできた空洞22内に第2のろう付け材60を移動させる。次いで、航空宇宙用アッセンブリ10を冷却して、第2のろう付け材60を凝固し、ろう付け材18と第2のろう付け材60を含む新たなろう付け接合部62を形成する。ろう付け材18と第2のろう付け材60が、第1の部材12と第2の部材14を接合する。
【0033】
一例において、第2のろう付け材60は、空洞22の表面を湿らせて、空洞22内へ流れ、空洞22を完全に満たす。前の洗浄工程及び第2の洗浄工程により、第2のろう付け材60が表面64を湿らせて空洞22内へ流れて空洞22を完全に満たすのを妨害する可能性のある汚染物質の少なくとも一部を除去することができる。得られた新たなろう付け接合部62は、概して、肉眼で見えるような大きさの空洞といった重大な不適合な部分のないものである。
【0034】
あるいは又、図7に示すように、再ろう付け工程の前に、ろう付け材18と第2のろう付け材60の間に金属層66を堆積させることもできる。金属層66は、再ろう付け工程中に、第2のろう付け材60が表面64を湿らせて空洞22内へ流れるのをさらに助長する。金属層66の例としてはニッケルが包含され、めっき法などの既知の方法で堆積される。しかしながら、その他の金属層を異なる堆積法を用いて堆積させてもよいことは理解されよう。
【0035】
上述のように、本発明によれば、再ろう付け工程の前に労力を要し、化学的、機械的にろう付け材18を取り除いて第1の部材12と第2の部材14を完全に分解する必要性を排除することによって、航空宇宙用アッセンブリ10の補修を単純化することができる。
【0036】
実施態様により、特定の構成部材の配置・アレンジメントを例示しているが、他のアレンジメントによっても本発明の利点が得られることは理解されたい。
【0037】
特定の工程順序を示し、説明しているが、別段示すことなく、かつ、本発明の利益を得られる限り、それぞれの工程はいずれの順で実施しても、別々に実施しても、又、組み合わせて実施してもよいことは理解されたい。
【0038】
本発明の好ましい実施態様を説明してきたが、本発明の範囲内における変更は実現可能であることは当業者であれば認識しているであろう。そのため、本発明の真の範囲と内容は、特許請求項の範囲の記載を検証することによって確認すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】代表的な航空宇宙用アッセンブリの概略的な断面図である。
【図2】不適合な部分を除去した後の図1の航空宇宙用アッセンブリの概略的な断面図である。
【図3】洗浄工程中の図2の航空宇宙用アッセンブリの一例を示す図である。
【図4】第2の洗浄工程中の図3の航空宇宙用アッセンブリの一例を示す図である。
【図5】再ろう付け工程中の図4の航空宇宙用アッセンブリの一例を示す図である。
【図6】再ろう付け工程後の図5の航空宇宙用アッセンブリの一例を示す図である。
【図7】第1のろう付け材と第2のろう付け材の間に堆積させた金属層の例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10…航空宇宙用アッセンブリ
12…第1の部材
14…第2の部材
16…ろう付け接合部
18…ろう付け材
26…部分
32…洗浄液
34…チャンバ
36,38…表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 接合部から接合材の一部を除去する工程と、
(b) 接合部中に残存する接合材を洗浄する工程、
を含んでなることを特徴とする、航空宇宙用部品の接合部を補修する方法。
【請求項2】
前記接合部がろう付け接合部であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記航空宇宙用部品が、少なくとも1つのエアフォイル・ベーンと、少なくとも1つのシュラウドを有するベーン・アッセンブリであり、かつ、前記接合材はニッケルベースのろう付け材であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記除去する工程(a)が、前記接合材の少なくとも不適合な部分を除去することを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも不適合な部分を酸性のストリッピング液で溶解することを含むことを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ろう付け接合部の少なくとも適合な部分にマスキングをすることにより、適合な部分が溶解されること、及びマスクされていない不適合な部分が残ることを防ぐことを含むことを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記接合材の残存する部分が、接合部の少なくとも2つの部材の間の構造的接合を与えることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記工程(b)が、約775°Fから950°Fの温度で洗浄することを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記工程(b)が、約800°Fで洗浄することを含むことを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記工程(b)が、洗浄液を用いて所定時間量の間、前記接合部から汚染物質を除去することを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記汚染物質は、前記除去する工程(a)中で使用されるストリッピング液を含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記所定時間量が2時間までであることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記所定時間量が5分から10分の間であることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記汚染物質が酸化物を含み、かつ前記除去する工程が該酸化物を溶解することを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記洗浄液としてアルカリ金属を含む溶解塩浴を提供することを含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄液としてアルカリ水酸化物を含む溶解塩浴を提供することを含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記洗浄液としてアルカリ硝酸塩を含む溶解塩浴を提供することを含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項18】
少なくとも前記洗浄液の副生成物か航空宇宙用部材の接合部からの汚染物質のいずれか一方を第2の洗浄液を用いて除去することを含むことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項19】
前記第2の洗浄液を用いる工程が、2時間までの所定時間量の間、かつ212°Fまでの所定温度で行われることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記所定時間量が3分から5分の間であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記所定温度が60°Fから90°Fの間であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種の酸を前記第2の洗浄液に供給し、かつ、少なくとも前記副生成物か汚染物質のいずれか一方を溶解することを含むことを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記第2の洗浄液に硝酸を供給することを含むことを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
約28容量%から50容量%の硝酸を供給することを含むことを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
約40容量%の硝酸を供給することを含むことを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記第2の洗浄液にフッ化水素酸を供給することを含むことを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項27】
約1.5容量%から5.1容量%のフッ化水素を供給することを含むことを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
約2.0容量%から3.0容量%のフッ化水素を供給することを含むことを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記第2の洗浄液として、約28容量%から50容量%の硝酸と、約1.5容量%から5.1容量%のフッ化水素と、水を提供することを含むことを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項30】
100ガロンごとに、2.5ガロンまでの硝酸と、83ガロンまでのフッ化水素酸と130から140ポンドの無水塩化第二鉄と残余の水を含んでなる前記第2の洗浄液を提供することを含むことを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項31】
前記残存する接合材の上に金属層を堆積させることを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項32】
前記残存する接合材の上に金属層を堆積させることを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項33】
第1と第2のろう付け工程のそれぞれにおいて、第1と第2のろう付け材を少なくとも2つの部材の間に堆積させることと、
前記少なくとも2つの部材の間に、第1と第2のろう付け材を用いてろう付け接合部を形成すること、
を含んでなることを特徴とする、部材の接合方法。
【請求項34】
前記第1と第2のろう付け接合工程のいずれか一方を、前記少なくとも2つの部材を使用した後に実施することを含むことを特徴とする、請求項33記載の方法。
【請求項35】
本質的に前記第1のろう付け材のみからなるろう付け接合部を形成し、その後、前記第1のろう付け材の一部を除去し、かつ、前記第1のろう付け材を除去したことによって残された空洞内に、第2のろう付け材を堆積させることを含むことを特徴とする、請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記第1と第2のろう付け材の間に金属層を堆積させることを含むことを特徴とする、請求項33記載の方法。
【請求項37】
互いの化学組成がほぼ同等である第1と第2のろう付け材を供給することを含むことを特徴とする、請求項33記載の方法。
【請求項38】
前記2つの部材が航空宇宙用部材であることを特徴とする、請求項33記載の方法。
【請求項39】
前記航空宇宙用部材が、ガスタービン・エンジンのエアフォイル・ベーンとシュラウドであることを特徴とする、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記第1のろう付け工程が最初の製造工程中に行われ、かつ、第2のろう付け工程が補修中に行われることを特徴とする、請求項33記載の方法。
【請求項41】
ろう付け接合部の不適合な部分を除去することと、
前記不適合な部分を適合な部分と置き換えるために物品をろう付けすることを含み、
前記不適合な部分は前記ろう付け接合部全部より小さいことを特徴とする、ろう付け接合部を有する物品の補修方法。
【請求項42】
前記ろう付け接合部から他の部分を除去することなく不適合な部分だけを選択的に除去することを含むことを特徴とする、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記他の部分を除去するのを防ぐために、該他の部分をマスキングすることを含むことを特徴とする、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記他の部分が、少なくとも第2のろう付け接合部か、又は不適合な部分を含まないろう付け接合部のうちのいずれか一方であることを特徴とする、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記ろう付け接合部が、前記不適合な部分が除去された後も構造的接合を維持することを特徴とする、請求項41記載の方法。
【請求項46】
第1の航空宇宙用部材と、
接合部において第1の航空宇宙用部材に接合される第2の航空宇宙用部材を含み、前記接合部は、第1のろう付け工程による第1のろう付け材と第2のろう付け工程による第2のろう付け材とを含んでなることを特徴とする、航空宇宙用アッセンブリ。
【請求項47】
前記第1のろう付け工程と第2のろう付け工程が、異なる時間において別々に行われることを特徴とする、請求項46記載のアッセンブリ。
【請求項48】
前記第1のろう付け工程か又は第2のろう付け工程のいずれか一方が、前記第1の航空宇宙用部材と第2の航空宇宙用部材がガスタービン・エンジンに組み込まれた後に行われることを特徴とする、請求項47記載のアッセンブリ。
【請求項49】
前記第1のろう付け材と第2のろう付け材の間に金属層を含むことを特徴とする、請求項46記載のアッセンブリ。
【請求項50】
前記金属層がニッケルを含んでなることを特徴とする、請求項49記載のアッセンブリ。
【請求項51】
前記第1のろう付け材と第2のろう付け材が異なる組成を有することを特徴とする、請求項46記載のアッセンブリ。
【請求項52】
前記第1の航空宇宙用部材がエアフォイル・ベーンを含んでなり、かつ前記第2の航空宇宙用部材がシュラウドを含んでなることを特徴とする、請求項46記載のアッセンブリ。
【請求項53】
前記第1のろう付け工程が最初の製造工程中に行われ、かつ、第2のろう付け工程が補修中に行われることを特徴とする、請求項46記載のアッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−125404(P2006−125404A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315572(P2005−315572)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】