説明

アキシャルギャップ型モータ、及びそのアキシャルギャップ型モータに用いられるティースの製造方法

【課題】円環状に配列された複数のティースを備えたアキシャルギャップ型モータにおいて、ティースを構成する複数の板材を形成するためのプレス機の構造を、より簡素化できるようにする。
【解決手段】バックヨークの径方向内方側から外方側へ向かって幅寸法が漸次変化する複数の板材(2)を積層してなる積層体でティース(1)を構成する。ここで、複数の板材(2)を積層する際には、各板材(2)における幅方向の片側の側面を揃えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップ型モータ、及びそのアキシャルギャップ型モータに用いられるティースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸方向の一端側と他端側から対向する回転子及び固定子を備えたアキシャルギャップ型のモータが知られている。そして、このモータは、上記固定子の端面から延出し、且つ軸周りに環状に配列される複数のティースを有している。このティースには固定子が有するコイルが装着される。
【0003】
特許文献1には、幅寸法の異なる複数の板材を積層してなる、いわゆる積層型ティースの製造方法が開示されている。この製造方法は、プレス工程と積層工程とを備えている。図9は、そのプレス工程を概念的に表した図である。
【0004】
このプレス工程では、幅寸法の異なる複数の板材を形成するため、幅方向に対向する一対の金型を可動金型(30a,30b)として用いている。そして、これらの可動金型(30a,30b)の対向距離を調整することにより、板材の幅寸法を異ならせている。
【0005】
具体的に、一対の可動金型(30a,30b)と該一対の可動金型(30a,30b)の側方に位置する固定金型(31)を同時に電磁鋼板の面直角方向へ移動させて該電磁鋼板を打ち抜く。これにより、上記板材が形成される。この後、一方の可動金型(30a)が所定のピッチで他端側の可動金型(30b)側へ面方向に沿って移動する。又、他方の可動金型(30b)が所定のピッチで一端側の可動金型(30a)側へ面方向に沿って移動する。そして、再び上記可動金型(30a,30b)及び固定金型(31)を同時に電磁鋼板の面直角方向へ移動させて該電磁鋼板を打ち抜く。このような動作が繰り返し行われる。これにより、幅寸法の異なる複数の板材が形成される。
【0006】
そして、上記積層工程において、上述したプレス工程で形成された複数の板材をその積層方向に沿って幅寸法が短いものから長いものの順に積層する。このように積層することにより、複数の板材の積層方向に幅寸法が変化する形状のティースが形成される。このティースは、幅寸法の短い側が上記固定子の径方向内方側に位置して幅寸法の長い側が上記固定子の径方向外方側に位置するような向きで配置される。
【0007】
このような向きでティースを配置すると、上記固定子の径方向外方へ向かって上記ティースの幅が広がるようになる。これにより、上記ティースの端面の面積を大きくでき、上記アキシャルギャップ型モータのトルクを大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−252064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したように、幅寸法の異なる複数の板材を形成するためには、一対の可動金型を面直角方向だけでなく面方向にも移動させなければならない。そして、このような複数の可動金型をプレス機に搭載する際には、各可動金型に面直角方向及び面方向移動用のサーボ機構を設けなければならない。こうなると、上記プレス機の構造が複雑になってしまい、好ましくない。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、円環状に配列された複数のティースを備えたアキシャルギャップ型モータにおいて、該ティースを構成する複数の板材を形成するプレス機の構造を、より簡素化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、中心に駆動軸(11)が固定された回転子(12)と、該回転子(12)に対して該駆動軸(11)の軸方向に対向する固定子(13)と、上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列された複数のティース(1)とを備えたアキシャルギャップ型モータを前提としている。
【0012】
そして、上記アキシャルギャップ型モータのティース(1)は、上記駆動軸(11)の径方向の内方側から外方側へ向かって幅寸法が漸次変化する複数の板材(2)を積層してなる積層体であり、該積層体における板材(2)の幅方向一方側の側面(4a)が複数の板材(2)を積層する積層方向に対して平行となるように構成されていることを特徴としている。
【0013】
ここで、上記板材(2)の幅方向とは、上記駆動軸(11)の軸方向に直交する方向である。
【0014】
第1の発明では、上述した従来の製造方法における一対の金型のうち、一方だけを移動させて形成した複数の板材(2)を利用して、上記ティース(1)を形成することができるようになる。ここで、一対の金型のうち一方を固定して他方を可動させて板材(2)を形成すると、固定側の金型で形作られた部分の形状は全て同じ形状となる。一方、可動側の金型が固定側の金型から遠ざかると、幅寸法の広い板材が形成され、可動側の金型が固定側の金型へ近づくと、幅寸法の狭い板材(2)が形成される。
【0015】
そして、これらの板材(2)を積層してティース(1)を形成する際には、固定側の金型で形作られた同じ形状の部分の側面を揃えて積層する。尚、このティース(1)は、複数の板材(2)を積層してなる1つ積層体であり、複数の板材(2)を積層してなる2つ積層体同士を合体させたものではない。又、この同じ形状の部分の側面を揃えて積層するので、その積層方向は、上記ティース(1)における非平行な二側面(4a,4b)の一方に平行な方向となる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記回転子(12)に取り付けられるとともに上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列された略扇形状の複数の永久磁石部(17)を備え、平面視において、上記永久磁石部(17)は、その側面(17a,17b)が上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる第1直線(G)と平行に形成されるとともに、隣り合う2つの永久磁石部(17)間に形成される第1エアギャップ(8)が上記第1直線(G)に対して線対称となるように配置され、平面視において、上記ティース(1)は、その側面(4a,4b)が上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる第2直線(D)と平行に形成されるとともに、隣り合う2つのティース(1)間に形成される第2エアギャップ(9)が上記第2直線(D)に対して線対称となるように配置されていることを特徴としている。ここで、平面視とは、上記駆動軸(11)の軸方向一端側又は他端側からの平面視である。
【0017】
第2の発明では、上記第1直線(G)と上記第2直線(D)とは、共に上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる直線である。そして、上記第1直線(G)を挟んで永久磁石部(17)の側面(17a,17b)同士が対向し、上記第2直線(D)を挟んでティース(1)の側面(4a,4b)同士が対向する。このことから、上記回転子(12)及び上記固定子(13)を軸方向一端側から平面視したときに、上記ティース(1)の側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の側面(17a,17b)とが互いに平行な位置関係となる。
【0018】
以上より、上記回転子(12)が回転した場合において、上記回転子(12)及び上記固定子(13)を軸方向一端側から平面視したときに、その回転子(12)の回転周期に応じて上記ティース(1)の側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の側面(17a,17b)とが周期的に重なり合いやすくなる。
【0019】
第3の発明は、第2の発明において、上記第1エアギャップ(8)と第2エアギャップ(9)とは、上記回転子(12)及び上記固定子(13)の周方向に同一の幅を有していることを特徴としている。
【0020】
第3の発明では、上記第1エアギャップ(8)及び第2エアギャップ(9)が同じ幅である。これにより、上記回転子(12)が回転した場合において、上記回転子(12)及び上記固定子(13)を軸方向一端側から平面視したときに、上記第1エアギャップ(8)と第2エアギャップ(9)とが、上記回転子(12)の回転周期に応じて必ず一致する。
【0021】
したがって、上記回転子(12)が回転した場合において、上記回転子(12)及び上記固定子(13)を軸方向一端側から平面視したときに、上記第1エアギャップ(8)を挟んで対向する上記永久磁石部(17)の側面(17a,17b)と、上記第2エアギャップ(9)を挟んで対向する上記ティース(1)の側面(4a,4b)とは、上記回転子(12)の回転周期に応じて必ず一致する。
【0022】
第4の発明は、中心に駆動軸(11)が固定された回転子(12)と、該回転子(12)に対して該駆動軸(11)の軸方向に対向する固定子(13)と、上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列された複数のティース(1)とを備えたアキシャルギャップ型モータを製造する製造方法を前提としている。
【0023】
そして、上記製造方法において、鋼板(22)から所定部分を打ち抜いて2つ並んだ板材(2)を形成するプレス工程と、鋼板(22)から形成された板材(2)を厚さ方向に積層してティース(1)を形成する積層工程と、上記ティース(1)を上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列する配列工程とを備え、上記プレス工程は、上記鋼板(22)の面方向に所定の間隔を有する一対の固定金型(21a,21b)と該一対の固定金型(21a,21b)の間に位置して該鋼板(22)の面方向へ移動自在な可動金型(20)とを用い、一対の固定金型(21a,21b)と可動金型(20)とを同時に板材(2)の面直角方向へ移動させて上記鋼板(22)の所定部分を打ち抜く打ち抜き工程と、打ち抜き工程後に該可動金型(20)を固定金型(21a,21b)の一方から他方へ向かって所定ピッチで移動させる移動工程とを交互に行う工程であり、上記積層工程は、上記プレス工程により形成した板材(2)の固定金型(21a,21b)側の側辺の位置を揃えて複数の板材(2)を積層する工程であることを特徴としている。
【0024】
ここで、面方向とは、上記鋼板(22)の端面に沿う方向であり、面直角方向とは、上記鋼板(22)の端面に直角な方向である。
【0025】
第4の発明では、上記プレス工程により、1つの可動金型(20)で幅寸法の異なる複数の板材(2)を形成することができるようになる。又、1回の打抜工程で2つの板材(2)を形成できるようになる。又、上記プレス工程で形成される複数の板材(2)において、固定金型(21a,21b)で形作られた部分の形状は全て同じ形状となる。そして、上記積層工程において、この同じ形状の部分の側辺を揃えて複数の板材(2)を積層することができる。
【0026】
又、上記配列工程において、上記積層工程で形成されたティースが、上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列される。
【0027】
第5の発明は、第4の発明において、上記配列工程は、平面視において、上記ティース(1)を、その側面(4a,4b)が上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる第2直線(D)と平行に形成されるとともに、隣り合う2つのティース(1)間に形成される第2エアギャップ(9)が上記第2直線(D)に対して線対称となるように配置することを特徴としている。
【0028】
第5の発明では、上記配列工程において、隣り合う2つのティース(1)間に形成される第2エアギャップ(9)が上記第2直線(D)に対して線対称となるように、複数のティース(1)を配置した固定子(13)が製作可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、従来の製造方法で用いられる一対の金型の一方だけを移動させて形成した複数の板材(2)を積層して、上記ティース(1)を形成することができる。このように、上記板材(2)を形成する際に、可動金型(20)を1つだけ移動させればよくなる。これにより、上記複数の板材(2)を形成するためのプレス機の構造を、より簡素化することができる。
【0030】
また、上記第2の発明によれば、上記アキシャルギャップ型モータ(10)が起動している場合において、上記駆動軸(11)周りに回転する回転子(12)と上記駆動軸(11)周りに回転しない固定子(13)とを軸方向一端側から平面視したときに、上記回転子(12)の回転周期に応じて上記ティース(1)の側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の側面(17a,17b)とが周期的に重なり合いやすくなる。これにより、上記ティース(1)と上記永久磁石部(17)との間に生じる磁束の短絡を抑えやすくすることができる。
【0031】
また、上記第3の発明によれば、上記アキシャルギャップ型モータ(10)が起動している場合において、上記駆動軸(11)周りに回転する回転子(12)と上記駆動軸(11)周りに回転しない固定子(13)とを軸方向一端側から平面視したときに、上記回転子(12)の回転周期に応じて上記ティース(1)の両側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の両側面(17a,17b)とが周期的に重なり合う。これにより、上記ティース(1)と上記永久磁石部(17)との間に生じる磁束の短絡を抑えることができる。
【0032】
また、上記第4の発明によれば、上記プレス工程により、1つの可動金型(20)で幅寸法の異なる複数の板材(2)を形成することができる。これにより、上記ティース(1)を構成する複数の板材(2)を形成するプレス機の構造を簡素化することができる。
又、上記プレス工程で形成される複数の板材(2)は、固定金型(21a,21b)で形作られた部分の形状は全て同じ形状となる。そして、上記積層工程において、この同じ形状の部分の側辺を揃えて複数の板材(2)を積層することができる。このように、上記プレス工程により形成した板材(2)の固定金型(21a,21b)側の側辺の位置を揃えることができるので、従来に比べて複数の板材を積層し易くすることができる。
【0033】
また、上記第5の発明によれば、上記配列工程により、隣り合う2つのティース(1)間に形成される第2エアギャップ(9)が上記第2直線(D)に対して線対称となるように、複数のティース(1)を配置した固定子(13)が製作可能となる。これにより、例えば、この固定子(13)に対応する回転子(12)において、隣り合う2つの永久磁石部(17)間に形成される第1エアギャップ(8)が上記第1直線(G)に対して線対称となるように配置されたとする。
【0034】
この場合に、上記回転子(12)の回転周期に応じて上記ティース(1)の側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の側面(17a,17b)とが周期的に重なり合いやすくなる。これにより、上記ティース(1)と上記永久磁石部(17)との間に生じる磁束の短絡を抑えやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係るアキシャルギャップ型モータの要部を示す縦断面図である。
【図2】アキシャルギャップ型モータのティースの斜視図である。
【図3】ティースを構成する板材の平面図であり、板材の幅寸法の短いものから順に(a)図、(b)図、(c)図である。
【図4】ティースにおける柱状部の横断面図である。
【図5】アキシャルギャップ型モータにおける複数のティースの配置図である。
【図6】アキシャルギャップ型モータにおける複数の永久磁石の配置図である。
【図7】アキシャルギャップ型モータの製造方法におけるプレス工程を概念的に示した図である。
【図8】その他の実施形態に係る複数の永久磁石及び複数のティースの配置図であり、(a)はティースの配置、(b)は永久磁石の配置である。
【図9】アキシャルギャップ型モータの製造方法における従来のプレス工程を概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0037】
本実施形態に係るアキシャルギャップ型モータは、例えば、冷凍装置に用いられる全密閉型圧縮機のケーシング内に圧縮機構とともに収容されて、該圧縮機構を駆動するものである
上記アキシャルギャップ型モータ(10)は、図1に示すように、中心に駆動軸(11)が固定された回転子(12)を備えている。この回転子(12)には、略扇形状の複数の永久磁石部(17)が取り付けられている。この永久磁石部(17)は、板状の永久磁石本体(18a)と板状の磁性体(18b)とを有している。上記永久磁石本体(18a)の上側に上記磁性体(18b)が位置し、上記永久磁石本体(18a)及び上記磁性体(18b)は、互いに背中合わせに当接している。
【0038】
又、上記回転子(12)の上側には、所定の間隔を空けて上側固定子(固定子)(13)が上記駆動軸(11)に同軸に配置されている。この上側固定子(13)は、中心部に開口を有する円板状のバックヨーク(15)を有している。このバックヨーク(15)の上端面には該バックヨーク(15)と同径の補強板(19)が取り付けられている。又、上記バックヨーク(15)の下端面からは、複数のティース(1)が延出している。このティース(1)は、複数の板材(2)を該板材(2)の厚さ方向に積層してなる積層体である。
【0039】
そして、上記ティース(1)は、複数の板材(2)を積層する積層方向が上記バックヨーク(15)の径方向沿いに一致するように配置されている。又、上記ティース(1)の下端面は、上記回転子(12)の永久磁石部(17)の上端面に対して対向している。
【0040】
又、上記回転子(12)の下側には、所定の間隔を空けて下側固定子(14)が上記駆動軸(11)に同軸に配置されている。
【0041】
〈ティース〉
上記ティース(1)は、図2に示すように、複数の板材(2)が該板材(2)の厚さ方向(図2の矢印方向)に積層された積層体である。尚、図2では、各板材(2)の厚みを誇張して示している。複数の板材(2)には、各々の形状が異なるものがある。その形状の異なる板材(2)を図3(a)〜(c)に示す。各板材(2)は、幅方向の両側部(3a,3b)の一部を矩形状に切り欠いた形状である。そして、各々の板材(2)は、図3の幅寸法(A)が何れも異なっている。又、各々の板材(2)は、該板材(2)の左側の形状が何れも同じである。尚、図3の3枚の板材(2)だけで上記ティース(1)が形成されているのではなく、幅寸法が異なる数多くの板材(2)が積層されて上記ティース(1)が形成されている。
【0042】
そして、これら複数の板材(2)を厚さ方向へ幅寸法が漸次変化するように積層することにより、上記ティース(1)が形成される。具体的には、積層方向へ向かって幅寸法が短いものから長いものの順で上記板材(2)を所定の枚数だけ積層した(図2のB部)後、幅寸法が長いものから短いものの順で板材(2)を積層する(図2のC部)。
【0043】
このように複数の板材(2)を積層してなるティース(1)は、横断面形状が略多角形の柱状部(4)を有している。本実施形態では、この柱状部(4)の横断面形状は、図4に示すように五角形である。又、図2に示すように、この柱状部(4)の上端面に薄板状の上端部(5)が連設されている。この上端部(5)の断面形状は五角形である。又、上記柱状部(4)の下端に厚板状の下端部(6)が連設されている。この下端部(6)の断面形状は略矩形である。さらに、上記下端部(6)の下端面からは突出部(7)が突出している。
【0044】
尚、上記バックヨーク(15)には、図示しないが上記下端部(6)を嵌め込むための開口部が形成されている。又、図示しないが、上記バックヨーク(15)における上記ティース(1)と反対側の端面には補強板(19)が取り付けられている。この補強板(19)には、上記突出部(7)を挿入固定するための長穴が形成されている。このバックヨーク(15)の開口部及び上記補強板(19)の長穴により、上記ティース(1)が上記バックヨーク(15)の下端面から延出するように固定される。
【0045】
ここで、上記柱状部(4)は、図4に示すように、互いに非平行な左側面(4a)及び右側面(4b)を有している。そして、複数の板材(2)を積層する積層方向は、上記左側面(4a)に平行になっている。こうなるのは、各々の板材(2)における左側部の形状が全て同じ形状であり、且つ複数の板材(2)の左側辺を揃えて積層するからである。
【0046】
又、上記柱状部(4)の側面は、図示しないインシュレータで被覆されている。そして、この側面には、上記インシュレータを介して導線が巻回されている。この導線の纏まりが上記固定子の有するコイル(16)を構成する。
【0047】
〈ティース及び永久磁石部の配列〉
図5は、上記バックヨーク(15)の端面上に並べられた複数のティース(1)の配置図である。尚、図5のティース(1)の形状は、該ティース(1)における柱状部(4)の断面形状である。図5に示すように、複数のティース(1)は、上記駆動軸(11)の周方向に等間隔で円環状に配列されている。このように配列されたティース(1)は、上記バックヨーク(15)の径方向内方側から外方側へ向かって各板材(2)の幅寸法が漸次変化するような姿勢で上側固定子(13)に取り付けられている。尚、この幅寸法の変化量に応じて、上記ティース(1)の右側面(4b)の形状が定まる。この幅寸法の変化量が大きくなればなるほど、上記駆動軸(11)の一端側からの平面視で、上記ティース(1)の右側面(4b)が、該ティース(1)の左側面(4a)に対して傾くようになる。
【0048】
又、隣り合うティース(1)とティース(1)との間には、第2エアギャップ(9)が形成される。上記駆動軸(11)の一端側からの平面視で、この第2エアギャップ(9)の中心線が上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる第2直線(D)を構成する。そして、上記ティース(1)を配置する際には、該ティース(1)の側面(4a,4b)が上記第2直線(D)と平行になるようにする。これにより、上記第2直線(D)を挟んで両側に、該第2直線(D)と平行に上記ティース(1)の側面(4a,4b)が位置するようになる。
【0049】
尚、上述したように、上記第2直線(D)は、上記第2エアギャップ(9)の中心線であるため、上記第2直線(D)及び上記ティース(1)の右側面(4b)の間隔(L)と、上記第2直線(D)及び上記ティース(1)の左側面(4a)の間隔(L)とは、互いに同じ長さになる。つまり、上記第2エアギャップ(9)は、上記第2直線(D)に対して線対称となるように位置している。
【0050】
図6は、上記回転子(12)の端面上に並べられた複数の永久磁石部(17)の配置図である。図6に示すように、複数の永久磁石部(17)は、上記駆動軸(11)の周方向に等間隔で円環状に配列されている。そして、隣り合う永久磁石部(17)と永久磁石部(17)との間が第1エアギャップ(8)を構成する。上記駆動軸(11)の一端側からの平面視で、この第1エアギャップ(8)の中心線が上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる第1直線(G)を構成する。そして、上記永久磁石部(17)を配置する際には、該永久磁石部(17)の側面(17a,17b)が上記第1直線(G)と平行になるようにする。これにより、上記第1直線(G)を挟んで両側に、該第1直線(G)と平行に上記永久磁石部(17)の側面(17a,17b)が位置するようになる。
【0051】
尚、上述したように、上記第1直線(G)は、上記第1エアギャップ(8)の中心線であるため、上記第1直線(G)及び上記永久磁石部(17)の右側面(17a)の間隔(L)と、上記第1直線(G)及び上記永久磁石部(17)の左側面(17b)の間隔(L)とは、互いに同じ長さになる。つまり、上記第1エアギャップ(8)は、上記第1直線(G)に対して線対称となるように位置している。
【0052】
ここで、上記第1エアギャップ(8)の幅(上記回転子(12)の周方向に沿う幅)及び上記第2エアギャップ(9)の幅(上記上側固定子(13)の周方向に沿う幅)は、共に同じ長さに設定されている。このように設定すると、上記回転子(12)が回転している場合において、上記回転子(12)及び上記上側固定子(13)を軸方向一端側からの平面視で、その回転子(12)の回転周期に応じて上記ティース(1)の両側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の両側面(17a,17b)とが周期的に重なり合うようになる。
【0053】
本実施形態では、上記ティース(1)の数(9個)と上記永久磁石部(17)の数(6個)とが異なり、互いの形状も異なっている。このことから、上記ティース(1)の両側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の両側面(17a,17b)とが周期的に重なり合いにくいと考えられる。しかしながら、上記ティース(1)及び上記永久磁石部(17)を、本実施形態で示すように配列することにより、上記ティース(1)の両側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の両側面(17a,17b)とが周期的に重なり合うようになる。
【0054】
〈アキシャルギャップ型モータの製造方法〉
次に、このアキシャルギャップ型モータ(10)の製造方法について説明する。この製造方法は、プレス工程と積層工程と配列工程とを備えている。図7は、上記プレス工程を概念的に表した図である。尚、このプレス工程は、プレス機械で行われる。
【0055】
−プレス工程−
上記プレス工程では、可動金型(20)及び固定金型(21a,21b,21c)が用いられる。そして、上記可動金型(20)及び固定金型(21a,21b,21c)で、一方向へ搬送される電磁鋼板(鋼板)(22)をプレスして、上記ティース(1)の板材(2)を形成する。
【0056】
ここで、上記可動金型(20)は、上記電磁鋼板(22)の幅方向へ移動自在である。又、上記固定金型(21a,21b,21c)は、上記電磁鋼板(22)の幅方向には移動しない。ここで、幅方向とは、上記電磁鋼板(22)の搬送方向に直角な方向である。
【0057】
図7に示すように、上記可動金型(20)は、上記電磁鋼板(22)の幅方向中央付近に配置される。又、上記固定金型(21a,21b,21c)は、上記電磁鋼板(22)の幅方向両側の近傍及び上記可動金型(20)における上記搬送方向側方にそれぞれ配置される。つまり、従来とは違い、可動金型(20)が1つだけである。
【0058】
上記プレス工程について説明すると、まず、上記可動金型(20)が上記電磁鋼板(22)の中央付近の左寄りに移動する。可動金型(20)の移動が終了すると、可動金型(20)及び固定金型(21a,21b,21c)を同時に電磁鋼板(22)の面直角方向へ移動させて該電磁鋼板(22)を打ち抜く。これにより、幅方向へ2つ並んだ板材(2a,2b)が上記電磁鋼板(22)から形成される。これが上記プレス工程の打抜工程である。
【0059】
この打抜工程が終わると、上記可動金型(20)が所定のピッチで右側へ移動する。これが上記プレス工程の移動工程である。この移動工程とともに上記電磁鋼板(22)は、上述した搬送方向に所定のピッチで搬送される。そして、再び打抜工程が行われる。この打抜工程により、2つ並んだ板材(2a,2b)が形成される。この打抜工程後に再び移動工程が行われる。このように、上記プレス工程では、上記打抜工程と上記移動工程とが交互に行われる。
【0060】
ここで、この打抜工程において、上記電磁鋼板(22)の両側に位置する固定金型(21a,21b)は同じ形状であり、互いの向きが上記電磁鋼板(22)の中央線を境に反転している。このため、上記打抜工程において、これらの固定金型(21a,21b)で形成される板材(2)の片側部分は、全て同一形状となる。つまり、全ての板材(2)において、上記板材(2)における固定金型(21a,21b)側の側辺の形状は、全て同じになる。
【0061】
−積層工程−
上記積層工程は、上記プレス工程で形成された複数の板材(2)を厚さ方向に積層して上記ティース(1)を形成する工程である。この積層工程では、上述したように、積層方向へ向かって幅寸法が短いものから長いものの順で板材(2)を所定の枚数だけ積層した後、幅寸法が長いものから短いものの順で板材(2)を積層する。
【0062】
尚、この積層の際には、上記各板材(2)における上記固定金型(21a,21b,21c)で形成された部分の側辺の位置を揃えるようにする。ここで、上記プレス工程により、2つ並んだ板材(2)が形成されるが、この2つ並んだ板材(2)のうちの一方を裏返せば、上記各板材(2)における上記固定金型(21a,21b,21c)で形成された部分の側辺の位置を揃えることができるようになる。このように積層することにより、上記ティース(1)における柱状部(4)の断面形状を五角形にすることが可能となり、複数の板材(2)を積層する積層方向が、上記柱状部(4)の左側面(4a)に平行になる。
【0063】
−配列工程−
上記配列工程は、上記積層工程で形成されたティースを上記固定子(13)が有するバックヨーク(15)の端面上に、上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列する工程である。この配列工程では、図5に示すように、複数のティース(1)は、上記駆動軸(11)の周方向に等間隔で円環状に配列される。ここで、複数のティース(1)を配列する際には、上記駆動軸(11)の一端側からの平面視で、各ティース(1)の側面(4a,4b)が、上述した第2直線(D)と平行であり、且つ各側面(4a,4b)と上記第2直線(D)との間隔が同じになるようにする。
【0064】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、従来の製造方法に用いられる一対の金型のうち、一方だけを移動させて形成した複数の板材(2)を利用して、上記ティース(1)を形成することができる。このように、複数の板材(2)を形成する際に、可動金型(20)を1つだけ移動させればよいので、上記複数の板材(2)を形成するためのプレス機の構造を、より簡素化することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、上記アキシャルギャップ型モータ(10)が起動している場合において、上記駆動軸(11)周りに回転する回転子(12)と上記駆動軸(11)周りに回転しない固定子とを軸方向の一端側から見たときに、上記回転子(12)の回転周期に応じて上記ティース(1)の両側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の両側面(17a,17b)とが周期的に重なり合う。これにより、上記ティース(1)と上記永久磁石部(17)との間に生じる磁束の短絡を抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、上記プレス工程により、1つの可動金型(20)で幅寸法の異なる複数の板材(2)を形成することができる。これにより、上記ティース(1)を構成する複数の板材(2)を形成するプレス機の構造を簡素化することができる。
【0067】
又、上記積層工程により、上記ティース(1)において、上記複数の板材(2)を積層する積層方向を、上記ティース(1)の柱状部(4)における非平行な二側面(4a,4b)の一方に平行な方向にすることができる。この積層工程において、上記プレス工程により形成した板材(2)の固定金型(21a,21b)側の側辺の位置を揃えることができるので、従来に比べて複数の板材を積層し易くすることができる。
【0068】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0069】
上記実施形態では、上記ティース(1)を形成する際には、上記バックヨーク(15)の径方向内方側から外方側へ向かって幅寸法が短いものから長いものの順で上記板材(2)を所定の枚数だけ積層した後、幅寸法が長いものから短いものの順で板材(2)を積層している。
【0070】
しかしながら、これに限定される必要はなく、例えば、上記バックヨーク(15)の径方向内方側から外方側へ向かって幅寸法が短いものから長いものの順で上記板材(2)を積層してもよい。こうすると、上記バックヨーク(15)の径方向外方へ向かって上記ティース(1)の幅が広がるようになる。
【0071】
これにより、上記ティースの端面の面積を大きくでき、上述した実施形態と同様に、上記アキシャルギャップ型モータのトルクを大きくすることができる。尚、この場合、上記ティース(1)の柱状部(4)の断面形状が直角台形となる。
【0072】
又、上記実施形態によれば、上記回転子(12)側の第1エアギャップ(8)と上記上側固定子(13)側の第2エアギャップ(9)とが、同じ幅で形成されていたが、これに限定されず、図8に示すように、上記第1エアギャップ(8)を上記第2エアギャップ(9)よりも広くしてもよい。尚、図8では、上記第1エアギャップ(8)を上記第2エアギャップ(9)よりも広くしているが、上記第2エアギャップ(9)を上記第1エアギャップ(8)よりも広くしてもよい。
【0073】
このように構成すると、上記アキシャルギャップ型モータ(10)が起動している場合において、上記駆動軸(11)周りに回転する回転子(12)と上記駆動軸(11)周りに回転しない固定子(13)とを軸方向一端側から平面視したときに、上記回転子(12)の回転周期に応じて上記ティース(1)の側面(4a,4b)と上記永久磁石部(17)の側面(17a,17b)とが周期的に重なり合いやすくなる。これにより、上記ティース(1)と上記永久磁石部(17)との間に生じる磁束の短絡を抑えやすくすることができる。
【0074】
又、上記実施形態によれば、複数のティース(1)の下端面を円環状のバックヨーク(15)の上端面に固定することにより上側固定子(13)を構成しているが、これに限定される必要はない。例えば、円環状に並べた複数のティース(1)を樹脂でモールドして上側固定子(13)を構成してもよい。又、円環状に並べた複数のティース(1)の内周面又は外周面をリング部材で固定して上側固定子(13)を構成してもよい。
【0075】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明は、アキシャルギャップ型モータに用いられるティース、及びそのティースの製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 ティース
2 板材
4 柱状部
5 上端部
6 下端部
7 突出部
10 アキシャルギャップ型モータ
11 駆動軸
12 回転子
13 上側固定子(固定子)
14 下側固定子
15 バックヨーク
16 コイル
20 可動金型
21a,21b,21c 固定金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に駆動軸(11)が固定された回転子(12)と、該回転子(12)に対して該駆動軸(11)の軸方向に対向する固定子(13)と、上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列された複数のティース(1)とを備えたアキシャルギャップ型モータであって、
上記ティース(1)は、上記駆動軸(11)の径方向の内方側から外方側へ向かって幅寸法が漸次変化する複数の板材(2)を積層してなる積層体であり、該積層体における板材(2)の幅方向一方側の側面(4a)が複数の板材(2)を積層する積層方向に対して平行となるように構成されていることを特徴とするアキシャルギャップ型モータ。
【請求項2】
請求項1において、
上記回転子(12)に取り付けられるとともに上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列された略扇形状の複数の永久磁石部(17)を備え、
平面視において、上記永久磁石部(17)は、その側面(17a,17b)が上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる第1直線(G)と平行に形成されるとともに、隣り合う2つの永久磁石部(17)間に形成される第1エアギャップ(8)が上記第1直線(G)に対して線対称となるように配置され、
平面視において、上記ティース(1)は、その側面(4a,4b)が上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる第2直線(D)と平行に形成されるとともに、隣り合う2つのティース(1)間に形成される第2エアギャップ(9)が上記第2直線(D)に対して線対称となるように配置されていることを特徴とするアキシャルギャップ型モータ。
【請求項3】
請求項2において、
上記第1エアギャップ(8)と第2エアギャップ(9)とは、上記回転子(12)及び上記固定子(13)の周方向に同一の幅を有していることを特徴とするアキシャルギャップ型モータ。
【請求項4】
中心に駆動軸(11)が固定された回転子(12)と、該回転子(12)に対して該駆動軸(11)の軸方向に対向する固定子(13)と、上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列された複数のティース(1)とを備えたアキシャルギャップ型モータを製造する製造方法であって、
鋼板(22)から所定部分を打ち抜いて2つ並んだ板材(2)を形成するプレス工程と、
鋼板(22)から形成された板材(2)を厚さ方向に積層してティース(1)を形成する積層工程と、
上記ティース(1)を上記駆動軸(11)の周方向に間隔を空けて配列する配列工程とを備え、
上記プレス工程は、上記鋼板(22)の面方向に所定の間隔を有する一対の固定金型(21a,21b)と該一対の固定金型(21a,21b)の間に位置して該鋼板(22)の面方向へ移動自在な可動金型(20)とを用い、一対の固定金型(21a,21b)と可動金型(20)とを同時に板材(2)の面直角方向へ移動させて上記鋼板(22)の所定部分を打ち抜く打ち抜き工程と、打ち抜き工程後に該可動金型(20)を固定金型(21a,21b)の一方から他方へ向かって所定ピッチで移動させる移動工程とを交互に行う工程であり、
上記積層工程は、上記プレス工程により形成した板材(2)の固定金型(21a,21b)側の側辺の位置を揃えて複数の板材(2)を積層する工程であることを特徴とするアキシャルギャップ型モータの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記配列工程は、平面視において、上記ティース(1)を、その側面(4a,4b)が上記駆動軸(11)の中心から径方向外方へ延びる第2直線(D)と平行に形成されるとともに、隣り合う2つのティース(1)間に形成される第2エアギャップ(9)が上記第2直線(D)に対して線対称となるように配置することを特徴とするアキシャルギャップ型モータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−44761(P2012−44761A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182910(P2010−182910)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】