アクチュエータ、液滴吐出ヘッド、インクカートリッジ及び画像形成装置
【課題】低電圧化を可能としたアクチュエータを提供する。
【解決手段】振動板Aと、振動板Aの一面に設けた振動板側電極8に密接して設けられて圧電変位して振動板Aを変位変形させる圧電素子Bと、を備え、圧電素子Bは、圧電素子側電極12及び振動板側電極間8に複数の圧電膜9、11と、各圧電膜と交互に積層された隣り合う複数の層からなる中間電極10と、を備え、各圧電膜は、中間電極10を構成する各層と、振動板側電極8又は圧電素子側電極12との間に電位を印加されることで変位するようにした。
【解決手段】振動板Aと、振動板Aの一面に設けた振動板側電極8に密接して設けられて圧電変位して振動板Aを変位変形させる圧電素子Bと、を備え、圧電素子Bは、圧電素子側電極12及び振動板側電極間8に複数の圧電膜9、11と、各圧電膜と交互に積層された隣り合う複数の層からなる中間電極10と、を備え、各圧電膜は、中間電極10を構成する各層と、振動板側電極8又は圧電素子側電極12との間に電位を印加されることで変位するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータ、これを利用した液滴吐出ヘッド、インクカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録時の騒音が極めて小さいこと、高速印字が可能であること、インクの自由度が高く安価な普通紙を使用できることなど多くの利点を有する。この中でも記録が必要な時にのみインク液滴を吐出する、いわゆるインク・オン・デマンド方式が、記録に不要なインク液滴の回収を必要としないため、現在主流となってきている。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとしては、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室(加圧液室、圧力室、インク流路等とも称される)と、吐出室内のインクを加圧する圧力を発生する圧力発生手段(アクチュエータ)とを備えて、圧力発生手段で発生した圧力で吐出室内インクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させる。
このような液滴吐出ヘッドに用いる圧力発生手段としては、圧電素子などの電気機械変換素子を用いて吐出室の壁面を形成している振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型のもの、吐出内に配設した発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰でバブルを発生させてインク滴を吐出させるバブル型(サーマル型)のものなどがある。ピエゾ型のものにはD33方向の変形を利用した縦振動型、D31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型、更には剪断変形を利用したシェアモード型等がある。その中で近年、半導体プロセスやマイクロマシニング技術の進歩により、パターニング加工技術が確立されていて、かつ、コストの安いSi基板に加圧室及び圧電素子を直接形成するアクチュエータ構成が考案されている。
【0003】
しかし、圧電素子を用いたベンドモード型のアクチュエータは振動板上に直接アクチュエータを形成する必要があり、このため圧電素子の性能が十分ではなく安定した膜の形成や低電圧化及び効率向上を目的とした構造の工夫が必須となっている。
かかる問題について、特許文献1に開示されている製造方法では、2回に分けて圧電膜を成膜する製法が開示されている。
従来製法では圧電体膜の所定の配向度を安定して再現性良く得ることが困難であるという問題があり、このような圧電体素子は、安定した高い圧電特性を得ることが難しく、インクジェット式記録ヘッドないしはプリンタの印字性能を十分に得られない要因となっていたが、特許文献1におけるように、振動板膜上に成膜した下部電極を所定形状にパターニングした後に、当該下部電極上に圧電体膜を成膜する場合には、圧電体膜の所定の配向度を安定して再現性よく得ることできる。
しかしながら、特許文献1には駆動電圧の低電圧化や効率向上の為の方法が記載されていない。
【0004】
特許文献2には、下部電極上に設けられた圧電体薄膜と、圧電体薄膜上に設けられた上部電極と、を備える圧電体薄膜素子であって、前記圧電体薄膜は、膜厚方向の所定位置より上部電極側における膜厚方向の電気抵抗率に対し、前記所定位置より下部電極側における膜厚方向の電気抵抗率の方が高い圧電体薄膜素子の構成が開示されている。
かかる圧電体薄膜の形成工程において、金属有機化合物のゾルを塗布した後に焼成する成膜工程を複数回行って複数の層からなる圧電体薄膜を形成する工程を用い、複数の層のうち下部電極側の層の成膜と、上部電極側の層の成膜とにおいて、ドーパントの量が互いに異なるゾルを塗布することで膜厚方向の膜の抵抗率が異なる膜を形成している。抵抗の異なる多層膜とすることで膜厚方向にかかる電界を異ならせ、変形量に合せて電界が異なる構成になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の構成では、低電圧が可能としているがその差は僅かであり、素子としての機能向上や効率向上は不十分なものとなっている。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、特に振動板に直接電極及び圧電材を成膜して圧電素子を形成し、圧電素子の横振動モードによる縮み変形を利用して振動板を撓ませる構成のアクチュエータにおいて、圧電素子が上部電極及び下部電極のほかに中間電極を有し、且つ中間電極が複数の膜から形成されている構成とすることで、電極間にかかる電圧を分けることで低電圧化を可能としたアクチュエータ機構及びこれを用いた液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、振動板と、該振動板の一面に設けた振動板側電極に密接して設けられて圧電変位して前記振動板を変位変形させる圧電素子と、を備えたアクチュエータにおいて、前記圧電素子は、圧電素子側電極及び前記振動板側電極間に複数の圧電膜と、各圧電膜と交互に積層された隣り合う複数の層からなる中間電極と、備え、各圧電膜は、前記中間電極を構成する各層と、前記振動板側電極又は圧電素子側電極との間に電位を印加されることで変位することを特徴とする。
また、請求項2の発明は、前記中間電極は、複合部材を拡散接合により接合した多層膜である請求項1記載のアクチュエータを特徴とする。
また、請求項3の発明は、前記複合部材が低融点金属を含む請求項2に記載のアクチュエータを特徴とする。
【0007】
また、請求項4の発明は、液滴を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室を形成した隔壁基板と、請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータと、備え、前記アクチュエータの前記振動板は、前記吐出室の少なくとも一方の壁面を構成し、前記アクチュエータの圧電素子が圧電変位して前記振動板を変位変形させることにより、前記吐出室内の液滴を前記ノズル孔から吐出する液滴吐出ヘッドを特徴とする
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の液滴吐出ヘッドを備えたインクカートリッジを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えている画像形成装置を特徴とする。
【0008】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記振動板の変形により生じた力によって液体を輸送するマイクロポンプを特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記振動板の変形によりミラーを変形させて光の反射方向を変化させる光変調デバイスを特徴とする。
また、請求項9の発明は、第1のシリコン基板に、振動板材料と、振動板側の電極となる第1の電極材料と、第1の圧電材層と、第1の部分電極と、インサート材と、を順に形成し、第2のシリコン基板に、第2の電極材料と、第2の圧電材層と、第2の部分電極と、を順に形成し、前記第1のシリコン基板と、前記第2のシリコン基板を対向させて、加熱及び加圧を行うことにより前記インサート材に拡散反応を生じさせ、前記第1の部分電極及び第2の部分電極を結合させて、前記第1の圧電材層及び前記第2の圧電材層との間に、2層からなる中間電極を形成し、前記第2のシリコン基板をエッチングにより除去し、前記第1の圧電材層、前記第2の圧電材層、前記中間電極、及び前記第2の電極材料にエッチングによってレジストパターンを形成するアクチュエータの製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアクチュエータを用いた液滴吐出ヘッドでは振動板の一部を成す下電極と吐出室に対応する領域に圧電材層と中間電極を有し、更に圧電材層及び上電極を積層した構成とし、その中間電極が複数の層からなるようにして電極間にかかる電圧を分けるように構成したことにより低電圧化を可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のアクチュエータを用いた液滴吐出ヘッドの分解斜視図。
【図2】本発明の液滴吐出ヘッドの組み立てられた装置全体の断面図。
【図3】本発明の液滴吐出ヘッドの透過平面図。
【図4】図1、3のX−X線における断面工程図。
【図5】図1、3のX−X線における断面工程図。
【図6】本発明の液滴吐出ヘッドを用いたインクカートリッジを示す図。
【図7】本発明の液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置を示す図。
【図8】本発明のインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置を示す図。
【図9】本発明のアクチュエータを用いたマイクロポンプの構成を示す図。
【図10】本発明の液滴吐出ヘッドを光学デバイスに応用した例を示す図(その1)。
【図11】本発明の液滴吐出ヘッドを光学デバイスに応用した例を示す図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施例]
図1は、本発明の液滴吐出ヘッドの分解斜視図であり、一部を断面図で示してある。本実施例はインク液滴を基板の面部に設けたノズル孔から吐出させるサイドシューター方式の例を示すもので図示している。
図2は組み立てられた全体装置の断面図を示すものであり、図1に示した断面X−Xに対応する断面図で、便宜上2つの吐出室のみ示してある。図3は透過平面図である。
図1−3を参照して、本発明の液滴吐出ヘッドの構造を詳細に説明する。
【0012】
本発明の液滴吐出ヘッドは、ニッケル高速電鋳法を用いて厚さ20ミクロンに形成したニッケル基板であり、インクを吐出するためのノズル孔20を有するノズル基板2と、振動板A、圧電素子B、シリコン基板Cからなる液室基板1と、圧電素子Bと当接し、その保護及び変位を妨げない為の圧電素子保護空間22を配した保護基板3、の3枚の基板を重ねた積層構造となっている。
また、液室基板1を構成するシリコン基板Cには、シリコンを隔壁4を残してエッチングすることで、吐出室14が形成されている。シリコン基板Cは、ノズル基板2と当接し、吐出室14は、ノズル基板2のノズル孔20と連通する。
また、液室基板1の、ノズル基板2とは逆側の面には、シリコン基板C上に積層膜により振動板Aが形成されており、振動板Aは、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いて、ノズル基板側からシリコン酸化膜5、シリコン活性層6、シリコン酸化膜7、及び圧電素子Bの下電極(振動板側電極)となる白金膜8が多層に積層されている。
また、圧電素子Bは、図2に示すように、パターニングされた第1圧電材層(圧電膜)9及び中間電極10、第2圧電材層(圧電膜)11、及び上電極(圧電素子側電極)12からなる多層構造膜であり、第1圧電材層9が、白金膜8に当接する構成となっている。
振動板Aの白金膜電極8、圧電素子Bの中間電極10、上電極12は外部配線へ接続し電圧を供給することでベンドモードの圧電アクチュエータとして機能し、上記隔壁4に対向する領域の多層膜は構造壁及び保護基板3との接合面として機能する。
なお、図1に示すように、保護基板3は、外部装置からインクを供給するためのインク供給孔24を備え、液室基板1は、共通液室18及び流体抵抗15を備えている。
【0013】
上記のように構成された液滴吐出ヘッドの動作を説明する。
まず構造完成後に圧電材(圧電アクチュエータ)の分極処理(ポーリング)を行なう。上電極12及び中間電極10を短絡させ下電極8との間に10Vから30V迄電圧を徐々に上昇させ約10分間印加する。
更に上電極12と中間電極10及び下電極8を短絡させた間に同様に電圧を印加する。これにより第1圧電膜9及び第2圧電膜11の分極方向を揃えることができる。このように前処理を行なった液滴吐出ヘッドに対しインク充填を行なう。
インク供給孔24から共通液室18及び流体抵抗15を経由して各吐出室14内にインクが供給される。吐出室14がインクにより満たされた状態で下電極8及び中間電極10間と中間電極10及び上電極12間に同時に20Vのパルス電位を加える。これにより第1及び第2圧電材9、11が横振動モードで変形(縮み)し、圧電素子Bと密着している振動板A全体が吐出室14側に凸形状に変形する。これにより吐出室14の体積が減少し吐出室14内の圧力が急激に上昇し、ノズル孔20よりインク液滴21を記録紙40に向けて吐出する。パルス電圧を連続的に印加し繰り返すことによりインクを連続的に吐出することが出来る。
【0014】
次に、かかる液滴吐出ヘッドの製作方法、構成など実施例をあげて詳細に説明する。
図4、5は図1、3におけるX−X線における断面工程図である。
本発明においてはシリコン基板Cに振動板材料及び圧電素子材料を成膜していくことでアクチュエータを作成していく。
図4(a)に示すような、厚み250umの<100>シリコン基板Cの表面に絶縁膜となるシリコン酸化膜5が0.1um、次に振動板材料となるシリコン活性層6が0.5um次にシリコン酸化膜7が0.3um形成されたSOI基板を用いる。
なお、シリコン基板Cの反対面には、シリコン酸化膜5、7とは別に酸化膜aが設けられている。
図4(b)に示すように、シリコン酸化膜7上に、圧電素子Bの下電極8となるTi/Pt層をスパッタ法によりそれぞれ0.05um/0.1um成膜する。更にスパッタ法により第1圧電材層9としてのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)及び中間電極10の一部となるPt(白金)層10−1をそれぞれ1.0um、0.05umずつ形成する。さらに前記Pt層10−1上に、拡散接合を行なう為のインサート材bとして、Cu及び低融点金属であるSn−In合金をそれぞれ0.05um、0.05umづつ成膜する。
なお、別途、図4(b’)に示すように、両面にシリコン酸化膜d、eを0.3um形成した200um厚のシリコン基板Dの一方の面上に前記シリコン基板C上に形成したものと同様にTi/Pt層(0.04um/0.1um)12を成膜し、さらに第2圧電材層11としてスパッタ法によりPZT(1.0um)形成し、かつ中間電極10の一部としてPt/Cu層10−2(それぞれ0.05um、0.05um)を形成したものを準備する。
【0015】
次いで、図4(c)に示すように、上記2枚の基板の圧電層側(インサート材bとPt/Cu層10−2)を対向させ加圧・加熱(150℃)をう。これによりインサート材であるSn‐InとCu間での拡散反応が促され、強固な接合が実現され2枚の基板が接合される。
次に、図4(d)に示すように、張り合わせた200um厚のシリコン基板Dの表面のシリコン酸化膜eをドライエッチング法により除去し、シリコン層Dをアルカリエッチにより剥離し、次工程のためにマスクする。
【0016】
その後、図5(a)に示すように、シリコン基板Cの反対面に同時に形成されていたシリコン酸化膜aをリソエッチ法によりパターニングする。
そして、BHFにより酸化膜a(0.3um)を除去する。残った部分をマスクする。
その後、リソ法によりレジストパターンを形成し、図4(d)で用意したマスクを用いて上電極12、第2圧電材11、をドライエッチング法によりエッチングする。さらにリソ法によりレジストパターンを形成し中間電極10、第1圧電材9、をドライエッチング法によりエッチングする。図示しないがその後通常のAu成膜、リソエッチ、保護膜形成の繰り返しによりAu配線層を中間電極10、上電極12にたいして形成する。
更に、図5(b)に示すように、この酸化膜aをマスクにシリコン基板CをICPドライエッチングによりエッチングし隔壁4、吐出室14、流体抵抗部15及び共通液室17となる凹部を形成する。
その後、図5(c)に示すように、スルファミン酸浴で高速電鋳法により製作したノズル基板2を隔壁4側に接着する。
最後に、図5(d)に示すように、別途シリコン基板にリソエッチ法で凹部22を形成してある保護基板3を製作しておき、基板1の圧電素子面に接着する。
【0017】
保護基板3は<110>シリコン基板をTMAH、KOHなどのアルカリエッチング液を用いたウェットエッチングにより加工したものでも良いし、樹脂モールドやメタルインジェクションモールドなどの成型部品で代用しても構わない。この後、図示していないが圧電素子Bの各電極を駆動回路に接続することで本発明の液滴吐出ヘッドが完成する。
本発明の液滴吐種ヘッドにおいては、2層の薄膜PZT(第1圧電材層9、第2圧電材層11)がそれぞれ中間電極10と交互に積層された構造になっている。
薄膜のPZTを形成する方法としては、スパッタ法、Sol−Gel法、AD法等があるが成膜するPZT膜の配向性は下地材の結晶方位により影響を受ける。このため単純に積層して多層膜を形成した場合、1層目と、2層目で形成された薄膜PZTの配向性が異なり、圧電定数や電気機械結合係数が低下し、また安定した膜質を得ることが困難である。
【0018】
それに対し、本発明においては、1層目、2層目を共にシリコン基板上に形成した熱酸化膜上に形成し、その後PZTのキュリー点以下の温度で接合することで常に安定した膜質の積層PZT膜を得ることが出来る。これにより、駆動電圧を1層の場合と同じ電圧でPZT1層のアクチュエータより大きな変位及び力を発揮できるアクチュエータが形成できる。これにより駆動回路系を低電圧のものが使えるため、低コストな液滴吐出ヘッドか形成できる。又液室長も小さくできるため低コスト且つ高速駆動が可能なヘッドとすることが可能である。ここでは低温で行なう拡散接合により2層のPZTアクチュエータを接合する例をあげたが、有機系接着剤や無機系接着材のような絶縁体である接着剤で接着しヘッド外部の配線領域で両者をマージ(接続)しても一体として駆動できるし、2層のPZTアクチュエータをそれぞれ個別に制御し、例えば一方は常に一定周期のパルスで駆動し(微駆動)、他方がインク吐出時に追加駆動するような駆動とするようにしても構わない。
【0019】
本発明で用いることができる液滴吐出ヘッドは、インク流路から吐出口にかけての形状が直線的であるエッジシューター方式であっても良いし、インク流路の向きと吐出口の向きが異なるサイドシューター方式であっても良い。
本発明の液滴吐出ヘッドでは振動板Aの一部を成す下電極8と吐出室14に対応する領域に圧電材層9、11と中間電極10を有し、更に圧電材層及び上電極12を積層した構成であり、その中間電極10が複数の層からなることを特徴としている。
このように、中間電極10が複数の膜から形成されている構成として、上下電極8、12間にかかる電圧を分けることで低電圧化を可能となる。
ここで、圧電材層9、11、中間電極10を順次積層して多層膜を形成するのではなく、それぞれ最適な状態で別々に作った圧電素子を接合することで最適な状態の配向性を持った圧電素子を形成できる。
それぞれの圧電素子は最適な条件で処理された場合、成膜されたPZTの結晶配向が(001)/(100)方向に配向したPZT薄膜が得られるが、この(001))/(100)配向が強いほど、圧電定数が大きくなって特性の良い膜になる。
これにより圧電材の特性を低下させることなく多層圧電素子が形成できる為、低電圧駆動が可能で且つ振動板変位量も大きくできるため小さな液室サイズで所望の液滴を吐出できるヘッドを形成できる。またほとんどの工程を半導体製造で用いられている工法で製作できるので、歩留りよく低コストな液滴吐出ヘッドを作ることができる。
【0020】
また、本発明の液滴吐出ヘッドでは、多層圧電素子の中間電極が複合部材からなる多層膜であり、その複合部材が低融点金属を含むことを特徴としている。このようにすることで、低融点金属の融点に近い温度で強固な接合が可能となる。別々に製作した圧電材基板を接合する際に、圧電材のキュリー点より十分に低い温度で且つ強固な接合界面を形成することは、圧電材のD定数を維持し且つ、高い信頼性、耐久性を確保する為にも不可欠である。このため本実施例の構成とすることで、高性能で信頼性の高い液滴吐出ヘッドを作ることができる。
なお、本実施例の説明中、圧電材層は、2層の薄膜PZT(第1圧電材層9、第2圧電材層11)としたが、これらに限定されるものではなく、3層以上としてもよい。
【0021】
[第2の実施例]
図6は、本発明のアクチュエータ(滴吐出ヘッド)を用いたインクカートリッジを示す図である。
このインクカートリッジは、ノズル20等を有する本発明の液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド61と、このインクジェットヘッド61に対してインクを供給するインクタンク62とを一体化したものである。
このようにインクタンク一体型のヘッドの場合、ヘッドの低コスト化、信頼性向上は、ただちにインクカートリッジ全体の低コスト化、信頼性向上につながるので、上述したように低コスト化、高信頼性化、製造不良低減することで、インクカートリッジの歩留まり、信頼性が向上し、ヘッド一体型インクカートリッジの低コスト化を図れる。
【0022】
[第3の実施例]
次に、図7、8は、本発明の液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置を示す図であり、図7は同記録装置の斜視図、図8は同記録装置の機構部の概略断面図である。
このインクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明を実施したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部82等を収納し、装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係るインクジェットヘッドからなるヘッド94を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ93にはヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
【0023】
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定しており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
【0024】
一方、給紙カセット84にセットした用紙83をヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
【0025】
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段でヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0026】
このように、このインクジェット記録装置においては本発明を実施したインクジェットヘッドを搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
なお、本実施例においては、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドに適用した例で説明したが、インクジェットヘッド以外の液滴吐出ヘッドとして、例えば、液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド(スポッタ)などの他の液滴吐出ヘッドにも適用することができる。
【0027】
[第4の実施例]
次に、図9は、本発明のアクチュエータを用いたマイクロポンプの構成を示す図である。
振動板が長手方向に連続して複数設けられており流路200の中を流体が流れる構造となっている。図では省略しているがPZT及び電極は、第1の実施例に示した液滴吐種ヘッドの説明に記載した積層構造になっている。
振動板を図中右側から順次駆動することによって流路200内の流体は矢印方向へ流れが生じ、流体の輸送が可能となる。本実施例では振動板を複数設けた例を示したが、振動板は一つでも良く、液体流入孔及び流出孔の形状を工夫することで、輸送効率を上げる構成にできる。
本実施例では動作原理を簡単に述べたが、第1の実施例に示した製造方法、構成を適用することで大流量の液体を効率よく送液できる駆動力(輸送力)の高いマイクロポンプとすることが出来る。
本発明の構成は液滴吐出ヘッド、マイクロポンプを例としてあげたが、これ以外の液体輸送デバイスにも応用可能である。
【0028】
[第5の実施例]
図10は、本発明のアクチュエータを光学デバイスに応用した例を示す図である。
図では省略しているがPZT及び電極が第1の実施例で説明した積層構造になっている振動板が複数配列され、振動板はミラー306をかねる。このようにミラー材料が一体成形により振動板面等の必要部位に成膜され、繋ぎ目などが無い信頼性の高いアクチュエータを搭載しているので、信頼性の高い光変調デバイスが実現できる。
このデバイスを応用した例を示す。光源301からの光はレンズ304を介してミラー306に照射され、ミラー306を駆動していないところに入射した光は、投影用レンズ302へ入射する。一方ヒーターに電圧印加して振動板を変位させミラー306を変形させているところは凹面ミラーとなるので光は発散し投影用レンズ302にほとんど入射しない。投影用レンズ302に入射した光はスクリーン(図示しない)などに投影される。この構造を図11のように2次元に配列し、それぞれのミラー306を独立に駆動することによって、スクリーンに画像を表示できる。図では例として4×4の配列を示したがもっと多数配列することも可能でありこの限りではない。
本発明の構成は液滴吐出ヘッド、マイクロポンプ、光学変調デバイスを例としてあげたが、これ以外の光学デバイス、マイクロアクチュエータなどにも適用可能である。
また上記実施例中に記載した膜厚等の数値や材料はこれに限らないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 液室基板、2 ノズル基板、3 保護基板、4 隔壁、5 シリコン酸化膜、6 シリコン活性層、7 シリコン酸化膜、8 下電極、9 第1圧電膜、10 中間電極、11 第2圧電膜、12 上電極、14 吐出室、15 流体抵抗、17 共通液室、18 共通液室、20 ノズル孔、22 圧電素子保護空間、24 インク供給孔、40 記録紙、61 インクジェットヘッド、62 インクタンク、81 記録装置本体、82 印字機構部、83 用紙、84 給紙カセット、85 トレイ、86 排紙トレイ、91 主ガイドロッド、92 従ガイドロッド、93 キャリッジ、94 記録ヘッド、95 インクカートリッジ、97 主走査モータ、98 駆動プーリ、99 従動プーリ、100 タイミングベルト、101 給紙ローラ、102 フリクションパッド、103 ガイド部材、104 搬送ローラ、105 搬送コロ、106 先端コロ、107 副走査モータ、109 部材、111 搬送コロ、112 拍車、113 排紙ローラ、114 拍車、115 ガイド部材、117 回復装置、200 流路、301 光源、302 投影用レンズ、304 レンズ、306 ミラー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2008−78669公報
【特許文献2】特許第4078629号
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータ、これを利用した液滴吐出ヘッド、インクカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録時の騒音が極めて小さいこと、高速印字が可能であること、インクの自由度が高く安価な普通紙を使用できることなど多くの利点を有する。この中でも記録が必要な時にのみインク液滴を吐出する、いわゆるインク・オン・デマンド方式が、記録に不要なインク液滴の回収を必要としないため、現在主流となってきている。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとしては、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室(加圧液室、圧力室、インク流路等とも称される)と、吐出室内のインクを加圧する圧力を発生する圧力発生手段(アクチュエータ)とを備えて、圧力発生手段で発生した圧力で吐出室内インクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させる。
このような液滴吐出ヘッドに用いる圧力発生手段としては、圧電素子などの電気機械変換素子を用いて吐出室の壁面を形成している振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型のもの、吐出内に配設した発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰でバブルを発生させてインク滴を吐出させるバブル型(サーマル型)のものなどがある。ピエゾ型のものにはD33方向の変形を利用した縦振動型、D31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型、更には剪断変形を利用したシェアモード型等がある。その中で近年、半導体プロセスやマイクロマシニング技術の進歩により、パターニング加工技術が確立されていて、かつ、コストの安いSi基板に加圧室及び圧電素子を直接形成するアクチュエータ構成が考案されている。
【0003】
しかし、圧電素子を用いたベンドモード型のアクチュエータは振動板上に直接アクチュエータを形成する必要があり、このため圧電素子の性能が十分ではなく安定した膜の形成や低電圧化及び効率向上を目的とした構造の工夫が必須となっている。
かかる問題について、特許文献1に開示されている製造方法では、2回に分けて圧電膜を成膜する製法が開示されている。
従来製法では圧電体膜の所定の配向度を安定して再現性良く得ることが困難であるという問題があり、このような圧電体素子は、安定した高い圧電特性を得ることが難しく、インクジェット式記録ヘッドないしはプリンタの印字性能を十分に得られない要因となっていたが、特許文献1におけるように、振動板膜上に成膜した下部電極を所定形状にパターニングした後に、当該下部電極上に圧電体膜を成膜する場合には、圧電体膜の所定の配向度を安定して再現性よく得ることできる。
しかしながら、特許文献1には駆動電圧の低電圧化や効率向上の為の方法が記載されていない。
【0004】
特許文献2には、下部電極上に設けられた圧電体薄膜と、圧電体薄膜上に設けられた上部電極と、を備える圧電体薄膜素子であって、前記圧電体薄膜は、膜厚方向の所定位置より上部電極側における膜厚方向の電気抵抗率に対し、前記所定位置より下部電極側における膜厚方向の電気抵抗率の方が高い圧電体薄膜素子の構成が開示されている。
かかる圧電体薄膜の形成工程において、金属有機化合物のゾルを塗布した後に焼成する成膜工程を複数回行って複数の層からなる圧電体薄膜を形成する工程を用い、複数の層のうち下部電極側の層の成膜と、上部電極側の層の成膜とにおいて、ドーパントの量が互いに異なるゾルを塗布することで膜厚方向の膜の抵抗率が異なる膜を形成している。抵抗の異なる多層膜とすることで膜厚方向にかかる電界を異ならせ、変形量に合せて電界が異なる構成になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の構成では、低電圧が可能としているがその差は僅かであり、素子としての機能向上や効率向上は不十分なものとなっている。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、特に振動板に直接電極及び圧電材を成膜して圧電素子を形成し、圧電素子の横振動モードによる縮み変形を利用して振動板を撓ませる構成のアクチュエータにおいて、圧電素子が上部電極及び下部電極のほかに中間電極を有し、且つ中間電極が複数の膜から形成されている構成とすることで、電極間にかかる電圧を分けることで低電圧化を可能としたアクチュエータ機構及びこれを用いた液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、振動板と、該振動板の一面に設けた振動板側電極に密接して設けられて圧電変位して前記振動板を変位変形させる圧電素子と、を備えたアクチュエータにおいて、前記圧電素子は、圧電素子側電極及び前記振動板側電極間に複数の圧電膜と、各圧電膜と交互に積層された隣り合う複数の層からなる中間電極と、備え、各圧電膜は、前記中間電極を構成する各層と、前記振動板側電極又は圧電素子側電極との間に電位を印加されることで変位することを特徴とする。
また、請求項2の発明は、前記中間電極は、複合部材を拡散接合により接合した多層膜である請求項1記載のアクチュエータを特徴とする。
また、請求項3の発明は、前記複合部材が低融点金属を含む請求項2に記載のアクチュエータを特徴とする。
【0007】
また、請求項4の発明は、液滴を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室を形成した隔壁基板と、請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータと、備え、前記アクチュエータの前記振動板は、前記吐出室の少なくとも一方の壁面を構成し、前記アクチュエータの圧電素子が圧電変位して前記振動板を変位変形させることにより、前記吐出室内の液滴を前記ノズル孔から吐出する液滴吐出ヘッドを特徴とする
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の液滴吐出ヘッドを備えたインクカートリッジを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えている画像形成装置を特徴とする。
【0008】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記振動板の変形により生じた力によって液体を輸送するマイクロポンプを特徴とする。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記振動板の変形によりミラーを変形させて光の反射方向を変化させる光変調デバイスを特徴とする。
また、請求項9の発明は、第1のシリコン基板に、振動板材料と、振動板側の電極となる第1の電極材料と、第1の圧電材層と、第1の部分電極と、インサート材と、を順に形成し、第2のシリコン基板に、第2の電極材料と、第2の圧電材層と、第2の部分電極と、を順に形成し、前記第1のシリコン基板と、前記第2のシリコン基板を対向させて、加熱及び加圧を行うことにより前記インサート材に拡散反応を生じさせ、前記第1の部分電極及び第2の部分電極を結合させて、前記第1の圧電材層及び前記第2の圧電材層との間に、2層からなる中間電極を形成し、前記第2のシリコン基板をエッチングにより除去し、前記第1の圧電材層、前記第2の圧電材層、前記中間電極、及び前記第2の電極材料にエッチングによってレジストパターンを形成するアクチュエータの製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアクチュエータを用いた液滴吐出ヘッドでは振動板の一部を成す下電極と吐出室に対応する領域に圧電材層と中間電極を有し、更に圧電材層及び上電極を積層した構成とし、その中間電極が複数の層からなるようにして電極間にかかる電圧を分けるように構成したことにより低電圧化を可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のアクチュエータを用いた液滴吐出ヘッドの分解斜視図。
【図2】本発明の液滴吐出ヘッドの組み立てられた装置全体の断面図。
【図3】本発明の液滴吐出ヘッドの透過平面図。
【図4】図1、3のX−X線における断面工程図。
【図5】図1、3のX−X線における断面工程図。
【図6】本発明の液滴吐出ヘッドを用いたインクカートリッジを示す図。
【図7】本発明の液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置を示す図。
【図8】本発明のインクジェットヘッドを用いたインクジェット記録装置を示す図。
【図9】本発明のアクチュエータを用いたマイクロポンプの構成を示す図。
【図10】本発明の液滴吐出ヘッドを光学デバイスに応用した例を示す図(その1)。
【図11】本発明の液滴吐出ヘッドを光学デバイスに応用した例を示す図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施例]
図1は、本発明の液滴吐出ヘッドの分解斜視図であり、一部を断面図で示してある。本実施例はインク液滴を基板の面部に設けたノズル孔から吐出させるサイドシューター方式の例を示すもので図示している。
図2は組み立てられた全体装置の断面図を示すものであり、図1に示した断面X−Xに対応する断面図で、便宜上2つの吐出室のみ示してある。図3は透過平面図である。
図1−3を参照して、本発明の液滴吐出ヘッドの構造を詳細に説明する。
【0012】
本発明の液滴吐出ヘッドは、ニッケル高速電鋳法を用いて厚さ20ミクロンに形成したニッケル基板であり、インクを吐出するためのノズル孔20を有するノズル基板2と、振動板A、圧電素子B、シリコン基板Cからなる液室基板1と、圧電素子Bと当接し、その保護及び変位を妨げない為の圧電素子保護空間22を配した保護基板3、の3枚の基板を重ねた積層構造となっている。
また、液室基板1を構成するシリコン基板Cには、シリコンを隔壁4を残してエッチングすることで、吐出室14が形成されている。シリコン基板Cは、ノズル基板2と当接し、吐出室14は、ノズル基板2のノズル孔20と連通する。
また、液室基板1の、ノズル基板2とは逆側の面には、シリコン基板C上に積層膜により振動板Aが形成されており、振動板Aは、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いて、ノズル基板側からシリコン酸化膜5、シリコン活性層6、シリコン酸化膜7、及び圧電素子Bの下電極(振動板側電極)となる白金膜8が多層に積層されている。
また、圧電素子Bは、図2に示すように、パターニングされた第1圧電材層(圧電膜)9及び中間電極10、第2圧電材層(圧電膜)11、及び上電極(圧電素子側電極)12からなる多層構造膜であり、第1圧電材層9が、白金膜8に当接する構成となっている。
振動板Aの白金膜電極8、圧電素子Bの中間電極10、上電極12は外部配線へ接続し電圧を供給することでベンドモードの圧電アクチュエータとして機能し、上記隔壁4に対向する領域の多層膜は構造壁及び保護基板3との接合面として機能する。
なお、図1に示すように、保護基板3は、外部装置からインクを供給するためのインク供給孔24を備え、液室基板1は、共通液室18及び流体抵抗15を備えている。
【0013】
上記のように構成された液滴吐出ヘッドの動作を説明する。
まず構造完成後に圧電材(圧電アクチュエータ)の分極処理(ポーリング)を行なう。上電極12及び中間電極10を短絡させ下電極8との間に10Vから30V迄電圧を徐々に上昇させ約10分間印加する。
更に上電極12と中間電極10及び下電極8を短絡させた間に同様に電圧を印加する。これにより第1圧電膜9及び第2圧電膜11の分極方向を揃えることができる。このように前処理を行なった液滴吐出ヘッドに対しインク充填を行なう。
インク供給孔24から共通液室18及び流体抵抗15を経由して各吐出室14内にインクが供給される。吐出室14がインクにより満たされた状態で下電極8及び中間電極10間と中間電極10及び上電極12間に同時に20Vのパルス電位を加える。これにより第1及び第2圧電材9、11が横振動モードで変形(縮み)し、圧電素子Bと密着している振動板A全体が吐出室14側に凸形状に変形する。これにより吐出室14の体積が減少し吐出室14内の圧力が急激に上昇し、ノズル孔20よりインク液滴21を記録紙40に向けて吐出する。パルス電圧を連続的に印加し繰り返すことによりインクを連続的に吐出することが出来る。
【0014】
次に、かかる液滴吐出ヘッドの製作方法、構成など実施例をあげて詳細に説明する。
図4、5は図1、3におけるX−X線における断面工程図である。
本発明においてはシリコン基板Cに振動板材料及び圧電素子材料を成膜していくことでアクチュエータを作成していく。
図4(a)に示すような、厚み250umの<100>シリコン基板Cの表面に絶縁膜となるシリコン酸化膜5が0.1um、次に振動板材料となるシリコン活性層6が0.5um次にシリコン酸化膜7が0.3um形成されたSOI基板を用いる。
なお、シリコン基板Cの反対面には、シリコン酸化膜5、7とは別に酸化膜aが設けられている。
図4(b)に示すように、シリコン酸化膜7上に、圧電素子Bの下電極8となるTi/Pt層をスパッタ法によりそれぞれ0.05um/0.1um成膜する。更にスパッタ法により第1圧電材層9としてのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)及び中間電極10の一部となるPt(白金)層10−1をそれぞれ1.0um、0.05umずつ形成する。さらに前記Pt層10−1上に、拡散接合を行なう為のインサート材bとして、Cu及び低融点金属であるSn−In合金をそれぞれ0.05um、0.05umづつ成膜する。
なお、別途、図4(b’)に示すように、両面にシリコン酸化膜d、eを0.3um形成した200um厚のシリコン基板Dの一方の面上に前記シリコン基板C上に形成したものと同様にTi/Pt層(0.04um/0.1um)12を成膜し、さらに第2圧電材層11としてスパッタ法によりPZT(1.0um)形成し、かつ中間電極10の一部としてPt/Cu層10−2(それぞれ0.05um、0.05um)を形成したものを準備する。
【0015】
次いで、図4(c)に示すように、上記2枚の基板の圧電層側(インサート材bとPt/Cu層10−2)を対向させ加圧・加熱(150℃)をう。これによりインサート材であるSn‐InとCu間での拡散反応が促され、強固な接合が実現され2枚の基板が接合される。
次に、図4(d)に示すように、張り合わせた200um厚のシリコン基板Dの表面のシリコン酸化膜eをドライエッチング法により除去し、シリコン層Dをアルカリエッチにより剥離し、次工程のためにマスクする。
【0016】
その後、図5(a)に示すように、シリコン基板Cの反対面に同時に形成されていたシリコン酸化膜aをリソエッチ法によりパターニングする。
そして、BHFにより酸化膜a(0.3um)を除去する。残った部分をマスクする。
その後、リソ法によりレジストパターンを形成し、図4(d)で用意したマスクを用いて上電極12、第2圧電材11、をドライエッチング法によりエッチングする。さらにリソ法によりレジストパターンを形成し中間電極10、第1圧電材9、をドライエッチング法によりエッチングする。図示しないがその後通常のAu成膜、リソエッチ、保護膜形成の繰り返しによりAu配線層を中間電極10、上電極12にたいして形成する。
更に、図5(b)に示すように、この酸化膜aをマスクにシリコン基板CをICPドライエッチングによりエッチングし隔壁4、吐出室14、流体抵抗部15及び共通液室17となる凹部を形成する。
その後、図5(c)に示すように、スルファミン酸浴で高速電鋳法により製作したノズル基板2を隔壁4側に接着する。
最後に、図5(d)に示すように、別途シリコン基板にリソエッチ法で凹部22を形成してある保護基板3を製作しておき、基板1の圧電素子面に接着する。
【0017】
保護基板3は<110>シリコン基板をTMAH、KOHなどのアルカリエッチング液を用いたウェットエッチングにより加工したものでも良いし、樹脂モールドやメタルインジェクションモールドなどの成型部品で代用しても構わない。この後、図示していないが圧電素子Bの各電極を駆動回路に接続することで本発明の液滴吐出ヘッドが完成する。
本発明の液滴吐種ヘッドにおいては、2層の薄膜PZT(第1圧電材層9、第2圧電材層11)がそれぞれ中間電極10と交互に積層された構造になっている。
薄膜のPZTを形成する方法としては、スパッタ法、Sol−Gel法、AD法等があるが成膜するPZT膜の配向性は下地材の結晶方位により影響を受ける。このため単純に積層して多層膜を形成した場合、1層目と、2層目で形成された薄膜PZTの配向性が異なり、圧電定数や電気機械結合係数が低下し、また安定した膜質を得ることが困難である。
【0018】
それに対し、本発明においては、1層目、2層目を共にシリコン基板上に形成した熱酸化膜上に形成し、その後PZTのキュリー点以下の温度で接合することで常に安定した膜質の積層PZT膜を得ることが出来る。これにより、駆動電圧を1層の場合と同じ電圧でPZT1層のアクチュエータより大きな変位及び力を発揮できるアクチュエータが形成できる。これにより駆動回路系を低電圧のものが使えるため、低コストな液滴吐出ヘッドか形成できる。又液室長も小さくできるため低コスト且つ高速駆動が可能なヘッドとすることが可能である。ここでは低温で行なう拡散接合により2層のPZTアクチュエータを接合する例をあげたが、有機系接着剤や無機系接着材のような絶縁体である接着剤で接着しヘッド外部の配線領域で両者をマージ(接続)しても一体として駆動できるし、2層のPZTアクチュエータをそれぞれ個別に制御し、例えば一方は常に一定周期のパルスで駆動し(微駆動)、他方がインク吐出時に追加駆動するような駆動とするようにしても構わない。
【0019】
本発明で用いることができる液滴吐出ヘッドは、インク流路から吐出口にかけての形状が直線的であるエッジシューター方式であっても良いし、インク流路の向きと吐出口の向きが異なるサイドシューター方式であっても良い。
本発明の液滴吐出ヘッドでは振動板Aの一部を成す下電極8と吐出室14に対応する領域に圧電材層9、11と中間電極10を有し、更に圧電材層及び上電極12を積層した構成であり、その中間電極10が複数の層からなることを特徴としている。
このように、中間電極10が複数の膜から形成されている構成として、上下電極8、12間にかかる電圧を分けることで低電圧化を可能となる。
ここで、圧電材層9、11、中間電極10を順次積層して多層膜を形成するのではなく、それぞれ最適な状態で別々に作った圧電素子を接合することで最適な状態の配向性を持った圧電素子を形成できる。
それぞれの圧電素子は最適な条件で処理された場合、成膜されたPZTの結晶配向が(001)/(100)方向に配向したPZT薄膜が得られるが、この(001))/(100)配向が強いほど、圧電定数が大きくなって特性の良い膜になる。
これにより圧電材の特性を低下させることなく多層圧電素子が形成できる為、低電圧駆動が可能で且つ振動板変位量も大きくできるため小さな液室サイズで所望の液滴を吐出できるヘッドを形成できる。またほとんどの工程を半導体製造で用いられている工法で製作できるので、歩留りよく低コストな液滴吐出ヘッドを作ることができる。
【0020】
また、本発明の液滴吐出ヘッドでは、多層圧電素子の中間電極が複合部材からなる多層膜であり、その複合部材が低融点金属を含むことを特徴としている。このようにすることで、低融点金属の融点に近い温度で強固な接合が可能となる。別々に製作した圧電材基板を接合する際に、圧電材のキュリー点より十分に低い温度で且つ強固な接合界面を形成することは、圧電材のD定数を維持し且つ、高い信頼性、耐久性を確保する為にも不可欠である。このため本実施例の構成とすることで、高性能で信頼性の高い液滴吐出ヘッドを作ることができる。
なお、本実施例の説明中、圧電材層は、2層の薄膜PZT(第1圧電材層9、第2圧電材層11)としたが、これらに限定されるものではなく、3層以上としてもよい。
【0021】
[第2の実施例]
図6は、本発明のアクチュエータ(滴吐出ヘッド)を用いたインクカートリッジを示す図である。
このインクカートリッジは、ノズル20等を有する本発明の液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド61と、このインクジェットヘッド61に対してインクを供給するインクタンク62とを一体化したものである。
このようにインクタンク一体型のヘッドの場合、ヘッドの低コスト化、信頼性向上は、ただちにインクカートリッジ全体の低コスト化、信頼性向上につながるので、上述したように低コスト化、高信頼性化、製造不良低減することで、インクカートリッジの歩留まり、信頼性が向上し、ヘッド一体型インクカートリッジの低コスト化を図れる。
【0022】
[第3の実施例]
次に、図7、8は、本発明の液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置を示す図であり、図7は同記録装置の斜視図、図8は同記録装置の機構部の概略断面図である。
このインクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明を実施したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部82等を収納し、装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係るインクジェットヘッドからなるヘッド94を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ93にはヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
【0023】
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定しており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
【0024】
一方、給紙カセット84にセットした用紙83をヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
【0025】
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段でヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0026】
このように、このインクジェット記録装置においては本発明を実施したインクジェットヘッドを搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
なお、本実施例においては、液滴吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドに適用した例で説明したが、インクジェットヘッド以外の液滴吐出ヘッドとして、例えば、液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド(スポッタ)などの他の液滴吐出ヘッドにも適用することができる。
【0027】
[第4の実施例]
次に、図9は、本発明のアクチュエータを用いたマイクロポンプの構成を示す図である。
振動板が長手方向に連続して複数設けられており流路200の中を流体が流れる構造となっている。図では省略しているがPZT及び電極は、第1の実施例に示した液滴吐種ヘッドの説明に記載した積層構造になっている。
振動板を図中右側から順次駆動することによって流路200内の流体は矢印方向へ流れが生じ、流体の輸送が可能となる。本実施例では振動板を複数設けた例を示したが、振動板は一つでも良く、液体流入孔及び流出孔の形状を工夫することで、輸送効率を上げる構成にできる。
本実施例では動作原理を簡単に述べたが、第1の実施例に示した製造方法、構成を適用することで大流量の液体を効率よく送液できる駆動力(輸送力)の高いマイクロポンプとすることが出来る。
本発明の構成は液滴吐出ヘッド、マイクロポンプを例としてあげたが、これ以外の液体輸送デバイスにも応用可能である。
【0028】
[第5の実施例]
図10は、本発明のアクチュエータを光学デバイスに応用した例を示す図である。
図では省略しているがPZT及び電極が第1の実施例で説明した積層構造になっている振動板が複数配列され、振動板はミラー306をかねる。このようにミラー材料が一体成形により振動板面等の必要部位に成膜され、繋ぎ目などが無い信頼性の高いアクチュエータを搭載しているので、信頼性の高い光変調デバイスが実現できる。
このデバイスを応用した例を示す。光源301からの光はレンズ304を介してミラー306に照射され、ミラー306を駆動していないところに入射した光は、投影用レンズ302へ入射する。一方ヒーターに電圧印加して振動板を変位させミラー306を変形させているところは凹面ミラーとなるので光は発散し投影用レンズ302にほとんど入射しない。投影用レンズ302に入射した光はスクリーン(図示しない)などに投影される。この構造を図11のように2次元に配列し、それぞれのミラー306を独立に駆動することによって、スクリーンに画像を表示できる。図では例として4×4の配列を示したがもっと多数配列することも可能でありこの限りではない。
本発明の構成は液滴吐出ヘッド、マイクロポンプ、光学変調デバイスを例としてあげたが、これ以外の光学デバイス、マイクロアクチュエータなどにも適用可能である。
また上記実施例中に記載した膜厚等の数値や材料はこれに限らないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 液室基板、2 ノズル基板、3 保護基板、4 隔壁、5 シリコン酸化膜、6 シリコン活性層、7 シリコン酸化膜、8 下電極、9 第1圧電膜、10 中間電極、11 第2圧電膜、12 上電極、14 吐出室、15 流体抵抗、17 共通液室、18 共通液室、20 ノズル孔、22 圧電素子保護空間、24 インク供給孔、40 記録紙、61 インクジェットヘッド、62 インクタンク、81 記録装置本体、82 印字機構部、83 用紙、84 給紙カセット、85 トレイ、86 排紙トレイ、91 主ガイドロッド、92 従ガイドロッド、93 キャリッジ、94 記録ヘッド、95 インクカートリッジ、97 主走査モータ、98 駆動プーリ、99 従動プーリ、100 タイミングベルト、101 給紙ローラ、102 フリクションパッド、103 ガイド部材、104 搬送ローラ、105 搬送コロ、106 先端コロ、107 副走査モータ、109 部材、111 搬送コロ、112 拍車、113 排紙ローラ、114 拍車、115 ガイド部材、117 回復装置、200 流路、301 光源、302 投影用レンズ、304 レンズ、306 ミラー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2008−78669公報
【特許文献2】特許第4078629号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、該振動板の一面に設けた振動板側電極に密接して設けられて圧電変位して前記振動板を変位変形させる圧電素子と、を備えたアクチュエータにおいて、
前記圧電素子は、圧電素子側電極及び前記振動板側電極間に複数の圧電膜と、各圧電膜と交互に積層された隣り合う複数の層からなる中間電極と、備え、各圧電膜は、前記中間電極を構成する各層と、前記振動板側電極又は圧電素子側電極との間に電位を印加されることで変位することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記中間電極は、複合部材を拡散接合により接合した多層膜であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記複合部材が低融点金属を含むことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
液滴を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室を形成した隔壁基板と、請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータと、備え、
前記アクチュエータの前記振動板は、前記吐出室の少なくとも一方の壁面を構成し、
前記アクチュエータの圧電素子が圧電変位して前記振動板を変位変形させることにより、前記吐出室内の液滴を前記ノズル孔から吐出することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記振動板の変形により生じた力によって液体を輸送することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記振動板の変形によりミラーを変形させて光の反射方向を変化させることを特徴とする光変調デバイス。
【請求項9】
第1のシリコン基板に、振動板材料と、振動板側の電極となる第1の電極材料と、第1の圧電材層と、第1の部分電極と、インサート材と、を順に形成し、
第2のシリコン基板に、第2の電極材料と、第2の圧電材層と、第2の部分電極と、を順に形成し、
前記第1のシリコン基板と、前記第2のシリコン基板を対向させて、加熱及び加圧を行うことにより前記インサート材に拡散反応を生じさせ、前記第1の部分電極及び第2の部分電極を結合させて、前記第1の圧電材層及び前記第2の圧電材層との間に、2層からなる中間電極を形成し、
前記第2のシリコン基板をエッチングにより除去し、
前記第1の圧電材層、前記第2の圧電材層、前記中間電極、及び前記第2の電極材料にエッチングによってレジストパターンを形成することを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【請求項1】
振動板と、該振動板の一面に設けた振動板側電極に密接して設けられて圧電変位して前記振動板を変位変形させる圧電素子と、を備えたアクチュエータにおいて、
前記圧電素子は、圧電素子側電極及び前記振動板側電極間に複数の圧電膜と、各圧電膜と交互に積層された隣り合う複数の層からなる中間電極と、備え、各圧電膜は、前記中間電極を構成する各層と、前記振動板側電極又は圧電素子側電極との間に電位を印加されることで変位することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記中間電極は、複合部材を拡散接合により接合した多層膜であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記複合部材が低融点金属を含むことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
液滴を吐出する複数のノズル孔を有するノズル板と、前記ノズル孔のそれぞれに連通する吐出室を形成した隔壁基板と、請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータと、備え、
前記アクチュエータの前記振動板は、前記吐出室の少なくとも一方の壁面を構成し、
前記アクチュエータの圧電素子が圧電変位して前記振動板を変位変形させることにより、前記吐出室内の液滴を前記ノズル孔から吐出することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記振動板の変形により生じた力によって液体を輸送することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のアクチュエータを備え、前記振動板の変形によりミラーを変形させて光の反射方向を変化させることを特徴とする光変調デバイス。
【請求項9】
第1のシリコン基板に、振動板材料と、振動板側の電極となる第1の電極材料と、第1の圧電材層と、第1の部分電極と、インサート材と、を順に形成し、
第2のシリコン基板に、第2の電極材料と、第2の圧電材層と、第2の部分電極と、を順に形成し、
前記第1のシリコン基板と、前記第2のシリコン基板を対向させて、加熱及び加圧を行うことにより前記インサート材に拡散反応を生じさせ、前記第1の部分電極及び第2の部分電極を結合させて、前記第1の圧電材層及び前記第2の圧電材層との間に、2層からなる中間電極を形成し、
前記第2のシリコン基板をエッチングにより除去し、
前記第1の圧電材層、前記第2の圧電材層、前記中間電極、及び前記第2の電極材料にエッチングによってレジストパターンを形成することを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−165724(P2010−165724A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4650(P2009−4650)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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