説明

アデノシンアンタゴニストの使用

心筋梗塞および心不全を含めた心臓状態を治療するための、選択的アデノシンA3受容体アンタゴニスト、または前記受容体を対象とするRNAiの使用を提供する。場合によっては、アデノシンA2a受容体アゴニストをアデノシンA3受容体アンタゴニストと共に使用することもできる。心不全を治療する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、米国仮出願第60/858,267号からの優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、心筋梗塞および心不全を含めた様々な心臓状態を治療するための、選択的アデノシンA3受容体アンタゴニスト、または前記受容体を対象とするRNAiの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
鬱血性心不全(CHF)は、様々な兆候と症状の集まりであり、それらはすべて、心臓が必要に応じて心拍出量を適切に増大させることができないことによって引き起こされる。患者は典型的には息切れ、浮腫および疲労を示す。CHFは、成人人口の3%に影響を与える蔓延する疾患となっている。CHFの死亡率は、5年生存率が30%未満である多くの型の癌より悪い。心筋梗塞(MI)はCHFの主な原因の1つである。左心室(LV)リモデリングはCHFに大きく寄与する。
【0004】
心筋細胞外マトリックス(ECM)の変化が進行性のリモデリングプロセスに寄与することは、現在十分認められている。ECM代謝回転とも呼ばれるECMの合成と分解のバランスは、組織構造の維持を決定する。心臓におけるECM合成の正常速度は非常に低い。MIなどの病的状態では、コラーゲンの合成および沈着は、梗塞心筋だけでなく、非梗塞心筋でも加速される。線維状コラーゲン網およびコラーゲンマトリックス解体の変化がLVリモデリングに寄与することを示唆する証拠が増えている。
【0005】
マトリックス崩壊は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の発現の増大に起因しており、この酵素は、マトリックスタンパク質を分解し、プロテアーゼ阻害剤のファミリーであるメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)の発現を低下させる。MMPは、心筋ECMの分解の原動力である重要な分子である。近年の試験では、心臓においてMMPが心室リモデリングおよび心不全に寄与することが明らかに実証されている。臨床レベルでは、我々のグループおよび他のグループによる試験において、MMPの血中レベルの上昇がMI後の心不全の発症と関係があることが示されている。したがって、MIまたはCHFの患者におけるMMP、特にMMP-9の測定は、TNF-α、アンギオテンシンIIまたはノルエピネフリンのそれと同様の予後測定をもたらす。
【0006】
MMP-9欠損マウスを用いた試験で、MI後のLVリモデリングを予防するための考えられる治療標的としてのMMP-9が明らかにされた。しかし、PREMIER(心筋梗塞初期リモデリングの予防)第II相試験で、PG-116800を用いたMMP活性の非特異的阻害が、LVリモデリングを予防せず、MI後の結果を改善しなかったことが示された。この試験において、MIの24〜72時間後にMMP阻害剤が施された。この試験の否定的な結果は、MMP阻害剤の非特異性によって部分的に説明することができ、さらなる実験研究がLVリモデリングにおけるMMPの関与を理解するために必要であることを示唆する。
【0007】
したがって、神経ホルモンおよび腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などの前炎症性サイトカインと同様に、MMPは、心不全の進行に寄与し得る生物活性分子の他の異なるクラスを構成する。炎症性サイトカインおよびMMPレベルの調節は、心不全を有する患者を治療するための新たな治療パラダイムとなり得ることを示唆する証拠が数多く存在する。
【0008】
多形核白血球(好中球またはPMN)およびマクロファージは、MMPの豊富な供給源である。特に好中球は、梗塞組織に動員される第一波の細胞である。梗塞組織に動員される第二波の炎症細胞は、主に単球/マクロファージからなる。これらの中では、マクロファージがMMP-9分泌の主な寄与因子である。梗塞心筋における単球/マクロファージの動員および活性化は重要なことに、MI後に生じるプロセスに寄与することが示されている。これらの細胞は、細胞表面で発現されるその受容体CCケモカイン受容体-2(CCR2)と結合する、ケモカイン単球走化性タンパク質(MCP)-1の勾配に沿って移動する。
【0009】
マクロファージが心臓のリモデリングプロセスにおいて重要な役割を果たすことが、最近になってようやく認められている。これは、MCP-1の発現およびマクロファージによる心筋の浸潤は、MI後心臓ならびに心不全状態のヒトおよび動物心臓で増大するという事実によって示される。MCP-1が心筋組織中へのマクロファージの動員を仲介していることは知られている。加えて、トランスジェニックによるMCP-1の心臓過剰発現は、心臓リモデリングおよび心不全をもたらす。しかし他方では、MCP-1シグナル伝達の阻害は、MIのネズミモデルにおいて進行性の心臓機能障害を軽減することが示されている。
【0010】
心臓血管系の細胞は、ストレスおよび障害の状態において、プリンヌクレオシドであるアデノシン(ado)を生成する。アデノシンは、心筋虚血の状況では心臓保護作用があると長年考えられている。今日まで、4つのアデノシン受容体サブタイプ、A1、A2a、A2bおよびA3が特徴付けされている。4つすべてのサブタイプは、心臓血管系内で発現されるようである。虚血中に放出されるアデノシンは、心筋細胞において有効なプレコンディショニングをもたらす。
【0011】
アデノシンA2a受容体は、大動脈および冠状動脈の血管拡張に関与する。1960年代後半および1970年代に、アデノシンA2アゴニストは抗高血圧薬として臨床試験が行われたが、in vivo選択性が低いために破棄された。血小板において、アデノシンA2アゴニストは、細胞内cAMPレベルを増大させることによって血小板凝集を阻害することが示されている。バイクまたはトレッドミル上で運動できない患者において血管拡張を得ることにより冠状動脈疾患を評価するための、心筋ストレスイメージング用のアデノシンA2アゴニストも開発されている。選択的アデノシンA2アゴニストであるレガデノソン(CVT-3146)は、心筋血流イメージング用に第III相試験において現在評価されている。
【0012】
アデノシンA2aアゴニストは、いくつかの組織において炎症および再かん流障害を軽減することが示されている。アデノシンA2a受容体は、好中球およびマクロファージを含めたほぼすべての免疫細胞中で発現され、この受容体は「炎症のブレーキ」と呼ばれている。実際、アデノシンA2aノックアウトマウスは、この受容体が炎症を制限するのに必要不可欠であることを示す。アデノシンA2a受容体アゴニストは心臓細胞中のTNF-αの生成を阻害することを、我々は以前に示した。アデノシンA2Aアゴニストは、敗血症、炎症性腸疾患および創傷治癒の治療に関して現在評価されている。アデノシンA2a受容体とドーパミンD受容体の間に相互作用があるので、アデノシンA2aアンタゴニストはパーキンソン病において現在評価されている。アデノシンA2b受容体アゴニストは心臓線維芽細胞を阻害し、血管新生を助長することが示されている。
【0013】
アデノシンまたはアデノシン類似体の治療可能性は、動物試験と臨床試験の両方で報告されている。動物では、アデノシンの心臓保護活性が、虚血-再かん流に対する潜在的治療効果の三区分:前治療として、虚血中または再かん流中に見られた。関与する型の受容体間の二分法を最初に仮定し、A1受容体は、主に代謝性変化によって、前治療中および虚血中にアデノシンの心臓保護効果を仲介するとして提案し、A2受容体は、主に好中球活性の阻害によって、再かん流中に有益である。我々の以前のデータは、好中球によるMMP-9放出の阻害によって、虚血後障害中にアデノシンによって与えられる保護におけるA2a受容体の関与を支持する(参照により本明細書に組み込まれている、Ernens et al.「Adenosine inhibits matrix metalloproteinase-9 secretion by neutrophils:implication of A2a receptor and cAMP/PKA/Ca2+pathway」Circ Res.2006;99(6):590〜597)。
【0014】
アデノシンA3受容体の活性化は、好中球依存的および好中球非依存的機構によって、虚血前または最中に心臓保護的であることが分かっている。
【0015】
数個の臨床試験が、MIの状況でのアデノシン(ado)の治療可能性を試験している。リドカインまたは一次血管形成術と組み合わせて加えたとき、アデノシンはMIを有する患者の心臓機能を改善した。しかし、これらの試験は、有益な臨床結果を報告しているが、少数の患者において実施された。より多くのサンプルサイズ(それぞれ236人および2,118人の患者)で実施された、AMISTADの第I相および第II相試験は、梗塞後初期に加えたとき、再かん流治療の補助としてのアデノシンにより梗塞サイズの減少を示した。AMISTAD-II試験の事後分析は、梗塞の3時間以内に加えたときのみ、アデノシンが死亡率を低下させたことを明らかにした。注目すべきことに、この試験では、MI後48時間を超えてアデノシンが加えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国仮出願第60/858,267号
【特許文献2】US6,211,165B1
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Ernens et al.「Adenosine inhibits matrix metalloproteinase-9 secretion by neutrophils:implication of A2a receptor and cAMP/PKA/Ca2+pathway」Circ Res.2006;99(6):590〜597
【非特許文献2】Eur J Pharmacol.2007 Jun 14;564(1〜3):219〜25.Pharmacological characterisation and inhibitory effects of(2R,3R,4S,5R)-2-(6-amino-2-{[(1S)-2-hydroxy-1-(phenylmethyl)ethyl]amino}-9H-purin-9-yl)-5-(2-ethyl-2H-tetrazol-5-yl)tetrahydro-3,4-furandiol、a novel ligand that demonstrates both adenosine A(2A)receptor agonist and adenosine A(3)receptor antagonist activity.、Bevan N、Butchers PR、Cousins R、Coates J、Edgar EV、Morrison V、Sheehan MJ、Reeves J、Wilson DJ
【非特許文献3】Sambrook et al.、Molecular Cloning:A laboratory manual(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、USA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、特に生存率を改善すること、およびしばしば致命的な心臓状態または疾患である悪化した心不全の発症を減らすことを視野に入れて、鬱血性心不全に対するさらなる治療に関する必要性が当技術分野において存在する。
【0019】
アデノシンまたはアデノシン受容体アゴニストの使用に関して多くの従来技術が存在する。例えば我々は、Ernens et alにおいて、アデノシンはA2a受容体を介して好中球中でMMP-9の分泌を低下させることを示した。したがって、当技術分野は、すべてではないが多くの心不全の例におけるアデノシンの使用を指摘する。
【0020】
しかし驚くべきことに、我々は、関与する細胞型および受容体の型に応じて、アデノシンはMMP-9の放出を刺激し、阻害することができることをここで示す。実際、従来技術とは対照的に、我々独自の発見を含めて、我々は、アデノシンは実際アデノシンA3受容体を介した単球/マクロファージによるMMP-9の分泌を誘導することを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、第1の態様では、本発明は、鬱血性心不全と関係がある疾患または状態の治療または予防における、アデノシンA3受容体アンタゴニストの使用を提供する。
【0022】
アデノシンA3受容体アンタゴニストを使用して、心筋梗塞または(急性心不全または慢性心不全を含めた)心不全を有する患者を治療することが好ましい。アデノシンA3受容体アンタゴニストを使用することにより、心筋梗塞または心不全を有する患者のマトリックスメタロプロテイナーゼのレベルを低下させることも好ましい。
【0023】
アデノシンA3受容体アンタゴニストを使用して、心筋梗塞後の心室リモデリングおよび心不全の発生を予防することが好ましい。特に、これは心筋の不適応なリモデリングを予防または減少させるためである。これは線維症、アポトーシスおよび壊死を含み得る。
【0024】
アデノシンA3受容体アンタゴニストは、ポリペプチドもしくはタンパク質、またはそれをコードするポリヌクレオチドであることが好ましく、ポリヌクレオチドは、適切なプロモーターがこのポリヌクレオチドに作動可能に連結されているベクターの形で投与することが好ましい。
【0025】
アデノシンA3受容体アンタゴニストはヌクレオシドであることが好ましいが、非ヌクレオシド阻害剤であってもよい。アデノシンA3受容体アンタゴニストの適切な例はMRS1067、MRS1097、L-249313、L-268605、CGS15943、KF26777である。特に好ましいのはMRS1220、MRS1523、PSB10である。MRS1220、MRS1523はSigma-Aldrichから購入することができる。PSB10はTocrisから購入することができる。
【0026】
エフェクター機能を有するさらなる薬剤活性成分またはポリペプチドまたはポリヌクレオチドを、アデノシンA3受容体アンタゴニストと一緒に投与することができることも好ましい。これらはさらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニストであることが好ましく、アデノシンA2a受容体アゴニストであることが最も好ましい。
【0027】
アデノシンA3受容体アンタゴニストは、さらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニスト活性も有することが好ましい。特に好ましいのは、A3受容体アンタゴニスト活性とA2a受容体アゴニスト活性の両方を有する分子、例えば(2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-2-{[(1S)-2-ヒドロキシ-1-(フェニルメチル)エチル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロ-3,4-フランジオールである。
【0028】
アデノシンA3受容体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に示す配列であることが好ましいが、例えばポリA尾部を含んでいても含まなくてもよい。タンパク質配列は配列番号2に示す配列であることが好ましいが、翻訳後修飾、特にN末端Metの除去が想定される。
【0029】
アデノシンA3受容体アンタゴニストは、血液中または心臓組織、特に心臓および心臓周辺、および特に任意の梗塞または虚血組織の周辺のMMPのレベルを低下させることが可能であることが好ましい。このレベルは、アデノシンA3受容体の発現を低下させること、または好ましくは非永続的な競合形式でそれと結合することにより、アデノシンまたはアデノシン類似体またはアデノシンアゴニストが結合する能力を一時的に阻害し、細胞からのMMPの放出、または好ましくは分泌を開始するようにアデノシンA3受容体を刺激することにより、低下させることが可能である。したがって、アデノシンA3受容体アンタゴニストは、細胞からのMMPの分泌を低下させることが可能であることが好ましいと想定される。細胞は好ましくは単球、最も好ましくはマクロファージであるが、特定の実施形態では、アデノシンA3受容体を有する他の細胞も想定される。
【0030】
A3アンタゴニストは選択的であることが好ましい。アンタゴニストは、A3受容体に特異的であることがさらにより好ましい。化合物または分子は、化合物がアデノシンより高い親和性で、アデノシンより好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍高い親和性でA3受容体と結合する場合、特異的または少なくとも選択的なA3受容体部位のアンタゴニストであると考えることができる。
【0031】
A3アンタゴニストの影響は可逆的であり、不可逆的ではないことが好ましい。アンタゴニストが不可逆的であってもよいが、患者におけるA3受容体の永続的な阻害、したがってMMP(特にMMP-9)レベルの永続的な阻害をもたらし得るので、臨床状況において好ましくない。
【0032】
前述のアゴニストまたはアンタゴニストは、追加的に提供される任意のさらなるアゴニストまたはアンタゴニストも指し、それらは選択的または特異的であってもよく、好ましくは可逆的であってもよい。
【0033】
MMPは最も好ましくはMMP-9であるが、他のMMPが代替実施形態において想定される。MMP-9は配列番号3に示すタンパク質配列を好ましくは有するが、翻訳後修飾、特にN末端Metの除去が想定される。
【0034】
本発明は、アデノシンA3受容体(A3AR)を標的とする、またはそのレベルまたは発現を低下させることが可能である、アンチセンスポリヌクレオチド、特にアンチセンスRNA、例えば、マイクロRNA(miRまたはmiRNA)または低分子干渉RNA(siRNA)を含めた干渉RNA(RNAi)、および遺伝子を抑制する他の形態の使用も提供する。A3ARアンタゴニストまたはアンチセンスポリヌクレオチドを使用するとき、その効果はアデノシンA3受容体によって仲介されるアデノシン刺激応答を低下させることである。
【0035】
アンチセンスポリヌクレオチドは、アデノシンA3受容体の配列を標的とすることが好ましい。この受容体の配列は、配列番号1に示す配列であることが好ましい。マイクロRNAの場合、アンチセンスポリヌクレオチドはアデノシンA3受容体の3'UTRを標的とすることが好ましい。アンチセンスポリヌクレオチドの好ましい標的配列は配列番号6、7または8のいずれかで示され、配列番号8は、A3受容体の配列であるので特に好ましい。
【0036】
アンチセンスポリヌクレオチドのin vivo投与、導入または発現の適切な方法は当技術分野でよく知られているが、アンチセンスポリヌクレオチドの直接投与または適切なベクターによるアンチセンスポリヌクレオチドの発現を含むことができる。
【0037】
前述のように、投与は経口的、経粘膜的、経皮的、例えば適切なパッチまたは遺伝子銃による、皮下、筋肉内または静脈内投与であってよい。
【0038】
アデノシンA3受容体アンタゴニストを患者に投与するステップを含む、心不全または心不全と関係がある状態を有する患者を治療する方法も提供する。好ましくは、アデノシンA2a受容体アゴニストを同時または後に投与することもできるが、アデノシンA3受容体アンタゴニストの前が好ましい。アデノシンA2a受容体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3に示す配列であることが好ましいが、例えばポリA尾部を含むことができるか、またはできない。タンパク質配列は配列番号4で提供される配列であることが好ましいが、翻訳後修飾、特にN末端Metの除去は想定される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】条件付き培地におけるELISAまたは細胞における定量PCRによって評価して、アデノシンは初代ヒトマクロファージによるMMP-9生成を増大させることを示す図である。
【図1B】図1A参照。
【図2A】アデノシンがTHP-1由来マクロファージによるMMP-9生成を用量および時間依存的に増大させることを示す図である。
【図2B】図2A参照。
【図2C】図2A参照。
【図2D】図2A参照。
【図3A】アデノシンがそのA3受容体を介したマクロファージによるMMP-9生成を増大させることを示す図である。
【図3B】図3A参照。
【図3C】図3A参照。
【図4】アデノシン仲介のMMP-9生成の増大は、ゼラチンマトリックスを介した単球の移動を容易にすることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
A3の適度な過剰発現があるマウスは虚血性障害から部分的に保護され、一方A3受容体を高度に過剰発現したマウスは拡張型心筋症を発症したので、A3仲介の保護は用量依存的であるようである。これは、A3受容体の刺激はMMP-9の分泌およびマクロファージの移動と関係があるという、我々の観察と一致する。
【0041】
アデノシンは好中球によるMMP-9放出を妨げ、一方でそれはマクロファージによるMM-9分泌を高めるという事実には、いくつかの説明および生物学的意義がある。好中球はMI後(2日未満の)初期に梗塞領域に動員され、一方マクロファージはMI後2〜4日間病巣を侵襲する。これら2つの細胞型によるMMP-9生成を担う機構は根本的に異なる。
【0042】
好中球は脱顆粒により多量のMMP-9を迅速に放出する。対照的に、マクロファージによるMMP-9分泌は8時間以前には検出されず、これはde novoタンパク質合成と一致する。好中球では、アデノシンはA2a受容体を介してシグナル伝達してMMP-9分泌が低下し、この機構には迅速なCa動員を伴う迅速なシグナル伝達カスケードが関与していたことを、我々は以前に実証した(Ernens et al、上記を参照)。対照的に、マクロファージによるMMP-9生成の増大はA3受容体の活性化によって仲介され、転写効果と関係があることを、我々はここで示す。したがって、炎症細胞によるMMP-9生成に対するアデノシンの影響は、活性化されるアデノシン受容体の型およびシグナル伝達経路に非常に依存する。
【0043】
梗塞および虚血を含めた様々な心臓の問題の治療における、アデノシンの使用はよく知られている。実際、本発明者らは、アデノシンがA2a受容体を介した好中球によるMMP-9の放出を低下させることを示す、2006年8月の論文(Ernens et al)を公開している。しかし本発明者らは、アデノシンはA3受容体を介した単球/マクロファージによるMMP-9の分泌も誘導することを現在見出している。言い換えれば、A2a受容体を有する好中球が存在するとき、アデノシンはMMP-9のレベルを低下させる(例えば、梗塞後非常に初期の段階で)。しかし、しばらくの後、単球およびマクロファージが梗塞組織に存在し、これらの細胞はA3受容体を有する。A3受容体の存在下において、アデノシンは、MMP-9のレベルを増大させることが現在示されている。したがって、アデノシンの投与は、異なる受容体の存在下においてMMP-9のレベルに対して異なる影響がある。
【0044】
我々は、アデノシンは梗塞およびリモデリングの状況において必ずしも有益ではないことを実証している。これは、アデノシンは報復(retaliatory)代謝産物であり、アデノシンはストレスの期間中保護的であるという、現在のパラダイムと完全に相反する。MMP-9に対するアデノシンの影響は、好中球中ではアデノシンがA2a受容体によって(阻害)、およびマクロファージ中ではアデノシンA3受容体によって仲介された(刺激)。今までのところ、アデノシンA2a受容体は、多形核白血球の脱顆粒、酸素フリーラジカルおよびTNF-αの生成を含めたいくつかの免疫過程を阻害することが知られている。したがって、アデノシンは、炎症中の臓器障害も制限することができる生理的抑制として考えられている。
【0045】
我々の結果は、アデノシンA3受容体は心筋リモデリングをもたらす可能性があることを初めて示す。したがって、心筋障害と関係がある悪循環をおそらく表す、アデノシンとストレス、MMPと前炎症性サイトカインの間の密接な関係が存在する。
【0046】
したがって我々は、A3受容体の阻害によって、心筋梗塞を含めた鬱血性心不全と関係がある状態または疾患を予防および治療する、完全に新規な手法を提案する。したがってアデノシンA3アンタゴニストは、特に単球およびマクロファージによるMMPの放出を阻害するために、急性MIおよび心不全を有する患者において有用である可能性がある。さらに、マクロファージによるMMP-9の放出は、急性心筋梗塞および心不全における左心室リモデリングの原動力であるので、アデノシンA3アンタゴニストは左心室リモデリングを予防するのに有用であり得ると、我々は結論付ける。
【0047】
これは、当技術分野で以前に実施された手法とはまったく逆である。例えば、Liang et al.(US6,211,165B1)は、本発明の実施形態によるアゴニストおよびアンタゴニストの反対の配列である、アデノシンA2a受容体アンタゴニストおよびアデノシンA3受容体アゴニストを開示する。
【0048】
他の治療と組み合わせて、本発明を使用することができることも想定される。これらは、その状態を治療するための患者への投与に適した、他の薬剤または活性成分であってよい。しかし、さらなる治療はさらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニストの使用を含むか、またはそれに基づくことが特に好ましい。例えば、アデノシンA3アンタゴニストは、アデノシンA2aアゴニストと共に、好中球(A2a)およびマクロファージ(A3)によるMMPの放出を阻害するために、急性MIおよび心不全を有する患者において有用である可能性もある。同様に、アデノシンA3アンタゴニストとアデノシンA2aアゴニストの組合せは、左心室リモデリングを予防するのに有用であり得る。これは現在の信念とはまったく逆である。
【0049】
したがって、アデノシンアゴニストまたはアデノシン類似体によるアデノシンA2a受容体の刺激が特に好ましい。A2a受容体に適したアデノシンアゴニストまたはアデノシン類似体は、当技術分野でよく知られている。これらは、A2aアゴニスト、レガデノソン(CVT-3146)、CGS21680、APECおよび2HE-NECAを含むことが好ましい。アデノシンを使用することもできる。
【0050】
好ましくはないが、適切なA3アゴニストは、追加的に、または後の投与に必要とされる場合、A3アゴニストはIB-MECAである。さらに好ましくはないが、適切なA2aアンタゴニストはSCH58261である。
【0051】
本発明のアデノシンA3受容体アンタゴニストと組み合わせた、アデノシンA2a受容体アゴニストの使用が特に好ましいが、他のアデノシン受容体アゴニストまたはアンタゴニストを使用することもできることは想定される。
【0052】
したがって、本発明のアデノシンA3受容体アンタゴニストと共に、さらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニストを使用することが好ましい。これは、アデノシンそのものまたはその類似体であり得る、さらなるアデノシンアゴニストであることが好ましい。代替的に、さらなるアデノシンアゴニストを使用することができる。
【0053】
さらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニストは異なるアデノシン受容体を標的とすることができ、またはそれが誘導する応答の強度およびタイミングの点で異なる活性を有する可能性がある。例えば、さらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニストは血液から異なる速度で除去することができ、または患者に有益であり得る追加的な治療効果を有する可能性もある。受容体は好ましくはA1受容体、より好ましくはA2受容体であり、その中でA2a受容体が特に好ましい。それが他の受容体よりアデノシンに対して低い親和性を有するので、A2b受容体はあまり好ましくないが、アデノシンを使用しない場合は標的とすることができる。A3受容体を他のA3アンタゴニストの標的とすることもできる。
【0054】
適切なアデノシン受容体アゴニストまたはアンタゴニストは当技術分野で知られており、いくつかの例を本明細書に記載する。
【0055】
さらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニストによるこのような刺激は、アデノシンA3受容体の阻害のために同時発生または併用であってよく、または異なる時期であってよい。例えば、アデノシンA3受容体アンタゴニストを最初に、次にさらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニストを投与することができる。
【0056】
しかし、アデノシンA2a受容体アゴニストは任意の梗塞の8時間以内に投与することが好ましい。それは、その時間が経過するころまでにA3受容体を有する単球およびマクロファージが、梗塞組織に到着するとは一般に考えられないからであるが、この時間は様々であり、梗塞時間の正確な推定を必要とする。
【0057】
これは、アデノシンA2a受容体アゴニストを、アデノシンA3受容体アンタゴニストの前に投与することを意味し得る。代替的に、それらはほぼ同時に投与することができる。
【0058】
アデノシンA3受容体アンタゴニストの活性および任意のさらなるアゴニストまたはアンタゴニストの活性は、同じ化合物によって与えられることも特に好ましい。代替的に、アデノシンA3受容体アンタゴニストの活性および任意のさらなるアゴニストまたはアンタゴニストの活性は、連結または結合化合物の1つまたは複数の部分がアデノシンA3受容体アンタゴニストの活性を有し、一方他の部分はさらなるアゴニストまたはアンタゴニストの活性を有する、連結または結合化合物によって与えることが可能である。言い換えれば、これは1つに連結した2つの通常別々または異なる分子であってよく、またはこれは単分子によって与えられ得る。
【0059】
後者の好ましい例は、A3受容体アンタゴニストの活性とA2a受容体アゴニストの活性の両方を有する分子である。特に好ましいのは、2007年6月に公開された(Eur J Pharmacol.2007 Jun 14;564(1〜3):219〜25.Pharmacological characterisation and inhibitory effects of(2R,3R,4S,5R)-2-(6-amino-2-{[(1S)-2-hydroxy-1-(phenylmethyl)ethyl]amino}-9H-purin-9-yl)-5-(2-ethyl-2H-tetrazol-5-yl)tetrahydro-3,4-furandiol、a novel ligand that demonstrates both adenosine A(2A)receptor agonist and adenosine A(3)receptor antagonist activity.、Bevan N、Butchers PR、Cousins R、Coates J、Edgar EV、Morrison V、Sheehan MJ、Reeves J、Wilson DJ)、GlaxoSmithKlineからの、(2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-2-{[(1S)-2-ヒドロキシ-1-(フェニルメチル)エチル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロ-3,4-フランジオールである。この論文は、好中球と関係があるこの分子のA2aアゴニストの活性に焦点を当てている。A3アンタゴニストの活性は好酸球からの活性酸素種の生成の阻害に関して言及されているが、好酸球は虚血に対する心臓の生理的応答の一部ではなく、したがって心不全の発症には直接関与しない。
【0060】
A2a受容体とA3受容体の両方のヌクレオチドおよびタンパク質配列は、NCBIアクセッション番号NM_000675(A2a)およびNM_000677(A3)で入手可能である配列であることが好ましい。MMP-9に関するタンパク質配列は、NCBIアクセッション番号NM_004994であることが好ましい。
【0061】
アデノシンA3アンタゴニストについて言及する場合、これは1つのA3アンタゴニスト、それは好ましくは、または少なくとも1つのA3アンタゴニスト(すなわち、2つ以上の異なるA3アンタゴニストの混合物)であってよいことは理解されよう。同じことが、変更すべきところは変更してアデノシンA2aアゴニストに当てはまる。
【0062】
個々の配列に対する言及は、参照配列の妥当な程度の機能を依然として保持しながら、ある程度の配列相同性を有する変異体も含むことが好ましい。ヌクレオチド配列に関しては、これは、必要に応じて、参照配列と少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.5%、および最も好ましくは少なくとも99.9%の配列相同性を有する配列であることが好ましく、これはいくつかのミスマッチ、置換、挿入または欠失が原因であり得る。参照配列がDNAである場合、これは対応するRNA配列を含み、逆も然りである。実際、高ストリンジェント条件、例えば6×SSC下で参照配列と結合することができる配列も好ましい。用語「ストリンジェント条件下でハイブリダイズする」は、2つのオリゴヌクレオチドが、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A laboratory manual(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、USA中に記載されたのと同様の標準的なハイブリダイゼーション条件下で互いにハイブリダイズすることができることを意味する。この目的のために、例えば一般的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件(例えば、60DEGC、0.1×SSC、0.1%SDS)を使用することも可能である。
【0063】
参照配列がポリペプチド配列である場合、変異体配列は、必要に応じて、参照配列と、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.5%、および最も好ましくは少なくとも99.9%の配列相同性を有する。
【0064】
配列相同性を評価するのに適した方法は当技術分野で知られており、BLASTプログラムを含む。
【0065】
治療または予防に対する言及は、患者の臨床結果を改善することとして解釈することができる。鬱血性心不全と「関係がある」状態または疾患の予防および治療に対する言及は、鬱血性心不全を直接引き起こすかまたはそれに寄与する疾患または状態を含むと理解することができる。例えば心筋梗塞、急性冠症候群、虚血性心筋症、非虚血性心筋症、または急性もしくは慢性心不全などの、いくつかの例を本明細書で提供する。
【0066】
本発明は、アデノシンA3受容体アンタゴニストおよび場合によってはさらなるアデノシンアゴニストまたはアデノシンアンタゴニストの投与によって、心筋梗塞または心不全を有する患者を治療する方法も提供する。さらなるアデノシンアゴニストまたはアデノシンアンタゴニストは、アデノシンA2a受容体アゴニストであることが好ましい。
【0067】
さらなる態様では、本発明は心室リモデリングを阻害する方法を提供する。
【0068】
他のさらなる態様では、本発明は、患者の心臓のMMP-9のレベルを減少または低下させるための方法を提供する。関連態様では、本発明は、低いMMP-9のレベルと関係がある心不全を治療または予防するための方法も提供する。低いMMP-9のレベルは、心筋梗塞後のより良い臨床結果を予測する。本発明のこれらの態様は、アデノシンA3受容体アンタゴニストおよびアデノシンA2a受容体アゴニストの投与によって、好中球(A2a受容体の阻害による)とマクロファージ(A3受容体の阻害による)の両方によるMMP-9生成の阻害によって提供することができることが好ましい。
【0069】
アデノシンA3受容体アンタゴニストおよび場合によってはさらなるアデノシンアゴニストまたはアデノシンアンタゴニストを投与するステップを含む、心筋梗塞または急性心不全と関係がある心筋組織の悪化を予防する方法も提供する。さらなるアデノシンアゴニストまたはアデノシンアンタゴニストは、アデノシンA2a受容体アゴニストであることが好ましい。
【0070】
本発明の方法は、例えば心筋梗塞後の患者の既存の治療戦略を改善するための、新たに診断される患者の治療を可能にする。
【0071】
状態は心筋梗塞、急性冠症候群、虚血性心筋症、非虚血性心筋症、急性心不全または鬱血性心不全であることが好ましい。
【0072】
治療に対する言及は、適切な場合予防も包含する。個々の活性成分の使用または投与について言及する場合、これは治療有効量でなければならない。
【0073】
末期心臓疾患と関係がある心筋組織の悪化を予防する方法も提供する。
【0074】
本発明は、心筋組織中のマトリックスメタロプロテイナーゼの生成を低下させる作用物質を投与するステップを含む、鬱血性心不全の症状を示す患者を治療する方法も提供する。好ましくは、症状は急性心不全を示し、心筋組織中のマトリックスメタロプロテイナーゼの生成を低下させる前記作用物質は、治療上有効なA3受容体アンタゴニストおよび場合によってはA2aアゴニストからなる。好ましくは、症状は慢性心不全を示し、心筋組織中のマトリックスメタロプロテイナーゼの生成を低下させる前記作用物質は、治療上有効なA3受容体アンタゴニストおよび場合によってはA2aアゴニストからなる。
【0075】
本明細書に引用するすべての参照文献は、参照により本明細書に組み込まれている。添付の図面を参照しながら、以下の実施例中に、本発明の具体的な実施形態をここに記載するものとする。
【実施例】
【0076】
序論
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、および特にMMP-9は、心筋細胞外マトリックスの分解の原動力である非常に重要な化合物である。近年の試験は、心臓において、MMPは心室リモデリングおよび心不全に寄与することを明らかに実証している。臨床レベルでは、他者によって近年確認された我々のグループの試験は、MMPの上昇した血中レベルは、MI後の心不全の発症と関係があることを示している。好中球およびマクロファージは、少なくとも部分的には多量のMMP-9の生成によって、心筋障害および線維症をもたらす炎症応答において重要な役割を果たす。
【0077】
ヌクレオシドアデノシンの心臓保護性は知られている。心筋梗塞および心不全の状況におけるその潜在的な治療用途は考慮に値する。4つのアデノシン受容体、A1、A2a、A2b、およびA3が特徴付けされている。アデノシンはそのA2a受容体(Ernens et al、上記を参照)を介して好中球によるMMP-9分泌を阻害することを、我々は以前に示している。今回、好中球において得た我々の以前の結果とは非常に対照的に、アデノシンの投与はそのA3受容体を介したマクロファージによるMMP-9生成を増大させることを、我々は発見した。
【0078】
したがって我々は、(マクロファージによるMMP-9生成を阻害するための)A3アンタゴニストを使用して心筋梗塞または心不全を有する患者を治療する、新規な治療戦略を提案する。我々は、(好中球によるMMP-9分泌を阻害するための)A2aアゴニストと(マクロファージによるMMP-9生成を阻害するための)A3アンタゴニストの組合せも提案する。
【0079】
結果
1.アデノシンは初代マクロファージによるMMP-9生成を増大させる
陰性選択によって健康なボランティアから入手したPBMCから単球を単離し、M-CSFによってマクロファージ系統と共に分化させた。ELISA(図1A)および定量PCR(図1B)を使用して、アデノシンを(アデノシンの分解を減らす)アデノシンデアミナーゼ阻害剤EHNAと共に加えた状態で、MMP-9分泌の適度ではあるが有意な増大を我々は検出した。この効果は、マクロファージをLPSによって活性化したとき再現された。ゼラチンザイモグラフィーによって、我々は2つの形のMMP-9:プロ-MMP-9ホモ二量体およびプロ-MMP-9がマクロファージによって生成されたことを観察した。好中球とは対照的に、マクロファージにおいてMMP-9-リポカリン複合体は検出されなかった。さらに、MMP-9およびMMP-2の活性形はザイモグラフィーによって検出されなかった(示さず)。
【0080】
2.アデノシンはTHP-1由来マクロファージによるMMP-9生成を増大させる
アデノシンは初代マクロファージによるMMP-9分泌を一貫して増大させることを実証したので、我々は、単球細胞系THP-1から分化したマクロファージにおいてこの効果を担う機構を調査した。48時間150nMのPMAを用いた分化の前に、細胞は高濃度のAdoおよび10μMのEHNAと共に15分間インキュベートした。アデノシンは濃度依存的にマクロファージによるMMP-9生成を増大させ、100μMのAdoで3倍の増大に達した(図2A下側パネル)。10μMのAdoおよび10μMのEHNAの濃度はさらなる実験で使用した。心不全および敗血症のような状態においてin vivoで見られるAdo濃度がマイクロモル範囲であることを考慮すると、我々の結果は、ここで報告する影響は生物学的に妥当であることを示唆する。
【0081】
3.内因性Adoと外因性Adoの両方がMMP-9分泌を高める
MMP-9生成における内因性および外因性Adoの相対的寄与を特徴付けるために、我々はAdo代謝のいくつかのモジュレーターを使用した。単独で加えると、Ado、Adoデアミナーゼの阻害によって内因性Adoの濃度を高めるEHNA、およびAdo輸送を阻害するDIPは、いずれもMMP-9分泌を誘発した。AdoおよびEHNAの影響は相加的であった。それは、両方の薬剤の組合せがそれぞれの物質単独より多量のMMP-9分泌をもたらしたからである(図2B)。これらのデータは、内因性Adoと外因性Adoの両方がMMP-9分泌を刺激すること、およびそれらの影響は相加的であることを示す。
【0082】
4.アデノシンはMMP-9mRNAの発現を増大させる
高まったMMP-9分泌に関与する機構を調べるために、我々は経時的実験を実施した。MMP-9に対するAdoの影響を再現するために、少なくとも18時間のインキュベーション時間が必要であった(図2C)。定量PCRを使用して、我々は、AdoはTHP-1細胞において2倍を超えるMMP-9のmRNAの発現の増大を誘導し、これは初代マクロファージ中より若干多かったことを観察した(図2D)。全体として、これらの観察結果は、MMP-9の多量かつ迅速な放出を担う好中球において確認した脱顆粒過程とは対照的に、AdoによるMMP-9分泌の増大は転写機構によって生じることを示唆する。
【0083】
5.アデノシンはそのA3受容体を介してMMP-9生成を増大させる
どの型の受容体がMMP-9分泌に対するAdoの影響を仲介するかに焦点を当てるために、我々は薬理学的手法と分子学的手法の両方を使用した。最初に我々は、マクロファージによる4つのAdo受容体のそれぞれの相対的発現を決定した。定量PCRは、A2a型の受容体はマクロファージにおいてAdo受容体の主に存在する形態であったことを示した(図3A)。我々の実験では、A1受容体のmRNAは検出されなかった。アデノシンは2倍を超えるA3およびA2b発現の増大を誘導した。Ado受容体のアゴニストを使用した実験では、EHNAを使用せずに外因性Adoの影響を詳細に試験した。図3Bは、A3特異的アゴニストIB-MECAのみが、Adoと同じ程度でMMP-9分泌を増大させることが可能であったことを示す。最終的には、A2a、A2bおよびA3受容体に特異的なsiRNAを使用するゲノム手法を着手した。すべての実験に関して、我々は、それぞれのsiRNAは他のAdo受容体の発現ではなくその標的受容体の発現を下方制御したことを、定量PCRによって調べた(示さず)。ザイモグラフィーは、A3特異的siRNAのみがMMP-9分泌のAdo仲介型増大を有意に阻害することができたことを明らかにした(図3C)。総合すると、これらの結果は、A3受容体はMMP-9分泌に対するAdoの影響を仲介することを示す。
【0084】
6.アデノシンは単球の遊走能を向上させる
単球/マクロファージの心筋への浸潤は、MI後の心室リモデリングの顕著な特徴である。MMP-9によるECMの分解によって細胞の移動が容易になる。したがって我々は、AdoによるMMP-9分泌の増大が、MCP-1の勾配に沿った単球の移動を改善することができるかどうか試験した。この目的のために、改変型ボイデンチャンバーの上部をゼラチンBでコーティングし、MCP-1は底部区画に加えた。チャンバーの微多孔膜上に接種する前に、単球をAdoで処理した。図4中に示すように、Adoはゼラチン層を介した細胞の移動を高めた。この影響は、合成MMP阻害剤GM6001および内因性MMP-9阻害剤TIMP-1によって阻害された(図4)。総合すると、これらの結果は、Adoは増大したMMP-9活性を介して単球/マクロファージの移動を高めることを実証する。
【0085】
図面の説明
図1.アデノシンは初代マクロファージによるMMP-9生成を増大させる。陰性選択によって健康なボランティアのPBMCから単離した単球を、7日間50ng/mlのM-CSFを用いて分化させた。マクロファージはAdoおよびEHNA(それぞれ10μmol/L)または賦形剤と共に15分間インキュベートし、次いでLPS(100ng/ml)または賦形剤を加え、細胞は回収前にさらに24時間インキュベートした。A.ELISAにより測定した細胞上清中のMMP-9分泌は、マクロファージをLPSで処理しようとしまいと、Adoによって有意に増大した。B.定量PCRは、AdoはMMP-9 mRNAの発現も増大させたことを明らかにした。結果は平均±SDである(Aに関してn=12、Bに関してn=8)。*P<0.05対対照(Ado/EHNA賦形剤で処理したマクロファージ)、**P<0.01対LPS。
【0086】
図2.アデノシンはTHP-1由来マクロファージによるMMP-9生成を増大させる。48時間150nMのPMAを用いたマクロファージへの分化の前に、Adoおよび10μMのEHNAまたは賦形剤でTHP-1細胞を15分間処理した。Adoデアミナーゼを阻害するEHNA、およびAdo輸送を阻害するDIPを使用して、内因性Adoの濃度を高めた。ゼラチナーゼ活性は、ザイモグラフィーおよび濃度測定によって無細胞条件付き培地中で測定した。A.代表的なザイモグラムを示す。濃度測定分析は、Adoは濃度依存的にマクロファージによるMMP-9分泌を増大させたことを明らかにした。B.ザイモグラフィーは、内因性Adoと外因性Adoの両方がMMP-9分泌を高めたことを示した。単独で、AdoおよびEHNAはMMP-9分泌を誘発し、それらの影響は相加的であった。DIPもMMP-9分泌を増大させた。C.経時的実験。ザイモグラフィーによる培養培地中のMMP-9放出の測定は、MMP-9分泌を誘発するためには18時間の分化時間が必要であったこと、およびAdoの影響も18時間から見られたことを明らかにした。D.MMP-9の増大は転写機構と関係がある。定量PCRは、Adoは分化の48時間後にMMP-9 mRNAの発現を増大させたことを示した。結果は平均±SDである(AおよびBに関してn=4、Cに関してn=1、Dに関してn=6)。*P<0.05対対照(Ado/EHNA賦形剤で処理したマクロファージ)、**P<0.01対対照。
【0087】
図3.アデノシンはそのA3受容体を介してMMP-9生成を増大させる。A.48時間150nMのPMAを用いたマクロファージへの分化の前に、10μMのAdoおよび10μMのEHNAまたは賦形剤でTHP-1細胞を15分間処理した。定量PCRは、A2aおよびA2bはマクロファージにおいてAdo受容体の主に存在する形態であったことを明らかにした。アデノシンは2倍を超えるA3およびA2bの発現の増大を誘導した。結果は平均±SDである(n=6)。*P<0.05対対照(Ado/EHNA賦形剤で処理したマクロファージ)。B.0.1、1または10μMのAdo受容体アゴニスト(CPA、A1特異的;CGS21680、A2a特異的;IB-MECA、A3特異的)でTHP-1細胞を15分間処理した。その後、48時間150nMのPMAを用いて分化を実施した。ゼラチナーゼ活性は条件付き培地において評価した。実験は2回実施し、同様の結果であった。C.A3特異的siRNAは、Ado仲介のMMP-9分泌の増大を阻害する。A2a、A2bまたはA3 Ado受容体に特異的なsiRNAで細胞をトランスフェクトし、Ado受容体の発現の下方制御をもたらすために48時間インキュベートして、48時間150nMのPMAを用いたマクロファージへの分化の前に、10μMのAdoおよび10μMのEHNAまたは賦形剤で15分間処理した。ゼラチンザイモグラフィーによって条件付き培地を分析した。結果は平均±SDである(n=3)。*P<0.05対Ado(Ado/EHNAで処理したマクロファージ)。
【0088】
図4.Adoは単球の遊走能を向上させる。ゼラチンBでプレコーティングした改変型ボイデンチャンバーの微多孔膜上に接種する前に、10μMのAdoおよび10μMのEHNAまたは賦形剤で24時間THP-1単球を処理した。10ng/mLのMCP-1を底部区画に加えた。指定時に、膜上に接種する前に、TIMP-1(10ng/mL)またはGM6001(10nMまたは1μM)と共に細胞をプレインキュベートした。細胞の移動は24時間後の蛍光によって定量化した。Adoは細胞の移動を高め、TIMP-1またはGM6001はこの効果を部分的に妨げた。結果は平均±SDである(n=5)。*P<0.05対Adoなし。
【0089】
方法
材料。他に指定しない限り、すべての材料および試薬はSigma(Bornem、ベルギー)からのものであった。Ado受容体アゴニストはCPA(C8031、N6-シクロペンチルAdo、A1特異的)、CGS21680(C141、2-[4-[(2-カルボキシエチル)フェニル]エチルアミノ]-5'-N-エチルカルバモイル、A2a特異的)、IB-MECA、(1-デオキシ-1-[6-[[(3-ヨードフェニル)メチル]アミノ]-9H-プリン-9-イル]-N-メチル-Dリボフラヌロンアミド、A3特異的)であった。複数の低分子干渉RNA(siRNA)はQiagen(Hilden、ドイツ)から購入した。GM6001((R)-N4-ヒドロキシ-N1-[(S)-2-(1H-インドール-3-イル)-1-メチルカルバモイル-エチル]-2-イソブチル-スクシンアミド)および組換えヒトタンパク質TIMP-1(R&D Systems、Abingdon、U.K.)をMMP阻害剤として使用した。マクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)およびMCP-1はPeprotech(Levallois-Peret、フランス)から購入した。使用したすべての化学物質のエンドトキシン汚染は、LAL(limulus amebocyte lysate、カブトガニ血球抽出成分)試験(0.05EU/mL、E-Toxate(登録商標)キット、Sigma)の検出限界未満であった。それぞれの処理の細胞毒性の不在は、製造者の説明に従い細胞毒性検出キット(Roche Diagnostics、Mannheim、ドイツ)を使用して、細胞質酵素である乳酸デヒドロゲナーゼの放出を測定することによって調べた。
【0090】
細胞培養。他に指定しない限り、すべての細胞培養試薬はLonza(Verviers、ベルギー)からのものであった。末梢静脈血は健康なボランティアから入手した。末梢血単核細胞はFicoll勾配によって入手した。単球単離キットII(Myltenyi Biotec GmbH、Bergisch Gladbach、ドイツ)を使用して、陰性選択によって単球を精製した。7日間50ng/mLのM-CSFを用いて分化を実施した。マクロファージはAdo/EHNA(10μmol/L)または賦形剤と共に15分間インキュベートし、次いでLPS(100ng/ml)または賦形剤を加え、細胞は採取前にさらに24時間インキュベートした。単球様の系THP-1(ATCC、LGC Promochem、Teddington、UK)由来の細胞を、L-グルタミン(2mM)、ペニシリン(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、非必須アミノ酸溶液(1μM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、および10%加熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)(Eurobio、Les Ulys、フランス)を補充したRPMI1640培地中で37℃-5%CO2において増殖させた。実験用に、培養培地中のFCSを1%に低下させた。細胞はEHNA賦形剤(DMSO)、Ado(0.01〜100μM)、Ado受容体アゴニスト(0.1〜10μM)、EHNA(10μM)またはジピリダモール(DIP)(10μM)を用いて15分間処理した。次いで細胞は24時間150nMのホルボールミリスチン酸アセテート(PMA)を用いてマクロファージに分化させた。その後マクロファージは、LPS(1〜1000ng/ml)、fMLP(10-7M)またはH2O2(10mM)でさらに24時間処理した。
【0091】
製造者の説明(Amaxa Inc.、Cologne、ドイツ)に従いNucleofection技術およびNucleofector(商標)溶液Vを使用して、トランスフェクションを実施した。Ado処理の48時間前に、それぞれのAdo受容体に特異的な1.4μgのsiRNAを用いて細胞をトランスフェクトした。
【0092】
Ado受容体に関して選択した標的mRNA配列は以下の配列である:
siRNA A2a:5'-CAGGAGTGTCCTGATGATTCA-3'(配列番号6);
siRNA A2b:5'-CACGTATCTAGCTAATATGTA-3'(配列番号7);
siRNA A3:5'-CCCTATCGTCTATGCCTATAA-3'(配列番号8)。
【0093】
RNA採取のためにTriReagent(登録商標)中に細胞を溶かした。無細胞条件付き培地を回収し、さらなるELISAまたはザイモグラフィー用に、プロテアーゼ阻害剤(Roche、Mannheim、ドイツ)およびウシ血清アルブミン(BSA、最終濃度0.2%)と混合した。すべてのサンプルは分析するまで-80℃で保存した。
【0094】
リアルタイム定量PCR。全RNAは、製造者の説明に従いTriReagent(登録商標)およびRNeasyミニキット(Qiagen、Hilden、ドイツ)を使用して単離した。おそらく汚染しているゲノムDNAはDNaseI処理剤(Qiagen)によって消化した。1マイクログラムの全RNAを、Superscript(登録商標)II逆転写酵素(Invitrogen、Merelbeke、ベルギー)を使用して逆転写した。Beacon Designerソフトウェア(Premier Biosoft、Palo Alto、USA)を使用してPCRプライマーを設計し、イントロンを含むように選択した。PCRはiCycler(登録商標)およびIQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(Biorad、Nazareth、ベルギー)を使用して実施した。cDNAの1/10希釈液を使用した。PCR条件は以下の通りであった:95℃で3分間、95℃で30秒間および1分間のアニーリング(40サイクル)。融点分析は、55℃〜95℃まででの10秒間の80サイクル後に実施した。それぞれの実施は陰性反応対照を含んでいた。β-アクチンは標準化用のハウスキーピング遺伝子として選択した。発現レベルは、プライマー対の有効性を考慮に入れたGenexソフトウェア(Biorad、Nazareth、ベルギー)を使用して、相対的定量化法(ΔΔCt)によって計算した。
【0095】
ゼラチナーゼ活性の分析。ゼラチンザイモグラフィーを培養上清に実施して、分泌されたMMP-9の活性を評価した。簡潔には、非還元条件下で0.2%ゼラチンを含むSDS-ポリアクリルアミドゲル上に条件付き培地を載せた。電気泳動後、ゲルを洗浄し、アッセイバッファー(50mMのTris-HCl、pH7.6、200mMのNaCl、5mMのCaCl2、および0.02%のBrij35)中において37℃で一晩インキュベートした。その後、ゲルは0.1%クーマシーブルー中で染色し、25%エタノール/8%酢酸中で脱染色した。濃度測定は、Gel Logic 2200デジタルイメージングシステムおよびAidaソフトウェア(Kodak、Zavemtem、ベルギー)を使用して実施した。
【0096】
ELISA。条件付き培地中の全MMP-9およびTIMP-1濃度を、ELISA(R&D Systems、Abingdon、U.K.)によって測定した。検出限界はMMP-9に関して0.156ng/mL、およびTIMP-1に関して0.08ng/mLであった。
【0097】
移動性アッセイ。THP-1単球の遊走能を、ポリカーボネート製微多孔膜(5μm孔径、24-ウエルチャンバー、Costar、Lowell、USA)を有するTranswell(登録商標)システムを使用して試験した。膜は2%ゼラチンB溶液でコーティングし、2時間室温で乾燥させた。MCP-1(10ng/mL)を底部区画に加えた。THP-1単球は、10μMのAdoおよび10μMのEHNAありまたはなしの無血清および無抗生物質培地中で24時間培養した。ウエル当たり7.5×104個の細胞の濃度で上部区画に接種する前に、GM6001(10nMまたは1μM)またはTIMP-1(10ng/mL)と共に細胞を30分間プレインキュベートした。24時間後、膜を介して移動した細胞を切り離し、溶解し、CyQuant GR(登録商標)色素(Invitrogen)によって15分間染色した。POLARstar Optima(BMG LABTECH、Champigny-sur-Marne、フランス)マイクロプレートリーダーを用いて蛍光を読み取った(λex=492nm、λem=520nm)。
【0098】
統計分析。結果は平均±S.Dとして表す。ガウス分布に関するデータは対応のあるt-検定によって分析した。マン-ホイットニー(非対データ)またはウィルコクソン(対データ)検定を、非ガウスデータに使用した。0.05より小さいP値を有意であると考えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鬱血性心不全と関係がある疾患または状態の治療または予防における、アデノシンA3受容体アンタゴニストの使用。
【請求項2】
心筋梗塞または急性もしくは慢性心不全を治療するための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
心筋梗塞または心不全を有する患者のマトリックスメタロプロテイナーゼのレベルを低下させるための、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
心筋梗塞後の心室リモデリングおよび心不全の発生を抑制するための、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
心筋の不適応なリモデリングを抑制するための、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
アデノシンA3受容体アンタゴニストがMRS1067、MRS1097、L-249313、L-268605、CGS15943、KF26777、MRS1220、MRS1523、PSB10からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
さらなるアデノシンアゴニストまたはアンタゴニストを投与する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
アデノシンA2a受容体アゴニストをさらに投与する、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
A3受容体アンタゴニスト活性とA2a受容体アゴニスト活性の両方を有する分子を投与する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
分子が(2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-2-{[(1S)-2-ヒドロキシ-1-(フェニルメチル)エチル]アミノ}-9H-プリン-9-イル)-5-(2-エチル-2H-テトラゾール-5-イル)テトラヒドロ-3,4-フランジオールである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
アデノシンA3受容体の配列が、配列番号1に示す配列、または配列番号1と少なくとも75%の配列相同性を有する変異体、または6×SSCの高ストリンジェント条件下で前記配列番号1とハイブリダイズすることができる対応配列である、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
アデノシンA3受容体アンタゴニストが、血液中ならびに心臓および心臓周辺のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)のレベルを低下させることが可能である、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
MMPがMMP-9であり、配列番号3に示すタンパク質配列を場合によっては有する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
A3アンタゴニストが選択的である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
鬱血性心不全と関係がある疾患または状態の治療または予防における、アデノシンA3受容体(A3AR)を標的とする、またはその発現のレベルを低下させることが可能である、アンチセンスポリヌクレオチドおよび遺伝子を抑制する他の形態の使用。
【請求項16】
アデノシンA2a受容体アゴニストがアデノシン、アデノシンアゴニストまたはアデノシン類似体である、請求項8に記載の使用。
【請求項17】
A2aアゴニストがレガデノソン(CVT-3146)、CGS21680、APECまたは2HE-NECAである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
アデノシンA3受容体アンタゴニストを患者に投与するステップを含む、心不全または心不全と関係がある状態を有する患者を治療する方法。
【請求項19】
アデノシンA3受容体アンタゴニストおよび場合によってはさらなるアデノシンアゴニストまたはアデノシンアンタゴニストの投与によって、心筋梗塞または心不全を有する患者を治療する方法。
【請求項20】
アデノシンA3受容体アンタゴニストおよびアデノシンA2a受容体アゴニストの投与によって、患者の心臓のMMP-9のレベルを減少または低下させるため、または低いMMP-9のレベルと関係がある心不全を治療または予防するための方法。
【請求項21】
アデノシンA3受容体アンタゴニストおよび場合によってはさらなるアデノシンアゴニストまたはアデノシンアンタゴニストを投与するステップを含む、心筋梗塞または急性心不全と関係がある心筋組織の悪化を予防する方法。
【請求項22】
アデノシンA3受容体アンタゴニストおよび場合によってはアデノシンA2a受容体アゴニストの投与によって、末期心臓疾患と関係がある心筋組織の悪化を予防する方法。
【請求項23】
心筋組織中のマトリックスメタロプロテイナーゼの生成を低下させる作用物質を投与するステップを含み、前記作用物質がアデノシンA3受容体アンタゴニストである、鬱血性心不全の症状を示す患者を治療する方法。
【請求項24】
状態が心筋梗塞、急性冠症候群、虚血性心筋症、非虚血性心筋症、または急性もしくは慢性心不全である、請求項18または23に記載の方法。
【請求項25】
アデノシンA2a受容体アゴニストをさらに投与する、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−509258(P2010−509258A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535638(P2009−535638)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009932
【国際公開番号】WO2008/055711
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509131937)
【Fターム(参考)】