説明

アトピー性皮膚炎、皮膚のアレルギー状態、および座瘡の治療用組成物

本発明は、a)イチョウテルペンと、b)ホップ、オトギリソウ属、およびギンバイカ属から抽出した、フロログルシノール類の単独物またはその混合物、c)カショウまたはエキナセアアングスティフォリアの親油性抽出物とを含む、アトピー性皮膚炎、皮膚のアレルギー状態、および座瘡の治療用の局所用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトピー性皮膚炎、皮膚のアレルギー状態、および座瘡の治療に有用な、薬用植物抽出物またはその精製もしくは標準化画分を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は、感染症の可能性を伴う皮膚裂傷の原因になりうる持続性炎症状態を特徴とする。炎症は強い掻痒を伴うことが多い。その結果、患者が擦過することにより、さらに患部は刺激される可能性がある。
【0003】
しばしば湿疹とも呼ばれる皮膚炎は、急性または慢性の経過をたどる、変動性の臨床徴候および組織学的徴候を有する表皮の炎症であり、人口の少なからぬ割合(2〜3%)が罹患している。
【0004】
さまざまな形態の皮膚炎の原因は依然として不明な部分があるが、免疫成分は明らかに要因の一つである。病的症状は似ていることが多く、プラーク、浮腫、落屑−痂皮病変などを形成しうる丘疹、紅斑点、および小水疱を呈することを主な特徴とする。最も多い皮膚炎としては、アトピー性皮膚炎、接触アレルギー、接触皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、単純性苔癬、および尋常性座瘡があげられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
選抜された治療はコルチコステロイドの利用にあるが、副作用(二次感染の可能性、長期使用後の無効力など)を伴うことはよく知られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
a)抽出物、その画分または炎症作用を有する純粋化合物と、
b)抗微生物作用および/または抗真菌作用を有する抽出物、その画分または純粋化合物と、
c)抗掻痒作用を有する抽出物、その画分または純粋化合物と
を含有する組成物は、局所抗炎症剤およびステロイドなど既知の薬剤と比較しても、患者に対し迅速で有益な効果を発揮し、病態の急速な緩解をもたらすことが現在わかっている。
【0007】
より正確には、本発明の組成物は以下を含む。
【0008】
a)イチョウ(Ginkgo biloba)テルペンと、
b)ホップ(Humulus lupulus)、オトギリソウ(Hypericum)属、およびギンバイカ(Mirtus)属から抽出した、フロログルシノール類の単独物またはその混合物のいずれか一方と、
c)カショウ(Zanthoxylum bungeanum)またはエキナセアアングスティフォリア(Echinacea angustifolia)の親油性抽出物。
【0009】
本発明によれば、イチョウ含有物は0.1〜2%でよく、フロログルシノール分は0.1〜1%でよく、カショウまたはエキナセアアングスティフォリアの親油性抽出分は0.01〜0.5%でよい。
【0010】
本発明によれば、イチョウテルペンは遊離型で存在するか、好ましくは天然リン脂質または合成リン脂質との複合体の形で存在する。本明細書における「イチョウテルペン」とは、トリテルペンの合計含有量が60〜100%、好ましくは90%であり、ビロバライドの含有量が20〜70%、好ましくは45%であり、ギンコライドA、B、CおよびJの合計含有量が25から75%、好ましくは50%であるテルペンの単独または混合物のいずれか一方を意味する。
【0011】
イチョウテルペンは、抗炎症作用に加えて、動物およびヒトにおけるいくつかのモデルで観察されたように抗アレルギー作用も発揮するため、過敏および連続性再発を持続させる関連症状の一つを抑制する。この抗アレルギー作用により、免疫因子が病因に関与している場合は前記テルペンが特に有用となる。
【0012】
ホップ、オトギリソウ属、およびギンバイカ属から抽出した、フロログルシノール類の単独物またはその混合物は、プロピオニバクテリウムアクニスなどの嫌気性菌やカンジダアルビカンス(Candida albicans)株に対し0.5〜4μg/mLの濃度で活性を有する。
【0013】
特にホップ抽出物は、フロログルシノール分が20〜80%、好ましくは60%であることを特徴とする。オトギリソウ属抽出物のうち特に好ましいのは、フロログルシノール(アドヒペルフォリン/ヒペルフォリン)分が20〜80%、好ましくは60%であるセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)抽出物である。ギンバイカ属抽出物のうち特に好ましいのは、圧力235〜260バール、温度40℃から60℃、好ましくは45℃の条件下で二酸化炭素を用いて抽出することにより調製されるギンバイカ(Mirtus communis)葉の抽出物である。その結果得られる抽出物は、通常約35%のミルトクムロン(mirtocumulone)を含有する。
【0014】
カショウまたはエキナセアアングスティフォリアの親油性抽出物を含有する本発明の組成物は、イソブチルアミドを豊富に含み、神経伝達を阻害する局所鎮痛剤として有効であるが、特に局所性掻痒の治療に効果があることが証明された。したがって、好ましい態様によれば、本発明の組成物は成分としてc)の、イソブチルアミドに富んだ、カショウまたはエキナセアアングスティフォリアの親油性抽出物を含有するであろう。サンショウ属抽出物は、例えばWO00/02570に開示されているように調製することができ、エキナセア属抽出物は、例えばEP0464298に開示されているように調製することができる。
【0015】
エストロゲンおよび/または抗アンドロゲン作用を有する天然化合物をさらに含有する本発明の組成物は、特に脂漏性皮膚炎や座瘡の治療に効果があることが証明された。したがって、好ましい態様によれば、本発明の組成物は、前記a)、b)およびc)の成分に加えて、フェルチニンおよび/またはさまざまなオオウイキョウ(Ferula)属抽出物などのエストロゲン作用を有する天然化合物、および/またはラウリン酸などの抗アンドロゲン作用を有する天然化合物も含有するであろう。
【0016】
さらなる好ましい態様によれば、本発明の組成物は、親油性賦形剤としてメマツヨイグサ(Oenothera biennis)油を含有するであろう。
【0017】
したがって本発明は、アトピー性皮膚炎、皮膚のアレルギー状態、および座瘡の治療のための、前記に記載の組合せを含有する局所用組成物に関する。前記組成物は、当技術分野で一般的に用いられている好適な賦形剤と共に、「Remington’s Pharmaceutical Handbook」Mack Publishing Co.,N.Y.,USAに記載のものなど、製薬技術でよく知られている従来の方法に従って調製されるであろう。
【0018】
以下に報告された実施例は、本発明をさらに説明するものである。
【実施例】
【0019】
実施例1
水中油型乳剤
リン脂質複合体の形であるイチョウテルペン 0.5g
ホップ抽出物(60%がフロログルシノール) 0.1g
カショウ抽出物 0.05g
メマツヨイグサ油 5.0g
ポリオキシエチレングリコール−20グリセリルステアレート 10.0g
10−C18トリグリセリド 10.0g
グリセリン 5.0g
ヒドロキシル化ラノリン 0.5g
ヒドロキシエチルセルロース 0.5g
メチルパラベンおよびプロピルパラベン 0.2g
トコフェロール 0.1g
精製水を適量加えて合計で 100.0g
【0020】
実施例2
水中油型乳剤
リン脂質複合体の形であるイチョウテルペン 0.5g
ギンバイカ親油性抽出物(35%がミルトクムロン) 0.1g
カショウ抽出物 0.05g
メマツヨイグサ油 5.0g
ステアリン酸 10.0g
鉱油 6.0g
白色ワセリン 6.0g
ソルビタンモノステアレート 2.0g
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート 1.0g
メチルパラベンおよびプロピルパラベン 0.2g
精製水を適量加えて合計で 100.0g
【0021】
実施例3
クリーム
リン脂質複合体の形であるイチョウテルペン 0.5g
ホップ抽出物(60%がフロログルシノール) 0.1g
エキナセアアングスティフォリア抽出物 0.05g
メマツヨイグサ油 5.0g
ステアリン酸 12.0g
グリセリン 10.0g
セトステアリルアルコール 2.0g
水酸化カリウム 0.9g
メチルパラベンおよびプロピルパラベン 0.2g
精製水を適量加えて合計で 100.0g
【0022】
実施例4
クリーム
リン脂質複合体の形であるイチョウテルペン 0.5g
セイヨウオトギリソウ抽出物(60%がフロログルシノール) 0.1g
エキナセアアングスティフォリア抽出物 0.05g
メマツヨイグサ油 5.0g
ステアリン酸 12.0g
グリセリン 10.0g
セトステアリルアルコール 2.0g
水酸化カリウム 0.9g
メチルパラベンおよびプロピルパラベン 0.2g
精製水を適量加えて合計で 100.0g
【0023】
実施例5
クリーム
リン脂質複合体の形であるイチョウテルペン 0.5g
ホップ抽出物(60%がフロログルシノール) 0.1g
カショウ抽出物 0.05g
メマツヨイグサ油 5.0g
フェルチニン 0.3g
ラウリン酸 0.3g
セトステアリルアルコール 20.0g
白色ワセリン 15.0g
プロピレングリコール 10.0g
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0g
メチルパラベンおよびプロピルパラベン 0.2g
精製水を適量加えて合計で 100.0g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)イチョウ(Ginkgo biloba)テルペンと、
b)ホップ(Humlus lupulus)、オトギリソウ(Hypericum)属、およびギンバイカ(Mirtus)属から抽出した、フロログルシノール類の単独物またはその混合物のいずれか一方と、
c)カショウ(Zanthoxylum bungeanum)またはエキナセアアングスティフォリア(Echinacea angustifolia)の親油性抽出物と
を含む、アトピー性皮膚炎、皮膚のアレルギー状態、および座瘡の治療用の局所用組成物。
【請求項2】
a)0.1から2%のイチョウと、
b)ホップ、オトギリソウ属、およびギンバイカ属から抽出した、0.1から1%のフロログルシノール類の単独物またはその混合物のいずれか一方と、
c)0.01%から0.5%のカショウまたはエキナセアアングスティフォリアの親油性抽出物と
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
イチョウテルペンが遊離型で含まれる、前記各請求項に記載の組成物。
【請求項4】
イチョウテルペンが、天然リン脂質複合体または合成リン脂質複合体の形で含まれる、前記各請求項に記載の組成物。
【請求項5】
トリテルペンの合計含有量が60から100%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
トリテルペンの合計含有量が90%である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ビロバライドの含有量が20から70%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
ビロバライドの含有量が45%である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ギンコライドA、B、CおよびJの合計含有量が25から75%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
ギンコライドA、B、CおよびJの合計含有量が50%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ホップ抽出物のフロログルシノール分が20から80%である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項12】
ホップ抽出物のフロログルシノール分が60%である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
オトギリソウ属抽出物が、フロログルシノール分の範囲が20%から80%であるセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)抽出物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項14】
セイヨウオトギリソウ抽出物のフロログルシノール分が60%である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
ギンバイカ(Mirtus communis)葉の抽出物が、圧力235から260バール、温度40℃から60℃の条件下で二酸化炭素を用いて抽出することにより調製される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項16】
ギンバイカ属抽出物が、ミルトクムロン(mirtocumulone)含有量35%を有するギンバイカ葉の抽出物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
カショウまたはエキナセアアングスティフォリアの親油性抽出物がイソブチルアミドを豊富に含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項18】
さらにフェルチニンを含有する、前記各請求項に記載の組成物。
【請求項19】
さらにオオウイキョウ(Ferula)属のさまざまな種の抽出物を含有する、前記各請求項に記載の組成物。
【請求項20】
さらにラウリン酸を含有する、前記各請求項に記載の組成物。
【請求項21】
さらにメマツヨイグサ(Oenothera biennis)油を親油性賦形剤として含有する、前記各請求項に記載の組成物。
【請求項22】
アトピー性皮膚炎、皮膚のアレルギー状態、および座瘡の治療用薬物を調製するための、
a)イチョウテルペンと、
b)ホップ、オトギリソウ属、およびギンバイカ属から抽出したフロログルシノール類の単独物またはその混合物と、
c)カショウまたはエキナセアアングスティフォリアの親油性抽出物と
の組合せの利用。

【公表番号】特表2007−512271(P2007−512271A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540237(P2006−540237)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012608
【国際公開番号】WO2005/053720
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】