説明

アニオン重合によるポリアミド粉末の製造方法

【課題】ポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミドの中から選択されたポリマーの粉末の溶剤中での溶液アニオン重合による製造方法。
【解決手段】ポリマーの構成モノマーを触媒、活性化剤、少なくとも一種のアミド(一種は常にN,N’−アルキレンビスアミド)、有機または無機原料の存在下で重合し、反応媒体中に添加するN,N’−アルキレンビスアミドの量は粉末粒子の所望の比表面積の関数で決め、粉末粒子の直径はほぼ一定にするか、直径を粉末粒子の所望の平均直径の関数で決め、粉末粒子の比表面積はほぼ一定にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均直径が100μm以下、好ましくは50μm以下の球形または略球形のポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミドの多孔質粉末粒子の製造方法に関するものである。
本発明粒子は複合材料、転写紙、基材被覆、特に金属基材の被覆(コイル塗装)、固体・液体のペイントおよびインキ組成物、金属粒子の存在下または非存在下での圧縮凝集、レーザー光線(レーザー焼結)、IR照射または紫外線照射(紫外線硬化)によるポリアミド粉末の焼結または溶融凝集、化粧組成物および/または医薬組成物等の用途で重要な制御された見掛けの比表面積(ASSA)を有する。
【背景技術】
【0002】
多孔質なポリアミド粒子、特に粒度分布の幅が狭い回転楕円体の多孔質ポリアミド粒子をラクタムの懸濁重合(特許文献1、特許文献2)または有機溶液中での溶液重合(特許文献3)のアニオン重合で工業的に製造する方法は公知である。これらの特許に記載の方法ではポリアミド粒子を形成した液体媒体からポリアミド粒子を分離することで直接得ることができる。特許文献4(欧州特許第EP 0192515号公報)には、攪拌反応装置内で溶剤中で触媒、活性化剤、N,N’−アルキレンビスアミド、必要に応じてさらに有機または無機充填剤の存在下にラクタムをアニオン重合することが記載されている。粒子の寸法は種々のプロセスパラメータ、すなわち反応温度、触媒の量、活性化剤の注入量、撹拌速度や、充填剤含有量を変えて補償することができる。
【0003】
しかし、[表1]に示すように市販のポリアミド粉末粒子は平均直径が大きくなると見掛けの比表面積(ASSA)が減少する。
【表1】

【0004】
市場のニーズに応えるためには、平均直径が同じ場合には見掛け比表面積(ASSA)が可能な最大範囲内に入り(好ましくASSAができるだけ大きく)、ASSAが同じ場合には平均直径が可能な最大範囲内に入る(好ましくは平均直径ができるだけ小さい)ポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミド粉末の粒子を製造することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】フランス特許第1213993号公報
【特許文献2】フランス特許第1602751号公報
【特許文献3】ドイツ特許第1183680号公報
【特許文献4】欧州特許第EP 0192515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明社はこの技術的課題の解決策を見出した。
本発明は、平均直径が100μm以下、好ましくは50μm以下、有利には30μm以下、さらに有利には20μm以下で、ASSAが<50m2/g、有利には<40m2/g、さらに有利には<30m2/gである粒度分布の幅が狭いポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミド粒子を得る方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明ではポリマーの構成モノマーの溶剤中での溶液アニオン重合を触媒、活性化剤、少なくとも一種のアミド(一種は常にN,N’−アルキレンビスアミドである)および有機または無機の充填剤の存在下で行い、反応媒体中に添加するアミドの量を所望する粉末粒子の見掛けの比表面積(ASSA)および/または平均直径の関数で決める。
【0008】
本発明方法は有機または無機の充填剤のシード添加アニオン重合(polymerisation anionique par ensemencement avec un charge mineral our organique)とよばれる。このシード添加という概念は本出願人の欧州特許第EP 196972号に記載のコーティングの概念とは異なるもので、この特許は本発明とは無関係である。シード添加で最終的に得られる粒子のポリマー層の厚さが充填剤(充填剤の最大密度は4.5cm3/g)の半径より大きい場合にシード添加といい。逆に、コーティングで最終的に得られる粒子のポリマー層の厚さが充填剤(最大密度が4.5cm3/g)の半径より小さい場合にはコーティングという。
【0009】
本発明の対象は、ポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミドの中から選択されたポリマーの粉末の溶剤中での溶液アニオン重合による製造方法において、ポリマーの構成モノマーの重合を(1)触媒、(2)活性化剤、(3)N,N’−アルキレンビスアミドから選択される少なくとも一種のアミドおよび(4)最大密度が4.5cm3/gの有機または無機の充填剤の存在下で行い、反応媒体に添加するアミドの量を所望する粉末粒子の見掛けの比表面積(ASSA)の関数で決め、粉末粒子がほぼ一定の直径を有することを特徴とする方法にある。
【0010】
本発明の一つの実施例では、ポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミドの中から選択されたポリマーの粉末の溶剤中での溶液アニオン重合による製造方法において、ポリマーの構成モノマーの重合を(1)触媒、(2)活性化剤、(3)N,N’−アルキレンビスアミドから選択される少なくとも一種のアミドおよび(4)最大密度が4.5cm3/gの有機または無機の充填剤の存在下で行い、反応媒体中に添加するアミドの量を所望する粉末粒子の平均直径に応じて決め、粉末粒子がほぼ一定の見掛けの比表面積(ASSA)を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1で得られる本発明粉末の写真。
【図2】実施例2で得られる本発明粉末の写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明方法の一つの実施例では、アミドの量を増すとASSAも大きくなる。
本発明方法の一つの実施例では、アミドの量を増すと平均直径は小さくなる。
本発明方法の一つの実施例では、ポリマーの構成モノマーがラクタム、例えばラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタムまたはこれらの混合物、好ましくはラウリルラクタム単独、カプロラクタム単独またはこれらの混合物の中から選択される。
【0013】
本発明方法の一つの実施例では、ポリマーの構成モノマーは下記(1)〜(3)の混合物(合計で100モル%)である:
(1)1〜98モル%のラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタムおよびカプリルラクタムの中から選択されるラクタム、
(2)1〜98モル%のラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタムおよびカプリルラクタムの中から選択される上記(1)以外のラクタム、
(3)1〜98モル%のカプロラクトン、バレロラクトンおよびブチロラクトンの中から選択されるラクトン。
30〜46モル%のカプロラクタムと、30〜46モル%のラウリルラクタムと、8〜40モル%のカプロラクトンの混合物が有利である。
【0014】
本発明方法の一つの実施例では、触媒はナトリウムハイドライド、カリウムハイドライド、ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドの中から選択される。
本発明方法の一つの実施例では、活性化剤はラクタム−N−カルボキシアニリド、(モノ)イソシアネート、(ポリ)イソシアネート、カルボジイミド、シアナミド、アシルラクタム、アシルカルバミメート、トリアジン、尿素、N−置換イミド、エステルおよび三塩化燐の中から選択される。
【0015】
本発明方法の一つの実施例では、N,N’−アルキレンビスアミドはN,N’−エチレンビスステアルアミド(EBS)およびN,N’−エチレンビスオレアミド(EBO)の中から選択される。
本発明方法の一つの実施例では、無機充填剤はシリカ、アルミノシリケート、酸化アルミニウムまたはアルミナ、二酸化チタンおよびBNの中から選択される。
本発明方法の一つの実施例では、有機充填剤はホモポリアミドまたはコポリアミドの粉末、好ましくはPA12、PA11、PA6、PA6−12、PA6,12、PA6,6、PA8、PA4、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ(メチル)メタクリレート(PMMA)、ポリアクリレート、ポリエステル、シリコン、ポリエチレンおよびポリテトラフルオロエチレンの粉末の中から選択される。
【0016】
本発明方法の一つの特徴は、粒度分布の幅が上記方法で得られる粒度分布の幅よりも狭い点にある。
本発明方法の一つの実施例では、得られた粉末粒子の平均直径が<30μm、有利には<20μmである。
本発明方法の一つの実施例では、ASSAは<40m2/g、有利には<30m2/gである。
【0017】
本発明の別の対象は、上記定義の方法で得られるポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミドの中から選択されるポリマー粉末粒子にある。本発明の一つの実施例の粒子は有機充填剤としてオルガゾル(Orgasol、登録商標)を含む。
本発明のさらに別の対象は、カーボンナノチューブ、金属粒子、顔料、染料、抗酸化剤、紫外線安定剤、可塑剤およびカーボンブラックの中から選択される少なくとも一種の化合物をさらに含む上記粒子の組成物にある。
本発明のさらに別の対象は、上記方法で得られた粉末粒子、上記粒子または上記定義の組成物の、複合材料、転写紙、基材、特に金属基材の被覆(コイル塗装)、固体または液体のペイントまたはインキ組成物、化粧組成物および/または医薬組成物の製造での使用にある。本発明の一つの実施例では、上記粉末を単独または組成物にして圧縮して凝集するか、レーザー光線(レーザー焼結)、IR照射または紫外線照射(紫外線硬化)によって焼結または溶融して凝集させて得られる物品の製造での使用にある。
【0018】
「直径がほぼ一定」とは、同じプロセスで、バッチごとに得られる平均粒径の変化が各種バッチの平均直径の平均値に対して上下20%以内にあることを意味する。例えば、平均直径の平均値が10μmのバッチの許容変動範囲は8〜12μmである。
「ASSAがほぼ一定」とは、同じプロセスで、バッチごとに得られる粒子の平均ASSAの変化が各種バッチの平均ASSAの平均値に対して上下25%以内にあることを意味する。例えば、ASSAの平均値が4m2/gのバッチの許容変動範囲は3〜5m2/gである。
【0019】
重合可能なモノマー
本発明で使用可能な重合可能なモノマーはラクタム、例えばラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタムまたはこれらの混合物の中から選択できる。好ましいのはラウリルラクタム単独、カプロラクタム単独またはこれらの混合物である。
下記文献に記載のような複数のラクタムとラクトンとの共重合によってコポリエステルアミドを得ることもできる。
【特許文献5】欧州特許第EP 1172396号公報公報
【0020】
この場合には下記混合物を共重合する(合計で100モル%):
(1)1〜98モル%のラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタムおよびカプリルラクタムの中から選択されるラクタム
(2)1〜98モル%のラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタムおよびカプリルラクタムの中から選択される上記(1)以外のラクタム;
(3)1〜98モル%のカプロラクトン、バレロラクトンおよびブチロラクトンの中から選択されるラクトン。
【0021】
コポリエステルアミドの場合にはカプロラクタム、ラウリルラクタムおよびカプロラクトンを30〜46%、30〜46%および8〜40%の比率で使用する(合計で100モル%)。
本発明方法は複数のラクタムとラクトンとの混合物よりもラクタムかその混合物に適用するのが好ましい。
【0022】
その他の重合成分
ポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミド粒子を製造するアニオン重合は溶剤中で実行する。
溶剤
使用する溶剤はモノマーを溶かすが、重合で形成されたポリマー粒子は溶かさない。溶剤の例は特許文献4(欧州特許第EP 0192515号公報)に記載されている。溶剤は沸点が120〜170℃、好ましくは140〜170℃のパラフィン系炭化水素画分が好ましい。
【0023】
溶剤は開始温度(重合開始時の温度)でモノマーが過飽和状態にすることができる。溶剤をモノマーで過飽和にする方法は種々ある。溶剤をモノマーで飽和させる方法の一つは開始温度より高い温度に上げた後に開始温度まで温度を下げることである。他の方法は開始温度で溶剤をモノマーで実質的に飽和させ、この温度でさらに第一アミド、好ましくは12〜22の炭素原子を有する第一アミド、例えばオレアミド、N−ステアルアミド、エルクアミドまたはイソステアルアミド、N,N’−アルキレンビスアミドを加える方法である。この方法の一つの実施例は以下で示す。重合をモノマーが過飽和状態でない溶剤中で行うこともできる。この場合には反応媒体はモノマーを開始温度での過飽和濃度からははるかに遠い状態で溶剤中に含む。
【0024】
触媒
触媒はラクタムのアニオン重合で一般的に使用されている触媒の中から選択される。この触媒はラクタムまたはラクタム混合物との反応後にラクタメート(lactamate)が得られるのに十分な強い塩基である。複数の触媒の組合せも使用できる。例としてはナトリウムハイドライド、カリウムハイドライド、ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよび/またはナトリウムエトキシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。導入する触媒量は100モルのモノマーに対して一般に0.5〜3モルである。
【0025】
活性化剤
活性化剤を加えることができる。この活性化剤は重合を起こさせ、および/または、加速する機能がある。活性化剤はラクタム−N−カルボキシアニリド、(モノ)イソシアネート、ポリイソシアネート、カルボジイミド、シアナミド、アシルラクタムおよびアシルカルバメート、トリアジン、尿素、N−置換イミド、エステルおよび三塩化燐の中から選択される。複数の活性化剤の混合物を用いることもできる。活性化剤はその場(in situ)で製造でき、例えばアルキルイソシアナートとラクタムとの反応でアシルラクタムを形成することができる。触媒/活性化剤のモル比は0.2〜2、好ましくは0.8〜1.2である。
【0026】
アミド
特許文献4(欧州特許第EP 0192515号公報)に記載のように、少なくとも一種のアミド(一種は常にN,N’−アルキレンビスアミドである)を加える。このN,N’−アルキレンビスアミドの導入比率はモノマー100モルに対して一般に0.001〜4モル、好ましくは0.075〜2モルである。特に好ましいN,N’−アルキレンビスアミドは脂肪酸のN,N’−アルキレンビスアミドで、特に下記のものが好ましい:
(1)式:C1735−C(=O)−NH−CH2CH2−NH−C(=O)−C1735のN,N’−エチレンビスステアルアミド(EBS)
(2)式:C1733−C(=O)−NH−CH2CH2−NH−C(=O)−C1733のN,N’−エチレンビスオレアミド(EBO)
(3)N,N’−アルキレンビスパルミトアミド、N,N’−アルキレンビスガドル(gadole)アミド、N,N’−アルキレンビスセトル(cetole)アミドおよびN,N’−アルキレンビスエルク(eruc)アミド。
EBSおよび/またはEBOを用いるのが好ましい。
第一アミド、好ましくは12〜22の炭素原子を有する第一アミドを添加することもできる。このアミドはオレアミド、N−ステアルアミド、イソステアルアミド、およびエルクアミド(erucamide)の中から選択できる。
【0027】
無機充填剤
無機充填剤の密度は4.5cm3/g以下であり、シリカ、アルミノシリケート、酸化アルミニウムまたはアルミナ、二酸化チタンおよびBN(例えば、サンゴバン(Saint Gobain)社のトレ(Tres)BN(登録商標)の中から選択される。これらの無機充填剤の混合物にすることもできる。無機充填剤の混合物の例としては種々のシリカの混合物、シリカとアルミナとの混合物またはシリカと二酸化チタンとの混合物が挙げられる。
【0028】
有機充填剤
有機充填剤は密度が4.5cm3/g以下である。この有機充填剤はホモポリアミドまたはコポリアミドの粉末、好ましくはPA12、PA11、PA6、PA6−12、PA6,12、PA6,6、PA8、PA4(例えばアルケマ(Arkema)社のオルガソル(Orgasol、登録商標)の粉末、デグッサ(Degussa)社のベストシント(Vestosint)、登録商標)等)、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ(メチル)メタクリレート(PMMA)、ポリエステル、シリコン、ポリエチレンまたはポリテトラフルオロエチレンの粉末である。
有機または無機の充填剤の量と充填剤の直径を変えることによって、重合の最後に得られる最終粒子の寸法を所望の方向(小さい粒子または大きい粒子)に変えることができる。
【0029】
その他の充填剤または添加剤
反応媒体中に任意タイプの充填剤(顔料、染料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ)や添加剤(抗酸化剤、紫外線安定剤、可塑剤等)を加えることができる。ただし、これらの化合物は完全に乾燥し、反応媒体に不活性なものでなければならない。
【0030】
重合
アニオン重合は連続的または不連続的で行うことかできるが、不連続的(バッチ)で行うのが好ましい。不連続的に行う場合には溶剤を導入し、それと同時またはそれに続いてモノマーを入れ、任意成分のN,N’−アルキレンビスアミド、充填剤、触媒および活性化剤を導入する。最初に溶剤とモノマーを導入し、それから例えば共沸蒸留を用いて水を除去し、できる限り水分子を含まない媒体中に触媒を加えることが勧められる。充填剤は例えばモノマーの導入後に導入できる。凝固を防ぎ、重合制御の低下を防ぐために、活性化剤は一度(時間t)に入れず、一定の速度で短時間または長時間にわたって入れるか、各ステップで異なる速度で導入するのが有利である。
重合は大気圧下またはそれよりわずかに高い圧力(加熱した溶剤の分圧)下で、20℃と溶剤の沸点との間の温度で実行する。開始温度およびラクタムの重合温度は一般に70〜150℃、好ましくは80〜130℃である。
【0031】
重量比[有機または無機の充填剤/反応媒体中に導入したモノマー](%表記)は0.001〜65%、好ましくは0.005〜45%、さらに好ましくは0.01〜30%、有利には0.05〜20%である。
本発明粉末はレーザー光線(レーザー焼結)、IR照射または紫外線照射による溶融によって物品を製造する方法でも使用できる。レーザー焼結法は本出願人の欧州特許第EP 1571173号公報に記載されている。
以下、本発明の実施例を記載する([表2]と[表3]参照)。
【実施例】
【0032】
得られた粉末の粒径の測定
本発明および比較例では、得られた粉末をCoulter LS230粒径分析計を用いて分析した。それによって粉末の粒度分布が得られ、それから(1)平均直径と(2)分散の幅または分散の標準偏差とを下記を求めた。
【0033】
本発明粉末の粒度分布はBeckman−CoulterのCoulter LS230粒径分析計を使用して標準的な方法に従って求めた。この粒度分布から対数関数計算方法(ソフトウェアのバージョン2.11a)を用いて体積平均直径と、標準偏差を求めることができ、それから平均直径の上下の分布の狭さまたは分布の幅を測定できる。本発明方法の1つの利点は平均直径に対して分布の幅が狭い(標準偏差が小さい)粒子を得ることができる点にある。この標準偏差は対数関数の統計計算方法(ソフトウェアのバージョン2.11a)を使用して計算した。
【0034】
見掛けの比表面積(ASSA)の測定
粒子の見掛けの比表面積はBeckman−CoulterのSA3100を使用してBET法(10点)に従って求めた。BET(Brunauer-Emmet-Teller)法は当業者に周知の方法で、米国化学会の雑誌第60巻、309頁、2月、1938年に記載されており、ISO国際規格5794/1(添付書類D)に対応する。BET法で測定した比表面積は全比表面積(すなわち、孔によって形成される表面を含む)に対応する。BET法では表面上に気体分子の単分子層を吸収する。用いる気体は窒素である。
【0035】
無機充填剤をシード添加した実施例([表2])
実施例1
窒素下に維持した反応装置中に、2210mlの溶剤を導入し、次いで719gの乾燥ラウリルラクタムと、21.5gのEBS、0.45gのN−ステアルアミドと、13.8gの微粉シリカ(アエロジル(登録商標、AEROSIL)R972)とを順次導入する。350回転/分の速度で撹拌を開始した後、反応混合物を徐々に110℃まで加熱し、減圧下で265mlの溶剤を分離する。共沸混合物として痕跡量の水を随伴させる。
大気圧へ戻し、アニオン触媒と、油に分散させた1.44gの60%純度のナトリウムハイドライドとを導入し、撹拌速度を窒素下、110℃で30分間かけて650回転/分に上げる。
次に、温度を95℃にする。小さい定量ポンプを用いて、選択された活性化剤すなわちステアリルイソシアネート(溶剤を用いて41.3gを323.2gにする)を下記のプログラムに従って反応媒体に連続的に注入する:
21.6g/時のイソシアネート溶液を300分間、
77.6g/時のイソシアネート溶液を150分間。
同時に、温度を最初の300分間は95℃に維持し、次に30分かけて120℃に上げ、イソシアネートの導入後、さらに2時間120℃に維持する。
重合が終了する。反応装置はほとんど汚れない。
80℃に冷却、デカンテーションおよび乾燥後の粒径は1〜20μmで、平均粒径は6μmで、凝集体は存在せず、ASSAは20.7m2/gである。
【0036】
実施例2
実施例1の操作を繰り返すが、14.5gのEBSを用いた。重合終了時、反応装置はほとんど汚れていない。粒径は1〜20μmで、平均粒径は6.3μmで、凝集体は存在せず、ASSAは7.1m2/gである。
実施例1と実施例2とを比較すると、粒径が同等の場合、EBSの量を減らすと、ASSAが大きく減少することがわかる。
【0037】
実施例3
窒素下に維持した反応装置中に、2800mlの溶剤を導入し、次いで899gの乾燥ラウリルラクタムと、27.7gのEBS、0.45gのN−ステアルアミドと、3.6gの微粉シリカ(アエロジル(登録商標、AEROSIL)R972)とを順次導入する。350回転/分の速度で撹拌を開始した後、反応混合物を徐々に110℃まで加熱し、減圧下で290mlの溶剤を分離する。共沸混合物として痕跡量の水を随伴させる。
大気圧へ戻し、アニオン触媒と、油に分散させた1.44gの60%純度のナトリウムハイドライドとを導入し、撹拌速度を窒素下、110℃で30分間かけて720回転/分に上げる。
次に、温度を99.7℃にする。小さい定量ポンプを用いて、選択された活性化剤すなわちステアリルイソシアネート(溶剤を用いて55.7gを237.7gにする)を下記のプログラムに従って反応媒体に連続的に注入する:
14.4g/時のイソシアネート溶液を300分間、
52.1g/時のイソシアネート溶液を150分間。
同時に、温度を最初の300分間は99.7℃に維持し、次に30分かけて120℃に上げ、イソシアネートの導入後、さらに1時間120℃に維持する。
重合が終了する。反応装置はほとんど汚れていない。80℃に冷却、デカンテーションおよび乾燥後の粒径は2〜25μmで、平均粒径は10.0μmで、ASSAは12.2m2/gで、凝集体は存在しない。
【0038】
実施例4
実施例3の条件と同じ条件を用いたが、N−ステアルアミドは添加しない。得られたポリアミド12の粉末は下記の特徴を有する:
粒径は2〜25μmで、平均粒径は10.4μmで、ASSAは7.7m2/gで、凝集体は存在しない。反応装置はほとんど汚れていない。
【0039】
実施例5
窒素下に維持した反応装置中に、2800mlの溶剤を導入し、次いで323gのカプロラクタムと、575gの乾燥ラウリルラクタムと、30.9gのEBSと、10.8gの微粉シリカとを順次導入する。300回転/分の速度で撹拌を開始した後、反応混合物を徐々に110℃まで加熱し、減圧下で290mlの溶剤を分離し、共沸混合物として痕跡量の水を随伴させる。
大気圧へ戻し、アニオン触媒と、油に分散させた9gの60%純度のナトリウムハイドライドとを導入し、撹拌速度を窒素下、110℃で30分間かけて720回転/分に上げる。
次に、温度を81℃にする。小さい定量ポンプを用いて、選択された活性化剤すなわちステアリルイソシアネート(溶剤を用いて32.9gを323.9gにする)を下記のプログラムに従って反応媒体に連続的に注入する:
53.9g/時のイソシアネート溶液を300分間。
同時に、温度を最初の300分間は81℃に維持し、次に60分かけて110℃に上げ、イソシアネートの導入後、さらに3時間110℃に維持する。重合を終了する。反応装置はほとんど汚れていない。80℃に冷却、デカンテーションおよび乾燥後の粒径は2〜25μmで、平均粒径は11.7μmで、ASSAは28.8m2/gで、凝集体は存在しない。
【0040】
実施例6
実施例5の操作を繰り返すが、7.2gのEBSを用いた。重合終了時、反応装置はほとんど汚れていない。粒径は2〜25μmで、平均粒径は13.7μmで、ASSAは15.9m2/gで、凝集体は存在しない。
実施例5と実施例6とを比較すると、平均直径をわずかに大きくした場合は、EBSの量を減らすと、ASSAが大きく減少することがわかる。
【0041】
有機充填剤をシード添加した実施例([表3])
実施例7
窒素下に維持した反応装置中に、2800mlの溶剤を導入し、次いで108gのカプロラクタムと、679gの乾燥ラウリルラクタムと、14.4gのEBSと、112gの微粉シリカ(オルガゾル(登録商標、ORGASOL)2001 UD NAT1)とを順次導入する。300回転/分の速度で撹拌を開始した後、反応混合物を徐々に110℃まで加熱し、減圧下で290mlの溶剤を分離し、共沸混合物として痕跡量の水を随伴させる。
大気圧へ戻し、アニオン触媒と、油に分散させた7.2gの60%純度のナトリウムハイドライドとを導入し、撹拌速度を窒素下、110℃で30分間かけて720回転/分に上げる。
次に、温度を96℃にする。小さい定量ポンプを用いて、選択された活性化剤すなわちステアリルイソシアネート(溶剤を用いて32.9gを314gにする)を下記のプログラムに従って反応媒体に連続的に注入する:
10g/時のイソシアネート溶液を300分間、
88g/時のイソシアネート溶液を180分間。
同時に、温度を最初の360分間は96℃に維持し、次に60分かけて110℃に上げ、イソシアネートの導入後、さらに2時間110℃に維持する。
重合を終了する。反応装置はほとんど汚れていない。80℃に冷却、デカンテーションおよび乾燥後の粒径は2〜20μmで、平均粒径は11.8μmで、ASSAは9.3m2/gで、凝集体は存在しない。
【0042】
実施例8
実施例7の操作を繰り返すが、24.7gのEBSを用いた。重合終了時、反応装置はほとんど汚れていない。粒径は1〜20μmで、平均粒径は11.4μmで、凝集体は存在せず、ASSAは13.2m2/gである。
【0043】
実施例9
実施例7の操作を繰り返すが、30.9gのEBSを用いた。重合終了時、反応装置はほとんど汚れていない。粒径は1〜20μmで、平均粒径は11.4μmで、凝集体は存在せず、ASSAは15m2/gである。
実施例7〜9を比較すると、粒径または平均直径がほぼ同じまたはほぼ一定である場合、EBSの量を増やすとASSAが大きく増加することがわかる。
【0044】
【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミドの中から選択されたポリマーの粉末を溶剤中で溶液アニオン重合によって製造する方法において、
上記ポリマーの構成モノマーの重合を(1)触媒、(2)活性化剤、(3)N,N’−アルキレンビスアミドから選択される少なくとも一種のアミドおよび(4)最大密度が4.5cm3/gである有機または無機の充填剤の存在下で行い、反応媒体中に添加するアミドの量を粉末粒子の所望の見掛けの比表面積(ASSA)の関数で決め、粉末粒子の直径はほぼ一定にすることを特徴とする方法。
【請求項2】
ポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミドの中から選択されたポリマーの粉末を溶剤中での溶液アニオン重合によって製造する方法において、
ポリマーの構成モノマーの重合を(1)触媒、(2)活性化剤、(3)N,N’−アルキレンビスアミドから選択される少なくとも一種のアミドおよび(4)最大密度が4.5cm3/gである有機または無機の充填剤の存在下で行い、反応媒体中に添加するアミドの量を粉末粒子の所望の平均直径の関数で決め、粉末粒子の見掛けの比表面積(ASSA)はほぼ一定にすることを特徴とする方法。
【請求項3】
アミドの量を増加してASSAを大きくする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アミドの量を増加して平均直径を小さくする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーの構成モノマーがラクタム、例えばラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタムまたはこれらの混合物、好ましくはラウリルラクタム単独、カプロラクタム単独またはこれらの混合物の中から選択する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマーの構成モノマーが下記(1)〜(3)の混合物(合計で100モル%)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法:
(1)1〜98モル%のラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタムおよびカプリルラクタムの中から選択されるラクタム、
(2)1〜98モル%のラウリルラクタム、カプロラクタム、エナントラクタムおよびカプリルラクタムの中から選択される上記(1)以外のラクタム、
(3)1〜98モル%のカプロラクトン、バレロラクトンおよびブチロラクトンの中から選択するラクトン、
有利には30〜46モル%のカプロラクタム、30〜46モル%のラウリルラクタムおよび8〜40モル%のカプロラクトン。
【請求項7】
触媒がナトリウムハイドライド、カリウムハイドライド、ナトリウム、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドの中から選択する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
活性化剤をラクタム−N−カルボキシアニリド、(モノ)イソシアネート、(ポリ)イソシアネート、カルボジイミド、シアナミド、アシルラクタムおよびアシルカルバミメート、トリアジン、尿素、N−置換イミド、エステルおよび三塩化燐の中から選択し、活性化剤をラクタム−N−カルボキシアニリド、(モノ)イソシアネート、(ポリ)イソシアネート、カルボジイミド、シアナミド、アシルラクタムおよびアシルカルバメート、トリアジン、尿素、N−置換イミド、エステルおよび三塩化燐の中から選択する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
N,N’−アルキレンビスアミドをN,N’−エチレンビスステアルアミド(EBS)およびN,N’−エチレンビスオレアミド(EBO)の中から選択する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
無機充填剤をシリカ、アルミノシリケート、酸化アルミニウムまたはアルミナ、二酸化チタンおよびBNの中から選択する請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
有機充填剤をホモポリアミドまたはコポリアミドの粉末、好ましくはPA12、PA11、PA6、PA6−12、PA6,12、PA6,6、PA8、PA4、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ(メチル)メタクリレート(PMMA)、ポリアクリレート、ポリエステル、シリコン、ポリエチレンおよびポリテトラフルオロエチレンの粉末の中から選択する請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
粒度分布の幅が請求項10に記載の方法によって得られる粒度分布の幅よりも狭い請求項11に記載の方法。
【請求項13】
得られる粉末粒子の平均直径が<30μm、有利には<20μmである請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ASSAが<40m2/g、有利には<30m2/gである請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法で得られるポリアミド、コポリアミドまたはコポリエステルアミドの中から選択されるポリマーの粉末粒子。
【請求項16】
有機充填剤がオルガゾル(Orgasol、登録商標)である請求項15に記載の粒子。
【請求項17】
カーボンナノチューブ、金属粒子、顔料、染料、抗酸化剤、紫外線安定剤、可塑剤およびカーボンブラックの中から選択される少なくとも一種の化合物をさらに含む請求項15または16に記載の粒子の組成物。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法によって得られる粉末粒子、請求項15または16に記載の粒子または請求項17に記載の組成物の、複合材料、転写紙、基材、特に金属基材の被覆(コイル塗装)、固体または液体のペイントまたはインキ組成物、化粧組成物および/または医薬組成物の製造での使用。
【請求項19】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法で得られる粉末粒子、請求項15または16に記載の粒子または請求項17に記載の組成物の、上記粉末単独または組成物を圧縮するか、レーザー光線(レーザー焼結)、IR照射または紫外線照射(紫外線硬化)によって焼結または溶融させて凝集させた物品の製造での使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−514876(P2010−514876A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543507(P2009−543507)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052584
【国際公開番号】WO2008/087335
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】