説明

アブソリュートエンコーダ

【課題】トラック数を増やさなくても高分解能であり、かつセンサの個体差による影響を低減できるアブソリュートエンコーダを提供する。
【解決手段】アブソリュートエンコーダは、信号パターンを読み取り可能な複数のセンサを含み、複数のセンサの位置が異なるように配列されたセンサ集合体と、信号パターンを含む基体と、を含むエンコーダユニットと、センサ集合体の出力から、センサ集合体と基体との絶対位置を算出する演算装置と、を有し、センサ集合体と基体とが相対的に移動すると、複数のセンサの検知範囲を信号パターンが移動する。複数のセンサの検知範囲を信号パターンが移動することで、トラック数を多くする必要がなく、アブソリュートエンコーダの分解能を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶対的な位置又は角度を検出するアブソリュートエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、各種機械装置において、可動要素の位置や角度を検出するために用いられている。一般に、エンコーダは、相対的な位置又は角度を検出するエンコーダと、絶対的な位置又は角度を検出するエンコーダがある。絶対的な位置又は角度を検出するエンコーダは、アブソリュートエンコーダと呼ばれる(特許文献1)。近年アブソリュートエンコーダは、適用する各種機械の小型化や高精度化に対応するため、小型化及び高分解能の両立が求められている。
【0003】
また、他のアブソリュートエンコーダ(特許文献2)では、回転円板に当該回転円板の回転角度に応じて半径が変動する円に近似した曲線からなる光学的に検出可能な光学パターンを形成し、これを、回転円板の回転方向に向けて90度の角度離れた位置に配置した第1及び第2の光学センサによって検出することにより、90度位相のずれた信号を生成し、これらの2つの信号に基づき、レゾルバ・デジタルコンバータにおいて必要ビット数のアブソリュート信号群を生成して出力するようにしている。
【0004】
磁気式のアブソリュートエンコーダ(特許文献3)では、回転側軌道輪である内輪に同心に取り付けられた環状の磁気エンコーダと、固定側軌道輪である外輪に取り付けられて前記磁気エンコーダの磁気を検出する磁気センサとを備え、回転側軌道輪の絶対角度を検出することが知られている。磁気エンコーダは、例えばその磁石の厚さが一周にわたり連続的に変化するものとする。これにより、磁気センサの検出する磁界の強さが、磁気エンコーダの1周にわたり連続的に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−344359号公報
【特許文献2】特開平9−96544号公報
【特許文献3】特開2006−322474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アブソリュートエンコーダの分解能を高めようとすると、トラック数を多くする必要がある。トラック数を多くすると、回転円板の大きさが大きくなる。アブソリュートエンコーダは、分解能を高めようとすると小型化できずコストも増加する。また、特許文献2及び特許文献3のアブソリュートエンコーダでは、信号パターンに対応するセンサを1つしか使用しないため、センサの個体差を考慮する必要がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、トラック数を増やさなくても高分解能であり、かつセンサの個体差による影響を低減できるアブソリュートエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアブソリュートエンコーダは、信号パターンを読み取り可能な複数のセンサを含み、前記複数のセンサの位置が異なるように配列されたセンサ集合体及び前記信号パターンを含む基体を含むエンコーダユニットと、前記センサ集合体の出力から、前記センサ集合体と前記基体との絶対位置を算出する演算装置と、を有し、前記センサ集合体と前記基体とが相対的に移動すると、前記複数のセンサの検知範囲を前記信号パターンが移動することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るアブソリュートエンコーダでは、前記複数のセンサの検知範囲を前記信号パターンが移動することで、トラック数を多くする必要がなく、アブソリュートエンコーダの分解能を高めることができる。その結果、アブソリュートエンコーダの基体は小さくなり、アブソリュートエンコーダが小型にできる。また、複数のセンサを有しているので、1つのセンサの個体差の影響が低減できる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記信号パターンが前記複数のセンサのうち隣り合う一組のセンサの両方で検知可能であることが好ましい。その結果、複数のセンサの検知範囲を信号パターンが移動しても検知範囲の盲点ができないようになる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記センサ集合体は、第1の電圧検出端子と、前記第1の電圧検出端子と所定抵抗を介して接続される第2の電圧検出端子とを有し、電源電圧が前記複数のセンサに印加され、前記複数のセンサがそれぞれ前記第1の電圧検出端子及び前記第2の電圧検出端子の間に出力可能であって、隣り合うセンサ同士がそれぞれのセンサから前記第1の電圧検出端子までの間で抵抗値が異なるように前記所定抵抗と接続され、前記演算装置は、前記第1の電圧検出端子の第1電圧出力と前記第2の電圧検出端子の第2電圧出力とを減算した減算値を、前記第1電圧出力と前記第2電圧出力とを加算した加算値で除算した電圧値をセンサ出力として出力することが好ましい。
【0012】
本発明に係るアブソリュートエンコーダでは、複数のセンサの電流分布の中心位置が((第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)/(第1の電圧出力V1+第2の電圧出力V2))に比例している。複数のセンサの電流分布の中心位置は、単一のセンサで検出する場合と比較して、複数のセンサのばらつきが平均されて出力されるのでセンサの個体差による影響を低減できる。また、(第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)を確認しているので、光量や磁界の外乱や環境条件に左右されず、安定したセンサ出力を出力する。その結果、アブソリュートエンコーダでは、エラーを生じるおそれを低減できる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記センサ集合体は、第1の電圧検出端子と、前記第1の電圧検出端子と所定抵抗を介して接続される第2の電圧検出端子とを有し、電源電圧が前記複数のセンサに印加され、前記複数のセンサがそれぞれ前記第1の電圧検出端子及び前記第2の電圧検出端子の間に出力可能であって、隣り合うセンサ同士がそれぞれのセンサから前記第1の電圧検出端子までの間で抵抗値が異なるように前記所定抵抗と接続され、前記演算装置は、前記第1の電圧検出端子の第1電圧出力と前記第2の電圧検出端子の第2電圧出力とを減算した減算値をセンサ出力として出力する。
【0014】
本発明に係るアブソリュートエンコーダでは、複数のセンサの電流分布の中心位置が((第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)に比例している。複数のセンサの電流分布の中心位置は、単一のセンサで検出する場合と比較して、複数のセンサのばらつきが平均されて出力されるのでセンサの個体差による影響を低減できる。また、(第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)を確認しているので、光量や磁界の外乱や環境条件に左右されず、安定したセンサ出力を出力する。その結果、アブソリュートエンコーダでは、エラーを生じるおそれを低減できる。また、簡易に演算できるので、演算装置の構成を簡素にできる。
【0015】
本発明の望ましい態様として、アブソリュートエンコーダは、前記複数のセンサが受光素子であり、前記信号パターンが前記基体とは光の反射率の異なるパターンであることが好ましい。本発明のアブソリュートエンコーダでは、簡易なパターンで構成できるので、製造コストを下げることができる。
【0016】
本発明の望ましい態様として、アブソリュートエンコーダは、前記複数のセンサが磁気センサであり、前記信号パターンが磁界を形成するパターンであることが好ましい。本発明のアブソリュートエンコーダでは、簡易なパターンで構成できるので、製造コストを下げることができる。また、仮にセンサ集合体と信号パターンの間に異物が混入する場合であってもアブソリュートエンコーダが動作することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアブソリュートエンコーダによれば、トラック数を増やさなくても高分解能であり、かつセンサの個体差による影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本実施形態に係るアブソリュートエンコーダの構成図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るエンコーダユニットの構成図である。
【図3】図3は、図2に示すエンコーダユニットの断面図である。
【図4】図4は、エンコーダユニットの他の変形例を示す部分構成図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るセンサと信号パターンとの関係を説明するための模式図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るセンサ接続回路を説明するための説明図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る演算処理部の構成図である。
【図8】図8は、本実施形態に係るセンサ出力と回転角度の関係を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るエンコーダユニットの構成図である。
【図10】図10は、本実施形態に係るセンサと信号パターンとの関係を説明するための模式図である。
【図11】図11は、本実施形態に係るセンサ接続回路を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るアブソリュートエンコーダの構成図である。図2は、本実施形態に係るエンコーダユニットの構成図である。図3は、図2に示すエンコーダユニットの断面図である。まず、図1を用いて、本実施形態に係るアブソリュートエンコーダの概要を説明する。
【0021】
図1に示すように、アブソリュートエンコーダ100は、エンコーダユニット1と、演算装置40とを有している。アブソリュートエンコーダ100の演算装置40は、モータ等の回転機械の制御部65と接続されている。エンコーダユニット1は、図2及び図3を用いて、詳細に後述する。演算装置40は、センサ信号処理回路41と、演算処理部42とを有している。演算処理部42は、AD変換部51、52と、角度演算部61、62と、角度合成部63とを有している。本実施形態に係るアブソリュートエンコーダ100では、絶対位置データDとして角度情報である絶対角度データを制御部65へ出力する。なお、アブソリュートエンコーダ100は、絶対位置データDを座標等で出力してもよい。
【0022】
図2及び図3に示すように、エンコーダユニット1は、基体であるロータ30と、複数のセンサ集合体(読取部)10、20と、シャフト38とを有している。ロータ30は、円板形状の部材である。ロータ30は、シリコン、ガラス、高分子材料等で形成されている。ロータ30は、信号パターン31を一方の板面である基体表面32に有している。また、ロータ30には、板面の回転中心Oと、シャフト38の中心軸が一致するようにシャフト38が取り付けられている。
【0023】
図2及び図3に示すシャフト38は、ロータ30に取り付けられると共に、モータ等の回転機械に連結されている。シャフト38がモータからの回転により回転すると、シャフト38に連動してロータ30が回転中心Oを中心として回転する。
【0024】
信号パターン31は、ロータ30の径方向に一定幅で形成された曲線帯状のパターンである。信号パターン31は、基体表面32とは光の反射率の異なるパターンでできている。本実施形態では、例えば、金(Au)をロータ30の表面に成膜して信号パターン31が形成される。他の変形例としては、ロータ30の円板と同形状の紙を用意し、下地を黒色に、信号パターン31を白色に印刷し、基体表面32に貼り付けることで、信号パターン31を形成する。
【0025】
図2に示す信号パターン31の内周での位置を表す位置mから回転中心Oまでの距離Xについて説明する。図2においては、回転中心を通る互いに直交する直線がラインL1、L2である。ラインL1が信号パターン31の内周と交わる点を位置m及び位置m180とする。また、ラインL2が信号パターン31の内周と交わる点を位置m90及び位置m270とする。信号パターン31は、位置mが信号パターン31の内周のなかで、最も転中心Oまでの距離が短い。信号パターン31の内周での位置を表す位置mが位置mにあるとき、距離Xは距離Xとなり、距離Xは位置mから回転中心Oまでの最短距離を表す。信号パターン31の内周での位置を表す位置mが位置mにあるときを基準として、回転中心Oを中心に中心角θが中心角0°(位置m)から中心角180°(位置m180)まで位置m90を経由して動いたときの位置mの距離Xは、下記式1のように変化する。式1のkは、0でない定数である。
【0026】
【数1】

【0027】
距離Xは、中心角θに応じて必ず異なる距離となる。これにより、位置mは、ロータ30の中心角0°から中心角180°に応じてロータ30の径方向の距離が異なる。次に、信号パターン31の内周での位置を表す位置mが位置mにあるときを基準として、回転中心Oを中心に中心角θが中心角180°(位置m180)から中心角360°(0°、位置m)まで位置m270を経由して動いたときの位置mの距離Xは、下記式2のように変化する。式2のkは、0でない定数である。
【0028】
【数2】

【0029】
信号パターン31は、ラインL1に対して、線対称形状をしている。また、信号パターン31は、ラインL2に対して、非対称形状をしている。距離Xは、中心角θに応じて必ず異なる距離となる。これにより、位置mは、ロータ30の中心角180°から中心角360°(0°)に応じてロータ30の径方向の位置が異なる。
【0030】
信号パターン31は、回転角θに応じて位置mが必ず異なる距離Xとなれば、図3のパターンに限られない。例えば、他の変形例としては、図4に示す信号パターン33がある。図4においては、回転中心を通る互いに直交する直線がラインL1、L2である。ラインL1が信号パターン33の内周と交わる点を位置n及び位置n180とする。また、ラインL2が信号パターン31の内周と交わる点を位置n90及び位置n270とする。信号パターン33は、位置nが信号パターン33の内周のなかで、最も回転中心Oまでの距離が短い。信号パターン33の内周での位置を表す位置nが位置nにあるとき、距離Xは距離Xとなり、距離Xは位置nから回転中心Oまでの最短距離を表す。信号パターン33の内周での位置を表す位置mが位置nにあるときを基準として、回転中心Oを中心に中心角θが中心角0°から中心角360°まで動いたときの位置nの距離Xは、下記式3のように変化する。式3のkは、0でない定数である。
【0031】
【数3】

【0032】
距離Xは、中心角θに応じて必ず異なる距離となる。回転中心Oを中心に中心角360°動かすと、ラインL1上でnとn360が重なり合わない位置にある。また、信号パターン端部33aと信号パターン端部33bとが不連続となっている。これにより、位置nは、ロータ30の回転角度0°から回転角度360°(0°)に応じてロータ30の径方向の位置が異なる。本実施形態1の信号パターン31は、変形例の信号パターン33に比べて信号パターン端部の不連続点がないためセンサ集合体の出力が連続的に変化できる。このため、本実施形態1の信号パターン31は変形例の信号パターン33に比べて、ロータ30が連続回転する場合にセンサ出力の処理が容易である。
【0033】
センサ集合体10、20は、シャフト38及びロータ30とは独立なステータに固定されている。センサ集合体10、20は、ロータ30が回転すると、センサ集合体10、20とロータ30との相対位置が変化する。センサ集合体(読取部)10、20は、ロータ30との相対位置の位相がずれるように配置された同一構造のセンサ集合体である。図2に示すセンサ集合体(読取部)10、20の位相のずれは、90°である。センサ集合体(読取部)10、20の位相のずれは、180°以外であればよい。以下、センサ集合体10を代表して説明する。
【0034】
図5は、本実施形態に係るセンサと信号パターンとの関係を説明するための模式図である。図6は、本実施形態に係るセンサ接続回路を説明するための説明図である。図5に示すように、センサ集合体10は、光センサ11、12、13、14、15及びセンサ基板16を有している。光センサ11、12、13、14、15は、ロータ30に対向する側のセンサ基板16上にセンサ間隔pごとに配列されている。図5に示すように、ロータ30に、センサ集合体10が対向すると、センサ基板16とロータ30の基体表面32と平行となり、光センサ11、12、13、14、15と基体表面32との距離dは、一定となる。光センサ11、12、13、14、15は、各々ロータ30の径方向に対して位置が異なっている。なお、センサ集合体10、20は、光センサの数は複数であればよく、5つに限定されない。センサの数が増加すると、アブソリュートエンコーダ100の分解能が向上する。
【0035】
本実施形態では、光センサ11、12、13、14、15は、信号パターン31を読み取り可能な反射方式のフォトインタラプタである。図6に示す光センサ11、12、13、14、15は、各々発光素子111、121、131、141、151及び受光素子112、122、132、142、152を有している。発光素子111、121、131、141、151は、同一の発光ダイオード(LED)である。受光素子112、122、132、142、152は、同一のフォトトランジスタである。発光素子111、121、131、141、151は、基体表面32へ発光し、受光素子112、122、132、142、152が基体表面32からの反射光を受光する。基体表面32へ発光された光が反射する反射強度は、基体表面32と信号パターン31とで比較すると、信号パターン31の強度が高くなっている。受光素子112、122、132、142、152は、信号パターン31の反射光を受光すると、電流量が増加する。なお、受光素子112、122、132、142、152は、フォトダイオードをもちいることもできる。
【0036】
図5に示す光センサ11、12、13、14、15には、センサ固有の感度範囲により制限される検知範囲D11、D12、D13、D14、D15がある。検知範囲D11、D12、D13、D14、D15は、少なくとも隣接する検知範囲が重複する領域U1、U2、U3、U4を有している。領域U1、U2、U3、U4では、隣接する検知範囲となるセンサ同士が信号パターン31を検知可能である。信号パターン31が複数のセンサのうち隣り合う一組のセンサの両方で検知可能な検知範囲が存在すれば、検知範囲の盲点ができないようになる。このためには、検知範囲D11、D12、D13、D14、D15、センサ間隔p、基体表面32との距離d、信号パターン幅Wを調整することが望ましい。例えば、センサ及び基板自体の大きさの制約よりセンサ間隔pを決定し、光センサ11、12、13、14、15の出力特性と検知範囲とを考慮して基体表面32との距離dを決定し、信号パターン幅Wが調整される。
【0037】
センサ基板16には、図6に示すセンサ接続回路17が形成されている。センサ接続回路17は、電源電圧VDD1、VDD2と、抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16、R1、R2、RLEDと、電圧検出端子T1、T2と、光センサ11、12、13、14、15とを接続する回路である。
【0038】
発光素子111、121、131、141、151は、直列接続されている。直列接続された発光素子の一端である発光素子111が電源電圧VDD2と抵抗RLEDを介して接続され、他端である発光素子151が基準電位(GND)に接続されている。発光素子111、121、131、141、151は一定の電流で駆動され発光する。
【0039】
受光素子112、122、132、142、152の各コレクタ端子は、すべて電源電圧VDD1に接続されている。抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16は、直列に接続されている抵抗群である。抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16はいずれも同一の抵抗値である。抵抗群の一端の抵抗r11は電圧検出端子T2に接続し、他端の抵抗r16は電圧検出端子T1に接続されている。電圧検出端子T2は、抵抗r11と接続すると共に、抵抗R2を介して基準電位(GND)に接続されている。電圧検出端子T1は、抵抗r16と接続すると共に、抵抗R1を介して基準電位(GND)に接続されている。
【0040】
受光素子112のエミッタ端子は、抵抗r11と抵抗r12との間に接続されている。同様に、受光素子122のエミッタ端子は、抵抗r12と抵抗r13との間に接続されている。受光素子132のエミッタ端子は、抵抗r13と抵抗r14との間に接続されている。受光素子142のエミッタ端子は、抵抗r14と抵抗r15との間に接続されている。受光素子152のエミッタ端子は、抵抗r15と抵抗r16との間に接続されている。つまり、電源電圧が複数のセンサに印加され、複数のセンサがそれぞれ電圧検出端子T1及び電圧検出端子T2の間に出力可能であって、隣り合うセンサ同士がそれぞれのセンサから第1の電圧検出端子までの間で抵抗値が異なるように所定抵抗である抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16とはしご状に接続されている。
【0041】
電圧検出端子T1は、電圧V1を出力する。電圧検出端子T2は、電圧V2を出力する。電圧検出端子T1、T2は、図1に示すセンサ信号処理回路41に接続されている。センサ信号処理回路41は、センサ集合体10、20の各電圧検出端子T1、T2から出力される電圧V1、及びV2の電圧信号S1、S2を受け取り、センサ出力G1及びG2を演算処理部42へ出力するアナログ回路である。例えば、センサ信号処理回路41は、センサ集合体10の電圧信号S1をG1=((V1−V2)/(V1+V2))として処理するアナログ回路である。また、センサ信号処理回路41は、センサ集合体20の電圧信号S2をG2=((V1−V2)/(V1+V2))として処理するアナログ回路である。これにより、センサ信号処理回路41は、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを減算した減算値を、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを加算した加算値で除算した電圧値をセンサ出力G1、G2として出力する。
【0042】
センサ出力G1、G2は、各受光素子112、122、132、142、152に流れている電流分布の中心位置が((V1−V2)/(V1+V2))に比例していることを示している。電流分布の中心位置とは、各受光素子112、122、132、142、152のフォトトランジスタのうち反射光が高い位置を表す値となる。単一のセンサで検出する場合と比較して、本実施形態のセンサ出力G1、G2は、受光素子112、122、132、142、152のばらつきを平均して、出力できるので、センサの個体差による影響を低減できる。
【0043】
なお、本実施形態では、(V1+V2)は、すべての受光素子が受光した光量の総和に比例することが見いだされた。例えば、光センサ11、12、13、14、15と基体表面32との距離dが一定で、信号パターン幅Wが一定の条件であれば、受光素子112、122、132、142、152が受光する光量の総和が常に一定と見なされる。その結果、(V1+V2)は一定と見なされるので、上述のセンサ信号処理回路41では、センサ集合体10の電圧信号S1をG1=(V1−V2)として処理すればよい。同様に、センサ信号処理回路41は、センサ集合体20の電圧信号S2をG2=(V1−V2)として処理する。センサ信号処理回路41では、(V1+V2)の加算処理及び、(V1−V2)を(V1+V2)で除算する除算処理を省略することができる。これにより、センサ信号処理回路を簡素にすることができる。このセンサ信号処理回路41は、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを減算した減算値を、センサ出力G1、G2として出力する。センサ出力G1、G2は、各受光素子112、122、132、142、152に流れている電流分布の中心位置が(V1−V2)に比例する。これにより、電流分布の中心位置とは、各受光素子112、122、132、142、152のフォトトランジスタのうち反射光が高い位置を表す値となる。単一のセンサで検出する場合と比較して、本実施形態のセンサ出力G1、G2は、受光素子112、122、132、142、152のばらつきを平均して、出力できるので、センサの個体差による影響を低減できる。
【0044】
図7は、本実施形態に係る演算処理部の構成図である。演算処理部42は、マイクロコンピュータ(マイコン)等のコンピュータであり、入力インターフェース42aと、出力インターフェース42bと、CPU42cと、ROM42dと、RAM42eと、内部記憶装置42fと、を含んでいる。入力インターフェース42a、出力インターフェース42b、CPU42c、ROM42d、RAM42e及び内部記憶装置42fは、内部バスに接続されている。
【0045】
入力インターフェース42aは、センサ信号処理回路41からのセンサ出力G1、G2を受け取り、CPU42cに出力する。出力インターフェース42bは、CPU42cから絶対位置データDを受け取り、制御部65に出力する。
【0046】
ROM42dには、BIOS等のプログラムが記憶されている。内部記憶装置42fは、例えばHDDやフラッシュメモリ等であり、オペレーティングシステムプログラムやアプリケーションプログラムを記憶している。CPU42cは、RAM42eをワークエリアとして使用しながらROM42dや内部記憶装置42fに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。
【0047】
内部記憶装置42fは、絶対位置(絶対角度)とセンサ出力G1、G2とを対応付けた絶対位置(絶対角度)データベースが記憶されている。演算処理部42は、上述したコンピュータにより、図1に示すAD変換部51、52、角度演算部61、62、角度合成部63を含む。AD変換部51、52は、入力インターフェース42aを用いてアナログデータをデジタル変換する。角度演算部61、62は、CPU42cがRAM42eを一時記憶のワークエリアとして使用しながら、内部記憶装置42fに記憶された絶対位置(絶対角度)データベースにセンサ出力G1、G2を与えて、絶対位置(絶対角度)を導出する演算処理を行う。角度合成部63は、角度演算部61と角度演算部62との演算結果から最終的な絶対角度を判断し、制御部65へ出力インターフェース42bを介して絶対位置データ(絶対角度データ)Dを出力する。
【0048】
次に、図1、図2及び図5から図8を参照しながら、エンコーダユニット1を有するアブソリュートエンコーダ100の絶対角度検出の手順を説明する。図8は、本実施形態に係るセンサ出力と回転角度の関係を説明するための説明図である。エンコーダユニット1は、シャフト38がモータからの回転により回転すると、シャフト38に連動してロータ30が回転中心Oを中心として回転する。センサ集合体10、20と、ロータ30との相対位置が変化し、センサ集合体10、20がロータ30上の信号パターン31の反射光を検出する。
【0049】
例えば、センサ集合体10の対向する位置がmであるとき、図5に示す光センサ11と光センサ12の検知範囲D11、D12に信号パターン31が存在する。センサ集合体10の対向する位置がm90であるとき、図5に示す光センサ12と光センサ13の検知範囲D12、D13に信号パターン31が存在する。センサ集合体10の対向する位置がm180であるとき、図5に示す光センサ14と光センサ15の検知範囲D14、D15に信号パターン31が存在する。センサ集合体10とロータ30とが相対的に移動すると、信号パターン31が検知範囲D11から検知範囲D15へ移動することになる。
【0050】
信号パターン31が検知範囲D11から検知範囲D15へ移動すると、図6に示す電圧検出端子T1の電圧V1が高くなり、電圧検出端子T2の電圧V2が低くなる。センサ信号処理回路41は、センサ集合体10の電圧信号S1をセンサ出力G1=((V1−V2)/(V1+V2))として処理し、センサ集合体20の電圧信号S2をセンサ出力G2=((V1−V2)/(V1+V2))として処理すると、図8に示すようにセンサ出力G1、G2を増減する。
【0051】
演算装置40は、図8に示すセンサ出力と回転角度の関係を絶対角度とセンサ出力とを対応付けた絶対位置(絶対角度)データベースとして内部記憶装置42fに記憶してある。アナログデータであるセンサ出力G1、G2は、AD変換部51、52によりデジタル変換され、角度演算部61、62に送られる。角度演算部61、62は、デジタル変換されたセンサ出力G1、G2を絶対位置(絶対角度)データベースに与え、回転角度θのデータをえる。角度演算部61、62は、デジタル変換されたセンサ出力G1、G2を用いて演算により回転角度θのデータを求めてもよい。この場合、角度合成部63は、角度演算部61、62でえられた複数の回転角度θのデータから、角度差の絶対値が最小となる絶対位置データ(絶対角度データ)Dを求めて出力する。
【0052】
また、角度合成部63は、例えばセンサ出力G1、G2の大小関係を用いて絶対位置データ(絶対角度データ)Dを求めて出力してもよい。あるいは、角度合成部63は、角度演算部61、62でえられた複数の回転角度θのデータを組み合わせて、差分の絶対値を算出し、差分の絶対値を用いて絶対位置データ(絶対角度データ)Dを求めて出力してもよい。
【0053】
本実施形態では、演算装置40は、センサ信号処理回路41と、演算処理部42とを有している。他の変形例として、演算装置40は、センサ信号処理回路41を省略することができる。センサ信号処理回路41を省略する場合、演算処理部42は、直接センサ集合体10、20の各電圧検出端子T1、T2から出力される電圧V1、及びV2の電圧信号S1、S2を受け取る。AD変換部51、52は、入力インターフェース42aを用いて電圧V1、及びV2の電圧信号S1、S2をデジタル変換する。CPU42cがRAM42eを一時記憶のワークエリアとして使用しながら、センサ集合体10の電圧信号S1をG1=((V1−V2)/(V1+V2))として処理する。また、CPU42cがRAM42eを一時記憶のワークエリアとして使用しながら、センサ集合体20の電圧信号S2をG2=((V1−V2)/(V1+V2))として処理する。
【0054】
本実施形態では、ラインL1に対して線対称である信号パターン31とセンサ集合体10、20とを有しているので、AD変換部51、52と、角度演算部61、62と、角度合成部63とが必要である。また、信号パターン31であっても、動作範囲が180°より小さい角度である回転角度の製品に適用する場合には、センサ集合体と、AD変換部と、角度演算部とは1つでよく、角度合成部は不要とすることもできる。また、ロボットの関節のように、動作範囲が360°より小さい角度である製品に適用する場合には、図4に示す信号パターン33のようなラインL1に対して非対称な信号パターンを用いることができる。このとき、ロータ30の回転角度に対して信号パターン33の径方向の位置は唯一に定まるのでセンサ集合体と、AD変換部と、角度演算部とは1つでよく、角度合成部は不要とすることもできる。
【0055】
上述したアブソリュートエンコーダ100は、信号パターン31を読み取り可能な複数の光センサ11、12、13、14、15を含み、複数の光センサ11、12、13、14、15の位置が異なるように配列されたセンサ集合体10、20と、信号パターン31を含む基体であるロータ30と、を含むエンコーダユニット1と、センサ集合体10、20のセンサ出力G1、G2から、センサ集合体10、20とロータ30との絶対位置を算出する演算装置40と、を有する。センサ集合体10、20とロータ30とが相対的に移動すると、複数の受光素子112、122、132、142、152の検知範囲D11、D12、D13、D14、D15を信号パターン31が移動する。
【0056】
本実施形態のアブソリュートエンコーダでは、複数のセンサの検知範囲を信号パターンが移動することで、トラック数を多くする必要がなく、アブソリュートエンコーダの分解能を高めることができる。その結果、アブソリュートエンコーダのロータは小さくなり、アブソリュートエンコーダが小型にできる。
【0057】
また、信号パターン31が複数の受光素子112、122、132、142、152のうち隣り合う一組のセンサの両方で検知可能であることが好ましい。その結果、複数のセンサの検知範囲を信号パターンが移動しても検知範囲の盲点ができないようになる。
【0058】
また、センサ集合体10、20は第1の電圧検出端子T1と、第1の電圧検出端子T1と所定抵抗である抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16とで直列接続される第2の電圧検出端子T2とを有し、電源電圧VDD1が複数の受光素子112、122、132、142、152に印加され、複数の受光素子112、122、132、142、152がそれぞれ第1の電圧検出端子T1及び第2の電圧検出端子T2間に出力可能であって、隣り合うセンサ同士がそれぞれのセンサから第1の電圧検出端子までの間で抵抗値が異なるように所定抵抗である抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16のいずれかと接続され、演算装置40は、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを減算した減算値を、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを加算した加算値で除算した電圧値をセンサ出力G1、G2として出力することが好ましい。
【0059】
本実施形態のアブソリュートエンコーダでは、複数のセンサの電流分布の中心位置が((第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)に比例している。複数のセンサの電流分布の中心位置は、単一のセンサで検出する場合と比較して、複数のセンサのばらつきが平均されて出力されるのでセンサの個体差による影響を低減できる。また、(第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)を確認しているので、光量の外乱や環境条件に左右されず、安定したセンサ出力を出力する。
【0060】
例えば、先行技術文献のアブソリュートエンコーダ(特許文献2)では、センサを1つしか使用しないため、センサの個体差を考慮する必要がある。個体差を考慮するには、個体毎にセンサ出力から回転角度データに変換する係数や変換マップの調整を行う必要がある。また、先行技術文献のアブソリュートエンコーダ(特許文献2)では、位置検出素子の電流出力は、光が入射する他方の端子から所定距離に応じた電流値に比例する。外乱や環境条件により光量が変化する場合、先行技術文献のアブソリュートエンコーダ(特許文献2)では、電流値が変化してしまうので、正しい絶対位置を出力できない。これに対し、本実施形態のアブソリュートエンコーダでは、複数のセンサの電流分布の中心位置が((第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)に比例しているため、外乱や環境条件により光量が変化しても複数のセンサの電流分布の中心位置は変化しない。その結果、アブソリュートエンコーダでは、エラーを生じるおそれを低減できる。
【0061】
また、本実施形態のアブソリュートエンコーダは、複数のセンサが受光素子であり、信号パターンが基体表面と光の反射率の異なるパターンであることが好ましい。本発明のアブソリュートエンコーダでは、反射光を利用しているためロータにスリット等の透過孔を設ける必要がなく、あるいはロータの材料を透過性のガラスに限定する必要がない。その結果、信号パターンは簡易なパターンで構成できるので、製造コストを下げることができる。
【0062】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係るエンコーダユニットの構成図である。本実施形態に係るアブソリュートエンコーダでは、エンコーダユニットのセンサ集合体が磁気を受感する磁気センサである点に特徴がある。なお、前述した実施形態で説明したものと同じ部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図10は、本実施形態に係るセンサと信号パターンとの関係を説明するための模式図である。図11は、本実施形態に係るセンサ接続回路を説明するための説明図である。
【0063】
本実施形態に係るアブソリュートエンコーダでは、図1に示すエンコーダユニット1を図9に示すエンコーダユニット2に置き換え、その他の構成は同じである。また、図1のセンサ集合体10はセンサ集合体70に対応し、センサ集合体20はセンサ集合体80に対応する。図9に示すように、エンコーダユニット2は、基体であるロータ30と、センサ集合体(読取部)70、80と、シャフト38とを有している。
【0064】
ロータ30は、シリコン、ガラス、高分子材料等で形成されている。ロータ30は、信号パターン34を一方の板面である基体表面35に有している。基体表面35は、非磁性となっている。
【0065】
信号パターン34は、上述した図2に示す信号パターン31と同じ式1及び式2となる距離Xの軌跡を描いている。これにより、信号パターン34の位置mは、ロータ30の回転角度0°から回転角度180°に応じてロータ30の径方向が異なる位置となり、ロータ30の回転角度180°から回転角度360°(0°)に応じてロータ30の径方向が異なる位置となる。信号パターン34は、ロータ30の径方向に一定幅で形成された曲線帯状のパターンである。信号パターン34は、基体表面35にマグネットシートをカットして形成される。例えば、マグネットシートはネオジム系希土類磁石を配合したラバー磁石シートが用いられる。信号パターン34は、センサ集合体70、80側がS極又はN極の単極となるように着磁されている。信号パターン34は、磁界を形成する。信号パターン34の変形例としては、フェライト等の強磁性体を基体表面35に付着させ、着磁して形成してもよい。また、ロータ30自体を鉄等の強磁性体で形成し、信号パターン34が形成される基体鏡面35の逆側面には、永久磁石を配置させる。その上で、信号パターン34を凸状とすると、信号パターン34が基体表面35と信号パターン34との高低差により磁界強度の異なるパターンとなるようにしてもよい。
【0066】
センサ集合体70、80は、シャフト38及びロータ30とは独立なステータに固定されている。センサ集合体70、80は、ロータ30が回転すると、センサ集合体70、80とロータ30との相対位置が変化する。センサ集合体70、80は、ロータ30との相対位置の位相がずれるように配置された同一構造のセンサ集合体である。図9に示すセンサ集合体70、80の位相のずれは、90°である。センサ集合体70、80の位相のずれは、180°以外であればよい。以下、センサ集合体70を代表して説明する。
【0067】
図10に示すように、センサ集合体70は、磁気センサ71、72、73、74、75及びセンサ基板76を有している。磁気センサ71、72、73、74、75は、ロータ30に対向する側のセンサ基板76上にセンサ間隔pごとに配列されている。図10に示すように、ロータ30に、センサ集合体70が対向すると、センサ基板76とロータ30の基体表面35と平行となり、磁気センサ71、72、73、74、75と基体表面35との距離dは、一定となる。磁気センサ71、72、73、74、75は、各々ロータ30の径方向に対して位置が異なっている。なお、センサ集合体70、80は、センサの数は複数であればよく、5つに限定されない。センサの数が増加すると、アブソリュートエンコーダ100の分解能が向上する。
【0068】
本実施形態では、磁気センサ71、72、73、74、75は、信号パターン34を読み取り可能な磁気センサである。図10に示す磁気センサ71、72、73、74、75は、同一の磁気抵抗効果素子である。磁気抵抗効果素子は、素子近傍の磁界強度により電気抵抗値が変化する素子である。磁気抵抗効果素子は、例えばNi81Fe19合金膜をセンサ基板76に成膜して形成する。磁気抵抗効果素子は、抵抗値変化が線形となる領域で素子を使用したいため、Ni81Fe19合金膜にAl等の絶縁層を介してCoCrPt合金等のバイアス磁石を成膜することが望ましい。あるいは、磁気抵抗効果素子の周囲に、バイアス磁石が配置されても抵抗値変化が線形となる領域で素子を使用できる。磁気センサ71、72、73、74、75は、信号パターン34の磁界を検知すると、信号パターン34の磁極性により抵抗が増減する。なお、磁気センサ71、72、73、74、75は、巨大磁気抵抗効果素子やホール素子を用いることもできる。
【0069】
図10に示す磁気センサ71、72、73、74、75には、光センサほど明瞭ではないがセンサ固有の感度範囲により制限される検知範囲D71、D72、D73、D74、D75がある。検知範囲D71、D72、D73、D74、D75は、少なくとも隣接する検知範囲が重複する領域U71、U72、U73、U74を有している。領域U71、U72、U73、U74では、隣接する検知範囲となるセンサ同士が信号パターン34を検知可能とする。信号パターン34が複数のセンサのうち隣り合う一組のセンサの両方で検知可能な検知範囲が存在すれば、検知範囲の盲点ができないようになる。このためには、検知範囲D71、D72、D73、D74、D75、センサ間隔p、基体表面35との距離d、信号パターン幅Wを調整することが望ましい。センサ及び基板自体の大きさの制約よりセンサ間隔pを決定し、磁気センサ71、72、73、74、75の出力特性と検知範囲とを考慮して基体表面35との距離dを決定し、信号パターン幅Wが調整される。
【0070】
基板76には、図11に示すセンサ接続回路77が形成されている。センサ接続回路77は、上述したセンサ接続回路17と、発光素子111、121、131、141、151に関する接続回路を除き、同じ回路を使用している。センサ接続回路77は、電源電圧VDDと、抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16、R1、R2と、電圧検出端子T1、T2と、磁気センサ71、72、73、74、75とを接続する回路である。
【0071】
磁気センサ71、72、73、74、75の一端は、すべて電源電圧VDDに接続されている。抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16は、直列に接続されている抵抗群である。抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16はいずれも同一の抵抗値である。抵抗群の一端の抵抗r11は電圧検出端子T2に接続し、他端の抵抗r16は電圧検出端子T1に接続されている。電圧検出端子T2は、抵抗r11と接続すると共に、抵抗R1を介して基準電位(GND)に接続されている。電圧検出端子T1は、抵抗r16と接続すると共に、抵抗R2を介して基準電位(GND)に接続されている。
【0072】
磁気センサ71の他端は、抵抗r11と抵抗r12との間に接続されている。同様に、磁気センサ72の他端は、抵抗r12と抵抗r13との間に接続されている。磁気センサ73の他端は、抵抗r13と抵抗r14との間に接続されている。磁気センサ74の他端は、抵抗r14と抵抗r15との間に接続されている。磁気センサ75の他端は、抵抗r15と抵抗r16との間に接続されている。つまり、電源電圧が複数のセンサに印加され、複数のセンサがそれぞれ電圧検出端子T1及び電圧検出端子T2の間に出力可能であって、隣り合うセンサ同士がそれぞれのセンサから第1の電圧検出端子までの間で抵抗値が異なるように所定抵抗である抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16とはしご状に接続されている。
【0073】
電圧検出端子T1は、電圧V1を出力する。電圧検出端子T2は、電圧V2を出力する。電圧検出端子T1、T2は、図1に示すセンサ信号処理回路41に接続されている。センサ信号処理回路41は、センサ集合体70、80の各電圧検出端子T1、T2から出力される電圧V1、及びV2の電圧信号S1、S2を受け取り、センサ出力G1及びG2を演算処理部42へ出力するアナログ回路である。例えば、センサ信号処理回路41は、センサ集合体70の電圧信号S1をG1=((V1−V2)/(V1+V2))として処理するアナログ回路である。また、センサ信号処理回路41は、センサ集合体80の電圧信号S2をG2=((V1−V2)/(V1+V2))として処理するアナログ回路である。これにより、センサ信号処理回路41は、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを減算した減算値を、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを加算した加算値で除算した電圧値をセンサ出力G1、G2として出力する。
【0074】
センサ出力G1、G2は、磁気センサ71、72、73、74、75に流れている電流分布の中心位置が((V1−V2)/(V1+V2))に比例していることを示している。電流分布の中心位置とは、磁気センサ71、72、73、74、75の各磁気抵抗効果素子のうち、信号パターン34の磁界を検出して抵抗が変化している位置を表す値となる。単一のセンサで検出する場合と比較して、本実施形態のセンサ出力G1、G2は、磁気センサ71、72、73、74、75のばらつきを平均して、出力できるので、センサの個体差による影響を低減できる。
【0075】
次に、図1及び図7から図11を参照しながら、エンコーダユニット2を有するアブソリュートエンコーダ100の絶対角度検出の手順を説明する。エンコーダユニット2は、シャフト38がモータからの回転により回転すると、シャフト38に連動してロータ30が回転中心Oを中心として回転する。センサ集合体70、80と、ロータ30との相対位置が変化し、センサ集合体70、80がロータ30上の信号パターン34の磁界を検出する。
【0076】
例えば、センサ集合体70の対向する位置がmであるとき、図10に示す磁気センサ71と磁気センサ72の検知範囲D71、D72に信号パターン34が存在する。センサ集合体70の対向する位置がm90であるとき、図10に示す磁気センサ72と磁気センサ73の検知範囲D72、D73に信号パターン34が存在する。センサ集合体70の対向する位置がm180であるとき、図10に示す磁気センサ74と磁気センサ75の検知範囲D74、D75に信号パターン34が存在する。センサ集合体70とロータ30とが相対的に移動すると、信号パターン34が検知範囲D71から検知範囲D75へ移動することになる。
【0077】
信号パターン34が検知範囲D71から検知範囲D75へ移動すると、図11に示す電圧検出端子T1の電圧V1が高くなり、端子T2の電圧V2が低くなる。センサ信号処理回路41は、センサ集合体10の電圧信号S1をセンサ出力G1=((V1−V2)/(V1+V2))として処理し、センサ集合体20の電圧信号S2をセンサ出力G2=((V1−V2)/(V1+V2))として処理すると、図8に示すようにセンサ出力G1、G2を増減する。
【0078】
演算装置40は、図8に示すセンサ出力と回転角度の関係を絶対角度とセンサ出力とを対応付けた絶対位置(絶対角度)データベースとして内部記憶装置42fに記憶してある。アナログデータであるセンサ出力G1、G2は、AD変換部51、52によりデジタル変換され、角度演算部61、62に送られる。角度演算部61、62は、デジタル変換されたセンサ出力G1、G2を絶対位置(絶対角度)データベースに与え、回転角度θのデータをえる。角度演算部61、62は、デジタル変換されたセンサ出力G1、G2を用いて演算により回転角度θのデータを求めてもよい。この場合、角度合成部63は、角度演算部61、62でえられた複数の回転角度θのデータから、角度差の絶対値が最小となる絶対位置データ(絶対角度データ)Dを求めて出力する。
【0079】
また、角度合成部63は、例えばセンサ出力G1、G2の大小関係を用いて絶対位置データ(絶対角度データ)Dを求めて出力してもよい。あるいは、角度合成部63は、角度演算部61、62でえられた複数の回転角度θのデータを組み合わせて、差分の絶対値を算出し、差分の絶対値を用いて絶対位置データ(絶対角度データ)Dを求めて出力してもよい。
【0080】
上述したアブソリュートエンコーダ100は、信号パターン34を読み取り可能な複数の磁気センサ71、72、73、74、75を含み、複数の磁気センサ71、72、73、74、75の位置が異なるように配列されたセンサ集合体70、80と、信号パターン34を含む基体であるロータ30と、を含むエンコーダユニット2と、センサ集合体70、80のセンサ出力G1、G2から、センサ集合体70、80とロータ30との絶対位置を算出する演算装置40と、を有する。センサ集合体70、80とロータ30とが相対的に移動すると、複数の磁気センサ71、72、73、74、75の検知範囲D71、D72、D73、D74、D75を信号パターン34が移動する。
【0081】
本実施形態のアブソリュートエンコーダでは、複数のセンサの検知範囲を信号パターンが移動することで、トラック数を多くする必要がなく、アブソリュートエンコーダの分解能を高めることができる。その結果、アブソリュートエンコーダのロータは小さくなり、アブソリュートエンコーダが小型にできる。
【0082】
また、信号パターン34が複数の磁気センサ71、72、73、74、75のうち隣り合う一組のセンサの両方で検知可能であることが好ましい。その結果、複数のセンサの検知範囲を信号パターンが移動しても検知範囲の盲点ができないようになる。
【0083】
また、センサ集合体70、80は第1の電圧検出端子T1と、第1の電圧検出端子T1と所定抵抗である抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16とで直列接続される第2の電圧検出端子T2とを有し、電源電圧VDDが複数の磁気センサ71、72、73、74、75に印加され、複数の磁気センサ71、72、73、74、75がそれぞれ第1の電圧検出端子T1及び第2の電圧検出端子T2間に出力可能であって、隣り合うセンサ同士がそれぞれのセンサから第1の電圧検出端子までの間で抵抗値が異なるように所定抵抗である抵抗r11、r12、r13、r14、r15、r16とはしご状に接続され、演算装置40は、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを減算した減算値を、第1の電圧検出端子T1の第1電圧出力V1と第2の電圧検出端子T2の第2電圧出力V2とを加算した加算値で除算した電圧値をセンサ出力G1、G2として出力することが好ましい。
【0084】
本実施形態のアブソリュートエンコーダでは、複数のセンサの電流分布の中心位置が((第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)/(第1の電圧出力V1+第2の電圧出力V2))に比例している。複数のセンサの電流分布の中心位置は、単一のセンサで検出する場合と比較して、複数のセンサのばらつきが平均されて出力されるのでセンサの個体差による影響を低減できる。また、電圧値を確認しているので、磁界の外乱や環境条件に左右されず、安定したセンサ出力を出力する。
【0085】
例えば、先行技術文献のアブソリュートエンコーダ(特許文献3)では、センサを1つしか使用しないため、センサの個体差を考慮する必要がある。また、先行技術文献のアブソリュートエンコーダ(特許文献3)では、磁石の厚さが一周にわたり連続的に変化するものとする。これにより、磁気センサの検出する磁界の強さが、磁気エンコーダの1周にわたり連続的に変化する。また、先行技術文献のアブソリュートエンコーダ(特許文献3)では、磁石の厚さが一周にわたり連続的に変化するロータを有しているので、ロータの重心位置が偏心してしまう。このため、先行技術文献のアブソリュートエンコーダ(特許文献3)では、ロータの回転により、ロータに振動が生じるおそれがある。これに対し、本実施形態のアブソリュートエンコーダでは、複数のセンサの電流分布の中心位置が(第1の電圧出力V1−第2の電圧出力V2)に比例しているため、外乱や環境条件により磁界が変化しても複数のセンサの電流分布の中心位置は変化しない。磁石の厚さが一周にわたり連続的に変化する製造コストのかかる磁石を使用しなくても、本実施形態のアブソリュートエンコーダでは、一定の磁石の厚さを有するマグネットシートで安価にアブソリュートエンコーダを提供できる。また、本実施形態のアブソリュートエンコーダでは、ロータの重心位置が偏心してしまうことがなく、振動が発生することはない。
【0086】
また、本実施形態のアブソリュートエンコーダは、複数のセンサが磁気センサであり、信号パターンが磁界を形成するパターンであることが好ましい。本発明のアブソリュートエンコーダでは、簡易なパターンで構成できるので、製造コストを下げることができる。また、仮にセンサ集合体と信号パターンの間に異物が混入する場合であってもアブソリュートエンコーダが動作することができる。
【0087】
上述した実施形態1及び実施形態2のアブソリュートエンコーダは、例えば、停電時から復帰しても絶対位置が把握できるので、停電後に原点復帰が不要なサーボモータシステムに適用できる。サーボモータシステムは、例えば各種機械装置、ロボット、自動車要素部品があげられ、これらサーボモータシステムを使う製品を小型とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明に係るアブソリュートエンコーダは、トラック数を増やさなくても高分解能であり、かつセンサの個体差による影響を低減できることに有用である。
【符号の説明】
【0089】
1、2 エンコーダユニット
10、20、70、80 センサ集合体
11、12、13、14、15 光センサ
17、77 センサ接続回路
16、76 センサ基板
30 ロータ
31、33、34 信号パターン
32、35 基体表面
33a、33b 信号パターン端部
38 シャフト
40 演算装置
41 センサ信号処理回路
42 演算処理部
51、52 AD変換部
61、62 角度演算部
63 角度合成部
65 制御部
71、72、73、74、75 磁気センサ
100 絶対位置検出装置
111、121、131、141、151 発光素子
112、122、132、142、152 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号パターンを読み取り可能な複数のセンサを含み、前記複数のセンサの位置が異なるように配列されたセンサ集合体及び前記信号パターンを含む基体を含むエンコーダユニットと、前記センサ集合体の出力から、前記センサ集合体と前記基体との絶対位置を算出する演算装置と、を有し、
前記センサ集合体と前記基体とが相対的に移動すると、前記複数のセンサの検知範囲を前記信号パターンが移動することを特徴とするアブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記信号パターンが前記複数のセンサのうち隣り合う一組のセンサの両方で検知可能である請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
前記センサ集合体は、第1の電圧検出端子と、前記第1の電圧検出端子と所定抵抗を介して接続される第2の電圧検出端子とを有し、
電源電圧が前記複数のセンサに印加され、前記複数のセンサがそれぞれ前記第1の電圧検出端子及び前記第2の電圧検出端子の間に出力可能であって、隣り合うセンサ同士がそれぞれのセンサから前記第1の電圧検出端子までの間で抵抗値が異なるように前記所定抵抗と接続され、
前記演算装置は、前記第1の電圧検出端子の第1電圧出力と前記第2の電圧検出端子の第2電圧出力とを減算した減算値を、前記第1電圧出力と前記第2電圧出力とを加算した加算値で除算した電圧値をセンサ出力として出力する請求項1又は2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
前記センサ集合体は、第1の電圧検出端子と、前記第1の電圧検出端子と所定抵抗を介して接続される第2の電圧検出端子とを有し、
電源電圧が前記複数のセンサに印加され、前記複数のセンサがそれぞれ前記第1の電圧検出端子及び前記第2の電圧検出端子の間に出力可能であって、隣り合うセンサ同士がそれぞれのセンサから前記第1の電圧検出端子までの間で抵抗値が異なるように前記所定抵抗と接続され、
前記演算装置は、前記第1の電圧検出端子の第1電圧出力と前記第2の電圧検出端子の第2電圧出力とを減算した減算値をセンサ出力として出力する請求項1又は2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項5】
前記複数のセンサが受光素子であり、前記信号パターンが基体とは光の反射率の異なるパターンである請求項1から4のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項6】
前記複数のセンサが磁気センサであり、前記信号パターンが磁界を形成するパターンである請求項1から4のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−88078(P2012−88078A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232847(P2010−232847)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】