説明

アークランプの点灯回路およびその電圧制御方法

【課題】アークランプに印加される直流ランプ電圧を制御して、一定の直流ランプ電圧とすることのできるアークランプの点灯回路を提供する。
【解決手段】電力を供給する電源PSと、電源PSの電圧を昇圧する変圧器T1と、変圧器T1を断続するスイッチング素子FET1と、変圧器T1で昇圧された電圧を整流する整流素子D1と、整流素子D1で整流された電圧を平滑化して直流ランプ電圧にする平滑コンデンサC1と、高電圧パルスを発生する高電圧回路120と、分圧直流電圧V2が入力され所定の閾値電圧VXと比較する比較回路150と、比較回路150の比較の結果、直流電圧は閾値電圧を超えるときに、スイッチング素子FET1の接続時間を短くする制御信号をスイッチング素子FET1に出力する制御回路130とを具備したアークランプの点灯回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アークランプの点灯回路に係り、特に電圧の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電気・電子機器の発達に伴い、これらの機器にアークランプが用いられる機会も増えてきている。
【0003】
アークランプは、一般的にUV(Ultraviolet rays:紫外線)硬化樹脂の硬化用光源に使用されたり、プロジェクターの光源、投光照明用光源などに広く使用されるランプである。
【0004】
従来アークランプを使用する際には、図3に示したようなアークランプの点灯回路を用いてアークランプを点灯させている。
【0005】
従来のアークランプの点灯回路は、電力を供給する電源PSの正極側は電源端子T31に接続されており、電源PSの負極側は接地されており、電源端子T31はコンデンサC2の正極側端子に接続されており、コンデンサC2の負極側端子は接地されている。
【0006】
コンデンサC2の正極側端子は変圧器T1の一次巻線の一端に接続されており、変圧器T1の一次巻線の他端は電界効果トランジスタFET1のドレインに接続されており、電界効果トランジスタFET1のゲートは制御回路330の出力端に接続されており、電界効果トランジスタFET1のソースは接地されている。
【0007】
変圧器T1の二次巻線の一端はダイオードD1のアノードに接続されており、ダイオードD1のカソードは平滑コンデンサC1の正極側端子に接続されており、平滑コンデンサC1の正極側端子の一端は抵抗RSの一端に接続されており、抵抗RSの他端はトリガダイオードDSの一端に接続されており、トリガダイオードDSの他端はパルス変圧器TSの一次巻線の一端に接続されており、パルス変圧器TSの一次巻線の他端は検出抵抗RDの一端に接続されている。
【0008】
平滑コンデンサC1の負極側端子は変圧器T1の二次巻線の他端に接続されており、抵抗RSの他端は充電用コンデンサCSの一端に接続されており、充電用コンデンサCSの他端はパルス変圧器TSの一次巻線の他端に接続されており、抵抗RSの一端はパルス変圧器TSの二次巻線の一端に接続されている。
【0009】
パルス変圧器TSの二次巻線の他端はアークランプLAMPの一端に接続されており、アークランプLAMPの他端は検出抵抗RDの一端に接続されており、検出抵抗RDの一端は制御回路130の入力端子に接続されており、検出抵抗RDの他端は平滑コンデンサC1の負極側端子に接続されており、平滑コンデンサC1の負極側端子は接地されており、制御回路130の接地端は接地されている。
【0010】
従来のアークランプの点灯回路の動作について、図3を用いて説明する。
【0011】
電源PSから電源端子T31に入力された電力は、制御回路330から電界効果トランジスタFET1に出力される制御信号によって断続され、断続された電力が変圧器T1の一次巻線に印加され、電力の断続によって変圧器T1に磁束が生じる。
【0012】
変圧器T1に生じる磁束による昇圧で二次巻線の両端に断続された二次電圧が出力され、二次電圧はダイオードD1により整流される。
【0013】
ダイオードD1により整流された二次電圧は、平滑コンデンサC1により平滑化され、15V〜20V程度の直流ランプ電圧V11となる。
【0014】
直流ランプ電圧V11は、アークランプLAMPがアーク放電しておらず、またトリガダイオードDSも断状態にあるため、抵抗RSを介して充電用コンデンサCSおよびトリガダイオードDSに印加された直流ランプ電圧V11は充電用コンデンサCSへの充電にともない、電圧が上昇し、充電用コンデンサCSの両端の電圧Vcsも上昇する。
【0015】
充電用コンデンサCSの両端の電圧Vcsは、トリガダイオードDSの両端にも印加されており、電圧VcsがトリガダイオードDSのスレシホールド電圧を超えると、トリガダイオードDSは導通状態となり、充電用コンデンサCSに充電された電荷がパルス変圧器TSの一次巻線に突入電流として流れ込む。
【0016】
一次巻線側に流れる突入電流によって、パルス変圧器TSの二次巻線の両端に数kV〜数十kVの高電圧パルスが出力される。
【0017】
このように、抵抗RSと、充電用コンデンサCSと、トリガダイオードDSと、パルス変圧器TSとで構成される高電圧回路120で、高電圧パルスが作られる。
【0018】
高電圧パルスの印加によりアークランプLAMPは、両電極間でアーク放電が始まり、発光を開始する。
【0019】
両電極間でアーク放電が始まると、直流のランプ電流ILがパルス変圧器TSの二次巻線の両端に流れ始めることにより二次巻線の両端は短絡状態となり、これは、高電圧回路120の入力端と出力端がショート状態である。
【0020】
このため、直流ランプ電圧V11が直接アークランプLAMPの両電極間に印加されることで、アークランプLAMPにランプ電流ILが流れ続け、アークランプLAMPの点灯が継続する。
【0021】
ランプ電流ILは、電流検出を行う検出抵抗RDによってランプ電流ILに対応した電圧に変換され、変換された電圧は制御回路330に入力される。
【0022】
制御回路330は、入力された検出抵抗RDからの電圧値があらかじめ定めた電圧値よりも高いときには、検出抵抗RDからの電圧値とあらかじめ定めた電圧値との差分に比例して電界効果トランジスタFET1に出力するパルスのデューティーを下げる。
【0023】
制御回路330は、入力された検出抵抗RDからの電圧値があらかじめ定めた電圧値よりも低いときには、検出抵抗RDからの電圧値とあらかじめ定めた電圧値との差分に比例して電界効果トランジスタFET1に出力するパルスのデューティーを上げる。
【0024】
このように、検出抵抗RDで生じる電圧を一定になるように制御することで、検出抵抗RDで生じる電圧に対応するランプ電流ILを一定になるように制御することができる。
【0025】
以上説明したアークランプの点灯回路はアークランプLAMPに一定のランプ電流ILを流すことを比較的容易に実現可能であり、アークランプの点灯回路による電流制御方法は安定したアーク放電が得られる点で有効な方法である。
【0026】
また、特許文献1(特開平11−312592号公報)には従来技術として、ランプに印加する電圧を制御する定電圧制御回路と、図4の制御回路330に相当する定電流制御回路とを有し、ランプの点灯開始より一定時間は定電流制御回路によりランプ電流を定電流制御し、ランプが所望のインピーダンスに達したら定電圧制御回路による定電圧制御に切り換えることによりランプ光量の立ち上がりを速くするランプ制御装置およびランプ制御方法が提案されている。
【特許文献1】特開平11−312592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
図3で説明した従来のアークランプの点灯回路においては、アークランプLAMPの点灯累積時間が長くなるにしたがって、アークランプLAMPの両端に印加される直流ランプ電圧V11が上昇する傾向がある。
【0028】
従来のアークランプLAMPの点灯累積時間と直流ランプ電圧V11およびランプの消費電力の関係を、図4に示す。
【0029】
図中の横軸はアークランプLAMPの点灯累積時間(単位:時間)を示し、左方の縦軸はアークランプLAMPの消費電力(単位:W)を示し、右方の縦軸はアークランプLAMPの両端に印加される直流ランプ電圧V11(単位:V)を示しており、実線710はアークランプLAMPの直流ランプ電圧V11の変化を示し、破線720はアークランプLAMPの消費電力の変化を示している。
【0030】
アークランプLAMPで消費するランプの消費電力は、アークランプLAMPに印加される直流ランプ電圧V11と流れるランプ電流ILとを乗じた値となるが、既に説明したように制御回路330によりランプ電流ILは一定になるように制御されているから、直流ランプ電圧V11の上昇にともなってアークランプの点灯回路の消費電力が破線720に示すように増加する。
【0031】
一例として図4から分かるようにアークランプLAMPの使用初期には15V程度であった直流ランプ電圧V11が寿命末期(例えば、点灯累積時間が5000時間を超える状態)には20V近くまで上昇することもあった。
【0032】
直流ランプ電圧V11の上昇は、アークランプLAMPのアーク放電によりアークランプLAMPの両電極が消耗して一方の電極から他方の電極までの放電長が長くなることでガラス容器内の放電空間が広がり、両電極間の放電長に対応する直流ランプ電圧V11が印加されることに主要な原因があると考えられている。
【0033】
従来のアークランプの点灯回路は、直流ランプ電圧V11の電圧制御ができないため、直流ランプ電圧V11の上昇に伴うアークランプLAMPの消費電力の増加がある。
【0034】
長期に渡って使用したアークランプLAMPでは、使用初期には消費電力が80W前後であったのに比べて、100W前後の大きな消費電力を示すこともある。
【0035】
このようにアークランプの点灯回路から供給された電力がアークランプLAMPで多く消費されることにより、アークランプLAMPに無駄な熱が発生し、アークランプの点灯回路全体にも無駄な熱が発生するという問題があった。
【0036】
実際にはアークランプLAMPの寿命末期には点灯始動性が悪くなり、その時点で寿命と判断されて新品のアークランプLAMPと交換されることが多い。
【0037】
しかし、たまたま悪い条件が重なり交換用のアークランプLAMPの在庫が尽きているような場合、アークランプLAMPの寿命末期でも引き続き使用をする場合も有り得、その場合にはさらに消費電力が増加し、消費電力のためアークランプLAMPの寿命がさらに短縮されるという問題があった。
【0038】
アークランプLAMPの電力消費により発生する熱に対応するためには、アークランプLAMPを含むアークランプの点灯回路に放熱部を設けたり、熱に耐えられるような設計マージンをアークランプの点灯回路に取る必要があり、これらの熱対策のために設計、製造のコストが増加するという問題があった。
【0039】
このような問題は、アークランプLAMPに流れるランプ電流ILを一定とする制御を行っていることに起因して生じる。ランプ電流ILを一定にすることにより、ランプの電極が消耗し、より高い直流アンプ電圧V11とランプの消費電力が必要となってしまう。
【0040】
また、特許文献1のランプ制御装置では、ランプ光量の立ち上がり時の電圧の制御は可能であるが、上記のような長い点灯累積時間に渡ってランプに掛かる電圧の制御をすることはできないという問題があった。
【0041】
そこで本発明の目的は、アークランプに印加される直流ランプ電圧を制御して、一定の直流ランプ電圧とすることのできるアークランプの点灯回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上記目的を達成するために、本発明のアークランプの点灯回路の第1の発明は、アーク放電により点灯するアークランプの点灯回路において、
電力を供給する電源と、
前記アークランプへの供給電力を制御するパルス状の制御信号を出力する制御回路と、
前記電源から供給された電力を前記制御信号に応じて断続するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子で断続された電力の電圧を変換して二次電圧として出力する変圧器と、
前記変圧器から出力された前記二次電圧を整流して整流電圧として出力する整流素子と、
前記整流素子からの前記整流電圧を平滑化して直流ランプ電圧として出力する平滑コンデンサと、
前記直流ランプ電圧が入力され高電圧パルスを発生することにより前記アークランプの前記アーク放電を開始させ、該アーク放電開始後は前記直流ランプ電圧を前記アークランプに印加する高電圧回路と、
前記直流ランプ電圧が入力され、該直流ランプ電圧を所定の閾値電圧と比較して、前記直流ランプ電圧が前記閾値電圧を超えるときに、前記直流ランプ電圧と前記閾値電圧との差分を出力する比較回路と、を具備し、
前記制御回路は、前記比較回路から前記差分が入力されたときに該差分に応じて前記スイッチング素子に出力する前記制御信号の前記パルスの幅を変化させ、前記差分が少なくなるように制御するアークランプの点灯回路である。
【0043】
第2の発明は、第1の発明に記載のアークランプの点灯回路において、
前記スイッチング素子は、電界効果トランジスタであるものである。
【0044】
第3の発明は、第1の発明に記載のアークランプの点灯回路において、
前記高電圧回路は、
所定の電圧を超える電圧が印加されると導通状態となるトリガダイオードと、
前記直流ランプ電圧により電荷が充電される充電用コンデンサと、
一次巻線と二次巻線を有し、前記トリガダイオードが前記導通状態となったことにより、前記充電用コンデンサに充電された前記電荷が前記トリガダイオードを介して前記一次巻線に流れ、前記二次巻線の両端に前記高電圧パルスを発生するパルス変圧器と、を具備したものである。
【0045】
第4の発明は、アーク放電により点灯するアークランプと、電力を供給する電源と、前記アークランプへの供給電力を制御するパルス状の制御信号を出力する制御回路と、前記電源から供給された電力を前記制御信号に応じて断続するスイッチング素子と、前記電力の電圧を変換して二次電圧として出力する変圧器と、前記二次電圧を整流して整流電圧として出力する整流素子と、前記整流素子からの整流電圧を平滑化して直流ランプ電圧として出力する平滑コンデンサと、前記直流ランプ電圧により高電圧パルスを発生させる高電圧回路と、前記直流ランプ電圧が入力され、該直流ランプ電圧を所定の閾値電圧と比較する比較回路と、を具備したアークランプの点灯回路の電圧制御方法において、
前記電源で行われる、電力を供給する第1のステップと、
前記制御回路で行われる、前記アークランプへの供給電力を制御するパルス状の制御信号を出力するステップと、
前記スイッチング素子で行われる、前記第1のステップで供給された電力を前記制御信号に応じて断続する第2のステップと、
前記変圧器で行われる、前記第2のステップで断続された電力の電圧を変換して二次電圧として出力する第3のステップと、
前記整流素子で行われる、前記第3のステップで出力された前記二次電圧を整流して整流電圧として出力する第4のステップと、
前記平滑コンデンサで行われる、前記第4のステップからの整流電圧を平滑化して直流ランプ電圧として出力する第5のステップと、
前記高電圧回路で行われる、前記第5のステップから前記直流ランプ電圧が入力され高電圧パルスを発生することにより前記アークランプのアーク放電を開始させ、該アーク放電開始後は前記直流ランプ電圧を前記アークランプに印加する第6のステップと、
前記比較回路で行われる、前記直流ランプ電圧が入力され、該直流ランプ電圧を所定の閾値電圧と比較して、前記直流ランプ電圧は前記閾値電圧を超えるときに、前記直流ランプ電圧と前記閾値電圧との差分を前記制御回路に出力する第7のステップと、
前記制御回路で行われる、前記第7のステップから前記差分が入力されたときに該差分に応じて前記スイッチング素子に出力する前記制御信号の前記パルスの幅を変化させ、前記差分が少なくなるように制御するステップと、を具備したアークランプの点灯回路の電圧制御方法である。
【0046】
本発明では、アークランプに印加される直流ランプ電圧の上昇を比較回路で検出し、あらかじめ定められた閾値電圧を超える電圧の上昇が検出されたときには、この検出結果および直流ランプ電圧と閾値電圧との差分を比較回路から制御回路に出力する。
【0047】
制御回路は、比較回路から受け取った直流ランプ電圧と閾値電圧との差分に応じて、制御回路からスイッチング素子の接続時間を変化させるパルス状制御信号をスイッチング素子に出力する。
【0048】
この制御信号は差分に応じてパルス幅を低減させる制御をスイッチング素子に行って、スイッチング素子の接続時間を低減させ、差分が少なくなるようにするとよい。
【0049】
このスイッチング素子の接続時間を減少させるパルス幅を低減は、パルスのデューティーを減少させることで、変圧器から出力され整流素子および平滑化コンデンサで整流平滑化された直流ランプ電圧の電圧値を低減させる。
【0050】
アークランプの点灯回路は、このように従来のアークランプに流れるランプ電流の電流制御の機能だけでなく、アークランプに印加される直流ランプ電圧の電圧制御の機能を有している。
【0051】
この電圧制御の機能は、直流ランプ電圧があらかじめ定めた電圧値を超えたときには、従来の電流制御に優先してはたらく。
【0052】
直流ランプ電圧の上昇を制御することは、直流ランプ電圧の上昇によるアークランプの消費電力の増加を制御することにもなっている。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、アークランプに印加される直流ランプ電圧を制御して、一定の直流ランプ電圧とすることのできるアークランプの点灯回路を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0055】
図1は、本実施形態のアークランプの点灯回路の構成例を示すブロック図である。
【0056】
本実施形態のアークランプの点灯回路は、アーク放電することにより点灯するアークランプLAMPと、点灯回路に電力を供給する電源PSと、電源PSに接続され電源PSから電力が入力される電源端子T11と、入力されたパルス状の制御信号により自身を断続(ON/OFF)することにより電源端子T11を介して電源PSから供給された電力を断続するスイッチング素子としての電界効果トランジスタFET1と、一次巻線と二次巻線とを有し電源端子T11から供給された電力の電圧を変換・昇圧して二次巻線の両端に二次電圧として出力する変圧器T1と、変圧器T1の二次電圧を整流して整流電圧として出力する整流素子としてのダイオードD1と、ダイオードD1からの整流電圧を平滑化して直流ランプ電圧V1にする平滑コンデンサC1と、平滑コンデンサC1から直流ランプ電圧V1が入力され数kV〜数十kVの高電圧パルスを発生することによりアークランプのアーク放電を開始させ、アーク放電開始後は直流ランプ電圧V1をアークランプに印加する高電圧回路120と、アークランプLAMPに流れるランプ電流ILに対応した電圧を生じる検出抵抗RDと、直流ランプ電圧V1を互いの抵抗値の比により分圧して直流ランプ電圧V1に対応した分圧直流電圧V2として出力する分圧抵抗R1、R2と、分圧抵抗R1、R2で分圧された分圧直流電圧V2が入力され、分圧直流電圧V2を所定の閾値電圧(例えば、閾値電圧VXとする)と比較して、分圧直流電圧V2が閾値電圧VXを超えるときに、分圧直流電圧V2と閾値電圧VXとの差分を出力する比較回路150と、アークランプLAMPへの供給電力を制御するパルス状の制御信号を電界効果トランジスタFET1のゲートに出力する制御回路130と、コンデンサC2とを備えて構成されている。
【0057】
高電圧回路120は、抵抗RSと、電荷の充電を行う充電用コンデンサCSと、両端に所定の電圧(例えば、スレシホールド電圧Vthとする)を超える電圧が印加されることにより導通状態となるトリガダイオードDSと、一次巻線と二次巻線を有し、トリガダイオードDSが導通状態となったことにより、充電用コンデンサCSに充電された電荷がトリガダイオードDSを介して一次巻線に流れ、二次巻線の両端に高電圧パルスを発生するパルスパルス変圧器TSとから構成されている。
【0058】
高電圧回路120は、この構成により一般的には点弧回路とも呼ばれ、高電圧パルスを発生する機能を有する。
【0059】
電源PSの正極側は電源端子T11に接続されており、電源PSの負極側は接地されており、電源端子T11はコンデンサC2の正極側端子に接続されており、コンデンサC2の負極側端子は接地されており、コンデンサC2の正極側端子は変圧器T1の一次巻線の一端に接続されており、変圧器T1の一次巻線の他端は電界効果トランジスタFET1のドレインに接続されており、電界効果トランジスタFET1のゲートは制御回路130の出力端に接続されており、電界効果トランジスタFET1のソースは接地されている。
【0060】
変圧器T1の二次巻線の一端はダイオードD1のアノードに接続されており、ダイオードD1のカソードは平滑コンデンサC1の正極側端子に接続されており、平滑コンデンサC1の正極側端子は分圧抵抗R1の一端に接続されており、分圧抵抗R1の他端は分圧抵抗R2の一端に接続されており、分圧抵抗R2の他端は平滑コンデンサC1の負極側端子に接続されている。
【0061】
平滑コンデンサC1の負極側端子は変圧器T1の二次巻線の他端に接続されており、平滑コンデンサC1の正極側端子の一端は抵抗RSの一端に接続されており、抵抗RSの他端はトリガダイオードDSの一端に接続されており、トリガダイオードDSの他端はパルス変圧器TSの一次巻線の一端に接続されており、パルス変圧器TSの一次巻線の他端は検出抵抗RDの一端に接続されており、検出抵抗RDの他端は分圧抵抗R2の他端に接続されている。
【0062】
抵抗RSの他端は充電用コンデンサCSの一端に接続されており、充電用コンデンサCSの他端はパルス変圧器TSの一次巻線の他端に接続されており、抵抗RSの一端はパルス変圧器TSの二次巻線の一端に接続されており、パルス変圧器TSの二次巻線の他端はアークランプLAMPの一端に接続されており、アークランプLAMPの他端は検出抵抗RDの一端に接続されている。
【0063】
分圧抵抗R2の一端は比較回路150の入力端子に接続されており、比較回路150の出力端子は制御回路130の入力端子に接続されており、検出抵抗RDの一端は制御回路130の入力端子に接続されており、制御回路130の接地端は接地されている。
【0064】
アークランプLAMPは、基本的には密閉されたガラス容器内に短い間隔を空けて棒状の電極を対向させて設け、密閉されたガラス容器内に希ガスが封入された構造となっており、両電極間に形成された放電部において強力な光を発生する機能を有する。
【0065】
アークランプLAMPの放電部から発生した光は、UV硬化樹脂の硬化用光源やプロジェクターの光源、投光照明用光源などに使用される。
【0066】
アークランプLAMPは、ガラス容器内の両端に設けられた両電極間に、トリガダイオードDSなどの素子で構成された高電圧回路120により高電圧パルスを印加すると、両電極間の希ガスが封入された放電部の空間にアーク放電を生じる。
【0067】
アークランプLAMPは、印加された高電圧パルスによるアーク放電が生じた状態で、両電極間に比較的大きな値の直流電流をランプ電流ILとして供給することによってアークランプLAMPのガラス容器内のアーク放電の発生が持続する。
【0068】
アークランプLAMPは、両電極間において発生するアーク放電がガラス容器内に封入された希ガスに作用することにより、電極間に形成された放電部において強力な光を発生する。
【0069】
電界効果トランジスタFET1は、ゲートから入力されるゲート信号によって、ソース−ドレイン間をON/OFFさせることのできるスイッチング機能を有したFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)である。
【0070】
電界効果トランジスタFET1のスイッチングは、一般的なスイッチング電源におけるスイッチングと同様のはたらきをすることで、電界効果トランジスタFET1のスイッチング周波数もしくはスイッチングによるON時間で定められるデューティーにより、電力を効率的に変圧器T1に供給することができる。
【0071】
高電圧回路120は、アークランプLAMPのアーク放電を開始するために、点灯開始時にトリガダイオードDSなどのトリガ素子によってパルス状の電圧を発生させ、パルス状の電圧をパルス変圧器TSで昇圧して数kV〜数十kVの高電圧パルスを発生し、高電圧パルスをアークランプLAMPに印加する機能を有する。
【0072】
トリガダイオードDSは、サイダックとも称される素子であり、両端に印加される電圧がある一定のスレシホールド電圧Vthを超えると一般的に点弧状態とも呼ばれる導通状態となるトリガ素子の機能を有する。
【0073】
パルス変圧器TSは、トリガダイオードDSが導通状態になることにより一次巻線に印加されたパルス状の電圧を昇圧し、二次巻線側に高電圧パルスを出力する機能を有する。
【0074】
パルス変圧器TSの高電圧パルスの出力によりアーク放電を開始したアークランプLAMPにはアーク放電開始後に直流のランプ電流ILが流れ始めることにより、パルス変圧器TSの二次側巻線の両端は短絡状態となる。
【0075】
制御回路130は、直流ランプ電圧V1に対応する分圧直流電圧V2と所定の閾値電圧VXとの差分が比較回路150から入力されたときに、差分に応じて電界効果トランジスタFET1のゲートに出力する制御信号のパルスの幅を変化させ、差分が少なくなるように制御する機能を有する。
【0076】
制御回路130は、検出抵抗RDに流れるランプ電流ILに応じて検出抵抗RDに生じる電圧が入力され、入力された電圧に対応したランプ電流ILの値を得る機能を有する。
【0077】
制御回路130は、得られたランプ電流ILの値とあらかじめ定めた基準電流値との比較を行って差分を求め、差分に応じて出力する制御信号のパルス幅を変化させることにより、出力するパルスのデューティーを変化させる。
【0078】
すなわち、制御回路130は、得られたランプ電流ILの値があらかじめ定めた基準電流値より大きいときには、電流の差分に比例して制御回路130から出力するパルスのデューティーを下げるように制御する。
【0079】
制御回路130は、得られたランプ電流ILの値があらかじめ定めた基準電流値より小さいときには、電流の差分に比例して制御回路130から出力するパルスのデューティーを上げるように制御する。
【0080】
制御回路130のパルスデューティーの制御の結果、電界効果トランジスタFET1のゲートに入力されるスイッチングのパルス幅を制御することができ、このパルス幅の制御(例えば、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御)によりアークランプLAMPに流れるランプ電流ILを一定に保つようにすることができる。
【0081】
分圧抵抗R1、R2は、変圧器T1の2次巻線の両端に生じた直流ランプ電圧V1を分圧して分圧直流電圧V2を得て、分圧直流電圧V2を比較回路150に入力させることができる。分圧直流電圧V2は、直流ランプ電圧V1に比例する電圧となっている。
【0082】
一般的に分圧抵抗R1、R2は、高抵抗値となっているため、分圧抵抗R1、R2に流れる電流はごく少なく、分圧抵抗R1、R2により直流ランプ電圧V1が影響を受けることはほとんどない。
【0083】
分圧直流電圧V2は、比較回路150に入力され、あらかじめ定められた閾値電圧VXと比較される。
【0084】
比較回路150は、例えば演算増幅器などにより形成された図示しない比較器により、あらかじめ定められた所定の閾値電圧VXを比較の基準とし、閾値電圧VXと比較回路150に入力された分圧直流電圧V2とを比較する機能を有する。
【0085】
比較回路150の比較により、分圧直流電圧V2が閾値電圧VXを超えると判断された場合には、比較回路150は、その旨および分圧直流電圧V2が閾値電圧VXから超えた差分の電圧を比較結果として制御回路130に通知する。
【0086】
制御回路130は、比較回路150から分圧直流電圧V2が閾値電圧VXを超えた旨の通知を受けたときには、検出抵抗RDで得られた電圧に対応して出力する制御信号のパルス幅を変化させる制御よりも優先して、次の制御を行う。
【0087】
すなわち、制御回路130は比較回路150から通知を受けたときには、比較結果に含まれる差分の電圧に比例して、制御回路130から出力するパルスのデューティーを下げるようにPWM制御をして、このPWM制御の結果得られた制御信号を電界効果トランジスタFET1のゲートに出力する。
【0088】
制御回路130は、電界効果トランジスタFET1へのPWM制御により、分圧直流電圧V2が閾値電圧VXを越えないように調整することができる。
【0089】
次にアークランプの点灯回路の動作について、図1および図2を用いて詳細に説明する。
【0090】
電源PSから電源端子T11に入力された電力は、変圧器T1の一次巻線に印加される。
【0091】
変圧器T1の一次巻線の他端は、電界効果トランジスタFET1のドレインに接続されているため、制御回路130から電界効果トランジスタFET1のゲートへパルスで構成された制御信号を出力することによって、電界効果トランジスタFET1がONしたときに変圧器T1の一次巻線には電源PSからの電流が流れる。
【0092】
制御回路130から電界効果トランジスタFET1のゲートへの制御によって、電界効果トランジスタFET1がOFFしたときに変圧器T1の一次巻線には電流が流れなくなる。
【0093】
電界効果トランジスタFET1がON/OFFを繰り返すことにより、電源PSから供給された電力は、ON/OFFに応じて断続して変圧器T1の一次巻線に加えられる。
【0094】
変圧器T1の一次巻線に断続して印加された電力により、変圧器T1に磁界の変化が発生し、変圧器T1により電圧変換されることにより二次巻線の両端に一次巻線に印加された電圧に比例した二次電圧が発生する。
【0095】
変圧器T1の二次巻線から得られる二次電圧をダイオードD1で整流して平滑コンデンサC1で平滑化することにより、直流ランプ電圧V1(例えば、約15Vから20V程度の直流電圧)が得られる。
【0096】
直流ランプ電圧V1が得られたときには、トリガダイオードDSがOFFであり、アークランプLAMPはまだアーク放電を開始していない。
【0097】
また、分圧抵抗R1、R2は既に説明したように高抵抗であるため、分圧抵抗R1、R2にはほとんど電流は流れない。
【0098】
分圧抵抗R1、R2に電流が流れないため直流ランプ電圧V1は、高電圧回路120に印加される。
【0099】
高電圧回路120においては、直流ランプ電圧V1の印加によって抵抗RSを介して充電用コンデンサCSが充電される。
【0100】
充電用コンデンサCSへ充電が行われている間は、直流電流V1の電圧上昇にともない、充電用コンデンサCSの電圧Vcsは上昇する。
【0101】
電圧Vcsが上昇している時点では、アークランプLAMPはアーク放電を開始する前の状態である。
【0102】
アークランプの点灯回路は、アークランプLAMPのアーク放電がないためランプ電流ILは流れておらず、検出抵抗RDによるランプ電流ILに応じた電圧が発生していない状態になっている。
【0103】
制御回路130は検出抵抗RDによるランプ電流ILの検出が行われていない状態に対応し、制御回路130のPWM制御はランプ電流ILを増加させる最も強い傾向になっている。すなわち、制御回路130から電界効果トランジスタFET1のゲートに加えられる制御信号のパルスのデューティーは最大となっている。制御回路130の出力する最大のパルスのデューティーは、例えばデューティー70%程度である。
【0104】
充電用コンデンサCSの電圧Vcsが上昇することにより、充電用コンデンサCSが充電され例えば電圧Vcsが100V〜150V以上の電圧になると、トリガダイオードDSにも充電用コンデンサCSに印加された電圧Vcsと同じ電圧が印加される。
【0105】
電圧VcsがトリガダイオードDSの有するスレシホールド電圧Vthを超えるとトリガダイオードDSは導通状態(点弧状態)となり、充電用コンデンサCSに充電された電荷が、導通状態になったトリガダイオードDSを通りパルス変圧器TSの一次巻線にパルス状の突入電流として流れ込む。
【0106】
パルス変圧器TSの一次巻線への突入電流の流れ込みにより、パルス変圧器TSに磁界の変化が発生し、パルス変圧器TSの二次巻線の両端に昇圧された瞬時値(ピーク電圧)20kV〜40kV程度の高電圧パルスが発生する。
【0107】
約20kV〜40kVの高電圧パルスがアークランプLAMPの両電極に印加されることにより、アークランプLAMPの放電部においてアーク放電が開始する。
【0108】
アークランプLAMPがアーク放電を開始すると、直流ランプ電圧V1がアークランプLAMPに印加されていることで、直流のランプ電流ILがパルス変圧器TSの二次巻線を介してアークランプLAMPに流れ始める。
【0109】
高電圧回路120は、アークランプLAMPのアーク放電開始後には直流のランプ電流ILが流れることにより、パルス変圧器TSの二次側巻線の両端は短絡状態となる。
【0110】
アークランプLAMPにランプ電流ILが流れることで、アーク放電が開始するまで上昇していた直流ランプ電圧V1は低下し、直流ランプ電圧V1の低下にともなって、充電用コンデンサCSの両端の電圧Vcsも低下する。
【0111】
アークランプLAMPのアーク放電開始後は、電圧Vcsが低下するためトリガダイオードDSに印加される電圧Vcsはスレシホールド電圧Vthを超えることがなく、トリガダイオードDSの導通によりパルス変圧器TSの一次巻線にパルス状の電圧が印加されることはない。
【0112】
したがって、アークランプLAMPでアーク放電が行われランプ電流ILが流れている間は、高電圧回路120には高電圧パルスを発生しなくなる。
【0113】
アークランプLAMPのアーク放電開始後、定常的にアークランプLAMPに流れる直流のランプ電流ILは検出抵抗RDに流れ込むことで電圧に変換されて、ランプ電流ILに対応した電圧が生じる。
【0114】
検出抵抗RDで生じた電圧は、電界効果トランジスタFET1のゲートにPWM制御を行うため、制御回路130に入力されフィードバックされる。
【0115】
すなわち、制御回路130に入力される検出抵抗RDからの電圧の値によりアークランプLAMPに流れるランプ電流ILが設定した電流値よりも少ないと判定されたする。
【0116】
この場合には、制御回路130は、電界効果トランジスタFET1のスイッチングによる1周期内のON時間が流れているランプ電流ILとあらかじめ設定した電流値との差分だけ大きくなるように制御回路130から電界効果トランジスタFET1に出力するパルスのデューティーを大きくする。
【0117】
パルスデューティーが大きくすることでアークランプの点灯回路は、変圧器T1に供給する電気エネルギーを大きくしてアークランプLAMPに流れるランプ電流ILを増し、所定のランプ電流ILの値とすることができる。
【0118】
制御回路130に入力される電圧の値によりアークランプLAMPに流れるランプ電流ILが設定した電流よりも多いと判定されたする。
【0119】
この場合には、制御回路130は、電界効果トランジスタFET1のスイッチングによる1周期内のON時間が流れているランプ電流ILとあらかじめ設定した電流値との差分だけ小さくなるように制御回路130から電界効果トランジスタFET1に出力するパルスのデューティーを小さくする。
【0120】
パルスのデューティーが小さくすることでアークランプの点灯回路は、変圧器T1に供給する電気エネルギーを小さくしてアークランプLAMPに流れるランプ電流ILを減少させ、所定のランプ電流ILの値とすることができる。
【0121】
本アークランプの点灯回路においては、アークランプLAMPに流れるランプ電流ILの電流制御を制御回路130により自動的に行うことによって、アークランプLAMPのランプ電流ILは一定に制御され、アークランプLAMPは安定した発光を行うことができる。
【0122】
高電圧回路120によりアーク放電が開始された後、直流ランプ電圧V1に対応した分圧直流電圧V2は、比較回路150に入力されると、比較回路150であらかじめ設定された閾値電圧VXと比較される。
【0123】
比較回路150は、分圧直流電圧V2が閾値電圧VXを超えるときに、分圧直流電圧V2と閾値電圧Vとの差分を制御回路130に出力する。
【0124】
制御回路130は、比較回路150からの出力された差分に応じて電界効果トランジスタFET1のゲートに出力する制御信号のパルスの幅を狭くしてパルスのデューティーを低減する。
【0125】
電界効果トランジスタFET1は、制御回路130からゲートに入力された制御信号のパルス幅に応じてスイッチングが行われる。
【0126】
パルスのデューティーが下がった制御信号による電界効果トランジスタFET1のスイッチングにより、変圧器T1に入力される電力はパルスデューティーが下がった分減少する。
【0127】
変圧器T1に入力される電力の減少は、変圧器T1の二次巻線側でダイオードD1に整流され平滑コンデンサC1で平滑化された直流ランプ電圧V1に対応する電力にそのまま反映しており、平滑化された直流ランプ電圧V1はパルスのデューティーが下がった分だけ減少する。
【0128】
このとき分圧抵抗R1、R2で分圧された分圧直流電圧V2は、パルスデューティーの減少前に比べて低下し、低下した分圧直流電圧V2は直流ランプ電圧V1に対応している。
【0129】
このようにして、制御回路130は、分圧直流電圧V2があらかじめ定めた閾値電圧VXを超えなくなるまで、電界効果トランジスタFET1に出力する制御信号のパルスのデューティーを低減する。
【0130】
アークランプの点灯回路は、制御回路130から電界効果トランジスタFET1に出力される制御信号のデューティーを制御することにより、検出される分圧直流電圧V2を閾値電圧VXを超えない一定値にすることができ、すなわち直流ランプ電圧V1を一定値に制御することができる。
【0131】
本実施形態のアークランプの点灯回路を用いてアークランプLAMPを点灯したときのアークランプLAMPの点灯累積時間と直流ランプ電圧V1およびランプの消費電力の関係を、図2に示す。
【0132】
図中の横軸はアークランプLAMPの点灯累積時間(単位:時間)を示し、左方の縦軸はアークランプLAMPの消費電力(単位:W)を示し、右方の縦軸はアークランプLAMPの電圧(単位:V)を示しており、実線610はアークランプLAMPの直流ランプ電圧V1の変化を示し、破線620はアークランプLAMPの消費電力を示している。
【0133】
横軸で示したアークランプLAMPの点灯累積時間は、アークランプLAMPの点灯された時間を累積したもので、これはすなわちアークランプLAMPの使用累積時間を意味している。
【0134】
実線610から分かるように、アークランプLAMPの直流ランプ電圧V1は、アークランプLAMPの点灯累積時間の経過とともに、時間tcまでは徐々に上昇する。
【0135】
直流ランプ電圧V1は、時間tcであらかじめ設定した電圧VMAXに達し、時間tc以降は一定の電圧VMAXとなっている。
【0136】
ここで、比較回路150であらかじめ設定する閾値電圧VXは、直流ランプ電圧V1が電圧VMAXになるときの、分圧直流電圧V2に等しくなるように設定しておくとよい。
【0137】
この設定により、分圧直流電圧V2は直流ランプ電圧V1に対応しており、電圧VMAXは閾値電圧VXに対応している。
【0138】
実線610の示す直流ランプ電圧V1の上昇は、点灯累積時間の増加にともなって、アークランプLAMPの両電極の消耗により、両電極間で形成される放電長の増加などが原因となっている。
【0139】
したがって、両電極間の放電長の増加が解消されない限り、点灯累積時間の増加にともなう直流ランプ電圧V1の上昇は止まらない。
【0140】
図から分かるように直流ランプ電圧V1は、一般的に約15V〜20Vであるが、点灯累積時間の増加にともなっては20Vを超える状態となることもある。
【0141】
これに対応してアークランプLAMPでは、使用初期には消費電力が80W前後であったのに比べて、100Wを超す大きな消費電力を示すこともある。
【0142】
この直流ランプ電圧の上昇は、アークランプLAMPの消費電力の増加をともない、消費電力の増加による発熱のためアークランプLAMPの寿命を縮める要因となっている。
【0143】
本アークランプの点灯回路では、時間0から時間tcまでは、検出抵抗RDにより検出される電圧に基づいて、制御回路130より出力されるパルスのデューティーの制御が従来同様の行われていることで、アークランプLAMPには一定のランプ電流ILが流れ点灯している。
【0144】
時間tcに達するまでは比較回路150の比較結果は、分圧直流電圧V2が閾値電圧VXを超えないため制御回路130には反映されず、検出抵抗RDの検出に基づくランプ電流ILの制御が制御回路130により行われる。
【0145】
比較回路150は、時間tcでは、分圧直流電圧V2が閾値電圧VXを超えたことを検出する。この検出の結果は、直流ランプ電圧V1があらかじめ定めた電圧VMAXを超える状態となっていることを示している。
【0146】
制御回路130は、比較回路150の比較結果を通知として受け取り、比較結果に含まれる閾値電圧VXと分圧直流電圧V2との差分に応じて、出力する制御信号のデューティーを下げるようにPWM制御を行う。
【0147】
破線620から分かるように、直流ランプ電圧V1が上昇している時間tcまではアークランプLAMPの消費電力は直流ランプ電圧V1の増加に比例して増加している。
【0148】
時間tc以降は、直流ランプ電圧V1が制御回路130のPWM制御により電圧VMAXに制御され、直流ランプ電圧V1が一定でありランプ電流ILが徐々に減少しているため、アークランプLAMPの消費電力はランプ電流ILの減少に対応して徐々に減少している。
【0149】
本アークランプの点灯回路においては、直流ランプ電圧V1の上昇を制御することで、点灯累積時間の増加にともなったアークランプの消費電力の増加を制御することができる。
【0150】
本アークランプの点灯回路の制御によって、時間tcまでは制御回路130の制御によりアークランプLAMPに流れるランプ電流ILは一定となっており、時間tc以降は制御回路130の制御によりアークランプLAMPに印加される直流ランプ電圧V1は一定となっている。
【0151】
本発明によるアークランプの点灯回路では、電圧VMAXの設定は、アークランプLAMPの点灯累積時間の増加にともない直流ランプ電圧V1が上昇してランプが寿命末期に到達するときの直流ランプ電圧V1に等しい電圧か、またはアークランプの点灯回路が供給できる最大出力電力とランプ電流から算出される電圧(=最大出力電力/ランプ電流)かのいずれか小さい方に設定するとよい。
以上説明したように、本発明においては、次のような効果を得られる。
(1)アークランプの点灯回路は、アークランプの寿命末期に直流ランプ電圧があらかじめ設定した値に達した後、直流ランプ電圧の高低が比較回路で判定され、設定した閾値電圧に達したときにアークランプに印加される直流ランプ電圧の上昇が制御回路により制限され、直流ランプ電圧が一定になる。直流ランプ電圧が一定になることにより、アークランプの消費電力は、直流ランプ電圧の電圧制御以降は増加しない。このため、アークランプの点灯回路において供給された電力が無駄に消費されることがなくなり、アークランプおよびアークランプの点灯回路に無駄な熱が発生しなくなる。
(2)アークランプの点灯回路は、アークランプが使用寿命の末期においても、直流ランプ電圧を一定値に制御することにより、直流ランプ電圧の上昇によるアークランプLAMPの寿命の短縮を防止することができる。さらに、比較回路により容易に直流ランプ電圧の上昇の検出ができるため、直流ランプ電圧の検出に基づいてアークランプの交換を促す表示や信号を簡単に発生させることができる。
(3)アークランプの点灯回路は、消費する電力が一定値(=IL×VMAX)を超えることがないため、アークランプの点灯回路に設けられる放熱部などの仕様や定格に余分なマージンを持たせる必要がなく、アークランプの点灯回路の設計および製造のコストを抑えることができる。
(4)アークランプの点灯回路は、消費電力が一定値(=IL×VMAX)を超えることがないため、電源の消費電力もほぼ一定値を超えることがなく、屋内の電源配線や同じ電源に接続されている他の装置に与える影響を少なくすることができる。
(5)アークランプの点灯回路は、直流ランプ電圧をアークランプの長い点灯累積時間に渡るタームで電圧制御することができる。
(6)アークランプの点灯回路は、アークランプLAMPの寿命末期でも直流ランプ電圧の制御により消費電力を抑えることができ、この消費電力の抑制によりアークランプの寿命の短縮を最小限に留めることができる。
【0152】
なお、本実施形態では、スイッチング素子として実施例では電界効果トランジスタを取り上げ説明しているが、スイッチング動作をする目的を達成することのできる他の素子、例えばバイポーラトランジスタ、半導体スイッチなどでも本件の主要な仕組みに影響を与えるものではない。
【0153】
また、図示していないが表示灯を設けて、直流ランプ電圧があらかじめ設定した電圧VMAXに達してアークランプの点灯回路が電圧制限動作に移行した後には、アークランプの交換時期と判断して、制御回路からの通知によりアークランプの交換を勧める表示灯の点灯をさせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本実施形態のアークランプの点灯回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のアークランプの点灯累積時間と直流ランプ電圧およびランプの消費電力の関係を示す図である。
【図3】従来のアークランプの点灯回路の構成を示すブロック図である。
【図4】従来のアークランプの点灯累積時間と直流ランプ電圧およびランプの消費電力の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0155】
120 高電圧回路(点弧回路)
130 制御回路
150 比較回路(閾値回路)
330 制御回路
610 実線
620 破線
710 実線
720 破線
CS 充電用コンデンサ
C1 平滑コンデンサ
C2 コンデンサ
DS トリガダイオード(サイダック)
D1 ダイオード(整流素子)
FET1 電界効果トランジスタ(スイッチング素子)
IL ランプ電流
LAMP アークランプ
RD 検出抵抗
RS 抵抗
R1 分圧抵抗
R2 分圧抵抗
TS パルス変圧器
T1 変圧器
T11 電源端子
T31 電源端子
V1 直流ランプ電圧
V11 直流ランプ電圧
V2 分圧直流電圧
VMAX 電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク放電により点灯するアークランプの点灯回路において、
電力を供給する電源と、
前記アークランプへの供給電力を制御するパルス状の制御信号を出力する制御回路と、
前記電源から供給された電力を前記制御信号に応じて断続するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子で断続された電力の電圧を変換して二次電圧として出力する変圧器と、
前記変圧器から出力された前記二次電圧を整流して整流電圧として出力する整流素子と、
前記整流素子からの前記整流電圧を平滑化して直流ランプ電圧として出力する平滑コンデンサと、
前記直流ランプ電圧が入力され高電圧パルスを発生することにより前記アークランプの前記アーク放電を開始させ、該アーク放電開始後は前記直流ランプ電圧を前記アークランプに印加する高電圧回路と、
前記直流ランプ電圧が入力され、該直流ランプ電圧を所定の閾値電圧と比較して、前記直流ランプ電圧が前記閾値電圧を超えるときに、前記直流ランプ電圧と前記閾値電圧との差分を出力する比較回路と、を具備し、
前記制御回路は、前記比較回路から前記差分が入力されたときに該差分に応じて前記スイッチング素子に出力する前記制御信号の前記パルスの幅を変化させ、前記差分が少なくなるように制御することを特徴とするアークランプの点灯回路。
【請求項2】
請求項1に記載のアークランプの点灯回路において、
前記スイッチング素子は、電界効果トランジスタであるアークランプの点灯回路。
【請求項3】
請求項1に記載のアークランプの点灯回路において、
前記高電圧回路は、
所定の電圧を超える電圧が印加されると導通状態となるトリガダイオードと、
前記直流ランプ電圧により電荷が充電される充電用コンデンサと、
一次巻線と二次巻線を有し、前記トリガダイオードが前記導通状態となったことにより、前記充電用コンデンサに充電された前記電荷が前記トリガダイオードを介して前記一次巻線に流れ、前記二次巻線の両端に前記高電圧パルスを発生するパルス変圧器と、を具備したアークランプの点灯回路。
【請求項4】
アーク放電により点灯するアークランプと、電力を供給する電源と、前記アークランプへの供給電力を制御するパルス状の制御信号を出力する制御回路と、前記電源から供給された電力を前記制御信号に応じて断続するスイッチング素子と、前記電力の電圧を変換して二次電圧として出力する変圧器と、前記二次電圧を整流して整流電圧として出力する整流素子と、前記整流素子からの整流電圧を平滑化して直流ランプ電圧として出力する平滑コンデンサと、前記直流ランプ電圧により高電圧パルスを発生させる高電圧回路と、前記直流ランプ電圧が入力され、該直流ランプ電圧を所定の閾値電圧と比較する比較回路と、を具備したアークランプの点灯回路の電圧制御方法において、
前記電源で行われる、電力を供給する第1のステップと、
前記制御回路で行われる、前記アークランプへの供給電力を制御するパルス状の制御信号を出力するステップと、
前記スイッチング素子で行われる、前記第1のステップで供給された電力を前記制御信号に応じて断続する第2のステップと、
前記変圧器で行われる、前記第2のステップで断続された電力の電圧を変換して二次電圧として出力する第3のステップと、
前記整流素子で行われる、前記第3のステップで出力された前記二次電圧を整流して整流電圧として出力する第4のステップと、
前記平滑コンデンサで行われる、前記第4のステップからの整流電圧を平滑化して直流ランプ電圧として出力する第5のステップと、
前記高電圧回路で行われる、前記第5のステップから前記直流ランプ電圧が入力され高電圧パルスを発生することにより前記アークランプのアーク放電を開始させ、該アーク放電開始後は前記直流ランプ電圧を前記アークランプに印加する第6のステップと、
前記比較回路で行われる、前記直流ランプ電圧が入力され、該直流ランプ電圧を所定の閾値電圧と比較して、前記直流ランプ電圧は前記閾値電圧を超えるときに、前記直流ランプ電圧と前記閾値電圧との差分を前記制御回路に出力する第7のステップと、
前記制御回路で行われる、前記第7のステップから前記差分が入力されたときに該差分に応じて前記スイッチング素子に出力する前記制御信号の前記パルスの幅を変化させ、前記差分が少なくなるように制御するステップと、を具備したことを特徴とするアークランプの点灯回路の電圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−200757(P2007−200757A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19061(P2006−19061)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】