説明

イオンを利用して材料をミリング処理する装置及び方法

イオン衝突を利用した顕微鏡検査または表面研究用の試料のミリング処理装置を開示する。この装置は高低両エネルギー・イオン源を使用することによって試料表面をそれぞれ粗及び微修正することができる。イオン源から発生する衝突ビーム内の試料位置を正確に制御することによって、ビームに対して試料を傾倒及び回転させることができる。この位置制御によって、プログラム制御下に且つ定常な真空条件下に、試料を異なるイオン源の間で移動させることができる。また、装置への試料の導入及び装置からの試料取出しの際に真空度を低下させず、しかも試料を周囲温度に戻すことを可能にするロード・ロック機構を設ける。ミリング処理のすべての動作段階において試料を観察及び撮像することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面科学技術用または電子顕微鏡検査用試料から試料作成技術の一部として材料を制御下に取り除く装置に係わる。より具体的には、本発明は、例えば、試料の温度、試料の位置および真空度などのパラメータを含む綿密に制御された環境内における高エネルギー及び低エネルギー双方のイオン・ミリング機能を有する装置に係わる。本発明は表面科学技術または電子顕微鏡検査用試料を作成するための本発明の装置を利用する方法にも係わる。
【背景技術】
【0002】
試料から情報を得るため、家電粒子計器は試料と相互作用する電子を利用する。この種の計器の例としては、透過型電子顕微鏡、原子力間力顕微鏡、原子プローブ電界イオン顕微鏡のほか、拡大および撮像のため他の被走査プローブおよびx-線技術を組み込む装置などが挙げられる。また、高解像度走査または透過型電子顕微鏡検査のためには、高角度環状暗視野検出がこれらの装置と併用される。これらの装置、より具体的には、透過型電子顕微鏡、略してTEMを使用して試料を観察するためには、電子透過性且つ原子レベルでクリーンな、即ち、TEMの材質及び加速電圧によっても異なるが、試料に1原子層乃至5μの厚さを有する部分が存在しなければならない。試料に電子透過領域を形成する1つの方法としては、先ず、ディンプリング・グラインダやウェッジ・ポリシャなどによる切削、へき開、シニングまたは研磨を利用して試料の全体的なサイズを機械的に縮小した後、試料をイオン・ミリング処理する。イオン・ミリング処理に際しては、イオン銃とも呼称されるイオンビーム源によってアルゴンのような不活性ガスからなる1条の、好ましくは2条のイオンビームを発生させ、機械的に縮小された試料部分に照準を合わせる。場合によっては、腐食性のイオンビームを利用することによって試料の材料を所定のサイズに縮小させるか、または所定の態様に修正することもある。好ましくは第1のイオンビームを水平から約5-10°の角度で試料の頂面に衝突させ、第2のイオンビームを水平から約5-10°の角度で試料の底面に衝突させる。イオンビームは移動量移動によって試料から材料を取り除く。典型的な例として、既に機械的な手段で薄くされた試料部分の中心に微細な孔を形成することによって孔の近傍における試料部分を電子透過性にする目的でイオン・ミリング処理が利用される。従来のイオン・ミリング処理に使用されるイオンビームはその直径が250μm-2 mm程度、イオン・エネルギーは0.5-10 keV程度であり、所要量の材料を除去する能力、即ち、ミリング率は20μm/hr程度である。従来のイオン・ミリング処理は多くの場合、50-100 eV程度の低エネルギー装置を使用して行われいるが、このような低エネルギーを利用するように設計された装置では、適当な電流で高いエネルギーを発生させることができない場合が多い。また、高エネルギー、高電流のミリング処理が可能な装置はビームの小さい直径を維持することができない。これらの装置では、ビームの直径がせいぜい1mmであり、例えば、ハンガリー、ブダペストに所在するTechnoorg Linda社製のTechnoorg Linda Gentle Millがその1例である。
【0003】
試料の作成に使用される上記以外の装置として、集束イオンビーム、略してFIBがある。FIBミリング処理は本来、半導体業界においてトレースを切削、溶接するための回路編集を目的に開発された。FIBミリング処理においては、液体金属源から小直径、高エネルギーイオンビームを発生させる。典型的には、イオンビームの直径はナノメータ・レベルであり、ビーム・エネルギーは5-30 keV程度である。ビーム直径が小さいことから、FIBミリング処理は極めて微細な切削に使用することができる。しかも、このように微細な切削が可能であることから、電子透過性領域を形成するための試料作成方法にも利用されている。例えば、FIBミリング処理は加工済みマイクロエレクトロニック・ウエハーからのTEM試料作成に利用されることが多い。FIB技術のこのような利用の例として広く知られているのがいわゆるH-Bar 試料である。H-Bar 試料においては、ウエハーのへき開または研磨された部分の頂面及び底面に幅約20μの2条の溝を切削して上下2つの溝の間に電子透過領域が残るようにする。TEM試料作成に利用される集束イオンビーム・エッチングの問題の1つは、イオン・エネルギー及び/またはイオン質量が高いため、試料の結晶構造を損傷して非晶質化を招き易いことである。さらに、金属イオンが試料基板を貫通していわゆるインプランテーション状態となり易い。非晶質化もインプランテーションも試料から得られるTEM画像の品質に悪影響を及ぼす。従来のイオン・ミリング処理を利用することによってこの非晶質化やインプランテーションを解消または修正することはできる。しかし、従来のイオン・ミリング処理に使用されるイオンビームは直径が1mm程度であり、H-Bar試料における溝の幅は20μ程度であるから、イオンビームは溝の周りのエッジから試料材料を除去し、除去した材料を再び溝に沈積させることが多い。再沈積と呼称されるこの問題も試料から得られるTEM画像の品質に悪影響を及ぼす。
【0004】
FIBを採用するか採用しないかは別として、他にも種々の方法が利用されている。例えば、試料を研磨して比較的薄いウェッジ状にしてから、ウェッジの薄いエッジにおいて試料を観察するか、またはFIBを利用して基板の表面から直接彫り込む、などの方法である。これらの方法の1つの具体例では、観察すべき基板材料の薄いスライスまたは部分の直ぐ近傍で材料を切削して溝を形成することによって固体材料から材料の薄いスライスを取り除く。溝を切削する間は薄いスライスを保護し、取り囲む基板壁から薄い、ほぼ長方形の部分を切削した後、薄いスライスを取り除く。
【0005】
上記試料作成例のいずれにおいても、機械的な研磨及び切削技術と共にFIBの利用による切削及びシニングが採用されるから、結果として試料には上述したような部分的な非晶質化が現れる。初期作成段階において試料に起こる損傷を軽減すると共に、作成に起因する損傷を除くため、公知技術では種々の技術が採用されている。そのような技術としては、Fishioneの米国特許第5,633,502号明細書に開示されているようなガス・プラズマの利用がある。ほかにも、上述したように、該当の被検領域を露出させる種々の作成技術が開発されており、これらの作成技術では、試料の被検領域を含む試料部分をこれを囲む基板層から物理的に分離し、特定の被検領域から空間的に離れた領域において試料をシニングする。
【0006】
当業者には明らかなように、研磨効果を抑えた機械的技術として低エネルギー・イオンを使用すれば試料の損傷を最小限に抑制することになるが、この種の技術を採用するだけでは、妥当な作成時間で、しかも再沈積の現象を伴うことなく試料の所与の領域を処理するという課題を解決することはできなかった。
【0007】
従って、電子透過性という条件を満たすには、被検領域に正確に対応する面を露出させる前に、何らかの電気的、化学的、熱的または機械的方法を利用しなければならない。このような目的を達成するため、公知のイオン・ミリング装置は種々の態様で利用されてきた。ところが、公知装置の典型的なイオン・ミリング・エネルギーは0.5乃至10 keVである。このような従来型のイオン源による衝撃損傷を軽減する方法として、試料表面のミリング処理に使用されるイオンの直接的な衝撃を和らげ、この表面から試料材料を注意深く且つ制御下に除去するため、低角度でのミリング処理を採用する方法がある。ペンシルバニア州、エクスポート市に所在のE. A. Fischione Instruments, Inc.によって製造されているIon Mill Model No. 1010は公知ミルの典型的な例である。この装置は傾倒/回転可能な試料台の近傍に中空陽極放電、略してHADイオン源を組み込んでいる。傾倒/回転可能な試料台を使用することで、HADイオン源に対して試料を操作して、試料の表面を横切るようにイオンビームを発射し、移動させることができる。公知の設計によるイオン・ミルはそれなりに有効ではあるが、ナノ技術、電子顕微鏡検査の新しい開発や、試料の被検領域が限りなく小さくなる現状に照らして、透過型電子顕微鏡の倍率をさらに高めると共に、試料作成中に起こる試料の損傷を軽減する必要がある。公知の作成技術に起因する損傷は倍率が増大するに従って、試料撮像の際の視野を混乱させるだけでなく、試料の構造に可変的且つ予測不可能な変化を発生させる。従って、従来の技術に欠けているのは試料を電子透過性にまでシニングする方法であり、この方法が実現すれば、比較的小さい直径を有する高低両エネルギーのイオンビームを使用することによって、試料に対する損傷を極力抑えながら、短時間で試料を予備的にシニングした後、制御下に仕上げ加工することができる。
【0008】
温度及び真空度を注意深く制御しながら多様な技術または装置を利用することによって、損傷を最小限に抑えながら試料を作成することも公知技術では不可能である。上記の機能の多くを可能にする公知の装置は少なくないが、これらの装置は不連続的な工程または装置として提供されるものであり、作成のための個々の装置または中間的技術間を試料が転送される際の条件は全く考慮されていない。
【発明の開示】
【0009】
比較的小さいビームのスポット・サイズまたは直径を維持しながら、多様な高低イオンビーム・エネルギーを利用して試料を作成できるイオン・ミルを以下に説明する。ビームのスポット・サイズを小さくすることによって、試料表面に再沈積する可能性がある材料のスパッタ量を最小限に抑え、試料表面を横切るビームをラスター化する機能が高められる。また、作業が単一の真空空間内で行われるから、試料が周囲の環境条件や汚染材料に曝される影響は極めて小さい。
【0010】
本発明装置は加工を自動化するため局所的にまたはネットワーク全体に亘って装置各部をプログラムに従って集中制御することを可能にするコンピュータ機能を含む。この機能にはウィンドウズ搭載PCを使用することが好ましいが、カストマイズされた解決をも含めて、如何なるコンピュータを利用してもよい。コンピュータに代えて、タッチスクリーンや専用表示パネルのような入出力機能を組み込んでもよい。純粋に手動操作の方が良いと思われる場合には、コンピュータを省くことができ、装置各部の制御及び出力を、当業者には公知の該当部品を介してそれぞれ個別に制御すればよい。
【0011】
装置の主要構造部分を形成するのはチェンバ・ハウジングである。このチェンバ・ハウジングは適当な支持手段、好ましくは可搬型のキャビネットに取付けられる。但し、ミリング処理装置の作動部分は必要な安定性を有するベンチまたはその他の支持手段に取付けられる。チェンバ・ブロック自体は多数の構造部分から成り、製造、保守または組立ての便宜上、さらに細分化することができる。チェンバ・ブロックは装着される装置各部を支持すると共に、内部におけるミリング処理を可能にする強度と機械的化学的性質を有する材料、好ましくはアルミニウムから形成されている。
【0012】
チェンバ・ブロックはイオン・ミリング処理装置のミリング機能が行われる場所であり、この場所で行われるミリング処理及びビーム照準の進行を観察するための撮像機能を有する。光学的、熱的、電気光学的、X-線撮像、またはその他の顕微鏡的撮像機能のような多様な撮像装置をミリング処理と併用できるが、高エネルギー機能はCCDカメラを利用して観察することが好ましい。但し、低エネルギー動作は2次電子検出器、略してSEDに基づく撮像モジュールを利用して観察される。
【0013】
高エネルギー・ミリング処理装置は少なくとも1つの、好ましくは個別にまたは組み合わせて利用される複数のHADイオン源を含む。現時点ではHADイオン源が好ましいが、例えば、FIBまたはその他の液体金属供給源のような他の高エネルギー・ミリング処理手段をミリング処理装置に直接組み込むことも考えられる。HADまたはその他の高エネルギー手段は洗浄機能を有する不活性の、または所定のエッチング機能を可能にする腐食性のガスを利用する。好ましい実施態様においては、不活性ガスとしてアルゴンが使用される。本発明の複合イオン・ミリング処理装置は高エネルギー・ミリング機能に加えて、より精密な制御下に試料材料を除去するのに利用される低ミリング機能をも含む。
【0014】
低エネルギー源はその残余の構成部分とのインターフェースとして適当な配向でフィラメント集合体を支持し且つ間隔設定するためのロッドを含む内蔵型ユニットとして構成される。フィラメント集合体の下部近傍にレンズ集合体が配置され、この関係で両者が別々に支持されている。装置各部に対する保守及びアクセスのためには、イオン・ミリング処理装置からフィラメント集合体だけを取外すか、またはレンズ集合体をフィラメント集合体と一緒に取外せばよい。イオン源及びレンズ集合体の構成素子として、フィラメント集合体の近傍の点に不活性ガスを注入するためのガス配管が含まれる。フィラメント集合体の基部の周りに一連の電極が配置され、フィラメント集合体からの電子を通過させ、レンズ集合体に向かってイオンを加速させるための孔を有する。イオン源のアパーチュアから発射されたイオンは好ましくは円錐形の孔を有するレンズ集合体に向けられる。レンズ集合体はその端末側終端にラスター化または偏向セクションを含み、これによって試料表面を横切るイオンビームの走査が可能になる。端点検出のためには、ビームの近傍に設けたファラデー・カップを利用して試料の裏側に達した試料誘導電流を測定する。
【0015】
ミリング処理装置では、ミリング処理の進行中に端点を検出し、観察するために複数の方法を利用することができ、多くの場合、光線が試料に直接入射するように配置された光源が利用される。ミリング端点が未だ検出されていない場合、ミリング処理中に光源からの光線が試料を通過するのを検出されれば、ミリング端点が予測されることになる。光線を試料に直接入射させずに端点を検出する方式を組み込むことも可能である。例えば、試料を通過するイオンビームの経路の近傍に設けたファラデー・カップのようなセンサーを利用してイオンビーム源から試料の裏側に達したビームの存在を検出する方法がある。
【0016】
試料位置決めモジュールまたはキャリッジは試料ホルダ及び熱伝達手段と一緒に液体窒素またはその他の冷却媒を保有するデュワーを支持し、位置決めする安定的な受け台として機能する。デュワーに基づくシステムが好ましいが、ペルティア・クーラー・モジュールのような他の冷却システムと置き換えても同様の成果が得られる。機械的には、当業者が熟知の技術で上記代替モジュールを支持するように試料位置決めモジュールを改造するか、さもなければ、位上記代替モジュールをデュワー・システムと交換することになる。位置決めモジュールはイオンビーム源に対して、試料及び作業中試料を支持し、モニターするための付属部品を制御自在に支持する。位置決めモジュールはモータ駆動される送りねじ集合体の作用下に横方向変位する。位置決めモジュールは支持ロッドによって案内され、送りねじ駆動手段と係合する。駆動モータもの制御下に送りねじの回転がモジュールの並進移動に変換される。位置決めモジュールは横方向モジュール軸を中心に回転変位して試料をイオンビーム経路内へ傾倒させる。チェンバに固定されたモータがモジュールに取付けられたギアと係合してモジュールを完全に傾倒させる。位置決めモジュールのすべての移動限界は並進移動の終端と、傾倒の際の回転中心の定位置を表示するセンサーによって画定される。限界位置に対する中間位置はすべてソフトウエアで画定され、ステッパモータまたはエンコーダ搭載モータの駆動によって制御される。イオンビームに対して横方向に試料を位置決めすると共に、イオンビームに対して試料を傾倒及び回転させることができる実施態様が好ましいが、今後の実施態様では、試料をさらに複雑に操作すること、即ち、上記左右方向傾倒機能とは直交方向、即ち、前後方向軸を中心に試料を傾倒させるとともに、横方向移動及び回転軸を中心に試料を左右方向に傾倒させることも有用または必要になるであろう。
【0017】
真空ポンプ・モジュールは真空チェンバを真空化する機能を果す。この真空ポンプ・モジュールとしては、公知構成のものを使用すればよく、多くの場合、市販の部材で構成される。主要なポンピング機能をターボモレキュラ・ポンプに依存することが好ましい。当業者には明らかなように、チェンバと連携する、またはチェンバに取付けられるそれぞれのモジュール及び構成各部の間には、真空状態の維持を容易にするため適切なシールを設ける。
【0018】
試料台は冷却媒を含むデュワーに構造的且つ熱的に固定されている。試料は通常、イオンビームの衝突に起因する劣化を防止するため、冷却状態下でミリング処理される。ミリング処理及び撮像が行われる場所である真空チェンバを囲むチェンバ・ブロックの外側で、熱伝導性支持体が位置決めモジュール表示構造から延出している。但し、試料台集合体と冷却システムとの熱結合関係は一時的に解くことができる。熱伝導性支持体は好ましくはばねによって弾性的に偏倚させられて冷却システムと係合する試料台を摺動自在な係合の状態で支持する。但し、試料をロードまたはアンロードする際には、ばねに抗して台を離脱位置へ移動させることによって、試料及びホルダが周囲温度に戻す。このプロセスは台にヒータを組み込むことによってさらに容易にすることができる。
【0019】
本発明装置では、チェンバ内の高真空状態の解除と発生を繰返すことを必要とせずに試料を導入したり取出したりすることもできる。真空チェンバへの試料導入にはロード・ロックが利用される。尚、本発明装置を外側からロード・ロックと直接結合できる真空作用に基づく試料搬送手段と併用することも考えられる。この場合、真空下に試料をホルダから搬送手段へ移し、外気またはその他の環境汚染物質に曝すことなく顕微鏡またはその他の撮像手段へ搬送することができる。詳しくは後述するように、このような搬送手段内を真空状態に維持するためにロード・ロックの真空を利用することもできる。
【0020】
試料台をロード/アンロード位置へ移動させると、真空室内からロード・ロック内に達する。試料台は真空チェンバからロード・ロック内へ延びる試料ホルダを密封するように設計されている。この位置において試料台がロード・ロックと係合すると、試料台と冷却システムとの熱結合が解かれる。次いで、ロード・ロックを排気し、開放すると、チェンバ内の真空を維持しながら試料台の端部を露出させることになる。試料交換後、ロード・ロックをポンプダウンし、試料台を主チェンバ内へ引っ込めればよい。チェンバ内へ引っ込めると、自動的に再び冷却システムとの熱結合状態となる。
【0021】
試料台自体は、上記ヒータのほかに、試料台の温度をモニターするための温度センサーをも含む。試料台は試料台内の小型モータを使用することにより遠隔指令で回転させることができるクランプ回転ホルダ内に試料を支持する。さらに、試料台の外部にモータまたはポンプ手段を設けて、機械的または空気圧的な連通関係を介して試料台またはホルダに機械的エネルギーを供給することもできる。ホルダは着脱自在であるから、形状またはデザインが異なる場合もある複数のホルダを本発明装置と併用することができる。TEM試料ミリング処理に適応させた好ましい実施例は試料の裏側のミリング処理を可能にするギャップの上に試料を懸架するライザーを利用する。また、試料ホルダは終端検出ビームの通過を可能にする。
【0022】
さらにまた、試料台を複数の試料を受取って支持するように構成することも可能であり、典型的には、ターンテーブル状支持体を支持する別設のモータを使用し、このターンテーブル状支持体はこれに取付けられた種々のホルダを支持する。
【0023】
好ましくはウィンドウズ搭載のPCから成るコンピュータを設けることによってミリング処理装置の動作状況を制御し、モニターすることができる。動作状況としては、試料の位置や種々の位置決め手段、真空システム、撮像システム及びイオン・ミリング処理装置による試料の操作などが含まれる。個別の手動手段を使用してすべての機能を個別に制御し、モニターできることも予想される。もし存在するなら、コンピュータを利用することによって装置の動作を自動的に制御し、シーケンス設定するためのプログラムを作成し、実行することも可能である。好ましくは画像入/出力インターフェースをコンピュータと併用することによって本発明装置の操作性を簡単にし、典型的にはキーボード及び/または位置決め手段と併用するという態様で、使用に便利なコンパクトな場所ですべての制御及び出力を行うことができる。種々のスクリーン及びメニュをインターフェースと併用すると共に、種々のセンサーや撮像手段からの画像やその他のデータ出力をも利用して本発明装置のすべての機械的及びミリング動作を全面的に制御することができる。このようなコンピュータに共通の機能として、ネットワークとの接続を利用して互いに接続されているコンピュータ間でデータ、画像または操作制御を交換することができる。当業者が熟知の、診断機能を実行する能力を含むコンピュータの遠隔操作をこのような実施態様に採用することも期待される。
【0024】
本発明の特徴は予め設定された自動的なミリング処理シーケンスを実行できることである。高エネルギー・イオン・ミル・モジュールを利用して試料を予備的にシニング加工した後、低エネルギー・イオン・ミル・モジュールを利用して仕上げる。ミリング・パラメータはユーザーによって設定され、ミリング処理中、イオンビームに対して試料を移動させるなどの操作を手動またはプログラムで制御することができる。ミリング処理の開始及び完了時に、試料台がロード/アンロード位置に戻され、ロード・ロック機構と係合する。従って、真空チェンバ内にその都度真空状態を発生させなくても一連の試料を複合ミリング機構で順次処理することができる。
【0025】
本発明の上記及びその他の利点と特徴を好ましい実施態様と添付の図面に基づいて以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1及び2には、操作可能な機器を支持し、電源、真空システム及び装置に使用される回路を内蔵するベースキャビネット5を有するイオン・ミルを示す。ベースキャビネット5は内部部品及び収納スペースへのアクセスを可能にする取外し自在な、または開放可能な複数のパネルを含む。キャビネットは不活性且つ耐久性の材料から成るカウンタートップ10を含み、このカウンタートップは実験に使用されている際に物理的であれ化学的であれ、想定外の力や作用が加わってもこれに耐えることができる。運転中、この複合ミリング処理機構15にはカバー20A乃至20Dが設けられ、これらのカバーは外観をすっきりさせるとともに、比較的デリケートな装置構成部品を保護する機能をも果す。カバー20A乃至20Dはそれぞれ修理または点検のために装置部品にアクセスして取り出すことを可能にする。詳しくは後述するように、装置内で使用される液体窒素冷却媒を補給するため内部機構へ容易にアクセスできるように開放可能な、または取外し可能なカバーとしてデュワー・アクセス・パネル25を設ける。
【0027】
図14及び15を参照して詳しく後述するようなすべてのシーケンス制御及びデータ出力のため装置内には、プロセッサ、メモリー及びデータ・ストレージ手段を含むコンピュータが組み込まれている。この機能にはWindowsをベースとするPCを利用することが好ましい。PCの主要部分キャビネット5内に設けられている。キーボード30、ポインティング・装置35及びスクリーン40はユーザー入力及びデータ出力を可能にするためキャビネット5の外側に配置されている。装置を有効に利用するにはデータの入出力が必要であるが、入出力の方法は本発明の範囲内で任意であり、キーボード利用以外の入出力も可能であることは云うまでもない。キャビネット5には、必要に応じて、キャビネット5を位置決めするためのキャスタ45またはその他のキャビネット支持手段を設ける。
【0028】
図3、4及び5に示すように、低エネルギー・イオン源取付けブロック260と共に複合装置の真空チェンバの大部分を構成するメイン・チェンバ・ブロック50を設ける。チェンバ・ブロック50はアルミニウム圧延板で形成されていることが好ましいが、これと同等の強度を有し且つ内蔵されるイオン・ミリング処理手段とコンパチブルなら如何なる材料で構成されていてもよい。また、当業者には明らかなように、腐食性ガスを利用する場合には、装置内で利用される材料を変更しなければならない。チェンバ・ブロック50は真空チェンバ55を含み、真空チェンバ内には、試料位置決めモジュール60を利用して試料台モジュール140を導入し、位置決めする。真空チェンバ55は、種々の部品を自在に導入でき、しかもチェンバ・ブロック50内で所要の真空状態を維持するのに充分な壁厚を有するように寸法設定されている。チェンバ・ブロック50はイオン・ミリング処理装置の高エネルギー・ミリングが行われる場所でもあり、チェンバ・ブロック50内で行われる高エネルギー・ミリング処理の進行を観察するためのCCD撮像モジュール65が設置されている。高エネルギー・ミリング機能は、少なくとも1つの、好ましくは複数の好ましくは中空陽極放電イオン源を含む高エネルギー・イオン・ミリング・モジュール70を利用することによって行われる。これら公知のHAD装置はペンシルバニア州エクスポート市に所在するE. A. Fischione Instruments、Inc.が製造するModel 1010 Ion Millと機能が全く同じであり、その構成も類似している。高エネルギー・イオン・ミル・モジュールは0.5乃至6,0 keVの範囲内でイオンビーム・エネルギーを可変的、連続的に調整できる2つの固定位置HADイオン源を含むことが好ましい。このエネルギー・レベルは3 mA乃至10 mAの範囲内でこれも可変的、連続的に調整可能なイオン・ソース電流から得られる。HADイオン源は個別に、または組み合わせて利用することができ、1 mmのスポット・サイズで最大400 uA/cm2のビーム電流を発生させ、約20 μm/hrの材料除去率を達成することができる。HAD装置には、当業者には公知のアルゴン・ガス供給システムを利用してガスが供給されることが多い。腐食性ガスを利用する場合には、供給システムの構成部材としてステンレススチールやPTFEを使用することが多い。正常な使用状態では、HAD装置は約0.4 sccmのガスを消費する。公知装置の場合と同様に、固定ビームの領域内で試料を操作する間、高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70を固定位置に保持するが、イオン源を操作する間、試料を固定位置に保持する公知装置もある。
【0029】
複合イオン・ミリング処理装置は高エネルギー・ミリング処理能力だけでなく、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75をも含み、詳しくは後述するように、これを利用することによって試料材料をより正確に除去することができる。高エネルギー・モジュールの場合と同様に、ミリング処理を進めながら試料を観察できるように、低エネルギー・モジュールにも撮像機能を付与する。この機能を付与するため、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75の場合と同様に、低イオン源取付けブロック260に向かって延びる位置に固定される撮像モジュール80として2次電子検出器、略してSEDを設ける。尚、使用目的によっては、SEDの代わりに光学的、熱的、電気光学的または電子的撮像装置を使用することもできる。低エネルギー・イオン源取付けブロック260には低エネルギー・ミリング・チェンバ265をも設ける。チェンバ265は真空チェンバ55と同様に、低エネルギー・イオン源取付けブロック260内に配置され、挿入されている機器や試料ホルダを操作するのに充分なスペースを確保しながら、好適な真空状態を維持できるように寸法設定されている。真空チェンバ55と低エネルギー・ミリング・チェンバ265の構成部品を分離し、隔離するためのチェンバ構造集合体228をも設ける。特に図4から明らかなように、高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70の動作中、双方のチェンバ内へ延びて両チェンバを区分するように電動仕切り手段を選択的に配置する。低エネルギー・イオン源取付けブロック260には、低エネルギー・ミリング処理チェンバ265を閉鎖密閉すると共にロード・ロック85を支持する端板262をも設ける。ロード・ロック85を利用することにより、詳しくは後述するような好適なロード・ポジションにおいて、試料を試料台モジュール140へ導入する。ロード・ロック85は試料台モジュール140を制御下に入出させると共に、外部から試料台モジュール140にアクセスすることを可能にする。
【0030】
試料台モジュール140は多数の支持素子から成る試料位置決めモジュール60によって支持される。少なくとも3本から成る試料位置決め用支持ロッド95を試料位置決め用支持フランジ100と併設することによってデュワー155及びその付属機構を支持し且つ位置決めする安定な受け台を構成する。試料位置決め用支持フランジ100に横変位モータ105を設け、試料位置決め用ロッド95と平行に延びるネジ付き駆動ロッド110と係合させる。横変位モータ105としては、移動制御が±1°程度のステッパ‐またはサーボ‐タイプのモータが好ましい。回転支持ハウジング115を試料位置決め用支持ロッド95及び試料位置決め用支持フランジ100と併設することにより、デュワー155及びその付属機構を支持する完全な受け台を形成する。運転時には、ネジ付き駆動ロッド110とデュワー支持ハウジング150とのインターフェースによってデュワー155の横移動を制御する。デュワー155は取外し自在なデュワー・カバー160を有し、デュワー支持ハウジング150内に収納されている。デュワー支持ハウジング150は試料位置決め用支持ロッド95に沿って摺動できるようにロッド95によって支持され、ネジ付き駆動ロッド110と螺合する。横変位モータ105が制御下に回転すると、これに伴ってネジ付き駆動ロッド110が回転し、ネジ付き駆動ロッド110とデュワー支持ハウジング150との螺合によって、後述のようにデュワー155を横変位させる。デュワー155の移動は主試料支持手段130を介しても試料台モジュール140の移動を制御する。
【0031】
デュワー155及び試料台モジュール140を含む試料位置決めモジュール60を軸方向または回転方向に変位させることによって、詳しくは後述するように、回転変位モータ120を使用することによって、それぞれのイオン源の内部で試料位置決めモジュール60及び試料自体を傾倒させる。回転変位モータ120は回転支持ハウジング115の周縁に設けた回転歯車125と係合する。回転変位モータ120としては、0乃至45°の動作可能な範囲内で移動制御が約±0.1°のステップモータまたはサーボモータが好ましい。回転変位モータ120が回転歯車125と係合し、回転歯車125は両者の歯車比に従って試料位置決めモジュール60を一体的に傾倒させる。試料位置決めモジュール60の動作及び傾倒の詳細な内容は図6、7及び8を参照して後述する。
【0032】
図3、4、5及び14において、真空ポンプ・モジュール90は真空チェンバ55及び低エネルギー・ミリング処理チェンバ265のために真空ポンプ機能を提供する。真空ポンプ・モジュール90としては、ドイツ、アスラー市に所在するPfeiffer Vacuum Technology AG製のModel No. TMPO71のようなターボモレキュラ・ポンプに当業者に公知の任意のタイプの粗ポンプを援用することが好ましい。このタイプのポンプ・システムは全く同じではないがペンシルバニア州エクスポート市に所在のE. A. Fischione Instruments, Inc.の製造にかかるModel 1010 Ion Mill及びModel 1020 Plasma Cleaner に似ている。真空ポンプ・システムは10−5トルの真空度を発生させるのに好適なら如何なるタイプのものであってもよいが、オイルによる汚染を極力避けるためにはオイル非使用タイプの真空システムが好ましい。但し、場合によっては、オイル・ベースのシステムを組み込むことも可能である。複合イオン・ミルを適正に使用するには、当業者はどのような真空システムを採用すべきかを選択することになる。種々の取付けブロックと構成部品の間の真空維持を容易にするため、上記モジュールのそれぞれの間に適当なシールを設けることも当業者に明白である。このようなシールはO‐リング構成であることが好ましいが、具体的には、その他の種々のシーリング装置または技術を採用することもできる。
【0033】
図3,4及び5において、高エネルギー・ミリング処理中の試料の撮像はCCDカメラ210を使用して行われ、CCDカメラはCCDレンズアダプタ220によって支持され、アダプタ220自体はCCDカメラ支持ブロック205によって支持される。CCDレンズ215は試料を調整自在に撮像するためのズーム機能を可能にする。CCDカメラ210の焦点合わせは後述するようにカメラ210を上下移動することによって達成される。CCDカメラ210及びCCDズームレンズ215は日本、神奈川県に所在するMitsutoyo社製のものが好ましい。CCDカメラ210のための画像を形成する。CCDズームレンズ215を利用してカメラ210内のCCD素子上の試料画像の倍率を調整しながら、対物レンズ225を試料に対して上下に移動させて画像の焦点合わせをする。好ましくはサファイアで形成された保護窓226を利用することによってレンズ225及びカメラから真空チェンバ55を分離する。撮像を必要としない場合、ミリング処理中にスパッタ材料が保護窓226上に付着するのを防止するためには、公知構成の電動レンズシャッタ227を利用することによって保護窓226をカバーすればよい。CCDカメラ210の横方向位置決めにはマルチパート・ブロック・システムを使用する。チェンバ・ブロック50にCCDカメラ取付けブロック175を直接配置されており、ベースブロック185上に摺動軌道を有する。装置全体の長手軸に沿った第1方向への移動量を制御するため、調整ノブ195を利用してこの摺動軌道を調整することができる。CCDカメラ位置決めブロック180は摺動ブロック190を含むマルチパート部分であり、ブロック190はCCDカメラ位置決めブロック180の移動方向と直交する第2方向に調整可能である。作業中、試料ホルダ・モジュール140の移動に伴って、最終的にCCDカメラ210を光場(optical field)内に位置決めしなければならないが、ブロック180、185及び190を組み合わせることによって、無限に可能な可変的な固定位置のうちのいずれかにCCDカメラ支持ロッド200を位置決めすることができる。高さ及び焦点調整ノブ207を利用してCCDカメラ210の高さ及び焦点を適正に調整できるように、CCDカメラ支持ブロック205がCCDカメラ支持ロッド200に摺動自在且つロック自在に設けられている。
【0034】
ミリング処理装置が高エネルギー・ミリング処理セクションを含むことで、ミリング処理しながら複数の端点検出方法及び観察方法が可能になる。これは主として端点検出モジュール230によって行われる。端点検出モジュール230はチェンバ・ブロック50に直接取付けられた光源取付けブロック235を含む。光源は図示のように、好ましくはレーザー光源である端点検出光源240で直接試料に衝突させるか、またはミラー245を利用して衝突させるように軸方向に配置すればよい。いずれにしても、詳しくは後述するように、レンズ255を通過し、さらに試料ホルダ・モジュール140を通過して試料の下面に集束するように投光される。端点検出は殆ど有孔状態の試料を光源240からのレーザービームが通過するのをCCDカメラ210が捕捉することによって達成される。図4及び14に示すように、装置の外部に補助的な軸方向可視光源246を配置し、光ポート(light port)を介してミラー245に入射させることもできる。端点光源と率ブロック235の凹部内にばね250を利用してレンズ255を支持する。このような補助的可視光源241は多くの場合試料に対するミリング処理の目視検査を容易にするために利用される。
【0035】
チェンバ真空度ゲージ118を設けて真空チェンバ55内の真空状態をモニターする。
【0036】
図4及び6に示すように、チェンバ・ブロック50に設けた孔に試料位置決め装置60を直接取付けるが、この孔は回転支持ハウジング115による試料位置決めモジュール60の傾倒動作を抑止する機能を有する。支持ハウジング115は軸受127の孔で支持され、回転支持ハウジング115とチェンバ・ブロック50内に設けた孔の間に介在させたシール129によって真空チェンバ55内が真空状態に維持される。回転支持ハウジング115及び回転変位モータ120には、図示しないが、傾倒のホーム・ゼロ・ポイントを識別してこのホーム・ゼロ・ポイントに対する試料位置決めモジュール60の傾倒位置を検出する中心位置検出手段を設ける。
【0037】
既に述べたように、デュワー155はデュワー支持ハウジング150内に配置され、固定されている。デュワー支持ハウジング150には主試料支持手段130が固定されており、詳しくは後述するように、熱伝導によって試料台モジュール140を冷却する。主試料支持手段130はそれ自体が主試料支持ハウジング132内を軸方向に延び、真空を介してハウジング132から隔てられた熱伝導性支持体131から成る。熱伝導性支持体131はデュワー155の内部チェンバ154の近傍まで延び、デュワー取付けブッシング165によって熱的にデュワー・ハウジング150から遮断されている。デュワー熱伝達ロッド170がデュワー・チェンバ154内へ延び、チェンバ154内に充填されている液体窒素冷却媒がこのロッド170に直接衝突する。デュワー熱伝達ロッド170は熱伝導性支持体131内に設けられ、支持体131と直接的な熱連通関係にある。熱伝導性支持体131は軸方向にデュワー155から真空チェンバ55内の特定点まで延び、この特定点において真空チェンバ55が試料台モジュール140を受容拘束し、試料台モジュール140を物理的に支持するとともに、熱伝達機構として作用して試料台モジュール140の関連部品を冷却する。熱伝導性支持体131はチェンバ端において回転支持ブッシング168によって支持される。回転支持ブッシング168は真空チェンバ55の真空が主試料支持手段130の熱伝導支持体131と試料支持ハウジング132の間の空間内にまで広がるようにドリル加工されている。熱伝導性支持体131は試料位置決めモジュール60の回転軸と一致する位置を占める。チェンバに対する主並進真空シールとして主試料支持手段130に沿ってベローズ145を設ける。
【0038】
図6から明らかなように、回転支持ハウジング115が回転すると、試料位置決めモジュール60全体が傾倒するから、2つのイオン・ミリング位置のいずれか一方におけるイオンビームに対して試料を位置決めするための傾倒機能が可能になる。既に述べたように、イオンビーム内における試料の横方向位置決めは送りねじまたはネジ付き駆動ロッド110を回転変位モータ120と一緒に回転することにより、主試料支持手段130、試料台モジュール140及びデュワー支持ハウジング150を長手方向に変位させることによって制御される。デュワー支持ハウジング150及び横方向変位モータ105は試料位置決めモジュール60の横方向移動点を識別する(図示しない)位置検出手段をも有し、この位置検出手段は主試料支持手段130の移動両端にそれぞれは位置され、主試料支持手段130及び試料自体の移動範囲内の横方向移動を約0.1 mm以内まで位置検出できる移動端検出器を含む。
【0039】
図4及び6に示すように、主試料支持手段130は中空端部133を有し、この中空端部133には補助試料支持手段135が摺動自在に設けられ、支持手段135は試料保持フランジ325によって前記中空端部内に保持される。補助試料支持手段135試料ホルダ係合ばね295によって図4及び6上外左端位置に向かって偏倚させられる。このように外左方へ偏倚させられると、補助試料支持手段135は試料ホルダの制止フランジ325と直接当接し、試料ホルダ温度伝達係合面300において熱伝導性支持体131と熱的に係合する。詳しくは後述するように、補助試料支持手段135が試料ホルダ係合ばね295を圧縮し、試料ホルダの制止フランジ325及び試料ホルダの温度伝達係合面300との係合を解かれると、補助試料支持手段135は最早熱伝導性支持体131との熱伝導係合の関係にはなく、周囲環境の温度となる。補助試料支持手段135はその位置に応じて、熱伝導性支持体131と熱的に係合するか、または熱伝導性支持体131から熱的に離脱することによって熱伝導性支持体131の温度または周囲温度を選択することができる。この機能は以下に述べるロード・ロックの動作と直接関連する。
【0040】
図4及び6に示す複合イオン・ミルの主要な機能は単一の真空チェンバ内で、先ず高エネルギー・ミル・モジュール70を利用して試料を迅速にミリング処理またはシニング処理し、次いで、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75を利用して試料作成の仕上げ加工を行う機能である。既に述べたように、第2装置における適正真空度を得るために真空チェンバをポンプダウンしたり、試料を外気及び外気温度に露出させたりするのに伴う待ち時間無しに2つの作業を実行できるということは極めて重要な機能である。本発明装置の主な時間節約機能の1つは真空チェンバ内における真空状態の発生及び解除のサイクル数を最小限に節減できることである。従って、本発明装置では、真空チェンバ内の高真空度を解除し、再度高真空度を発生させることなく真空チェンバへの試料挿入及び真空チェンバからの試料取出しを行うことができる。即ち、ロード・ロック85を使用することによってこれを行うことができる。ロード・ロック85はロード・ロック・キャップ280をも含み、キャップ280はチェンバ内の真空及びチェンバ外面にかかる周囲空気圧の存在に耐えるに充分なステンレススチールなどのような材料で形成されている。ロード・ロック・キャップ280は中空の中央チェンバを有し、主試料支持手段130が左端位置、即ち、ロード/アンロード位置に来ると、試料台モジュール140の関連部分がこの中央チェンバに来る。ロード・ロック・キャップ280はロード・ロック・キャップ支持ロッド285によって枢動自在に支持され、ロード・ロック・キャップ280はロード・ロック・キャップ支持ロッド285に対してある程度の移動自由度を有し、ロード・ロック・キャップ280が係合時に端板262と正確に平行な係合状態を維持することによって挟持するシール機構材(図示しない)に均等な支持力を作用させることを可能にする。ロード・ロック・キャップ支持ロッド285は端板262に枢動自在に取付けられ、ロード・ロックばね290によって係合位置へ偏倚させられる。動作中、ロード・ロック・キャップ280はロード・ロックばね290及び低エネルギー・ミリング・チェンバ265に隣接する内部に存在する真空によって係合位置に保持される。主試料支持手段130及び試料台モジュールが図4に示すように左端位置、即ち、ロード/アンロード位置へ移動すると、試料台モジュール140は低エネルギー・ミリング・チェンバ265からロード・ロック・キャップ280内へ移動する。ロード・ロック・キャップ280を排気した後、ユーザーはロード・ロック・キャップ280を端板262から離脱させて試料台モジュール140にアクセスすることができる。この位置において、真空チェンバ55及び低エネルギー・ミリング・チェンバ265内の真空は試料台モジュール140に設けた試料台係合面311とロード・ロック・キャップ280に隣接する端板262の内壁、即ち、ロード・ロック係合面310との係合によって維持される。試料台係合面310はその外周面に沿ってリングカラー状のラジアルシールが設けられ、試料台係合ばね295の作用下にロード・ロック係合面310と当接するロード/アンロード位置へ偏倚させられる。その結果、装置のチェンバ内に真空が維持されるから、ロード・ロック・キャップ280を開放して試料を交換することができる。ロード・ロック・キャップ280を動作位置へ戻し、主試料支持手段130及び試料台モジュール140を図4及び6に示す左端位置、即ち、ロード/アンロード位置から離脱させると、真空チェンバ55及び低エネルギー・ミリング・チェンバ265内の真空度はロード・ロック・キャップ280内の空気量に応じてやや低下するが、真空チェンバ55及び低エネルギー・ミリング・チェンバ265を周囲空気圧から戻す場合よりも迅速にターゲット・レベルまで標準化することができる。
【0041】
足りない分の真空度は直接ロード・ロック・キャップ280へ供給することが好ましい。詳しくは図14を参照して後述するように、試料台モジュール140がロード/アンロード位置にあり、粗ポンプ93によって真空が発生させられると、図4及び14に示すように、ロード・ロック真空ポート86がロード・ロック・キャップ280内のチェンバ領域と直接連通する。ロード・ロック係合面310から試料台モジュール140を引き出す前に粗ポンプだけでロード・ロック・キャップ280内の空間を排気すると、取込まれていた空気の大部分が除かれ、その結果、試料台モジュール140が低エネルギー・ミリング・チェンバ265へ引っ込む際に生ずる一時的な圧力上昇が極力抑えられる。
【0042】
ロード/アンロード動作中は、補助試料支持手段135を熱伝導性支持体131から熱的に離脱させることも必要である。もし試料及び試料台モジュール140を周囲温度に露出させる時点で補助試料支持手段135が熱伝導性支持体131及びデュワー155内の液体窒素冷却媒による冷却温度のままであれば、空中の汚染材料、たとえば、周囲の水蒸気が実験室内の雰囲気中に含まれる炭化水素と一緒に忽ち試料及び装置の表面で凝縮し、氷結することになり、好ましくない結果を生む。そこで、本発明の複合イオン・ミリング処理装置では、補助試料支持手段135がロード・ロック係合面310と係合する時点において補助試料支持手段135が試料台係合ばね295にこうして付勢されて主試料支持手段の凹部133内で内方へ移動させられ、補助試料支持手段を凹部内の試料台温度伝達係合面300から離脱させる。これによって試料台モジュール140は周囲温度に戻ることができ、ロード・ロック・キャップ280の開放時の試料の凝縮及び凝縮が軽減される。このプロセスは、詳しくは後述するように試料台モジュール140の試料ホルダ・ベース305内の補助加熱システムを利用することによって支援することができる。
【0043】
次に、図8を参照しながら試料台モジュール140の動作をさらに詳細に説明する。尚、図8における試料ホルダ試料台モジュール140の向きは図4、5及び6における向きとは逆になっている。既に述べたように、熱伝導性支持体131には補助試料支持手段135を摺動自在に収容する穴133が形成されている。正常な動作時には、試料台係合ばね295が補助試料支持手段135を外方位置へ偏倚させる。補助試料支持手段135は試料台制止フランジ325によって主試料支持手段の孔133内に保持される。試料台制止フランジ325は熱伝導性支持体131のエンドキャップとしてボルト330によって固定されている。ボルト340をかいして試料ホルダ・ベース305を補助試料支持手段135に偏心関係に固定することにより、熱伝導性支持体131の回転軸における試料の位置を、即ち、試料位置決めモジュール60の傾倒を維持する。試料ホルダ・ベース305内には試料取付けブロック315が収容され、このブロック315はイオン・ミリング・ビームの衝突に対して試料を回転させるための機構を内蔵する。試料ホルダ回転モータ345は一連の回転駆動ギア350を介して試料ホルダ335内に取付けられている。試料ホルダ回転モータ345の動作は、既に述べたように、回転変位モータ120及び横方向変位モータ105と一緒に、電気的結線320を介して制御される。試料ホルダ回転モータ345は(図示しないが)任意端点検出モジュールを有し、これにより、試料台335の回転自由な360°の範囲内で試料を正確に位置決めすることができる。試料ホルダ335を直接支持する試料ホルダ・ギア350Aは試料観察孔351をも有し、端点検出モジュール230からの光線が試料ホルダ335を通過して試料の裏側に達することを可能にする。図8Aに示すように、試料ホルダ335は試料取付けブロック315に設けたホルダ孔335A内で円滑に回転できるように円形に形成された試料ホルダ・ベース336をも有する。試料ホルダ・ベース336にはこれと一体的に突出部354が形成されて上方へ突出し、軸方向へ延びる試料ホルダ取付け孔353を囲む。取付け孔353は図8に示すように、試料ホルダ・ギア350Aの上方シャフトに試料ホルダ335を一時的に、取外し自在に取付けるための(図示しない)適当なロッキング手段を挿着するための孔である。
【0044】
再び図8Aにおいて、突出部354と一体的に試料ホルダ・ライザー356が形成されており、このライザー356は試料ホルダ・ミリング・ギャップ352によって2つの部分に区分されている。試料ホルダ・ライザー356は試料の実際の取付け面を試料ホルダ・ベース336及び取付け用突出部354から適当な距離だけ離すことによって、試料取付け凹部358内に取付けられている試料の下側へのアクセスを可能にするための手段である。多くの場合直径が3 mm程度の試料を収容するように寸法設定し、湾曲させた試料取付け凹部358に試料が挿着される。試料は試料保持クリップ359の押さえ歯363による下向きの力によって試料取付け凹部358の上面に圧接保持される。押さえ歯363と試料の上面とが調整自在に相互作用できるように試料保持クリップ359を試料ホルダ・ライザー356の上面に摺動自在に取付けるから、試料は確実に保持されるが、押さえ歯363が試料の被検領域の観察を妨げることはない。試料保持クリップ359のそれぞれにはクリップ調整スロット357が形成されており、クリップ359はそれぞれ取付けピン361によって取付けられている。動作中、試料保持クリップ359は取付けピン361に対するクリップ調整スロット357の移動限界内で横方向に位置決めすることができる。適当な位置が見つかったら、取付けねじ362を締付けることによって試料保持クリップ359を固定する。試料保持クリップ359が電子的駆動手段または空気圧式駆動手段を含み、これらの手段を利用して試料保持クリップ359を試料と接触するように上下させる実施態様も考えられる。
【0045】
既に述べたように、ミリング処理装置がミリング処理を進めている間、試料の裏側を観察し、また試料の裏側へビームを衝突させる必要がある。両面高エネルギー・ミリング処理の場合、図4に示すように、一方の高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70の出力によって試料の下側にビームを衝突させるが、このビームは試料ホルダ・ミリング・ギャップ352を通過して試料の下側に達する。また、このような高エネルギー・ミリング処理に際しては、ミリング処理中に試料を可視化するために利用される端点検出器の主光源240及び/または可視光源241によって試料の下側を照明する。いずれの場合にも、図4に示すように、光線はレンズ255を通過し、図4及び8に示すように試料ホルダ・ギア350Aの基部を上向きに通過し、さらに試料観察孔351を通過することにより、試料ホルダ・ミリング・ギャップ352の基部において試料観察孔351から出て試料の下側面に投射される。
【0046】
既に述べたように、試料台モジュール140は熱伝導性支持体131と係合/離脱自在であるから、試料台モジュール140はロード・ロック・モジュールと係合するとき、外気に曝される前に周囲温度に戻ることができる。従って、試料台モジュール140がロード/アンロード位置にある時、試料台モジュール104がロード・ロック・キャップ280を開放するのに好適な温度に達する時点を求めるためには、試料台モジュール140の温度を確認する必要がある。図8Bから明らかなように、試料ホルダ・ベース305には熱伝達媒306を収容するヒータ・ブロック・キャビティ304が設けられている。熱伝達306内にはセンサー凹部308が形成されており、センサー凹部308はヒータ・コネクタ313を介して中央処理装置と通信する温度センサー309を受容し、保持する。温度センサー309は試料台ベース305及び試料ホルダ335の温度を中央処理装置に示唆する該当の電気出力を検出し、中継する。
【0047】
多くの場合、試料ホルダ・ベース305が周囲温度またはこれに近い温度に戻るのを加速することが好ましく、そのため、熱伝達媒306内にヒータ・ロッド307を埋め込む。ヒータ・コネクタ313は中央処理装置との該当のインターフェースに電気的結線を提供し、これによってヒータ・ロッド307を作動させ、試料ホルダ・ベース305のより急速な温度上昇を可能にする。
【0048】
図9、10及び11に示すように、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75は低エネルギー源キャリヤ・トップ・フランジ385、低エネルギー源キャリヤ390及び低エネルギー源キャリヤ保持ラグ395から成るキャリヤ集合体を含む。特に図10から明らかなように、キャリヤ・トップ・フランジ385は一連のボルト392によって低エネルギー源キャリヤ390に固定されており、これは図5にも示した。組立てられたキャリヤは低エネルギー・イオン源取り付けブロック260に挿入され、ボルトで固定された低エネルギー源キャリヤ保持ラグ395によって固定される。尚、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75は、保持ラグ395を低エネルギー・イオン源取付けブロック260に嵌入する方式でアクセスと保守を容易にするため、図10に示すように、内蔵ユニットとして容易に着脱できる設計になっている。図9、10及び11、特に図11から明らかなように、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75のための電気的結線はすべて内部電気コネクタ372及び低エネルギー・レンズ・コネクタ440を介して行われ、ガス結線はガス・ポート365によって行われる。従って、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75の取外しは電気及びガスの結線及び保持ラグを素早く取外すことによって容易になる。図9には、内部部品の大部分を支持する低エネルギー源ハウジング355を有する低エネルギー・イオン・ミル・モジュールのコア部分を示した。調整無しに低エネルギー源キャリヤ・トップ・フランジ385に直接挿入できるようにフランジ355がインデックスされ、図5及び10に示した低エネルギー源ハウジング保持ブロック360によって固定される。低エネルギー源電気コネクタ370は電子信号が通過できるようにハウジング355の頂部に取付けられ、図11に示すように、内部電気コネクタ372と電気的に接続するクイック・リリーズ・コネクタを含む。内部電気コネクタ372は後述するように、コネクタ370から低エネルギー・イオン源の各部へ伝送する電気接点ブロック400の配線を可能にする。図9から明らかなように、低エネルギー源は内蔵型ユニットとして設計されており、この内蔵型ユニットは支持ブロック415のフィラメント内に含まれるフィラメントを低エネルギー源の残余の部品とのインターフェースとして適正な配向となるように支持し且つ間隔設定するための低エネルギーハウジング支持ロッド375を含む。(図示しないが)適正な電気接続配線によって、内部電気コネクタ372、フィラメント支持ブロック415及び電気接点ブロック400を互いに電気的に通信関係にすることができる。図10及び11には、低エネルギー・ミリング・モジュールとレンズ集合体を支持する周囲ハウジングとの間のインターフェースが見える。フィラメント集合体を支持する低エネルギー源ハウジング355は、レンズ集合体の最頂部素子及びキャリヤを含む低エネルギー源キャリヤ・トップ・フランジ385に取付けられる。レンズ集合体はフィラメント集合体のフィラメント部分の下部近傍に配置され、別個に支持されている。フィラメント集合体だけを取外すか、レンズ集合体をフィラメント集合体と一緒に取外すかは任意であり、装置各部の保守及びアクセスのため、これら2つの集合体をイオン・ミリング装置から外部へ取出すことができる。これら2つの集合体は電気的に自給自足方式であり、それぞれの部分集合体を取外しても、装置全体の残余の部分との内部電気手段を取外す必要はない。外部低エネルギー・レンズ・コネクタが低エネルギー源キャリヤ・トップ・フランジ385内に配置され、イオン・ミリング装置と中央プロセッサとレンズの素子との間を(煩雑さを避けるため図示しないが)公知の配線によって取外し自在な電気的通信を可能にする。
【0049】
図10を参照して、イオン源及びレンズの素子をさらに具体的に説明する。ガス供給管405はガス・ポート365から、好ましくは、例えば、DuPont社製のVespelのような絶縁材から成る絶縁性支持ロッド410を通過する。ガス供給管405は電離箱ブロック380の内部を通過する。好ましくはタンタル、トリエーテッド・イリジウムまたは酸化トリウムから成るフィラメントを公知の態様でフィラメント・ブロック415内に配置する。フィラメント・ブロック415の基部の周りにウェーネルト電極420が配置され、この電極420はフィラメントから放出される電子を通過させ、電離箱ブロック380の中央における電離域へ誘導する。フィラメント素子によって放出される電子425の経路の周りには1対の中間電極、即ち、G2電極425及びG3電極430を同様の態様で配置されている。ガス、好ましくはアルゴンが公知のガス・タンク795から供給され、ガス流量は、詳しくは図14に示すように、質量流量コントローラ790及びコンピュータ550によって制御され、維持される。G2及びG3電極425及び430をそれぞれ利用することにより、フィラメントから電離箱ブロック380の中空凹部内の電離域へ電子を誘導する。G3電極と出射孔435との間に適当な電位差、好ましくは1 V乃至20 Vを作用させることによって電離域内に電界を発生させる。フィラメントからの電子の一部は電離域に入り、ガス供給管405によって電離域に導入されるガスの原子と衝突する。衝突の結果発生した電離ガス原子の一部は、当業者が周知のように、上記電界の作用下に出射孔435に向けられる。イオンの一部は出射孔435を囲む金属と衝突し、金属部分と一緒に移動することで無駄になるが、一部は出射孔435を通過してレンズに向けられる。同じく当業者には周知のように、この電極構成は±2 eVの範囲内の均一な運動エネルギーを有するイオンを発生させるために利用されるタイプの構成であり、試料に対する電離箱ブロック380におけるバイアス電圧、典型的には10 eV乃至6 keVと密接に関連する平均エネルギーを有するイオンを発生させる。それぞれの電極には、コネクタ370及び電気接点ブロック400を介して、詳しくは後述するように、プロセッサ・インターフェースを介してユーザーによって決定された電圧が印加される。出射孔435から放出されたイオンは、円錐状の孔を有し、電気的に接地されているレンズ・エントランス電極450へ向けられる。レンズ・エントランス電極450はレンズ支持フランジ445によって支持され、フランジ445は低エネルギー源キャリヤ・トップ・フランジ385から直接延びている低エネルギー・ハウジング支持ロッド375によって支持されている。レンズ・エントランス電極450、レンズ接地セクション460、レンズ作用セクション465及び偏向セクション470などのレンズ素子はすべてレンズ・ハウジング475内に収納され、このハウジング475もレンズ支持フランジ455に取付けられて内蔵型ユニットを形成している。レンズ作用セクション465は外部低エネルギー・レンズ・コネクタ440を介して外部電源と電気的に接続し、外部電源は後述するように中央処理装置の制御下にある。イオンビームのエネルギーに比例する、通常は約200乃至1000 Vの電圧がレンズ作用セクション465に印加されると、出射孔435のイオンが試料上に約1の倍率範囲、即ち、0.1乃至10の倍率で画像を形成する。適当に寸法設定された出射孔435ならば、試料表面に約1 mm - 100mmの画像サイズまたはスポット・サイズが達成される。ビームはレンズ素子の孔を通ってレンズの最終部分、即ち、ラスター化機能を有する偏向セクション470に達する。偏向セクション470はビームの経路を中心に環状を呈する複数の電気的絶縁体から成る。それぞれの電気的に絶縁された偏向素子470に随意の電圧を印加することによって、レンズから射出するビームを電圧に比例する所要の角度、通常は0乃至10°の角度だけ偏向させる。レンズの出口でビームを偏向させることによって、試料表面上の画像またはスポットの位置が変わる。従って、中央プロセッサからの適当な電気的制御によって、偏向セクション470の真下に位置する試料の表面のパターンにビームを向けることになる。
【0050】
図4及び12に示すように、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75と対向するように低エネルギー・イオン源取付けブロック260にファラデー・カップ取付けフランジ480が配置されている。ファラデー・カップ取付けフランジ480はファラデー・カップ270を支持するとともに、ファラデー・カップ270から外側環境への電流の連通を可能にするファラデー・カップ・コネクタ275をも支持する。ファラデー・カップ270は試料が存在しない試験モードにおける低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75の出力を測定することによって低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75の出力電流を求めるのに利用される。
【0051】
図5及び13に示すように、低エネルギー・ミリング処理の進行中に試料を撮像するため、2次電子検出器撮像モジュール80、略してSEDを設ける。低エネルギー・ミリング処理の進行中、試料の表面から低エネルギー・ミリング・ビームを形成するイオンの衝突点へ2次電子が発射される。SED撮像モジュール80は、低エネルギー・ミリング処理時には試料ホルダ・モジュール140と隣接する低エネルギー・ミリング・チェンバ265内に、集電電極510が低エネルギー源取付けブロック260内に位置するようにして取付けられている。2次電子は電極510に引付けられてSED撮像モジュール80に向かって偏向し、SED光導体500のシンチレータ面505に衝突する。シンチレータ面505はチェンバ265に対して高い正電位、例えば、10 kVに維持されるから、電子は高い運動エネルギー、例えば、10 keVのエネルギーでシンチレータ505に衝突する。SED取付けフランジ520は電極510及びSEDハウジング515への光導体500を収容し、支持するハウジングを含む。SEDハウジング515は上述した処理及び撮像モジュールと電気的に連通する電気的コネクタ485を介して給電される光電子増倍管495を支持する。動作中、2次電子がSEDシンチレータ505に衝突して、衝突する2次電子量に比例する光信号を発信または発生する。光信号がSED光導体500を通過して光電子増倍管495に達すると、光電子増倍管495は光信号を入射光の強さに比例する電流に変換する。分圧器490はHammamatsu Company, Japanが開示し、実施しているように、光電子増倍管495内の電極に対する必要な電圧配分を行う。入射光の強さにほぼ比例し、従って、回収される2次電子量にほぼ比例する光電子増倍管495の電気的出力はコネクタ485を介してプロセッサに伝送される。PCまたはオッシロスコープのような信号処理手段が試料上のイオンビームの瞬間位置及び受信されたSED信号の振幅を記録する。試料が均質でない場合、2次電子の相対生成量は試料上のイオンビーム画像の場所に応じて異なることがある。例えば、極端な場合、もし試料が入射イオンビームの偏向全域をカバーしなければ、2次電子信号はビームが試料に衝突した時には受信されるが、イオンビームが試料材料の存在しない場所に位置する時には受信されない。従って、シンチレータ505によって受信される2次電子量で試料表面におけるビーム位置またはスポット位置の関数として表される試料のグラフまたは画像をスクリーン・ディスプレイ40上に表示すればよい。
【0052】
図4、14及び15に示すように、キャビネット5内には好ましくはウィンドウズ搭載PCから成るコンピュータ550が設けられている。コンピュータ550は典型的な構成部品として、プロセッサ、メモリー、データ・ストレージ及び入/出力、略してI/O機能を含む。市販のインターフェース及び回路と部品メーカーによって設定された特定パラメータに従った種々の電子部品との間に適当な通信プロトコルを設定することは当業者の熟知するところである。この種の装置に使用される典型的なコンピュータ500は局所またはグローバル規模のネットワークにつながる他の装置との電子的データ通信用の(図示しない)イーサネットまたはその他のネットワーク・ポートまたは結線をも含むことがある。このような通信は他の装置とのデータまたは画像の交換、装置の遠隔操作、及び特に遠隔診断機能に利用される。
【0053】
この種の装置に通常見られるように、周辺機器との通信のための周辺制御セクション555が設けられている。高エネルギー・ミリング回路盤590とのインターフェース及びデータ通信のため、RS-232直列結線560が設けられている。高エネルギー・ミリング回路盤590は高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70のために設けられた高エネルギー・モジュール・インターフェース・カードとの電子通信をルーティングし、転送するのに利用される。電気的結線600A及び70Aはそれぞれこれら構成部品間の電子通信を可能にする。高エネルギー・モジュール・インターフェース・カード600はコンピュータ550から高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70内に設けられている中空陽極放電銃への動作指令を転送するのに利用され、作業指令は典型的には装置の作動または停止のほか、ユーザーが予め選択した出力を実現させるための正確な電気的パラメータなどである。プロセスガスの供給は質量流量コントローラ790を作動させることによって制御される。コンピュータ周辺制御セクション555は好ましくはUSBポートから成る直列母線565をも提供する。直列母線565は種々の直列デバイスとの通信に利用できるが、好ましくは、CCDカメラ210の動作制御のため及びCCDカメラ210からの画像情報受信のためのCCDカメラ210との通信に利用する。ユーザー入力及びマシン制御を目的とするパーソナル・コンピュータの大部分に見られるように、キーパッド入力結線575、ポインタ入力結線580及び電源結線585も公知の態様で配線されている。ビデオ出力結線570はこれも公知の態様でスクリーン・ディスプレイ40にグラフィック情報を提供するのに利用される。
【0054】
複合ミリング機構15の動作制御は多くは市販されている一連のインターフェース回路盤、及び特定モデルのコンピュータ550と併用されるI/O拡張カードを使用することによって行われる。好ましい実施態様では、I/O制御セクション615に含まれているPCI母線‐ベースのインターフェース・カードが利用される。コンピュータ550から複合ミリング機構15内で利用される種々のモータのうち特定されたモータへの該当モータ制御信号を転送、作成するためのモータ制御回路620が設けられている。信号経路はモータ制御回路結線620Aから信号ブレークアウト回路盤645への直通経路を含む。信号ブレークアウト回路盤645はキャビネット5内の各種電子部品及び機械部品の位置決め及び取付けを容易にするための各種中間回路を含む。信号ブレークアウト回路盤645は複合ミリング機構15において利用される各種モータ及び周辺デバイスに対する給電をも行う。信号ブレークアウト回路盤645は詳しくは後述するように、下流側の該当インターフェース回路または機械的デバイスに対する種々の確認済み入力をルーティングするのに利用される種々のディスクリート回路をも含む。モータ制御回路620に関しては、モータ制御回路結線620Aが信号ブレークアウト回路盤645の該当部分と試料台真空化回路655、シャッタ駆動回路660及び回転モータ駆動回路665との間の電子通信を可能にすると共に、回転変位モータ120、試料位置決め手段位置センサー675、横方向変位モータ105及び試料位置決め手段傾倒センサー680との直接通信をも可能にする。
【0055】
具体的には、モータ制御回路620が信号ブレークアウト回路盤645の該当部分と協働してシャッタ駆動回路660との電子通信を可能にし、チェンバ・シャッタ集合体228内に設けられているシャッタ・モータ670に対する電子通信及び指令をインタープリートし、転送する。モータ制御回路620及び信号ブレークアウト回路盤645は試料台の傾倒機能を制御し、操作するため、回転モータ変位結線120Aを介して回転変位モータ120と直接通信する。既に述べたように、試料位置決め手段位置センサー675を利用することによって傾倒移動の任意のゼロまたは端点を検出し、確認し、このような位置情報を、試料位置決め手段位置センサー675を介してモータ制御回路620及びコンピュータ550へ送信する。同様に、モータ制御回路620は横方向変位モータ105及び試料位置決め手段位置センサー675からの情報を受信し、これらモータ105及びセンサー675を制御する。この回路を利用して、モータ制御回路620及びコンピュータ550は試料台モジュールの横方向移動を制御し、試料台モジュールを種々のミリング処理位置及びロード/アンロード位置へ移動させる。
【0056】
モータ制御回路620と同様にコンピュータ550と連携するPCI-ベースのインターフェース・カードの形態で、ディジタルI/O制御回路625、ディジタルアナログ制御回路630、低速アナログディジタル制御回路635及び高速アナログディジタル制御回路640をも設ける。種々の電子部品間の電子データ及び電力の往来には、これら市販のデバイスが信号ブレークアウト回路盤645の該当部分と併用される。従って、コンピュータ550は信号ブレークアウト制御回路645及び試料台/真空インターフェース回路655を介して温度センサー309から電子出力信号を受信し、温度センサー309のデータ出力を適当な測定値尺度に変換し、詳しくは後述する用にスクリーン・ディスプレイ40にこの出力を表示する。
【0057】
試料台/真空インターフェース回路655は上述のようなロード/アンロード・シーケンスにおいて試料温度を調節するため試料台モジュール140内に配置したヒータ・ロッド307を作動させる回路をも含む。コンピュータ550を操作してこの回路部分を利用することにより、ユーザーは目標温度に達した場合を想定して幾つかの条件をプリセットまたはプログラムするか、温度条件が満たされていない場合にはヒータ・ロッド作動などの状態を起動させることができる。詳しくは図14を参照して後述するように、試料台/真空インターフェース回路655はターボモレキュラ・ポンプ91、粗真空化ポンプ93及び関連の真空バルブ92の動作をも制御する。正常な動作状態においては、ターボモレキュラ・ポンプ91と粗真空化ポンプ93から成る真空ポンプ・モジュール90の使用によって真空チェンバ55が真空化される。粗真空化ポンプ91は初期的な粗真空化を達成するのに必要であり、この粗真空化された状態から初めてターボモレキュラ・ポンプ91の起動が可能になる。ターボモレキュラ・ポンプ91は通常、周囲空気圧からの真空化を行うことはできない。ターボモレキュラ・ポンプ91と粗真空化ポンプ93との間には、粗真空化ポンプ93をターボモレキュラ・ポンプ91とは独立に作動させることを可能にする真空バルブ92が介在する。ロード・ロック85に関連して上述したように、粗真空化ポンプ93を利用することによって、ロード/アンロード・シーケンス中にロード・ロック85内に画定されるチェンバを排気することができる。この状況において、ターボモレキュラ・ポンプ91と粗真空化ポンプ93の間に介在する真空バルブは閉鎖され、ロード・ロック85と粗真空化ポンプ93の間に介在する真空バルブは開放されている。複合ミリング機構15の他のすべての動作ステップにおいて、このロード・ロック真空バルブ92は閉鎖されたままである。ロード・ロック・キャップ280内が所要の真空度に達したことを感知するためのロード・ロック真空センサー119が設けられている。ロード・ロック動作及び真空チェンバ55の正常なポンピングに関しては、チェンバを排気し、ポンピングされた空気を排出できるように対応の真空バルブ92を協働させる。
【0058】
図4、14及び15において、コンピュータ500はI/O制御セクション615を介して低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75及びこれと連携するSED撮像モジュール80をも制御する。コンピュータ550は信号ブレークアウト回路盤645を介して低エネルギー・イオン・ミル・モジュール・インターフェース回路685と動作交信関係にあり、このインターフェース回路685を利用することによって低エネルギー・イオン・モジュール75、具体的にはこれに含まれるイオン源を制御することができる。低エネルギー・イオン・ミル・モジュール・インターフェース回路結線685Aは電子通信のルーティングを可能にし、フィラメント支持ブロック415、ウェーネルト電極420、G2電極425、G3電極430、及び出射孔435に対する給電の制御をも可能にする。本発明装置の制御は装置各部への電流をモニターするユーザー・プリセット信号の伝送によって維持される。
【0059】
同様に、低エネルギー・イオン・ミル・レンズ・インターフェース回路690は結線690Aと協働して低エネルギー源各部の制御を可能にする。外部低エネルギー・レンズ・コネクタ440が電子通信を可能にし、コンピュータ550からの電子信号を利用することにより、信号ブレークアウト制御回路645を介してレンズ作用セクション465及び偏向セクション470への電子電流の流量及び偏向が制御される。プロセスガスの供給も質量流量コントローラ790を作用させることによって制御される。
【0060】
SED撮像モジュール・インターフェース回路695を使用してSED撮像モジュール80からのグラフィック・イメージを操作し且つ受信するため、コンピュータ550はI/O制御セクション615を利用する。インターフェース695を介してコンピュータ550はSED撮像モジュール80を起動させると共に、コンピュータ550による解釈とスクリーン・ディスプレイ40へのグラフィック・イメージ表示のため復帰前にSED増幅器800によって増幅されたSED撮像モジュールの出力を受信することができる。
【0061】
再び図16において、グラフィック表示はユーザーと装置との間のインターフェースを提供するのに利用される典型的な主スクリーン・ディスプレイである。主スクリーン・ディスプレイ700はユーザーが複合ミリング機構15の多様な機能を選択し且つ多様な画像やデータ出力を観察することによってミリング機能の進行をモニターできるようにする手段である。主スクリーン・ディスプレイ700には複合ミリング機構15と併用される種々の作用デバイスの状態を報告する一連のセクションを含むステータス・バー・ディスプレイ705を有する。尚、主スクリーン・ディスプレイ700は公知のように多様なフォーマットで利用することができ、設計者にとって好適な態様に適応させればよい。
【0062】
ステータス・バー・ディスプレイ705は一連のインジケータ・イコン、またはエラーや故障状態を指摘するその他のテキスト出力を利用するエラー・インジケータ・セクション710を含む。試料台温度状態セクション715は試料ホルダ・ブロック305の現在温度を、従って、温度センサー309及びヒータ・ロッド307の活動状態から判断される試料を表示する。試料台温度状態セクション715は熱伝導性支持体131と試料台モジュール140との係合に関する情報をも含み、デュワー155に含まれる液体窒素冷却媒の冷却能力が試料台モジュール140に正しく作用していることを指示する。真空/ロード・ロック状態セクション720は典型的にはロード・ロック及びチェンバ内に適正な真空が存在するか否かの状態、及びロード・ロック85の開閉状態を指示するブール出力を提供する。この情報はチェンバ真空度ゲージ118、ロード・ロック真空センサー119、及びロード・ロック・キャップ280と端板262とが係合すると作動する(図示しない)インターフェース・スイッチから得られる。アクティビティ状態セクション725は高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75、ロード・ロック85に対する、または休止状態における試料ホルダ・モジュール140の位置及び作用を指示する。アクティビティ状態会苦ション725は作用状態にあるのが高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70かテイエネルギー・イオン・ミル・モジュール75であるかをも指示する。
【0063】
装置の状態、ヘルプ、またはその他の状態を含む多様なメッセージの通信にはメッセージ・セクション730が利用される。主スクリーン・ディスプレイ700はアクティビティ・ボタン740をも含み且つ表示し、これらのボタン740は補足のメニュ及びコマンド・ディアログ・ボックスへのアクセスに利用され、これらのメニュ及びコマンド・ディアログ・ボックスから、いくつかの動作またはシーケンスを起動または追跡することができる。例えば、保守、較正、及び純粋に事実に基づく、当業者には周知の一連のスクリーン・ディスプレイを利用するその他の機能などである。アクティビティ・ボタン740は典型的にはアクティビティ・バー・ディスプレイ735内に含まれ、このアクティビティ・バー・ディスプレイ735は主スクリーン・ディスプレイ700に組織化度を提供するのに利用される。スクリーン・ディスプレイのうち特に興味深いのは図17に示すアクティビティ・スケジューラ・スクリーン745及び移動制御ディスプレイ765である。
【0064】
図16に示すアクティビティ・スケジューラ・スクリーン745はユーザーが一連の事象をプログラムし、起動させることができるように一連のアルゴリズム・ステップを本発明装置にプログラムすることを可能にし、上記一連の事象はユーザーのさらなる入力または管理を必要とすることなく自動的に実行される。これらのプロトコルは繰返し使用するために、または変更を加えるために、必要に応じて記憶させることができる。アクティビティ・スケジューラ・スクリーン745はユーザーによって選択され、補足された後、種々の手順ステップが表示されるアクティビティ・リスト・スクリーン750を有する。アクティビティ・リスト・スクリーン750に含まれる種々の動作はボタンとしてアクティビティ選択ディスプレイ755に含まれる。これらの動作としては、コウエネルギー・ミリング、低エネルギー・ミリング、種々の作用セクション及びロード・ロック間の試料移動、2つのミリング処理セクションにおける試料の撮像、及び真空化用部品の動作の選択のほか、それぞれの動作の端点及び条件の設定などが挙げられる。端点及び条件としては、端点検出器主光源240に関連して上述した高エネルギー・ミリング、プリセットされたミリング処理時間、温度センサー309によって検知される温度パラメータなどが挙げられる。これらの指令及びパラメータの入力順序は任意であるが、当業者には明らかなように、アクティビティによっては、他の必須ステップの完了後でなければ起こり得ないアクティビティがある。
【0065】
主スクリーン・ディスプレイ700は真空制御バー760をも含み、真空制御バー760は真空ポンプ・モジュール90、このモジュールを構成するターボモレキュラ・ポンプ91及び粗真空化ポンプ93の種々のポンピング作用を手動制御すると共に、ロード/アンロード・シーケンスを起動させることをも可能にする。
【0066】
図17において、試料台モジュール140の正確な手動制御は主スクリーン・ディスプレイ700から選択可能なアクティビティ・ボタン740の1つである移動制御ディスプレイ765を使用することによって達成される。移動制御ディスプレイ765は複合ミリング機構15の各部の位置及び状態をグラフィック表示する移動制御状態ディスプレイ770を含む。本発明装置の実際の制御は試料ホルダ335を回転させるホルダ回転制御バー775によって行われる。ホルダ回転制御バー775内の該当コントロールを使用することによって試料ホルダ335を時針方向または反時針方向に回転させることができ、上記端点検出手段によって試料ホルダ335を任意ゼロ点に戻すことができる。
【0067】
試料台傾倒制御バー780は、既に述べたように、試料位置決めモジュール60を回転させることによって試料台モジュール140の傾倒を手動制御することを可能にする。該当のボタンまたはイコンを使用することによって、ユーザーは2つの任意に特定できる方向のうちのいずれか1つの方向へ試料位置決めモジュール60を回転させることができる。試料位置決めモジュール60の転位または横方向移動は横方向変位モータ105に関与する試料台横方向変位制御バー785内に含まれるボタンを介して制御することにより、種々の作用セクション、休止位置及びロード/アンロード位置の間で試料ホルダ・モジュール140を適当に移動させる。
【0068】
尚、当業者ならば、多数の異なるグラフィック表示のうちのいずれか1つを選択して装置各部の電気的及び機械的動作をモニターすることができる。
【0069】
動作に関しては、先ずコンピュータ550に給電し、適正量の液体窒素冷却媒がデュワー155に存在することをデュワー・アクセス・パネル25から確認することによってミリング処理装置を起動する。スクリーン・ディスプレイ40、キーボード30及びポインティング・デバイス35をPC-レベルのコンピュータの利用に慣れた当業者が熟知する公知の態様で利用することによってコンピュータ550の動作を観察し且つ起動する。主スクリーン・ディスプレイ700を利用することによってミリング処理装置の該当動作パラメータを起動及び/またはこれにアクセスする。チェンバ55及び低エネルギー・ミリング・チェンバ265に真空状態を確立しなければならないが、これは最初の試料のローディングの前後いずれでもよい。いずれの場合にも、真空制御バー760から該当の制御を選択してポンピング・シーケンスを起動する。真空状態は真空/ロード・ロック状態表示セクション720によって表示され、正しく表示されると、残余の手順ステップを起動することができる。すべての動作ステップのうちの1つを例として説明すると、試料台モジュール140は試料台横方向変位制御バー785を介して手動またはプログラム制御で適正なロード/アンロード位置へ横方向に移動させる。既に述べたように、このシーケンスを起動させると、横方向変位モータ105が試料位置決めモジュール60をロード/アンロード位置へ移動させる。試料台モジュール140がロード/アンロード位置へ移動すると、補助試料支持手段135が試料ホルダ温度伝達係合面300における熱伝導性支持体131との係合を解かれ、試料台モジュール140が周囲温度に戻ることを可能にする。必要なら、(図示しないが)適当な指令を介してヒータ・ロッド307を作動させることにより、試料台モジュール140をより速く周囲温度に戻すことができる。このような温度変化の状態は主スクリーン・ディスプレイ700の試料台温度状態表示セクション715に表示される。
【0070】
試料台モジュール140がロード/アンロード位置に固定され、試料台モジュール140の温度が周囲温度に戻ったら、真空制御バー760の該当指令を使用してロード・ロック・キャップ280内のチェンバを排気する。既に述べたように、真空化及び排気プロセスを進める操作としては、先ず粗真空化用ポンプ93によって基本的な真空状態を確立した後、ターボモレキュラ・ポンプ91を利用して動作パラメータによって設定されている所定の真空状態を確立する。ロード・ロック・キャップ280内に確立された真空を、該当の弁を開放することによって解消すると、真空/ロード・ロック状態表示セクション720内にロード・ロック・キャップ280内の周囲圧が表示される。次いでロード・ロック・キャップ280を端板262から離脱させ、試料を試料取付け凹部358内へ挿入し、試料保持クリップ359によって保持する。尚、形状の異なる試料を使用する際には試料ホルダ335を変更しなければならないが、このような変更は当業者にとって周知の問題である。また、適当な取付け手段を利用して試料台ギア350Aに取付けることで交換自在な試料ホルダ335を利用することも可能である。
【0071】
試料を試料ホルダ335の適当な位置に固定したら、ロード・ロック・キャップ280を平行移動させて端板262と係合させ、真空制御バー・セクション760を介して適当な指令を発することにより、ロード・ロック・キャップ280を適当な真空レベルまで排気する。真空/ロード・ロック状態表示セクション720が所期の真空レベルに達したことを表示し、ポンプが所期の真空状態を確立したら、試料位置決めモジュール60を横方向に移動させることによって試料を複合ミリング機構15内の、2つの利用可能なミリング処理の1つを行うための適切な位置に位置させる。試料位置決めモジュール60の移動は移動制御ディスプレイ765上の試料台横方向変位制御バー785を使用することによって起動させる。試料位置決めモジュール60を変位させてロード/アンロード位置との係合を解くことによって、補助的試料支持体135が試料ホルダ温度伝達係合面300において熱伝導性支持手段131と再係合することを可能にする。補助試料支持手段135の熱伝導性支持手段131とのインターフェースは、試料台モジュール140をデュワー155内に収容されている液体窒素冷却媒によって冷却させる。試料ホルダ・モジュール140の温度状態は主スクリーン・ディスプレイ700の試料台温度状態表示セクション715内に、冷却機能を識別するインジケータと一緒に表示される。
【0072】
正常な状態下では、先ず高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70を利用して試料を予備的にシニング処理し、次いで、低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75を利用して仕上げ処理する。このようなプロセスにおいて、試料位置決めモジュール60が試料台横方向変位制御バー785によって高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70内の移動制御状態ディスプレイ770に表示される適正な位置まで移動させられる。ミリング・パラメータはユーザーによって規定され、手動またはプログラム制御される。これらのパラメータはミリング処理時間、ミリング処理中の試料の傾倒及び回転、イオン衝突ビームの強さ、試料の温度パラメータ、プロセスガスの選択及びミリング動作を中断する端点検出のための照明の強さを含む。これらのパラメータはすべて主スクリーン・ディスプレイ700、移動制御ディスプレイ765、または公知の数値ディスプレイに相当する(図示しない)追加パラメータ・ディスプレイを使用することによって確認され、設定される。試料の回転に関しては、既に述べたように、試料ホルダ335の制御は試料台回転制御バー775を介して起動される。傾倒機能は試料台傾倒制御バー780によって制御され、オペレーション電気パラメータはアクティビティ・セレクタ・ディスプレイ755によって制御される。複数の手順をプログラム制御したい場合には、アルゴリズムのそれぞれのステップを該当の指令及びアクティビティ・セレクタ・ディスプレイ755を介して選択される該当の指令及びパラメータ及びこれに含まれる該当のサブメニュを介してアクティビティ・リスト・スクリーン750に入力する。このようなプログラムされているアルゴリズムの運用は手動で起動するか、または繰返し使用または後刻使用するためデータ・ファイルに記憶させることができる。
【0073】
低エネルギー・イオン・ミル・モジュール75の操作は、試料台変位制御バー785を使用することによって試料台モジュール140を適当な位置へ横移動させる必要があることを除けば、高エネルギー・イオン・ミル・モジュール70の操作と同様である。高エネルギー・ミリング処理の場合と同様に、低エネルギー・ミリング処理を試料の傾倒及び回転のような種々のモーション・パラメータと連携させて実施することができる。状況によっては、両モジュールを別々に作動させる場合も考えられる。
【0074】
いずれの場合にも、ミリング作業の画画像をリヤルタイムで、スクリーン・ディスプレイ40上で観察し、適当なデータ・ファイルに静止画像または完全な動画の形で、公知の画像記憶技術及びフォーマットで記憶させることができる。撮像及び移動に関連する種々のスクリーン・ディスプレイの選択はアクティビティ・バー・ディスプレイ735におけるアクティビティ・ボタン740を利用して制御する。
【0075】
ミリング処理が終了したら、試料ホルダ・モジュール140をロード/アンロード位置に戻し、試料のローディングに関して詳述した手順を繰返す。このようにして、真空チェンバ55及び低エネルギー・ミリング処理チェンバ265内にその都度真空状態を発生させることを必要とせずに、一連の試料を複合ミリング処理メカニズム15によって処理することができる。
【0076】
本発明の好ましい実施態様を以上に説明したが、本発明はこの実施態様に制限されるものではなく、追記する特許請求の範囲内で種々の態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】複合イオン・ミリング装置を正面から見た斜視図である。
【図2】内部機構を露出させるためカバーやシールドをすべて取外して示す複合イオン・ミリング装置の正面から見た斜視図である。
【図3】複合イオン・ミリング装置の主要構成部分を示す斜視図である。
【図4】複合イオン・ミリング装置の縦断面図である。
【図5】複合イオン・ミリング装置の分解斜視図である。
【図6】複合イオン・ミリング装置の試料位置決めモジュールの縦断面図である。
【図7】複合イオン・ミリング装置の試料台モジュールの斜視図である。
【図8】複合イオン・ミリング装置の試料台モジュールの縦断面図である。
【図8A】試料ホルダの斜視図である。
【図8B】台ホルダ・ベースを一部断面で示す正面図である。
【図9】低エネルギー・イオン・ミル・モジュールの斜視図である。
【図10】低エネルギー・イオン・ミル・モジュールをそのレンズをも含めて示す断面図である。
【図11】低エネルギー・イオン・ミル・モジュールをそのレンズをも含めて示す第2の断面図である。
【図12】ファラデー・カップ取付けフランジの斜視図である。
【図13】低エネルギー・ミリング処理中に試料を撮像するために利用される第2電子検出器の断面図である。
【図14】イオン・ミリング装置の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図15】イオン・ミリング装置の電気的及び機械的構成部分を示すブロックダイヤグラムである。
【図16】主な入力画面表示の図解である。
【図17】試料ホルダ動作制御画面表示の図解である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン衝突を利用して試料から選択的に材料を除去する装置であって、
真空チェンバと;
前記真空チェンバ内に設けられ、0.5mm未満のビーム直径以内において10 eV乃至1 keVの有効連続エネルギーを有する少なくとも1条のイオンビームを発生させることができるイオン源と;
真空下に前記少なくとも1条のイオンビームを前記試料に選択的に衝突させるため前記真空チェンバ内で前記試料を支持し且つ操作するためのステージを含むことを特徴とする前記装置。
【請求項2】
前記イオン源が分離可能なイオン発生源部材及びレンズ部材をも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記イオン発生源部材がイオンを通過させる少なくとも1つの環状電極をも含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの環状電極がウェーネルト電極をも含むことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの環状電極がレンズ部材へのイオンの経路を維持するための少なくとも1つの拘束電極をも含むことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記レンズ部材が少なくとも1つの流電セクション及び少なくとも1つの接地セクションをも含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記レンズ部材がイオンビームの経路を変更するための少なくとも1つの偏向セクションをも含むことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記偏向させられたビームを、試料表面を横切るラスター化することができることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記イオンビームの直径が1μm乃至0.5mmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記イオンビームの直径が約20μmであることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記イオンビームの直径が約20μmであり、ビーム・エネルギーが10 eV 乃至6 keVの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記イオンビームの直径が約20μmであり、ビーム・エネルギーが10 eV 乃至1 keVの範囲であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記イオン源が複数のイオン源から成ることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記複数のイオン源を単一の真空チェンバ内に配置したことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記複数のイオン源が少なくとも1つの低エネルギー銃及び少なくとも1つの高エネルギー銃をも含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの低エネルギー銃と前記少なくとも1つの高エネルギー銃がオーバーラップするエネルギー範囲を有して連続的なエネルギー範囲を形成することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記連続的なエネルギー範囲が10 eV 乃至6 keVであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記連続的なエネルギー範囲が10 eV 乃至1 keVであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの高エネルギー銃が中空陽極放電イオン銃であることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つの高エネルギー銃が互いに対向するように配置された2つの中空陽極放電イオン銃をも含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記2つの中空陽極放電イオン銃の一方を、ミリング処理すべき試料の頂面に集束させ、前記2つの中空陽極放電イオン銃を前記試料の底面に集束させることを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記装置がロード・ロックをも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記ロード・ロックが前記装置の前記真空チェンバとは独立に排気し、換気できるロード・ロック真空チェンバをも含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記試料台がロード・ポジションにある間、前記ロード・ロックが前記装置の外部から前記試料台へのアクセスを可能にすることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記試料台がロード・ポジションにあり、前記真空チェンバ内に真空状態が維持されている間、前記ロード・ロックが前記装置の外部に位置する前記試料台へのアクセスを可能にすることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
ロード・ポジションにおける前記試料台が前記真空チェンバのためのシールとして作用することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項27】
試料及び試料台の温度を低下させる冷却システムをも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記冷却システムが冷却媒貯蔵層をも含むことを特徴とする請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記冷却媒が選択的に前記試料台と熱的に接続されることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記試料台が選択的に前記冷却媒から遮断されることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記試料台をロード・ロックと係合させながら選択的に前記冷却媒から遮断することによって、前記試料台がロード・ポジションにある間、前記装置の外部に位置する前記試料台へのアクセスを可能にすることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項32】
前記ロード・ロックを前記ロード・ポジションに固定することによって前記試料台を前記冷却媒から離脱させることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項33】
前記試料台が前記試料台と前記冷却媒との間に弾性コネクタをも含むことを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項34】
前記弾性コネクタが前記試料台を前記冷却媒と熱的に接続するよう偏倚させることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記弾性コネクタが前記試料台とロード・ロックとの係合によって圧縮され、前記試料台がロード・ポジションに存在する間、前記装置の外部からの前記試料台へのアクセスを可能にすることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記弾性コネクタの前記圧縮が前記試料台を前記冷却媒との熱的接続から離脱させることを特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記真空チェンバを選択的に、それぞれが高エネルギー・イオン源及び低エネルギー源のいずれかと連携する複数の部分真空チェンバに分割したことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項38】
前記真空チェンバを選択的に電動シャッタによって区分したことを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項39】
真空ポンプ・システムをも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項40】
前記真空ポンプ・システムが主ポンプと粗ポンプをも含むことを特徴とする請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記主ポンプがターボ分子ポンプであることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記真空ポンプ・システムがオイル非使用ポンプであることを特徴とする請求項39に記載の装置。
【請求項43】
前記粗ポンプが別個にロード・ロックと真空連通関係にあることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項44】
ミリング処理中に試料を観察するため前記真空チェンバ内に設けた少なくとも1つの撮像モジュールをも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項45】
前記少なくとも1つの撮像モジュールを光学的、電気光学的または電子顕微鏡から成る群から選択したことを特徴とする請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記少なくとも1つの撮像モジュールがCCD装置であることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記CCD装置にズーム撮像能力を設けたことを特徴とする請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記CCD装置を高エネルギー・イオン源と併用したことを特徴とする請求項46に記載の装置。
【請求項49】
前記少なくとも1つの撮像モジュールが2次電子検出器であることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項50】
前記2次電子検出器が電極、シンチレータ及び光電子増倍管をも含むことを特徴とする請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記2次電子検出器を低エネルギー・イオン源と併用することを特徴とする請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記試料台が加熱素子をも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項53】
前記試料台が温度センサーをも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項54】
前記試料台が前記試料を支持し、固定する試料ホルダをも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項55】
前記試料ホルダを回転させることができることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項56】
前記試料ホルダを前記試料台に内蔵されているモータによって回転させることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項57】
前記試料ホルダをイオンビームに対して0乃至45°の範囲内で傾倒させることができること特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項58】
前記試料ホルダを前記台によって支持し、前記台を傾倒させることができることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項59】
前記試料台が位置決めモジュールによって支持されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項60】
前記位置決めモジュールが支持用受け台をも含むことを特徴とする請求項59に記載の装置。
【請求項61】
前記試料台を前記支持用受け台に摺動自在に取付けたことを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項62】
前記試料台を前記受け台に沿って長手方向に移動させることができることを特徴とする請求項60に記載の装置。
【請求項63】
前記位置決めモジュールが前記受け台に沿って前記試料台を長手方向に移動させるためのモータをも含むことを特徴とする請求項62に記載の装置。
【請求項64】
前記位置決めモジュールを傾倒させることができることを特徴とする請求項59に記載の装置。
【請求項65】
前記位置決めモジュールが前記試料台及び前記受け台を傾倒させるためのモータをも含むことを特徴とする請求項64に記載の装置。
【請求項66】
前記位置決めモジュールが前記受け台じょうの前記試料台の位置を検知するための少なくとも1つのセンサーをも含むことを特徴とする請求項59に記載の装置。
【請求項67】
前記位置決めモジュールが前記試料台の傾倒位置を識別するための少なくとも1つのセンサーをも含むことを特徴とする請求項59に記載の装置。
【請求項68】
前記装置を選択的に動作させるためのコンピュータをも含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項69】
前記コンピュータが前記イオン源モジュールと電子通信関係にあることを特徴とする請求項68に記載の装置。
【請求項70】
前記コンピュータを利用することによって前記イオン源モジュールを制御することを特徴とする請求項69に記載の装置。
【請求項71】
前記コンピュータを利用することによって前記イオン源モジュールに対する前記試料ホルダの位置を検出することを特徴とする請求項68に記載の装置。
【請求項72】
前記コンピュータを利用することによって前記イオン源からのイオンビームに対して前記試料を変位させることを特徴とする請求項68に記載の装置。
【請求項73】
前記コンピュータがミリング処理中に試料を観察するための少なくとも1つの撮像モジュールと電子通信関係にあることを特徴とする請求項68に記載の装置。
【請求項74】
前記コンピュータを利用することによって前記撮像モジュールを制御することを特徴とする請求項73に記載の装置。
【請求項75】
前記コンピュータを利用することによって前記撮像モジュールの出力を表示することを特徴とする請求項73に記載の装置。
【請求項76】
前記コンピュータを利用することによって装置によるイオン・ミリング処理機能を自動的に行う動作アルゴリズムをプログラムできることを特徴とする請求項68に記載の装置。
【請求項77】
前記コンピュータを利用することによって装置によるミリング処理、撮像、真空化及び試料操作を自動的に行う動作アルゴリズムをプログラムできることを特徴とする請求項68に記載の装置。
【請求項78】
イオン衝突を利用して試料から選択的に除去する方法であって、
前記試料の表面に10 eV乃至1 keVのエネルギー・レベルを有する少なくとも1条のイオンビームを衝突させ;
前記少なくとも1条のイオンビームを0.5mm未満の直径を有する衝突スポットに集束させるステップを含むことを特徴とする前記方法。
【請求項79】
イオンビームの経路を偏向させて前記ビームを試料表面を横切るラスター化するステップをも含むことを特徴とする請求項79に記載の方法。
【請求項80】
前記イオンビームの衝突スポットの直径が1 μm乃至0.5 mmの範囲であることを特徴とする請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記イオンビームの衝突スポットの直径が約20 μmであることを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記イオンビームの衝突スポットの直径が約20 μmであり、ビームのエネルギーが10 eV乃至6 keVであることを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項83】
前記イオンビームの直径が約20 μmであり、ビームのエネルギーが10 eV乃至1 keVであることを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項84】
前記イオンを衝突させるステップが前記試料に対する複数のイオンビームを衝突させるステップから成ることを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項85】
前記複数の衝突ステップを単一の真空チェンバ内で行うことを特徴とする請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記複数の衝突ステップが少なくとも1条の低エネルギー・ビーム及び少なくとも1条の高エネルギー・ビームを衝突させるステップであることを特徴とする請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記少なくとも1条の低エネルギー・ビームと前記少なくとも1条の高エネルギー・ビームが互いにオーバーラップスル領域を有することによって連続エネルギー領域を可能にすることを特徴とする請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記連続エネルギー領域が10 eV乃至6 keVであることを特徴とする請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記連続エネルギー領域が10 eV乃至1 keVであることを特徴とする請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記少なくとも1条の高エネルギー・ビームを衝突させるステップが互いに対向する2条のビームを衝突させるステップをも含むことを特徴とする請求項86に記載の方法。
【請求項91】
前記ビームの1条をミリング処理すべき試料の頂面に集束させ、前記ビームの他の1条を前記試料の底面に集束させることを特徴とする請求項90に記載の方法。
【請求項92】
イオンビームを衝突させるステップが前記衝突をコンピュータで制御するステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項93】
閉ざされた真空チェンバ内に前記試料を密封するステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項94】
閉ざされた真空チェンバ内に前記試料を密封する前記ステップがコンピュータで前記密封を制御するステップをも含むことを特徴とする請求項93に記載の方法。
【請求項95】
イオンビームを衝突させる前に試料を真空下に置くステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項96】
試料を真空下に置く前記ステップが前記真空チェンバをポンプで排気するステップであることを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項97】
試料を真空下に置く前記ステップがコンピュータで前記真空下に置くステップを制御するステップをも含むことを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項98】
試料を真空下に置く前記ステップが前記真空チェンバを粗ポンプで排気した後、さらに主ポンプで排気するステップであることを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項99】
真空下に置く前に、試料を駆動してロード・ロックを通過させるステップをも含むことを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項100】
試料を真空下に置く前記ステップが別途にロード・ロックを排気するステップをも含むことを特徴とする請求項95に記載の方法。
【請求項101】
前記イオンビームを衝突させた後、前記チェンバから前記試料を引き出すステップをも含むことを特徴とする請求項93に記載の方法。
【請求項102】
イオンビームを衝突させる間、試料及び試料台を冷却するステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項103】
真空チェンバから引き出す前に試料及び試料台を暖めるステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項104】
前記試料台の温度をモニターするステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項105】
イオンビームを衝突させる間、試料及び試料台を冷却するステップ及び真空チェンバから引き出す前に試料及び試料台を暖めるステップをも含み、試料台とロード・ロックとの物理的接触によって前記暖めるステップを起動させることを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項106】
イオンビームを衝突させる間、試料及び試料台を冷却するステップ及び真空チェンバから引き出す前に試料及び試料台を暖めるステップをも含み、試料台とロード・ロックとの物理的接触を終息させることによって前記冷却ステップを起動させることを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項107】
イオンビームを衝突させている間、真空チェンバを選択的に区分するステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項108】
イオンビームを衝突させながら試料を観察するステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項109】
前記試料の前記観察の画像を記録するステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項110】
試料の観察及び試料の画像記録のいずれか一方のステップを含み、前記観察及び記録ステップの少なくとも一方のステップが、光学的装置、電気光学的装置及び電子顕微鏡装置から成る群から選択される少なくとも1つの撮像モジュールを利用することを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項111】
前記観察及び記録ステップの少なくとも一方のステップが前記観察及び記録をコンピュータで制御するステップを含むことを特徴とする請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記イオンビームを衝突させながら試料を回転させるステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項113】
前記イオンビームを衝突させながら前記イオンビームに対して0乃至45°の角度に試料を傾倒させるステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項114】
イオンビームに対する試料の位置を検出するステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項115】
イオンビームに対する試料の幾何学的配置を検出するステップをも含むことを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項116】
試料の位置をコンピュータで制御することを特徴とする請求項114に記載の方法。
【請求項117】
前記イオンビームの集束をコンピュータで制御することを特徴とする請求項78に記載の方法。
【請求項118】
装置のイオン・ミリング処理機能を自動的に行う動作アルゴリズムをプログラムするステップをも含むことを特徴とする請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記動作アルゴリズムを実行するステップをも含むことを特徴とする請求項118に記載の方法。
【請求項120】
装置のイオン・ミリング処理、撮像、真空化及び試料操作の機能を自動的に行う動作アルゴリズムをプログラムするステップをも含むことを特徴とする請求項117に記載の方法。
【請求項121】
前記動作アルゴリズムを実行するステップをも含むことを特徴とする請求項120に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2008−508684(P2008−508684A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523742(P2007−523742)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/026542
【国際公開番号】WO2006/014986
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
2.WINDOWS
3.イーサネット
【出願人】(504376245)イー エイ フィシオネ インストルメンツ インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】E.A.Fischione Instruments, Inc.
【Fターム(参考)】