説明

イオン性液体触媒を用いるオリゴマー化に先立つフィッシャートロプシュ由来原料の水素化処理

含酸素化合物を含むフィッシャートロプシュ由来原料をオリゴマー化するための方法であって、(a)フィッシャートロプシュ由来原料中に存在する含酸素化合物を、前記原料を水素化処理ゾーン(8)内において水素化処理条件下で水素化処理触媒と接触させることにより顕著に減少させ、フィッシャートロプシュ由来原料と比較して顕著に減少した量の含酸素化合物及び顕著な量のパラフィンを含むフィッシャートロプシュ由来水素化処理原料(10)を水素化処理ゾーンから回収するステップと、(b)フィッシャートロプシュ由来水素化処理原料を、熱分解ゾーン(12)内において、パラフィン分子を分解してオレフィンを形成するように予め選択した熱分解条件下で熱分解し、オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料(14)を熱分解ゾーン(14)から回収するステップと、(c)オレフィン富化フィッシャートロプシュ由来原料を、オリゴマー化ゾーン(16)内においてオリゴマー化反応条件下でルイス酸イオン性液体触媒と接触させるステップと、(d)フィッシャートロプシュ由来原料と比較してより高い平均分子量及び増加した分岐を特徴とする分子を有するフィッシャートロプシュ由来生成物(18)をオリゴマー化ゾーンから回収するステップとを含む、上記方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性液体オリゴマー化触媒の使用によるフィッシャートロプシュ由来原料中のオレフィンのオリゴマー化に関する。
【背景技術】
【0002】
過去において、フィッシャートロプシュ法コンビナートの経済性は、天然ガスを市場へ運ぶことが実際的ではない、孤立した地域においてしか望ましいものではなかったが、しかし、潤滑油基油、高品質ディーゼル燃料などの、製品群における価値の高い製品の製造量を増やすことが可能な場合には、フィッシャートロプシュ法コンビナートは、利益を得ることができる。幸いなことに、パラフィン含有量の大きい潤滑油基油の市場は、これらの分子の、高い粘度指数、酸化安定性、粘度に対する低い揮発性の故に、成長を続けている。フィッシャートロプシュ法から生成する生成物は、高い比率のワックスを含有し、それがこれらの生成物を潤滑油基材に加工する理想的な候補にしている。したがって、フィッシャートロプシュ法から回収される炭化水素生成物は、高品質の潤滑油基油を調製するための原料として提案されてきた。
【0003】
所望であれば、フィッシャートロプシュ法から回収される合成原油から、高品質のディーゼル燃料製品を調製することもできる。フィッシャートロプシュ由来ディーゼル燃料は、典型的には、イオウ及び芳香族の含有量が非常に低く、またセタン価が優れている。加えて、本発明の方法は、製品の品質を高める低い流動点及び曇り点を有するディーゼル燃料の製造を可能にする。これらの品質によって、フィッシャートロプシュ由来のディーゼル燃料は、低品質の石油誘導ディーゼル燃料を改質するための、優れたブレンド用素材となる。
【0004】
したがって、潤滑油基油及びディーゼル燃料の沸点範囲にあって、このようなより価値の高い炭化水素生成物の収率を最大にできることが望ましい。同時に、ナフサやC以下の生成物などの、より価値の低い生成物の収率を最小限にすることが望ましい。残念ながら、大半のフィッシャートロプシュ法は、C3〜範囲内の低分子量オレフィン系生成物を製造する。フィッシャートロプシュ法操作では、より沸点の高い生成物の収率を増し、また分子中の分岐量も増すことが有利である。
【0005】
フィッシャートロプシュ材料中に存在する炭化水素分子の平均分子量は、この原料中に存在するオレフィンのオリゴマー化によって増加させることができる。したがって、オリゴマー化を用いて、潤滑油基油やディーゼル燃料などの、より沸点の高い生成物の収率を高め、且つLPGやナフサなど、フィッシャートロプシュ法からのより沸点の低い生成物の収率を下げることができる。オリゴマー化はまた、ディーゼル燃料製品や潤滑油基油製品の流動点を下げ、それによって製品の低温流れ特性を改善する、望ましい分岐を炭化水素分子に導入する。水素化分解操作のための原料とするつもりのそれらのフィッシャートロプシュ生成物に関して、さらに有利な点は、分岐が分子をより分解しやすくすることである。米国特許第4,417,088号は、望ましい分岐を有する分子を生成させるように、オレフィンをオリゴマー化するための方法を記載している。最近は、オレフィンのオリゴマー化で使用するための、イオン性液体触媒の使用が提案されている。例えば、米国特許第5,304,615号及び第5,463,158号を参照のこと。また、欧州特許出願第0791643号A1も参照のこと。米国特許第6,395,948号は、高粘度を有するポリアルファオレフィンを所望する場合には、イオン性液体触媒を使用するアルファオレフィンのオリゴマー化は、有機希釈剤なしで行わなければならないことを教示している。
【0006】
フィッシャートロプシュ由来物質の大半は、フィッシャートロプシュプラントから回収された状態では、ある程度の量の含酸素化合物を含有しており、その大半はアルコールであるが、より少ない量の他の含酸素化合物、例えばアルデヒド、ケトン、酸無水物、及びカルボン酸なども含有する。フィッシャートロプシュ物質をオリゴマー化によって改質することを意図する方法では、アルコールは脱水反応によって容易にオレフィンに転化され、残る少量の他の含酸素化合物は、下流のさらなる処理工程を妨げるのに足りるような量で存在するとは考えられていなかった。しかし、オリゴマー化のステップでイオン性液体触媒を使用する場合には、きわめて少量の含酸素化合物でさえも、触媒を失活させることがわかった。本発明はこの問題を解決することを意図している。
【0007】
必ずしも全部というわけではないが、フィッシャートロプシュ法からの含酸素化合物の大半は、装置から回収された凝縮液画分に包含されているはずである。本開示で使用する「フィッシャートロプシュ凝縮液」という用語は、一般に、沸点がフィッシャートロプシュワックス画分よりも低い、C以上の画分をいう。つまり、凝縮液は、周囲温度において普通は液体である画分を意味する。フィッシャートロプシュ凝縮液は、フィッシャートロプシュプラントから直接得られるか、或いはフィッシャートロプシュワックスからワックス水素化分解装置を使用して生成される。「フィッシャートロプシュワックス」はフィッシャートロプシュ由来の合成原油からの高沸点画分を意味し、ほとんどの場合は室温で固体である。
【0008】
本開示において使用する「含む」又は「含んでいる」という語は、請求項に記載された要素を包含するが、規定されていない他の要素を必ずしも排除しないことを意味する、制限の定めのない、請求項の前文と本文とをつなぐ言葉を意図するものである。「本質的に〜からなる」又は「本質的に〜からなっている」という句は、その構成に対して何らかの本質的な意義を有する他の要素を排除することを意味することを意図するものである。「〜からなっている」又は「〜からなる」という句は、わずかな痕跡量の不純物を除き、記載した要素以外のすべてのものを排除することを意味する、請求項の前文と本文とをつなぐ言葉を意図するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の簡単な説明
最も広い切り口において、本発明は、含酸素化合物を含有するフィッシャートロプシュ由来原料をオリゴマー化するための方法であって、
(a)フィッシャートロプシュ由来原料中に存在する含酸素化合物を、前記原料を水素化処理ゾーン内において水素化処理条件下で水素化処理触媒と接触させることにより顕著に減少させ、フィッシャートロプシュ由来原料と比較して顕著に減少した量の含酸素化合物及び顕著な量のパラフィンを含むフィッシャートロプシュ由来水素化処理原料を水素化処理ゾーンから回収するステップと、
(b)フィッシャートロプシュ由来水素化処理原料を、熱分解ゾーン内において、パラフィン分子を分解してオレフィンを形成するように予め選択した熱分解条件下で熱分解し、オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を熱分解ゾーンから回収するステップと、
(c)オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を、オリゴマー化ゾーン内においてオリゴマー化反応条件下でルイス酸イオン性液体触媒と接触させるステップと、
(d)フィッシャートロプシュ由来原料と比較してより高い平均分子量及び増加した分岐を特徴とする分子を有するフィッシャートロプシュ由来生成物をオリゴマー化ゾーンから回収するステップと
を含む、上記方法を対象とする。
【0010】
フィッシャートロプシュ由来原料中に存在する含酸素化合物が、イオン性液体オリゴマー化触媒のオレフィンのオリゴマー化を促進する能力を妨げること、即ち触媒を失活させることが分かっている。驚くべきことに、この妨害が、フィッシャートロプシュ由来原料を、実質的にすべての存在するアルコールをオレフィンに転化する脱水反応ステップにまず供する場合にすら起こることが見出された。低濃度の、ケトンやカルボン酸などのその他の含酸素化合物でさえ、また脱水反応ステップ後の凝縮液中に残っている低濃度の残留アルコールでさえ、イオン性液体触媒を失活させることが発見された。1モルの含酸素化合物が、1モルの触媒を失活させ得ることもある。したがって、本発明では、イオン性液体触媒を使用する場合には、オリゴマー化操作へ送ることを意図するフィッシャートロプシュ原料中の含酸素化合物の量を減少させるために、水素化処理ステップを使用する。本発明では、フィッシャートロプシュプラントからの合成原油生成物全体、即ち凝縮液画分とワックス画分の両方を、水素化処理してもよい。本発明の範囲内である別の処理形態では、ワックス画分だけ又は凝縮液画分だけを水素化処理してもよい。本発明の他の態様では、これら画分の一方又は両方の一部分だけを水素化処理してもよい。水素化処理される材料に対する唯一の制限は、所望の生成物群の生成を妨げることを防止するのに十分に低い濃度まで、オリゴマー化操作へ送られる原料中の含酸素化合物が減少していることである。水素化処理操作を行うに当たっては、含酸素化合物を転化させつつ、炭化水素分子の分解を最小限に抑えるように、使用する水素化処理触媒と水素化処理条件を選択する。
【0011】
水素化処理は、炭化水素分子中に存在する二重結合を飽和させるので、水素化処理ステップに続いて、水素化処理されたフィッシャートロプシュ由来原料は、オリゴマー化の前に、熱分解ゾーン中において、パラフィン分子を分解してオレフィンを生成するように予め選択された熱分解条件下で熱分解される。本発明の1つの態様では、水素化処理されたフィッシャートロプシュ由来原料は、流通型反応器中でスチーム分解される。
【0012】
加熱分解又は熱分解に続いて、オレフィン富化フィッシャートロプシュ由来原料は、有効オリゴマー化量のルイス酸イオン性液体触媒を使用してオリゴマー化される。
【0013】
オリゴマー化に続いて、フィッシャートロプシュ由来生成物は、必要であれば脱ろうし、製品の低温流れ特性を向上させる。加えて、普通は、フィッシャートロプシュ由来生成物の炭化水素分子に残存する二重結合を飽和させることが望ましい。この後者の工程は、本明細書では水素化仕上げと称され、製品の紫外線安定性及び酸素安定性並びに色相を向上させる。
【0014】
本発明はまた、フィッシャートロプシュワックスの接触異性化脱ろうのみによって製造できるよりも、高品質潤滑油基油又はより大量の高粘度潤滑油基油の製造を可能にする。従来のフィッシャートロプシュ操作では、異性化によって製造できる高粘度潤滑油基油の量は、ワックス画分中に存在する高分子量分子の量によって制限される。オリゴマー化は、より高分子量の分子、したがってより高粘度の潤滑油基油を製造するための方法を提供する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、本発明の諸要素を示す簡略化した加工スキームを例示する図1を参照することにより、さらに明瞭に理解されるであろう。2つの別々のフィッシャートロプシュ由来原料流がフィッシャートロプシュ装置2を出ることが示されている。それらは、フィッシャートロプシュ凝縮液原料4及びフィッシャートロプシュワックス原料6を含み、それらは水素化処理装置8へ送られるものとして示されており、そこでこれらの原料流中の含酸素化合物及びすべての窒素化合物が除去される。水素化処理装置中では、炭化水素分子中の不飽和結合の大半も飽和される。凝縮液画分及びワックス画分の両方の混合物を含む水素化処理されたフィッシャートロプシュ由来原料は、ライン10中に集められ、熱分解装置12へ運ばれ、そこでパラフィン分子が分解されてオレフィンを形成する。熱分解装置からのオレフィン富化フィッシャートロプシュ原料はライン14によってオリゴマー化装置16へ運ばれ、そこでこの原料は、原料中の炭化水素分子の平均分子量を増し、且つそれらの分子に望ましい分岐を導入するために、イオン性液体触媒と接触させる。オリゴマー化操作の流出物は、ライン18によって脱ろう装置20へ運ばれ、そこでこの原料はさらに生成物の流動特性を向上させるために脱ろうされる。脱ろうされた生成物は、ライン22によって水素化仕上げ装置24へ送り、残存する二重結合を飽和させ、且つ生成物の安定性を向上させる。水素化仕上げされた生成物は、ライン26によって常圧及び減圧蒸留装置28へ送られ、そこで種々の製品が分離される。図に示すように、蒸留装置を出るのは、C以下の炭化水素を含むガス状軽質製品30、沸点がナフサ範囲内の炭化水素32、ディーゼル燃料製品33、基油製品34、及び残油36である。このスキームは、より価値の高いディーゼル燃料製品及び基油製品の製造量を最大にし、ガス状の軽質製品の製造量を最小化することを意図したものである。残油画分は、重質中性基油又はブライトストックとなしうるが、或いは所望であれば、他の水素化加工装置へ送ってさらなる加工を行うこともできる。
【0016】
図1に例示したプロセススキームでは、凝縮液画分とワックス画分を一緒に(混合して)加工することができる。或いは、凝縮液画分とワックス画分を、任意のステップにおいて、同じ装置の別々の区画で又は別々の反応器で加工することができる。目標は、それぞれの画分を、所望の製品の収率及び/又は所望の特性を最大化する最適条件で加工することである。
【0017】
図1に例示したプロセススキームは、凝縮液画分とワックス画分の両方が、フィッシャートロプシュ装置2から水素化処理装置、熱分解装置、及びオリゴマー化装置へと通過して行くことを示している。本発明の代替態様は、凝縮液画分とワックス画分を分離することができ、これらの画分の一方又は他方のみがこれらの装置を通過することができる。例えば、輸送燃料、特にナフサの量を最小化し、潤滑油生産を最大化するためには、凝縮液画分のみを水素化処理装置、熱分解装置、及びオリゴマー化装置を通過させることができる。この態様においては、ワックス画分は、まず水素化処理をして或いはしないで、直接脱ろう装置を通過させることができる。別の一態様では、ワックス画分のみを、水素化処理装置、熱分解装置、及びオリゴマー化装置を通過させ、凝縮液画分は、まず水素化処理をして或いはしないで、直接、常圧蒸留装置を通過させ、ナフサ製品とディーゼル燃料製品を回収することができる。様々な加工スキームで本発明を使用する、代替態様が、さらに図2及び図3に例示されており、これらは、種々の製品群を製造するために本発明をどのように使用することができるかを、本発明の範囲を限定することなくさらに明らかにするであろう。
【0018】
図2は、平均分子量の大きい潤滑油基油製品を製造することを意図する、本発明における代替一態様を例示している。図2に示した態様は基油の製造に適しており、それからフィッシャートロプシュ由来ブライトストックを調製することができる。これはまた、単純にフィッシャートロプシュワックスを水素化異性化脱ろうすることによって調製できるものよりも粘度の高い基油を高い収率で製造するのにも適している。この態様では、フィッシャートロプシュ反応器(示さず)から、フィッシャートロプシュワックス画分と凝縮液画分を別々に回収する。フィッシャートロプシュワックス画分は、原料供給ライン102を経てワックス水素化処理装置104に入る。ワックス水素化処理装置では、ワックス原料中に存在する含酸素化合物と窒素化合物の量が低減される。水素化処理されたワックス原料は、ライン106によって高圧分離器108へ運ばれ、そこで、一般に沸点が約650°F(約345℃)より低い低沸点炭化水素が、より高沸点の基油画分から分離される。ディーゼル燃料やナフサなどの沸点が輸送用燃料範囲内の炭化水素を主として含む、水素化処理された、より軽質の画分は、オーバーヘッドとしてライン110に集められ、フィッシャートロプシュ反応器からライン112で運ばれてくる凝縮液と混合される。高圧分離器からの水素化処理された軽質画分と凝縮液画分は一緒に凝縮液水素化処理装置114へ入る。水素化処理された凝縮液画分は、この時点では高圧分離器からの軽質画分を包含しており、ライン116に集められ、このラインで凝縮液を直接常圧蒸留装置118へ運ぶ。
【0019】
高圧分離器に戻って、沸点が高い方の水素化処理された画分は、ライン120中に集められて、2つの水素化処理された重質流に分けられる。1つの流は直接ライン122によって脱ろう装置124へ通る。2つ目の流は、ライン126を通って、熱分解工程及びオリゴマー化操作へ通る前に、第1貯蔵タンク128へ通る。熱分解工程又は脱ろう装置に送られる水素化処理された重質炭化水素の量は、最終製品群中に望まれる超重質基油生成物の量に依存する。熱分解装置へ送られる重質ワックス画分が多いほど、多くの重質潤滑油基油を製造することができる。第1の貯蔵タンク128に貯蔵されている水素化処理された重質油画分は、ライン130によって熱分解装置132へ送られ、そこでパラフィンの若干が熱分解されて、この原料中に存在するオレフィンの量が顕著に増加する。オレフィン富化重質原料はライン134によってオリゴマー化装置136へ送られ、そこでこの重質原料は、ルイス酸イオン性液体触媒の存在下に、オリゴマー化される。オリゴマー化された重質原料は、ライン138中に集められ、第2の貯蔵タンク140へ送られる。
【0020】
第1及び第2の貯蔵タンク128と140は、それぞれ、下流の脱ろう装置124を、ブロック方式又はバルク方式で運転できる柔軟性をもつ。ブロック方式では、脱ろう装置は、水素化処理されたフィッシャートロプシュワックス(高圧分離器108から直接ライン122を通って)又はオリゴマー化生成物(第2貯蔵タンク140からライン142を通って)を加工する。この方式は、具体的な原料が脱ろう収率及び生成物の品質を最良にするように、脱ろう条件を最適化することを可能にする。それはまた、オリゴマー化又は脱ろうのみから誘導された、別々の基油を回収することを可能にする。
【0021】
バルク脱ろう方式では、ライン142からのオリゴマー化された生成物とライン122からの水素化処理されたフィッシャートロプシュワックスが混合され、一緒に脱ろうされる。オリゴマー化された重質原料は、ライン142によって第2の貯蔵タンクを出て、ライン122中の重質原料流と混合される。オリゴマー化された重質原料と高圧分離器から直接来る重質原料を含む、この混合重質原料は、脱ろう装置124へ通る。
【0022】
脱ろう装置からの生成物は、ライン146によって水素化仕上げ装置144へ送られる。水素化仕上げ装置では、基油が安定化されてライン148中へ集められ、そこでそれらはライン116中の縮合物画分と混合される。重質画分と縮合物画分を合わせたものは、ライン150によって常圧蒸留装置118へ運ばれ、そこでオーバーヘッドガス152が、ナフサ154及びディーゼル燃料156から分離される。常圧蒸留装置からの残油はライン158中に集められ、減圧蒸留装置160へ移されて、様々な基油画分に分離される。本図では、軽質フィッシャートロプシュ基油生成物162、重質フィッシャートロプシュ基油生成物164、及びフィッシャートロプシュ残油166が集められるものとして示されている。残油は、そうすることが所望であり、且つ必要であれば、さらに精製してブライトストックを調製することができる。残油生成物が、流動点又は曇り点などの一定の基油仕様を満たさない場合は、この流を熱分解装置に送ってさらに加工することもできる。
【0023】
図3は、本発明の異なる一態様を例示しており、そこではフィッシャートロプシュ凝縮液が、本発明の方法を使用してオリゴマー化される。この態様では、フィッシャートロプシュワックス画分が、ライン204によってワックス水素化処理装置202へ運ばれる。水素化処理されたワックス画分はライン206中に回収され、高圧分離器208へ送られて、そこでワックスが、すでに図2の説明で記載したように、より軽質の画分から分離される。高圧分離器からのより軽質の画分はライン210によって集められ、フィッシャートロプシュ反応器から運ばれた縮合物画分とライン212中で混合される。高圧分離器からの凝縮液と軽質炭化水素の混合物は、共通のライン214によって凝縮液水素化処理反応器216へ運ばれて、そこでほぼすべての含酸素化合物と窒素化合物が除去される。含酸素化合物を含まない縮合物は、抜き出しライン218によって集められ、2つの流に分けられる。1つの流は、ライン222を経由して直接常圧蒸留装置220へ通る。第2の流は、ライン224を通ってストリッパー226へ通り、そこでC以下の炭化水素、アンモニア、及び水が除去される。これらのオーバーヘッドガスは、ライン228によって集められ、常圧蒸留装置220へ送られる。ストリッパーから集められた凝縮液は、ライン230によって熱分解装置232へ通り、そこでパラフィンが熱分解されてオレフィンを形成する。オレフィン富化凝縮液は、ライン234を経由してオリゴマー化装置236へ運ばれる。オリゴマー化された原料流は、ライン238を通って凝縮液貯蔵タンク240へ通る。
【0024】
高圧分離器208に戻って、水素化処理された重質ワックス画分はライン242中に集められ、水素化処理ワックス貯蔵タンク244へ運ばれる。凝縮液貯蔵タンク240及び水素化処理ワックス貯蔵タンク244は、下流の脱ろう装置246を、ブロック方式又はバルク方式で運転できる柔軟性を与える。ブロック方式では、脱ろう装置は、水素化処理されたフィッシャートロプシュワックス(高圧分離器208から直接ワックス貯蔵タンク244及びライン248を通って)又はオリゴマー化生成物(凝縮液貯蔵タンク240からライン250を通って)を加工する。バルク脱ろう方式では、ライン250からのオリゴマー化された生成物及びライン248からの水素化処理されたフィッシャートロプシュワックスは、混合されて一緒に脱ろうされる。
【0025】
脱ろう装置246からの生成物はライン252によって水素化仕上げ装置254へ送られ、そこからライン256を通って常圧蒸留装置220へ通る。常圧蒸留装置では、オーバーヘッドガス258、ナフサ260、ディーゼル燃料262が、別々に集められる。常圧蒸留装置からの残油は、ライン264中に集められ、減圧蒸留装置266へ送られて、そこで軽質基油268、中間基油270、及び残油272が、別々に集められるものとして示されている。
【0026】
図3に示されている本方法のスキームは非常に柔軟性がある。凝縮液の供給源は、フィッシャートロプシュプラントから直接集められた凝縮液又はワックス水素分解装置から回収した水素分解物のどちらでもよい。図3に例示されている本方法のスキームでは、製造する基油の量は、記載されている他の方法のスキームと比べて、顕著に増加させることができる。
【0027】
明確にするために、図には、水素化加工装置における原料水素又は循環ガスは示していない。
【0028】
フィッシャートロプシュ合成
フィッシャートロプシュ合成中は、水素と一酸化炭素の混合物を含む合成ガス(シンガス)を、適当な温度と圧力の反応条件下で、フィッシャートロプシュ触媒と接触させることにより、液体及び気体の炭化水素が形成される。フィッシャートロプシュ反応は、典型的には、約300〜約700°F(約150〜約370℃)、好ましくは約400〜約550°F(約205〜約290℃)の温度、約10〜約600psia(0.7〜41bar)、好ましくは30〜300psia(2〜21bar)の圧力、約100〜約10,000cc/g/hr、好ましくは300〜3,000cc/g/hrの触媒空間速度で行われる。
【0029】
フィッシャートロプシュ合成からの生成物は、大半がCからC100以上の範囲の、CからC200以上の炭化水素の範囲とすることができる。反応は、様々な型式の反応器、例えば、1つ又は複数の触媒床を収容した固定床反応器、スラリー反応器、流動床反応器、又は異なる型式の反応器の組合せなどの中で行うことができる。このような反応方法及び反応器は周知であり、文献に記載されている。スラリー式フィッシャートロプシュ法は、本発明を実施するのに好ましく、高度に発熱性の合成反応に対して優れた熱(及び質量)移動特性を利用するものであり、コバルト触媒を使用する場合には、比較的高分子量の、パラフィン系炭化水素を生成することが可能である。スラリー法では、反応条件下においては液体である合成反応の炭化水素生成物を含むスラリー状液体中に分散され懸濁されている微粒子状フィッシャートロプシュ型炭化水素合成触媒を含むスラリーを通過する第三の相として、水素と一酸化炭素の混合物を含む合成ガスを気泡で上昇させる。一酸化炭素に対する水素のモル比は、約0.5〜約4という広い範囲とすることができ、より典型的には約0.7〜約2.75の範囲内であり、好ましくは約0.7〜約2.5である。特に好ましいフィッシャートロプシュ法が、欧州特許出願第0609079号に教示されており、その記載全体を参照により実質的に本明細書の記載の一部とする。
【0030】
適当なフィッシャートロプシュ触媒は、Fe、Ni、Co、Ru及びReなどのVIII族触媒金属を1つ又は複数含み、好ましくはコバルトを含む。加えて、適当な触媒は、助触媒を含有してもよい。したがって、好ましいフィッシャートロプシュ触媒は、有効量のコバルト、及びRe、Ru、Pt、Fe、Ni、Th、Zr、Hf、U、Mg及びLaの1つ又は複数を、適当な無機担持材料、好ましくは1つ又は複数の耐火性金属酸化物を含むものに担持したものを含む。一般には、触媒中に存在するコバルトの量は、触媒組成物全体の約1〜約50重量%である。触媒はまた、ThO、La、MgO及びTiOなどの塩基性酸化物助触媒、ZrOなどの助触媒、貴金属(Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Ir)、貨幣金属(Cu、Ag、Au)、及びFe、Mn、Ni、及びReなどの他の遷移金属を含有することができる。適当な担持材料には、アルミナ、シリカ、マグネシア及びチタニア又はこれらの混合物が含まれる。コバルトを含有する触媒に対して好ましい担体には、アルミナ又はチタニアが含まれる。有用な触媒及びそれらの調製法は知られており、米国特許第4,568,663号に例示されているが、この特許は、説明に役立つことを意図されており、触媒の選択に関しては非限定的なものである。
【0031】
フィッシャートロプシュ操作から回収される際に、生成物は、通常、非常に軽質な生成物からなるガス状画分、一般に沸点がナフサ及びディーゼル燃料範囲の凝縮液画分、及び普通は周囲温度で固体の高沸点フィッシャートロプシュワックス画分の3つの画分に分けることができる。
【0032】
水素化処理による含酸素化合物及び窒素の除去
フィッシャートロプシュ操作から回収したワックス及び凝縮液は、様々な量の含酸素化合物を含有している。含酸素化合物の大半は、凝縮液中に濃縮されているが、イオン性液体触媒を使用する場合に、オリゴマー化操作を妨げるに充分な含酸素化合物がワックス中に存在することがある。含酸素化合物の大半はアルコールの形態であるが、より少ない量のケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、及び酸無水物も存在することがある。すでに指摘したように、オリゴマー化操作への原料中に含酸素化合物が存在すると、イオン性液体触媒の失活が起こる。存在しているアルコールは別にして、最も重要な含酸素化合物は、ケトンとカルボン酸であると見られる。
【0033】
本発明では、オリゴマー化操作への原料(凝縮液又はワックスのいずれであろうとも)中に存在する含酸素化合物は、水素化処理によって除去される。水素化処理はまた、原料中に存在することがある窒素化合物をも除去する。原料中の窒素含有量は、原料を過度に分解することなく、低いレベル(好ましくは5ppm未満)まで減少させるべきである。「水素化処理」は、普通は、遊離水素の存在下で行われる接触工程であると定義することができる。その主たる目的は、従来の石油由来の原料素材の加工に使用される場合、砒素などの種々の汚染物質、イオウ、酸素、及び窒素などのヘテロ原子、及び芳香族を、原料から除去することである。本発明の方法では、主たる目的は、オリゴマー化操作への原料中の含酸素化合物と窒素を除去することである。一般に、水素化処理操作では、炭化水素分子の分解、即ち、より大きい炭化水素分子のより小さい炭化水素分子への切断を最小限にする。この考察においては、「水素化処理」という用語は、分解転化が20%以下である水素化加工工程を指す。
【0034】
水素化処理操作を行う際に使用される触媒は、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第4,347,121号及び第4,810,357号を参照のこと。これらの特許の内容の全体は、水素化処理及びその方法で使用される典型的な触媒の一般的な記載について、参照により本明細書の記載の一部とする。適当な触媒には、アルミナやシリカ質のマトリックスに担持した白金又はパラジウムなどのVIIIA族(国際純正・応用化学連合1975年規則による)貴金属、及びアルミナやシリカ質のマトリックスに担持したニッケル−モリブデン又はニッケル−スズなどのVIIIA族及びVIB族金属が含まれる。本発明を行うには、金属ニッケルと金属モリブデンを含有する水素化処理触媒が特に好ましい。米国特許第3,852,207号は、貴金属触媒と穏やかな条件を記載している。他の適当な触媒は、例えば、米国特許第4,157,294号及び第3,904,513号に記載されている。ニッケル−モリブデンなどの水素化卑金属は、普通は最終的な触媒組成中に、酸化物として、或いは、そのような化合物が関係する特定の金属から容易に形成される場合は、より好ましくは又は可能な限りは、硫化物として存在する。好ましい卑金属触媒組成物は、対応する酸化物として求めた場合、約5重量%を超える、好ましくは約5〜約40重量%のモリブデン及び/又はタングステン、並びに少なくとも約0.5、一般には約1〜約15重量%のニッケル及び/又はコバルトを含む。白金などの貴金属を含有する触媒は、0.01%を超える、好ましくは0.1〜1.0%の金属を含有する。白金とパラジウムの混合物などの貴金属の組合せも使用することができる。
【0035】
水素化成分は、数多くある手順のいずれか1つにより、触媒組成物全体の中に組込むことができる。水素化成分は、混練、含浸、又はイオン交換によってマトリックス成分に添加することができ、またVI族成分、即ちモリブデンとタングステンは、含浸、混練又は共沈によって耐火性酸化物と組み合わせることができる。
【0036】
マトリックス成分即ち担体は、若干の酸性触媒活性のあるものを含めて、多くの種類のものとすることができるが、一般的には、本発明を実施する際には、非酸性水素化処理触媒が好ましく、アルミナが特に好ましい。酸活性を有する担体には、無定形シリカ−アルミナが含まれるが、或いはゼオライト系若しくは非ゼオライト系の結晶性モレキュラーシーブでもよい。適当なマトリックスモレキュラーシーブには、Y型ゼオライト、X型ゼオライト並びにいわゆる超安定Y型ゼオライト及び米国特許第4,401,556号、第4,820,402号、第5,059,567号に記載されているもののような、シリカ:アルミナ構造比の高いY型ゼオライトが含まれる。米国特許第5,073,530号に記載されているもののような、結晶サイズの小さいY型ゼオライトも使用できる。使用できる非ゼオライト系モレキュラーシーブには、例えば、シリコアルミノリン酸塩(SAPO)、フェロアルミノリン酸塩、アルミノリン酸チタン及び米国特許第4,913,799号やそこで引用されている参考文献に記載されている、種々のELAPOモレキュラーシーブが含まれる。種々の非ゼオライト系モレキュラーシーブの調製に関する詳細は、米国特許第5,114,563号(SAPO)、第4,913,799号及び米国特許第4,913,799号に引用されている種々の参考文献に見出すことができる。メソポーラスモレキュラーシーブ、例えば、J.Am.Chem.Soc.,114巻、10834〜10843頁、1992年に記載された材料のM41S族材料、MCM−41(米国特許第5,246,689号、第5,198,203号、第5,334,368号)、及びMCM−48(Kresgeら、Nature、359巻、710頁、1992年)もまた使用できる。適当なマトリックス材料にはまた、合成又は天然の物質並びに粘土、シリカなどの無機材料、及び/又はシリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア並びにシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、及びシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの3元組成物などの金属酸化物が含まれる。後者は天然にあるもの或いはゼラチン状の沈殿物の形態又はシリカと金属酸化物の混合物を含有するゲルの形態のいずれでよい。触媒と複合できる天然の粘土には、モンモリロナイト族及びカオリン族のものが含まれる。これらの粘土は、元の採掘されたままの未加工の状態で、或いはまず、焼成、酸処理又は化学改質に供してから使用することができる。
【0037】
水素化処理操作を実施する際には、複数の種類の触媒を反応器中で使用してもよい。異なる種類の触媒は、複数の層に別けてもよく、混合してもよい。
【0038】
典型的な水素化処理条件は、広い範囲にわたって変わる。一般に、全体のLHSVは、普通は約0.5〜5.0、好ましくは約1.0〜4.0である。全圧約200psig〜約2,000psigの範囲である。水素の循環速度は、典型的には、50SCF/Bblより大きく、好ましくは1,000〜5,000SCF/Bblである。反応器中の温度は約400°F〜約800°F(約205℃〜約425℃)の範囲であり、約675°F(約360℃)未満の温度が、水素化異性化を避けるために本発明の方法では一般に好ましい。
【0039】
本発明を実践すると、水素化処理ステップの間に、含酸素化合物の量は、水素化処理装置に入るときのフィッシャートロプシュ由来原料中に存在する含酸素化合物の量と比べて、顕著に減少する。本明細書で使用する「顕著に減少する」は、水素化処理された原料中に残っている元素としての酸素が、約1500重量ppm以下であることを意味する。好ましくは、実質的にすべての含酸素化合物が水素化処理ステップで除去される。本発明を使用すると、水素化処理操作からの流出物は、好ましくは約200重量ppm未満の元素状酸素、さらにより好ましくは100重量ppm未満の元素状酸素を含有する。しかし、凝縮液を水素化処理することにより、これらのレベルを達成することは比較的容易であるが、ワックス画分を処理しているときに、これらのレベルに到達するためには、より過酷な水素化処理条件が必要となり得ることが見出されている。したがって、実用上は、これらの好ましい量を超える含酸素化合物レベルがワックス画分中に残ることを許容し、イオン性液体オリゴマー化触媒の多少の失活を受け入れることが望ましい。この後者の場合のイオン性液体触媒の失活は、追加の補充触媒をオリゴマー化ゾーンに加えて、残留含酸素化合物によって失活した触媒を置き換えることを必要とする。
【0040】
熱分解
本発明の方法において使用する熱分解ステップは、フィッシャートロプシュ原料中のパラフィン分子を分解して、より低い分子量のオレフィンにすることを意図するものである。フィッシャートロプシュワックス及び凝縮液は、普通は、かなりの量のオレフィンを含有しているが、本発明では、オレフィンの大半は、水素化処理操作で飽和される。したがって、十分なオレフィンを原料に再導入して、オリゴマー化ステップの進行を可能にする必要がある。
【0041】
このステップを行うために、ディレイドコーキングや循環バッチ操作で使用されるもののような、バッチ式熱分解反応器を使用することも可能ではあるが、一般には、まずフィッシャートロプシュ原料を、その大半又は全部を気化させるのに充分な温度まで予熱し、その後、その蒸気を1本又は複数の管を通過させる、連続流通式の運転が好ましい。実質的に含酸素化合物を含まない、フィッシャートロプシュ由来原料中に存在するパラフィンからのオレフィンの最適な形成のためには、流通式反応器中の条件は決定的に重要である。原料の温度は、原料の大半又は全部を気化させるのに充分な温度まで上げなければならない。望ましい選択肢は、分解炉に入る前に、気化せずに残っている炭化水素を抜き取ることである。液体分解は、望ましくないパラフィンの形成をもたらすことが見出されている。好ましくは、熱分解は、熱源として働き且つ反応器中でのコークス化を抑える助けにもなるスチームを存在させて行われる。典型的なスチーム熱分解法の詳細は、米国特許第4,042,488号に見出され、その全体は参照により本明細書の記載の一部とする。熱分解操作を行う際には一般に触媒は使用されないが、この操作を流動床で行い、その中で、蒸発させた原料を、流動化されたコークス粒子などの、熱い流動化された不活性粒子と接触させることが可能である。
【0042】
熱分解工程を実施する際には、オレフィンの生成を最大限にするために分解反応中はずっと原料が気相中に保たれることが好ましい。熱分解ゾーンでは、分解条件は、存在するパラフィンの10重量%より多い分解転化をもたらすのに充分なものでなければならない。分解工程に対する熱分解ゾーン内の最適な温度及びその他の条件は、原料に応じて多少変わる。一般に、温度は原料を気相中に保つために十分に高くなければならないが、原料が過分解されるほど高くてはならず、即ち温度及び諸条件は、C以下の炭化水素が過剰に発生するほど過酷であってはならない。熱分解ゾーン内の温度は、普通は、約950°F〜約1,600°F(約510℃〜約870℃)の温度に維持される。フィッシャートロプシュ原料からのオレフィンの生成を最大にするための熱分解ゾーンの最適温度範囲は、原料の終点に依存する。一般に、炭素数が多いほど、最大転化を達成するために必要な温度は高くなる。したがって、ある特定の原料に対する最適の分解条件を特定するためには、多少のルーチン実験が必要なこともある。熱分解ゾーンは、普通は圧力を約0気圧〜約5気圧に維持するが、約0気圧〜約2気圧の範囲の圧力が一般に好ましい。原料の反応器内での最適な滞留時間は、熱分解ゾーンの温度と圧力に応じて変わるが、典型的な滞留時間は一般に約1.5秒〜約500秒の範囲であり、好ましい範囲は約5秒〜約300秒である。
【0043】
オリゴマー化
熱分解に続いて、オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料は、ルイス酸イオン性液体触媒を使用してオリゴマー化される。本発明において、オレフィンのオリゴマー化に対してイオン性液体触媒を使用することには、反応物と触媒との極めてよい混合が得られる結果として滞留時間が短く収率が高いこと、比較的低い温度でオリゴマー化反応が起こること、及び生成物が容易に触媒から分離できることにおいて、より常套的な触媒を超える一定の利点がある。本発明の方法では、オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を、触媒を含有している混合物に加えればよく、或いは触媒を原料に加えてもよい。どちらの場合も、原料及びオリゴマー化の間に形成された生成物は、イオン性液体から分離した相を形成し、それが2つの相を容易に分離することを可能にする。イオン性液体触媒と原料の混合を促進させるためには、オリゴマー化混合物を撹拌するか、イオン性液体触媒中に原料を気泡で通過させるか、又は触媒と炭化水素の良好な混合を促進させる他の種類の反応器を使用することが望ましい。オリゴマー化反応の完了に続いて、混合を止めなければならず、また生成物と残った原料に、触媒層から明瞭に分かれた層を形成させなければならない。
【0044】
本発明で使用するイオン性液体オリゴマー化触媒は、ルイス酸触媒であり、普通は、錯体を形成する少なくとも2つの成分を含む。ほとんどの場合は、触媒は2元触媒であり、即ち2つの成分のみからなる。この触媒の第1成分は、普通は、アルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウムハロゲン化物、ガリウムハロゲン化物、アルキルガリウムハロゲン化物からなる群から選択されるルイス酸を含む。第1成分としてはアルミニウムハロゲン化物又はアルキルアルミニウムハロゲン化物が好ましい。本発明の実践で使用するオリゴマー化触媒を調製するには、三塩化アルミニウムが特に好ましい。第1成分の存在は、イオン性液体に、ルイス(又は、フランクリン)酸的特徴を与えるに違いない。
【0045】
触媒を作り出す第2成分は、普通は、第四級アンモニウム又は第四級ホスホニウム化合物であり、例えば、ヒドロカルビル置換アンモニウムハロゲン化物、ヒドロカルビル置換イミジゾリウムハロゲン化物、ヒドロカルビル置換ピリジニウムハロゲン化物、アルキレン置換ピリジニウムジハロゲン化物、ヒドロカルビル置換ホスホニウムハロゲン化物の1つ又は複数から選択される塩などである。第2成分として使用するのに好ましいものは、1〜約9個の炭素原子を有するアルキル部分を1つ又は複数含有する第四級アンモニウムハロゲン化物、例えば、トリメチルアミン塩酸塩、塩化メチル−トリブチルアンモニウムなど、又はアルキル置換イミダゾリウムハロゲン化物、例えば1−エチル−3−メチル−イミダゾリウム塩化物などである。
【0046】
これら2つの成分のモル比は、普通は前記第1成分:前記第2成分が約1:1〜約5:1の範囲内に入り、より好ましくは当該モル比は約1:1〜約2:1の範囲内である。本質的に塩化メチル−トリブチルアンモニウムと三塩化アルミニウムからなる二元触媒組成物の使用が、調製の容易さ、成分が市場で入手しやすいこと、及び比較的低いコストの故に、本発明の方法を行う場合に特に有利である。
【0047】
オレフィンのオリゴマー化を促進するために存在する触媒の量は、オリゴマー化に有効な量以上、言い換えれば、オレフィンをオリゴマー化して所望の生成物にするのに必要な最小限の触媒の量以上とすべきである。これは、触媒の組成、触媒の2つの成分間の相互の比、原料、選択したオリゴマー化条件などに、ある程度依存する。しかし、有効触媒量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内に違いなく、本発明を実施するのに必要な量を確定するためにはルーチン試験以上のものを必要としない。先に指摘したとおり、原料中の汚染物質、大半はワックス画分中に存在する残留含酸素化合物、によって失活した触媒を置き換えるために、オリゴマー化ゾーンに加えられる補充触媒が必要なことがある。必要な補充触媒の量は、存在する汚染物質の量に依存する。汚染物質の量が少なく、触媒の失活の程度も低いことが好ましい。しかし、もしも水素化処理ステップの間に含酸素化合物を最も好ましいレベルまで除去することが、顕著な分解が起こって、望ましい高分子量生成物の量がそれに対応して減少するほど過酷な操作を必要とするなら、望ましい製品群を生成させるために、多少の触媒失活を許容することが必要であるかもしれない。
【0048】
オリゴマー化反応は、触媒の融点とその分解温度の間の広い温度範囲で起こるが、好ましくは約120°F〜約212°F(約50℃〜約100℃)である。
【0049】
オリゴマー化反応の完了に続いて、フィッシャートロプシュ由来オリゴマー化生成物を含有している有機層を、イオン性液体相から分離する。好ましくは、オリゴマー化生成物は、当初のオレフィン富化フィッシャートロプシュ供給原料よりも少なくとも10%高い、より好ましくは少なくとも20%高い平均分子量を有している。有機相を回収した後に残る、酸性イオン性液体触媒は、好ましくはオリゴマー化ゾーンへ循環させる。
【0050】
脱ろう
オリゴマー化装置からの生成物は、潤滑油基油のコールドフロー要件を満たすためには、脱ろうを必要とすることがある。脱ろう法は、溶媒法又は接触法とすることができる。接触脱ろうが一般に好ましいが、フィッシャートロプシュワックスの一部分が、水素化異性化されて潤滑油基油となるプロセススキームの場合には特に好ましい。これらのスキームでは、接触脱ろう装置は、(1)オリゴマー化生成物を供給する方式、又は(2)フィッシャートロプシュワックスを供給する方式の、2つの方式のいずれによっても運転することができる。
【0051】
接触脱ろうには主な種類が3つあり、従来法の水素化脱ろう、完全水素化異性化脱ろう、及び部分的水素化異性化脱ろうである。3種類すべてが、ワックス状炭化水素流と水素の混合物を酸性成分を含有する触媒に通して、原料中のノルマルパラフィン及びわずかに分岐したイソパラフィンを、許容し得る流動点の潤滑油基油原料などの他の非ワックス状の種に転化する。典型的な条件は、すべての種類について、温度は約200℃〜約425℃(約400°F〜約800°F)であり、圧力は約14atmg〜210atmg(約200psig〜3,000psig)であり、空間速度は約0.2〜5hr−1である。ある原料を脱ろうするために選択される方法は、典型的には、製品の品質及び原料のワックス含有量に依存するが、ワックス含有量の低い原料については、しばしば従来法の水素化脱ろうが好ましい。脱ろう法は、触媒の選択によって効果を発揮させることができる。一般的な主題については、Avilino Sequeiraによって「潤滑油基材及びワックス処理(Lubricant Base Stock and Wax Processing)」、Marcel Dekker,Inc.、194〜223頁で総説されている。従来法の水素化脱ろう、完全水素化異性化脱ろう、及び部分的水素化異性化脱ろうの間でどれにするかの決定は、米国特許第5,282,958号に記載されているように、n−ヘキサデカン異性化試験を使用して行うことができる。96%で測定された場合は、従来法の水素化脱ろう触媒を使用するn−ヘキサデカンの転化は、10%未満の異性化ヘキサデカンへの選択率を示し、部分的水素化異性化脱ろう触媒は、10%より高く40%より低い異性化ヘキサデカンへの選択率を示し、完全水素化異性化脱ろう触媒は、40%以上、好ましくは60%より高く、最も好ましくは80%の異性化ヘキサデカンへの選択率を示す。
【0052】
従来法の水素化脱ろうでは、例えば、ZSM−5などの従来法の水素化脱ろう触媒を使用して、選択的にワックス分子を大半、より小さなパラフィンに分解することにより、流動点が低下する。金属を触媒に添加して、主として汚染を低減させることができる。
【0053】
完全水素化異性化脱ろうは、典型的には、非ワックス状イソパラフィンへの異性化によりワックスの高転化水準を達成すると同時に、分解による転化を最小限に抑える。ワックス転化が完全であるか、或いは少なくとも非常に高率なので、この方法は典型的には、許容されうる流動点の潤滑油基油を製造するために、追加の脱ろう工程と組み合わせる必要がない。完全水素化異性化脱ろうは、酸性成分及び水素化活性を有する活性金属成分からなる二重機能触媒を使用する。異性化反応を行うためには両方の成分が必要である。完全水素化異性化で使用するこの触媒の酸性成分は、好ましくはSAPO−11、SAPO−31、及びSAPO−41などの中間細孔SAPOを含有し、SAPO−11が特に好ましい。ZSM−22、ZSM−23、及びSSZ−32などの中間細孔ゼオライトもまた、完全水素化異性化脱ろうを行う際に使用できる。典型的な活性金属には、モリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、亜鉛、白金、及びパラジウムが含まれる。金属白金及び金属パラジウムが活性金属として特に好ましく、白金が最も一般的に使用される。
【0054】
部分的水素化異性化脱ろうでは、パラフィンを選択的に異性化することのできる触媒を使用して、ワックスの一部分をイソパラフィンに異性化する。但し、ワックスの転化率が比較的低い値(典型的には50%未満)に保たれる場合に限られる。転化率がこれより高いと、分解によるワックスの転化が顕著になり、潤滑油基油原料の収率低下が不経済となる。完全水素化異性化脱ろうと同様に、部分的水素化異性化脱ろうで使用される触媒は、酸性成分と水素化成分の両方を含有する。部分的水素化異性化脱ろうに有用な酸性触媒成分は、無定形シリカアルミナ、フッ素化アルミナ及び12員環ゼオライト(βゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライトなど)を含有する。この触媒の水素化成分は、完全水素化異性化脱ろうについて既に述べたものと同じである。部分的水素化異性化脱ろうは、ワックス転化が不完全なので、許容される流動点を有する潤滑油基油原料を生成させるためには、追加の脱ろう法、典型的には溶媒脱ろう、完全水素化異性化脱ろう、又は従来法の水素化脱ろうで補完しなければならない。
【0055】
本発明で使用する、SAPO非ゼオライトモレキュラーシーブを含有し、水素化成分を有する触媒を調製する際には、普通は非湿式法を使用して金属を触媒上に沈着させることが好ましい。非湿式法を使用して金属を沈着させたSAPO含有触媒は、活性金属を沈着させるために湿式法を使用した触媒よりも、高い選択性と活性を示してきた。非ゼオライト系モレキュラーシーブへの活性金属の非湿式沈着は、米国特許第5,939,349号に教示されている。一般に、この方法は、活性金属の化合物を非反応性の非水性溶媒中に溶解すること、及びそれをイオン交換又は含浸によってモレキュラーシーブ上に沈着させることを含む。
【0056】
本発明の目的にとっては、水素化異性化脱ろう、特に完全水素化異性化脱ろうが、もしもこれらの操作が生成物に所望の粘度及び流動点特性をもたらすことが可能ならば、水素化脱ろうよりも好ましい。これは、ワックスの分解がより少ないので、潤滑油基油の収率が高まるからである。接触水素化異性化ステップで使用するのに好ましい水素化異性化触媒は、SAPO−11を含む。
【0057】
水素化仕上げ
水素化仕上げ操作は、オリゴマー化ゾーンから回収したフィッシャートロプシュ由来生成物の、紫外線安定性及び着色を改善することを意図するものである。これは、炭化水素分子中に存在する二重結合を飽和させることにより達成されると考えられている。水素化仕上げ工程の一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び第4,673,487号に見出される。この開示で使用されている「紫外線安定性」という用語は、潤滑油基油又はその他の製品が、紫外線及び酸素に露出されたときの安定性を指す。不安定性は、紫外線及び空気に露出されたときに、目に見える沈殿が形成されたり、より濃く着色したりする結果、製品中に曇りや浮遊物が生じることにより示される。本発明の方法によって調製された潤滑油基油及びディーゼル燃料品は、紫外線安定化してからでなければ、販売用潤滑油や販売可能なディーゼル燃料の製造に使用するのに適当ではない。
【0058】
本発明では、水素化仕上げゾーン内の全圧は、500psigより高く、好ましくは1,000psigより高い。最大全圧は、本方法にとっては必須ではないが、装置の限界により、全圧は3,000psigを超えることはなく、普通は約2,500psigを超えることはない。水素化仕上げゾーン内の温度範囲は、普通は約300°F(約150℃)〜約700°F(約370℃)の範囲であり、約400°F(約205℃)〜約500°F(約260℃)が好ましい。LHSVは、普通は約0.2〜約2.0、好ましくは0.2〜1.5、最も好ましくは約0.7〜1.0の範囲である。水素は、普通は、原料1バレルあたり約1,000〜約10,000SCFの割合で水素化仕上げ反応器に供給される。典型的には、水素は、原料1バレルあたり約3,000SCFの割合で供給される。
【0059】
適当な水素化仕上げ触媒は、典型的には、VIII族の貴金属成分と酸化物担体を共に含む。次の金属の金属又は化合物が、水素化仕上げ触媒で有用と考えられており、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、及びオスミウムが含まれる。好ましくは、金属は白金、パラジウム、又は白金とパラジウムの混合物である。耐火性酸化物担体は、普通はシリカ−アルミナ、シリカ−アルミナ−ジルコニアなどからなる。典型的な水素化仕上げ触媒は、米国特許第3,852,207号、第4,157,294号及び第4,673,487号に開示されている。
【0060】
蒸留
フィッシャートロプシュ由来生成物の様々な画分への分離は、一般に常圧蒸留又は減圧蒸留或いは常圧蒸留と減圧蒸留の組合せによって行う。常圧蒸留は、典型的には、ナフサ及び中間留出油などの比較的軽質な留出留分を、初期沸点が約340℃〜約400℃(約650°F〜約750°F)より高い残油画分から分離するために使用する。これより高い温度では、炭化水素の熱分解が起こる可能性があり、装置の汚れ及び重質油画分の収率の低下をもたらす。減圧蒸留は、典型的には、潤滑油基油画分などの、より高沸点の物質を分離するために使用する。
【0061】
本開示で使用する「留出留分」又は「留出油」という用語は、常圧分留塔又は減圧蒸留塔から集められた側流生成物を指し、塔の底部から集められた、より高沸点の残留画分を表す「残油画分」に対するものである。本開示では、「残油」という用語は、これらの残油画分及びフィッシャートロプシュ原料流中に存在するオレフィンのオリゴマー化から誘導されたブライトストックを含む。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】フィッシャートロプシュ設備からの凝縮液画分とワックス画分の両方を水素化処理ゾーンに通す、本発明の一態様を例示するブロックダイヤグラムに示した概略図である。
【図2】フィッシャートロプシュ設備からのワックス画分だけを熱分解装置及びオリゴマー化装置に通す、本発明の代替態様の概略図である。
【図3】フィッシャートロプシュ凝縮液画分を熱分解装置及びオリゴマー化装置に通す、本発明の一態様の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含酸素化合物を含むフィッシャートロプシュ由来原料をオリゴマー化するための方法であって、
(a)フィッシャートロプシュ由来原料中に存在する含酸素化合物を、前記原料を水素化処理ゾーン内において水素化処理条件下で水素化処理触媒と接触させることにより顕著に減少させ、フィッシャートロプシュ由来原料と比較して顕著に減少した量の含酸素化合物及び顕著な量のパラフィンを含むフィッシャートロプシュ由来水素化処理原料を水素化処理ゾーンから回収するステップと、
(b)フィッシャートロプシュ由来水素化処理原料を、熱分解ゾーン内において、パラフィン分子を分解してオレフィンを形成するように予め選択した熱分解条件下で熱分解し、オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を熱分解ゾーンから回収するステップと、
(c)オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を、オリゴマー化ゾーン内においてオリゴマー化反応条件下でルイス酸イオン性液体触媒と接触させるステップと、
(d)フィッシャートロプシュ由来原料と比較してより高い平均分子量及び増加した分岐を特徴とする分子を有するフィッシャートロプシュ由来生成物をオリゴマー化ゾーンから回収するステップと
を含む、上記方法。
【請求項2】
フィッシャートロプシュ由来水素化処理原料が200重量ppm未満の元素状酸素を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フィッシャートロプシュ由来水素化処理原料が100重量ppm未満の元素状酸素を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水素化処理触媒が非酸性水素化処理触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
水素化処理触媒が金属ニッケル及びモリブデンを含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水素化処理ゾーン内における水素化処理条件が、約400°F〜約800°Fの温度、約0.5〜約5.0のLHSV、及び約200psig〜約2,000psigの全圧を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
水素化処理ゾーン内の温度が約675°F未満である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
LHSVが約1〜約4.0である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
熱分解ゾーン内の温度が約950°F〜約1,600°Fの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
熱分解ゾーン内における圧力が約0気圧〜約2気圧の範囲内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
熱分解ゾーンにおける分解転化率が、存在するパラフィンの約10重量%より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
イオン性液体オリゴマー化触媒が、第1成分及び第2成分を含み、前記第1成分はアルミニウムハロゲン化物、アルキルアルミニウムハロゲン化物、ガリウムハロゲン化物、及びアルキルガリウムハロゲン化物からなる群から選択される化合物を含み、前記第2成分は第四級アンモニウム塩又は第四級ホスホニウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
オリゴマー化ゾーンから回収したフィッシャートロプシュ由来生成物を脱ろうし、オリゴマー化ゾーンから回収したフィッシャートロプシュ由来生成物と比較して改善された低温流れ特性を有する脱ろうされたフィッシャートロプシュ生成物を回収する追加のステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
フィッシャートロプシュ由来生成物が接触脱ろうされている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
脱ろうされたフィッシャートロプシュ生成物を水素化仕上げする追加のステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
フィッシャートロプシュ由来生成物が潤滑油基油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
フィッシャートロプシュ由来生成物がディーゼル燃料製品を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
フィッシャートロプシュ由来潤滑油基油を製造するための方法であって、
(a)フィッシャートロプシュプラントからワックス画分を回収するステップと、
(b)フィッシャートロプシュワックス画分中に存在する含酸素化合物を、前記ワックス画分を水素化処理ゾーンにおいて水素化処理条件下で水素化処理触媒と接触させることにより顕著に減少させ、フィッシャートロプシュ由来ワックス画分と比較して顕著に減少した量の含酸素化合物及び顕著な量のパラフィンを含むフィッシャートロプシュ由来水素化処理ワックス原料を水素化処理ゾーンから回収するステップと、
(c)前記フィッシャートロプシュ由来水素化処理ワックス原料を、熱分解ゾーンにおいて、パラフィン分子を分解してオレフィンを生成するように予め選択した熱分解条件下で熱分解し、オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を熱分解ゾーンから回収するステップと、
(d)オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を、オリゴマー化ゾーンにおいてオリゴマー化反応条件下でルイス酸イオン性液体触媒と接触させるステップと、
(e)フィッシャートロプシュ由来原料と比較してより高い平均分子量及び増加した分岐を特徴とする分子を有するフィッシャートロプシュ由来オリゴマー化流出物をオリゴマー化ゾーンから回収するステップと、
(f)フィッシャートロプシュ由来オリゴマー化流出物を、脱ろうゾーンにおいて接触反応条件下で脱ろう触媒と接触させることにより、フィッシャートロプシュ由来オリゴマー化流出物を脱ろうし、フィッシャートロプシュ由来オリゴマー化流出物と比較して改善された低温流れ特性を有する脱ろうフィッシャートロプシュ生成物を脱ろうゾーンから回収するステップと、
(g)脱ろうフィッシャートロプシュ生成物を、水素化仕上げゾーンにおいて水素化仕上げ触媒存在下、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げするステップと、
(h)フィッシャートロプシュ由来潤滑油基油を水素化仕上げゾーンから回収するステップと
を含む、上記方法。
【請求項19】
水素化処理ゾーンから回収されたフィッシャートロプシュ由来水素化処理ワックス原料が200重量ppm未満の元素状酸素を含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
フィッシャートロプシュ由来潤滑油基油を製造するための方法であって、
(a)フィッシャートロプシュプラントから凝縮液画分を回収するステップと、
(b)フィッシャートロプシュ凝縮液画分中に存在する含酸素化合物の実質的にすべてを、前記凝縮液画分を水素化処理ゾーンにおいて水素化処理条件下で水素化処理触媒と接触させることにより除去し、実質的に含酸素化合物を含まず、顕著な量のパラフィンを含むフィッシャートロプシュ由来凝縮液原料を水素化処理ゾーンから回収するステップと、
(c)実質的に含酸素化合物を含まないフィッシャートロプシュ由来凝縮液原料を、熱分解ゾーンにおいて、パラフィン分子を分解してオレフィンを生成するように予め選択した熱分解条件下で熱分解し、オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を熱分解ゾーンから回収するステップと、
(d)オレフィン富化フィッシャートロプシュ原料を、オリゴマー化ゾーンにおいてオリゴマー化反応条件下でルイス酸イオン性液体触媒と接触させるステップと、
(e)フィッシャートロプシュ由来原料と比較してより高い平均分子量及び増加した分岐を特徴とする分子を有するフィッシャートロプシュ由来オリゴマー化流出物をオリゴマー化ゾーンから回収するステップと、
(f)フィッシャートロプシュ由来オリゴマー化流出物を、前記フィッシャートロプシュ由来オリゴマー化流出物を脱ろうゾーンにおいて接触反応条件下で脱ろう触媒と接触させることにより脱ろうし、フィッシャートロプシュ由来オリゴマー化流出物と比較して改善された低温流れ特性を有する脱ろうフィッシャートロプシュ生成物を脱ろうゾーンから回収するステップと、
(g)脱ろうフィッシャートロプシュ生成物を水素化仕上げゾーンにおいて水素化仕上げ触媒存在下、水素化仕上げ条件下で水素化仕上げするステップと、
(h)フィッシャートロプシュ由来潤滑油基油を水素化仕上げゾーンから回収するステップと
を含む、上記方法。
【請求項21】
ディーゼル燃料製品をも水素化仕上げゾーンから回収する、請求項20に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−527446(P2007−527446A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518638(P2006−518638)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/017991
【国際公開番号】WO2005/005353
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】