説明

インクジェットプリンター及びそれを用いて作製した記録物

【課題】有機溶剤等を必要とせず、かつ重ね合わせ部分のインクによる変形、印字時の画像再現性、裏面汚れ、画像滲みを防止したインクジェットプリンター及びそれを用いて作製した記録物を提供することにある。
【解決手段】被記録物を保持し搬送する搬送装置と、該被記録物に対してインクを出射するインクジェットプリントヘッドとを有し、該搬送装置は、外周面がフッ素系樹脂で覆われた無端ベルトまたはローラを有し、該無端ベルトまたはローラの外周面上に粘着テープを転写して形成された粘着層を有する無端搬送部材を有し、該粘着テープは基材を有さず、かつ該粘着層がシリコーンポリマーを含有することを特徴とするインクジェットプリンター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性無端搬送部材を有する搬送装置を備えたインクジェットプリンターとそれを用いて作製した記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は簡便に、かつ安価に画像を作成することができるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御するインクジェット記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させたインクジェット用専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、インクジェット記録装置、インク、インクジェット用専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
更に、近年では、上述したインクジェット記録方式を、布帛の捺染へ応用することも試みられている。これは、捺染の分野において、製版工程を必要としないインクジェット記録方式が、納期短縮や少量多品種生産対応として大きな利点を有するからである。
【0004】
更に、形成画像として必要な量のインクのみを使用するため、従来方法に比較すると廃液が少ない等の環境的利点も有する優れた画像形成方法であるといえる。
【0005】
インクジェット捺染方法においては、布帛のように搬送時に不均一な変形を生じやすい被記録物を、変形を起こさずに安定に搬送することが均質な画像を得るためには必要とされており、例えば、粘着性を有する搬送ベルトが用いられている。
【0006】
この様な粘着性搬送ベルトとしては、例えば、地貼り剤と呼ばれる粘着剤の有機溶媒溶液を搬送ベルト上に塗布し、粘着ベルトとする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、塗布には有機溶剤を用いるため、安全性及び作業者等に対する環境適性上の課題を抱えている。更には、繰り返し使用することにより粘着力が低下した際には、再度地貼り剤を塗り直す必要があり、有機溶剤を用いて粘着剤を一度掻き取った後に、再度塗布をすると言う煩わしさがあった。
【0007】
一方、無端ベルトの表面に、基材の両面に粘着層を設けた粘着テープを付与する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2で提案されているように、両面粘着テープを用いることにより、ベルト上に有機溶剤等を使うことなく粘着層を設けることができ、また、粘着層が劣化した際も容易に交換が可能となる。
【0008】
しかしながら、搬送ベルト上に隙間無く粘着テープを貼ろうとした場合、図1に示す様に、粘着テープの端部間で少なからず重なり部分Aが発生する。すなわち、無端の搬送ベルトB上に、粘着テープTを付与する場合、搬送ベルトBの円周全面に粘着テープTを張りつける場合、必ず粘着テープTの貼り付け開始部TSと粘着テープTの貼り付け終点TEとの重なり部分Aが発生する。この重なり部分Aでは粘着テープTの断面がより多く露出した状態となる。特に、図2のa)に示すように基材Tの両面に粘着層2を設け、そのそれぞれの外側を剥離体1で被覆した両面粘着テープTを、搬送ベルトBに付与する場合には、両面粘着テープTの両面にある剥離体1を取り除いた後、基材Tと粘着層2から構成される状態で基材Tに貼り付けて使用されるが、インクジェット記録時に、被記録物にインクIが付与されるが、インクI中の溶媒は、両面粘着テープTにまで浸透し、その結果、基材の変形3′や、基材3からの粘着層2の剥離が発生してしまう。また、変形によって生じた隙間にインクが浸入すると、その後クリーニングを行ったとしても浸透したインクが除かれない状態で、再度新しい被記録物の裏面に印圧、粘着され、新しい布の裏面を汚してしまい、製品として使い物に成らなくなってしまう問題が発生した。
【特許文献1】特開昭57−29676号公報
【特許文献2】特開2000−198970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、布帛などの搬送時に、無端搬送部材上に粘着剤を付与した粘着性無端搬送部材を用いる搬送装置を有し、有機溶剤等を必要とせず、かつ重ね合わせ部分のインクによる変形、画像再現性、印字時の裏面汚れ、画像滲みを防止したインクジェットプリンター及びそれを用いて作製した記録物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.被記録物を保持し搬送する搬送装置と、該被記録物に対してインクを出射するインクジェットプリントヘッドとを有し、該搬送装置は、外周面がフッ素系樹脂で覆われた無端ベルトまたはローラを有し、該無端ベルトまたはローラの外周面上に粘着テープを転写して形成された粘着層を有する無端搬送部材を有し、該粘着テープは基材を有さず、かつ該粘着層がシリコーンポリマーを含有することを特徴とするインクジェットプリンター。
【0012】
2.前記シリコーンポリマーが、付加反応硬化型シリコーンポリマーであることを特徴とする前記1に記載のインクジェットプリンター。
【0013】
3.前記付加反応硬化型シリコーンポリマーが、少なくとも(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、(B)SiH基を含有するポリオルガノシロキサンとを含み、該(A)の成分と(B)の成分との質量比〔(A):(B)〕が、20:80〜80:20であることを特徴とする前記2に記載のインクジェットプリンター。
【0014】
4.前記付加反応硬化型シリコーンポリマーが、少なくとも(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、(B)SiH基を含有するポリオルガノシロキサンとを含み、該(A)の成分中のアルケニル基に対する(B)の成分中のSiH基のモル比が、0.5〜20であることを特徴とする前記2または3に記載のインクジェットプリンター。
【0015】
5.前記被記録物が、布帛であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンター。
【0016】
6.前記布帛の縦目及び横目の破断伸度が、いずれも5%以上であることを特徴とする前記5に記載のインクジェットプリンター。
【0017】
7.前記インクが、色剤として分散染料を含有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットプリンター。
【0018】
8.前記1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットプリンターを用いて作製したことを特徴とする記録物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、布帛などの搬送時に、無端搬送部材上に粘着剤を付与した粘着性無端搬送部材を用いる搬送装置を有し、有機溶剤等を必要とせず、かつ重ね合わせ部分のインクによる変形、画像再現性、印字時の裏面汚れ、画像滲みを防止したインクジェットプリンター及びそれを用いて作製した記録物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、被記録物にインクを出射して記録するインクジェット記録方法で用いるインクジェットプリンターにおいて、該被記録物の搬送装置が、粘着テープを無端ベルトまたはローラ表面に転写して形成した粘着層を設けた粘着性の無端搬送部材を有し、該粘着テープが基材を有しないことを特徴とするインクジェットプリンターにより、有機溶剤等を必要とせず、かつ重ね合わせ部分のインクによる変形、画像再現性、印字時の裏面汚れ、画像滲みを防止したインクジェットプリンターを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0022】
本発明のインクジェットプリンターは、被記録物にインクを出射して画像記録するインクジェット記録方法で用いられる。
【0023】
はじめに、本発明のインクジェットプリンターの概要について、インクジェット捺染プリンターを一例として説明する。
【0024】
図3は、本発明における産業用インクジェット記録装置の一例としてのインクジェットプリンターの実施形態を示す模式図である。以下、図3を用いて本発明のインクジェットプリンターの概略構成について説明するが、本発明が適用可能なインクジェットプリンターは、以下のような構成に限定されるものではなく、産業用インクジェット記録手段という観点から、当業者が容易に考えられる如何なる構成上の変更あるいは構成要素を付加することも可能である。
【0025】
図3に示すように、本発明のインクジェットプリンターPにおける被記録物であるプリント媒体は適宜な布帛51であって、ロール状積層物50として巻かれている。ロール状積層物から布帛51が搬出され、中間ローラ53、54、及びテンションローラ52を介して、粘着搬送ベルト59の表面に、印圧ローラ55によって押しつけられて固定される。固定された布帛51は、矢印で示される搬送方向に搬送されて、プラテンローラ57間の領域内において、インクジェットプリントヘッド56を有するプリンタ部によってインクが付与されてプリントされる。
【0026】
プリントされた布帛51は、布剥がし用の爪60によって、粘着搬送ベルト59から剥離され、乾燥ヒータ64により乾燥処理が施される。乾燥ヒータ64としては、温風を布帛51に対して吹付けるものや、赤外線を照射して乾燥するもの等、その他、適宜な形態のものを選択して用いることができる。乾燥後、巻取ローラ66によって巻取られる。
【0027】
布帛搬送部材Sは、搬送ローラ58と、これら搬送ローラ58間に巻回された搬送手段である無端ベルト形態の搬送ベルト59と、布帛51の被捺染面を平坦に規制する一対のプラテンローラ57とを有している。搬送ベルト59は、布剥がし用の爪60の部位において布帛51が剥離された後に、クリーニング部材61でインクが粗く拭い取られる。次いで、クリーニング部材62において、水で洗浄され、ふき取り部材63で水分が拭き取られた後に、再び布貼付ローラ55によって布帛51が粘着、固定されて、プリンタ部によって印捺されることを繰り返すことで、連続的に布帛51に絵柄等を記録する装置である。
【0028】
この時、印字された布帛は、十分な乾燥をしながら、巻き取られることが望ましい。特に20〜100mにもなる長尺の布帛に長時間印字し続ける場合などは、印字された布帛が延々と排出されてくるため、印字した布帛が床などに重なっていき場所をとる。これを巻き取らなければ作業上不安全であり、かつ予期せず汚れてしまうおそれがある。そのために印字後、巻き取る操作が必要となる。この操作時に布帛と布帛の間に紙や布、ビニール等の印字に関わらない媒体を挟んで裏写りを防止してもかまわない。もちろん、途中で切断する場合や短い布帛に対しては必ずしも巻き取る必要はない。
【0029】
上記のような構成からなるインクジェットプリンターにおいて、本発明においては、搬送装置が、粘着テープを無端ベルトまたはローラ表面に転写して形成した粘着層を設けた粘着性の無端搬送部材を有し、該粘着テープが基材を有しないことを特徴とする。
【0030】
インクジェットプリンターでは、高濃度の画像を得るためにインク打ち込み量を増やすことが一般的に行われている。しかしながら、被記録体が布帛である場合、布帛は縦糸と横糸が編まれて作製されているため、糸の存在しない空間部分が存在し、この空間部分にインクが吐出されると布帛の裏側にインクが抜けてしまう、いわゆる裏抜けが発生する。
【0031】
このため、一般的な捺染用インクジェットプリンターでは布帛の裏あてになり、インクを受け止める無端搬送部材を用いた上で、無端搬送部材をクリーニングする装置が併設されている。
【0032】
このような無端搬送部材に基材を含む粘着テープを用いた場合、粘着面の汚れは粘着層の組成をシリコーンポリマーやフッ素変性アクリル樹脂等にすることで解決可能となる。しかしながら、張り付けの際に必ず発生する図1に示したような粘着層の断面には、粘着テープの基材部分が剥き出しとなっており、図2のa)で説明した様に、この粘着テープの基材部分にインク中の有機溶剤及び色剤が浸透し、基材の変形や汚染が発生する。
【0033】
これに対し、図2のb)で示すように、基材を含まず粘着層単独で形成した粘着テープを用いることにより、断面部分に汚染や変形の元となる基材が存在せず、優れた耐久性を得ることができる。
【0034】
次いで、本発明に係る基材を含まない粘着テープの構成について説明する。
【0035】
本発明に係る基材を含まない粘着テープは、図4に示すように、粘着層2が一対の剥離体1に挟まれた状態で構成されている。
【0036】
また、本発明に係る粘着層の材質としては、シリコーン系ポリマーを用いることを特徴とし、シリコーン系ポリマーとしては付加反応硬化型シリコーンポリマーと縮重合硬化型シリコーンポリマーがある。中でも本発明では、付加反応硬化型シリコーンポリマーを用いることがより好ましい。
【0037】
また、粘着層中のシリコーンポリマーの含有量は50%以上が好ましく、より好ましくは80%以上である。
【0038】
付加反応硬化型シリコーン粘着層塗布液の組成としては、以下に挙げるものが好適に用いられる。
【0039】
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン
(B)SiH基を含有するポリオルガノシロキサン
(C)制御剤
(D)白金触媒
(E)導電性微粒子
ここで、(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリジオルガノシロキサンであり、このようなアルケニル基含有ポリジオルガノシロキサンとしては、下記一般式(1)で示されるものが例示できる。
【0040】
一般式(1)
(3-a)aSiO−(RXSiO)m−(R2SiO)n−(RXSiO)p−R(3-a)XaSiO
一般式(1)において、Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基含有の有機基である。aは0〜3の整数で1が好ましく、mは0以上であるが、a=0の場合、mは2以上であり、m及びnは、それぞれ100≦m+n≦20,000を満足する数であり、pは2以上である。
【0041】
Rは炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などが挙げられるが、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0042】
Xはアルケニル基含有の有機基で炭素数2〜10のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基等が挙げられるが、特にビニル基、ヘキセニル基などが好ましい。
【0043】
このポリジオルガノシロキサンの性状は、オイル状、生ゴム状であればよく、(A)成分の粘度は、25℃において100mPa・s以上、特に1,000mPa・s以上が好ましい。なお、上限としては、特に限定されないが、他成分との混合の容易さから、重合度が20,000以下となるように選定することが好ましい。また、(A)成分は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
(B)成分であるSiH基を含有するポリオルガノシロキサンは架橋剤であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノヒドロポリシロキサンで、直鎖状、分岐状、環状のものなどを使用することができる。
【0045】
(B)成分としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができるが、これらのものには限定されない。
【0046】
一般式(2)
b1(3-b)SiO−(HR1SiO)x−(R12SiO)y−SiR1(3-b)b
一般式(2)において、R1は炭素数1〜6の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基である。bは0〜3の整数、x、yはそれぞれ整数であり、このオルガノヒドロポリシロキサンの25℃における粘度が1〜5,000mPa・sとなる数を示す。
【0047】
このオルガノヒドロポリシロキサンの25℃における粘度は、1〜5,000mPa・s、特に5〜1000mPa・sであることが好ましく、また2種以上の混合物でもよい。
【0048】
付加反応による架橋は、(A)成分と架橋剤の(B)成分の間で生じ、硬化後の粘着層のゲル分率は架橋成分の割合によって決まる。
【0049】
本発明においては、(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.5〜20、特に0.8〜15の範囲となるように配合することが好ましい。0.5未満では架橋密度が低くなり、これにともない保持力が低くなることがある。一方で、20を越えると粘着力及びタックが低下したり、処理液の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0050】
また、耐熱保持力などの耐熱性や溶剤浸透抑制などの耐溶媒性を向上させるためには、組成物中の架橋成分の割合を増やせばよいが、過剰に増やすと粘着力の低下や膜の柔軟性が低下するなどの影響が発生する場合がある。このような点から、(A)成分と(B)成分との質量比(A:B)は、20:80〜80:20であることが好ましく、特に45:55〜70:30とすることが好ましい。(A)成分の配合割合が20より少ないと、粘着力、タックなどの粘着特性が低下することがあり、また、80より多いと十分な膜強度が得られない。
【0051】
(C)成分は付加反応制御剤であり、シリコーン粘着層塗布液を調合し、基材に塗工する際、加熱硬化の以前に処理液が増粘やゲル化をおこさないようにするために添加するものである。
【0052】
(C)成分の具体例としては、
3−メチル−1−ブチン−3−オール、
3−メチル−1−ペンチン−3−オール、
3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、
1−エチニルシクロヘキサノール、
3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、
3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、
3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、
1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、
ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、
1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、
1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン
などが挙げられる。
【0053】
(C)成分の配合量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して0〜5.0質量部の範囲であることが好ましく、特に0.05〜2.0質量部が好ましい。5.0質量部を越えると硬化性が低下することがある。
【0054】
(D)成分は白金系触媒であり、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが挙げられる。
【0055】
(D)成分の添加量は、(A)及び(B)成分の合計量に対し、白金分として1〜5,000ppm、特に5〜2,000ppmとすることが好ましい。1ppm未満では硬化性が低下し、架橋密度が低くなり、保持力が低下することがあり、5,000ppmを越えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0056】
上記の付加反応硬化型シリコーン粘着層塗布液に、帯電防止等の目的で(E)成分の導電性微粒子を添加してもよい。具体的には、銀粉、銅粉、金粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、鉄粉、はんだ粉等の金属粉、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ポリアセチレンなどの導電性樹脂、更に中空ガラスビーズ、シリカ、酸化チタン等の無機粒子やポリアクリレート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂粒子の表面を金属メッキした銀メッキシリカ、金メッキシリカ、金メッキガラスビーズ、銀メッキポリアクリレート微粒子などの導電化粒子が挙げられる。その中でも銀粉、銅粉、カーボンブラック、金メッキシリカ、銀メッキシリカが好ましい。
【0057】
(E)成分の導電性微粒子の形状は、球状、樹枝状、針状など特に制限はない。また、粒径は特に制限はないが、最大粒径が粘着剤の塗工厚みの1.5倍を越えないことが好ましく、これを越えると粘着剤塗工表面に導電性微粒子の突出が大きくなりすぎて、この部分を起点に被着体からの浮きなどが発生しやすくなる。
【0058】
本発明において、導電性シリコーン粘着層塗布液に使用する導電性粒子が銀粉の場合、平均粒径は0.1〜150μm、好ましくは0.15〜80μmである。平均粒径が0.1μm未満の場合は、導電性が極端に低下するため好ましくなく、150μmを超える場合には、良好な接着性が得られないために好ましくない。
【0059】
(E)成分の添加量は、(A)及び(B)成分の合計/(E)成分の比が97/3〜50/50とすることが好ましい。(E)成分の配合割合が97/3より少ないと十分な導電性が得られない。50/50より多いと粘着力が小さくなるなど粘着特性が低下することがある。
【0060】
本発明に係るシリコーン粘着層塗布液には、上記各成分以外に任意成分を添加することができる。例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のポリオルガノシロキサン、塗工の際の粘度を下げるためのトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、またはこれらの混合溶剤、酸化防止剤、染料、顔料などが挙げられる。なお、通常、組成物の粘度を下げ、塗工を容易にするために溶剤が使用される。
【0061】
上記のように配合されたシリコーン粘着剤組成物を、種々の基材に塗工し、所定の条件にて硬化させることにより、粘着層を得ることができる。
【0062】
本発明に係るシリコーン粘着剤の形態としては、一般的には、溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型等が使用され、一般的には溶剤型、エマルジョン型のものが利用される。また、必要に応じて他の助剤を添加混合し、塗工液として調製することができる。他の助剤としては、減粘剤、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、防腐防黴、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤等を挙げることができる。
【0063】
次に、粘着剤が塗布され、狭持される剥離体である剥離フィルムもしくは剥離紙に関して説明する。
【0064】
ここで剥離フィルム、もしくは剥離紙は、粘着層を形成する際の基材であり、同時に粘着剤を保存する際に塵や埃などの異物から粘着層を保護する基材でもある。剥離フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等の各種樹脂からなるフィルムを基材とし、この基材の粘着層との片面もしくは両面に、離型処理(シリコーン処理等)が施されたものなどが挙げられる。剥離フィルムの具体例も、基材が紙となった以外は剥離フィルムと同様である。
【0065】
剥離フィルム及び剥離紙を製造するための、離型処理を施すための塗布液の具体例を挙げると、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のDEHESIVEシリーズのうち、無溶剤型の636、919、920、921、924、エマルジョン型の929、430、440、39005、39006、溶剤型の940、942、952、953、811等が、GE東芝シリコーン株式会社製の剥離紙用シリコーン:TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9315、XS56−A2775、XS56−A2982、TPR6600、TPR6605、TPR6604、TPR6705、TPR6722、TPR6721、TPR6702、XS56−B3884、XS56−A8012、XS56−B2654、TPR6700 、TPR6701、TPR6707、TPR6710、TPR6712、XS56−A3969、XS56−A3075、YSR3022等が挙げられる。
【0066】
剥離フィルム及び剥離紙は、一般的に所望の粘着剤に合わせて離型処理剤を選択するので、一般的な市販品という物はあまりないが、本発明に用いることができる剥離フィルム並びに剥離紙の具体例を挙げると、剥離フィルムとしては、帝人デュポンフィルム株式会社製 A50ライナー、剥離紙としては、株式会社 巴川製紙製 レリーズ等がある。
【0067】
剥離紙上への粘着層の塗工は、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、コンマコーター等により行われ、必要によりスムージングや、乾燥、加熱、紫外線等電子線露光工程等を経て、粘着層が形成される。
【0068】
これら粘着層の厚さは、粘着剤の種類にもよるが、通常は3〜100μm、好ましくは5〜60μm程度である。
【0069】
また、本発明に適用可能な基材無しの両面粘着テープの一般的な市販品として例を挙げると、Adhesives Research社製:ARclear 8932、ARclad 7876、株式会社 寺岡製作所製:No.7470等が挙げられる。
【0070】
次に、基材無し粘着テープを、無端搬送部材に重層で貼り付け、粘着無端搬送部材を作成する方法を説明する。
【0071】
はじめに、例えば、無端搬送部材の無端ベルト上に、片方の面の剥離体を剥がした基材無し粘着テープの粘着面を貼り付ける。次いで、もう一方の面の剥離体を剥がし、粘着面を露出させる。
【0072】
本発明に利用できる無端搬送部材としては、搬送ローラー及び無端ベルトが挙げられるが、本発明では、無端搬送部材が無端ベルトであって、無端ベルトの表面がフッ素樹脂で被覆されていることを特徴の一つとする。
【0073】
本発明に適用可能な搬送ローラーとしては、円柱状、楕円中状、多角形状等、回転搬送するのに差し支えなければいかなる形でも良いが、表面がフッ素樹脂で被覆されていることが、本発明の目的効果を発揮させる観点から好ましい。
【0074】
また、本発明に利用される無端ベルト基材としては、フィルム状の単膜となっているものと、フィルム中もしくは外側に芯材を設置したものがある。フィルムを形成する素材としては、本発明では、特にインクによる汚染防止の観点から、フッ素樹脂を適用することを特徴とする。
【0075】
芯材としては金属、合成繊維等が挙げられ、合成繊維としてはガラス繊維、アラミド繊維等が挙げられる。本発明では、基材柔軟性と耐久性の観点でガラス繊維が望ましく、更に搬送時の搬送ローラとの摩擦を防ぐ目的でフッ素樹脂で被覆することが望ましい。フッ素樹脂による被覆は、フッ素樹脂分散液中にガラス繊維ベルトを浸漬し、引き上げた後に400℃で15分間加熱すること等でガラス繊維上にフッ素樹脂を溶着させることで達成される。
【0076】
本発明で好ましく用いられるフッ素樹脂は、公知のフッ素樹脂が広く利用できる。具体的には、テフロン(登録商標)(Du Pont社)の名で知られる、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー)、また、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー)、FVDF(ポリフッ化ビニデリン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチン)、TFE/PDD(テトラフルオロエチレン−パーフルオロジイオキソールコポリマー)などがあげられる。中でも、PTFEを用いることが好ましい。
【0077】
次に、本発明のインクジェットプリンターを適用する被記録体、インク及び代表例としてインクジェット捺染プロセスについて説明する。
【0078】
本発明のインクジェットプリンターで画像印字する際に用いる被記録物としては、特に制限はないが、本発明の効果をいかんなく発揮できる観点から布帛を用いることが好ましい。
【0079】
本発明で好ましく用いることのできる布帛の素材としては、綿、麻、羊毛、絹、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、及びこれらの混紡が挙げられる。
【0080】
布帛は、通常、捺染物作製者が目的とする布の風合いが得られる様に、糸の種類、糸の太さ、織り方、混紡比率等を適宜選択して作製するケースが多く、従って、一般的な製品はないが、色染社の試験用繊維から例を挙げると、綿では金巾、ブロード、ツイル、サテン、ニット スムース、ポンチローマ、ネル、帆布等が、麻では(ラミー)ブロード等が、羊毛ではモスリン、トロピカル、サージ等が、絹では羽二重、精華パレス等が、レーヨンではタフタ、スフモスリン、フジエット等が、キュプラはタフタ等が、ポリノジックはブロード等が、テンセルでは平織等が、リヨセルでは平織等が、ジアセテートではタフタ等が、ポリエステルではタフタ、トロピカル、アムンゼン、紡績糸織物 テトレックス、ジョーゼット、クレープ・デシン、紗、ジャージー、ダブルピケ、カーシート等が、新合繊ではトレシー、サミア等が、カチオン可染型ポリエステルではニットスムース等が、ナイロン6ではタフタ、紗、ジャージー等が、ナイロン66ではジャージー等が、アクリルではモスリン、ジャージー等が、ビニロンではブロード等が、混紡ではポリエステル65/綿35ブロード、ポリエステル65/綿35ツイル、ポリエステル50/綿50ニットスムース、ポリエステル65/レーヨン35平織等が、交編ではポリウレタン20/ポリエステル80ニット等が、マルチファイバークロスではAATCC Style 1,10、SDC等が挙げられる。
【0081】
本発明のインクジェットプリンターに適用する場合には、特に、ニットのような伸縮性の布をベルト上に精密に貼り付ける際に、その効果が顕著に発現する。その中でも、縦目及び横目の破断伸度が、いずれも5%以上である布帛を用いる場合に効果的である。一般に、破断伸度が5%以上のような良く伸びる布は、布帛製造時にしわが発生しやすく、精密に貼り付ける際に良く伸ばして貼り付けるので、繊維間の隙間ができ、裏抜けが発生しやすいが、本発明で規定する粘着層を有する搬送部材を適用することにより、上記の様な特性を備えた布帛においても、安定して搬送することが可能となる。
【0082】
上記の様な伸度を有する布帛としては、綿ではニットスムース、ポンチローマ、ポリエステルではジャージー、ダブルピケ、カチオン可染型ポリエステルではニットスムース等が、ナイロン6ではジャージー等が、ナイロン66ではジャージー等が、アクリルではジャージー等が、混紡ではポリエステル50/綿50ニットスムース、交編ではポリウレタン20/ポリエステル80等が挙げられる。
【0083】
本発明のインクジェットプリンターが、前述の伸びる布帛に対し好適に用いられる理由として以下の様に考えられる。
【0084】
インクジェット画像記録では、インクの打ち込み量が画像濃度に直接影響を与える。従って、高濃度で高品位のプリント物を得るためにはインク打ち込み量を増やす必要があるが、伸びない布帛の上にインクを打ち込むと、布帛中にしみ込むインクの速度が、インクの付与される速度に追いつかず、インク液滴同士が合一し、画像に滲みが生じる。また、そればかりか、細線を描いたときにはフェザリングと呼ばれる繊維に沿った画像滲みが発生し、所望の細線が得られないと言う問題があった。このため、これまでは高濃度のプリントでは滲みは避けられない物であった。
【0085】
しかしながら、本発明では、破断伸度が5%以上の布帛をあらかじめ伸ばして張ることで、布帛の網目(空間部分)を拡げることで、インク吸収速度を向上させ、滲みを大幅に低減する事ができた。これにより、これまでよりも高濃度で、かつ高品位のプリント物を得らることができた。
【0086】
本発明に係るインクジェット捺染方法の場合、均一な染色物を得るために、水溶性高分子類を布帛に前処理する前に、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留分(のり剤等)、よごれなどを洗浄しておくことが望ましい。洗浄に用いられる洗浄剤としては水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムといったアルカリ剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤といった界面活性剤、酵素等が用いられる。
【0087】
本発明に係るインクジェット捺染方法においては、インクジェット方式により前処理液を布帛に付与し(前処理工程)、その後、分散染料あるいは顔料で染色することが可能な繊維が含有されている布帛上に、インクを用いてインクジェット方式で画像を形成した後(インク付与工程)、インクが付与されている布帛を熱処理し(発色工程)、更に熱処理された布帛を洗浄すること(洗浄工程)によって布帛への捺染が完了し、捺染物が得られる。
【0088】
本発明に係る前処理工程は、にじみ防止効果付与を目的とし、前処理剤をパッド法、コーティング法、スプレー法などで付与せしめるのが好ましい。
【0089】
前処理方法としては、水溶性高分子類を布帛に前処理するなどの公知の方法から繊維素材やインクに適した方法を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。例えば、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、水溶性高分子、界面活性剤及び撥水剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの物質が0.2〜50質量%付与された布帛に対して使用すれば、高度なにじみ防止が可能であり、高精細な画像を布帛にプリントすることができ好ましい。
【0090】
前処理剤として使用される具体的な水溶性高分子の例をあげる。天然水溶性高分子としては、トウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴムなどの多糖類、ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質、合成水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系ポリマなどを用いることができる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的には、アニオン系の界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、ナフタレン誘導体のスルホン酸塩等;カチオン系の界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等;両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体等;ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等;が挙げられる。また、撥水剤としては、例えば、シリコン、フッ素系及びワックス系のものが挙げられる。これらの、あらかじめ布帛に付与される水溶性高分子や界面活性剤は、インクジェットプリントをし、高温で発色させる際に、タール化などによるよごれの原因とならないために、高温環境に対して安定であることが好ましい。また、これらの、あらかじめ布帛に付与される水溶性高分子や界面活性剤は、インクジェットプリントをし、高温で発色させた後の洗浄処理で、布帛から取り除きやすいものが好ましい。
【0091】
また、後述の高温蒸熱法で染色する際に用いる捺染用インクジェットインクまたは捺染プリントに使用する布帛には、染着助剤が含まれていることが好ましい。
【0092】
染着助剤は、捺染布を蒸熱する際に、布状に凝縮した水と共融混合物を作り、再蒸発する水分の量を抑え、昇温時間を短縮する作用がある。更に、この共融混合物は、繊維上の染料を溶解し染料の繊維への拡散速度を助長する作用がある。染着助剤としては尿素が挙げられる。この染着助剤は事前に布帛に付与しておいても良いし、前記前処理液に含有させておいても良い。
【0093】
前処理液においては、液体中に含まれる溶存気体が、その印刷物の解像度や鮮明さを損なったり、微細な気泡発生を引き起こす要因となる。液体中から溶存気体を脱気する方法としては、大きく分けて、煮沸や減圧等の物理的方法により脱気する方法と、吸収剤を液体中に混入させる化学的方法とがある。本発明においては、いかなる手段にて脱気を行うことは可能である。特に、気体透過性のある中空糸膜内に液体を通液し、中空糸膜の外表面側を減圧することにより、液体中の溶存気体を透過、除去する方法は、液体の物性に悪影響を与えずに効率よく液体中の溶存気体を除去することができ、好ましい。
【0094】
次いで、本発明に係るインクジェット捺染方法に用いられるインクについて説明する。
【0095】
本発明におけるインクは、少なくとも色材、水溶性有機溶媒、水を含む。色材としては、例えば、分散染料、反応性染料、酸性染料、直接染料、顔料、油溶性染料などを挙げることができるが、その中でも、分散染料を用いることが好ましい。
【0096】
以下に、本発明に好まし用いられる色材の具体的化合物を示すが、本発明はこれら例示した化合物に限定されるものではない。
【0097】
本発明に好ましく用いられる分散染料としては、
C.I.Disperse Yellow;3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、
C.I.Disperse Orange;1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142、
C.I.Disperse Red;1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、
C.I.Disperse Violet;1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、
C.I.Disperse Green;9、
C.I.Disperse Brown;1、2、4、9、13、19、
C.I.Disperse Blue;3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、167:1、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、
C.I.Disperse Black 1、3、10、24、
等が挙げられる。
【0098】
分散染料を用いたインクジェット捺染方法においては、高温処理で発色させる場合は、機械や布地の白場に染料が昇華することで汚染の原因とならないために、昇華堅牢度のよい分散染料を選定することが好ましい。
【0099】
本発明に好ましく用いられる反応性染料としては、
C.I.Reactive Yellow;2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176、
C.I.Reactive Orange;1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107、
C.I.Reactive Red;2、3、3:1、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、226、228、235、
C.I.Reactive Violet;1、2、4、5、6、22、23、33、36、38、
C.I.Reactive Blue;2、3、4、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236、
C.I.Reactive Green;8、12、15、19、21、
C.I.Reactive Brown;2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46、
C.I.Reactive Black 5、8、13、14、31、34、39、
等が挙げられる。
【0100】
本発明にに好ましく用いられる酸性染料としては、
C.I.Acid Yellow;1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、40:1、42、44、49、59、59:1、61、65、67、72、73、79、99、104、110、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、219:1、220、230、232、235、241、242、246、
C.I.Acid Orange;3、7、8、10、19、22、24、51、51S、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
C.I.Acid Red;1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、97:1、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、
C.I.Acid Violet;17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
C.I.Acid Blue;1、7、9、15、23、25、40、61:1、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、127:1、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、258、260、264、277:1、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
C.I.Acid Green;9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
C.I.Acid Brown;2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
C.I.Acid Black;1、2、3、24、24:1、26、31、50、52、52:1、58、60、63、63S、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222、
本発明に好ましく用いられる直接染料としては、
C.I.Direct Yellow;8、9、10、11、12、22、27、28、39、44、50、58、86、87、98、105、106、130、137、142、147、153、
C.I.Direct Orange;6、26、27、34、39、40、46、102、105、107、118、
C.I.Direct Red;2、4、9、23、24、31、54、62、69、79、80、81、83、84、89、95、212、224、225、226、227、239、242、243、254、
C.I.Direct Violet;9、35、51、66、94、95、
C.I.Direct Blue;1、15、71、76、77、78、80、86、87、90、98、106、108、160、168、189、192、193、199、200、201、202、203、218、225、229、237、244、248、251、270、273、274、290、291、
C.I.Direct Green;26、28、59、80、85、
C.I.Direct Brown;44、44:1、106、115、195、209、210、212:1、222、223、
C.I.Direct Black;17、19、22、32、51、62、108、112、113、117、118、132、146、154、159、169、
本発明に好ましく用いられる顔料としては、
カーボンブラック、
C.I.Pigment Yellow;1、3、12、13、14、16、17、43、55、74、81、83、109、110、120、138、150、
C.I.Pigment Orange;13、16、34、43、
C.I.Pigment Red;2、5、8、12、17、22、23、41、112、114、122、123、146、148、149、150、166、170、220、238、245、258、
C.I.Pigment Violet;19、23、
C.I.Pigment Blue;15、15:1、15:3、15:4、15:5、15:6、29、
C.I.Pigment Brown;22、
C.I.Pigment Black;1、7、
C.I.Pigment White 6、
等が挙げられる。
【0101】
本発明において、インク中に含有される色材の含有量としては0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜13質量%がより好ましい。
【0102】
本発明に係るインクにおいて用いられる水溶性有機溶媒としては、例えば、前記前処理液に用いることのできる水溶性有機溶媒と同様のものを挙げることができる。水溶性有機溶媒量としては、全インク質量に対して10〜60質量%が好ましい。
【0103】
本発明に係るインクにおいて用いられる界面活性剤としては、例えば、前記前処理液に用いることのできる界面活性剤と同様のものを挙げることができる。
【0104】
これらの界面活性剤を使用する場合、単独又は2種類以上を混合して用いることができ、インク全質量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することにより、インクの表面張力を任意に調整することができ好ましい。
【0105】
本発明に係るインクにおいては、インク粘度や染料を安定に保ち発色をよくするためには、インク中に無機塩を添加することができる。無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。本発明を実施する場合、これらに限定されるものではない。
【0106】
本発明に係るインクにおいて、インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加することができる。防腐剤、防黴剤としては、例えば、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などが挙げられる。
【0107】
上記のインクを付与した布帛は、次いで、発色工程での処理が施される。
【0108】
発色工程とは、プリント後布帛表面に付着したのみで、十分布帛に吸着・固着されていないインク中の染料を布帛に吸着・固着させることによりそのインク本来の色相を発現させる工程である。その方法としては、蒸気によるスチーミング、乾熱によるベーキング、サーモゾル、過熱蒸気によるHTスチーマー、加圧蒸気によるHPスチーマーなどが利用される。それらはプリントする素材、インクなどにより適宜選択される。また、印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても用途に合わせて乾燥・発色処理すればよく、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
【0109】
本発明のインクジェット捺染方法において、分散染料を用いた染色の際は、高温で発色させる方法だけではなく、キャリヤーを用いてもよい。キャリヤーとして用いられる化合物は、染色促進が大きい、使用法が簡便、安定、人体や環境に対して負荷が少ない、繊維からの除去が簡単、染色堅牢度に影響しないといった特徴を持つものが好ましい。キャリヤーの例としてはo−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、メチルナフタリン、安息香酸アルキル、サリチル酸アルキル、クロロベンゼン、ジフェニルといったフェノール類、エーテル類、有機酸類、炭化水素類などを挙げることができる。これらは、ポリエステルのように100℃前後の温度での染色が難しい難染性繊維の膨潤と可塑化を促進し、分散染料を繊維内に入りやすくする。キャリヤーは、インクジェットプリントに使用する布帛の繊維にあらかじめ吸着させておいてもよいし、インクジェットインク中に含まれていてもよい。
【0110】
加熱処理後は、洗浄工程が必要である。なぜなら染着に関与しなかった染料が残留することで、色の安定性が悪くなり堅牢度が低下するからである。また、布帛に施した前処理物を除去することも必要である。そのままにしておくと堅牢性の低下ばかりでなく布帛が変色する。そのため除去対象物や目的に応じた洗浄が必須である。その方法は、プリントする素材、インクにより選択され、例えば、ポリエステルの場合一般的には、苛性ソーダ、界面活性剤、ハイドロサルファイトの混合液により処理するものである。その方法は、通常オープンソーパーなどの連続型や液流染色機などによるバッチ型で実施されるもので、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
【0111】
洗浄後は、乾燥が必要である。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0113】
《粘着搬送ベルトの作製》
〔粘着搬送ベルト1の作製〕
中興化成工業社製のテフロン(登録商標)製の無端ベルト BGF−500−10−2の搬送面に、Adhesives Research社製の基材無しシリコーン両面粘着テープ ARclear 8932を図5に示す形態で貼り付けて、粘着搬送ベルト1を作製した。
【0114】
〔粘着搬送ベルト2の作製〕
帝人デュポンフィルム株式会社製のA50ライナー上に、ブレードコーターを用いて、共栄社化学株式会社製のUV硬化型ウレタン系粘着剤 ライトタック PSA−705を50μm厚で塗布し、その後、松下電工株式会社製の紫外線露光装置 パナキュア NUX323を用いて、表面側からエネルギー量として320mJ/cm2の紫外線を照射し、基材無しウレタン粘着テープ2を作製した。
【0115】
次いで、上記粘着搬送ベルト1の作製において、粘着テープを、上記基材無しウレタン粘着テープ2に変更した以外は同様にして、粘着搬送ベルト2を作製した。
【0116】
〔粘着搬送ベルト3の作製〕
上記粘着搬送ベルト1の作製において、粘着テープを、株式会社 寺岡製作所社社製の基材ありシリコーン両面粘着テープNo.7082に変更した以外は同様にして、粘着搬送ベルト3を作製した。
【0117】
〔粘着搬送ベルト4の作製〕
東洋紡株式会社製のポリエステルフィルム E−5107 の片面に、ブレードコーターを用いて、共栄社化学株式会社製のUV硬化型ウレタン系粘着剤 ライトタック PSA−705を50μm厚で塗布し、その後、松下電工株式会社製の紫外線露光装置 パナキュア NUX323を用いて、表面側からエネルギー量として320mJ/cm2の紫外線を照射した。得られた粘着層面に、帝人デュポンフィルム株式会社製のA50ライナーを張り合わせた。次いで、同ポリエステルフィルムの裏面に、表面と同様にして粘着層を設け、基材ありウレタン粘着テープ4を作製した。
【0118】
次いで、上記粘着搬送ベルト1の作製において、粘着テープを、上記基材ありウレタン粘着テープ4に変更した以外は同様にして、粘着搬送ベルト4を作製した。
【0119】
〔粘着搬送ベルト5の作製〕
上記粘着搬送ベルト1の作製において、前記テフロン(登録商標)製無端ベルトの代わりに、日本ジークリング株式会社製の無端ベルト E10/M V1/V10 品番 900066を用いた以外は同様にして、粘着搬送ベルト5を作製した。
【0120】
〔粘着搬送ベルト6の作製〕
上記粘着搬送ベルト1の作製において、前記テフロン(登録商標)製無端ベルトの代わりに、日本ジークリング株式会社製の無端ベルト E12/2 U0/U0 品番 900040を用いた以外は同様にして、粘着搬送ベルト6を作製した。
【0121】
〔粘着搬送ベルト7の作製〕
上記粘着搬送ベルト1の作製において、前記テフロン(登録商標)製無端ベルトの代わりに、ハバジット日本株式会社製の無端ベルト S−10/30を用いた以外は同様にして、粘着搬送ベルト7を作製した。
【0122】
《インクの調製》
〔イエローインク1の調製〕
(イエロー染料分散液の調製)
分散染料:C.I.Disperse Yellow 30 20%
エチレングリコール 18%
グリセリン 21%
リグニンスルホン酸ナトリウム 12%
イオン交換水 29%
上記各添加剤を順次添加、混合した後、サンドグラインダーを用いて分散を行って、イエロー染料分散液を調製した。
【0123】
(イエローインクの調製)
イエロー染料分散液 40%
エチレングリコール 17%
グリセリン 19%
燐酸一水素二カリウム 2%
燐酸二水素カリウム 2%
防腐剤(塩化イソチアゾロン) 2%
イオン交換水 18%
上記の各添加剤を順次混合、攪拌した後、3μmメンブランフェイルターでろ過し、次いで中空糸膜を用いた脱気処理を行ってイエローインク1を調製した。
【0124】
〔マゼンタインク1、シアンインク1及びブラックインク1の調製〕
上記イエローインクの調製において、染料をC.I.Disperse Red 5、C.I.Disperse Blue 330、C.I.Disperse Black 1にそれぞれ変更した以外は同様にして、マゼンタインク1、シアンインク1及びブラックインク1を調製した。
【0125】
《布帛の準備》
下記の条件で前処理を施した布帛1〜3を準備した。
【0126】
布帛1:破断伸度が10%の株式会社 色染社製の試験用繊維 ジャージー
布帛2:破断伸度が5%の株式会社 色染社製の試験用繊維 ダブルピケ
布帛3:破断伸度が4%の、株式会社 色染社製の試験用繊維 タフタ
〔前処理〕
塩化カルシウム二水和物 10%
エチレングリコール 10%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5%
ペレックスOT−P(花王社製、界面活性剤) 必要量
イオン交換水 総量を100部に仕上げるのに要する量
以上の各添加剤を順次混合、攪拌した後、1μmフィルターでろ過して前処理液1を調製した。なお、ペレックスOT−Pは、前処理液の表面張力が33mN/mとなるように添加量を調整した。
【0127】
次いで、前処理液にそれぞれ布帛を浸漬した後、マングルで絞り率が80%となる条件で絞った後、乾燥させて前処理済の布帛1〜3を作製した。
【0128】
《布帛への画像記録》
〔画像印字〕
駆動周波数20kHz、ノズル径30μmであるピエゾヘッドを4個備え、各色のインク液滴速度を6m/sとなるように調整したヘッドユニットを取り付けた図3に記載のインクジェットプリンターを用い、布帛搬送部材Sとして上記作製した各粘着搬送ベルトを、表1に記載の組み合わせで装着し、表1に記載の幅1.5mの布帛50m分をロール状積層物50として装着し、上記調製したイエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1及びブラックインク1を用いて、表1に記載のインク打ち込み量(%)となる条件でベタ画像を形成した。ここでいうインク打ち込み量100%とは、1色のインクを用いてベタ画像を形成する際に要するインク量を意味しており、例えば、インク打ち込み量400%とは、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1及びブラックインク1の全てを用いてそれぞれのベタ画像を積層して形成したことを意味する。
【0129】
次いで、上記条件で50mの布帛に印字を行った後、新しい布帛1〜3を10m分セットし、1cm角で太さ1mmの格子画像を幅1.5m×長さ10m分印画した。
【0130】
〔発色処理及び洗浄処理〕
次いで、印画済の布帛を温度180℃で8分間スチーミング処理を行い、水洗後、40℃にてソーピング処理を行い、更に水洗を行った後乾燥して、記録物1〜24を作成した。
【0131】
《記録画像の評価》
以上のようにして作成した各記録物および作成に用いた布帛搬送部材について、下記の評価を行った。
【0132】
〔布帛搬送部材の汚れ耐性の評価〕
各記録物の作成に用いた各布帛搬送部材について、図5に示す表面部及び粘着テープの貼り合わせ部(含む断面部)について、汚れの有無及び基材の腐食状態について目視観察を行い、下記の基準に従って布帛搬送部材の汚れ耐性の評価を行った。
【0133】
◎:粘着テープ表面及び張り合わせ部分に汚れの発生は全くなく、断面部も正常である
○:粘着テープ表面がわずかにインクに染まっているが、断面部は正常である
△:粘着テープ表面は汚れていないが、張り合わせ部分及び断面部が変形し、そこにインクが入ってしまっている
×:粘着テープ表面がインクに染色し、また張り合わせ部分及び断面部に強い変形が認められ、そこにインクが侵入している
〔格子再現性の評価〕
張り合わせ部分に印画した100個の格子を無作為に抽出し、寸法の変形状態を目視観察し、下記の基準に従って格子再現性を評価した。
【0134】
○:100個全ての格子で乱れの発生は認められない
△:100個中、1〜3個の格子で乱れが認められる
×:100個中、4個の格子で明らかな格子の乱れが認められる
〔裏面汚れ耐性の評価〕
上記格子画像の印画した布帛裏面の汚れ状態を目視観察し、未画像印字部における裏面汚れ耐性を評価した。
【0135】
◎:裏面汚れが全く発生していない
○:裏面に汚れが僅かに認められるが、実用上は全く問題がない
△:粘着搬送ベルト上のインクの布帛裏面への弱い転写が認められるが、実用上許容範囲にある
×:粘着搬送ベルト上のインクの布帛裏面への強い転写が認められ、実用上問題となる品質である
〔画像滲み耐性の評価〕
上記方法に従って作成した太さ1mmの格子画像について、その格子幅を測定し、下記の基準に従って、画像滲み耐性を評価した。
【0136】
◎:格子の線幅の増大が全く認められない
○:格子の線幅がやや広がっているが、実用上許容範囲にある
△:格子の滲みが発生し、線幅が明らかに広がっている
以上により得られた各評価結果を、表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
表1に記載の結果より明らかなように、外周がフッ素樹脂で被覆された無端ベルト表面に、シリコーンポリマーを含有する基材無しの粘着テープを設けた本発明の粘着搬送ベルトを用いて作成した記録物は、比較例に対し、格子再現性、裏面汚れ耐性に優れていることが分かる。また、本発明の粘着搬送ベルトでは、搬送部材の汚れ耐性が良好であることが分かる。また、破断伸度が5%以上の布帛を用いることにより、画像滲み耐性がより一層向上していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】無端搬送ベルト上に両面粘着テープを付与した状態の一例を示す模式図である。
【図2】搬送ベルトに両面粘着テープへの付与方法とインクによる影響の一例を示す模式図である。
【図3】本発明における産業用インクジェット記録装置の一例としてのインクジェットプリンターの実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明に係る基材なし両面粘着テープの構成の一例を示す模式図である。
【図5】搬送ベルトへの両面粘着テープの付与パターンの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0140】
B 搬送ベルト
T 粘着テープ
TS 粘着テープTの貼り付け開始部
TE 粘着テープTの貼り付け終点
I インク
P インクジェットプリンター
S 布帛搬送部材
1、31 剥離体
2、32 粘着層
3 基材
3′ 基材の変形
50 ロール状積層物
51 布帛
52 テンションローラ
53、54 中間ローラ
55 印圧ローラ
56 インクジェットプリントヘッド
57 プラテンローラ
58 搬送ローラ
59 粘着搬送ベルト
60 布剥がし用の爪
61、62 クリーニング部材
63 ふき取り部材
64 乾燥ヒータ
65 中間ローラ
66 巻き取りローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録物を保持し搬送する搬送装置と、該被記録物に対してインクを出射するインクジェットプリントヘッドとを有し、該搬送装置は、外周面がフッ素系樹脂で覆われた無端ベルトまたはローラを有し、該無端ベルトまたはローラの外周面上に粘着テープを転写して形成された粘着層を有する無端搬送部材を有し、該粘着テープは基材を有さず、かつ該粘着層がシリコーンポリマーを含有することを特徴とするインクジェットプリンター。
【請求項2】
前記シリコーンポリマーが、付加反応硬化型シリコーンポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
【請求項3】
前記付加反応硬化型シリコーンポリマーが、少なくとも(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、(B)SiH基を含有するポリオルガノシロキサンとを含み、該(A)の成分と(B)の成分との質量比〔(A):(B)〕が、20:80〜80:20であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンター。
【請求項4】
前記付加反応硬化型シリコーンポリマーが、少なくとも(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、(B)SiH基を含有するポリオルガノシロキサンとを含み、該(A)の成分中のアルケニル基に対する(B)の成分中のSiH基のモル比が、0.5〜20であることを特徴とする請求項2または3に記載のインクジェットプリンター。
【請求項5】
前記被記録物が、布帛であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンター。
【請求項6】
前記布帛の縦目及び横目の破断伸度が、いずれも5%以上であることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットプリンター。
【請求項7】
前記インクが、色剤として分散染料を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットプリンター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットプリンターを用いて作製したことを特徴とする記録物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−199498(P2006−199498A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348924(P2005−348924)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】