説明

インクジェット塗布装置及び塗布方法

【課題】 シャッタとの接触によるノズルの開口端面の破損又は磨耗劣化を回避しつつ、ノズルからのインクの吐出状態を常に良好に保ち得るインクジェット塗布装置を提供する。
【解決手段】 液滴を噴射するための開口であるノズル吐出口50を有するインクジェットヘッド42と、ノズル吐出口50近傍において、前記ノズル吐出口を覆うよう進退可能に設けられるシャッタ51と、ノズル吐出口50を覆う位置と該覆う位置から退避した位置との間においてシャッタ51をノズル吐出口50の開口端面に対して間隙を保って移動させる支持機構49、52、53とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクの液滴を吐出して塗布対象にインクを塗布するインクジェット塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ等においては、その表示装置として液晶ディスプレイが用いられている。この液晶ディスプレイの製造工程においては、ノズルから微小な液滴を吐出するようになされたいわゆるインクジェット塗布装置を用いて、透明基板上の各ドットにR(赤)、G(緑)、B(青)の各色のインクを順次塗布することにより、これら各色のドットが順次配列されてなるカラーフィルタを作成するようになされている。
【0003】
また近年、液晶ディスプレイに代わる表示装置として、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイが用いられるようになっている。この有機ELディスプレイの製造工程においては、発光高分子材料を有機溶媒に溶解させてなるR、G、Bの各色のインクをインクジェット塗布装置によりそれぞれ透明基板上に塗布することにより、R、G、Bの各色に対応したドットを順次配列させてなる発光領域を透明基板上に形成するようになされている。
【0004】
ところでこれら表示装置の製造工程においては、インクを吐出するためのノズルを有するインクジェットヘッドを塗布対象である基板の塗布開始位置に対向する位置まで移動させた後、インクジェットヘッド及び基板の相対位置を移動させながら、所定の塗布位置でノズルからインクを順次吐出させるようになされている。従って塗布対象である基板を交換する間、塗布開始に際してインクジェットヘッドをインクの塗布開始位置まで移動させる間及び基板を交換する際の退避位置までインクジェットヘッドを移動させる間等においてはインクの吐出を休止することになり、塗布対象である基板の大型化に伴ってこの休止時間が長くなる。
【0005】
また例えばR、G、Bの各色ごと等、複数のインクジェットヘッドを有するインクジェット塗布装置においては、1つのインクジェットヘッドにより塗布を行っている間は、他のインクジェットヘッドからのインクの吐出を休止させる場合もあり、塗布面積が大きくなるとこの休止時間が長くなる。
【0006】
このようにインクの塗布を休止している時間が長くなると、インクジェットヘッドのノズルのインクが乾燥して、この乾燥したインクによりノズルが目詰まりを起こし、この結果、必要な量の液滴を吐出することが困難になり、またノズルが完全に詰まった場合にはインクの吐出が困難になる場合があった。
【0007】
この課題を解決するための一つの方策として、乾燥時間の長いインクを用いる方法が考えられている。この方法によると、ノズルのインクの乾燥を遅らせることができ、吐出の休止時間が長くなっても吐出不良の発生を防止し得ると考えられる。
【0008】
しかしながら乾燥時間を長くすると、基板上に塗布されたインクが乾燥する際の仕上がり精度が劣化する場合があり、また乾燥時間が長くなる分、塗布工程に要する時間が長くなって表示装置の製造工程全体として製造効率が低下することになり、解決策としては未だ不十分であった。
【0009】
また例えば、印字終了後にキャップによりノズルをキャップするインクジェットプリンタが提案されている(特許文献1参照)。このインクジェットプリンタによれば、キャップによりノズル開口部を密閉することでノズル内のインクの乾燥を抑制し得ると考えられる。
【特許文献1】特開平7−76092号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1の方法によると、キャップがノズル吐出口の開口端面に接触する構成となっており、キャップの開閉時にノズル吐出口の開口端面を破損させる問題があり、またノズル吐出口の開口端面に施された表面処理層がキャップの開閉動作時におけるキャップとの接触により磨耗劣化する問題があった。またさらにキャップを閉じた際に、ノズル吐出口に残ったインクがキャップに付着し、この付着したインクが乾燥してキャップの開閉動作を阻害し、またキャップに付着したインクがノズル吐出口に付着してノズルが目詰まりを起こす問題があった。
【0011】
本発明は、このような技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、シャッタとの接触によるノズル吐出口の開口端面の破損又は磨耗劣化を回避しつつ、ノズルからのインクの吐出状態を常に良好に保ち得るインクジェット塗布装置及び塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、インクジェット塗布装置において、液滴を噴射するための開口であるノズル吐出口を有するインクジェットヘッドと、ノズル吐出口近傍において、ノズル吐出口を覆うよう進退可能に設けられるシャッタと、ノズル吐出口を覆う位置と該覆う位置から退避した位置との間においてシャッタをノズル吐出口の開口端面に対して間隙を保って移動させる支持機構とを備えることである。
【0013】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、第1の特徴に係るインクジェット塗布装置において、支持機構により支持されるシャッタのノズル吐出口を覆う位置とノズル吐出口の開口端面との距離は、ノズル吐出口の溶媒雰囲気を維持する最大限の大きさ以下に設定されていることである。
【0014】
本発明の実施の形態に係る第3の特徴は、塗布方法において、液滴を噴射するための開口であるノズル吐出口の近傍において、ノズル吐出口を覆うよう進退可能に設けられるシャッタを、ノズル吐出口を覆う位置から退避した位置に移動させ、ノズル吐出口から液滴を噴射させて塗布対象に前記液滴を塗布する塗布工程と、液滴の噴射を休止すると共に、ノズル吐出口の開口端面との間隙を保ってノズル吐出口を覆う位置にシャッタを移動させる塗布休止工程とを有することである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シャッタとの接触によるノズルの開口端面の破損又は磨耗劣化を回避しつつ、ノズルのインクの乾燥を抑制することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット塗布装置1は、架台2の上面に設けられたインク塗布ボックス3と、このインク塗布ボックス3にインクを補給するインク補給ボックス4とを備えており、また図2〜図4に示すように、インク塗布ボックス3には、液滴を噴射するための開口であるノズル吐出口50を有するインクジェットヘッド42と、ノズル吐出口50近傍において、ノズル吐出口50を覆うよう進退可能に設けられるシャッタ51と、ノズル吐出口50を覆う位置と該覆う位置から退避した位置との間においてシャッタ51をノズル吐出口50の開口端面であるノズル面48に対して間隙を保って移動させる支持機構49、52、53とを備える。
【0018】
すなわち図1に示すように、インク塗布ボックス3においては、架台2の上面にY軸方向ガイド板20が固定されており、このY軸方向ガイド板20の上面には、Y軸方向に複数のガイド溝21が延設されている。このガイド溝21にはY軸方向移動テーブル22の下面に設けられたガイド用の突起部(図示せず)が係合され、これによりY軸方向移動テーブル22は、ガイド溝21にガイドされてY軸方向に移動自在に支持されている。このY軸方向移動テーブル22は、例えばモータを用いた駆動機構によりガイド溝21に沿ってY軸方向に移動される。
【0019】
またY軸方向移動テーブル22の上面には、X軸方向に複数のガイド溝(図示せず)が延設されている。このガイド溝には、X軸方向移動テーブル23の下面に設けられたガイド用の突起部(図示せず)が係合され、これによりX軸方向移動テーブル23は、このガイド溝にガイドされてX軸方向に移動自在に支持されている。このX軸方向移動テーブル23は、例えばモータを用いた駆動機構によりガイド溝に沿ってX軸方向に移動される。
【0020】
X軸方向移動テーブル23の上面には、基板保持テーブル26が固定されており、この基板保持テーブル26の上面には把持機構27により、インクの塗布対象である基板30を把持して固定し得るようになされている。なお基板30の固定方法は、把持機構27による把持に代えて、例えば吸着機構により吸着する方法を用いるようにしてもよい。
【0021】
またインク塗布ボックス3において、架台2の上面には、Y軸方向スライド板20を挟む位置に1組のコラム33a、33bが立設されており、このコラム33a、33bの上部にはX方向ガイド板35が横架されている。
【0022】
X方向ガイド板35の前面には、X方向にガイド溝36が延設されており、このガイド溝36には、複数のインクジェットヘッドユニット40を垂設するベース板41の突起部が係合されている。これによりベース板41は、このガイド溝36にガイドされてX軸方向に移動自在に支持されている。このベース板41は、例えばモータを用いた駆動機構によりガイド溝36に沿ってX軸方向に移動される。
【0023】
インク塗布ボックス3においては、インクジェット塗布装置1の動作を制御する制御部10により、これらY方向移動テーブル22のY軸方向への移動、X方向移動テーブル23のX軸方向への移動及びベース板41のX軸方向への移動をそれぞれ制御し、これにより基板保持テーブル26に保持された基板30とベース板41に垂設されたインクジェットヘッドユニット40との相対位置を種々に変化させることができる。
【0024】
またベース板41には、R(赤)、G(緑)、B(青)用の3つのインクジェットヘッドユニット40が垂設されており、このインクジェットヘッドユニット40において、その下端部に設けられたインクジェットヘッド42により下方にインクを吐出するようになされている。
【0025】
すなわち図2に示すように、インクジェットヘッドユニット40においては、ベース板41に支持され、移動部44aをZ軸方向(上下方向)に移動自在に支持するZ軸方向移動機構44と、このZ軸方向移動機構44の移動部44aに支持され、移動部45aをY軸方向に移動自在に支持するY軸方向移動機構45と、このY軸方向移動機構45の移動部45aに支持され、回転部46aをZ軸方向周りの回転方向であるθ方向に回転自在に支持するθ方向回転機構46と、このθ方向回転機構46の回転部46aに垂下されるインクジェットヘッド42とを有し、Z軸方向移動機構44によりインクジェットヘッド42の位置を基板30に対してZ軸方向に調整し得ると共に、Y軸方向移動機構45によりインクジェットヘッド42の位置を基板30に対してY軸方向に調整し得ると共に、θ方向回転機構46によりインクジェットヘッド42の向きを基板30に対してθ方向に回転し得るようになされている。
【0026】
このようにインクジェットヘッドユニット40においては、基板保持テーブル26に保持された基板30に対するインクジェットヘッド42の位置を種々に調整し得るようになされている。
【0027】
なおインク塗布ボックス3には、各色に対応した3つのインクジェットヘッドユニット40が設けられているが、これらのインクジェットヘッドユニット40はそれぞれ同一の構成を有する。
【0028】
図3に示すように、このインクジェットヘッドユニット40の下端部に設けられたインクジェットヘッド42において、その下方に向けられたノズル面48には複数のノズルがそれぞれノズル吐出口50を下方に向けるようにして直列に穿設されている。これによりノズル面48は、ノズルの開口端面を構成している。またそれぞれのノズル吐出口50は互いに一定の間隔を隔てて配置されている。なお図3は、後述するシャッタ51の開閉機構を省略して示している。
【0029】
インクジェットヘッド42の内部には、各ノズルに連通してなるインクタンクが設けられており、このインクタンクの上面にはダイアフラムが設けられている。制御部10からの吐出制御信号によってこのダイアフラムを駆動させることにより、インクタンク内の圧力を変化させて該インクタンク内のインクをノズルより吐出させるようになされている。インクジェットヘッドユニット40では、このようにしてノズル吐出口から下方にインクを吐出させることにより、インクジェットヘッド42の下方において基板保持テーブル26に保持された基板30の上面にインクを塗布する。
【0030】
制御部10は、Y方向移動テーブル22を移動させるためのモータ、X方向移動テーブル23を移動させるためのモータ、ベース板41を移動させるためのモータをそれぞれ塗布位置を表すデータに基づいて駆動制御することにより、Y方向移動テーブル22のY軸方向へ移動、X方向移動テーブル23のX軸方向への移動及びベース板41のX軸方向への移動を制御する。これにより制御部10は、基板保持テーブル26に保持された基板30とインクジェットヘッド42との相対位置を変化させながら、インクジェットヘッド42のノズル吐出口50からインクを吐出させることにより、基板30の所定位置に順次インクを塗布することができる。
【0031】
インクジェットヘッド42においては、そのノズル面48を覆う位置(以下、これを閉じた位置と呼ぶ)とこの位置から横方向に退避した位置(以下、これを開いた位置と呼ぶ)との間で移動自在にガラス板でなるシャッタ51が支持されている。
【0032】
すなわち図4に示すように、インクジェットヘッド42のノズル面48の周囲には、該ノズル面48よりも下方に所定の高さだけ突出した樹脂材料でなる枠形状のフレームカバー49が固定されており、またノズル面48の両側端部には、ノズル吐出口50の開口端面をなすノズル面48に対して、略平行な方向にガイド部材52、53が延設されている。
【0033】
シャッタ51において、その一方の側縁部には、該シャッタ51の移動方向に延びる切り欠き部51aが形成され、この切り欠き部51aには、ガイド部材53が摺動自在に係合されている。この係合状態において、シャッタ51は、ガイド部材53及びフレームカバー49によって挟持される。またシャッタ51の他方の側縁部は、ガイド部材52及びフレームカバー49によって挟持されている。これらにより、ガイド部材52、53及びフレームカバー49によってシャッタ51の支持機構が構成され、シャッタ51は、ガイド部材52、53に沿って、閉じた位置と開いた位置との間で移動するようになされている。図5(A)及び図6(A)は、シャッタ51が閉じた位置にある状態を示し、また図5(B)及び図6(B)は、シャッタ51が開いた位置にある状態を示す。
【0034】
インクジェットヘッド42の側面にはモータ55が固定されており、このモータ55の回転軸にはピニオンギア57が嵌合されている。一方、シャッタ51の上面部には、該シャッタ51の移動方向にラック58が延設されており、このラック58にモータ55側のピニオンギア57が歯合されている。これにより、インクジェット塗布装置1を制御する制御部10から出力される制御信号によりモータ55を回転駆動させることにより、このモータ55を駆動源としてシャッタ51をガイド部材52、53に沿って移動させることができる。
【0035】
このようにノズル吐出口50の開口端面を構成するノズル面48に対して略平行な方向にシャッタ51を開閉動作させることにより、このシャッタ51の開閉時にノズルの内部のインクに加わる気圧の変動を抑制することができ、これによりインク内への気泡の混入を防止して、インクの吐出不良が発生することを防止することができる。
【0036】
ここでシャッタ51とノズル面48との間に介在するフレームカバー49の高さは、インクジェットヘッド42の各部品及びノズル面48の加工、組み立て精度に基づいて、シャッタ51の上面とノズル面48とが接触しない最低限の大きさ以上となるように構成されている。従って、シャッタ51が閉じた状態においては、シャッタ51の上面の周辺部がフレームカバー49に当接することにより、シャッタ51とノズル面48とが接触しないようになされている。またシャッタ51が閉じた位置と開いた位置との間で開閉動作する間においても、シャッタ51とノズル面48との間にフレームカバー49が介在することにより、シャッタ51とノズル面48とが接触しないようになされている。
【0037】
このようにインクジェットヘッド42においては、シャッタ51とノズル面48との接触を回避するように構成されていることにより、ノズル面48が破損又は磨耗劣化することを防止することができる。
【0038】
またシャッタ51が閉じた状態においては、フレームカバー49によってシャッタ51の上面とノズル面48との間にフレームカバー49の高さによって決まる微小な間隙が形成される。この間隙の大きさは、ノズル吐出口50の溶媒雰囲気を維持し得る最大限の大きさ以下となるように構成されている。
【0039】
このようにインクジェットヘッド42においては、シャッタ51が閉じた状態において、シャッタ51とノズル面48との間に形成される間隙空間によりノズル面48が接する環境をノズル内のインクによる溶媒雰囲気に保つことにより、ノズル吐出口50のインクが容易に乾燥することを防止することができる。
【0040】
因みにこの実施の形態の場合、ノズル穴の直径をφ20μm〜φ80μm、ノズル面48における隣接するノズル間の間隙を1mm、ノズル穴の数を60個として、前述のシャッタ51とノズル面48との接触を回避する目的で設定される間隙の下限値を0.1mmとし、溶媒雰囲気を維持する目的で設定される間隙の上限値を数mmとする。
【0041】
シャッタ51がガイド部材52、53に沿って開いた位置まで移動した状態においては、ノズル面48の各ノズル吐出口50が下方に露出した状態となり、この状態でノズル吐出口50からインクを吐出させることにより、ノズルの下方に保持される基板30に対して、インクを塗布することができる。
【0042】
ここでノズル吐出口50からインクを吐出させた場合、ノズル吐出口50の周辺のノズル面48にインクが残存する場合がある。この残存インクは、シャッタ51が閉じられた際にシャッタ51の上面に付着し、シャッタ51が開いた際に外気に直接触れることになる。このように外気直接触れた残存インクは、乾燥が進むことになる。そして再度シャッタ51が閉じられた際には、この残存インクがノズル吐出口50を覆うように付着してノズルが目詰まりを起こす可能性がある。そこでこのインクジェット塗布装置1においては、図7に示すように、インクジェットヘッド42の側面部に、シャッタ51の上面に付着した残存インク等の異物を除去するための除去機構としてクリーニング部60を設けている。このクリーニング部60においては、シャッタ51の移動経路の上部に吸収性のある紙又は布等のクリーニング部材61を配置し、シャッタ51が開いた際にシャッタ51の上面がこのクリーニング部材61に接触するようになされている。これによりシャッタ51が開く毎に該シャッタ51の上面がクリーニング部材61により拭き取られ、残存インク等の異物が除去される。
【0043】
このようなクリーニング部60による異物の除去は、シャッタ51が開閉動作されるごとに実行されることになる。
【0044】
ここでインクジェット塗布装置1を制御する制御部10においては、インクジェットヘッド42からインクを吐出させるタイミングでシャッタ51を開き、この状態で基板30とインクジェットヘッド42との相対位置を変化させながらインクの吐出を繰り返す。そして基板30に対して例えば一列分のインクの塗布が終了すると、制御部は、シャッタ51を閉じると共に、基板30とインクジェットヘッド42との相対位置を次の列の先頭位置まで変化させて再びシャッタ51を開いてインクの吐出を開始する。このように基板30に対してインクを塗布する場合において、一連の塗布工程中においてもインクの吐出を比較的短時間だけ休止する塗布休止工程があり、このような塗布休止工程においてシャッタ51を閉じることでノズルが容易に乾燥することを防止すると共に、再度吐出を開始する際にシャッタ51を開くことでクリーニング部60によりシャッタ上面の残存インク等の異物を除去することができる。
【0045】
このようにインクジェットヘッド42においては、インクの吐出休止期間にシャッタ51を閉じることにより、ノズル吐出口50のインクの容易な乾燥を防止してノズルの目詰まりを防止し得るようになされていると共に、クリーニング部60によってシャッタ51の上面の残存インク等の異物を除去してノズルの目詰まりを防止し得るようになされている。
【0046】
またこのインクジェット塗布装置1においては、図8〜図10に示すように、例えば基板30の交換時のようにインクの吐出を比較的長時間休止する場合において、シャッタ51が閉じられたインクジェットヘッド42を溶媒に接触させることにより、ノズル面48を外気から遮蔽してノズルのインクの乾燥を防止するようになされている。すなわち、インクジェット塗布装置1のインク塗布ボックス3においては、架台2の上部に溶媒槽70が設けられている。この溶媒槽70は、架台2の上部において前後方向に移動自在に支持された移動テーブル71に保持されており、移動テーブル71の移動によってインクジェットヘッド42の下方まで前進した位置とこの位置から後退した位置との間で移動し得るようになされている。この移動テーブル71は、制御部10により、モータを駆動源として移動制御される。またインクジェットヘッド42は、図1について上述したインクジェットヘッドユニット40をX軸方向に移動させる機構(X方向ガイド板35、ガイド溝36、ベース板41)によりX軸方向に移動制御されると共に、図2について上述したZ軸方向移動機構44によりZ軸方向に移動制御されるようになされている。これら溶媒槽70の移動機構及びインクジェットヘッドユニット40の移動機構により、インクジェットヘッド42と溶媒槽70とを相対的に移動させることができる。
【0047】
溶媒槽70をインクジェットヘッド42の下方から後退した位置まで移動させた状態においては、インクジェットヘッド42の下方に基板30が配置された状態となり、インクジェットヘッド42によって基板30に対してインクを吐出させることができる。また溶媒槽70をインクジェットヘッド42の下方に前進させた状態においては、インクジェットヘッドユニット40をX軸方向への移動機構により溶媒槽70の上部に移動させた後、Z軸方向移動機構44によりインクジェットヘッド42をZ軸方向に移動させることにより、インクジェットヘッド42を溶媒槽70の内部に移動させることができる。
【0048】
溶媒槽70には、インク溶媒が貯留されており、この溶媒槽70にシャッタ51を閉じた状態でインクジェットヘッド42の下端部を浸漬させることにより、ノズル面48を外気から遮蔽して溶媒雰囲気を保つことができる。
【0049】
すなわち図8に示すように、インクの塗布時においては、制御部10の制御により溶媒槽70をインクジェットヘッド42の下方から後退した位置まで移動させる。制御部10は、この状態において、インクジェットヘッド42のシャッタ51を開いてインクジェットヘッド42からインクを吐出させる。そしてインクの塗布工程が終了すると、図9に示すように、シャッタ51を閉じた状態にすると共に溶媒槽70をインクジェットヘッド42の下方まで前進させ、さらに図10に示すように、インクジェットヘッド42を上下駆動機構により降下させることにより、インクジェットヘッド42の先端部を溶媒槽70に浸漬させる。この場合、シャッタ51は閉じた状態となっており、この状態においてノズル面48とシャッタ51との間に形成された間隙空間は外気から確実に遮蔽されることになる。
【0050】
またインクの塗布工程を開始する場合、制御部10は、溶媒槽70に浸漬されたインクジェットヘッド42を上昇させることによりインクジェットヘッド42の先端部を溶媒槽70から引き上げ、この状態において溶媒槽70を後退させると共にシャッタ51を開き、インクを吐出させる。
【0051】
このように、基板30の交換時のようにインクの吐出が比較的長時間にわたって休止される場合には、インクジェットヘッド42の先端部を溶媒槽70に浸漬することにより、ノズル面48を溶媒雰囲気中に保つことができ、ノズル吐出口50に残存したインクが乾燥することを防止することができる。
【0052】
次に、以上説明した構成のインクジェット塗布装置1の動作について説明する。例えば液晶又はEL等の表示装置に用いられる基板30の各ドットに対してインクを塗布する場合、インクジェット塗布装置1の動作を制御する制御部10は、塗布位置を表すデータに基づいて、Y方向移動テーブル22、X方向移動テーブル23及びインクジェットヘッドユニット40を移動させることにより、インクジェットヘッド42が基板保持テーブル26に保持された基板30のインク塗布位置に対して上方から対向するように位置決めする。
【0053】
この状態において、制御部10は、図5(A)及び図6(A)に示したように、シャッタ51を開いてノズル吐出口50を露出させた後、インクジェットヘッド42と基板30との相対位置を移動させながらノズル吐出口50が基板30のドットに対向する位置に一致したタイミングでノズル吐出口50からインクを吐出させることにより、基板30の各ドットに順次インクを塗布する。
【0054】
そして例えば基板30の1列分のドットに対する吐出処理のように一連の吐出動作が終了すると、制御部10は、インクジェットヘッド42が基板30の次のドット列の塗布開始位置に対向するように位置決めする。このようにインクの塗布工程においては、一連のインクの吐出動作の間に吐出動作を比較的短時間の間だけ休止する休止期間があり、この間において制御部10は、図5(B)及び図6(B)に示したように、シャッタ51を閉じることによりノズル内のインクが容易に乾燥することを防止する。このシャッタ51の開閉動作時及びシャッタ51が閉じられた状態においては、シャッタ51とノズル面48との間にフレームカバー49が介在することにより、該シャッタ51とノズル面48との間に所定の間隙が保たれ、これによりノズル面48の破損又は磨耗劣化が回避される。
【0055】
このようにシャッタ51とノズル面48との接触が回避されるようにシャッタ51が閉じられることにより、シャッタ51とノズル面48との間に間隙が形成されるが、この間隙の大きさは、溶媒雰囲気を保ち得る最大限の大きさ以下となるように構成されていることにより、この間隙空間内はノズル内のインクにより溶媒雰囲気に保たれ、ノズル面48及びこのノズル面48に設けられたノズル吐出口50は、直ちには外気に接しない状態となる。これによりノズル吐出口50のインクの乾燥が抑制される。
【0056】
またシャッタ51が閉じられた際にシャッタ51とノズル面48との間に形成される間隙空間は、その周囲がフレームカバー49により半密閉状態で覆われることにより、一段と長時間に亘って溶媒雰囲気が維持されることになる。
【0057】
なおシャッタ51が閉じられた際には、シャッタ51とフレームカバー49との間は完全には密閉されないものの、この実施の形態の場合、シャッタ51がガラス板により構成されていると共にフレームカバー49が樹脂により構成されていることにより、その密着性が一段と高められるようになされており、その分一段とインクの乾燥が抑制される。
【0058】
またインクの吐出後には、ノズル吐出口50にインクが残ることがあるが、このインクジェットヘッド42においては、シャッタ51がノズル面48に接しない構成となっていることにより、残存インクがシャッタ51に容易に付着することが防止される。これによりシャッタ51に付着した残存インク等の異物がノズル吐出口50を塞ぐように付着することによるノズル吐出口50の目詰まりが防止される。
【0059】
因みにシャッタ51に残存インク等の異物が付着した場合には、シャッタ51が開いた際に図7に示したクリーニング部60によりこの異物が除去されることにより、シャッタ51に付着した残存インク等の異物がノズル吐出口50を塞ぐように付着することを一段と有効に防止することができる。
【0060】
また例えば塗布対象である基板30の交換時のようにインクの吐出を比較的長時間休止する場合においては、図8〜図10に示したように、インクジェットヘッド42の先端部が溶媒槽70の溶媒に浸漬されることにより、インクジェットヘッド42のノズル吐出口50は溶媒雰囲気中に保たれることとなり、その乾燥が防止される。
【0061】
またインクの吐出が行われない場合にシャッタ51によりノズル面48が覆われることにより、この間において例えばインクジェットヘッド42の移動に伴って発生する振動によりノズル吐出口50からインクが滴下した場合、又は電気ノイズによってノズルが誤動作してインクが誤吐出された場合等においても、閉じられたシャッタ51によってインクが不用意に基板30に落下することが防止され、これによりインクの塗布工程における基板30の不良の発生率が低減することになる。
【0062】
以上説明したインクジェット塗布装置1によれば、ノズル吐出口50の開口端面を構成するノズル面48を覆う位置と該覆う位置から退避した位置との間において移動自在にシャッタ51を支持すると共に、このシャッタ51がノズル面48に接触しないようにしたことにより、シャッタ51によるノズル面48の破損又は磨耗劣化を回避しつつ、ノズル吐出口50のインクの乾燥を抑制することができる。またシャッタ51を閉じることにより、不用意なインクの滴下を防止することができる。またシャッタ51が閉じられた際にシャッタ51とノズル面48との間に形成される間隙の大きさを、溶媒雰囲気を保ち得る最大限の大きさ以下となるように構成したことにより、シャッタ51によるノズル面48の破損又は磨耗劣化を回避しつつ、ノズルのインクの乾燥を十分に抑制することができる。
【0063】
また異物の除去手段としてクリーニング部60を設け、このクリーニング部60によりシャッタ51に付着した残存インク等の異物を除去するようにしたことにより、この異物がシャッタ51の開閉動作によりノズル吐出口50を覆うように付着して吐出不良が発生することを防止することができる。
【0064】
またインクの吐出を比較的長時間に亘って休止する場合、インクジェットヘッド42の先端部を溶媒槽70の溶媒に浸漬させてノズル吐出口50を溶媒雰囲気中に保つことにより、ノズル吐出口50のインクの乾燥を防止することができる。
【0065】
これらにより本実施の形態のインクジェット塗布装置1によれば、ノズルの目詰まりを防止してノズルからのインクの吐出状態を常に良好に保つことができる。
【0066】
なお上述の第1の実施の形態においては、インク塗布の休止中にインクジェットヘッド42の先端部をシャッタ51を閉じた状態で溶媒槽70の溶媒に浸漬する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、シャッタ51が閉じられたインクジェットヘッド42の先端部に対して溶媒を噴射するようにしてもよい。この場合、溶媒の噴射機構として、インクジェットヘッド42の近傍に溶媒を噴射するためのノズルを設け、インクの塗布を休止する場合には、このノズルからシャッタ51が閉じられたインクジェットヘッド42の先端部に対して溶媒を噴射するようにすればよい。このようにしても、閉じられたシャッタ51とノズル面48との間に形成された間隙空間を外気から遮蔽することができる。
【0067】
また上述の第1の実施の形態においては、インク塗布の休止中にインクジェットヘッド42の先端部を溶媒槽70の溶媒に浸漬させる場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、シャッタ51を閉じる前若しくは閉じた後又は閉じながらノズル吐出口50を加圧パージしてノズル吐出口50からインクを染み出させるようにしてもよい。このようにすれば、シャッタ51とノズル面48との間に形成される間隙空間を溶媒雰囲気に保つことができ、ノズル吐出口50の乾燥を防止することができ、ノズルの目詰まりによるインクの吐出不良の発生を防止することができる。
【0068】
また上述の第1の実施の形態においては、ノズル穴の直径、ノズル面48における隣接するノズル間の間隙、ノズル穴の数に応じて、前述のシャッタ51とノズル面48との接触を回避する目的で設定される間隙の下限値を0.1mmとし、溶媒雰囲気を維持する目的で設定される間隙の上限値を数mmとする場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、間隙の大きさは、ノズル穴の直径、ノズル穴の間隔及びノズル穴の個数に応じて種々の寸法に設定されるものである。
【0069】
(第2の実施の形態)
図11は、本発明の第2の実施の形態に係るインクジェット塗布装置に用いられるインクジェットヘッドユニットの先端部を示す部分的断面図である。この第2の実施の形態のインクジェット塗布装置は、図4について上述した第1の実施の形態におけるインクジェットヘッド部と比較して、インク塗布の休止中にインクジェットヘッド42の先端部を溶媒槽70の溶媒に浸漬させるための構成に代えて、シャッタ51が閉じられた際にシャッタ51とノズル面48との間隙空間に対して溶媒ガスを送気するための構成が設けられている点のみが異なる。従って図11においては、図4との対応部分に同一符号を付し、ここではその重複した説明を省略する。またこの図11においては、図4について上述したガイド部材52、53、モータ55、ピニオンギア57、ラック58、クリーニング部60等のシャッタ51の開閉機構等を省略して示しているが、これらの構成も有するものとする。
【0070】
すなわち、図11に示すように、第2の実施の形態のインクジェット塗布装置のシャッタ51には溶媒ガスを送気するための送気ホース65が取り付けられている。この送気ホースの先端部は、シャッタ51の一部に貫通形成された送気口53に対してシャッタ51の下面側から接合されている。この送気ホース65に対して、溶媒ガスの供給装置66からインクの溶媒ガスを供給する。これにより送気ホース65及びシャッタ51の送気口53を介して溶媒ガスをシャッタ51の上面側に供給することができる。
【0071】
この場合、インクジェット塗布装置を制御する制御部にあっては、溶媒ガスの供給装置66及びシャッタ51の駆動機構をそれぞれ連携動作させることにより、シャッタ51が閉じられた際に溶媒ガスを送気することでシャッタ51とノズル面48との間の間隙空間に溶媒ガスを供給する。
【0072】
これにより閉じられたシャッタ51とノズル面48との間に形成される間隙空間を溶媒雰囲気に保つことができ、ノズル吐出口50のインクが乾燥することを防止して、ノズルの目詰まりによるインクの吐出不良の発生を防止することができる。
【0073】
(第3の実施の形態)
図12は、本発明の第3の実施の形態に係るインクジェット塗布装置に用いられるインクジェットヘッドユニットを示す部分的断面図である。この第3の実施の形態のインクジェット塗布装置は、図4について上述した第1の実施の形態におけるインクジェットヘッド部と比較して、シャッタ51の上面に付着した残存インク等の異物を除去するクリーニング部60に代えて、シャッタ51とノズル面48との間に形成される間隙空間を吸気するための構成が設けられている点のみが異なる。従って図12においては、図4との対応部分に同一符号を付し、ここではその重複した説明を省略する。またこの図12においては、図4について上述したガイド部材52、53、モータ55、ピニオンギア57、ラック58等のシャッタ51の開閉機構等を省略して示しているが、これらの構成も有するものとする。
【0074】
すなわち、図12に示すように、第3の実施の形態のインクジェット塗布装置のシャッタ51にはシャッタ51の上面側を吸気するための吸気ホース67が取り付けられている。この吸引ホース67の先端部は、シャッタ51の一部に貫通形成された吸引口53に対してシャッタ51の下面側から接合されている。この吸引ホース67に対して、吸引装置68により負圧を与えることにより、シャッタ51の上面側を吸引することができる。
【0075】
この場合、インクジェット塗布装置を制御する制御部にあっては、この吸引装置68及びシャッタ51の駆動機構をそれぞれ連携動作させることにより、シャッタ51が閉じられている間に吸引することでシャッタ51とノズル面48との間に形成される間隙空間を吸引することができる。
【0076】
このようにシャッタ51とノズル面48との間に形成される間隙空間を吸引することにより、シャッタ51の上面、ノズル面48及びノズル吐出口50内に付着した残存インク等の異物を吸引ホース67を介して外部に排出することができる。これによりノズルの目詰まりによるインクの吐出不良の発生を防止することができる。
【0077】
なおこの第3の実施の形態においては、第1の実施の形態のインクジェット塗布装置のクリーニング部60に代えて、シャッタ51とノズル面48との間を吸引するための構成を設けるようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、クリーニング部60を併用するようにしてもよい。
【0078】
(第4の実施の形態)
図13は、本発明の第4の実施の形態に係るインクジェット塗布装置に用いられるインクジェットヘッドユニットを示す斜視図である。この第4の実施の形態のインクジェット塗布装置は、図4について上述した第1の実施の形態におけるインクジェットヘッド部と比較して、ノズル面48の複数のノズル全体を覆う1枚のシャッタ51に代えて、複数のシャッタ片151a、151b及び151cに分割されてなるシャッタ151を設け、それぞれのシャッタ片151a、151b及び151cが個別に開閉動作するように構成した点のみが異なる。従って図13においては、図4との対応部分に同一符号を付し、ここではその重複した説明を省略する。なお図13においては、各シャッタ片151a、151b、151dを開閉するための開閉機構及びクリーニング部60を省略して示している。シャッタ151を構成するシャッタ片151a、151b及び151cのうち、両側のシャッタ片151a、151cにおいては、図4について上述した開閉機構(ガイド部材52、53、モータ55、ピニオンギア57、ラック58)をそれぞれ設けて制御部により個別に開閉動作するようになされ、また中央のシャッタ片151bについては、モータ55、ラック58を設けるスペースを確保することが困難であることにより、例えばソレノイドを駆動源としてリンク機構を介して制御部の制御によりシャッタ片151bを開閉動作させる等、他の駆動機構を用いるようにする。
【0079】
図13に示すように、第4の実施の形態のインクジェット塗布装置のシャッタ151は、複数のノズル吐出口50のうちの隣接する所定数のノズルごとに対応したシャッタ片151a、151b及び151cに分割され、それぞれ個別に開閉駆動される。
【0080】
この第4の実施の形態のインクジェット塗布装置を制御する制御部においては、インクの塗布対象である基板30における塗布パターンに応じて使用するシャッタ片を選択し、選択したシャッタ片を開いてインクを吐出させる。
【0081】
このようにすれば、使用しないノズルについては常にシャッタ片によって覆われた状態とすることができ、これにより使用しないノズルが乾燥することを防止することができる。
【0082】
なおこの第4の実施の形態においては、3つのシャッタ片151a、151b及び151cに分割されてなるシャッタ151を用いる場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、種々の分割数を適用することができる。この場合、分割数を多くするほど、塗布対象の様々な塗布パターンに対応することができるようになる。
【0083】
(第5の実施の形態)
図14は、本発明の第5の実施の形態に係るインクジェット塗布装置に用いられるインクジェットヘッドユニットを示す斜視図である。この第5の実施の形態のインクジェット塗布装置は、図4について上述した第1の実施の形態におけるインクジェットヘッド部と比較して、ノズル面48の複数のノズル全体を覆うシャッタ51に加えて、複数のノズル吐出口50のうちの一部のノズルに対応した領域に吐出窓部251aを有するシャッタ251を併用するように構成した点のみが異なる。従って図14においては、図4との対応部分に同一符号を付し、ここではその重複した説明を省略する。なお図14においては、各シャッタ51、251を開閉するための開閉機構及びクリーニング部60(図4)を省略して示している。シャッタ51、251においては、図4について上述した開閉機構(ガイド部材52、53、モータ55、ピニオンギア57、ラック58)をそれぞれ設けて制御部により個別に開閉動作させる。
【0084】
すなわち図14に示すように、第5の実施の形態のインクジェット塗布装置のシャッタ251においては、該シャッタ251が閉じられた状態において例えば隣接する3つのノズル吐出口50a、50b及び50cに対向する位置に吐出窓部251aを形成し、このノズル吐出口50a、50b及び50cからインクを吐出させる場合には、このシャッタ251を閉じるようにする。これにより、使用するノズル吐出口50a、50b及び50c以外のノズル吐出口はシャッタ251によって覆われることになり、これらのノズルが乾燥することを防止することができる。また、すべてのノズル吐出口50からの吐出を休止する場合には、吐出窓部251aを有するシャッタ251を開くと共に、吐出窓部を有しないシャッタ51を閉じることにより、すべてのノズル吐出口50の乾燥を防止することができる。
【0085】
なおこの第5の実施の形態においては、3つのノズル吐出口50a、50b及び50cに対応する位置に吐出窓部251aが形成されたシャッタ251を用いる場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、1つ又は2つ以上の種々のノズルに対応した位置に吐出窓部を形成して用いることができる。この場合、吐出窓部251aは1つに限らず、複数形成するようにしてもよい。
【0086】
またこの第5の実施の形態においては、吐出窓部251aを有するシャッタ251と吐出窓部251aを有しないシャッタ51とを併用する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、吐出窓部251aを有するシャッタ251のみを用いるようにしてもよい。このようにすれば、常に使用するノズルと必要に応じて使用するノズルとが並存している場合に、常に使用するノズルに対応した位置に吐出窓部251aを形成し、必要に応じて使用するノズルを使用しない場合にこのシャッタ251を閉じておくことにより、これらのノズルの乾燥を抑制することができる。
【0087】
(その他の実施の形態)
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述の第1〜第5の実施の形態においては、ノズル面48の周囲全体を覆う枠形状のフレームカバー49を設ける場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、フレームカバー49として、枠形状の一部が切り欠かれた形状のものを用いるようにしてもよい。
【0088】
また上述の第1〜第5の実施の形態のインクジェット塗布装置1においては、シャッタ51、151、251とノズル面48との間にフレームカバー49を介在させることによってシャッタ51、151、251とノズル面48との接触を防止する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、フレームカバー49に代えて、例えばガイド部材52、53をシャッタ51、151、251の上面側及び下面側から挟持する構成とし、このガイド部材によりシャッタ51の高さを位置決めすることにより、シャッタ51、151、251とノズル面48との接触を防止するようにしてもよい。この場合、シャッタ51、151、251とノズル面48との間に形成される間隙空間の周囲はフレームカバー49に覆われない構成となるが、シャッタ51、151、251とノズル面48との間の間隙が溶媒雰囲気を維持し得る程度に抑えられていることにより、ノズル吐出口50の乾燥を実用上十分に防止することができる。
【0089】
また上述の第1〜第5の実施の形態のインクジェット塗布装置1においては、シャッタ51、151、251の開閉機構として、モータ55の回転力をピニオンギア57及びラック58を介してシャッタ51、151、251の駆動力とする場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばシャッタ51、151、251の移動範囲に回転可能に掛け渡されたベルトの一部をシャッタ51、151、251に固定し、回転させることによりシャッタ51、151、251を開閉させる等、駆動機構としては他の種々の駆動機構を適用することができる。
【0090】
また上述の第1〜第5の実施の形態のインクジェット塗布装置1においては、モータ55をシャッタ51、151、251の駆動源とする場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばソレノイドを駆動源としてリンク機構を介してシャッタ51、151、251を開閉動作させる等、シャッタ51、151、251の駆動源としては他の種々のものを適用することができる。
【0091】
また上述の第1〜第5の実施の形態においては、シャッタ51、151、251の駆動源であるモータ55、ガイド部材52、53等の開閉機構をインクジェットヘッド42に設ける場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばインクジェットヘッドユニット40を構成する他の部材により支持するようにしてもよい。
【0092】
また上述の第1〜第5の実施の形態においては、シャッタ51、151、251をガラス板で構成すると共にフレームカバー49を樹脂材料で構成する場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばシャッタ51、151、251及びフレームカバー49を樹脂材料で構成する等、種々の材質のものを用いることができる。
【0093】
また上述の第1〜第5の実施の形態においては、シャッタ51、151、251の上面に付着した残存インク等の異物を除去する除去手段として、紙又は布によって異物を除去するクリーニング部60を設ける場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばシャッタ51、151、251が開いた状態で、このシャッタ51、151、251の上面に空気又は溶剤を噴射することにより異物を吹き飛ばすようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るインクジェット塗布装置を示す斜視図である。
【図2】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドユニットを示す斜視図である。
【図3】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す斜視図である。
【図4】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す部分的断面図である。
【図5】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す部分的側面図である。
【図6】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す上面図である。
【図7】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す部分的断面図である。
【図8】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドの溶媒槽への浸漬処理の説明に供する側面図である。
【図9】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドの溶媒槽への浸漬処理の説明に供する側面図である。
【図10】図1のインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドの溶媒槽への浸漬処理の説明に供する側面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す部分的断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係るインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す部分的断面図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す斜視図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態に係るインクジェット塗布装置のインクジェットヘッドを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0095】
1…インクジェット塗布装置、2…架台、3…インク塗布ボックス、4…インク補給ボックス、30…基板、40…インクジェットヘッドユニット、42…インクジェットヘッド、48…ノズル面、49…フレームカバー、50…ノズル、51,151,251…シャッタ、52,53…ガイド部材、55…モータ、57…ピニオンギア、58…ラック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射するための開口であるノズル吐出口を有するインクジェットヘッドと、
前記ノズル吐出口近傍において、前記ノズル吐出口を覆うよう進退可能に設けられるシャッタと、
前記ノズル吐出口を覆う位置と該覆う位置から退避した位置との間において前記シャッタを前記ノズル吐出口の開口端面に対して間隙を保って移動させる支持機構と、
を備えることを特徴とするインクジェット塗布装置。
【請求項2】
前記支持機構は、前記シャッタを前記開口端面に沿って移動させる
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項3】
前記支持機構により支持される前記シャッタの前記ノズル吐出口を覆う位置と前記ノズル吐出口の開口端面との距離は、前記ノズル吐出口の溶媒雰囲気を維持する最大限の大きさ以下に設定されている
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項4】
前記液滴の溶媒が貯留される溶媒槽と、
前記インクジェットヘッドと前記溶媒槽とを相対的に移動させる移動機構と、
を備え、前記シャッタが前記ノズル吐出口を覆う位置にある状態の前記インクジェットヘッドを前記溶媒槽に貯留された溶媒に浸漬させる
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項5】
前記シャッタが前記ノズル吐出口を覆った状態において、前記インクジェットヘッドに対して前記液滴の溶媒を噴射する噴射機構を備える
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項6】
前記シャッタの前記ノズル吐出口を覆う位置と前記ノズル吐出口の開口端面との間に前記液滴の溶媒ガスを送気する送気機構を備える
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項7】
前記シャッタの前記ノズル吐出口を覆う位置と前記ノズル吐出口の開口端面との間の空隙を吸引する吸引機構を備える
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項8】
前記インクジェットヘッドは、前記ノズル吐出口が複数配列され、
前記シャッタは、前記配列されてなる複数のノズル吐出口の位置に応じて複数に分割されている
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項9】
前記インクジェットヘッドは、前記ノズル吐出口が複数配列され、
前記シャッタは、前記配列された複数のノズル吐出口のうち1つ又は2つ以上のノズル吐出口の位置に応じて形成された吐出窓部を備える
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項10】
前記インクジェットヘッドは、前記ノズル吐出口が複数配列され、
前記配列された複数のノズル吐出口のすべてを覆う第1の前記シャッタと、
前記複数のノズル吐出口のすべてを覆う外形形状を有すると共に前記複数のノズル吐出口のうちの1つ又は2つ以上の位置に対応して形成された吐出窓部を有する第2のシャッタと、
前記第2のシャッタを前記ノズル吐出口を覆う位置と該覆う位置から退避した位置との間において前記第2のシャッタを前記ノズル吐出口の開口端面に対して間隙を保って移動させる支持機構と、
を備えることを特徴とする請求項1記載のインクジェット塗布装置。
【請求項11】
液滴を噴射するための開口であるノズル吐出口の近傍において、前記ノズル吐出口を覆うよう進退可能に設けられるシャッタを、前記ノズル吐出口を覆う位置から退避した位置に移動させ、前記ノズル吐出口から前記液滴を噴射させて塗布対象に前記液滴を塗布する塗布工程と、
前記液滴の噴射を休止すると共に、前記ノズル吐出口の開口端面との間隙を保って前記ノズル吐出口を覆う位置に前記シャッタを移動させる塗布休止工程と、
を有することを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−88074(P2006−88074A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278554(P2004−278554)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】