説明

インターロイキン−6産生抑制剤

【課題】インターロイキン−6産生抑制剤を提供する。
【解決手段】ピリドキシン 3,4'-環状リン酸又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含むインターロイキン−6産生抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインターロイキン−6産生抑制剤及び該抑制剤を含む炎症性疾患の予防及び/又は治療のための医薬や皮膚障害などの抑制及び/又は改善のための化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン−6(以下、本明細書において「IL-6」と略する場合がある)を含むサイトカインは組織の恒常性を保つために細胞から産生されているが、紫外線を含む太陽光に対する長時間の曝露や外部又は内部からの連続的な刺激などを受けた皮膚では表皮ケラチノサイトからサイトカインが過剰に産生されて皮膚組織に障害が生じる。特にインターロイキン6の過剰産生は、ケラチノサイトの増殖、線維芽細胞からのコラーゲン及びプロテオグリカンの産生、及びコラーゲナーゼ分泌促進などに深く関与しており、皮膚の炎症や皮膚肥厚などの皮膚障害を引き起こすものと考えられている(Acta Derm. Venereol., 71, pp.93-98, 1991などを参照のこと)。
【0003】
インターロイキン−6の作用や産生を抑制することにより皮膚の炎症、皮膚肥厚などの皮膚障害を予防又は治療する試みがいくつか提案されている。例えば、特開2005-263645号公報には細胞のATP受容体にATP受容体アンタゴニストを作用させてブロックすることによりインターロイキン−6などの炎症性サイトカインの遊離を阻害して炎症を改善及び発症を抑制する方法及び組成物が開示されており、紫外線照射などの外部刺激により発症する皮膚炎症の抑制及び改善するための医薬組成物又は化粧組成物が提案されている。また、皮膚障害に関与するインターロイキン−6の過剰な産生を抑制するために活性型ビタミンD及びグルココルチコイド等が有効であるとされている(J. Immunopathol. Pharmacol., 8, pp.199-207, 1996; Skin Pharmacol. Appl. Skin. Physiol., 13, pp.93-103, 2000)。しかしながら、例えば脂溶性ビタミンである活性型ビタミンDは脂肪組織への蓄積などのおそれがあるなど、これらの物質を長期にわたって投与することは安全上問題があることから、これらの物質に代わる安全な有効成分の提供が望まれている。
【0004】
一方、ピリドキシンはビタミンB6作用を持つ物質であり、体内でピリドキサール 5'-リン酸に代謝され生体中のタンパクの代謝に重要な役割をはたし、脂肪の代謝にも補酵素として作用している。ビタミンB6が不足すると皮膚の炎症、腫張、脱毛などを引き起こすことが知られている(フレグランスジャーナル、17(3)、96-100(1989)、特開2002-265368号公報)。皮膚外用剤としては、従来より塩酸ピリドキシンなどのビタミンB6誘導体を配合した外用剤が肌あれ、ニキビ、日焼け、雪焼けによるほてりの軽減、炎症によるかゆみ、乾性脂漏によるふけの治療や予防などに用いられている。例えば、特開2001-354579号公報には、塩酸ピリドキシン及びグリチルレチン酸ピリドキシンを抗炎症剤としてシソ科植物の溶媒抽出物と組み合わせることにより、抗炎症及び抗アレルギー効果に優れ、皮膚においてアトピー性皮膚炎などの皮膚炎症疾患やにきび、肌荒れなどに対して改善効果を発揮する化粧料を提供できることが開示されている。
【0005】
ピリドキシン及びその塩酸塩は光に対して非常に不安定であることが知られており、その誘導体であるピリドキサール、ピリドキサミン、及びピリドキサール 5'−リン酸も同様に光に対して非常に不安定であることから、これらの物質を皮膚外用剤に配合してもビタミンB6としての充分な効果が得られないという問題があった。この問題を解決するために光安定性を向上させたビタミンB6誘導体がいくつか提案されている。例えば、国際公開WO2005/033123には、ビタミンB6の3位を配糖化した化合物やピリドキシン 3,4'-環状リン酸が光安定性に優れることが開示されており、これらの物質を有効成分として含む化粧料、医薬、食品などが提案されている。これらの物質を有効成分として含む化粧料組成物が美白剤、老化防止剤、及び/又は紫外線暴露によるシワ形成の抑制剤として有効であることも開示されている。しかしながら、上記刊行物には、それらのビタミンB6誘導体のなかでピリドキシン 3,4'-環状リン酸がインターロイキン−6の産生抑制作用を有することについては示唆ないし教示がない。
【非特許文献1】Acta Derm. Venereol., 71, pp.93-98, 1991
【非特許文献2】J. Immunopathol. Pharmacol., 8, pp.199-207, 1996
【非特許文献3】Skin Pharmacol. Appl. Skin. Physiol., 13, pp.93-103, 2000
【非特許文献4】フレグランスジャーナル, 17, pp.96-100, 1989
【特許文献1】特開2002-265368号公報
【特許文献2】国際公開WO2005/033123
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題はインターロイキン−6の産生抑制剤を提供することにある。本発明の別の課題は、医薬や化粧料の有効成分として安全に使用することができ、かつ安定性に優れたインターロイキン−6の産生抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、国際公開WO2005/033123 に記載されたピリドキシン 3,4'-環状リン酸がインターロイキン−6の産生を抑制する作用を有しており、安全かつ安定性に優れたインターロイキン−6産生抑制剤として医薬及び化粧料などの有効成分として使用できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明により、ピリドキシン 3,4'-環状リン酸又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含むインターロイキン−6産生抑制剤が提供される。
また、本発明により、上記インターロイキン−6産生抑制剤を含む医薬又は化粧料が提供される。この医薬はインターロイキン−6の過剰産生に起因する疾患の予防及び/又は治療のための医薬として有用であり、上記化粧料は皮膚などに適用することによりインターロイキン−6の過剰産生に起因する皮膚炎や皮膚肥厚などの皮膚障害を抑制及び/又は改善することができる。
【0009】
別の観点からは、上記のインターロイキン−6産生抑制剤の製造のためのピリドキシン 3,4'-環状リン酸又は生理学的に許容されるその塩の使用;上記の医薬又は化粧料の製造のためのピリドキシン 3,4'-環状リン酸又は生理学的に許容されるその塩の使用;哺乳類動物の生体内においてインターロイキン−6の産生を抑制する方法であって、ピリドキシン 3,4'-環状リン酸又は生理学的に許容されるその塩の有効量をヒトを含む哺乳類動物に投与する工程を含む方法;及び哺乳類動物における皮膚障害を抑制及び/又は改善する方法であって、ピリドキシン 3,4'-環状リン酸又は生理学的に許容されるその塩の有効量をヒトを含む哺乳類動物の皮膚に適用する工程を含む方法が本発明により提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインターロイキン−6産生抑制剤は生体内や皮膚などにおけるインターロイキン−6の産生を顕著に抑制する作用を有しており、インターロイキン−6の過剰産生に起因する炎症性疾患の予防及び/又は治療のための医薬や皮膚障害などの抑制及び/又は改善のための化粧料などとして使用できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のインターロイキン−6産生抑制剤の有効成分であるピリドキシン 3,4'-環状リン酸は国際公開WO2005/033123の実施例中の例6に記載されている物質であり、当業者は上記刊行物に記載された方法に従って、容易に製造することが可能である。本発明の抑制剤の有効成分としてはピリドキシン 3,4'-環状リン酸の塩を用いてもよい。塩としては生理学的に許容される塩基付加塩が好ましい。例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の金属塩、又はアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、ジシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩を挙げることができる。グリシンなどのアミノ酸と塩を形成する場合もある。このような塩基付加塩の製造方法については上記国際公開の例6(c)及び例7に記載があり、当業者は上記刊行物の記載された方法に従って塩基付加塩を容易に製造することができる。また、本発明の抑制剤の有効成分としてピリドキシン 3,4'-環状リン酸又は生理学的に許容されるその塩の水和物又は溶媒和物を用いてもよい。
【0012】
本発明のインターロイキン−6産生抑制剤の作用は、例えば下記の実施例に示すように、ヒト正常皮膚のケラチノサイトを用いて紫外線照射により産生されるインターロイキン−6に対する産生抑制効果を測定することにより当業者が容易に確認することができる。もっとも、本発明の抑制剤のインターロイキン産生抑制作用を他の周知の方法によって容易に確認することができることは当業者に容易に理解されることであり、また、本発明の抑制剤のインターロイキン産生抑制作用が光加齢におけるインターロイキン−6の産生に対する抑制作用のみに限定されないことも当業者に容易に理解されることである。
【0013】
本発明の抑制剤は、インターロイキン−6の産生を抑制する作用に基づいて、インターロイキン−6の過剰産生に起因する炎症性疾患などの疾患の予防及び/又は治療を達成することができる医薬として適用することができる。また、特に皮膚に対しては、インターロイキン−6の産生を抑制する作用に基づいて、皮膚炎に対する外用剤として医薬としての適用が可能であるほか、外部又は内部からの刺激に起因する皮膚の様々な炎症や皮膚肥厚などの皮膚障害を抑制及び/又は改善する作用を有するための化粧料としても適用することができる。
【0014】
本発明のインターロイキン−6産生抑制剤は、例えば医薬又は化粧料の有効成分として配合することができる。医薬としては好ましくは医薬組成物を用いることができ、医薬組成物にはヒトの病気の予防、診断、及び治療に用いられる医薬組成物のほか、いわゆる医薬部外品、総合ビタミン剤、ヒト以外の哺乳類動物の病気に用いられる医薬組成物などが包含される。医薬組成物としては、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤(例えば、素錠、フィルムコーティング錠、薄層糖衣錠、糖衣錠、チュアブル錠、二層錠など)、カプセル剤、粉末吸入剤、液剤、外用剤、又は乾燥粉末形態で提供される用時溶解型の注射剤などを挙げることができる。化粧料としてはクリーム、溶液、又は乳液などの形態の化粧料組成物が好ましく、例えば、パウダー、ファンデーション、ローション、又はシャンプーなどとして提供することができるが、これらに限定されることはない。上記の医薬組成物又は化粧料組成物におけるインターロイキン−6産生抑制剤の配合量は特に限定されず、組成物の種類や使用目的に応じて適宜選択可能であるが、例えば、皮膚への適用を目的とする外用剤における上記抑制剤の配合量は、例えば、組成物の全質量に対して0.001〜10質量パーセント程度、好ましくは0.01〜2質量パーセント程度である。また、本発明のインターロイキン−6産生抑制剤が安定的に抑制作用を発揮するためには、組成物のpHが5.0〜8.0の範囲であることが好ましい。
【0015】
上記の医薬組成物又は化粧料には、本発明のインターロイキン−6産生抑制剤以外の任意の成分を配合することができる。そのような成分としては、例えば、アミノ酸、脂質、糖、ホルモン、酵素、核酸などの生理活性物質などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。国際公開WO2005/033123には製剤用添加物などを含む各種の組成物が開示されているので、当業者は本発明のインターロイキン−6産生抑制剤とその他の生理活性物質とを含む適宜の組成物を容易に調製することができる。上記刊行物の開示の全てを参照により本明細書の開示として含める。美白、老化防止、又は紫外線暴露によるシワ形成抑制を目的とする皮膚外用剤又は化粧料を製造するにあたり、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料や医薬部外品、皮膚外用剤等の製造に通常使用される成分、例えば、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、植物・動物・微生物由来の抽出物、活性酸素除去剤、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、他のビタミン類等を必要に応じて用いることができる。
【0016】
また、美白、老化防止、又は紫外線暴露によるシワ形成抑制を目的とする皮膚外用剤又は化粧料を製造するにあたり、本発明の効果を損なわない範囲で上記の作用を発揮できることが知られている他の有効成分を組成物中に配合することもできる。そのような有効成分としては、例えば、紫外線防御剤、抗菌剤、美白剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、活性酸素除去剤、保湿剤などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0017】
より具体的には、紫外線防御剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸-2-エチルヘキシル、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-硫酸ナトリウム、4-t-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン、2-フェニル-ベンズイミダゾール-5-硫酸、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0018】
抗菌剤としては、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0019】
美白剤は日焼け等により生じる皮膚の黒化、色素沈着により生ずるシミ、ソバカス等の発生を防止する作用を有しており、例えば、アルブチン、エラグ酸、リノール酸、ビタミンC及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸、胎盤抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、海藻抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物等が挙げられる。
【0020】
抗炎症剤は日焼け後の皮膚のほてりや紅斑等の炎症を抑制する作用を有しており、例えば、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アロエ抽出物、アルテア抽出物、アシタバ抽出物、アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、イラクサ抽出物、オウバク抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、キンギンカ抽出物、クレソン抽出物、コンフリー抽出物、サルビア抽出物、シコン抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ゲンチアナ抽出物等が挙げられる。
【0021】
細胞賦活剤は肌荒れの改善等の目的で用いられ、例えば、カフェイン、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン又はその分解物、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類またはそれらの塩、コラーゲン、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝抽出物、イチョウ抽出物、オオムギ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、ニンジン抽出物、ローズマリー抽出物、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等が挙げられる。
【0022】
活性酸素除去剤は、過酸化脂質生成抑制等の作用を有しており、例えば、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、カテキン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、メリッサ抽出物、羅漢果抽出物、レチノール及びその誘導体、カロチノイド等のビタミンA類、チアミンおよびその誘導体、リボフラビンおよびその誘導体、ピリドキシンおよびその誘導体、ニコチン酸およびその誘導体等のビタミンB類、トコフェロール及びその誘導体等のビタミンE類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0023】
保湿剤としては、例えば、エラスチン、ケラチン等のタンパク質またはそれらの誘導体、加水分解物並びにそれらの塩、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニン等のアミノ酸及びそれらの誘導体、ソルビトール、エリスリトール、トレハロース、イノシトール、グルコース、蔗糖およびその誘導体、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、D−パンテノール及びその誘導体、尿素、リン脂質、セラミド、オウレン抽出物、ショウブ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウソウ抽出物、ドクダミ抽出物、ハマメリス抽出物、ボダイジュ抽出物、マロニエ抽出物、マルメロ抽出物等が挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。以下の実施例に用いたピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム及びピリドキシン3,4−環状リン酸マグネシウムは国際公開WO2005/033123の例6及び例7に記載の方法によりそれぞれ合成した。
例1:クレンジングクリーム
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 2.0
(2)ステアリルアルコール 3.0
(3)親油型モノステアリン酸グリセリル 2.0
(4)ミツロウ 1.5
(5)ワセリン 6.0
(7)流動パラフィン 40.0
(8)ジメチルポリシロキサン(100CS) 0.5
(9)セスキオレイン酸ソルビタン 1.0
(10)防腐剤 適量
(11)トリエタノールアミン 1.0
(12)プロピレングリコール 10.0
(13)ポリエチレングリコール20000 0.5
(14)カルボキシビニルポリマー 0.05
(15)精製水 残量
(16)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.05
(17)香料 適量
(製法)
A.成分(1)〜(10)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.成分(11)〜(15)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.BにAを加え乳化する。
D.Cを冷却後、成分(16)、(17)を加え混合し、クレンジングクリームを得た。
得られたクレンジングクリームは軽やかな伸び広がりでメイクの汚れ落ちもよく、皮膚の炎症や肥厚を抑え、皮膚を滑らかにするクレンジングクリームであった。
【0025】
例2:洗顔料
(成分) (%)
(1)ラウリン酸 5.0
(2)ミリスチン酸 18.5
(3)ステアリン酸 6.0
(4)グリセリン 12.0
(5)ポリエチレングリコール1500 5.0
(6)水酸化カリウム 6.5
(7)精製水 残量
(8)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 5.0
(9)ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 1.8
(10)ポリオキシエチレン(7.5E.O.)ラウリル
エーテル 2.0
(11)ジステアリン酸エチレングリコール 1.0
(12)ヒドロキシプロピルメチルセルロース1%水溶液 5.0
(13)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.1
(14)香料 適量
(製法)
A.成分(1)〜(7)を加熱溶解する。
B.成分(8)〜(11)を加熱溶解する。
C.AにBを加え混合する。
D.Cを冷却後、成分(12)〜(14)を加え混合し、洗顔料を得る。
得られた洗顔料はキメ細やかな豊かな泡立ちとさっぱりとした使用感を有しており、皮膚の炎症や肥厚を抑え、皮膚を滑らかにする洗顔料であった。
【0026】
例3:化粧水1
(成分) (%)
(1)クエン酸 0.05
(2)クエン酸ナトリウム 0.2
(3)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)液*1 0.5
(4)グリセリン 3.0
(5)1,3−ブチレングリコール 8.0
(6)L−アスコルビン酸2−グルコシド*2 2.0
(7)水酸化ナトリウム 0.25
(8)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.2
(9)精製水 残量
(10)エチルアルコール 10.0
(11)香料 適量
(12)防腐剤 適量
(13)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
*1:味の素社製
*2:林原生物化学研究所社製
(製法)
A.成分(1)〜(9)を混合溶解する。
B.成分(10)〜(13)を混合溶解する。
C.AにBを加え混合し、化粧水を得た。
得られた化粧水1はみずみずしくさっぱりとした使用感を有しており、皮膚の炎症や皮膚の肥厚を抑え、皮膚をみずみずしく保ち、皮膚を滑らかにする化粧水であった。
【0027】
例4:化粧水2
(成分) (%)
(1)メドウホーム油 0.1
(2)ホホバ油 0.05
(3)香料 適量
(4)防腐剤 適量
(5)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
(6)イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化
ヒマシ油(50E.O.) 1.0
(7)エチルアルコール 8.0
(8)グリセリン 5.0
(9)1,3−ブチレングリコール 5.0
(10)ポリエチレングリコール1500 0.1
(11)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.1
(12)精製水 残量
(製法)
A.成分(1)〜(7)を混合溶解する。
B.成分(8)〜(12)を混合溶解する。
C.BにAを加え混合し、化粧水を得る。
得られた化粧水2はみずみずしくまろやかな使用感を有しており、皮膚の炎症や肥厚を抑え、皮膚をみずみずしく保ち、皮膚を滑らかにする化粧水であった。
【0028】
例5:化粧水3
(成分) (%)
(1)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.08
(2)スクワラン 0.02
(3)セスキオレイン酸ソルビタン 0.05
(3)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.05
(4)ポリオキシエチレン(8E.O.)アルキレン(12〜15)
エーテルリン酸 0.1
(5)防腐剤 適量
(6)香料 適量
(7)エチルアルコール 8.0
(8)ジプロプレングリコール 8.0
(9)グリセリン 4.0
(10)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.1
(11)精製水 残量
(製法)
A.成分(1)〜(7)を混合溶解する。
B.成分(8)〜(11)を混合溶解する。
C.BにAを加え乳化し、化粧水を得る。
得られた化粧水3はすっきりとした軽やかな使用感を有しており、皮膚の炎症や肥厚を抑え、皮膚をみずみずしく保ち、皮膚を滑らかにする化粧水であった。
【0029】
例6:乳液
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 1.0
(2)セタノール 0.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 0.5
(4)流動パラフィン 2.0
(5)スクワラン 3.0
(6)ホホバ油 3.0
(7)パルミチン酸セチル 0.2
(8)防腐剤 適量
(9)モノステアリン酸ソルビタン 0.3
(10)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
(11)トリエタノールアミン 0.5
(12)1,3−ブチレングリコール 15.0
(13)グリセリン 3.0
(14)ポリエチレングリコール6000 0.5
(15)精製水 残量
(16)カルボキシビニルポリマー1%溶液 8.0
(17)グリチルリチン酸ジカリウム*1 0.1
(18)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.5
(19)香料 適量
*1:丸善製薬社製
(製法)
A.成分(1)〜(10)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.成分(11)〜(15)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.AにBを加え乳化し、更に成分(16)〜(17)を加え混合する。
D.Cを冷却し、成分(18)、(19)を加え混合し、乳液を得る。
得られた乳液は滑らかでまろやかな使用感を有しており、皮膚の炎症や肥厚を抑え、皮膚に保湿感と適度なエモリエント感を付与し、皮膚を柔軟にする乳液であった。
【0030】
例7:クリーム
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 2.5
(2)セタノール 2.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)ワセリン 2.0
(5)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル*1 2.0
(6)ミリスチン酸イソトリデシル 5.0
(7)流動パラフィン 8.0
(8)スクワラン 5.0
(9)ミツロウ 1.0
(10)パルミチン酸セチル 2.0
(11)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 1.5
(13)防腐剤 適量
(14)トリエタノールアミン 1.2
(15)1,3−ブチレングリコール 8.0
(17)グリセリン 2.0
(17)ポリエチレングリコール20000 0.5
(18)精製水 残量
(19)カルボキシビニルポリマー1%水溶液 10.0
(20)アルブチン*2 3.0
(21)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 1.0
(22)香料 適量
*1:コスモール168AR(日清オイリオグループ社製)
*2:和光純薬工業社製
(製法)
A.成分(1)〜(13)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.成分(14)〜(18)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.AにBを加え乳化し、更に成分(19)を加え混合する。
D.Cを冷却し、成分(20)、(21)、(22)を加え混合し、クリームを得る。
得られたクリームは滑らかでコクのある使用感を有しており、皮膚の炎症や肥厚を抑え、、皮膚に高いエモリエント感を付与し、皮膚を柔軟にするクリームであった。
【0031】
例8:美容液
(成分) (%)
(1)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
(2)メドウホーム油 0.05
(3)ホホバ油 0.05
(4)防腐剤 適量
(5)香料 適量
(6)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 0.5
(7)イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化
ヒマシ油(50E.O.) 1.5
(8)エチルアルコール 5.0
(9)グリセリン 4.0
(10)ジプロピレングリコール 8.0
(11)1,3−ブチレングリコール 8.0
(12)乳酸ナトリウム 0.5
(13)ピロリドンカルボン酸ナトリウム(50%)液*1 0.5
(14)ヒドロキシエチルセルロース 0.08
(15)アルギン酸ナトリウム 0.05
(16)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.2
(17)精製水 残量
(製法)
*1:味の素社製
A.成分(1)〜(8)を混合溶解する。
B.成分(9)〜(17)を混合溶解する。
C.BにAを加え混合し、美容液を得る。
得られた美容液はまろやかでマイルドな使用感を有しており、皮膚の炎症や肥厚を抑え、皮膚に高い保湿感とエモリエント感を付与し、皮膚をみずみずしく柔軟にする美容液であった。
【0032】
例9:パック(ピールオフ型)
(成分) (%)
(1)ポリビニルアルコール 12.0
(2)メチルセルロース 0.1
(3)グリセリン 3.0
(4)1,3−ブチレングリコール 5.0
(5)精製水 残量
(6)香料 適量
(7)防腐剤 適量
(8)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
(9)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)
ソルビタン 1.0
(10)エチルアルコール 13.0
(11)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.1
(製法)
A.成分(1)〜(5)を加熱溶解する。
B.成分(6)〜(10)を混合溶解する。
C.Aを冷却後、B、成分(11)を加え混合し、パックを得る。
得られたパックは適度な清涼感と高い緊張感を有しており、皮膚の炎症や肥厚を抑え、パックした後の皮膚に適度な保湿感とはり感を付与し、皮膚を柔軟にするパックであった。
【0033】
例10:マッサージクリーム
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 2.0
(2)ステアリルアルコール 2.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)セスキオレイン酸ソルビタン 1.0
(5)パルミチン酸セチル 1.0
(6)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル*1 4.0
(7)ワセリン 20.0
(8)流動パラフィン 28.0
(9)ジメチルポリシロキサン(100CS) 0.5
(10)水酸化ナトリウム 0.1
(11)ジプロピレングリコール 7.0
(12)カルボキシビニルポリマー 0.1
(13)精製水 残量
(14)ピリドキシン3,4−環状リン酸ナトリウム 0.1
(15)香料 適量
*1:コスモール168AR(日清オイリオグループ社製)
(製法)
A.成分(1)〜(9)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.成分(10)〜(13)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.BにAを加え乳化する。
D.Cを冷却後、成分(14)、(15)を加え混合し、マッサージクリームを得た。
得られたマッサージクリームはコクがある滑らかな使用感を有しており、マッサージ効果が高く、皮膚の炎症や肥厚を抑え、皮膚に潤いとはり感を付与し、皮膚を滑らかにするマッサージクリームであった。
【0034】
例11:リキッドファンデーション
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 2.0
(2)セタノール 0.5
(3)ベヘニルアルコール 1.0
(4)ワセリン 2.5
(5)流動パラフィン 5.0
(6)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1.0
(7)防腐剤 適量
(8)酸化チタン 6.0
(9)着色顔料 4.0
(10)マイカ 2.0
(11)タルク 4.0
(12)カルボキシメチルセルロース 0.2
(13)ベントナイト 0.4
(14)精製水 残量
(15)ピリドキシン3,4−環状リン酸マグネシウム 1.0
(16)香料 適量
(製法)
A.成分(1)〜(7)を加熱溶解する。
B.Aに成分(8)〜(11)を加え、均一に混合し、70℃に保つ。
C.成分(12)〜(14)を加熱溶解し、70℃に保つ。
D.CにBを加えて乳化する。
E.Dを冷却後、成分(15)、(16)を加え混合し、リキッドファンデーションを得た。
得られたリキッドファンデーションは軽やかな伸び広がりのある使用感を有しており、皮膚の炎症や肥厚を抑え、均一で美しい仕上がりとなるリキッドファンデーションであった。
【0035】
試験例
ケラチノサイトに紫外線を照射した際に生じるインターロイキン−6の産生を指標として、ピリドキシン3,4−環状リン酸のインターロイキン−6産生抑制作用を検討した。
ヒト正常皮膚ケラチノサイトを培養し、24穴プレートに1×104/cm2の密度で播種し、サブコンフルエント状態まで培養を継続した。培地としてKGM2(クラボウ製、0.03%Ca)を用い、ピリドキシン3,4−環状リン酸を最終濃度25, 12.5, 6.25, 3.12, 1.56 mg/mLとなるように培地中に100μLずつ添加した。ピリドキシン3,4−環状リン酸の希釈には水を用い、5N NaOHで中和した。3時間後にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した後、ハンクス液を1 mLづつ添加して紫外線を照射した。紫外線照射にはUV-B(Dermaray)を用い、50 mJを照射した。ハンクス液を除去後、培地を添加してピリドキシン3,4−環状リン酸を再添加した。24時間後に培地を採取し、遠心濾過して細胞成分などを除き、得られた培地中のインターロイキン−6をIL-6測定キットで測定した。測定にはInterleukin-6[(h)IL-6] Human, ELISA BiotrakTM Systemを用いた。対照としてピリドキシン3,4−環状リン酸無処理細胞、及び紫外線無照射細胞について同様に試験を行った。結果を図1に示す。この結果から紫外線照射により惹起されるインターロイキン−6の産生をピリドキシン3,4−環状リン酸が顕著に抑制していることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】紫外線照射により惹起されるケラチノサイトにおけるインターロイキン−6産生に対するピリドキシン3,4−環状リン酸の抑制効果を示した図である。図中、UV+は紫外線照射、UV-は紫外線無照射の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピリドキシン 3,4'-環状リン酸又は生理学的に許容されるその塩を有効成分として含むインターロイキン−6産生抑制剤。
【請求項2】
インターロイキン−6の過剰産生に起因する疾患の予防及び/又は治療のための医薬であって、請求項1に記載のインターロイキン−6産生抑制剤を含む医薬。
【請求項3】
インターロイキン−6の過剰産生に起因する皮膚障害の抑制及び/又は改善作用を有する化粧料であって、請求項1に記載のインターロイキン−6産生抑制剤を含む化粧料。
【請求項4】
皮膚障害が皮膚炎及び/又は皮膚肥厚である請求項3に記載の化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2007−277134(P2007−277134A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104038(P2006−104038)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【出願人】(390010205)第一ファインケミカル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】