説明

インバータ装置及びそれを備えた電動工具

【課題】 インバータ装置を提供する。
【解決手段】 インバータ装置1は、インバータ回路16と、電流検出抵抗17と、インバータ回路停止部20と、を備えている。インバータ回路16は、直流電力を交流電力に変換して出力する。電流検出抵抗17は、前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する。インバータ回路停止部20は、前記電流値が過電流閾値を上回った場合にインバータ回路16からの交流電力の出力を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置及びそれを備えた電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インバータ回路を備えた電子機器が知られている。このような電子機器は、商用電源からの交流電力をトランスで変圧し、整流・平滑回路で直流電力に整流・平滑した後、インバータ回路で所定の交流電力に変換してACモータ等に出力している。
【0003】
また、電子機器のACモータを作動させるために、電池パックからの直流電力を交流電力に変換して電子機器に供給するという構成も考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子機器のACモータを作動させるために、電池パックからの直流電力を交流電力に変換して電子機器に供給するという構成の場合、直流電力を交流電力に変換するために、スイッチング回路と、トランスと、整流・平滑回路と、インバータ回路と、を備えたインバータ装置を電池パックと電子機器との間に接続することとなる。
【0006】
しかしながら、このような構成のインバータ装置に過電流が流れた場合、インバータ回路が故障してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、インバータ回路を過電流から保護することのできるインバータ装置及びそれを備えた電動工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインバータ装置は、直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ回路と、前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、前記電流値が過電流閾値を上回った場合に前記インバータ回路からの交流電力の出力を停止させる停止手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、電流値が過電流閾値を上回った場合にインバータ回路からの交流電力の出力を停止させるので、インバータ回路が故障することを防止することができる。
【0010】
また、本発明のインバータ装置は、前記インバータ回路からの交流電力の出力が停止された後、所定時間経過後に前記インバータ回路からの交流電力の出力を復帰させる復帰手段を更に備えることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、インバータ回路からの交流電力の出力が停止された後、所定時間経過後にインバータ回路からの交流電力の出力を復帰させるので、インバータ装置の起動時にソフトスタートを実現させることができる。
【0012】
また、本発明のインバータ装置は、前記電流値が所定値を上回ってから所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が前記所定値を再び上回った場合に、前記復帰回路による前記インバータ回路からの交流電力の出力の復帰を防止する防止手段を更に備えることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、高負荷時に停止及び解除動作を繰り返して電力を浪費することを防止することができる。
【0014】
また、前記インバータ回路は、FETを有し、前記FETのオン・オフにより前記交流電力を出力することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、過電流に弱いFETが故障することを防止することができる。
【0016】
また、本発明のインバータ装置は、電池パックから供給される直流電力を交流電力に変換して出力するスイッチング手段と、前記スイッチング手段から出力された交流電力を変圧して出力する変圧回路と、前記変圧回路から出力された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流・平滑回路と、を更に備え、前記インバータ回路は、前記整流・平滑回路から出力された直流電力を交流電力に変換して出力することが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、電池パックに過電流が流れることも防止することができるので、電池パックの寿命が短くなることを防止することができる。
【0018】
また、前記インバータ回路を構成する複数のFETのオン・オフ信号を出力するPWM信号出力部と、前記PWM信号出力部と制御信号ラインで接続され前記FETを制御するための制御信号を出力する制御部と、を備え、前記停止手段は、前記過電流閾値を生成する基準電流入力部と、前記電流検出手段により検出した電流値が入力される検出電流入力部と、前記基準電流入力部からの出力と前記検出電流入力部からの出力を比較する比較部と、前記比較部の出力に応じて前記インバータ回路の出力を停止させる停止部と、を備え、前記停止部は、前記制御信号ラインに接続されることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、信号ラインに停止部を接続したため、停止部へ加わる負荷を小さくすることができる。すなわち、例えば、停止部を直接インバータ回路に接続した場合にはインバータ回路のFETを駆動するための駆動電圧(電流)が必要となるため、停止部をFETに合わせた仕様にしなければならない。本発明によれば、信号ラインに接続したのでこのような問題を生じることが無い。
【0020】
また、前記比較部は、前記基準電流入力部からの出力と前記検出電流入力部からの出力が入力されるオペアンプと、前記オペアンプの出力側に接続されるダイオード及び放電用抵抗と、前記ダイオードの他端側に接続されるコンデンサと、を備え、前記停止部はFETを備え、前記コンデンサが所定電圧以上になった際に前記FETがオンすることで前記インバータ回路の出力を停止することが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、簡単な構成で停止手段を構成することができる。
【0022】
また、前記FETがオンした後に前記オペアンプの出力が反転した場合、前記コンデンサの電圧は、前記放電用抵抗及び前記ダイオードを介して放電することで前記FETをオフすることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、オペアンプの出力が反転した際にコンデンサ電圧が自動的に放電するため容易にFETをオフさせることができ、回路構成を簡単にできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、インバータ回路を過電流から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態によるインバータ装置の回路図
【図2(a)】起動電流について説明するタイムチャート
【図2(b)】本発明の実施の形態による起動時の電流の変化について説明するタイムチャート
【図2(c)】本発明の実施の形態による起動時のモータ回転数の変化について説明するタイムチャート
【図2(d)】本発明の実施の形態による高負荷時の電流の変化について説明するタイムチャート
【図3】本発明の実施の形態によるインバータ回路の停止制御について説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1乃至図3を用いて、本発明の実施の形態によるインバータ装置1について説明する。
【0027】
図1は、インバータ装置1の回路図である。インバータ装置1は、電池パック2から供給された直流電力を交流電力に変換して電子機器、例えば電動工具となる芝刈機3のACモータ31に供給するために、電池パック2と電子機器3との間に接続されている。ACモータ31には、電子機器3のトリガスイッチ32が操作されると、インバータ装置1から交流電力が供給される。インバータ装置1は、電池パック2と電子機器3との間で着脱可能であるが、以下では、接続されているものとして説明する。
【0028】
インバータ装置1は、電池電圧検出部11と、電源部12と、昇圧回路(変圧回路)13と、整流・平滑回路14と、昇圧電圧検出部15と、インバータ回路16と、電流検出抵抗17と、PWM信号出力部18と、制御部(防止手段)19と、インバータ回路停止部(停止手段、復帰手段)20と、を備えている。
【0029】
電池電圧検出部11は、電池電圧検出抵抗111及び112を備えている。電池電圧検出抵抗111及び112は、電池パック2のプラス側端子21とマイナス側端子22の間に直列に接続されており、電池パック2の電池電圧の、電池電圧検出抵抗111と電池電圧検出抵抗112とによる分圧電圧を制御部19に出力する。なお、図1に示す電池パック2は、3.6V/セルのリチウム電池セルが4本直列接続され、定格電圧14.4Vを出力する。
【0030】
電源部12は、電池パック2のプラス側端子21と制御部19との間に直列に接続された電源スイッチ121及び定電圧回路122を備えている。定電圧回路122は、三端子レギュレータ122aと、発振防止用コンデンサ122b及び122cと、を備えており、ユーザにより電源スイッチ121がオンされると、電池パック2からの電圧を所定の直流電圧(例えば5V)に変換し、制御部19に駆動電力として供給する。なお、電源スイッチ121がオフされると、制御部19に駆動電力が供給されなくなるので、インバータ装置1全体がオフされることとなる。
【0031】
昇圧回路13は、トランス131と、FET132と、を備えており、トランス131は、一次側巻線131aと、二次側巻線131bと、を備えている。一次側巻線131aは、電池パック2のプラス側端子21とマイナス側端子22の間に接続されており、トランス131の一次側巻線131aとマイナス側端子22の間には、更に、FET132が配置されている。FET132のゲートには、FET132をオン・オフさせるための第1のPWM信号が制御部19から入力され、FET132のオン・オフにより、電池パック2からトランス131の一次側巻線131aに供給された直流電力は、一次側巻線131aと二次側巻線131bとの巻数比に応じた交流電力に変圧されて二次側巻線131bから出力される。
【0032】
整流・平滑回路14は、整流ダイオード141及び142と、平滑コンデンサ143と、を備えており、これらにより、トランス131により昇圧された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する。
【0033】
昇圧電圧検出部15は、互いに直列接続された抵抗151及び152から構成されており、整流・平滑回路14から出力された直流の昇圧電圧(平滑コンデンサ電圧、例えば140V)を検出し、昇圧電圧の、抵抗151と抵抗152とによる分圧電圧を制御部19に出力する。
【0034】
インバータ回路16は、4つのFET161−164から構成されており、直列に接続されたFET161及び162と、直列に接続されたFET163及び164とが、平滑コンデンサ143に並列に接続されている。詳細には、FET161のドレインは、整流ダイオード141及び142のカソードと接続され、FET161のソースは、FET162のドレインに接続されている。また、FET163のドレインは、整流ダイオード141及び142のカソードと接続され、FET163のソースは、FET164のドレインに接続されている。
【0035】
更に、FET161のソース及びFET162のドレイン、FET163のソース及びFET164のドレインは、それぞれ、出力端子165、166と接続されており、出力端子165、166は、ACモータ31に接続されている。FET161−164のゲートには、FET161−164をオン・オフさせるための第2のPWM信号がPWM信号出力部18から入力され、FET161−164のオン・オフにより、整流・平滑回路14から出力された直流電力は交流電力に変換されて電子機器3(ACモータ31)に出力される。
【0036】
電流検出抵抗17は、FET162のソース及びFET164のソースと、電池パック2のマイナス側端子22との間に接続されており、電流検出抵抗17の高電圧側の端子は制御部19と接続されている。このような構成により、電流検出抵抗17は、ACモータ31に流れる電流を検出し、電圧として制御部19及びインバータ回路停止部20に出力する。
【0037】
制御部19は、昇圧電圧検出部15によって検出された昇圧電圧に基づき、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力する。また、制御部19は、目標実効値(例えば、100V)を有する交流電力がACモータ31に出力されるような第2のPWM信号をPWM信号出力部18を介してFET161−164のゲートに出力する。本実施の形態では、制御部19は、FET161とFET164(以降、第1のセット)と、FET162とFET163(以降、第2のセット)とを、それぞれ1セットとして、第1のセットと第2のセットをデューティ比100%で交互にオン・オフさせるような第2のPWM信号を出力する。
【0038】
また、制御部19は、電池電圧検出部11によって検出された電池電圧に基づき、電池パック2の過放電を判別する。具体的には、電池電圧検出部11によって検出された電池電圧が所定の過放電電圧より小さい場合には、電池パック2に過放電が生じていると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0039】
また、電池パック2は、その内部に保護ICやマイコンを備え、自ら過放電を検出して過放電信号を制御部19に出力する機能を有しており、制御部19は、信号端子LDから過放電信号を受信した場合にも、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。このような構成により、電池パック2の寿命が短くなることを防止することができる。
【0040】
インバータ回路停止部20は、基準電流入力部201と、検出電流入力部202と、比較回路203と、停止回路204と、を備えている。
【0041】
基準電流入力部201は、抵抗201a及び201bを備えており、三端子レギュレータ122aから出力された所定の直流電圧の、抵抗201aと抵抗201bとによる分圧電圧を基準電流として比較回路203に出力する。抵抗201a及び201bは、基準電流が過電流の閾値となるような値に設定されている。
【0042】
検出電流入力部202は、抵抗202a−202cと、オペアンプ202dと、を備えており、電流検出抵抗17によって検出された電流(電圧)を増幅し、検出電流として比較回路23に出力する。
【0043】
比較回路203は、オペアンプ203aと、ダイオード203bと、放電用抵抗203cと、コンデンサ203dと、を備え、差動増幅回路として機能する。
【0044】
オペアンプ203aは、入力された基準電流と検出電流とを比較し、検出電流が基準電流以下の場合にはLレベルの信号を出力し、検出電流が基準電流より大きい場合にはHレベルの信号を出力する。Hレベルの信号が出力された場合、すなわち、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、ダイオード203bを介してコンデンサ203dに電荷が蓄えられる。
【0045】
停止回路204は、ダイオード204a及び204bと、FET204cと、を備えている。ダイオード204a及び204bのアノードは、制御部19からPWM信号出力部18へ第2のPWM信号を出力するラインのうち、FET162及び164のゲートへ第2のPWM信号を出力するラインとそれぞれ接続されており、ダイオード204a及び204bのカソードは、FET204cのドレインと接続されている。また、FET204cのゲートは、ダイオード203bのカソードと接続されており、ソースは、GNDと接続されている。
【0046】
このような構成により、コンデンサ203dに所定上の電荷が蓄えられている場合には、FET204cがオンすることとなる。FET204cがオンすると、FET162及び164のゲートへ出力されるはずの第2のPWM信号はFET204cを介してGNDへ流れ込むこととなるので、FET162及び164がオフし、インバータ回路16が停止されることとなる。このようにして、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、インバータ回路16が停止されるので、インバータ装置1、特に、インバータ回路16のFET161−164が故障することを防止することができる。
【0047】
なお、インバータ回路16が停止されると、電流検出抵抗17も電流(電圧)を検出しなくなる、すなわち電流検出抵抗17により検出される電流は小さくなるので、オペアンプ203aの出力は反転してLレベルの出力となり、コンデンサ203dに蓄えられた電圧はダイオード203bと並列に接続された放電用抵抗203cを介して放電される。これにより、FET204cは再びオフするので、過電流が解消された後には、インバータ回路16の強制停止が解除される。少なくともダイオード203b、放電用抵抗203c及びコンデンサ203dは本発明の復帰手段を構成する。
【0048】
ところで、図2(a)に示すように、起動時には、インバータ装置1に過電流となるような大きな起動電流が流れるが、起動電流に対してもインバータ回路16を停止させてしまっては、インバータ装置1を起動させることができなくなってしまう。
【0049】
そこで、本実施の形態によるインバータ装置1では、図2(b)に示すように、インバータ回路16の停止によりACモータ31の回転が停止するよりも前に、インバータ回路16の停止を解除するという動作を繰り返す。このような構成により、本実施の形態によるインバータ装置1は、起動時に過電流が流れることを防止すると同時に、いわゆる、ソフトスタートを実現させている。
【0050】
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施の形態におけるソフトスタートについて説明する。
【0051】
図3のフローチャートは、電池パック2がインバータ装置1に装着されている状態で電源スイッチ121がオンされた時、又は、電源スイッチ121がオンされた状態で電池パック2がインバータ装置1に装着された時にスタートする。なお、電源スイッチ121をオンすることによって、電池パック2の電圧から定電圧回路122に電圧が供給されることで制御部19の駆動電圧が生成され制御部19が動作することになる。
【0052】
まず、制御部19は、目標実効値(例えば、141V)を有する交流電力がトランス131の二次側から出力されるような第1のPWM信号をFET132のゲートに出力し(S301)、昇圧電圧検出部15によって検出された電圧に基づき、トランス131で昇圧された電圧の実効値が目標実効値より大きいか否かを判断する(S302)。
【0053】
昇圧された電圧が目標実効値より大きい場合には(S302:YES)、FET132のデューティ比を減少させ(S303)、昇圧された電圧が目標実効値以下の場合には(S302:NO)、FET132のデューティ比を増加させる(S304)。
【0054】
続いて、電池電圧検出部11によって検出された電圧に基づき、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧より小さいか否かを判断する(S305)。所定の過放電電圧より小さい場合には(S305:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S309)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。これにより、昇圧回路13及びインバータ回路16の動作が停止され、インバータ装置1からACモータ31への出力が停止される。
【0055】
また、電池パック2の電池電圧が所定の過放電電圧以上の場合には(S305:NO)、電池パック2からLD端子を介して過放電信号が入力されたか否かを判断する(S306)。過放電信号が入力されていた場合には(S306:YES)、電池パック2が過放電状態にあると判断し、ACモータ31への出力を停止させるための第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力する(S309)。すなわち、第1のPWM信号及び第2のPWM信号の出力を停止する。
【0056】
一方、過放電信号が入力されていない場合には(S306:NO)、インバータ回路停止部20によりソフトスタート制御が行われる。
【0057】
詳細には、電流検出抵抗17によって検出された電流(電圧)に基づき、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きいか否かが判断され(S307)、大きい場合には(S307:YES)、FET162及びFET164を所定時間オフさせた後(S308)、S301へ戻る。なお、インバータ装置1を起動させるためには、前記所定時間は、インバータ回路16の停止からACモータ31の回転が停止するよりも前までの時間である必要があり、本実施の形態では、0.5msecに設定されている。
【0058】
このような制御により、インバータ装置1の起動時には、電流の大きさは、図2(b)に示すように変化し、ACモータ31の回転数は、図2(c)に示すように変化する。また、高負荷時には、電流の大きさは、図2(d)に示すように変化する。
【0059】
以上のように、本実施の形態によるインバータ装置1では、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合にはインバータ回路16を停止させる。従って、インバータ回路16、特に、FET161−164が故障することを防止することが可能となる。同時に、電池パック2に過電流が流れることも防止することができるので、電池パック2の寿命が短くなることも防止することができる。
【0060】
また、本実施の形態によるインバータ装置1では、インバータ回路16の停止によりACモータ31の回転が停止するよりも前にインバータ回路16の停止を解除するので、起動時に過電流が流れることを防止すると同時に、ソフトスタートが実現されている。
【0061】
尚、本発明の電動工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0062】
例えば、上記実施の形態では、ACモータ31への出力を停止させるために第1のPWM信号及び第2のPWM信号を出力したが、いずれか一方のみを出力する構成であってもACモータ31への出力を停止させることができる。
【0063】
また、上記実施の形態では、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合にインバータ回路16の停止と解除を繰り返したが、高負荷時には過電流が解消される可能性が低いため、同様の制御を行うことは電力の浪費となる。従って、最初にインバータ回路16を停止させてから所定時間経過後に、依然として、インバータ装置1に流れる電流が過電流閾値より大きい場合には、解除動作を停止させることが好ましい。
【0064】
その場合、インバータ装置1は、解除動作を停止させた回数を記憶しておき、停止回数の履歴を表示してもよい。また、所定回数以上停止された場合には、電池パック2が寿命であることを報知してもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、インバータ回路停止部20がインバータ回路16を停止させたが、制御部19が、電流検出抵抗17によって検出された電流に基づき、FET162及びFET16をオフさせてインバータ回路16を停止させてもよい。なお、全てのFETをオフさせてもよい。
【0066】
また、インバータ装置1に接続される電池パック2を14.4Vとして説明したが、種類が異なる電池パック、例えばリチウム電池や、ニカド電池、或いはニッケル水素電池からなる電池パックの何れかを接続可能にしても良いし、電池電圧が異なる複数の電池パックを接続可能にしても良い。
【0067】
また、図3のフローチャートにおける、S301−S304での昇圧電圧の制御、S305−S306での過放電の検出、及び、S307での過電流の検出は、フローチャート内のどの位置で行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 インバータ装置
2 電池パック
13 昇圧回路
14 整流・平滑回路
16 インバータ回路
17 電流検出抵抗
19 制御部
20 インバータ回路停止部
117 電流検出抵抗
141 整流ダイオード
142 整流ダイオード
143 平滑コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路に流れる電流の電流値を検出する電流検出手段と、
前記電流値が過電流閾値を上回った場合に前記インバータ回路からの交流電力の出力を停止させる停止手段と、
を備えたことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記インバータ回路からの交流電力の出力が停止された後、所定時間経過後に前記インバータ回路からの交流電力の出力を復帰させる復帰手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記電流値が所定値を上回ってから所定時間以上経過後に前記電流検出手段により検出された電流値が前記所定値を再び上回った場合に、前記復帰手段による前記インバータ回路からの交流電力の出力の復帰を防止する防止手段を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記インバータ回路は、FETを有し、前記FETのオン・オフにより前記交流電力を出力することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項5】
電池パックから供給される直流電力を交流電力に変換して出力するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段から出力された交流電力を変圧して出力する変圧回路と、
前記変圧回路から出力された交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流・平滑回路と、
を更に備え、
前記インバータ回路は、前記整流・平滑回路から出力された直流電力を交流電力に変換して出力することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記インバータ回路を構成する複数のFETのオン・オフ信号を出力するPWM信号出力部と、
前記PWM信号出力部と制御信号ラインで接続され前記FETを制御するための制御信号を出力する制御部と、を備え、
前記停止手段は、前記過電流閾値を生成する基準電流入力部と、前記電流検出手段により検出した電流値が入力される検出電流入力部と、前記基準電流入力部からの出力と前記検出電流入力部からの出力を比較する比較部と、前記比較部の出力に応じて前記インバータ回路の出力を停止させる停止部と、を備え、
前記停止部は、前記制御信号ラインに接続されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記比較部は、前記基準電流入力部からの出力と前記検出電流入力部からの出力が入力されるオペアンプと、前記オペアンプの出力側に接続されるダイオード及び放電用抵抗と、前記ダイオードの他端側に接続されるコンデンサと、を備え、
前記停止部は、FETを備え、
前記コンデンサが所定電圧以上になった際に前記FETがオンすることで前記インバータ回路の出力を停止することを特徴とする請求項6に記載のインバータ装置。
【請求項8】
前記FETがオンした後に前記オペアンプの出力が反転した場合、前記コンデンサの電圧は、前記放電用抵抗及び前記ダイオードを介して放電することで前記FETをオフすることを特徴とする請求項7に記載のインバータ装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のインバータ装置に接続されるモータを備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項10】
前記停止回路は、少なくとも前記モータの起動時に動作することを特徴とする請求項9に記載の電動工具。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−151919(P2012−151919A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6443(P2011−6443)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】