説明

インピーダンス回路およびこれを用いた信号生成回路

【課題】基準周波数を得る場合、安定した周波数、もしくは遅延要素を得る回路を提供する。
【解決手段】第1の温度変動率を持つ第1のインピーダンス回路1と第1の能動回路3で構成した第1の発振回路6と、第1の温度変動率とは逆の変動方向となる第2の温度変動率を持つ第2のインピーダンス回路2と第2の能動回路4で構成した第2の発振回路7との出力を時系列的に交互に切替器5で選択する。第1のインピーダンス回路1の温度係数の絶対値が第2のインピーダンス回路2の温度係数より大きいとき、第1の発振回路6の使用時間を短くし、温度係数の小さい第2の発振回路7の使用時間を長く動作させるように、温度係数の比と逆の比率で発振回路の使用時間の比率を設定する。温度変動方向が逆の2つの温度係数を有することから、平均値として温度変動がほぼなく軽減される。時間平均値として温度変動が極めて小さく温度変動率の改善された発振周波数を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路または電気信号処理システムで使用され、基準周波数信号の発生に係るインピーダンス回路およびこれを用いた信号生成回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体集積回路装置においては小型化,高精度化の両方が求められている。回路特性の高精度化の手段として、トリミング技術等が用いられる。特性に寄与するパラメータ等は調整回路等を設けて、トリミング等による調整が可能である。また温度変動に関しては、2本の抵抗の比でゲインが決まるアンプ等においての温度変動は無くなるが、何らかの時定数(例えば、抵抗(R)やコンデンサ(L)やコイル(C))を得ようとしたとき、多くの場合はその素子の絶対値が時定数に直接現れる。この絶対値は、前述のトリミングなどの技術で補正することができるが、絶対値が持つ温度変動を安定化することは極めて困難であり、かつ実現したとしても、安定化するための回路の規模は軽視できない大きな規模となる。
【0003】
特許文献1には、所望の温度範囲にわたって水晶発振器の出力周波数を安定化するための補償回路を備えた温度補償水晶発振器の提案がある。
【特許文献1】特開平11−220327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体集積回路装置としての性能スペックが厳しい場合に、トリミング等により特性の標準温度での標準値は合わせ込むことができるが、温度変動に関しては、回路設計上、温度依存しないように設計できない場合、別途保証回路が必要になり、チップ面積の大型化,消費電力の増加,回路応答の鈍化などの好ましくない現象を伴う。
【0005】
特性の絶対値バラツキは回路設計上、不可避もしくは設計が困難な場合、外部システムにより、キャリブレーションやバラツキ補正用データテーブルを利用した調整、もしくは基準値をもとにしたフィードバック制御などで可能である。しかし、温度変動に関しては温度検出回路が必要であり、また前記フィードバック制御により全時間補正もできるが、フィードバック制御は目的とする特性の検出確認方法、安定性や応答性の問題から最適とはいえない。
【0006】
このような状況下において内部回路で温度補償を行うにしても、低消費電力化が求められ、かつ小規模なシステムの集積回路では、温度補償回路の搭載は深刻なスペックダウンを招くことになる。
【0007】
本発明は、基準周波数を得る場合の、これらの複雑な課題を速やかに解決することに指向するものであり、安定した周波数、もしくは遅延要素を得ることができるインピーダンス回路およびこれを用いた信号生成回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載したインピーダンス回路は、第1の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第1のインピーダンス回路と、第1の温度変動率とは逆の変動方向となる第2の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第2のインピーダンス回路とからなり、第1,第2のインピーダンス回路の有する第1,第2の温度変動率に応じて、第1,第2のインピーダンス回路の使用比率を調整することで第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得るようにして、第1,第2のインピーダンス回路を切り替えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載したインピーダンス回路は、請求項1のインピーダンス回路であって、第1,第2のインピーダンス回路が置かれている環境温度を検出する温度検出器を備え、第1,第2のインピーダンス回路の有する第1,第2の温度変動率に応じて、第1,第2のインピーダンス回路の使用比率を調整することで第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得る際に、第1,第2の温度変動率が温度に対し非直線性を有するとき、第1,第2のインピーダンス回路の使用比率の調整量を温度検出器の出力に応じて変化させ、第1,第2のインピーダンス回路を切り替えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載した信号生成回路は、請求項1記載の第1,第2のインピーダンス回路からなるインピーダンス回路と、第1のインピーダンス回路を用いて発振する第1の発振回路と、第2のインピーダンス回路を用いて発振する第2の発振回路と、第1,第2の発振回路を交互に切り替える切替器と、第1,第2の発振回路の使用比率を調整することで第1,第2のインピーダンス回路の有する第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得るように、切替器を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載した信号生成回路は、請求項2記載の第1,第2のインピーダンス回路と温度検出器を備えたインピーダンス回路と、第1のインピーダンス回路を用いて発振する第1の発振回路と、第2のインピーダンス回路を用いて発振する第2の発振回路と、第1,第2の発振回路を交互に切り替える切替器と、第1,第2の発振回路の使用比率を調整する際に、第1,第2のインピーダンス回路の有する第1,第2の温度変動率が温度に対し非直線性を有するとき、使用比率の調整量を温度検出器の出力に応じて変化させ、第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得るように、切替器を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5,6に記載した信号生成回路は、請求項3,4の信号生成回路であって、制御回路に代えて第1,第2の発振回路からの出力信号を計数するカウンタ回路を備え、カウンタ回路の計数結果に応じて切替器を制御すること、さらに、カウンタ回路に代えて第1,第2の発振回路から信号を出力する時間を計測する時間計測器を備え、時間計測器の計測時間により切替器を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載した信号生成回路は、第1の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第1のインピーダンス回路と、第1の温度変動率とは逆の変動方向となる第2の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第2のインピーダンス回路と、第1のインピーダンス回路と第2のインピーダンス回路を切替器により交互に切り替えて発振する発振回路と、第1,第2の温度変動率の大きさに応じて第1,第2のインピーダンス回路の使用比率を調整することで第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得るように、切替器を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0014】
前記構成によれば、時定数または共振周波数の持つ温度変動率の変動方向が逆の任意の温度変動率を有する2つのインピーダンス回路を備え、各温度変動率の大きさに応じて、時系列的に交互に利用して発振させるための時定数または共振周波数もしくは遅延要素とし、異なる温度変動方向を持つインピーダンス回路の使用比率を調整して温度変動率を平均値として得るようにすることで、この平均値がほぼ「0」もしくは「0」に近くなり温度変動率を平坦化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基準周波数もしくは遅延要素を得るにあたり、温度変動率を極めて平坦化することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態1における信号生成回路の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、信号生成回路は、第1の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有し、抵抗(R),コイル(L),コンデンサ(C)をもとに作られた第1のインピーダンス回路1と、第1の温度変動率とは逆の変動方向となる第2の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有し、R,L,Cをもとに作られた第2のインピーダンス回路2と、発振器を構成するための第1,第2の能動回路3,4と、信号を選択するための切替器5と、この切替器5を制御する制御回路8を備えている。
【0018】
そして、第1のインピーダンス回路1と第1の能動回路3から構成した第1の発振回路6と、第2のインピーダンス回路2と第2の能動回路4から構成した第2の発振回路7の出力を時系列的に交互に切替器5により選択して使用する。
【0019】
例えば、第1と第2のインピーダンス回路1,2は、図2に示すようなRC回路で実現可能であり、抵抗(R),コンデンサ(C)は共に、ディスクリート部品や半導体集積回路等で容易に得られる。第1,第2のインピーダンス回路1,2として、それぞれ図2に示すRC回路として、コンデンサC1,C2には温度変動の等しいものを使用し、第1のインピーダンス回路1のR1に正の温度係数を持つ抵抗、第2のインピーダンス回路2のR2に負の温度係数の抵抗を使用する。また、図1の第1,第2の能動回路3,4にはアンプ等を用いて、図3のような発振回路を構成する。
【0020】
仮に、第1のインピーダンス回路1の温度係数の絶対値を第2のインピーダンス回路2の温度係数より大きいもので構成した場合、第1のインピーダンス回路1を利用している第1の発振回路6の使用時間を短くし、温度変動率の小さい第2のインピーダンス回路2を利用している第2の発振回路7の使用時間を長くする。このように動作させるため、各時定数の温度係数の比と逆の比率で発振回路の使用時間の比率を設定することにより、温度変動の方向が逆の2つの温度係数を有するため、発振周波数は、平均値として温度変動がほぼ無くなるか、極めて軽減される。
【0021】
いま、第1のインピーダンス回路1の有する時定数の温度係数が+2(s/T)で、第2のインピーダンス回路2の有する温度係数が−1(s/T)であったとすると、2つのインピーダンス回路を時間で切り替え、常に、第1のインピーダンス回路1の使用時間を図4に示すb期間の「1s」とし、第2のインピーダンス回路2の使用時間を図4に示すa期間の「2s」となるように使用する。これにより、第1のインピーダンス回路1および第2のインピーダンス回路2を切り替えて使用した場合、時定数の平均値は温度が変化しても常にほぼ「0」を保つ。
【0022】
本実施形態1によると、時間平均値として温度変動が極めて小さい時定数または共振周波数を得ることが可能となり、特別な温度補償回路を設けることによるシステム規模の増大等がなく、温度安定性の良い時定数または共振周波数を得られる。
【0023】
なお、本実施形態1では、コンデンサの温度係数は等しいとして説明したが、温度係数が異なる場合は、抵抗,コンデンサ両方の温度係数を考慮して、第1,第2のインピーダンス回路1,2に有する時定数の温度係数が正,負になるように設計すれば良い。
【0024】
また、第1,第2の能動回路3,4は、図5に示すようにオペアンプ13を使用したアンプ等により発振条件を満たす利得が得られれば良く、切替器5には、図6に示すMOSスイッチ14であっても良い。
【0025】
また、切替器5には図7に示すような単なる加算器15を利用し、図8に示すように、MOSスイッチ14を応用して、第1のインピーダンス回路1と第1の能動回路3を組み合わせた第1の発振回路6と、第2のインピーダンス回路2と第2の能動回路4を組み合わせた第2の発振回路6に供給する電源などバイアスをオン/オフさせても同様に実現可能である。各回路機能はMOSあるいはバイポーラタイプ等のどちらで構成しても良い。また、前述の加算器15も図5に示したように、オペアンプを用いれば容易に実現できる。
【0026】
また、インピーダンス回路には、LC共振回路を用いても良く、電流のコンデンサへの充放電など発振等をつかさどるための遅延要素、共振要素であれば、本発明の技術に応用使用可能である。さらに、実現できる2つのインピーダンス(時定数)回路が、その時定数に持つ温度変動率に差は存在しても、極性が同方向の場合、例えば図9(a)に示すように第1,第2のインピーダンス(時定数)回路1,2をRCの直列回路で構成し、充電用バイアス電圧Vに温度変動を持たせ、バイアス電圧の温度変動と第1のインピーダンス(時定数)回路1との合成温度変動率と、バイアス電圧の温度変動と第2のインピーダンス(時定数)回路2との合成温度変動率において、変動極性が異なるように設定した第1,第2の時定数(温度変動率)としても良い。
【0027】
さらに、図9(b)に示すように、第1,第2の時定数を電流源より充電することで遅延を作り出す場合は、2つの時定数は電流源I1,I2の温度変動率と合成後の温度変動率の変動方向が逆方向になれば良く、さらに、図9(c)に示すように2つのインピーダンス(時定数)回路から得られる信号を比較器16,17で比較して、所定の動作をつかさどる場合、比較器16,17に入力される基準値Vrに温度変動を持たせ、基準値Vrの温度変動との合成後の2つの時定数の温度変動が逆方向であれば良い。
【0028】
また、前述した電流源I1,I2は等しいものであっても良く、充電用バイアス電圧V,基準値Vrは2つに分けても良い。さらに、インピーダンス(時定数)回路についての説明は、後述する本発明の実施形態2〜5に対しても同様である。なお、本実施形態1において、インピーダンス回路を3つ以上備えていても良く、3つ以上の場合も、それぞれの時定数または共振周波数の持つ温度変動率に応じて各インピーダンス回路の使用頻度を変えれば良い。
【0029】
また、インピーダンス回路と能動回路をそれぞれ3つ以上備えていても同様に、それぞれのインピーダンス回路と能動回路により発振回路を構成し、それぞれの発振回路に利用したインピーダンス回路の温度変動率に応じて発振回路の使用頻度を変えれば良い。
【0030】
図10は本発明の実施形態2における信号生成回路の概略構成を示すブロック図である。本実施の形態2において、前述の実施形態1の図1に示した構成とは、第1,第2のインピーダンス回路1,2が置かれている環境の温度を検出する温度検出器21を有する点が異なる。
【0031】
また、図10に示すように、発振器を構成するための第1,第2の能動回路3,4と、信号を選択するための切替器5と、切替器5を制御する制御回路8と、第1のインピーダンス回路1と第1の能動回路3で構成の第1の発振回路6と、第2のインピーダンス回路2と第2の能動回路4で構成の第2の発振回路7を備えている。
【0032】
第1,第2の発振回路6,7を時系列的に交互に切替器5で選択して使用し、第1,第2のインピーダンス回路1,2において、各々の時定数または共振周波数の持つ第1,第2の温度変動率に応じて、温度変動率の大きい方の発振回路の使用時間を短くし、温度変動率の小さい方の発振回路の使用時間を長くするように動作させる。このため、第1,第2の温度変動率の比と逆の比率で第1,第2の発振回路6,7の使用時間の比率を設定する。これにより、温度変動方向が逆の2つの時定数のため、発振周波数は、平均値として温度変動がほぼ無くなるか、極めて軽減される。
【0033】
さらに、第1,第2のインピーダンス回路1,2の有する時定数または共振周波数の持つ温度変動率が、温度の変化に対して非線形を示す場合に、第1,第2のインピーダンス回路1,2の使用比率が一定のとき、温度補償量に過不足が生じる。このため、温度検出器21からの信号をもとに温度が変化したとき、この温度の変化に応じた、第1,第2のインピーダンス回路1,2の使用比率を調整する。これにより、第1,第2のインピーダンス回路1,2の時定数または共振周波数の持つ温度変動が温度に対し非線形な場合でも、安定な発振周波数を得ることができる。
【0034】
温度検出器21の構成例を図11に示す。図11に示すようにPN接合ダイオード22に電流源23(抵抗でも良い)からの電流を流す。PN接合に生じる電位は温度に依存することから、この電圧を例えば比較器24等により基準電圧Vbと比較し、基準電圧Vbを温度変動の温度に相当する電圧とすることで検出できる。これをもとに使用比率を制御するための信号とすれば良い。また、使用比率は、前述した図4に示すa,b期間の時間比率を変えれば良く、タイマー等の時間設定などにより可能である。
【0035】
例えば、図12に示す温度変動率において、どちらか一方の時定数の温度カーブが途中で変化する場合(図12に示した点P)、使用比率が一定では最適な平均化が行えないので、このような場合は、点P付近の温度を検出し、2つの時定数の使用比率を切り替える。
【0036】
このように本実施形態2によると、時間平均値として温度変動率が極めて小さい時定数または共振周波数を得ることが可能となり、特別な温度補償回路を設けることによるシステム規模の増大等がなく、温度安定性の良い時定数または共振周波数を得られる。
【0037】
なお、本実施形態2において、インピーダンス回路を3つ以上備えても良く、3つ以上の場合も、それぞれの時定数または共振周波数の持つ温度変動率に応じて各インピーダンス回路の使用頻度を変えれば良く、この使用頻度を温度検出器の信号をもとに変化させれば良い。
【0038】
また、第1,第2あるいはそれ以上のインピーダンス回路を総合して、2つ以上の温度変動の変異点(図12に示すP点に相当する点)がある場合は必要な複数の変異点の温度を検出し、インピーダンス回路の温度変動率の変化に応じて使用比率を変更すれば良い。
【0039】
図13は本発明の実施形態3における信号生成回路の概略構成を示すブロック図である。図13に示すように、本実施形態3は前述の実施形態1の図1に示した構成における制御回路8に代えて、周波数を計数するカウンタ25を設けたものである。
【0040】
そして、第1のインピーダンス回路1と第1の能動回路3から構成した第1の発振回路6と、第2のインピーダンス回路2と第2の能動回路4から構成した第2の発振回路7の出力を時系列的に交互に切替器5で選択して使用する。この切替器5で選択された第1,第2の発振回路6,7のいずれかの信号をカウンタ25で計数し、このカウンタ25の計数結果をもとに、切替器5により第1,第2の発振回路6,7の出力信号を選択する。
【0041】
第1,第2のインピーダンス回路1,2の各々の温度変動率をもとに、温度変動率の大きいインピーダンス回路を使用した発振回路の使用時間を短く、温度変動率の小さいインピーダンス回路を使用した発振回路の使用時間を長くするように機能させる。つまり、各時定数または共振周波数の持つ温度変動率の比と逆の比率に、その温度変動率を持つインピーダンス回路を使用した発振回路の使用時間の比率を設定する。これにより、温度変動方向が逆となる2つの温度変動率により、出力の信号の発振周波数の時間平均を取ると、平均値として温度変動がほぼ無くなるか、極めて軽減される。
【0042】
さらに、第1,第2の発振回路6,7からの信号をカウンタ25で計数し、計数結果をもとに使用する第1,第2の発振回路6,7を選択するように構成にすることで、外部制御を受けることなく、安定な発振周波数を得ることができる。
【0043】
例えば、第1のインピーダンス回路1の時定数の温度係数が+2(s/T)で、第2のインピーダンス回路2の温度係数が−1(s/T)であったとすると、2つのインピーダンス回路の使用時間比率として、第1のインピーダンス回路1の使用時間を1とすれば、第2のインピーダンス回路2の使用時間を第1のインピーダンス回路1の2倍とし、第1,第2のインピーダンス回路1,2の使用比率を1:2にすれば良い。具体的には、第1のインピーダンス回路1の使用期間を図4に示すb期間の「1s」とし、第2のインピーダンス回路2の使用期間を図4に示すa期間の「2s」となるように使用すれば、第1,第2のインピーダンス回路1,2を1:2の比率で使用できる。
【0044】
また、図14に示すような1/3分周回路を用いる場合を考えると、第1,第2のインピーダンス回路1,2を交互に切り替えた場合の出力信号を用いて、図15に示すような、デューティ比が2:1の信号fを生成し、その信号のデューティ比を用いて切り替えを行い、図15のh期間を第1のインピーダンス回路1の使用期間、g期間を第2のインピーダンス回路2の使用期間となるように制御すれば、第1,第2のインピーダンス回路1,2の使用比率が1:2となり、時定数の平均値は温度が変化しても常にほぼ「0」を保たれる。
【0045】
このように、本実施形態4によると、時間平均値として温度変動が極めて小さい発振周波数の発振回路を得ることが可能となり、特別な温度補償回路を設けることによるシステム規模の増大等がなく、また、外部からの制御がない場合でも、第1,第2の発振回路6,7を切り替える最低限の機能を有することで周波数の温度安定性の良い発振回路をより得やすくなる。
【0046】
なお、本実施形態4において、インピーダンス回路と能動回路をそれぞれ3つ以上備えても良く、3つ以上の場合も、それぞれのインピーダンス回路と能動回路により発振回路を構成し、それぞれの発振回路に利用したインピーダンス回路の温度変動率に応じて発振回路の使用頻度を変えれば良い。
【0047】
また、カウンタ25は計数することで、各発振回路の使用時間を切り替えるが、このカウンタ25は回路的に制御量を変更できるものでも良く、もしくは、プログラマブルなものであっても良い。さらに、制御比を得るために1/3分周器を用いたが、入力周波数が高い場合は分周器の前段にプリスケーラに相当するものを挿入しても良く、分周比として1:2を生成する場合に、1/3分周器の代わりに、それに近い比率のものを用いても良い。
【0048】
図16は本発明の実施形態4における信号生成回路の概略構成を示すブロック図である。図16に示すように、本実施形態4は前述の実施形態3の図13に示した構成におけるカウンタ25に代えて、時間計測器26を設けたものである。
【0049】
この時間計測器26により、第1,第2の発信回路6,7の出力を切り替えて使用する構成であって、実施形態3と同様に、第1,第2のインピーダンス回路1,2の各々の温度変動率をもとに、温度変動率の大きいインピーダンス回路を使用した発振回路の使用時間を短く、温度変動率の小さいインピーダンス回路を使用した発振回路の使用時間を長くするように機能させる。つまり、各時定数または共振周波数の持つ温度変動率の比と逆の比率に、その温度変動率を持つインピーダンス回路を使用した発振回路の使用時間の比率を設定する。これにより、温度変動方向が逆となる2つの温度変動率により、周波数の時間平均を取ると、平均値として温度変動がほぼ無くなるか、極めて軽減される。
【0050】
さらに、第1,第2の発振回路6,7からの信号を時間計測器26からの時間制御により、使用する第1,第2の発振回路6,7のいずれかを選択するように構成にすることにより、外部制御を受けることなく、安定な発振周波数を得ることができる。
【0051】
図17は本発明の実施形態5における信号生成回路の概略構成を示すブロック図である。図17に示すように、第1の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第1のインピーダンス回路1と、第1の温度変動率とは逆の変動方向となる第2の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第2のインピーダンス回路2と、発振器を構成するための第1の能動回路3と、第1,第2のインピーダンス回路1,2を交互に機能させて第1の能動回路3との発振回路を形成させるための切替器9を有し、第1の能動回路3は、例えば制御回路(図示せず)から切替器9により第1,第2のインピーダンス回路1,2の接続を切り替えて使用して発振回路11を構成している。
【0052】
第1,第2のインピーダンス回路1,2を時系列的に交互に選択して発振する発振回路11を構成し、第1,第2のインピーダンス回路1,2の各々の温度変動率をもとに、温度変動率の大きい方のインピーダンス回路の選択時間を短くし、温度変動率の小さいインピーダンス回路の選択時間を長くするように機能させる。つまり、各時定数または共振周波数の持つ温度変動率の比と逆の比率に、その温度変動率を持つインピーダンス回路を選択する時間の比率を設定する。これにより、温度変動方向が逆となる2つの温度変動率により、出力信号の発振周波数の時間平均を取ると、平均値として温度変動がほぼ無くなるか、極めて軽減される。
【0053】
このように実施形態5によると、時間平均値として温度変動が極めて小さい発振周波数の発振回路11に用いる能動回路を1つにすることでコンパクトにすることが可能となり、特別な温度補償回路を設けることによるシステム規模の増大等がなく、周波数の温度安定性の良い発振回路を得られる。
【0054】
本実施形態5における第1,第2のインピーダンス回路1,2および切替器9、第1の能動回路3は、前記実施形態1に示した構成要件と同様のものから実現可能である。なお、実施形態5において、インピーダンス回路を3つ以上備えていても良く、3つ以上の場合も、それぞれのインピーダンス回路と能動回路により発振回路が構成できるようにし、それぞれのインピーダンス回路の時定数または共振周波数の持つ温度変動率に応じて各インピーダンス回路の使用頻度を変えれば良い。
【0055】
図18は本発明の実施形態6における信号生成回路の概略構成を用いたシステム装置を示すブロック図である。図18に示すように、前記実施形態1〜5で説明した信号生成回路30を利用して、システム装置31内に設け、システムクロック32からの供給される信号の代役として機能することを目的とする。例えば、システム装置31のボードが何らかのダウンをして、システムクロック32の出力が無くなった場合、保護動作や復帰動作などでクロックが必要なブロックあるいは回路機能に対して、クロック信号を供給する。また、システムクロック32が停止した場合に最低限の自己動作を行うため、クロックが必要なブロックに内蔵することも考えられる。システムクロック32ほどの精度はないが、システム装置31において、システムダウンや故障等において行われる診断機能などを簡易的に実現することが必要な場合、専用のクロック回路やボードを設けるなどの規模増大を防ぐことができ、かつ所望する機能を実現するための手段を提供することができる。
【0056】
本発明の実施形態7における信号生成回路は前述した各実施形態の実現するため半導体集積回路装置として構成したものである。
【0057】
近年のコンピュータや携帯端末など、電子機器は半導体集積回路が多用されており、前記実施形態1〜5において説明した信号生成回路を搭載して前記実施形態6のシステム装置を実現するために作られた半導体集積回路装置である。
【0058】
なお、前記実施形態1〜5に説明した信号生成回路で使われる温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有し、抵抗(R),コイル(L),コンデンサ(C)をもとに作られたインピーダンス回路は、例えば図19(a)〜(f)に示すような、R,L,Cをすべて利用したものでなくても良く、図19(f)に示すようなインピーダンス(時定数)回路では、上部端子に電圧を加えて充電し、そのときの充電電圧Voを利用するよう構成した場合、その電圧は最初にダイオードDiの電圧Vbeで立ち上がり、その後コンデンサCへの充電電圧Voで上昇する。この電圧Vbeは温度特性を有するインピーダンス(時定数)回路として利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るインピーダンス回路およびこれを用いた信号生成回路は、基準周波数もしくは遅延要素を得るにあたり、温度変動率を極めて平坦化することができ、半導体集積回路または電気信号処理システムで使用され、基準周波数信号を発生する回路として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態1における信号生成回路の概略構成を示すブロック図
【図2】インピーダンス回路の構成例のRC回路を示す図
【図3】発振回路の構成を示す図
【図4】2つのインピーダンス回路の使用期間を示すタイミングチャート
【図5】能動回路をオペアンプで構成した例を示す図
【図6】切替器をMOSスイッチで構成した例を示す図
【図7】切替器を加算器で構成した例を示す図
【図8】MOSスイッチを応用し発振回路の電源により切り替える構成を示す図
【図9】インピーダンス回路に(a)は充電用バイアス電圧の温度変動、(b)は電流源の温度変動、(c)は比較器の基準値の温度変動を合成する構成例を示す図
【図10】本発明の実施形態2における信号生成回路の概略構成を示すブロック図
【図11】温度検出器の構成を示す図
【図12】温度変動率の変位点を説明する図
【図13】本発明の実施形態3における信号生成回路の概略構成を示すブロック図
【図14】1/3分周器の回路構成を示す図
【図15】1:2の分周期間を示すタイミングチャート
【図16】本発明の実施形態4における信号生成回路の概略構成を示すブロック図
【図17】本発明の実施形態5における信号生成回路の概略構成を示すブロック図
【図18】本発明の実施形態6における信号生成回路の概略構成を用いたシステム装置を示すブロック図
【図19】インピーダンス回路の(a)〜(f)はR,L,Cによる構成例を示す図
【符号の説明】
【0061】
1 第1のインピーダンス回路
2 第2のインピーダンス回路
3,3a 第1の能動回路
4 第2の能動回路
5,9 切替器
6 第1の発振回路
7 第2の発振回路
8 制御回路
10,20 インピーダンス回路
11 発振回路
13 オペアンプ
14 MOSスイッチ
15 加算器
16,17,24 比較器
21 温度検出器
22 PN接合ダイオード
23 電流源
25 カウンタ
26 時間計測器
30 信号生成回路
31 システム装置
32 システムクロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第1のインピーダンス回路と、前記第1の温度変動率とは逆の変動方向となる第2の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第2のインピーダンス回路とからなり、
前記第1,第2のインピーダンス回路の有する前記第1,第2の温度変動率に応じて、前記第1,第2のインピーダンス回路の使用比率を調整することで前記第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得るようにして、前記第1,第2のインピーダンス回路を切り替えることを特徴とするインピーダンス回路。
【請求項2】
前記第1,第2のインピーダンス回路が置かれている環境温度を検出する温度検出器を備え、
前記第1,第2のインピーダンス回路の有する第1,第2の温度変動率に応じて、前記第1,第2のインピーダンス回路の使用比率を調整することで前記第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得る際に、前記第1,第2の温度変動率が温度に対し非直線性を有するとき、前記第1,第2のインピーダンス回路の使用比率の調整量を前記温度検出器の出力に応じて変化させ、前記第1,第2のインピーダンス回路を切り替えることを特徴とする請求項1記載のインピーダンス回路。
【請求項3】
請求項1記載の第1,第2のインピーダンス回路からなるインピーダンス回路と、前記第1のインピーダンス回路を用いて発振する第1の発振回路と、前記第2のインピーダンス回路を用いて発振する第2の発振回路と、前記第1,第2の発振回路を交互に切り替える切替器と、前記第1,第2の発振回路の使用比率を調整することで前記第1,第2のインピーダンス回路の有する第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得るように、前記切替器を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする信号生成回路。
【請求項4】
請求項2記載の第1,第2のインピーダンス回路と温度検出器を備えたインピーダンス回路と、前記第1のインピーダンス回路を用いて発振する第1の発振回路と、前記第2のインピーダンス回路を用いて発振する第2の発振回路と、前記第1,第2の発振回路を交互に切り替える切替器と、前記第1,第2の発振回路の使用比率を調整する際に、前記第1,第2のインピーダンス回路の有する第1,第2の温度変動率が温度に対し非直線性を有するとき、使用比率の調整量を前記温度検出器の出力に応じて変化させ、前記第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得るように、前記切替器を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする信号生成回路。
【請求項5】
前記制御回路に代えて前記第1,第2の発振回路からの出力信号を計数するカウンタ回路を備え、前記カウンタ回路の計数結果に応じて前記切替器を制御することを特徴とする請求項3または4記載の信号生成回路。
【請求項6】
前記カウンタ回路に代えて前記第1,第2の発振回路から信号を出力する時間を計測する時間計測器を備え、前記時間計測器の計測時間により前記切替器を制御することを特徴とする請求項5記載の信号生成回路。
【請求項7】
第1の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第1のインピーダンス回路と、前記第1の温度変動率とは逆の変動方向となる第2の温度変動率を持つ時定数または共振周波数を有する第2のインピーダンス回路と、前記第1のインピーダンス回路と前記第2のインピーダンス回路を切替器により交互に切り替えて発振する発振回路と、前記第1,第2の温度変動率の大きさに応じて前記第1,第2のインピーダンス回路の使用比率を調整することで前記第1,第2の温度変動率から温度変動率を平均値として得るように、前記切替器を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする信号生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−28804(P2008−28804A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200421(P2006−200421)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】