説明

インホイールモータ冷却構造

【課題】インホイールモータを効率良く冷却することが可能なインホイールモータ冷却構造を提供する。
【解決手段】冷却構造100に、ハウジング20の内部に充填されるフルードをフルード溜まり50に搬送する搬送ポンプ110と、フルード溜まり50に搬送されたフルードから受け取った熱をブレーキディスク61に受け渡すヒートパイプ120と、を具備し、ヒートパイプ120に、基端部がフルード溜まり50に隣接するとともに先端部がハブ41の外縁部に配置され、内周面には毛細管が形成される主パイプ121と、一端部が主パイプ121の先端部から所定長さだけ主パイプ121の基端部寄りとなる位置に連通接続され、他端部がブレーキディスク61に当接し、内周面には毛細管が形成されず、他端部からハブ41の回転軸までの距離が一端部からハブ41の回転軸までの距離以下となる副パイプ122と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インホイールモータを冷却する技術に関する。
より詳細には、インホイールモータを冷却するために、インホイールモータが回転駆動する車輪に設けられるディスクブレーキのディスクを放熱体として利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪のホイールのリムに囲まれた空間に配置されたインホイールモータの駆動力により車輪を駆動する自動車は知られている。このようなインホイールモータを駆動源とする自動車は、近年の環境問題への意識の高まりに伴い、自動車(のエンジン)から排出される二酸化炭素を削減する手段の一つとして注目されている。
【0003】
インホイールモータを駆動源とする自動車の更なる普及を促進するためには、従来のエンジンを駆動源とする自動車と同等あるいはそれ以上の走行性能(走行速度、加速性能)が要求され、ひいてはインホイールモータの更なる高出力化が要求される。
しかし、インホイールモータの高出力化はインホイールモータの駆動時の発熱の増大を伴うため、インホイールモータにおいて発生する熱を効率良く逃がす、すなわちインホイールモータを効率良く冷却する技術が必要となる。
【0004】
インホイールモータを冷却する技術としては、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載の技術が知られている。
【0005】
特許文献1に記載の車両用ホイール駆動装置は、ステータコイルとハウジングとをヒートパイプを用いて電気的に絶縁しつつ接続することにより、ステータコイルの熱をヒートパイプを通じてハウジングに伝達し、ハウジングから外気に熱を逃がす。
【0006】
特許文献2に記載のモータは、ステータにオイルを供給するためにハウジングに形成された油路にヒートパイプの一端を挿入し、当該ヒートパイプの他端をハウジングの外部に配置するとともにヒートパイプの他端に一体的に放熱フィンを形成することにより、ステータコイルの熱をオイルおよびヒートパイプ(放熱フィン)を通じて外気に逃がす。
【0007】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の技術は以下の問題を有する。
すなわち、インホイールモータは車輪のホイールのリムに囲まれた空間に配置されるため、ハウジングはインホイールモータと車輪のホイールのリムとの隙間にある外気と接触することとなるが、インホイールモータの高出力化によりインホイールモータが大型化するとインホイールモータと車輪のホイールのリムとの隙間が狭くなり、当該隙間の通気性が悪化し、当該隙間に存在する外気が滞留し易くなる。
そうすると、インホイールモータと車輪のホイールのリムとの隙間に存在する外気の温度が上昇し、ハウジングと当該外気との間の熱伝導が阻害される。
このように、インホイールモータの高出力化が進むと、特許文献1および特許文献2に記載の技術ではインホイールモータを効率良く冷却することが困難となる。
【0008】
特許文献3に記載のインホイールモータ構造は、インホイールモータに熱伝達部材および熱伝達部材を移動させる油圧シリンダを設け、当該油圧シリンダが作動して熱伝達部材を車輪のホイールに設けられたディスクブレーキのディスクに当接させることにより、熱伝達部材を通じてインホイールモータの熱を当該ディスクに伝達し、当該ディスクから外気に逃がす。
【0009】
しかし、特許文献3に記載のインホイールモータ構造は、熱伝達部材とディスクとの間の熱伝導を効率良く行うために熱伝達部材とディスクとの当接面積を十分に確保するとともに熱伝達部材とディスクとを密着させることを要するが、ディスクは車輪のホイールに固定され、車両の走行時には車輪と一体的に回転する部材であるため、車両の走行時に熱伝達部材とディスクブレーキのディスクとが密着しているとこれらの当接面において摩擦熱が発生してしまう。
そのため、走行中には熱伝達部材をディスクブレーキのディスクから離間しなければならず、走行中に発生するインホイールモータの熱をディスクブレーキのディスクから外気に逃がすことが出来ない。
また、車両が停止した直後はそれまでディスクブレーキが制動するために発生した摩擦熱によりディスクブレーキのディスクの温度が上昇しており、熱伝達部材とディスクブレーキのディスクとを当接させると却ってディスクブレーキの制動による摩擦熱がインホイールモータに向かって伝達される(熱が逆流する)ので、ディスクブレーキのディスクの温度が十分に低下してから熱伝達部材とディスクブレーキのディスクとを当接させなければならない。
【特許文献1】特開2006−282158号公報
【特許文献2】特開2008−72881号公報
【特許文献3】特開2006−211764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、インホイールモータを効率良く冷却することが可能なインホイールモータ冷却構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1においては、
駆動力を発生するモータ本体および前記モータ本体を収容するハウジングを備えるとともに前記ハウジングに回転可能に支持されるハブに固定される車輪を回転駆動するインホイールモータを冷却するインホイールモータ冷却構造であって、
前記ハウジングの内部に充填されるフルードを前記ハウジングと前記ハブとの回転支持部に形成されたフルード溜まりに搬送する搬送ポンプと、
前記ハブに固定され、前記フルード溜まりに搬送されたフルードから受け取った熱を前記ハブに固定されるブレーキディスクに受け渡すヒートパイプと、
を具備し、
前記ヒートパイプは、
基端部が前記フルード溜まりに隣接し、先端部が前記ハブの外縁部に配置され、内周面には毛細管が形成される主パイプと、
一端部が前記主パイプの先端部から所定長さだけ前記主パイプの基端部寄りとなる位置に連通接続され、他端部が前記ブレーキディスクに当接し、内周面には毛細管が形成されず、前記他端部から前記ハブの回転軸までの距離が前記一端部から前記ハブの回転軸までの距離以下となる副パイプと、
を備えるものである。
【0013】
請求項2においては、
駆動力を発生するモータ本体および前記モータ本体を収容するハウジングを備えるとともに前記ハウジングに回転可能に支持されるハブに固定される車輪を回転駆動するインホイールモータを冷却するインホイールモータ冷却構造であって、
前記ハウジングの内部に充填されるフルードを前記ハウジングと前記ハブとの回転支持部に形成されたフルード溜まりに搬送する搬送ポンプと、
前記ハブに固定され、前記フルード溜まりに搬送されたフルードから受け取った熱を前記ハブに固定されるブレーキディスクに受け渡すヒートパイプと、
を具備し、
前記ヒートパイプは、中央部が前記フルード溜まりに隣接し、一対の端部がそれぞれ前記ハブの外縁部に配置され、内周面には毛細管が形成される主パイプと、
一端部がそれぞれ前記主パイプの一対の端部から所定長さだけ前記主パイプの中央部寄りとなる位置に連通接続され、他端部がそれぞれ前記ブレーキディスクに当接し、内周面には毛細管が形成されず、前記他端部から前記ハブの回転軸までの距離が前記一端部から前記ハブの回転軸までの距離以下となる一対の副パイプと、
を備えるものである。
【0014】
請求項3においては、
前記ブレーキディスクに固定され、前記副パイプから受け取った熱を前記ブレーキディスクに受け渡す二次ヒートパイプを具備するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、インホイールモータを効率良く冷却することが可能である、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下では、図1を用いて冷却構造100が適用されるインホイールモータ1について説明する。
【0017】
インホイールモータ1は車輪(不図示)を回転駆動するものであり、モータ本体10、ハウジング20および減速機構30を備える。
【0018】
本実施形態のインホイールモータ1は自動車の車輪を回転駆動するものであるが、本発明に係るインホイールモータはこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るインホイールモータは、自動二輪車、電動アシスト機能付き自転車等、種々の車両に設けられた車輪を回転駆動する用途に適用可能である。
【0019】
本発明に係るインホイールモータは全体が車輪のホイールのリムに囲まれる空間に収容されるモータに限定されない。
すなわち、一部が車輪のホイールのリムに囲まれる空間に収容され、残りの部分が車輪のホイールのリムに囲まれる空間からはみ出ているモータもインホイールモータに含まれる。
【0020】
モータ本体10は本発明に係るモータ本体の実施の一形態であり、駆動力を発生するものである。
モータ本体10は回転軸11、ロータ12およびステータ13を有する。
【0021】
回転軸11は略円柱形状の部材であり、後述するロータ12が回転する際の中心軸となるものである。
【0022】
ロータ12はインホイールモータ1が駆動力を発生する際に回転する部材である。本実施形態のロータ12は永久磁石からなる界磁(磁界を発生させるもの)であり、略円筒形状を成す。
ロータ12は回転軸11の中途部に固定され、ロータ12および回転軸11が一体的に回転する。
【0023】
ステータ13はインホイールモータ1が駆動力を発生する際に固定されている(回転しない)部材である。本実施形態のステータ13は通電可能なコイルからなる電機子(界磁と相互作用してトルク(駆動力)を得るための磁界を発生するもの)であり、略円筒形状を成す。
【0024】
本実施形態のインホイールモータ1はロータ12を界磁とするとともにステータ13を電機子とするモータ(回転界磁形のモータ)であるが、本発明に係るインホイールモータ冷却構造の適用対象たるモータはこれに限定されず、ロータを電機子とするとともにステータを界磁とするモータ(回転電機子形のモータ)でも良い。
また、本実施形態のインホイールモータ1はロータ12の外周面がステータ13の内周面に対向する(ロータ12がステータ13の内側に配置される)モータ、すなわちインナーロータ型のモータであるが、本発明に係るインホイールモータ冷却構造の適用対象たるモータはこれに限定されず、ロータの内周面がステータの外周面に対向する(ロータ12がステータ13の外側に配置される)モータ、すなわちアウターロータ型のモータでも良い。
【0025】
ハウジング20は本発明に係るハウジングの実施の一形態である。ハウジング20はインホイールモータ1の主たる構造体を成す部材であり、モータ本体10および減速機構30を収容する。
ハウジング20はケース21およびキャップ22を有する。
本実施形態では、非磁性体の一例であるアルミニウム合金を射出成形することによりケース21およびキャップ22が成形される。
【0026】
ケース21は一端部が大きく開口した部材であり、ケース21の内部にはモータ本体10および減速機構30が収容される。モータ本体10のうち、回転軸11の一端部は軸受けを介してケース21に回転可能に軸支され、ステータ13の一端部はケース21に固定される。
【0027】
キャップ22はケース21の一端部を閉塞する部材である。モータ本体10のうち、回転軸11の他端部は軸受けを介してキャップ22に回転可能に軸支され、ステータ13の他端部はキャップ22に固定される。
【0028】
減速機構30はモータ本体10が発生した駆動力を減速して車輪(不図示)に伝達するものである。
減速機構30はギヤ31および出力軸32を有する。
【0029】
ギヤ31は回転軸11の一端部に固定される平歯車であり、ギヤ31の外周面には歯31a・31a・・・が形成される。
【0030】
出力軸32はモータ本体10が発生する駆動力をインホイールモータ1の外部に出力する部材であり、軸受けを介してケース21に回転可能に軸支される。
出力軸32は胴体部32a、フランジ部32bおよび円筒部32cを有し、これらが連なった形状を成す。
胴体部32aは出力軸32のうちハウジング20の外部に突出する部分を成す略円柱形状の部材である。
フランジ部32bは胴体部32aの基端部に延設される略円盤形状の部材である。
円筒部32cはフランジ部32bに延設される略円筒形状の部材である。より詳細には、円筒部32cの一端部がフランジ部32bの外縁部に沿って延設される。
円筒部32cの外周面には、歯32d・32d・・・が形成される。円筒部32cの歯32d・32d・・・はギヤ31の歯31a・31a・・・に噛合する。
出力軸32には、フランジ部32bにおいて胴体部32aの基端部が延設される盤面の反対側の盤面の中央部と胴体部32aの外周面の先端部とを連通する搬送孔32eが形成される。
【0031】
ステータ13を構成するコイルに通電すると、回転軸11、ロータ12およびギヤ31を合わせたものが回転し、駆動力が発生する。
回転軸11、ロータ12およびギヤ31を合わせたものが回転することにより、ギヤ31に噛合する出力軸32が回転する。ギヤ31の歯31a・31a・・・の数は円筒部32cの歯32d・32d・・・の数よりも少ないので、出力軸32は回転軸11よりも少ない回転数で回転する。
【0032】
ハウジング20の内部空間(モータ本体10および減速機構30とハウジング20との隙間)にはフルードが充填される。フルードはインホイールモータ1の内部の冷却およびインホイールモータ1を構成する各部材の潤滑を目的とする液体である。
本実施形態のフルードは潤滑油からなるが本発明に係るフルードはこれに限定されず、インホイールモータの内部に充填可能かつ熱の受け渡しが可能な液体であれば本発明に係るフルードとして用いることが可能である。
【0033】
以下では、図1を用いてハブ機構40について説明する。
ハブ機構40は車輪(不図示)をインホイールモータ1のハウジング20に回転可能に支持するものである。
ハブ機構40はハブ41、ハブ支持部材42、ボール43・43・・・およびシールリング44を具備する。
【0034】
ハブ41はハブ機構40のうち、車輪(不図示)に固定される部材である。
ハブ41は本発明に係るハブの実施の一形態である。ハブ41は円盤部41aおよび円筒部41bを有する。
【0035】
円盤部41aはハブ41の主たる構造体を成す略円盤形状の部材である。円盤部41aの中心部には貫通孔が形成される。円盤部41aに形成された貫通孔に出力軸32の胴体部32aの先端部を嵌装することにより、円盤部41aは出力軸32の胴体部32aに相対回転不能に固定される。
また、車輪(不図示)のホイールはボルト締結により円盤部41a、ひいてはハブ41に固定される。
【0036】
円筒部41bは略円筒形状の部材であり、円盤部41aに固定される。円筒部41bが円盤部41aに固定されたとき、円筒部41bの軸線と円盤部41aの軸線とは一直線となる。円筒部41bの内周面には全周にわたって周方向に延びたリング状の突起が形成される。
【0037】
ハブ支持部材42はハブ41をインホイールモータ1のハウジング20に回転可能に支持する部材である。
ハブ支持部材42は円筒部42aおよびフランジ部42bを有し、これらが連なった形状を成す。
【0038】
円筒部42aは略円筒形状の部材であり円筒部42aの内周面には全周にわたって周方向に延びたリング状の窪みが形成される。
円筒部42aには、円筒部42aの一端部と他端部とを連通する戻り孔42cが形成される。
【0039】
フランジ部42bは中央に孔が形成された略円盤形状の部材である。フランジ部42bの内縁部に沿って円筒部42aの一端が延設される。フランジ部42bはハウジング20のケース21に固定される。フランジ部42bがハウジング20のケース21に固定されたとき、出力軸32の胴体部32aは円筒部42aを貫通する。また、出力軸32の胴体部32aの中途部は軸受けを介して円筒部42aに回転可能に軸支される。
【0040】
ボール43・43・・・は球状の部材である。ボール43・43・・・はハブ41の円筒部41bの内周面とハブ支持部材42のフランジ部42bの外周面との隙間に配置され、ハブ41の円筒部41bの内周面およびハブ支持部材42のフランジ部42bの外周面に当接しつつ転動可能である。
また、ボール43・43・・・がハブ41の円筒部41bの内周面に形成された突起およびハブ支持部材42のフランジ部42bの外周面に形成された窪みに係合することにより、ハブ41がハブ支持部材42から脱落することが防止される(ハブ41の軸線方向へ移動が規制される)。
このように、ハブ41はハブ支持部材42およびボール43・43・・・を介してハウジング20のケース21に回転可能に支持される。
【0041】
シールリング44はリング状の部材であり、ハブ41の円盤部41aの盤面とハブ支持部材42の円筒部42aの端面との隙間に介装される。シールリング44はハブ41の円盤部41aの盤面およびハブ支持部材42の円筒部42aの端面に液密的かつ摺動可能に当接する。
【0042】
インホイールモータ1のステータ13を構成するコイルに通電すると出力軸32が回転し、出力軸32の胴体部32aに固定されたハブ41およびハブ41(円盤部41a)に固定される車輪(不図示)もまた回転する。
以上の如く、インホイールモータ1はハブ41(円盤部41a)に固定される車輪(不図示)を回転駆動する。
【0043】
以下では、図1を用いてフルード溜まり50について説明する。
フルード溜まり50は本発明に係るフルード溜まりの実施の一形態であり、ハウジング20とハブ41との回転支持部に形成される。
本実施形態のフルード溜まり50は、ハブ41の円盤部41aの盤面、シールリング44、ハブ支持部材42の円筒部42aの端面、出力軸32の胴体部32aをハブ支持部材42の円筒部42aに軸支する軸受け、および出力軸32の胴体部32aの外周面に囲まれる空間として形成される。
【0044】
胴体部32aにおける外周面の先端部側に設けられた搬送孔32eの開口部および円筒部42aにおけるハブ41側の端部に設けられた戻り孔42cの開口部は、フルード溜まり50に臨む位置に形成される。
従って、フルード溜まり50は、搬送孔32eおよび戻り孔42cを介してハウジング20の内部(空間)と連通している。
【0045】
以下では、図1を用いてディスクブレーキ60について説明する。
ディスクブレーキ60はインホイールモータ1により回転駆動される車輪(不図示)を制動するものである。
ディスクブレーキ60はブレーキディスク61、ブレーキキャリパ62およびブレーキパッド63・63を備える。
【0046】
ブレーキディスク61は本発明に係るブレーキディスクの実施の一形態であり、中央に孔が形成された略円盤形状の部材である。ブレーキディスク61の内縁部はハブ41の円盤部41aの外縁部に固定される。従って、ブレーキディスク61はハブ41、ひいては車輪(不図示)と一体的に回転する。
【0047】
ブレーキキャリパ62はブレーキパッド63・63を進退可能に支持する部材である。
本実施形態のブレーキキャリパ62には一対の油圧シリンダが設けられ、当該一対の油圧シリンダのシリンダロッドの先端部にそれぞれブレーキパッド63・63が固定される。
本実施形態のブレーキキャリパ62は図示せぬ固定部材を介してハウジング20のケース21に固定される。
【0048】
ブレーキパッド63・63はブレーキディスク61の盤面に当接することによりブレーキディスク61との間で摩擦力、ひいては制動力を発生する部材である。
ブレーキパッド63・63はブレーキキャリパ62に設けられた油圧シリンダが作動することによりブレーキディスク61の盤面に押し付けられる。
【0049】
以下では、図1を用いて本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第一実施形態である冷却構造100について説明する。
冷却構造100はインホイールモータ1を冷却するものである。冷却構造100は搬送ポンプ110およびヒートパイプ120・120・・・を具備する。
【0050】
搬送ポンプ110は本発明に係る搬送ポンプの実施の一形態であり、ハウジング20の内部に充填されるフルード(不図示)をフルード溜まり50に搬送するものである。
本実施形態の搬送ポンプ110は胴体部111および回転部112を備える。
【0051】
胴体部111はケース21に固定される部材であり、回転部112は胴体部111に相対回転可能に軸支される部材である。回転部112は出力軸32に形成された搬送孔32eのフランジ部32b側の開口部に相対回転不能に嵌装される。
【0052】
インホイールモータ1のステータ13を構成するコイルに通電することによりインホイールモータ1が駆動力を発生すると、搬送ポンプ110の回転部112が出力軸32と一体的に回転する。
搬送ポンプ110は、回転部112が胴体部111に対して相対的に回転することにより、ハウジング20の内部に充填されるフルード(不図示)を胴体部111の内部に吸引するとともに吸引したフルードを回転部112の先端部から吐出する。
回転部112の先端部から吐出されたフルードは搬送孔32eを経てフルード溜まり50に搬送される。フルード溜まり50に搬送されたフルードは戻り孔42cを経てハウジング20の内部に戻される。
【0053】
本実施形態では搬送ポンプ110はインホイールモータ1が発生する駆動力により作動する(フルードをフルード溜まり50に搬送する)が、本発明はこれに限定されない。
例えば、搬送ポンプがインホイールモータから独立して電動で作動する電動ポンプでも良い。
【0054】
ヒートパイプ120は本発明に係るヒートパイプの実施の一形態であり、フルード溜まり50に搬送されたフルードから受け取った熱をハブ41に固定されるブレーキディスク61に受け渡すものである。ヒートパイプ120はハブ41の円盤部41aに固定される。
ヒートパイプ120は主パイプ121および副パイプ122を備える。
【0055】
主パイプ121は本発明に係る主パイプの実施の一形態である。
主パイプ121は熱伝導率が高い材料(例えば、銅、銅合金、鉄、ステンレス鋼等)からなり、両端が閉塞された筒状の部材である。主パイプ121の内周面には毛細管が形成される。
本発明に係る主パイプの内周面に形成される毛細管は、主パイプの内周面に沿って金網(mesh)あるいは細い金属線(fine wire)を配置することにより形成されても良く、主パイプの内周面に主パイプの長手方向に延びた複数の細い溝(grooves)を穿設することにより形成しても良い。
【0056】
図1に示す如く、主パイプ121の基端部はフルード溜まり50に隣接する位置に配置され、主パイプ121の先端部はハブ41の円盤部41aの外縁部に配置される。
本実施形態では、複数のヒートパイプ120・120・・・が出力軸32の軸線方向から見て放射状に配置される。
【0057】
副パイプ122は本発明に係る副パイプの実施の一形態である。
副パイプ122の一端部は主パイプ121の先端部から所定長さ(本実施形態では、図1に示す長さL)だけ主パイプ121の基端部寄りとなる位置に連通接続され、副パイプ122の他端部はブレーキディスク61に当接する。
ここで、「副パイプ122の一端部が主パイプ121に連通接続される」とは、副パイプ122の一端部が主パイプ121に接続され、かつ副パイプ122の内部空間と主パイプ121の内部空間とが連通することを指す。
【0058】
副パイプ122の内周面は主パイプ121と異なり、毛細管が形成されない。従って、副パイプ122の内周面は主パイプ121の内周面に比べて滑らかである。
【0059】
本実施形態では、副パイプ122の長手方向が出力軸32の軸線方向に対して平行である。すなわち、副パイプ122の他端部からハブ41の回転軸(本実施形態の場合、出力軸32の軸線)までの距離は、副パイプ122の一端部からハブ41の回転軸までの距離と同じである。
【0060】
互いに連通する主パイプ121および副パイプ122の内部空間には少量の作動液が真空封入される。
本発明に係るヒートパイプに真空封入される作動液の具体例としては、水、アルコール等が挙げられる。
主パイプ121の内部空間のうち、主パイプ121の先端部に対応する部分(主パイプ121および副パイプ122が接続されている部分よりも主パイプ121の先端部寄りとなる部分)は、「作動液溜まり」としての機能を果たす。
【0061】
以下では、図1を用いて冷却構造100によるインホイールモータ1の冷却について説明する。
【0062】
インホイールモータ1が車輪を回転駆動しているとき、インホイールモータ1は熱を発生しているので、フルードはインホイールモータ1が発生する熱を受け取り、フルードの温度は徐々に上昇する。
インホイールモータ1が車輪を回転駆動しているとき、すなわちインホイールモータ1が適用される自動車が走行しているとき、搬送ポンプ110はハウジング20の内部に充填されるフルードをフルード溜まり50に搬送する。従って、フルード溜まり50に搬送されるフルードの温度はインホイールモータ1が発生する熱により上昇している。
【0063】
一方、インホイールモータ1が適用される自動車が走行しているとき、ブレーキディスク61は車輪(不図示)と一体的に回転することにより常に新鮮な外気に接触するため、外気に熱を奪われて冷却される。その結果、ブレーキディスク61の温度は比較的低温(外気とほぼ同じ温度)に維持される。
その結果、インホイールモータ1が適用される自動車が走行しているときには、フルード溜まり50に搬送されるフルードの温度がブレーキディスク61の温度よりも高い状況が起こり得る。
【0064】
フルード溜まり50に搬送されるフルードの温度がブレーキディスク61の温度よりも高いとき、主パイプ121の基端部、すなわちフルード溜まり50に隣接する部分がフルード溜まり50に滞留するフルードから熱を受け取り、さらに主パイプ121の基端部の内周面に接触している「液化した作動液」が主パイプ121の基端部から熱を受け取って気化する。
【0065】
主パイプ121の基端部から熱を受け取ることにより気化した作動液は、主パイプ121の内部空間を経て移動し、副パイプ122の内部空間に到達する。
副パイプ122の内部空間に到達した「気化した作動液」は、副パイプ122の内周面に接触し、副パイプ122に熱を受け渡して液化する。
【0066】
副パイプ122に熱を受け渡して液化した作動液は、車輪およびハブ41の回転に起因する遠心力により、副パイプ122の内周面を伝って移動し、主パイプ121の内部空間のうち主パイプ121の先端部に対応する部分、すなわち作動液溜まりとして機能する部分に到達する。
主パイプ121の内部空間のうち作動液溜まりとして機能する部分に到達した「液化した作動液」は、毛細管現象により遠心力に抗して主パイプ121の内周面を伝って移動し、主パイプ121の内部空間のうち基端部に対応する部分に到達する。
主パイプ121の内部空間のうち主パイプ121の基端部に対応する部分に到達した「液化した作動液」は、主パイプ121の基端部から熱を受け取って気化する。
【0067】
以上の如き熱サイクルを繰り返すことにより、インホイールモータ1が発生した熱は、フルードおよびヒートパイプ120を経てブレーキディスク61に受け渡され、ブレーキディスク61を放熱体としてブレーキディスク61から外気に逃がされる。
ブレーキディスク61はその性質上、もともと優れた放熱性を有する部材であるため、冷却構造100はインホイールモータ1を効率良く冷却することが可能である。
【0068】
ディスクブレーキ60が作動しているとき、すなわち走行中の自動車が減速しているとき、ブレーキディスク61とブレーキパッド63・63との間で摩擦熱が発生し、ブレーキディスク61の温度が上昇する。また、自動車がディスクブレーキ60の制動により停止した後もしばらくは(ブレーキディスク61の冷却が進むまでは)ブレーキディスク61の温度が高い状態となる。
その結果、走行中の自動車が減速しているときおよび自動車が停止してからしばらくの間は、ブレーキディスク61の温度がフルード溜まり50に搬送されるフルードの温度よりも高い状況が起こり得る。
【0069】
ブレーキディスク61の温度がフルード溜まり50に搬送されるフルードの温度よりも高いとき、副パイプ122がブレーキディスク61から熱を受け取ることにより副パイプ122の温度が上昇する。
しかし、副パイプ122の内周面には毛細管が形成されていないので、副パイプ122の内周面に「液化した作動液」が供給されず、副パイプ122から作動液への熱の受け渡しは起こらない。
従って、ブレーキディスク61の熱がヒートパイプ120およびフルードを介してインホイールモータ1に受け渡される(熱が逆流する)ことはない。
【0070】
以上の如く、冷却構造100は、
駆動力を発生するモータ本体10およびモータ本体10を収容するハウジング20を備えるとともにハウジング20に回転可能に支持されるハブ41に固定される車輪を回転駆動するインホイールモータ1を冷却するものであって、
ハウジング20の内部に充填されるフルードをハウジング20とハブ41との回転支持部に形成されたフルード溜まり50に搬送する搬送ポンプ110と、
ハブ41に固定され、フルード溜まり50に搬送されたフルードから受け取った熱をハブ41に固定されるブレーキディスク61に受け渡すヒートパイプ120と、
を具備し、
ヒートパイプ120は、
基端部がフルード溜まり50に隣接し、先端部がハブ41の外縁部に配置され、内周面には毛細管が形成される主パイプ121と、
一端部が主パイプ121の先端部から所定長さ(本実施形態では、長さL)だけ主パイプ121の基端部寄りとなる位置に連通接続され、他端部がブレーキディスク61に当接し、内周面には毛細管が形成されず、他端部からハブ41の回転軸までの距離が一端部からハブ41の回転軸までの距離と同じとなる副パイプ122と、
を備える。
このように構成することにより、もともと放熱性に優れるブレーキディスク61を放熱体として利用することが可能であり、ひいてはインホイールモータ1を効率良く冷却することが可能である。
【0071】
本実施形態では、主パイプ121の基端部がフルード溜まり50に隣接する位置に配置され、主パイプ121の基端部の外周面がフルード溜まり50に滞留するフルードに接触することによりフルードから熱を受け取るが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、主パイプ121の一端部がフルード溜まり50に滞留するフルードに接触しなくても、主パイプ121の一端部とフルード溜まり50との間に熱伝導性が高い部材が介装されている場合には、フルード溜まり50に滞留するフルードから当該部材を介して主パイプ121の一端部に熱を受け渡すことが可能である。
従って、「主パイプの基端部がフルード溜まりに隣接する位置に配置される」とは、主パイプの基端部がフルード溜まりに滞留するフルードに接触可能な位置に配置される場合のみならず、主パイプの基端部がフルード溜まりに滞留するフルードに接触しないが主パイプの基端部とフルード溜まりに滞留するフルードとの間で熱の受け渡しが可能な位置に配置される場合をも含む。
【0072】
主パイプの内部空間のうち、主パイプの先端部に対応する部分、すなわち主パイプおよび副パイプが接続されている部分よりも主パイプの先端部寄りとなる部分の長さ(所定の長さ)は、「作動液溜まり」としての機能を果たすことが可能か否かに基づいて設定されることが望ましい。
すなわち、主パイプおよび副パイプが接続されている部分よりも主パイプの先端部寄りとなる部分の長さが過大である場合には液化した作動液を毛細管により主パイプの基端部に移動させる距離が大きくなるため、作動液をヒートパイプの内部空間で効率良く循環させる(効率良く熱を移動させる)上で不利になり、主パイプおよび副パイプが接続されている部分よりも主パイプの先端部寄りとなる部分の長さが過小である場合には液化した作動液が副パイプの内部空間に逆流し易くなるので、熱の逆流を招来する恐れがある。
従って、主パイプの内部空間のうち、主パイプの先端部に対応する部分、すなわち主パイプおよび副パイプが接続されている部分よりも主パイプの先端部寄りとなる部分の長さは、上記問題点を勘案した上で適切な長さに設定されることが望ましい。
【0073】
以下では、図2を用いて本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第二実施形態である冷却構造200について説明する。
冷却構造200はインホイールモータ1を冷却するものである。冷却構造200は搬送ポンプ210およびヒートパイプ220・220・・・を具備する。
【0074】
搬送ポンプ210は本発明に係る搬送ポンプの実施の一形態であり、ハウジング20の内部に充填されるフルード(不図示)をフルード溜まり50に搬送するものである。
本実施形態の搬送ポンプ210は胴体部211および回転部212を備える。
なお、本実施形態の搬送ポンプ210の基本的な構成は図1に示す搬送ポンプ110の構成と略同じであることから、搬送ポンプ210の詳細な説明を省略する。
【0075】
ヒートパイプ220は本発明に係るヒートパイプの実施の一形態であり、フルード溜まり50に搬送されたフルードから受け取った熱をハブ41に固定されるブレーキディスク61に受け渡すものである。ヒートパイプ220はハブ41の円盤部41aに固定される。
ヒートパイプ220は主パイプ221および一対の副パイプ222・222を備える。
【0076】
主パイプ221は本発明に係る主パイプの実施の一形態である。
主パイプ221は熱伝導率が高い材料からなり、両端が閉塞された筒状の部材である。主パイプ221の内周面には毛細管が形成される。
【0077】
図2に示す如く、主パイプ221の中央部はフルード溜まり50に隣接する位置に配置され、主パイプ221の一対の端部はそれぞれハブ41の円盤部41aの外縁部に配置される。
【0078】
一対の副パイプ222・222はいずれも本発明に係る副パイプの実施の一形態である。
一対の副パイプ222・222の一端部はそれぞれ主パイプ221の一対の端部から所定長さ(本実施形態では、図2に示す長さL)だけ主パイプ221の中央部寄りとなる位置に連通接続され、一対の副パイプ222・222の他端部はそれぞれブレーキディスク61に当接する。
【0079】
一対の副パイプ222・222の内周面は主パイプ221と異なり、毛細管が形成されない。従って、一対の副パイプ222・222の内周面はいずれも主パイプ221の内周面に比べて滑らかである。
【0080】
本実施形態では、一対の副パイプ222・222の長手方向がいずれも出力軸32の軸線方向に対して平行である。すなわち、一対の副パイプ122の他端部からハブ41の回転軸(本実施形態の場合、出力軸32の軸線)までの距離は、いずれも一対の副パイプ222・222の一端部からハブ41の回転軸までの距離と同じである。
【0081】
互いに連通する主パイプ221および一対の副パイプ222・222の内部空間には少量の作動液が真空封入される。
主パイプ221の内部空間のうち、主パイプ221の一対の端部に対応する部分(主パイプ221および副パイプ222が接続されている部分を挟んで主パイプ221の中央部の反対側となる部分)は、「作動液溜まり」としての機能を果たす。
【0082】
図2に示すヒートパイプ220は、ちょうど図1に示す二つのヒートパイプ120・120の基端部を連通接続し、二つのヒートパイプ120・120の連通接続された部分を中央部としたものに相当する。
すなわち、図2に示すヒートパイプ220と図1に示す二つのヒートパイプ120・120との相違は「主パイプの基端部がフルード溜まりに隣接する部分において他の主パイプの基端部と連通接続されているか否か」である。
そして、「主パイプの基端部がフルード溜まりに隣接する部分において他の主パイプの基端部と連通接続されているか否か」はインホイールモータの冷却効果に関して差異はない。
これは、図1に示す二つのヒートパイプ120・120の基端部は同一のフルード溜まり50に滞留するフルードとの間で熱の受け渡しを行うことから、二つのヒートパイプ120・120の温度は略同じ温度となり、仮に二つのヒートパイプ120・120の基端部を連通接続しても二つのヒートパイプ120・120の一方から他方に大量の作動液が移動することはないことによる。
【0083】
従って、図2に示すヒートパイプ220は、図1に示す二つのヒートパイプ120・120と同様に、フルード溜まり50に搬送されたフルードから受け取った熱をハブ41に固定されるブレーキディスク61に受け渡すことが可能である。
【0084】
以上の如く、冷却構造200は、
駆動力を発生するモータ本体10およびモータ本体10を収容するハウジング20を備えるとともにハウジング20に回転可能に支持されるハブ41に固定される車輪を回転駆動するインホイールモータ1を冷却するものであって、
ハウジング20の内部に充填されるフルードをハウジング20とハブ41との回転支持部に形成されたフルード溜まり50に搬送する搬送ポンプ210と、
ハブ41に固定され、フルード溜まり50に搬送されたフルードから受け取った熱をハブ41に固定されるブレーキディスク61に受け渡すヒートパイプ220と、
を具備し、
ヒートパイプ220は、
中央部がフルード溜まり50に隣接し、一対の端部がそれぞれハブ41の外縁部に配置され、内周面には毛細管が形成される主パイプ221と、
一端部がそれぞれ主パイプ221の一対の端部から所定長さだけ主パイプ221の中央部寄りとなる位置に連通接続され、他端部がそれぞれブレーキディスク61に当接し、内周面には毛細管が形成されず、他端部からハブ41の回転軸までの距離が一端部からハブ41の回転軸までの距離と同じとなる一対の副パイプ222・222と、
を備える。
このように構成することにより、もともと放熱性に優れるブレーキディスク61を放熱体として利用することが可能であり、ひいてはインホイールモータ1を効率良く冷却することが可能である。
【0085】
以下では、図3を用いて本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第三実施形態である冷却構造300について説明する。
冷却構造300はインホイールモータ1を冷却するものである。冷却構造300は搬送ポンプ310およびヒートパイプ320・320・・・を具備する。
ここで、図3に示す如く、冷却構造300が適用されるインホイールモータ1により回転駆動されるハブ41とブレークディスク61との位置関係は図1に示すものとは異なり、ブレーキディスク61の外縁部がハブ41の円盤部41aの外縁部に固定される。
【0086】
搬送ポンプ310は本発明に係る搬送ポンプの実施の一形態であり、ハウジング20の内部に充填されるフルード(不図示)をフルード溜まり50に搬送するものである。
本実施形態の搬送ポンプ310は胴体部311および回転部312を備える。
なお、本実施形態の搬送ポンプ310の基本的な構成は図1に示す搬送ポンプ110の構成と略同じであることから、搬送ポンプ310の詳細な説明を省略する。
【0087】
ヒートパイプ320は本発明に係るヒートパイプの実施の一形態であり、フルード溜まり50に搬送されたフルードから受け取った熱をハブ41に固定されるブレーキディスク61に受け渡すものである。ヒートパイプ320はハブ41の円盤部41aに固定される。
ヒートパイプ320は主パイプ321および副パイプ322を備える。
【0088】
主パイプ321は本発明に係る主パイプの実施の一形態である。
本実施形態の主パイプ321の構成は図1に示す主パイプ121の構成と略同じであることから、主パイプ321の詳細な説明を省略する。
【0089】
副パイプ322は本発明に係る副パイプの実施の一形態である。
副パイプ322の一端部は主パイプ321の先端部から所定長さ(本実施形態では、図3に示す長さL)だけ主パイプ321の基端部寄りとなる位置に連通接続され、副パイプ322の他端部はブレーキディスク61に当接する。
【0090】
副パイプ322の内周面は主パイプ321と異なり、毛細管が形成されない。従って、副パイプ322の内周面は主パイプ321の内周面に比べて滑らかである。
【0091】
本実施形態では、副パイプ322は中途部で屈曲しつつブレーキディスク61の外縁部から内縁部に向かって延びた形で配置され、副パイプ322の他端部はブレーキディスク61の内縁部に配置される。
すなわち、副パイプ322の他端部からハブ41の回転軸(本実施形態の場合、出力軸32の軸線)までの距離は、副パイプ322の一端部からハブ41の回転軸までの距離よりも短い。
【0092】
互いに連通する主パイプ321および副パイプ322の内部空間には少量の作動液が真空封入される。
主パイプ321の内部空間のうち、主パイプ321の先端部に対応する部分(主パイプ321および副パイプ322が接続されている部分よりも主パイプ321の先端部寄りとなる部分)は、「作動液溜まり」としての機能を果たす。
【0093】
以上の如く、冷却構造300は、副パイプ322の他端部からハブ41の回転軸までの距離を副パイプ322の一端部からハブ41の回転軸までの距離よりも短くすることにより、図1に示す如き「副パイプ122の他端部からハブ41の回転軸までの距離が副パイプ122の一端部からハブ41の回転軸までの距離と同じである」場合に比べて、副パイプ322の内周面に接触して液化した作動液を遠心力の作用により、更に速やかに主パイプ321の内部空間のうち「作動液溜まり」としての機能を果たす部分に移動させることが可能である。
従って、ヒートパイプ320の内部空間における作動液の循環を促進することが可能であり、ひいてはインホイールモータ1を効率良く冷却することが可能である。
【0094】
また、冷却構造300をブレーキディスク61の外縁部がハブ41の円盤部41aの外縁部に固定される構成に適用した場合、副パイプ322の長手方向がブレーキディスク61の半径方向に延びた状態で副パイプ322をブレーキディスク61に当接させることが可能である。
従って、副パイプ322からブレーキディスク61に受け渡される熱をブレーキディスク61の広範囲に分散させることが可能であり、放熱性能が向上する。
【0095】
以下では、図4を用いて本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第四実施形態である冷却構造400について説明する。
冷却構造400はインホイールモータ1を冷却するものである。冷却構造400は搬送ポンプ410、ヒートパイプ420・420・・・および二次ヒートパイプ430・430・・・を具備する。
【0096】
搬送ポンプ410は本発明に係る搬送ポンプの実施の一形態であり、ハウジング20の内部に充填されるフルードをフルード溜まり50に搬送するものである。
本実施形態の搬送ポンプ410は胴体部411および回転部412を備える。
なお、本実施形態の搬送ポンプ410の基本的な構成は図1に示す搬送ポンプ110の構成と略同じであることから、搬送ポンプ410の詳細な説明を省略する。
【0097】
ヒートパイプ420は本発明に係るヒートパイプの実施の一形態であり、フルード溜まり50に搬送されたフルードから受け取った熱をハブ41に固定されるブレーキディスク61に受け渡すものである。ヒートパイプ420はハブ41の円盤部41aに固定される。
ヒートパイプ420は主パイプ421および副パイプ422を備える。
なお、本実施形態のヒートパイプ420の基本的な構成は図1に示すヒートパイプ120の構成と略同じであることから、ヒートパイプ420の詳細な説明を省略する。
【0098】
二次ヒートパイプ430は本発明に係る二次ヒートパイプの実施の一形態であり、ヒートパイプ420の副パイプ422から受け取った熱をブレーキディスク61に受け渡すものである。
二次ヒートパイプ430はブレーキディスク61に固定される。二次ヒートパイプ430は中途部で屈曲しており、中途部から基端部までの部分が副パイプ422に当接し、中途部から先端部までの部分がブレーキディスク61の内縁部から外縁部に向かって延びている。
【0099】
このように、冷却構造400は、二次ヒートパイプ430を具備することにより、フルードからヒートパイプ420に受け渡された熱をブレーキディスク61の広範囲に分散させることが可能であり、放熱性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第一実施形態を示す断面図。
【図2】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第二実施形態を示す断面図。
【図3】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第三実施形態を示す断面図。
【図4】本発明に係るインホイールモータ冷却構造の第四実施形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0101】
10 モータ本体
20 ハウジング
41 ハブ
50 フルード溜まり
61 ブレーキディスク
100 冷却構造(インホイールモータ冷却構造の第一実施形態)
110 搬送ポンプ
120 ヒートパイプ
121 主パイプ
122 副パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生するモータ本体および前記モータ本体を収容するハウジングを備えるとともに前記ハウジングに回転可能に支持されるハブに固定される車輪を回転駆動するインホイールモータを冷却するインホイールモータ冷却構造であって、
前記ハウジングの内部に充填されるフルードを前記ハウジングと前記ハブとの回転支持部に形成されたフルード溜まりに搬送する搬送ポンプと、
前記ハブに固定され、前記フルード溜まりに搬送されたフルードから受け取った熱を前記ハブに固定されるブレーキディスクに受け渡すヒートパイプと、
を具備し、
前記ヒートパイプは、
基端部が前記フルード溜まりに隣接し、先端部が前記ハブの外縁部に配置され、内周面には毛細管が形成される主パイプと、
一端部が前記主パイプの先端部から所定長さだけ前記主パイプの基端部寄りとなる位置に連通接続され、他端部が前記ブレーキディスクに当接し、内周面には毛細管が形成されず、前記他端部から前記ハブの回転軸までの距離が前記一端部から前記ハブの回転軸までの距離以下となる副パイプと、
を備えるインホイールモータ冷却構造。
【請求項2】
駆動力を発生するモータ本体および前記モータ本体を収容するハウジングを備えるとともに前記ハウジングに回転可能に支持されるハブに固定される車輪を回転駆動するインホイールモータを冷却するインホイールモータ冷却構造であって、
前記ハウジングの内部に充填されるフルードを前記ハウジングと前記ハブとの回転支持部に形成されたフルード溜まりに搬送する搬送ポンプと、
前記ハブに固定され、前記フルード溜まりに搬送されたフルードから受け取った熱を前記ハブに固定されるブレーキディスクに受け渡すヒートパイプと、
を具備し、
前記ヒートパイプは、
中央部が前記フルード溜まりに隣接し、一対の端部がそれぞれ前記ハブの外縁部に配置され、内周面には毛細管が形成される主パイプと、
一端部がそれぞれ前記主パイプの一対の端部から所定長さだけ前記主パイプの中央部寄りとなる位置に連通接続され、他端部がそれぞれ前記ブレーキディスクに当接し、内周面には毛細管が形成されず、前記他端部から前記ハブの回転軸までの距離が前記一端部から前記ハブの回転軸までの距離以下となる一対の副パイプと、
を備えるインホイールモータ冷却構造。
【請求項3】
前記ブレーキディスクに固定され、前記副パイプから受け取った熱を前記ブレーキディスクに受け渡す二次ヒートパイプを具備する請求項1または請求項2に記載のインホイールモータ冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−111362(P2010−111362A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288030(P2008−288030)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】