説明

ウェハ洗浄液の製造方法及び装置

【課題】安価な装置によって過硫酸水溶液を製造することができるウェハ洗浄液の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】陰極2に最も近接してバイポーラ膜5が配置され、陰極2とこのバイポーラ膜5との間に陰極室6が形成されている。このバイポーラ膜5から陽極に向ってカチオン交換膜4とバイポーラ膜5とがこの順に交互に配列されている。陽極5に最も近接してバイポーラ膜5が配置されている。1対のバイポーラ膜5の間に配置されたカチオン交換膜4の陰極2側にカチオン移動室7が配置され、該カチオン交換膜4の陽極3側に処理室8が形成されている。循環用タンク15内の過硫酸塩水溶液は、ポンプ16及び配管11を介して各処理室8に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハなどのウェハを洗浄するための過硫酸水溶液を製造する方法及び装置に係り、特に過硫酸塩水溶液を電気脱イオン装置で処理して過硫酸水溶液を製造するようにしたウェハ洗浄液の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程における、レジスト残渣、微粒子、金属および自然酸化膜などを剥離洗浄する洗浄工程において、濃硫酸と過酸化水素の混合溶液(SPM)あるいは、濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液(SOM)が多用されている。高濃度の硫酸に過酸化水素やオゾンを加えると硫酸が酸化されてカロ酸(ペルオキソ一硫酸)が生成される。カロ酸(ペルオキソ一硫酸)は自己分解する際に強い酸化力を発するため洗浄能力が高く、上記ウエハなどの洗浄に役立つことが知られている。
【0003】
ペルオキソ硫酸としてはカロ酸の他に過硫酸(ペルオキソ二硫酸)があり、カロ酸と同様にウエハなどの洗浄に役立つものである。過硫酸を生成する方法として、硫酸イオンを含む水溶液を電解槽で電解して過硫酸溶解水を得て洗浄に供する方法が知られている(特許文献1〜3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−192874号公報
【特許文献2】特表2003−511555号公報
【特許文献3】特開2006−114880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SPMでは、過酸化水素水により発生するカロ酸が自己分解し酸化力が低下すると分解する分を補うため過酸化水素水の補給を繰り返すことが必要である。そして硫酸濃度がある濃度を下回ると新しい高濃度硫酸と交換する。しかし、上記方法では、過酸化水素水中の水でカロ酸溶液が希釈されるため、液組成を一定に維持することが難しく、さらには所定時間もしくは処理バッチ数毎に液を廃棄して、更新することが必要である。このため洗浄効果が一定しない他、多量の薬品を保管しなければならないという問題がある。一方、SOMでは液が希釈されることがなく、一般的にSPMより液更新サイクルを長くできるものの、洗浄効果においてはSPMより劣る。
【0006】
また、SPMでは、1回洗浄槽を満たした高濃度硫酸と数回の過酸化水素水添加により発生できるカロ酸量は少なく、限度がある。SOM法ではオゾン吹き込み量に対するカロ酸の発生効率が非常に低い。したがって、これらの方法では、生成するカロ酸の濃度に限界があり、洗浄効果にも限界がある。
【0007】
硫酸イオンの電解酸化によって過硫酸を生成させる方法には、SPM、SOMのような欠点もなく、液のリサイクルも可能であるため利点が多いが、耐酸化性の電解槽、耐酸化性・低溶出性の電極(例えばダイヤモンド電極)を用いて装置を構成する必要があるため、装置としては高価にならざるを得ない。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、安価な装置によって過硫酸水溶液を製造することができるウェハ洗浄液の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のウェハ洗浄液の製造方法は、過硫酸塩水溶液を電気脱イオン装置に通水し、該過硫酸塩水溶液からカチオンを除去することにより、過硫酸水溶液よりなるウェハ洗浄液を製造することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2のウェハ洗浄液の製造方法は、請求項1において、前記電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、カチオン交換膜と、該カチオン交換膜の陽極側のバイポーラ膜とが配置され、該カチオン交換膜の陰極側にカチオン移動室が形成され、該カチオン交換膜の陽極側に処理室が形成されている電気脱イオン装置であり、該処理室に過硫酸塩水溶液を供給し、前記処理室から前記カチオン移動室にカチオンを移動させることにより前記処理室中に過硫酸水溶液を生成させ、該処理室から過硫酸水溶液を流出させることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3のウェハ洗浄液の製造方法は、請求項1において、前記電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、バイポーラ膜と、該バイポーラ膜の陽極側のカチオン交換膜と、該カチオン交換膜の陽極側のアニオン交換膜とが配置され、該カチオン交換膜の陰極側にカチオン移動室が形成され、該カチオン交換膜の陽極側に処理室が形成され、該アニオン交換膜の陽極側にアニオン移動室が形成されている電気脱イオン装置であり、該処理室に過硫酸塩水溶液を供給すると共にアニオン移動室に純水を供給し、前記処理室から前記アニオン移動室に過硫酸イオンを移動させることにより、前記アニオン移動室中に過硫酸水溶液を生成させ、該アニオン移動室から過硫酸水溶液を流出させることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4のウェハ洗浄液の製造方法は、請求項2において、少なくともカチオン移動室に導電体が充填されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5のウェハ洗浄液の製造方法は、請求項3において、少なくともカチオン移動室か又はアニオン移動室に導電体が充填されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6のウェハ洗浄液の製造方法は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記電気脱イオン装置に供給する過硫酸塩水溶液の温度を60℃以下とすることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7のウェハ洗浄液の製造装置は、電気脱イオン装置と、該電気脱イオン装置に過硫酸塩水溶液を供給する供給手段と、該電気脱イオン装置から過硫酸水溶液を取り出す取出手段とを備えてなるものである。
【0016】
請求項8のウェハ洗浄液の製造装置は、請求項5において、前記電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、カチオン交換膜と、該カチオン交換膜の陽極側のバイポーラ膜とが配置され、該カチオン交換膜の陰極側にカチオン移動室が形成され、該カチオン交換膜の陽極側に処理室が形成され、各室に導電体が充填されている電気脱イオン装置であり、該処理室に過硫酸塩水溶液が供給され、該処理室から過硫酸水溶液が流出することを特徴とするものである。
【0017】
請求項9のウェハ洗浄液の製造装置は、請求項5において、前記電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、バイポーラ膜と、該バイポーラ膜の陽極側のカチオン交換膜と、該カチオン交換膜の陽極側のアニオン交換膜とが配置され、該カチオン交換膜の陰極側にカチオン移動室が形成され、該カチオン交換膜の陽極側に処理室が形成され、該アニオン交換膜の陽極側にアニオン移動室が形成され、各室に導電体が充填されている電気脱イオン装置であり、該処理室に過硫酸塩水溶液が供給され、該処理室から過硫酸水溶液が流出することを特徴とするものである。
【0018】
請求項10のウェハ洗浄液の製造装置は、請求項6において、液循環用タンクを備えており、前記供給手段は、該タンク内の過硫酸塩水溶液を前記電気脱イオン装置に供給するものであり、前記取出手段は、電気脱イオン装置からの過硫酸水溶液を該タンクに戻すように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項11のウェハ洗浄液の製造装置は、請求項8において、前記タンクに、タンク内の塩のカチオン濃度を測定するセンサと、該センサのカチオン濃度が所定値よりも高いときには前記供給手段及び取出手段によってタンク内の液を電気脱イオン装置に循環通水させ、該センサのカチオン濃度が該所定値よりも低いときには、この循環通水を停止させ、タンク内の過硫酸水溶液をウェハ洗浄装置へ送水させる通水制御手段を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項12のウェハ洗浄液の製造装置は、請求項5ないし9のいずれか1項において、該電気脱イオン装置に供給される過硫酸塩水溶液の温度を60℃以下にするための冷却手段を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
なお、バイポーラ膜とはカチオン交換膜とアニオン交換膜とが貼り合わさった構造とされた複合膜の一種である。バイポーラ膜は、水の電気分解に用いる隔膜として、或いは、酸とアルカリの中和生成物である塩の水溶液から酸とアルカリを再生する際の分離膜等として従来から広く使用されている公知のイオン交換膜であり、種々の製造方法が提案されている。本発明では、バイポーラ膜としては、陰極側にカチオン交換膜を配置し陽極側にアニオン交換膜を配置したものを用いる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、電解装置よりも装置構成コストが低い電気脱イオン装置によって過硫酸水溶液を製造することができる。
【0023】
電気脱イオン装置としてはバイポーラ膜を有することにより、過硫酸塩水溶液から過硫酸イオンをより選択的に分離回収することができる。
【0024】
電気脱イオン装置に供給される過硫酸塩水溶液の温度を60℃以下と低くすることにより、電気脱イオン装置内部の温度を低くし、過硫酸の分解を抑制することができると共に、過硫酸の自己分解に伴って生成した硫酸ラジカルなどのラジカルによる電気脱イオン装置内部の酸化劣化を抑制することができる。
【0025】
なお、請求項10のように循環用のタンクを設置し、過硫酸塩水溶液を循環処理することにより、過硫酸塩水溶液からカチオンを十分に除去し、カチオン濃度の低い過硫酸水溶液を製造することができる。
【0026】
請求項11によれば、このタンク内のカチオン濃度をセンサで検出しながら循環処理を行うことにより、カチオン濃度が所定値よりも低くなった過硫酸水溶液をウェハ洗浄装置へ供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0028】
第1図は第1の実施の形態に係るウェハ洗浄液の製造方法及び装置を示す系統図である。
【0029】
電気脱イオン装置1は、陰極2と陽極3との間に、カチオン交換膜4とバイポーラ膜5とを陰極2側から陽極3側に向ってこの順番に配列することによりカチオン移動室7と処理室8と陽極室9とを区画形成し、各室7,8,9に導電体(図示略)を充填したものである。
【0030】
なお、カチオン移動室7と陰極2との間にバイポーラ膜を配置し、カチオン移動室7と陰極との間に陰極室を区画形成してもよい。
【0031】
この処理室8に原水タンク10から過硫酸塩水溶液が配管11を介して供給される。
なお、原水タンクにおいて過硫酸塩水溶液が所定の温度範囲となるように調整する温度調整手段(図示略)が設けられている。
【0032】
ナトリウムなどのカチオンは、カチオン交換膜を透過して処理室8からカチオン移動室7へ移行するが、アニオン(過硫酸イオン)はバイポーラ膜5を透過せず、処理室8内にとどまる。このため、処理室8から流出する過硫酸水溶液が配管12を介して処理水タンク13に回収される。
なお、処理水タンク13において、原水タンクと同様に温度調整手段(図示略)が設けられており、過硫酸溶液を所定の温度になるよう調整している。
【0033】
過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられるが、特に過硫酸ナトリウムが好適である。過硫酸塩水溶液の濃度は、50〜300wt%特に長期安定性の観点では100〜150wt%程度が好適である。
【0034】
各室に充填する導電体としては、全室においてカチオン交換樹脂を採用することができる。ただしバイポーラ膜で隔てられた陰極室、陽極室については導電性が確保されればよいのでカチオン交換樹脂以外の導電体(例えばSUSのような金属導電体)を充填しても構わない。
【0035】
処理室8への通水LVは3〜5m/h程度が好ましい。カチオン移動室7と陽極室9にはそれぞれ硫酸などの酸を通水することができる。ただし過硫酸塩の濃度が5%を超えるときは、中和熱が極端に上がらないようにLVを上げたり塩濃度を抑えたりする。また、純水を通水することもできる。酸として硫酸を用いると、バイポーラ膜からわずかに硫酸が透過して処理に混入したとしても、過硫酸溶液の組成に影響を与えないので好ましい。陽極室9の純水は循環通水することができる。ただし長期安定性の観点から、酸化性物質が濃縮されないよう1パスで処理する方がよい。カチオン移動室7からは、NaOH水溶液又は酸による中和生成物の水溶液(NaSOなど)が流出する。
【0036】
第2図は複数のカチオン交換膜とバイポーラ膜とを陰極2と陽極3との間に交互に配設した電気脱イオン装置1Aを用いるようにしたウェハ洗浄液の製造方法及び装置の系統図である。
【0037】
陰極2に最も近接してバイポーラ膜5が配置され、陰極2とこのバイポーラ膜5との間に陰極室6が形成されている。このバイポーラ膜5から陽極に向ってカチオン交換膜4とバイポーラ膜5とがこの順に交互に配列されている。陽極5に最も近接してバイポーラ膜5が配置されている。1対のバイポーラ膜5の間に配置されたカチオン交換膜4の陰極2側にカチオン移動室7が配置され、該カチオン交換膜4の陽極3側に処理室8が形成されている。最も陽極5側のバイポーラ膜5と陽極5との間には陽極室9が形成されている。陰極室6と陽極室9には、それぞれ純水が循環流通されている。カチオン移動室7には純水が供給され、各カチオン移動室7からはNaOH水溶液が流出する。
【0038】
循環用タンク15内の過硫酸塩水溶液は、ポンプ16及び配管11を介して各処理室8に供給される。第1図の場合と同じく、カチオンがカチオン交換膜4を透過して各処理室8からカチオン移動室7へ移行し、バイポーラ膜5を透過しえないアニオン(過硫酸イオン)は処理室8内にとどまり、各処理室8から過硫酸水溶液が流出する。
なお、循環用タンク15には、図示しない温度調整手段が設けられており、過硫酸塩水溶液が所定の温度に調整される。
【0039】
この過硫酸水溶液は、配管13を介して循環用タンク15に戻る。循環用タンク15には過硫酸塩濃度を測定するセンサ17が設けられている。循環用タンク15には、過硫酸水溶液をウェハ洗浄工程へ送水するための配管18が接続され、この配管18に弁19及びポンプ20が設けられている。センサ17としては例えばイオン電極、pH計、導率計が挙げられる。
【0040】
この第2図の装置の運転開始に際しては、過硫酸ナトリウム水溶液を循環用タンク15に収容しておき、弁19を閉、ポンプ20を停止状態とし、ポンプ16を作動させる。これにより、循環用タンク15内の過硫酸ナトリウム水溶液が電気脱イオン装置1Aに通水され、過硫酸水溶液が電気脱イオン装置1Aから配管13を介して循環用タンク15に戻ってくる。従って、運転を継続すると、循環用タンク15内の水溶液のナトリウム濃度が次第に低下してくる。そして、センサ17で検出されるナトリウム濃度が所定値以下となった場合には、ポンプ16を停止し、弁19を開とし、ポンプ20を作動させ、過硫酸水溶液を循環用タンク15からウェハ洗浄工程へ送る。
【0041】
第3図は、第2図において、1対のバイポーラ膜5の間において、カチオン交換膜4の陽極側にアニオン交換膜21を配置したものである。これにより、1対のバイポーラ膜5,5の間にあっては、陰極側バイポーラ膜5とカチオン交換膜4との間にカチオン移動室7が形成され、カチオン交換膜4とアニオン交換膜21との間に処理室22が形成され、アニオン交換膜21と陽極側バイポーラ膜5との間にアニオン移動室23が形成されている。
【0042】
この第3図では、処理室22に供給された過硫酸塩水溶液が該処理室22内を流れる間に、過硫酸塩水溶液中のカチオンがカチオン交換膜4を透過してカチオン移動室7に移行し、アニオンはアニオン交換膜21を透過してアニオン移動室23に移行し、該アニオン移動室23から過硫酸水溶液が流出する。この過硫酸水溶液が配管25を介してウェハ洗浄工程へ送られる。
【0043】
処理室22からは脱イオン水が流出する。この脱イオン水は配管26を介して処理室22の流入口へ循環され、この途中で濃度の高い過硫酸塩水溶液が添加される。
【0044】
なお、各電極室6,9、カチオン移動室7、アニオン移動室23へはそれぞれ純水が供給されている。電極室6,9からは純水が流出するので、再利用する。カチオン移動室7からはNaOH水溶液が流出する。アニオン移動室23からは前述の通り過硫酸水溶液が流出する。
【0045】
なお、過硫酸は常温で次のように分解し、カロ酸と硫酸を生じる。
+HO→HSO+HSO
さらにカロ酸は水により分解を受け、過酸化水素と硫酸を生じる。
SO+HO→H+HSO
一方、高温では次の反応が起こる。
→2H+ S2−(過硫酸イオン)
2−→2SO・(硫酸ラジカル)
カロ酸に転換してからも次の反応で硫酸ラジカルが生成する。(上記より遅い反応)
SO2−→SO・+ OH・
この反応は生成したラジカルを安定化させるために、大きな熱エネルギーを必要とする。よって高温領域での特有の反応であり、常温常圧では極めて反応効率が低いと考えられる。反応が起きたとしても、生成したラジカルはすぐ近傍にあるラジカルと反応して失活する。つまり反応環境の温度管理によって反応の種類をコントロールすることができる。
【0046】
上記のように過硫酸塩の脱塩に際しては生成した過硫酸からカロ酸、過酸化水素、過流酸イオン、硫酸ラジカルの生成を抑制するために所定の低温域で行う必要がある。そこで電気脱イオン装置内部の処理室温度を低温に維持することが必要となる。これにより過硫酸を高濃度に維持することができると共に、過硫酸の自己分解により発生する硫酸ラジカルなどのラジカルによる装置内部の酸化劣化を防止することができるため、通常の電気脱イオン装置を用いて処理することができる。なお所定の低温域における温度の上限値としては、イオン交換膜の耐熱性から60℃以下が好ましく、さらにイオン交換膜の耐食性も考慮すると40℃以下であることが長期安定性、安全性の面からさらに好ましい。また温度の下限値としては氷結して通水を阻害しなければ特に限定されず、10℃以上であれば問題なく運転できる。
温度調整手段の設置箇所は、特に制限されず、ライン中のタンクに設けてもよいし、ラインに熱交換器を設けてもよい。
【0047】
電気脱イオン装置の内部は温度管理すれば腐食の問題はないが、電気脱イオン装置から排出されるとカロ酸や過流酸イオンなどが生成されて配管等の部材が腐食する恐れがある。従って過硫酸の生成はユースポイントのなるべく直近で行うのが望ましい。
またウェハ洗浄に用いる場合は、高濃度の硫酸が必要であり、また所定の高温環境が必要なので、過硫酸溶液と高温の高濃度硫酸とを混合して昇温及び硫酸高濃度化を図った上でウェハ洗浄に供することが望ましい。このとき高濃度硫酸の温度としては120〜170℃程度、濃度としては90wt%以上であることが好ましい。なお生成した過硫酸水溶液は水を多く含むため高濃度硫酸と混合した際に溶解熱が生じるため昇温される。混合割合としては1:1〜2:1程度が好ましい。
本発明の電気脱イオン装置のアニオン移動室から排出されるNaOH水溶液などのアルカリ性水溶液は、使用後の硫酸溶液と混合して中和処理して系外に排出することができる。
本発明では硫酸を循環利用することができないので、洗浄液を効率的に使う枚葉式洗浄に適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態に係るウェハ洗浄液の製造方法及び装置を示す系統図である。
【図2】別の実施の形態に係るウェハ洗浄液の製造方法及び装置を示す系統図である。
【図3】さらに別の実施の形態に係るウェハ洗浄液の製造方法及び装置を示す系統図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1A,1B 電気脱イオン装置
2 陰極
3 陽極
4 カチオン交換膜
5 バイポーラ膜
6 陰極室
7 カチオン移動室
8 処理室
9 陽極室
15 循環用タンク
17 ナトリウムセンサ
21 アニオン交換膜
22 処理室
23 アニオン移動室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過硫酸塩水溶液を電気脱イオン装置に通水し、該過硫酸塩水溶液からカチオンを除去することにより、過硫酸水溶液よりなるウェハ洗浄液を製造することを特徴とするウェハ洗浄液の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、カチオン交換膜と、該カチオン交換膜の陽極側のバイポーラ膜とが配置され、該カチオン交換膜の陰極側にカチオン移動室が形成され、該カチオン交換膜の陽極側に処理室が形成されている電気脱イオン装置であり、
該処理室に過硫酸塩水溶液を供給し、前記処理室から前記カチオン移動室にカチオンを移動させることにより前記処理室中に過硫酸水溶液を生成させ、
該処理室から過硫酸水溶液を流出させることを特徴とするウェハ洗浄液の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、バイポーラ膜と、該バイポーラ膜の陽極側のカチオン交換膜と、該カチオン交換膜の陽極側のアニオン交換膜とが配置され、該カチオン交換膜の陰極側にカチオン移動室が形成され、該カチオン交換膜の陽極側に処理室が形成され、該アニオン交換膜の陽極側にアニオン移動室が形成されている電気脱イオン装置であり、
該処理室に過硫酸塩水溶液を供給すると共にアニオン移動室に純水を供給し、前記処理室から前記アニオン移動室に過硫酸イオンを移動させることにより、前記アニオン移動室中に過硫酸水溶液を生成させ、
該アニオン移動室から過硫酸水溶液を流出させることを特徴とするウェハ洗浄液の製造方法。
【請求項4】
請求項2において、少なくともカチオン移動室に導電体が充填されていることを特徴とするウェハ洗浄液の製造方法。
【請求項5】
請求項3において、少なくともカチオン移動室か又はアニオン移動室に導電体が充填されていることを特徴とするウェハ洗浄液の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記電気脱イオン装置に供給する過硫酸塩水溶液の温度を60℃以下とすることを特徴とするウェハ洗浄液の製造方法。
【請求項7】
電気脱イオン装置と、
該電気脱イオン装置に過硫酸塩水溶液を供給する供給手段と、
該電気脱イオン装置から過硫酸水溶液を取り出す取出手段と
を備えてなるウェハ洗浄液の製造装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、カチオン交換膜と、該カチオン交換膜の陽極側のバイポーラ膜とが配置され、該カチオン交換膜の陰極側にカチオン移動室が形成され、該カチオン交換膜の陽極側に処理室が形成され、各室に導電体が充填されている電気脱イオン装置であり、
該処理室に過硫酸塩水溶液が供給され、
該処理室から過硫酸水溶液が流出することを特徴とするウェハ洗浄液の製造装置。
【請求項9】
請求項5において、
前記電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、バイポーラ膜と、該バイポーラ膜の陽極側のカチオン交換膜と、該カチオン交換膜の陽極側のアニオン交換膜とが配置され、該カチオン交換膜の陰極側にカチオン移動室が形成され、該カチオン交換膜の陽極側に処理室が形成され、該アニオン交換膜の陽極側にアニオン移動室が形成され、各室に導電体が充填されている電気脱イオン装置であり、
該処理室に過硫酸塩水溶液が供給され、
該処理室から過硫酸水溶液が流出することを特徴とするウェハ洗浄液の製造装置。
【請求項10】
請求項6において、液循環用タンクを備えており、
前記供給手段は、該タンク内の過硫酸塩水溶液を前記電気脱イオン装置に供給するものであり、
前記取出手段は、電気脱イオン装置からの過硫酸水溶液を該タンクに戻すように構成されていることを特徴とするウェハ洗浄液の製造装置。
【請求項11】
請求項8において、前記タンクに、タンク内の塩のカチオン濃度を測定するセンサと、
該センサのカチオン濃度が所定値よりも高いときには前記供給手段及び取出手段によってタンク内の液を電気脱イオン装置に循環通水させ、該センサのカチオン濃度が該所定値よりも低いときには、この循環通水を停止させ、タンク内の過硫酸水溶液をウェハ洗浄装置へ送水させる通水制御手段を備えたことを特徴とするウェハ洗浄液の製造装置。
【請求項12】
請求項5ないし9のいずれか1項において、該電気脱イオン装置に供給される過硫酸塩水溶液の温度を60℃以下にするための冷却手段を備えたことを特徴とするウェハ洗浄液の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−27023(P2009−27023A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189757(P2007−189757)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】