説明

ウェーハの加工方法

【課題】裏面に再配線層を備えた半導体チップ等のデバイス製造過程において、デバイスに個片化される前の薄いウェーハの剛性を確保する。また、ウェーハの段階で、チップの裏面に再配線層を好適に形成する。
【解決手段】ウェーハ1の裏面の、半導体チップ3が形成されたデバイス形成領域4に対応する領域のみを、研削およびエッチングによって薄化し、裏面に凹部11を形成する。凹部11の周囲の環状凸部12によってウェーハ1の剛性を確保し、裏面側再配線層40を形成する工程への移送時のハンドリングを安全、かつ容易に行えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通する金属電極を備えた半導体チップ等のデバイスが複数形成されたウェーハからデバイスを得るにあたってウェーハに施される加工の方法に係わり、特に、裏面に再配線層を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイス技術においては、CSP(チップ・サイズ・パッケージ)といった半導体チップとほぼ同じサイズの半導体パッケージが、高密度化や小型化・薄型化を達成する上で有効に利用されている。そのような半導体パッケージの製造方法としては、インターポーザと呼ばれるパッケージ基板上に半導体チップを積層し、インターポーザと半導体チップの電極どうしを、金線ワイヤで電気的に結線するワイヤボンディングをした後、半導体チップをインターポーザに樹脂モールドするといった方法がある。半導体チップの表面(デバイス素子面)には再配線層が形成される場合があり、この再配線層は、半導体チップの集合体であるウェーハの段階で、各半導体チップに対して設けられる。
【0003】
ワイヤボンディングで電極どうしを結線した場合には、モールド用の樹脂を封入する際に金線ワイヤが変形して断線や短絡が生じたり、モールド樹脂中に残存した空気が加熱時に膨張して破損を招いたりするという問題点があった。そこで、半導体チップに、厚さ方向に貫通して自身の電極に導通する貫通電極を設け、半導体チップの積層と同時に貫通電極を接合させて電気的に結線する技術が開発された(特許文献1参照)。また、半導体チップは表面側をインターポーザ等に向けて押圧して積層するため、表面に形成された再配線層が圧力を受けて圧壊などのダメージを受けるおそれがあった。このため、再配線層を表面ではなく裏面に形成して再配線層にかかる負荷を軽減させるような技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−136187号公報
【特許文献2】特開2003−017495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のように小型化・薄型化を図るために、半導体チップはウェーハの段階できわめて薄く加工される。そのため、薄化後にウェーハを再配線層形成工程へ移送したり、その後の分割工程へ移送したりする際に、ウェーハのハンドリングが困難であり、また、割れやすいため、歩留まりが低下するといった課題があった。
【0006】
よって本発明は、裏面に再配線層を備えた半導体チップ等のデバイス製造過程において、デバイスに個片化される前の段階における薄いウェーハのハンドリングを容易として工程間を円滑に移送させることができ、また、ウェーハの段階で、デバイスの裏面に再配線層を適確に形成することができ、これらのことから生産性や歩留まりの向上が図られるウェーハの加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面に複数のデバイスが形成された略円形状のデバイス形成領域と、該デバイス形成領域を囲繞する外周余剰領域とを有するウェーハの裏面に、再配線層を形成するウェーハの加工方法であって、デバイス形成領域に、複数の金属電極を、デバイスの表面から少なくともデバイス厚さと同等以上の深さに埋設する電極埋設工程と、該ウェーハの裏面の、デバイス形成領域に対応する領域のみを薄化して該裏面に凹部を形成し、これによって、該凹部の底面から金属電極を露出させるとともに、外周余剰領域に裏面側に突出する環状凸部を形成する裏面凹部形成工程と、凹部の底面の、露出した金属電極を除く部分に絶縁膜を形成するとともに、再配線層を形成する再配線層形成工程とを備えることを特徴としている。本発明の裏面凹部形成工程で行うウェーハ裏面への凹部形成手段は、研削加工およびエッチング加工が挙げられ、これら手段のうちの一方を採用するか、もしくは双方を組み合わせて行う場合もある。
【0008】
本発明によれば、裏面凹部形成工程で、薄化が必要とされるデバイス形成領域に対応した裏面部分のみを薄化し、その周囲の外周余剰領域は元の厚さのまま残して環状凸部を形成することにより、薄化はされたが剛性は環状凸部によって確保されたウェーハが得られる。このため、裏面凹部形成工程後の再配線層形成工程へウェーハを移送する際のハンドリングや、その再配線層形成工程自体を、安全、かつ容易に行うことができるようになる。その結果、ウェーハの段階でデバイスの裏面に再配線層を適確に形成することができるとともに、ウェーハが割れることによる歩留まりの低下を防止することができる。また、再配線層形成工程以降の、ウェーハを分割して各デバイスに個片化するまでの工程間のハンドリングや、それら工程自体も、安全、かつ容易に行うことができ、このため、デバイスの生産性や歩留まりの向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウェーハの薄化を、デバイス形成領域に対応する領域のみに行って周囲の外周余剰領域を厚い環状凸部に形成することにより、ウェーハの剛性を確保することができ、その結果、裏面に再配線層を適確に形成することができるとともに、デバイスの生産性や歩留まりの向上が図られるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]半導体ウェーハ
図1の符号1は、半導体チップの素材である円盤状の半導体ウェーハを示している。このウェーハ1はシリコンウェーハ等であって、厚さは例えば600μm程度である。ウェーハ1の表面には、格子状の分割予定ライン2によって複数の矩形状の半導体チップ(デバイス)3が区画されている。これら半導体チップ3の表面には、ICやLSI等の図示せぬ電子回路が形成されている。
【0011】
複数の半導体チップ3は、ウェーハ1と同心の概ね円形状のデバイス形成領域4に形成されている。デバイス形成領域4はウェーハ1の大部分を占めており、このデバイス形成領域4の周囲であってウェーハ1の外周部が、半導体チップ3が形成されない環状の外周余剰領域5とされている。また、ウェーハ1の周面の所定箇所には、半導体の結晶方位を示すV字状の切欠き(ノッチ)6が形成されている。このノッチ6は、外周余剰領域5内に形成されている。図1の右側の拡大図に示すように、各半導体チップ3の所定箇所には、表面に露出する複数の金属電極8が埋設されている。
【0012】
以下、ウェーハ1に金属電極8を埋設してから、ウェーハ1を薄化加工して裏面に金属電極8の端部を露出させて貫通電極とし、その貫通電極に再配線を結線する方法を説明する。
【0013】
[2]金属電極埋設工程
図2(a)で示すウェーハ1に形成された半導体チップ3の表面に、図2(b)に示すように、複数の金属電極8を、ウェーハ1の表面とほぼ面一で、かつ、半導体チップ3の厚さtよりも僅かに深く形成する。これら金属電極8は、ウェーハ1の表面に穿孔したビアホール9の内面に絶縁膜を形成し、このビアホール9内に、銅等の電極用金属を埋設するようにして形成される。ビアホール9は、レジストパターンでマスクを形成したウェーハ1の表面にプラズマエッチングを施す方法や、レーザ光照射等の方法によって形成される。金属電極8は、CVDによる成膜法等によってビアホール9内に形成される。
【0014】
次に、図2(c)に示すように、ウェーハ1の表面に表面側再配線層20を形成する。表面側再配線層20は、選択された金属電極どうしを結線するアルミニウム等からなる金属製の配線21と、ウェーハ1の表面および配線21を被覆する絶縁膜22とから構成される。表面側再配線層20を形成するには、はじめに、CVDによる成膜法等によって配線21を施し、次いで、絶縁膜22を形成する。絶縁膜22の材料には、ポリイミド等の絶縁性樹脂や、SOG(Spin On Glass)、BPSG(Boron Phosphorous Silicate Glass)等のガラス系酸化膜が適用される。樹脂やSOGの場合は、回転させたウェーハ表面の中心に液体材料を滴下して遠心力により表面全面に行き渡らせるスピンコート法によって形成される。また、BPSGはCVD等の成膜法によって形成される。絶縁膜22の厚さは、例えば5〜10μm程度とされる。
【0015】
[3]保護テープ貼着工程
上記のようにして表面側再配線層20が形成されたウェーハ1に対しては、続いて、裏面側を所定厚さ除去してウェーハ1を目的厚さ、すなわち製造する半導体チップ3の厚さ相当に薄化する加工を施す。薄化加工するにあたっては、図3に示すように、予めウェーハ1の表面に保護テープ10を貼り付ける。保護テープ10としては、例えば、厚さ100〜200μm程度のポリエチレン等の基材の片面に厚さ10〜20μm程度のアクリル系等の粘着剤を塗布したテープなどが好適に用いられる。保護テープ10を貼着する目的は、次の裏面凹部形成工程で、ウェーハ1の表面側の半導体チップ3の電子回路や表面側再配線層20がダメージを受けることを防止するためである。
【0016】
[4]裏面凹部形成工程
本実施形態でのウェーハ1の薄化は、裏面全面を所定厚さ除去して全体を薄化するのではなく、デバイス形成領域4に対応する領域のみとする。したがってウェーハ1の裏面には、図6に示すように、デバイス形成領域4がへこんだ凹部11が形成されると同時に、その凹部11の周囲の外周余剰領域5には、元のウェーハ厚さが残った環状凸部12が形成される。本実施形態では、凹部11の形成は、主に研削加工によって行い、残りの僅かな厚さをエッチング加工によって除去する。
【0017】
ウェーハ裏面の研削量は、図2(d)に示すように、金属電極8の下端(ウェーハ裏面側の端部)には到達せず、金属電極8の下端と、裏面すなわち凹部11の底面11aとの間に僅かな厚さが残る程度とし、この段階では金属電極8を裏面には露出させない。次いで、図2(e)に示すように、凹部11の底面11aをエッチング加工して金属電極8の下端を底面11aから僅かに突出させる。これにより、金属電極8をウェーハ1の表裏に貫通する貫通電極8Aとする。貫通電極8Aの裏面側への突出量は、例えば5μm程度とされ、この突出部分が裏面側電極部8aとされる。
【0018】
[4−1]裏面研削
ウェーハ裏面のデバイス形成領域4に対応する領域のみを研削して凹部11を形成するには、図4に示す研削装置60を用いたインフィード研削加工が好適である。この研削装置60によれば、表面側再配線層20が形成されている表面側を真空チャック式のチャックテーブル70の吸着面に吸着させてウェーハ1を保持し、2台の研削ユニット(粗研削用と仕上げ研削用)80A,80Bによってウェーハ裏面に対し粗研削と仕上げ研削を順次行う。
【0019】
研削装置60の構成ならびに動作は、以下の通りである。
研削装置60は直方体状の基台61を有しており、ウェーハ1は、この基台61上の所定箇所に着脱自在にセットされる供給カセット62内に、表面側を上にした状態で、複数が積層して収納される。その供給カセット62から1枚のウェーハ1が搬送ロボット63によって引き出され、そのウェーハ1は、表裏を反転されて裏面を上に向けた状態で位置決めテーブル64上に載置され、ここで一定の位置に決められる。
【0020】
基台61上には、R方向に回転駆動されるターンテーブル73が設けられており、さらにこのターンテーブル73の外周部分には、複数(この場合、3つ)の円盤状のチャックテーブル70が、周方向に等間隔をおいて配設されている。これらチャックテーブル70はZ方向(鉛直方向)を回転軸として回転自在に支持されており、図示せぬ駆動機構によって回転駆動させられる。
【0021】
位置決めテーブル64上で位置決めがなされたウェーハ1は、供給アーム65によって位置決めテーブル64から取り上げられ、真空運転されている1つのチャックテーブル70上に、保護テープ10が貼着された表面側を下に向けた状態で同心状に載置される。チャックテーブル70は、図5(b)に示すように、枠体71の中央上部に、多孔質部材による円形の吸着部72が形成されたもので、ウェーハ1は、この吸着部72の上面に、保護テープ10が密着し、かつ、裏面が露出する状態に吸着、保持される。このため、ウェーハ1の表面側の半導体チップ3の電子回路や表面側再配線層20が保護テープ10によって保護され、ダメージを受けることが防止される。
【0022】
チャックテーブル70に保持されたウェーハ1は、ターンテーブル73がR方向へ所定角度回転することにより、粗研削用研削ユニット80Aの下方の一次加工位置に送り込まれ、この位置で研削ユニット80Aにより裏面が粗研削される。次いでウェーハ1は、再度ターンテーブル73がR方向へ所定角度回転することにより、仕上げ研削用研削ユニット80Bの下方の二次加工位置に送り込まれ、この位置で研削ユニット80Bにより裏面が仕上げ研削される。
【0023】
各研削ユニット80A,80Bは、基台61の奥側の端部に立設されたX方向に並ぶコラム66A,66Bの前面に、それぞれ取り付けられている。各コラム66A,66Bに対する各研削ユニット80A,80Bの取付構造は同一であってX方向で左右対称となっている。そこで、図4を参照し、仕上げ研削側を代表させてその取付構造を説明する。
【0024】
仕上げ研削側コラム66Bの前面66bは、基台61の上面に対しては垂直面であるが、X方向の中央から端部に向かうにしたがって奥側に所定角度で斜めに後退するテーパ面に形成されている。このテーパ面66b(粗研削側のコラム66Aではテーパ面66a)の水平方向すなわちテーパ方向は、一次加工位置に位置付けられたチャックテーブル70の回転中心とターンテーブル73の回転中心とを結ぶ線に対して平行になるように設定されている。
【0025】
テーパ面66b(66a)には、そのテーパ方向と平行な上下一対のガイド91が設けられており、このガイド91には、X軸スライダ92が摺動自在に装着されている。このX軸スライダ92は、サーボモータ93によって駆動される図示せぬボールねじ式の送り機構により、ガイド91に沿って往復移動するようになっている。X軸スライダ92の往復方向は、ガイド91の延びる方向、すなわちテーパ面66b(66a)のテーパ方向と平行である。
【0026】
X軸スライダ92の前面はX・Z方向に沿った面であり、その前面に、各研削ユニット80A,80Bが、それぞれZ方向(鉛直方向)に昇降自在に設置されている。これら研削ユニット80A,80Bは、X軸スライダ92の前面に設けられたZ方向に延びるガイド94にZ軸スライダ95を介して摺動自在に装着されている。そして各研削ユニット80A,80Bは、サーボモータ96よって駆動されるボールねじ式の送り機構97により、Z軸スライダ95を介してZ方向に昇降するようになっている。
【0027】
各研削ユニット80A,80Bは同一構成であり、装着される砥石が粗研削用と仕上げ研削用と異なることで、区別される。図5に示すように、研削ユニット80A,80Bは、軸方向がZ方向に延びる円筒状のスピンドルハウジング81と、このスピンドルハウジング81内に同軸的、かつ回転自在に支持されたスピンドルシャフト82と、スピンドルハウジング81の上端部に固定されてスピンドルシャフト82を回転駆動するモータ83と、スピンドルシャフト82の下端に同軸的に固定された円盤状のフランジ84とを具備している。そしてフランジ84には、砥石ホイール85が取り付けられている。
【0028】
砥石ホイール85は、環状で下面が円錐状に形成されたフレーム86の下面に複数の砥石87が環状に配列されて固着されたものである。砥石87の下端面である刃先は、スピンドルシャフト82の軸方向に直交するように設定される。砥石87は、例えば、ガラス質のボンド材中にダイヤモンド砥粒を混合して成形し、焼結したものが用いられる。
【0029】
粗研削用の研削ユニット80Aに取り付けられる砥石87は、例えば♯320〜♯400程度の比較的粗い砥粒を含むものが用いられる。また、仕上げ研削用の研削ユニット80Bに取り付けられる砥石87は、例えば♯2000〜♯8000程度の比較的細かい砥粒を含むものが用いられる。各研削ユニット80A,80Bには、研削面の冷却や潤滑あるいは研削屑の排出のための研削水を供給する研削水供給機構(図示省略)が設けられている。
【0030】
砥石ホイール85の研削外径、すなわち環状に配列された複数の砥石87の外周縁の直径は、ウェーハ1の半径よりも僅かに小さく、デバイス形成領域4の半径と同等程度に設定されている。これは、砥石87の刃先が、回転するチャックテーブル70上に同心状に保持されたウェーハ1の回転中心を通過し、かつ、その刃先の外周縁がデバイス形成領域4の外周縁(デバイス形成領域4と外周余剰領域5との境界)に一致して通過し、デバイス形成領域4に対応する領域のみを研削して、図6に示す凹部11を形成可能とするための寸法設定である。
【0031】
上述したように、上記一次加工位置および二次加工位置に位置付けられた各チャックテーブル70の回転中心と、ターンテーブル73の回転中心との間を結ぶ方向(以下、軸間方向と称する)は、それぞれコラム66A,66Bの前面66a,66bのテーパ方向、すなわちガイド91の延びる方向と平行に設定されている。そして、各研削ユニット80A,80Bは、砥石ホイール85の回転中心(スピンドルシャフト82の軸心)が、対応する加工位置(粗研削ユニット80Aでは一次加工位置、仕上げ研削ユニット80Bでは二次加工位置)に位置付けられたチャックテーブル70の回転中心とターンテーブル73の回転中心とを結ぶ軸間方向の直上にそれぞれ存在するように位置設定がなされている。したがって、研削ユニット80A,80Bが、X軸スライダ92ごとガイド91に沿って移動すると、砥石ホイール85の回転中心が軸間方向に沿って移動するように設定されている。
【0032】
ウェーハ1は、一次加工位置において粗研削ユニット80Aにより、また、二次加工位置において仕上げ研削ユニット80Bにより、裏面研削される。裏面研削は、まず、研削ユニット80A(80B)の軸間方向位置がX軸スライダ92を移動させることにより調整されて、ウェーハ1の裏面に対面する砥石ホイール85の研削外径が、ウェーハ1のデバイス形成領域4の半径に対応する凹部形成位置に位置付けられる。この凹部形成位置は砥石87の刃先がウェーハ1の回転中心付近とデバイス形成領域4の外周縁を通過する位置であり、この場合はウェーハ1の回転中心よりもターンテーブル73の外周側とされる。ウェーハ1の裏面研削は、このように砥石ホイール85を凹部形成位置に保持してから、チャックテーブル70を回転させてウェーハ1を自転させ、送り機構97によって研削ユニット80A(80B)を下方に送りながら、回転する砥石ホイール85の砥石87をウェーハ1の裏面に押し当てることによりなされる。砥石ホイール85の回転速度は、2000〜5000rpm程度とされる。
【0033】
粗研削ユニット80Aによる粗研削では、ウェーハ1の裏面はデバイス形成領域4に対応する領域のみが研削され、図5に示すように研削部分が凹部11に形成され、この凹部11の周囲には、外周余剰領域5の厚さがそのまま残って環状凸部12が形成される。粗研削で研削されるデバイス形成領域4は、例えば仕上げ研削後の厚さ+20〜40μm程度といった厚さまで薄化される。そして、仕上げ研削では残りの厚さが研削されて、ウェーハ1のデバイス形成領域4に対応する領域が目的厚さに薄化される。
【0034】
粗研削後のウェーハ1においては、図5(a)に示すように、凹部11の底面11aに、多数の弧が放射状に描かれた模様を呈する研削条痕14aが残留する。この研削条痕14aは砥石87中の砥粒による破砕加工の軌跡であり、マイクロクラック等を含む機械的ダメージ層である。粗研削による研削条痕14aは仕上げ研削によって除去されるが、図6(a)に示すように、凹部11の底面11aには仕上げ研削によって新たな研削条痕14bが残留する。
【0035】
ウェーハ1の裏面研削の際には、粗研削および仕上げ研削とも、各加工位置の近傍に設けられた厚さ測定ゲージ75によってウェーハ厚さを測定しながら、その測定値に基づいて研削量が制御される。厚さ測定ゲージ75は、プローブがチャックテーブル70の枠体71の上面に接触する基準側ハイトゲージ76と、プローブが被研削面(この場合、ウェーハ1の凹部11の底面11a)に接触する可動側ハイトゲージ77との組み合わせからなるもので、双方のハイトゲージ76,77の高さ測定値を比較することにより、裏面研削中のウェーハ1の厚さが逐一測定される。ウェーハ1の裏面研削は、厚さ測定ゲージ75によってウェーハ1の厚さを測定しながら行われ、その測定値に基づいて、送り機構97による砥石ホイール85の送り量が制御される。
【0036】
粗研削から仕上げ研削を経てウェーハ1のデバイス形成領域4が目的厚さまで薄化されたら、次のようにしてウェーハ1の回収に移る。まず、仕上げ研削ユニット80Bが上昇してウェーハ1から退避し、一方、ターンテーブル73がR方向へ所定角度回転することにより、ウェーハ1が供給アーム65からチャックテーブル70上に載置された着脱位置に戻される。この着脱位置でチャックテーブル70の真空運転は停止され、次いでウェーハ1は、回収アーム67によってスピンナ式洗浄装置68に搬送されて洗浄、乾燥処理され、この後、搬送ロボット63によって回収カセット69内に移送、収容される。
【0037】
[4−2]裏面エッチング
以上のようにウェーハ1の裏面に凹部11を形成してデバイス形成領域4に対応する領域のみを薄化したら、次いで、形成した凹部11にエッチングを施して凹部11の底面11aを僅かの厚さ除去する。これによって図2(e)に示すように、金属電極8を裏面側に突出させて貫通電極8Aとするとともに、裏面側電極部8aを形成する。エッチングの方法としては、シリコン等のウェーハ材料は反応して除去され、金属電極8(貫通電極8A)は無反応で除去されないガスを用いたプラズマエッチングが好ましい。
【0038】
プラズマエッチングは、ウェーハ1を入れた容器内を一般周知のシリコンエッチング用ガス(例えばCF,SF等のフッ素系ガス)雰囲気とし、プラズマ放電することによりなされる。プラズマエッチングを行うにあたっては、保護テープ10が十分に耐熱性を有するものであれば、保護テープ10はそのままウェーハ1の表面に貼着したままでよいが、十分に耐熱性を有していないものであれば保護テープ10を事前に剥離する。
【0039】
このような凹部11へのエッチング加工により、図2(e)および図7に示すように、ウェーハ1の凹部11の底面11aから貫通電極8Aが突出して裏面側電極部8aが形成される。また、これと同時に、図6(b)に示すように、仕上げ研削後にも裏面に残存していた研削条痕14bに伴う機械的ダメージ層が除去される。機械的ダメージ層は、応力集中を招いて割れや破損を惹起させるが、機械的ダメージ層が除去されたのでそのような不具合は発生しにくくなり、ウェーハ1、あるいは個片化される半導体チップ3は強度が向上したものとなる。なお、金属電極8をウェーハ裏面に突出させるとともに、凹部11の底面11aの研削条痕14bを除去するためのエッチングとしては、上記プラズマエッチングに限られず、一般周知のウェットエッチングでも実施可能である。
【0040】
[5]裏面側再配線層の形成工程
[5−1]裏面側絶縁膜の形成
次に、ウェーハ1の裏面に再配線層を形成する。それにはまず、図2(f)に示すように、凹部11の底面11aに裏面側絶縁膜30を形成する。裏面側絶縁膜30は、上記表面側再配線層20の絶縁膜22と同様の材料および方法によって形成することができる。裏面側絶縁膜30は凹部11の底面11aの、裏面側電極部8aを除く全面を被覆し、かつ、裏面側電極部8aの少なくとも端面が露出する厚さに形成される。したがって裏面側絶縁膜30の厚さは、裏面側電極部8aの高さに応じて5〜10μm程度とされる。
【0041】
[5−2]裏面側再配線層の積層
裏面側絶縁膜30を形成したら、続いてその裏面側絶縁膜30に裏面側再配線層40を形成して積層する。裏面側再配線層40を形成する要領は、表面側再配線層20と同様であって、まず、図2(g)に示すように、選択された裏面側電極部8aどうしを配線41で結線し、次いで、図2(h)に示すように絶縁膜42を形成して配線41と裏面側絶縁膜30を被覆し、配線41と絶縁膜42とからなる裏面側再配線層40を形成する。裏面側再配線層40は、1層、または必要に応じて複数層(図2(h)では2層)が形成される。
【0042】
[6]バンプの形成工程
以上のようにして裏面側再配線層40を形成したら、次に、図2(h)に示すように、裏面側再配線層40の配線41に導通して凹部11の底面11aから突出する複数のバンプ15を設ける。バンプ15は、例えば半田ボールの圧着によって設けられる。
【0043】
[7]半導体チップ
以上で半導体チップ3に個片化される前に行われるウェーハ1への加工は終了し、この後、ウェーハ1は保護テープ10が剥離されてから、ダイシングやレーザ加工等の手段によって分割予定ライン2が切断されて、全ての半導体チップ3が個片化される。ウェーハ1を分割するには、保護テープ10を貼った表面側をチャックテーブル等の保持手段に保持して凹部11が形成されている裏面を露出させ、その裏面側から赤外線顕微鏡などにより分割予定ライン2を認識し、分割予定ライン2に沿って裏面側からダイシングしたりレーザ光を照射して切断する方法が挙げられる。この方法によれば、平坦な表面側を保持手段に保持するので、保持手段に対するウェーハの保持構造を従来通りとすることができ、凹部11が形成された裏面側を吸着させるよりも簡便であるという利点がある。個片化された半導体チップ3は、例えば、インターポーザに積層されたり、あるいは半導体チップ3どうしが積層されたりして、積層型の半導体パッケージに製造される。
【0044】
図8は、ウェーハ1を分割して得られた1つの半導体チップ3が、インターポーザ16上に積層されて樹脂17でモールドされた半導体パッケージの構成例を示している。半導体チップ3は、インターポーザ16に埋設されている貫通電極に対して超音波振動を付与しながらバンプ15を圧着させることにより、電気的結線と同時に積層状態の固着がなされる。インターポーザ16の裏面には、図示せぬ基板への電気的接点としてバンプ18が形成されている。
【0045】
[8]実施形態の作用効果
上記実施形態のウェーハの加工方法によれば、裏面凹部形成工程で、薄化が必要とされるデバイス形成領域4に対応した裏面部分のみを薄化し、その周囲の外周余剰領域5は元の厚さのまま残して環状凸部12を形成している。これによりウェーハ1は、デバイス形成領域4は薄化はされているものの環状凸部12によって剛性が確保されたものとなる。このため、裏面凹部形成工程後の再配線層形成工程へウェーハ1を移送する際のハンドリングや、その再配線層形成工程自体を、安全、かつ容易に行うことができる。その結果、ウェーハの段階で半導体チップ3の裏面に裏面側再配線層40を適確に形成することができるとともに、ウェーハ1が割れることによる歩留まりの低下を防止することができる。
【0046】
また、裏面側再配線層の形成工程以降の、ウェーハ1を分割して各半導体チップ3に個片化するまでの工程間のハンドリングや、それら工程自体も、安全、かつ容易に行うことができ、このため、半導体チップ3の生産性や歩留まりの向上を図ることができる。
【0047】
上記実施形態では、ウェーハ裏面への凹部11の形成は、研削装置60による研削加工とエッチング加工との組み合わせであって、はじめに研削加工でほとんどの深さを形成し、次のエッチング加工によって僅かな厚さを除去して裏面側電極部8aを突出させるというものであった。本発明は、このような研削加工とエッチング加工の組み合わせの他に、研削加工のみ、あるいはエッチング加工のみで、ウェーハ裏面に凹部を形成することを含むものである。
【0048】
研削加工のみで凹部11を形成する場合、被研削面は平坦であるから、貫通電極8Aの下端面を凹部11の底面11aと面一に露出させることはできても、底面11aから突出する裏面側電極部8aを形成することはできない。そこで、研削加工によって貫通電極8Aの下端面が露出したら、その貫通電極8A以外の底面11aに裏面側絶縁膜30を形成し、次いで、この裏面側絶縁膜30で囲まれ底部が貫通電極8Aの露出面となっている孔内に、裏面側電極部となる金属を、CVDまたは蒸着、スパッタ、メッキ等の手段によって埋設し、貫通電極8Aに導通する裏面側電極部8aを形成することができる。
【0049】
また、エッチング加工のみで凹部11を形成する場合には、ウェーハ1の材料と金属電極8の双方をエッチオフし、かつ、ウェーハ1のエッチング速度の方が速いことにより突出する裏面側電極部8aを形成可能なエッチングガスまたはエッチング液を用いる方法がある。また、ウェーハ1の材料と金属電極8のエッチング速度が同じ第1のエッチング材料をはじめに用いて凹部11のほとんどの深さを形成した後、ウェーハ1のみを数μmエッチングする第2エッチング材料に切り替えるといった方法でも、裏面側電極部8aが突出した凹部11を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態の方法で加工されるウェーハの斜視図であり、拡大部分は半導体チップの表面に金属電極が露出している状態を示している。
【図2】一実施形態の方法によって加工されているウェーハを(a)〜(h)の順に示す断面図である。
【図3】保護テープ貼着工程で保護テープが表面に貼着されたウェーハの(a)斜視図、(b)側面図である。
【図4】裏面凹部形成工程で用いる研削装置の斜視図である。
【図5】同研削装置の研削ユニットを示す(a)斜視図、(b)側面図である。
【図6】凹部が形成されたウェーハ裏面の斜視図であって、(a)は仕上げ研削後、(b)はエッチング後を示している。
【図7】凹部がエッチングされたウェーハの裏面側を示す平面図であり、拡大部分は半導体チップの表面に貫通電極(裏面側電極部)が露出している状態を示している。
【図8】半導体チップを積層した半導体パッケージの例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…半導体ウェーハ
3…半導体チップ(デバイス)
4…デバイス形成領域
5…外周余剰領域
8…金属電極
8A…貫通電極
8a…裏面側電極部
11…凹部
11a…凹部の底面
12…環状凸部
20…表面側再配線層
30…裏面側絶縁膜
40…裏面側再配線層
60…研削装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のデバイスが形成された略円形状のデバイス形成領域と、該デバイス形成領域を囲繞する外周余剰領域とを有するウェーハの裏面に、再配線層を形成するウェーハの加工方法であって、
前記デバイス形成領域に、複数の金属電極を、デバイスの表面から少なくともデバイス厚さと同等以上の深さに埋設する電極埋設工程と、
該ウェーハの裏面の、前記デバイス形成領域に対応する領域のみを薄化して該裏面に凹部を形成し、これによって、該凹部の底面から前記金属電極を露出させるとともに、前記外周余剰領域に裏面側に突出する環状凸部を形成する裏面凹部形成工程と、
前記凹部の底面の、露出した前記金属電極を除く部分に絶縁膜を形成するとともに、再配線層を形成する再配線層形成工程と
を備えることを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
前記裏面凹部形成工程で行うウェーハ裏面への凹部形成手段が、研削加工および/またはエッチング加工であることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−21462(P2009−21462A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183935(P2007−183935)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】