説明

ウルトラバリア膜の製造方法

本発明は、基板に積層膜を真空薄膜形成することによってウルトラバリア薄膜システムを製造する方法に関しており、積層膜は、平滑膜と透明セラミック膜からなる交互成膜システムとして形成されているが、少なくとも1つの平滑膜は、スパッタリングにより堆積された2つの透明セラミック膜間に含まれており、平滑膜の析出中、モノマーを真空化された成膜チャンバ内に入れ、該成膜チャンバ内でマグネトロンプラズマを作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空薄膜形成によるウルトラバリア膜の製造方法に関する。
【0002】
各バリア膜は、拡散を抑制するのに使われる。各バリア膜は、薄膜形成された基板による透過を減少させる。所定の物質、例えば、包装された商品としての食料品が、周囲環境の酸素と接触したり、又は、水分が周囲環境と交換したりするのを阻止する必要がある場所で用いられることがよくある。その際、先ず、酸化性の変換、又は、保護すべき物質の損傷が焦点となる。その他、特に、酸化する恐れのある極めて種々の物質が、膜結合体内に統合されている場合に、この、酸化する恐れのある極めて種々の物質を保護することも考慮される。酸化性の変換を遅らせることが、製品の寿命を決める場合には、この物質の保護は、特に重要である。
【0003】
バリア膜は、拡散される種々の物質にとって、部分的に非常に種々異なって障害となる。バリア膜を特徴付けるために、所定の条件下で、バリア膜が設けられた基板を透過する酸素透過度(OTR)及水蒸気透過度(WVTR)が利用されることがよくある。バリア膜は、更に、電気絶縁膜の役割を有することがよくある。バリア膜の重要な利用領域は、ディスプレイの用途である。
【0004】
バリア膜を薄膜形成することによって、薄膜形成された基板による透過度を、所定のファクタ(一桁の範囲内か、又は、もっと多くのオーダーになることもある)だけ低減することができる。ウルトラバリア膜とは、本発明の意味では、WWTR=0.05g/md及びOTR(酸素透過度)=0.2cm/mdの透過値を超過するのがバリア作用によって阻止されるような膜のことである(DIN53122−2−AによるWVTR(水蒸気透過度);DIN53380−3によるOTR(酸素透過度))。
【0005】
設定されたバリア値以外にすることにより、製造されるバリア膜の種々異なった目標パラメータが予期されることがよくある。バリア膜は、不可視であることがよくあるが、可視スペクトル領域内では殆ど完全に透明でなければならない。バリア膜が薄膜システム内で使用される場合、薄膜システムの個別部分を堆積するために、各薄膜形成ステップを組み合わせることができるようにすると有利であることがよくある。
【0006】
薄膜システムの製造時に使われる薄膜形成方法のうちで、カソードスパッタリング方法は重要な位置を占めている。と言うのは、カソードスパッタリング方法によると、高い質の各膜の析出が可能であるからである。従って、薄膜システムの製造時には、スパッタリング方法は、少なくとも別の薄膜形成方法と組み合わせて使用することができるので、所望であることがよくある。
【0007】
各バリア膜の製造のために、所謂PECVD(plasma enhanced chemical vapor deposition:プラズマ化学蒸着)法が使われることがよくある。この方法は、種々異なる基板上で、種々異なる膜材料用に使用される。例えば、13μmPET基板上に、20〜30nm厚のSiO膜及びSi膜を析出することが知られている[A.S.da Silva Sobrinho他、J.Vac.Sci.Technol.A16(6),Nov/Dec 1998,p.3190−3198]。10Paの作業圧では、このようにして、WVTR(水蒸気透過度)=0.3g/md及びOTR(酸素透過度)=0.5cm/mdの透過値に達することができる。
【0008】
PECVD(プラズマ化学蒸着)を用いて、PET基板上に透明バリア膜用のSiOを薄膜形成する際、OTR(酸素透過度)=0.7cm/mdの酸素バリアを形成することができる[R.J.Nelson and H.Chatham,Society of Vacuum Coaters, 34th Annual Technical Conference Proceedings(1991)p.113−117]。この技術の別のソースでも、PET基板上の透明バリア膜に対して、WVTR(水蒸気透過度)=0.3g/md及びOTR(酸素透過度)=0.5cm/mdの大きさの透過値に基づくものである[M.Izu,B.Dotter,S.R.Ovshinsky,Society of Vacuum Coaters, 36th Annual Technical Conference Proceedings(1993)p.333−340]。
【0009】
公知のPECVD(プラズマ化学蒸着)法の欠点は、特に、比較的小さなバリア作用しか達成できない点にある。従って、特に、ディスプレイ用途の製品では不利である。別の欠点は、この方法の実施に必要な高い作業圧にある。そのような薄膜形成ステップが、真空装置での複合的な生産過程に統合される場合、場合によっては、圧力減結合の手段に高いコストが必要となる。殊に、スパッタリングプロセスとの組合せは、この理由からたいてい不経済的である。
【0010】
バリア膜をスパッタリングによって堆積することが知られている。スパッタリングされた各個別膜は、PECVD(プラズマ化学蒸着)膜よりも良好なバリア特性を示す。PET上にスパッタリングされたAINOの場合、透過度として、例えば、WVTR(水蒸気透過度)=0.2g/md及びOTR(酸素透過度)=1cm/mdが得られる[Thin Solid Films388(2001)78−86]。それ以外にも、透明バリア膜の製造用の反応性スパッタリングにより使われる、多数の別の材料が知られている。そのようにして製造された各膜は、しかし、ディスプレイ用途では、同様に小さなバリア作用しか有していない。そのような各膜の別の欠点は、その僅かな機械的耐荷重性にある。後続プロセス又は利用中の、技術的に不可避な応力によって生じる損傷によって、たいてい、バリア作用が明らかに劣化する。従って、スパッタリングされた各個別膜をバリア用途に用いることができないことが多々ある。
【0011】
各個別膜を各バリア膜として蒸着することが知られている。このDVD方法によって、同様に、種々異なる基板上に種々の材料を直接又は反応により析出することができる。バリア用途では、例えば、AlのPET基板の反応性蒸着が知られている[Surface and Coatings technology 125(2000)354−360]。
【0012】
この際、WVTR(水蒸気透過度)=1g/md及びOTR(酸素透過度)=5cm/mdの透過値が達成される。この値は、同様に、そのように薄膜形成された材料を、ディスプレイでバリア膜として使うのには高すぎる。この材料は、スパッタリングされた各個別膜の機械的負荷よりも更に小さいことがよくある。更に、直接蒸着する場合、たいてい、高い蒸着速度又はレートとなる。それにより、基板の過度に強い衝撃を回避するために、バリア用途で通常用いられる薄膜膜を製造する際に、相応して高い基板速度となる。従って、著しく小さな作動装置(Durchlaufanlage)を必要とするプロセスステップと組み合わせるのは、作動装置では殆ど不可能である。このことは、特に、スパッタリングプロセスと組み合わせるのに該当する。
【0013】
蒸着中、有機的に変化される場合、無機的な蒸着膜の機械的な耐久度を改善することができることが知られている。その際、膜成長中形成される無機基質中に有機成分が組み込まれる。このような別の成分を、無機基質中に組み込むことによって、膜全体の弾性が高められ、それにより、膜内に損傷が生じる危険性を著しく低減することができる。その代わりに、少なくとも、バリア用途に適したものとして、この関連で、SiOの電子ビーム蒸着を、HMDSO(有機金属化合物)の導入と組み合わせた(DE19548160C1)組合せプロセスが挙げられるかもしれない。ディスプレイ用途に必要な低い透過速度は、そのように製造された各膜を用いては、何れにせよ達成できない。更に、既述の電子ビーム蒸着は、高い成膜速度を前提としており、それにより、他の多数の各プロセスステップとの組合せが明らかに困難となるという欠点がある。
【0014】
バリア膜を複数の薄膜形成ステップで堆積することが知られている。ひとつの方法は、所謂PML(Polimer multilayer:ポリマーマルチレイヤー)プロセス(1999 Materials Research Society, p.247−254);[J.D.Affinito,M.E.Gross,C.A.Coronasdo,G.L.Graff,E.N.Greenwell and P.M.Martin,Society of Vacuum Coaters,39th Annual Technical Conference Proceedings(1996)p.392−397]。PML(ポリマーマルチレイヤー)プロセスでは、蒸着装置を用いて、流体のアクリルフィルムが基板上に堆積され、このアクリルフィルムは、電子ビーム技術又はUV(紫外線)照射を用いて硬化される。これは、それ自体特に高いバリア作用を有していない。続いて、硬化したアクリルフィルムに酸化物含有の中間膜が薄膜形成され、この中間膜の上に更にアクリルフィルムが堆積される。このやり方は、必要に応じて複数回繰り返される。そのようにして形成された積層膜、つまり、個別アクリル膜と酸化物含有の中間膜との組合せの透過値は、通常の透過測定装置の測定限界の下側である。特に、コスト高な装置技術をどうしても使う場合に、欠点がある。真空装置は、どうしても、価格が高いマルチチェンバ(多槽)方式で作動する必要がある。更に、先ず、流体のフィルムが、硬化される必要がある基板上に形成される。こうすることによって、装置一膜強く汚れるようになり、従って、メンテナンスサイクルが短縮される。プロセスは、同様に高いベルト速度用に最適化され、従って、一膜遅速な薄膜形成プロセス、殊に、スパッタリングプロセスと組み合わせられているとインラインで不都合である。
【0015】
更に、拡散遮断膜、つまり、バリア膜の析出時に、マグネトロンプラズマをプラズマ重合用に使用することが知られている(EP0815283B1);[S.Fujimaki,H.Kashiwase,Y.Kokaku, Vacuum 59(2000)p.657−664]。この際、マグネトロン放電のプラズマによって直接維持されるPECVD(プラズマ化学蒸着)プロセスが用いられる。例えば、このために、炭素構造を持った各膜を析出するために、PECVD(プラズマ化学蒸着)薄膜形成用にマグネトロンプラズマが用いられ、その際、先駆物質としてCHが使われる。しかし、そのような膜は、ディスプレイ用途用には不十分なバリア作用しか有していない。
【0016】
本発明の課題は、膜をディスプレイ膜用途に使用するのに、バリア作用が十分に高い透明バリア薄膜システムを製造する方法を提供することにあり、その際、この方法は、薄膜形成速度の点でも真空の要求の点でも、マグネトロンスパッタリングとコンパチブル、つまり、装置技術上簡単に組み合わせ可能である。
【0017】
本発明によると、この課題は、請求項1記載の方法により達成される。
【0018】
方法の別の有利な実施例は、請求項1〜27に記載されている。
【0019】
本発明は、セラミックバリア膜の特性を利用する。これは、広幅の厚み領域に亘って、バリア作用の膜厚依存性を示す。実験によると、同じ全厚の場合、肉厚の個別膜は、ほぼバリアニュートラルな別の中間膜によって相互に分離されている複数の肉薄の部分膜よりも明らかに小さなバリア作用を示すことが時にはあることが分かっている。その逆の場合には、そのようなことは観測されなかった。比較的肉薄の個別膜が肉厚の個別膜よりも小さなバリア作用を示すが、肉薄の膜は、機械的な応動時に、肉厚の膜よりも、ずっと強い応動乃至変形時に初めて、そのバリア作用を失うことが、更に確認された。
【0020】
セラミック膜のバリア作用は、基板上の膜又は隣接する各膜の損傷密度及び付着度によって決められる。複数の薄いセラミック膜を有する積層膜によって部分的に生じるバリア作用は、明らかに、個別膜内の損傷が相互にずれを生じることに基づく。ずれを生じない場所では、セラミック薄膜形成の同じ全厚みの場合に、積層膜のバリア作用は、セラミック個別膜のバリア作用に比べてほんの僅かしか上昇しない。
【0021】
本発明の方法は、マグネトロンスパッタリングと、有機金属の前駆物質を用いて析出されるような各膜が交互に析出されることに基づく。
【0022】
有機金属の前駆物質を用いた膜析出用の方法は、蒸気状の有機金属化合物が、有機的に変化した金属化合物の析出と結びついたマグネトロンプラズマに分解することに基づく。その際、金属の起源は、有機金属化合物にあり、別の膜成分は、有機金属化合物に起因するものであり、付加的にガスの形状で入れることもできる。
【0023】
純粋セラミック膜は、マグネトロンスパッタリングによって堆積される。これは、反応性プロセス又は非反応性プロセスで行うことができる。
【0024】
有機金属の前駆物質を用いた膜析出によって、セラミック膜のバリア作用が特に有効に上昇された中間膜が形成されることが分かった。この中間膜は、セラミック膜内の損傷の成長が、複数の膜に亘ってずっと持続するのを阻止する構造を有していることが明らかである。そうすることによって、各個別セラミック膜内に、多くの場合、個別膜の全厚みに達することがある新たな損傷が形成されることがある。しかし、損傷の増加は、中間膜で終わる。PECVD(プラズマ化学蒸着)法を示す中間膜の析出のやり方によって、中間膜内に、背景の構造にほぼ依存しない構造が形成されることが明らかである。中間膜に迄達する、セラミック膜の損傷により、中間膜の厚み全体に持続する構造の変化が、中間膜内に生じることはない。従って、積層膜内にあるセラミック膜の損傷が、他のセラミック膜内に損傷の増加を開始することはありえない。各中間膜により、損傷のある表面が平滑され、そのために、この中間膜を、以下、本発明の意味で、平滑膜(smooth layers)とも呼ぶ。各個別膜内の損傷を統計的な条件でずらすことによって、2つのセラミック膜の各損傷間の透過経路が延長される。
【0025】
本発明の方法の別の利点は、セラミック膜をスパッタリングによって堆積することによって、相応の積層膜の各個別膜間の卓抜な付着を達成することができる。こうすることによって、バリア作用を更に改善することができる。2つの透明セラミック膜と平滑膜から形成された薄膜システムによって既に、WVTR(水蒸気透過度)=0.05g/md及びOTR(酸素透過度)=0.2cm/mdの透過値を達成することができる。バリア作用は、各個別膜の個数を変えることによって簡単に所定の、最小限の要求に適合させることができる。通常の透過測定装置の測定限界値より下に位置している透過速度を達成することができる。
【0026】
本発明は、基板に、交互成膜システムとして、平滑膜と透明セラミック膜とから形成されているが、2つの透明セラミック膜間に、スパッタリングによって体積された1つの平滑膜を有する積層膜を真空薄膜形成することによって、ウルトラバリア薄膜システムを製造する方法であり、その際、平滑膜の析出の間、モノマーが真空化された薄膜形成チャンバ内に入れられ、その中で、マグネトロンプラズマが駆動されている。交互成膜システムの両膜タイプは、ほぼ、夫々マグネトロンプラズマの作用下で析出される。そうすることによって、両薄膜形成ステップを簡単に真空装置内で組み合わせることができる。と言うのは、真空での要求により、コスト高な圧力減結合をしないで済むようにすることができるからである。セラミック膜の析出用にも、平滑膜の析出用にも、パルス状のエネルギ供給装置(1kHz〜300kHz)を有する1つ又は複数のマグネトロンから構成されたマグネトロン装置を使うと、特に安定して方法を作動することができる。こうすることによって、一方では、アーク放電が強く形成されるのが阻止され、他方では、2つ又は複数のターゲット及びバイポーラのエネルギ供給装置を用いて、薄膜形成プロセスで形成された反応生成物でターゲットが均一に被覆されるのが阻止される。このようにして、夫々一方がカソードとして働き、他方がアノードとして働き、それらの極性が切り換えられる2重マグネトロンが特に有効に作動する。
【0027】
特に有利には、マグネトロンプラズマを維持するために、平滑膜の析出の間、窒素又は酸素と反応して変換することができる材料製のターゲットを備えたマグネトロンが用いられる。そうすることによって、そのようなマグネトロンを、入れられるガスを交換することによって、一方では、反応性ガスを入れることによって、透明セラミック膜の析出のために用いられ、他方では、モノマーを入れることによって、プラズマ重合を支援するために用いられる。方法の有利な実施例では、HMDSO(有機金属化合物)と酸素とを交互に入れることによって、交互成膜システムを析出することができる。
【0028】
特に有利には、マグネトロンプラズマを、変換ガスを入れるのとは無関係に維持するとよい。これは、付記的に作業ガス、有利には、希ガスを入れることによって達成される。特に有利には、このためにアルゴンが使われる。入れられるモノマーとして、本発明によると、炭水化物、シラン、Si有機化合物(オルガニカ:Organika)、又は、有機金属化合物(メタルオルガニカ:Metallorganika)が適切であると分かった。特に有利には、特に、透明セラミック膜としてオキシドが析出される場合、HMDSO(有機金属化合物)を用いるとよい。
【0029】
特に良好な結果が得られるのは、平滑膜の析出中、モノマーを入れるのに対して付加的に、酸素、窒素及び/又は水素を反応性ガスとして入れる場合である。平滑膜の析出中、有利には、0.1Pa〜10Paのプロセス圧が調整され、それにより、この薄膜形成ステップは、問題なくスパッタリングプロセスと組み合わせることができる。そのために、特に有利には、透明セラミック膜の析出を、マグネトロンスパッタリングによって、有利には、反応性マグネトロンスパッタリングによって行ない、その際、反応性ガスとして、窒素、酸素及び/又は水素が入れられる。
【0030】
特に有利には、透明セラミック膜として、SiO,Al又はSiNが析出される。
【0031】
薄膜形成は、固定又は可動のベルト状の基板上で行うことができ、それにより、方法を多方面に使用することができるようになる。プラスチック基板のために特に適しているのは、殊に、基板温度が200℃よりも低く保持されている場合であり、これは、例えば、相応のプラズマ出力の調整を介して問題なく可能である。本発明の方法では、基板温度を更に一膜低く調整する際に、外部の温度感応基板も損傷なく薄膜形成することができる。
【0032】
薄膜形成速度及び/又は基板速度を、プラズマポリマー膜が平滑膜として50nm〜5μmの膜厚で析出され、透明セラミック膜が5nm〜500nmの膜厚で析出されるように調整されるようにすると、特に有効なバリアシステムを達成することができる。
【0033】
個別薄膜形成ステップを良好に組み合わせることができることにより、全ての個別膜を唯1つのマグネトロン装置のプラズマの作用下で析出することができる。そうすることにより、非常に小型の装置を使うことができる。この際、有利には、交互成膜システムの析出中、モノマー及び反応性ガス及び/又は作業ガスの流入流量を徐々に変え、少なくとも一時的に同時に行い、その結果、交互成膜システムの個別膜がグラジエント状に相互に移行する。特に簡単な実施例では、反応性ガス及びモノマーを共通のガス入口を介して入れることができる。
【0034】
本発明の方法では、有利にも、交互成膜システムを、少なくとも1つのマグネトロン装置を用いて析出され、モノマー及び反応性ガス及び/又は作業ガスを種々異なる個所から入れることができ、その結果、可動基板上で薄膜形成領域を順次移動する際、交互成膜システムの各膜を析出することができる。特に有利には、その際、交互成膜システムを、少なくとも1つのマグネトロン装置を用いて析出し、モノマー及び反応性ガス及び/又は作業ガスを種々異なる個所から入れることができ、その結果、マグネトロンプラズマの領域内で、入れられる各ガス間に明瞭な分圧グラジエントを形成して、可動基板上を薄膜形成領域が移動する際に順次、グラジエント状に相互に移行する各膜が析出されるようにされる。その際、薄膜形成領域は、複数回移動されて、各個別膜の個数を高めることができる。モノマーと反応性ガスが同時に入れられる、本発明の方法の実施例でも、HMDSO(有機金属化合物)と酸素とを組み合わせると有利である。その際、反応性ガスと作業ガスとを、共通のガス入口を介して入れるようにすると目的に適っている。
【0035】
以下、本発明の方法について、詳細に説明する。
【0036】
第1の実施例では、薄膜形成ステーション内の真空薄膜形成装置内で、固定して設けられたプラスチック基板が薄膜形成される。そのために、有機金属化合物(HMDSO)が流体の形状で貯蔵容器内に収容され、フローコントローラを介して蒸発装置に供給され、この蒸発装置で、流体が蒸発される。加熱された供給管及び同様に加熱された別のフローコントローラを介して、蒸気が、予め真空にされていて、0.1Pa〜10Paの所定圧力でArが充填されたプロセスチャンバ内に入れられる。付加的に、別の反応性ガス、例えば、酸素又は窒素を入れることができる。全てのガスは、有利には、プロセスチャンバ内で点火されるマグネトロンプラズマの直ぐ近くに入れられる。プラズマは、2重マグネトロン装置によって形成され、この2重マグネトロン装置は、バイポーラでパルス化されて作動され、その際、パルス周波数は、1kHz〜100kHzである。
【0037】
マグネトロンのターゲットは、アルミニウム製である。
【0038】
酸素を入れることから開始される。従って、アルミニウムターゲットは、アルゴンと酸素の混合気内でスパッタリングされ、それにより、透明セラミック膜(Al)が反応性スパッタリングプロセス中堆積される。目標膜厚に達すると、スパッタリング速度が低減され、酸素の導入が終了される。続いて、HMDSO(有機金属化合物)が入れられ、それにより、マグネトロンプラズマの作用下で、平滑膜が析出される。目標膜厚に達すると、HMDSO(有機金属化合物)の導入が終了され、酸化アルミニウム膜の反応性のスパッタリングが続けられる。このサイクルは、必要に応じて、所望のバリア作用が予期できるようになる迄、複数回実行される。これは、続いて行われる測定によってチェックすることができる。
【0039】
そのような定常的な薄膜形成では、適切なターゲット材料、例えば、S,T又はAlを選択することによって、交互成膜システムの堆積を、アナログにより、有機金属の蒸気とO又はNとの間で、入れられるガスを単に切り換えることによって行うことができる。
【0040】
この変形実施例の利点は、マグネトロンプラズマは、セラミック膜の膜析出のために一回しか使用されず、有機金属の前駆物質の変換のために一回しか使用されないから、唯一の薄膜形成ステーションしか必要でないという点にある。
【0041】
第2の実施例では、少なくとも1つの薄膜形成ステーション内の、ベルト状の基板を繰り出し及び巻き取る装置が装着された真空薄膜形成装置内で、連続的に可動のプラスチック基板が薄膜形成される。そのために、有機金属化合物(HMDSO)が、流体の形式で、貯蔵容器内に収容され、フローコントローラを介して蒸発器内に供給され、この蒸発器内で流体が蒸発される。加熱された供給管及び同様に加熱された別のフローコントローラを介して、蒸気が、予め真空にされていて、0.1Pa〜10Paの圧力でArが充填されたプロセスチャンバ内に入れられる。全てのガスは、有利には、プロセスチャンバ内で点火されるマグネトロンプラズマの直ぐ近くに入れられる。プラズマは、バイポーラでパルス化されて作動される2重マグネトロン装置によって形成され、その際、パルス周波数は、1kHz〜100kHzである。マグネトロンのターゲットは、アルミニウム製である。
【0042】
真空薄膜形成装置は、単に1つの薄膜形成ステーションで作動される。先ず、酸素を入れることから開始される。アルミニウムのターゲットが、アルゴンと酸素の混合気内でスパッタリングされ、それにより、透明セラミック膜(Al)が、反応性のスパッタリングプロセスで堆積される。透明セラミック膜の膜厚は、ベルト状基板の送り速度、及び、スパッタリングプロセス部に給電される電力を介して調整される。ベルト状の基板の所望の長さが薄膜形成された場合、薄膜形成プロセスが遮断され、ベルトの送り方向が反転される。その後、HMDSO(有機金属化合物)が入れられ、それにより、マグネトロンプラズマの作用下で平滑膜が、反転されたベルトの送り方向で析出される。このサイクルは、必要に応じて、所望のバリア作用が予期できる迄、複数回ベルトの送り方向を切り換えて実行される。このことは、続いて行われる測定によってチェックすることができる。このようにして、唯一の薄膜形成ステーション内で、任意の多数の個別膜からなる積膜を、長く延びた基板上に形成することができる。
【0043】
第3の実施例では、複数の薄膜形成ステーション内の、ベルト状の基板を繰り出し及び巻き取る装置が装着された真空薄膜形成装置内で、連続的に可動のプラスチック基板が薄膜形成される。その際、基板は、順次、隣り合った薄膜形成ステーションのそばを通って案内され、薄膜形成ステーションは、前述の実施例に相応して、Alの析出のために反応性スパッタリングプロセス用に装置構成されているか、又は、HMDSO(有機金属化合物)の導入下で、本発明の平滑膜を、プラズマを用いて析出するために装置構成されている。薄膜形成ステーションが、製造すべきバリア薄膜システム内の所望の個別膜の個数に相応する場合、この個別膜は、唯一回の作動で、薄膜形成装置によって堆積される。その結果、そのような装置の特に高い効率が達成できる。
【0044】
3つの実施例全てで、パルス化されたエネルギ供給でマグネトロンを作動することによって、一方では、アーク放電が強く形成されるのが阻止され、他方では、2つのターゲットとバイポーラのエネルギ供給部を用いることによって、ターゲットが、薄膜形成プロセスから生じる反応生成物で過度に被覆されるのが低減され、それにより、安定してプロセスを実行することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に積層膜を真空薄膜形成することによってウルトラバリア膜(ultra barrier layer)システムを製造する方法であって、
前記積層膜は、平滑膜(smooth layers)と透明セラミック膜からなる交互成膜(alternating layer)システムとして形成されているが、少なくとも1つの前記平滑膜は、スパッタリングにより堆積された2つの透明セラミック膜間に含まれている製造方法において、
平滑膜の析出中、モノマーを真空化された成膜チャンバ内に入れ、該成膜チャンバ内でマグネトロンプラズマを作動することを特徴とする方法。
【請求項2】
平滑膜の析出中、1kHz〜300kHzのパルス周波数でパルス状にマグネトロンプラズマを作動する請求項1記載の方法。
【請求項3】
平滑膜の析出中、マグネトロンプラズマを維持するために、窒素又は酸素と反応して変換される物質からなるターゲットが装着されているマグネトロンを用いる請求項1記載の方法。
【請求項4】
平滑膜の析出中、プラズマを維持するために、2重マグネトロンを使う請求項1〜3迄の何れか1記載の方法。
【請求項5】
作業ガスとして希ガスを用いる請求項1〜4迄の何れか1記載の方法。
【請求項6】
モノマーとして、炭水化物、シラン、Si有機化合物(オルガニカ:Organika)、又は、有機金属化合物(メタルオルガニカ:Metallorganika)を入れる請求項1〜5迄の何れか1記載の方法。
【請求項7】
平滑膜の析出中、モノマーを入れるのに対して付加的に、酸素、窒素及び/又は水素を反応性ガスとして入れる請求項1〜6迄の何れか1記載の方法。
【請求項8】
平滑膜の析出中、0.1Pa〜10Paのプロセス圧力を調整する請求項1〜7迄の何れか1記載の方法。
【請求項9】
マグネトロンスパッタリングによって透明セラミック膜を析出する請求項1〜8迄の何れか1記載の方法。
【請求項10】
反応性マグネトロンスパッタリングによって透明セラミック膜を析出し、該析出時に、反応性ガスとして、窒素、酸素及び/又は水素を入れる請求項9記載の方法。
【請求項11】
透明セラミック膜として、Alを析出する請求項1〜10迄の何れか1記載の方法。
【請求項12】
透明セラミック膜として、SiOを析出する請求項1〜10迄の何れか1記載の方法。
【請求項13】
透明セラミック膜として、SiNを析出する請求項1〜10迄の何れか1記載の方法。
【請求項14】
固定基板上で薄膜形成を行う請求項1〜13迄の何れか1記載の方法。
【請求項15】
ベルト状の可動基板上で薄膜形成を行う請求項1〜13迄の何れか1記載の方法。
【請求項16】
薄膜形成中、基板温度を200℃以下に保持する請求項1〜15迄の何れか1記載の方法。
【請求項17】
プラスチック基板上で薄膜形成を行う請求項1〜16迄の何れか1記載の方法。
【請求項18】
膜厚50nm〜500μmの膜厚の平滑膜としてプラズマポリマー膜が析出し、5nm〜500nmの膜厚の透明セラミック膜が析出する請求項1〜17迄の何れか1記載の方法。
【請求項19】
交互成膜システムを、マグネトロン装置を用いて析出し、該マグネトロン装置のプラズマ内に交互にモノマーと反応性ガスを入れる請求項1〜18迄の何れか1記載の方法。
【請求項20】
交互成膜システムの析出を、HMDSO(有機金属化合物)と酸素を交互に入れることによって行う請求項19記載の方法。
【請求項21】
交互成膜システムの析出中、モノマー及び反応性ガス及び/又は作業ガスの流入量を徐々に変え、少なくとも部分的に同時に行い、その結果、交互成膜システムの各個別膜をグラジエント状に相互に移行する請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
反応性ガス及びモノマーを、共通のガス入口を介して入れる請求項19〜21迄の何れか1記載の方法。
【請求項23】
交互成膜システムを、少なくとも1つのマグネトロン装置を用いて析出し、モノマー及び反応性ガス及び/又は作業ガスを種々異なる個所で入れて、薄膜形成領域の通過時に、可動の基板上に、順次連続して交互成膜システムの各膜が析出されるようにする請求項1〜18迄の何れか1記載の方法。
【請求項24】
交互成膜システムを、少なくとも1つのマグネトロン装置を用いて析出し、モノマー及び反応性ガス及び/又は作業ガスを種々異なる個所で入れ、マグネトロンプラズマの領域内で、入れられた各ガス間の明らかな分圧グラジエントを形成して、薄膜形成領域の通過時に、可動の基板上に順次連続して、グラジエント状に相互に移行する各膜を析出する請求項1〜18迄の何れか1記載の方法。
【請求項25】
可動の基板を、複数回、薄膜形成領域を通って案内する請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
HMDSO(有機金属化合物)と酸素を同時に入れることによって、交互成膜システムを析出する請求項23〜25迄の何れか1記載の方法。
【請求項27】
反応性ガスと作業ガスを、共通のガス入口を介して入れる請求項23〜26迄の何れか1記載の方法。

【公表番号】特表2007−522343(P2007−522343A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551734(P2006−551734)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013258
【国際公開番号】WO2005/073427
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】