説明

エアバッグシュータの製造方法

【課題】基材表面の見栄えの悪化及びヒンジの剛性低下、破損等を防止する。
【解決手段】固定型39には、受け部21に対応するように段差部39aが形成され、第2可動型43は、段差部39aに対応するようにフラップ29の先端縁裏面を成形する突起43aを有する。エアバッグシュータ15の成形後、第1可動型41を型開き方向に移動させてエアバッグシュータ15のフラップ29及び反ヒンジ31側を除くフランジ35の表面から離間させる。その後、第2可動型43を型開き方向に移動させてエアバッグシュータ15の反ヒンジ31側のフランジ35の表面及び反ヒンジ31側の枠体17のシューティング口27側端面から離間させるとともに、フラップ29の先端裏面を第2可動型43の突起43aで型開き方向に押すことによりフラップ29先端側部分を撓ませながら固定型39から離間させてフラップ29の先端縁を突起43aから離脱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時にエアバッグ装置の作動で開くエアバッグドア部を有する基材裏面に上記エアバッグドア部に対応するように配設されるエアバッグシュータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材にエアバッグドア部が破断予定部により区画形成されたインストルメントパネルにおいて、上記基材裏面に上記エアバッグドア部に対応するように溶着されるエアバッグシュータの製造方法が開示されている。このエアバッグシュータは、シューティング口を有する筒状の枠体と、該枠体に上記シューティング口を覆うように基端縁がヒンジを介して一体に形成されたフラップと、上記枠体のシューティング口側端部で外側方に張り出すフランジとを備え、上記枠体のシューティング口側端面に、上記フラップの反ヒンジ側先端を支持する段状の受け部が形成されている。上記製造方法は、上記枠体、上記フラップの裏面側、及びフランジの裏面側を成形する固定型と、上記フラップ及びフランジの表面側を成形する可動型とを備えた成形型を用意し、上記成形型を型閉じして上記固定型と可動型との間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を充填してエアバッグシュータを成形するようにしている。また、上記成形型は、上記フラップの先端縁を上記受け部から離間させた状態でエアバッグシュータを成形する構造になっている。この場合、上記成形型は、複雑な型構造を採ることなく成形後にエアバッグシュータを容易に脱型できるようにするために、つまりフラップの先端縁と上記反ヒンジ側の枠体とが反ヒンジ側で重ならないようにするために、フラップの先端縁をヒンジを支点に傾斜させて上記反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面から大きく離間させている。
【0003】
上記製造方法によって製造されたエアバッグシュータでは、上記フラップの反ヒンジ側先端が段状の受け部によって支持されるので、インストルメントパネルの表面側から荷重がかかった際、基材の破断予定部が破断されるのを防止することができる。
【特許文献1】特開2004−106823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のものは、インストルメントパネルのエアバッグドア部表面側からの荷重に対する耐荷強度を高めることができるものの、上記の如く、フラップの先端縁を上記反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面から大きく離間させて成形したエアバッグシュータをインストルメントパネルの基材裏面に溶着すると、フラップがシューティング口を閉じる方向に押圧されているため、フラップにより基材裏面に曲げ反力が作用し、基材表面が浮き上がって見栄えが悪化するおそれがある。また、曲げ力によってヒンジの剛性が低下したり破損したりして、エアバッグ装置の作動時にフラップ(エアバッグドア部)が良好に開かなくなるおそれもある。このような傾向は、エアバッグシュータの成形時におけるフラップの先端縁と反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面との離間距離すなわち、フラップのヒンジを回動支点とする傾斜角が大きくなるほど顕著となる。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材のエアバッグドア部表面側に荷重がかかった際のエアバッグドア部の撓みや破断予定部の破断を防止しつつ、基材表面の見栄えの悪化及びヒンジの剛性低下、破損等を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、可動型における反ヒンジ側のフランジの表面に対応する型構造を工夫したことを特徴とする。
【0007】
具体的には、本発明は、基材に略矩形状のエアバッグドア部が破断予定部により区画形成された車両用内装品において、上記基材裏面に上記エアバッグドア部に対応するように配設され、略矩形状のシューティング口を有し内部にエアバッグ装置が収納された筒状の枠体と、該枠体に上記シューティング口を覆うように基端縁がヒンジを介して一体に形成されているとともに、該基端縁両端から先端縁まで延びる両側縁と上記シューティング口の開口縁部との間に隙間が形成され、上記エアバッグドア部裏面に溶着されるフラップと、上記枠体のシューティング口側端部に外側方に張り出すように形成され、上記エアバッグドア部外周りの基材裏面に溶着されるフランジとを備え、上記フラップの反ヒンジ側における枠体のシューティング口側端面には、上記フラップがシューティング口を閉じた状態で上記フラップの先端縁を支持する段状の受け部が形成されたエアバッグシュータの製造方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記枠体、フラップの裏面側及びフランジの裏面側を成形し、上記受け部に対応するように段差部が形成された固定型と、反ヒンジ側を除くフランジ及び上記フラップの表面側を成形する第1可動型と、上記反ヒンジ側のフランジの表面側及び上記反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面を成形し、上記段差部に対応するように上記フラップの先端縁裏面を成形する突起を有する第2可動型とを備えた成形型を用意し、上記第2可動型の突起が上記固定型の段差部に当接するように成形型を型閉じして、上記固定型と第1可動型及び第2可動型との間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を充填してエアバッグシュータを成形し、次いで、上記第1可動型を型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータのフラップ及び反ヒンジ側を除くフランジの表面から離間させ、その後、上記第2可動型を型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータの反ヒンジ側のフランジの表面及び反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面から離間させるとともに、上記フラップの先端裏面を上記第2可動型の突起で型開き方向に押すことによりフラップ先端側部分を撓ませながら上記固定型から離間させて上記フラップの先端縁を上記突起から離脱させ、しかる後、上記エアバッグシュータを上記固定型から脱型することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記枠体、フラップの裏面側及びフランジの裏面側を成形する成形面を有し、該成形面から突出可能に突き出しピンが設けられているとともに、上記受け部に対応するように段差部が形成された固定型と、反ヒンジ側を除くフランジ及び上記フラップの表面側を成形する第1可動型と、上記反ヒンジ側のフランジの表面側及び上記反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面を成形し、上記段差部に対応するように上記フラップの先端縁裏面を成形する突起を有する第2可動型とを備えた成形型を用意し、上記第2可動型の突起が上記固定型の段差部に当接するように、かつ上記突き出しピンをその先端が成形面とほぼ同一面となるように後退させた状態で成形型を型閉じして、上記固定型と第1可動型及び第2可動型との間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を充填してエアバッグシュータを成形し、次いで、上記第1可動型を型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータのフラップ及び反ヒンジ側を除くフランジの表面から離間させた後、上記突き出しピンを固定型の成形面から突出させるとともに、上記第2可動型を型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータを突き出しピンで突き出してフラップ、フランジ及びヒンジを上記固定型の成形面から離脱させ、その後、上記第2可動型を型開き方向にさらに移動させて上記エアバッグシュータの反ヒンジ側のフランジの表面及び反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面から離間させるとともに、上記フラップの先端裏面を上記第2可動型の突起で型開き方向に押すことによりフラップ先端側部分を撓ませて上記フラップの先端縁を上記突起から離脱させ、しかる後、上記エアバッグシュータを上記固定型から脱型することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、フラップの先端裏面を上記第2可動型の突起で型開き方向に押すことにより、フラップの先端側部分を撓ませながらフラップの先端縁を上記突起から離脱させるので、フラップの先端縁が枠体のシューティング口側端面と重なって(ラップして)いても脱型可能である。したがって、フラップの先端縁と上記反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面との離間距離の短いエアバッグシュータを成形することができる。このようなエアバッグシュータでは、フラップを押さえ込んで基材裏面に溶着しても、フラップによる基材裏面に作用する曲げ反力が小さいので、基材表面が浮き上がって見栄えが悪化することが防止される。また、ヒンジに作用する曲げ力も小さくなるので、ヒンジの剛性低下や破損等も防止される。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、フラップ、フランジ及びヒンジを突き出しピンによって固定型の成形面から離脱させた後に、フラップの先端裏面が上記第2可動型の突起で型開き方向に押されることにより、エアバッグシュータ全体が反第2可動型側に片寄る。したがって、エアバッグシュータが反第2可動型側に片寄った分、フラップの先端側部分と第2可動型の突起との重なり(ラップ)が小さくなり、突き出しピンを用いない場合に比べ、フラップの先端縁が上記突起から離脱する際のフラップ先端側部分の撓み量が小さくなり、フラップ先端側部分の撓みによる変形が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1は、車両用内装品としてのインストルメントパネル1の助手席前方部分を示す。図2は、図1のA−A線における断面図である。このインストルメントパネル1は、樹脂製基材3と、この基材3の表面側に一体に被覆された樹脂製表皮5とから2層構造に構成されている。
【0014】
上記基材3裏面には、対向する二辺が車幅方向に延びるとともに、他の対向する二辺が車体前後方向に平行に延びて平面視略矩形状をなすV字形状の溝部7が形成され、この溝部7に対応する基材3部分が薄肉に形成されて平面視略矩形状の破断予定部9が形成されている。そして、この破断予定部9により、車両衝突時に後述するエアバッグ装置11の作動で上記破断予定部9を破断して開く略矩形状のエアバッグドア部13が区画形成されている。
【0015】
上記エアバッグドア部13及び該エアバッグドア部13外周りの基材3裏面には、樹脂製エアバッグシュータ15が振動溶着されている。このエアバッグシュータ15は、略矩形筒状の枠体17を備え、枠体17上端である開口端内側には、エアバッグ膨出用の略矩形状のシューティング口27が形成されている。上記枠体17は、車幅方向に延びる前側壁17aと、該前側壁17aの後側に対向配置されて車幅方向に延びる後側壁17bと、これら前側壁17a及び後側壁17bの左縁同士及び右縁同士を連結するように車体前後方向に延びる左右両側壁(図2に右側壁17cを示す)とからなる。上記前側壁17a及び後側壁17bには掛止孔19が貫通形成され、後側壁17bのシューティング口27側端面の内側には、段状の受け部21が形成されている。また、枠体17内部には、エアバッグ装置11が収納されている。このエアバッグ装置11は、エアバッグとインフレータ(図示省略)とを収納するエアバッグケース23を備えている。このエアバッグケース23は、インパネレインフォースメント(図示せず)にブラケット(図示せず)を介して連結支持されている。このエアバッグケース23にはフック25が固定されて、該フック25は上記掛止孔19に挿入されている。エアバッグ装置11の作動時には上記フック25が掛止孔19周縁に引っ掛かり、枠体17が飛び出さないようになっている。
【0016】
上記枠体17のシューティング口27は、補強用の樹脂製フラップ29によって覆われている(閉じられている)。このフラップ29の基端縁は、上記前側壁17aの上端縁(シューティング口27の開口縁部)に略U字状に湾曲するヒンジ31を介して一体に連結されている。上記フラップ29の表面には、振動溶着用の突起33が縦横に一体に突設され、これら突起33を介してフラップ29が基材3裏面に振動溶着されている。また、上記フラップ29の先端縁は上記受け部21によって下方から支持され、フラップ29の基端縁両端から先端縁まで延びる両側縁29a,29aと上記シューティング口27の開口縁部との間には隙間S1が形成されている(図1参照)。
【0017】
上記枠体17上端(シューティング口27側端部)には、外側方に張り出すようにフランジ35が全周に亘って一体に形成されている。該フランジ35の表面にも、振動溶着用の突起37が縦横に一体に突設され、これら突起37を介してフランジ35が、上記エアバッグドア部13外周りの基材3裏面に振動溶着されている。
【0018】
上記の如く構成されたインストルメントパネル1では、エアバッグ装置11のエアバッグがインフレータの作動によって膨出すると、その膨出圧でフラップ29が溶着されたエアバッグドア部13が上方に押圧されて破断予定部9が破断するとともに、フラップ29がヒンジ31を支点として回動し、エアバッグドア部13がフラップ29と一体となって車体前方上向きに展開する。
【0019】
次に、上記エアバッグシュータ15の製造方法について説明する。製造に際し、図3〜5に示すように、枠体17、フラップ29の裏面側及びフランジ35の裏面側を成形する固定型39と、反ヒンジ31側を除くフランジ35及び上記フラップ29の表面側を成形する第1可動型41と、上記反ヒンジ31側のフランジ35の表面側、上記反ヒンジ31側の枠体17(後側壁17b)のシューティング口27側端面、及びフラップ29の先端面29b(フラップ29の反ヒンジ側先端面29b)を成形する第2可動型43とを備えた成形型45を用意する。上記固定型39には、枠体17成形用の凹部40が形成されているとともに、上記枠体17の受け部21に対応するように段差部39aが形成されている。また、上記第2可動型43は、上記段差部39a及び受け部21に対応するように上記フラップ29の先端縁裏面及び受け部21を成形する突起43aを有している。
【0020】
そして、まず、図3に示すように、上記第2可動型43の突起43aが上記固定型39の段差部39aに当接するように成形型45を型閉じして、上記固定型39と第1可動型41及び第2可動型43との間に形成されたキャビティ47内に溶融樹脂を充填固化してエアバッグシュータ15を成形する。
【0021】
次いで、図4に示すように、上記第1可動型41を矢印Bに示す型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータ15のフラップ29及び反ヒンジ31側を除くフランジ35の表面から離間させて、少なくとも第1可動型41とフラップ29の表面との間にフラップ29先端側部分の第1可動型41側への撓み(図5参照)を許容する隙間を確保する。
【0022】
その後、図5に示すように、上記第2可動型43を矢印Cに示す型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータ15の反ヒンジ31側のフランジ35の表面及び反ヒンジ31側の枠体17(後側壁17b)のシューティング口27側端面(受け部21)から離間させる。この際、上記フラップ29の先端裏面が上記第2可動型43の突起43aで型開き方向に押されるため、該フラップ29先端側部分が撓みながら上記固定型39から離間する。なお、上記フラップ29の先端側部分以外の裏面は固定型39から離間しない。さらに上記第2可動型43を型開き方向に移動させると、上記フラップ29の先端縁が上記突起43aから離脱し、フラップ29の先端側部分はその弾力により、図5の仮想線で示すように、撓みのない状態に復帰して固定型39の成形面39bに当接する。しかる後、図示しない突き出しピンを作動させて上記エアバッグシュータ15を上記固定型39から脱型する。図6は、上記製造方法によって製造されたエアバッグシュータ15の断面図を示す。上記のように製造されたエアバッグシュータ15は、フラップ29の先端裏面と受け部21との間に隙間S2を有している。このエアバッグシュータ15は、インストルメントパネル1の基材3裏面に振動溶着によって一体に取り付けられる。その際、フラップ29の表面を基材3によって押圧することにより、図6の仮想線で示すようにフラップ29を撓ませてフラップ29の先端裏面を上記受け部21に圧接させた状態でフラップ29の表面が基材3に溶着される。これにより、フラップ29の先端裏面と上記受け部21との間の隙間S2が無くなる。このように、エアバッグシュータ15が取り付けられたインストルメントパネル1では、エアバッグドア部13を裏面側から補強するフラップ29の反ヒンジ31側先端が段状の受け部21によって支持されているので、エアバッグドア部13にその表面側から荷重がかかった際、エアバッグドア部13の撓みや破断予定部9の破断が防止される。
【0023】
本実施形態によれば、フラップ29の先端裏面を上記第2可動型43の突起43aで型開き方向に押すことにより、フラップ29の先端側部分を撓ませながらフラップ29の先端縁を上記突起43aから離脱させるので、フラップ29の先端縁が枠体17のシューティング口27側端面と重なって(ラップして)いても脱型可能である。したがって、フラップ29の先端裏面と上記反ヒンジ31側の枠体17のシューティング口27側端面(受け部21)との離間距離の短いエアバッグシュータ15を成形することができる。このようなエアバッグシュータ15では、フラップ29を押さえ込んで基材3のエアバッグドア部13裏面に溶着しても、フラップ29からエアバッグドア部13裏面に作用する曲げ反力が小さいので、該エアバッグドア部13の表面が浮き上がって見栄えが悪化することが防止される。また、ヒンジ31に作用する曲げ力も小さくなるので、ヒンジ31の剛性低下や破損等も防止される。
【0024】
(実施形態2)
図7〜10は、本発明の実施形態2に係るエアバッグシュータ15の製造方法を示す。本実施形態2では、上記固定型39に突き出しピン49が、上記フラップ29の裏面側及びフランジ35の裏面側を成形する成形面39bから図示しない駆動装置の駆動によって突出可能に複数設けられている。
【0025】
本実施形態2の製造方法では、まず、図7に示すように、上記第2可動型43の突起43aが上記固定型39の段差部39aに当接するように、かつ上記突き出しピン49をその先端が固定型39の成形面39bとほぼ同一面となるように後退させた状態で成形型45を型閉じする。そして、上記固定型39と第1可動型41及び第2可動型43との間に形成されたキャビティ47内に溶融樹脂を充填固化してエアバッグシュータ15を成形する。
【0026】
次いで、図8に示すように、上記第1可動型41を矢印Dに示す型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータ15のフラップ29及び反ヒンジ31側を除くフランジ35の表面から離間させる。その後、図9に示すように、突き出しピン49を固定型39の成形面39bから突出させるとともに、該突き出しピン49の突出と同期させて上記第2可動型43を矢印Eに示す型開き方向に移動させることにより、上記エアバッグシュータ15を突き出しピン49で突き出してフラップ29、フランジ35及びヒンジ31を成形面39bから離脱させる。このとき、エアバッグシュータ15全体が型抜き方向に移動しているが、枠体17は固定型39の凹部40に挿入され、枠体17と凹部40の成形面との間に抜き勾配により隙間が形成されている。その後、図10に示すように、第2可動型43を矢印Eに示す型開き方向にさらに移動させて上記エアバッグシュータ15の反ヒンジ31側のフランジ35の表面及び反ヒンジ31側の枠体17(後側壁17b)のシューティング口27側端面から離間させる。この際、上記フラップ29の先端裏面が上記第2可動型43の突起43aで型開き方向に押されるため、フラップ29先端側部分が撓みながら上記固定型39から離間する。また、エアバッグシュータ15全体が反第2可動型43側に片寄り、枠体17の前側壁17a及び後側壁17bの後側側面と上記凹部40の後側成形面との間の隙間が広くなる。このとき、エアバッグシュータ15が反第2可動型43側に片寄った分、フラップ29の先端側部分と第2可動型43の突起43aとの重なり(ラップ)が小さくなる。そして、さらなる第2可動型43の型開き方向への移動により、上記フラップ29の先端縁が上記突起43aから離脱し、フラップ29の先端側部分はその弾力により図7に示す成形状態になる。このように離脱の際、実施形態1に比べ、フラップ29の先端側部分と第2可動型43の突起43aとの重なりが小さくなっているので、フラップ29先端側部分の撓み量が小さくなり、フラップ29先端側部分の撓みによる変形が防止される。
【0027】
しかる後、上記突き出しピン49を固定型39の成形面からさらに突出させて第1可動型41及び第2可動型43をさらに型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータ15を上記固定型39から脱型する。
【0028】
なお、上記実施形態1,2では、エアバッグシュータ15を基材3に振動溶着により一体化したが、振動溶着以外の方法で一体化するようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施形態1,2では、車両用内装品としてインストルメントパネル1を示したが、本発明は、ステアリングハンドル、座席側方のサイドトリム等の内装品に適用できるものである。
【0030】
また、上記実施形態2では、上記フラップ29の先端縁を上記突起43aから離脱させた後、エアバッグシュータ15の脱型のために突き出しピン49を固定型39の成形面39bからさらに突出させたが、上記フラップ29の先端縁を上記第2可動型43の突起43aから離脱させる前に、エアバッグシュータ15の枠体17が固定型39の凹部40から完全に脱け出る直前まで突き出しピン49を突出させてもよい。例えば、図9に示す状態でエアバッグシュータ15の枠体17が固定型39の凹部40から完全に脱け出る直前となるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば、車両衝突時にエアバッグ装置の作動で開くエアバッグドア部を有する基材裏面に上記エアバッグドア部に対応するように配設されるエアバッグシュータの製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態1に係るインストルメントパネルの助手席前方部分を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】実施形態1に係るエアバッグシュータの製造方法において成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填固化した状態の成形型の断面図である。
【図4】図3の状態から第1可動型を型開き方向に移動させた状態の成形型の断面図である。
【図5】図4の状態から第2可動型を型開き方向に移動させた状態の成形型の断面図である。
【図6】実施形態1に係るエアバッグシュータの製造方法によって製造されたエアバッグシュータの断面図である。
【図7】実施形態2に係るエアバッグシュータの製造方法において成形型のキャビティ内に溶融樹脂を充填固化した状態の成形型の断面図である。
【図8】図7の状態から第1可動型を型開き方向に移動させた状態の成形型の断面図である。
【図9】図8の状態から突き出しピンを固定型の成形面から突き出した状態の成形型の断面図である。
【図10】図9の状態から第2可動型を型開き方向に移動させた状態の成形型の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 インストルメントパネル(車両用内装品)
3 基材
9 破断予定部
11 エアバッグ装置
13 エアバッグドア部
15 エアバッグシュータ
17 枠体
21 受け部
27 シューティング口
29 フラップ
31 ヒンジ
35 フランジ
39 固定型
39a 段差部
41 第1可動型
43 第2可動型
43a 突起
45 成形型
47 キャビティ
49 突き出しピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に略矩形状のエアバッグドア部が破断予定部により区画形成された車両用内装品において、上記基材裏面に上記エアバッグドア部に対応するように配設され、
略矩形状のシューティング口を有し内部にエアバッグ装置が収納された筒状の枠体と、該枠体に上記シューティング口を覆うように基端縁がヒンジを介して一体に形成されているとともに、該基端縁両端から先端縁まで延びる両側縁と上記シューティング口の開口縁部との間に隙間が形成され、上記エアバッグドア部裏面に溶着されるフラップと、上記枠体のシューティング口側端部に外側方に張り出すように形成され、上記エアバッグドア部外周りの基材裏面に溶着されるフランジとを備え、
上記フラップの反ヒンジ側における枠体のシューティング口側端面には、上記フラップがシューティング口を閉じた状態で上記フラップの先端縁を支持する段状の受け部が形成されたエアバッグシュータの製造方法であって、
上記枠体、フラップの裏面側及びフランジの裏面側を成形し、上記受け部に対応するように段差部が形成された固定型と、反ヒンジ側を除くフランジ及び上記フラップの表面側を成形する第1可動型と、上記反ヒンジ側のフランジの表面側及び上記反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面を成形し、上記段差部に対応するように上記フラップの先端縁裏面を成形する突起を有する第2可動型とを備えた成形型を用意し、
上記第2可動型の突起が上記固定型の段差部に当接するように成形型を型閉じして、上記固定型と第1可動型及び第2可動型との間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を充填してエアバッグシュータを成形し、
次いで、上記第1可動型を型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータのフラップ及び反ヒンジ側を除くフランジの表面から離間させ、
その後、上記第2可動型を型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータの反ヒンジ側のフランジの表面及び反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面から離間させるとともに、上記フラップの先端裏面を上記第2可動型の突起で型開き方向に押すことによりフラップ先端側部分を撓ませながら上記固定型から離間させて上記フラップの先端縁を上記突起から離脱させ、
しかる後、上記エアバッグシュータを上記固定型から脱型することを特徴とするエアバッグシュータの製造方法。
【請求項2】
基材に略矩形状のエアバッグドア部が破断予定部により区画形成された車両用内装品において、上記基材裏面に上記エアバッグドア部に対応するように配設され、
略矩形状のシューティング口を有し内部にエアバッグ装置が収納された筒状の枠体と、該枠体に上記シューティング口を覆うように基端縁がヒンジを介して一体に形成されているとともに、該基端縁両端から先端縁まで延びる両側縁と上記シューティング口の開口縁部との間に隙間が形成され、上記エアバッグドア部裏面に溶着されるフラップと、上記枠体のシューティング口側端部に外側方に張り出すように形成され、上記エアバッグドア部外周りの基材裏面に溶着されるフランジとを備え、
上記フラップの反ヒンジ側における枠体のシューティング口側端面には、上記フラップがシューティング口を閉じた状態で上記フラップの先端縁を支持する段状の受け部が形成されたエアバッグシュータの製造方法であって、
上記枠体、フラップの裏面側及びフランジの裏面側を成形する成形面を有し、該成形面から突出可能に突き出しピンが設けられているとともに、上記受け部に対応するように段差部が形成された固定型と、反ヒンジ側を除くフランジ及び上記フラップの表面側を成形する第1可動型と、上記反ヒンジ側のフランジの表面側及び上記反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面を成形し、上記段差部に対応するように上記フラップの先端縁裏面を成形する突起を有する第2可動型とを備えた成形型を用意し、
上記第2可動型の突起が上記固定型の段差部に当接するように、かつ上記突き出しピンをその先端が成形面とほぼ同一面となるように後退させた状態で成形型を型閉じして、上記固定型と第1可動型及び第2可動型との間に形成されたキャビティ内に溶融樹脂を充填してエアバッグシュータを成形し、
次いで、上記第1可動型を型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータのフラップ及び反ヒンジ側を除くフランジの表面から離間させた後、上記突き出しピンを固定型の成形面から突出させるとともに、上記第2可動型を型開き方向に移動させて上記エアバッグシュータを突き出しピンで突き出してフラップ、フランジ及びヒンジを上記固定型の成形面から離脱させ、
その後、上記第2可動型を型開き方向にさらに移動させて上記エアバッグシュータの反ヒンジ側のフランジの表面及び反ヒンジ側の枠体のシューティング口側端面から離間させるとともに、上記フラップの先端裏面を上記第2可動型の突起で型開き方向に押すことによりフラップ先端側部分を撓ませて上記フラップの先端縁を上記突起から離脱させ、
しかる後、上記エアバッグシュータを上記固定型から脱型することを特徴とするエアバッグシュータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−36845(P2010−36845A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205392(P2008−205392)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】