説明

エアバッグ装置

【課題】第1のエアバッグおよび第2のエアバッグの強度をそれぞれ別個に設定できるとともに、取付作業をより容易に行うことが可能なエアバッグ装置を得る。
【解決手段】エアバッグ4を独立した第1のエアバッグ6と第2のエアバッグ7で形成しているため、それぞれを最適な強度に設定することができる。また、第1のエアバッグ6と第2のエアバッグ7は別々でありながら、後端部同士が結合されているため、インフレータ5に対する位置合わせを同時に行うことができる。さらに第1のエアバッグ6と第2のエアバッグ7は、後端部だけでなく、前端部22、23でも結合されているため、第1のエアバッグ6と第2のエアバッグ7の折り畳み作業を一緒に行うことができ、折り畳み作業性が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の乗員の側方にエアバッグを展開させるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のシートから乗員の側方にエアバッグを展開させ、側面衝突時に乗員を保護するエアバッグ装置が知られている(特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1のエアバッグ装置は、上下寸法の大きい袋状のエアバッグを備えており、内部に設けられた隔壁によって、上側の第1のエアバッグと、下側の第2のエアバッグとに区画されている。第1のエアバッグは胸部保護用で、第2のエアバッグは腰部保護用である。
【0004】
このエアバッグの後端部にはインフレータが収容されており、エアバッグはインフレータと共に折り畳まれた状態でシートバック内に収納されている。インフレータから噴出されたガスは、分配手段によって、第1のエアバッグと第2のエアバッグの両方に供給され、これによりエアバッグ全体が展開しかつ膨張して、シートバックの側部から前方へ突出し、乗員を保護するようになっている。
【0005】
この種のエアバッグでは、通常、腰部に対応する第2のエアバッグの内圧が胸部に対応する第1のエアバッグの内圧よりも高く調整される。このため、特許文献1の構成の場合、エアバッグ全体について、基布の厚みや枚数を第2のエアバッグの内圧に対応させて設定する必要があり、第1のエアバッグについては基布の無駄が生じることになる。
【0006】
この点、特許文献のエアバッグ装置では、第1のエアバッグと第2のエアバッグがそれぞれ別個独立しているため、第1のエアバッグと第2のエアバッグを内圧に応じた強度に設定することができる。
【特許文献1】特開2004−210048号公報
【特許文献2】米国特許第5803485号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のように第1のエアバッグと第2のエアバッグが別個独立していると、その分、エアバッグを取り付ける作業に手間がかかってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、第1のエアバッグおよび第2のエアバッグの強度をそれぞれ別個に設定できるとともに、取付作業をより容易に行うことが可能なエアバッグ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明にあっては、後端部に開口を有する袋状の第1のエアバッグと、当該第1のエアバッグの下方に隣接して配置され後端部に開口を有する袋状の第2のエアバッグとを備え、上記第1のエアバッグの下端の後端部および第2のエアバッグの上端の後端部にはそれぞれ後方側に開放された切欠部が形成され、それら切欠部の端縁同士が縫合された上下連結部が形成されることにより、第1および第2のエアバッグが二股状に結合されるとともに、第1および第2のエアバッグの上記開口同士が連結された一体開口が形成され、上記一体開口から挿入された細長いインフレータが上下に伸びる姿勢で上記エアバッグ内に収容されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明にあっては、上記上下連結部では、第1および第2のエアバッグの切欠部の端縁同士が重ね合わせて縫合されることによりエアバッグの内側に張り出す内向きフランジが形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明にあっては、上記インフレータのガス吐出口に対向するガス分配板が設けられ、上記内向きフランジがガス分配板の外表面に当接していることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明にあっては、上記内向きフランジが、第1および第2のエアバッグのうち内圧の高いエアバッグ側に傾倒した姿勢で、上記インフレータの外表面または当該インフレータのガス吐出口に対向して設けられるガス分配板の外表面に当接していることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明にあっては、上記内向きフランジの表面を樹脂被覆材で被覆したことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明にあっては、第1および第2のエアバッグは、それぞれ基布を二つ折りにしてその端縁同士を縫合することで袋状に形成されたものであり、第1および第2のエアバッグは、二つ折りの各折曲部が相互に対向する状態で結合されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明にあっては、第1のエアバッグの前端部の下部と第2のエアバッグの前端部の上部とが相互に結合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、第1のエアバッグと第2のエアバッグとが別個独立して形成される分、各エアバッグの強度をそれぞれ別個に設定できるとともに、それらエアバッグを一体化させたため、取付作業をより容易に行うことが可能となる。
【0017】
請求項2の発明によれば、内向きフランジをインフレータ等の外表面に当接させることで、上下連結部におけるシールを確保しやすくなる。
【0018】
請求項3の発明によれば、ガス分配板によってガスを分配しやすくなる上、内向きフランジをガス分配板の外表面に当接させることで、第1および第2のエアバッグをより容易に区画することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、内向きフランジが第1および第2のエアバッグの圧力差によってインフレータ等の外表面に押し付けられるため、上下連結部におけるシールをより確実に確保しやすくなる。
【0020】
請求項5の発明によれば、樹脂被覆材によってシール性を高めることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、各エアバッグの縫合部分を上下連結部の反対側に配置することができるため、上下連結部における縫合をより容易に行うことができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、エアバッグをより容易に折り畳むことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1実施形態)図1は、本実施形態にかかるエアバッグ装置の展開状態を示す側面図、図2は、図1中II−II線に沿う第1のエアバッグおよび第2のエアバッグの断面図、図3は、インフレータの収納部付近を示す斜視図、図4は、インフレータの後端部の基布の合わせ方を示す概略図、図5は、インフレータを保持するリテーナの斜視図、図6は、ガスを噴射している状態のインフレータのガス吐出口付近を示す断面図、図7は、内向きフランジおよびその周辺を示す拡大断面図である。
【0024】
図1中の符号1は、進行方向を向いて左側のフロントシートであって、図1には、車室内側から見た状態が示してある。フロントシート1は、シートバック2とシートクッション3から構成されている。フロントシート1の側方には、車体側壁としての図示しないドアがある。
【0025】
正面視でシートバック2の右側端部には、エアバッグ4とインフレータ5が収納されている。そして、車両の側面衝突時に、エアバッグ4がシートバック2から前方へ展開し、乗員Mとドア(図示せず)との間に介在することにより、乗員Mを保護するようになっている。
【0026】
エアバッグ4は、胸部保護用としての第1のエアバッグ6と、腰部保護用としての第2のエアバッグ7とが上下に隣接して配置され、相互に結合された構成となっている。
【0027】
第1のエアバッグ6は、1枚(一重)の基布を二つ折りにしてその端縁同士を縫製することで袋状に形成される一方、第2のエアバッグ7は2枚(二重)の基布を二つ折りにしてその端縁同士を縫製することで袋状に形成されている。このように、重ね合わせる基布の枚数を変えることで、第1および第2のエアバッグ6,7の強度を異ならせることができ、内圧に応じた強度を得ることができる。
【0028】
これら第1および第2のエアバッグ6,7は、折曲部12,13が相互に対向しかつ縫合処理する端末部8,9が相互に離間する姿勢で結合されている。こうすることで、上下連結部14と端末部8,9とが集結して基布が幾重にも重なって縫合が困難になることが抑制されている。
【0029】
また、第1のエアバッグ6および第2のエアバッグ7ともに、その後端部には開口10a,10bが形成され、これら開口10a,10b同士が連設されて一体開口11が形成されている。
【0030】
そして、第1のエアバッグ6の下端の後端部および第2のエアバッグ7の上端の後端部にはそれぞれ後方側に略U字状に開放された切欠部14a,14bが形成されており、これら切欠部14a,14bの端縁同士が二本の縫合線16で縫合されて上下連結部14が形成されている。この上下連結部14では、切欠部14a,14bの端縁同士がエアバッグ4の内部空間側に折り曲げられて略一定幅で重ね合わされて縫合されることにより、切欠部14a,14bの端縁に沿って略一定幅で略U字状に伸びる内向きフランジ17が形成されている。第1および第2のエアバッグ6,7は、この上下連結部14で二股状に連結されている。
【0031】
細長いインフレータ5は、上下に伸びる姿勢で、一体開口11から一体化されたエアバッグ4内の後端部に収容され、インフレータ5を支持するリテーナ25に保持された状態で、シートバック2内の図示しないシートフレームに固定される。また、インフレータ5は下部にガス吐出口26を有し、ガス吐出口26からガスを横向きに噴射するようになっている。
【0032】
リテーナ25のガス吐出口26に対応する部分には、当該ガス吐出口26に対面する状態で若干離間した湾曲状のガス分配板27が設けられている。ガス分配板27にはガイド片28が切起こし形成され、ガス吐出口26からガス分配板27に当たった際に、ガスGが上側よりも下側に多く分配されるようになっている。
【0033】
そして、このリテーナ25には上下二箇所で側外方に伸びるスタッドボルト29,29が固設されており、これらスタッドボルト29,29がインフレータ5の固定とエアバッグ4の一体開口11の閉塞とに利用される。具体的には、まず、インフレータ5を上下に伸びる姿勢でエアバッグ4の内部の後端部に配置して、スタッドボルト29を前側の固定孔19を貫通させて外側に突出させ、次に、後側の固定孔20,21同士が重なり合うように基布の開口縁同士を重ねてインフレータ5を後から包み込むように前側へ折り返し、当該突出させたスタッドボルト29を、重なり合った固定孔20,21に貫通させて外側に突出させ、図示しないシートフレームにスタッドボルト29を固定する。これにより、エアバッグ4の後端部の一体開口11が閉塞されるとともに、インフレータ5がシートバック2の内部に収容された状態で固定される。
【0034】
ここで、エアバッグ4の固定孔19,20,21が形成される部分は、補強布15によって補強されている。
【0035】
また、インフレータ5を略U字状の内向きフランジ17に突き当ててエアバッグ4内にセットする時点では、内向きフランジ17を下向きに傾倒させておき、当該内向きフランジ17の上面17aがガス分配板27の側面(外表面)27aに接触するようにしてある(図6および図7参照)。
【0036】
さらに、内向きフランジ17とインフレータ5とが接触する部分におけるシール性を向上させるため、内向きフランジ17の表面(少なくとも上面17a)には、樹脂被覆材としてのシリコーンゴムによるコーティングが施されている。なお、コーティングに用いる樹脂被覆材としては、シリコーンゴムの他、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリアミド樹脂等を用いることができる。
【0037】
また、これら第1のエアバッグ6の前端部の下部と第2のエアバッグ7の前端部の上部とは、連結部材としてのストラップ24を介して相互に結合されている。
【0038】
次に、本実施形態にかかるエアバッグ装置の作用効果について説明する。自動車が側面衝突を起こすと、インフレータ5のガス吐出口26からガスGが噴射される。ガスGはガス分配板27に当たり、上方の第1のエアバッグ6側と、下方の第2のエアバッグ7側に分配されるが、ガイド片28等によって流通抵抗を調整することで、ガスGは下方の第2のエアバッグ7側へより多く供給されるようになっている。
【0039】
第1のエアバッグ6と第2のエアバッグ7は両方とも膨張して、シートバック2の表皮を押し破り、前方へ展開する。
【0040】
前方へ展開した第1のエアバッグ6および第2のエアバッグ7は、速やかに乗員Mとドア(図示せず)との間の隙間に入り込み、第1のエアバッグ6によって乗員Mの胸部が保護されるとともに、第2のエアバッグ7によって腰部が保護される。なお、展開した状態では、第2のエアバッグ7の内圧を第1のエアバッグ6の内圧よりも高めて、比重の大きい腰部をより確実に保護できるようにしてある。
【0041】
以上の本実施形態によれば、各エアバッグ6,7の強度をそれぞれ別個に設定できるとともに、それらエアバッグ6,7を一体化させたため、取付作業をより容易に行うことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態によれば、内向きフランジ17をガス分配板27の外表面としての側面27aに当接させることで、上下連結部14におけるシールを確保しやすくなり、第1のエアバッグ6および第2のエアバッグ7の内圧をより確実に得ることができる。なお、ガス分配板27を設けない場合には、内向きフランジ17をインフレータ5等の外表面に当接させれば同様の効果が得られる。
【0043】
また、本実施形態によれば、ガス分配板27を設けたことでガスを第1および第2のエアバッグ6,7に分配しやすくなる。また、内向きフランジ17をガス分配板27の外表面としての側面27aに当接させることで、第1および第2のエアバッグ6,7をより容易に区画できるとともに、この部分におけるシールを確保して、第1および第2のエアバッグ6,7の内圧をそれぞれ所期の値に維持しやすくなるという効果もある。
【0044】
また、本実施形態によれば、内向きフランジ17が、第1および第2のエアバッグ6,7のうち内圧の高いエアバッグ側(本実施形態では第2のエアバッグ7側、すなわち下側)に傾倒した姿勢でガス分配板27の外表面としての側面27aに当接しているため、図7に示すように、当該内向きフランジ17が第1および第2のエアバッグ6,7の圧力差ΔPによってガス分配板27の側面27aに押し付けられて、上下連結部14におけるシールをより一層確実に確保できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、内向きフランジ17の少なくともガス分配板27の外表面に当接する面を樹脂被覆材で被覆したため、当該コーティングによってこの部分のシール性をさらに高めることができる。なお、ガス分配板27を設けない場合には、内向きフランジ17のインフレータ5等の外表面に当接する面にコーティングを施せば同様の効果が得られる。
【0046】
また、本実施形態によれば、第1および第2のエアバッグ6,7は、それぞれ基布を二つ折りにしてその端縁同士を縫合することで袋状に形成されたものであり、第1および第2のエアバッグ6,7は、二つ折りの各折曲部が相互に対向する状態で結合されているため、各エアバッグ6,7の縫合部分を上下連結部14の反対側に配置することができるため、上下連結部14における縫合をより容易に行うことができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、第1のエアバッグ6の前端部の下部と第2のエアバッグ7の前端部の上部とが相互に結合されている分、エアバッグ4をより容易に折り畳むことが可能となって、取付作業をより一層容易に行うことができるようになる。
【0048】
(第2実施形態)図8は、本実施形態にかかるエアバッグ装置の内向きフランジおよびその周辺を示す拡大断面図である。なお、本実施形態にかかるエアバッグ装置は、上記第1実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0049】
第2のエアバッグ7Aの2枚の基布はいずれも内面側にシリコーンコーティングが施されているが、本実施形態では、その2枚のうち、第2のエアバッグ7Aの内面を形成する内側の基布の上下連結部14における縁部を延長して、内向きフランジ17Aを下側から包み込む折返部31を形成してある。折返部31も一緒に縫合線16Aにより内向きフランジ17Aに縫製される。折返部31では、シリコーンコーティングされた内面がガス分配板27側を向き、ガス分配板27と接する。
【0050】
すなわち、本実施形態によれば、折返部31のシリコーンコーティングを施した面が、ガス分配板27と接触するため、折返部31を介して内向きフランジ17Aとガス分配板27との接触摩擦が大きくなり、内向きフランジ17Aのガス分配板27に対する接触状態が確実に維持される。また、第1のエアバッグおよび第2のエアバッグ7Aの圧力差ΔPにより内向きフランジ17Aがガス分配板27側へ押し付けられることによっても、接触摩擦は増大する。このようにして接触摩擦が増加することで、内向きフランジ17Aの当接状態がさらに安定する。なお、折返部31に代えて、ガス分配板27の表面に樹脂被覆材によるコーティングを施しても良いし、それらの双方にコーティングを施しても良い。
【0051】
(第3実施形態)図9は、本実施形態にかかるエアバッグ装置の第1および第2のエアバッグの結合部分およびその周辺を示す拡大断面図である。なお、本実施形態は、上記第1実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0052】
この実施形態では、第1および第2のエアバッグ6B,7Bの縁部35,36同士を端縁から一定距離にある縫合線37で略U字状に縫合し、第2のエアバッグ7B側の2枚の縁部36についてはさらに縫合線16Bで縫合してある。
【0053】
そして、第2のエアバッグ7B側の縁部36は下向きにしてガス分配板27の側面27aと面接触させ、第1のエアバッグ6B側の縁部35は上向きにしてガス分配板27の側面27aに面接触させている。本実施形態では、縁部35,36が内向きフランジに相当する。
【0054】
本実施形態によっても、縁部35,36がガス分配板27の側面27aに当接するため、上記第1実施形態あるいは第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第4実施形態)図10は、本実施形態にかかるエアバッグ装置の内向きフランジおよびその周辺を拡大して示した断面図である。なお、本実施形態は、上記第1実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0056】
この実施形態では、ガス分配板27Cが下側に広がったスカート形状を成している。また、内向きフランジ17Cは折り曲げずに比較的真っ直ぐに伸張された状態で、その先端部41がガス分配板27Cの下端42に接近されている。
【0057】
先端部41はガス分配板27Cの下端42に接近させる代わりに接触させても良い。先端部41はガス分配板27Cの下端42に略対応する位置が好ましく、ガス分配板27Cの内部側への突出量は少ない方が好ましい。
【0058】
この内向きフランジ17Cの先端部41は、第1および第2のエアバッグ6C,7Cの膨張時には、第2のエアバッグ7Cの内圧Pによってガス分配板27Cの下端42に強く押し付けられることになる。したがって、本実施形態によっても、内向きフランジ17Cのガス分配板27Cへの当接状態が安定し、ガスGをより確実に分配することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、第1のエアバッグの下縁と第2のエアバッグの上縁とが相互に離間している構造を例示したが、本発明にかかる構成によれば、エアバッグが膨張かつ展開した状態で、第1のエアバッグの下縁と第2のエアバッグの上縁同士が密着するように、あるいは第1のエアバッグの下部と第2のエアバッグの上部とが相互に重なり合うように構成することが可能である。かかる構成は、例えば、第1および第2のエアバッグのうち少なくも一方を他方側に張り出させた形状(すなわち第1のエアバッグについてはその下部を下側に張り出させた形状、第2のエアバッグについてはその上部を上側に張り出させた形状)として境界部分で相互にオーバーラップさせた状態で結合したり、あるいは、第1および第2のエアバッグのうち一方について二つ折りにする位置を上下逆にして縫合処理する端末部を第1および第2のエアバッグの境界部側に配置して当該端末部の縫合代を他方の折曲部と重ね合わせることで、比較的容易に実現可能である。こうすることで、エアバッグが膨張かつ展開した状態で、第1および第2のエアバッグ間の隙間をほぼ無くすかあるいは極めて小さくすることができ、第1および第2のエアバッグの境界部分でもより確実に所要のエアバッグの厚み(衝撃吸収ストローク)を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるエアバッグ装置の展開状態を示す側面図である。
【図2】図1中II−II線に沿う第1のエアバッグおよび第2のエアバッグの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるエアバッグ装置のインフレータの収納部付近を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかるエアバッグ装置のインフレータの後端部の基布の合わせ方を示す概略図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかるエアバッグ装置のインフレータを保持するリテーナの斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかるエアバッグ装置のガスを噴射している状態のインフレータのガス吐出口付近を示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態にかかるエアバッグ装置の内向きフランジおよびその周辺を拡大して示した断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかるエアバッグ装置の内向きフランジおよびその周辺を拡大して示した断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかるエアバッグ装置の第1および第2のエアバッグの結合部分およびその周辺を拡大して示した断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態にかかるエアバッグ装置の内向きフランジおよびその周辺を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
【0062】
M 乗員
4 エアバッグ
5 インフレータ
6,6A,6B,6C 第1のエアバッグ
7,7A,7B,7C 第2のエアバッグ
10a,10b 開口
11 一体開口
12,13 折曲部
14 上下連結部
14a,14b 切欠部
17,17A,17C 内向きフランジ
26 ガス吐出口
27,27C ガス分配板
27a 側面(外表面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部に開口を有する袋状の第1のエアバッグと、当該第1のエアバッグの下方に隣接して配置され後端部に開口を有する袋状の第2のエアバッグとを備え、
前記第1のエアバッグの下端の後端部および第2のエアバッグの上端の後端部にはそれぞれ後方側に開放された切欠部が形成され、それら切欠部の端縁同士が縫合された上下連結部が形成されることにより、第1および第2のエアバッグが二股状に結合されるとともに、第1および第2のエアバッグの前記開口同士が連結された一体開口が形成され、
前記一体開口から挿入された細長いインフレータが上下に伸びる姿勢で前記エアバッグ内に収容されるようにしたことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記上下連結部では、第1および第2のエアバッグの切欠部の端縁同士が重ね合わせて縫合されることによりエアバッグの内側に張り出す内向きフランジが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記インフレータのガス吐出口に対向するガス分配板が設けられ、前記内向きフランジがガス分配板の外表面に当接していることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記内向きフランジが、第1および第2のエアバッグのうち内圧の高いエアバッグ側に傾倒した姿勢で、前記インフレータの外表面または当該インフレータのガス吐出口に対向して設けられるガス分配板の外表面に当接していることを特徴とする請求項2または3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記内向きフランジの表面を樹脂被覆材で被覆したことを特徴とする請求項2〜4のうちいずれか一つに記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
第1および第2のエアバッグは、それぞれ基布を二つ折りにしてその端縁同士を縫合することで袋状に形成されたものであり、
第1および第2のエアバッグは、二つ折りの各折曲部が相互に対向する状態で結合されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一つに記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
第1のエアバッグの前端部の下部と第2のエアバッグの前端部の上部とが相互に結合されていることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一つに記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−168874(P2008−168874A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6334(P2007−6334)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】