エアバッグ装置
【課題】膨張用ガスが保護対象側に直接排出されるのを抑制しつつ、車両構成物により排気孔が塞がれるのを確実に抑制する。
【解決手段】エアバッグ30には、一対の布帛部33,34を環状に結合する区画結合部39が設けられ、同エアバッグ30の保護領域が、区画結合部39により囲まれ、かつ膨張用ガスGが供給されない非膨張部43と、区画結合部39よりも外側に位置し、かつ膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部44とに区画されている。両布帛部33,34を断続的に結合することにより区画結合部39が形成されることで、両布帛部33,34間であって、区画結合部39における隣り合う結合部分間には、膨張部44内の膨張用ガスGを排気するための排気孔45が設けられている。両布帛部33,34のうち、保護対象から遠い側の車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分の少なくとも一部が刳りぬかれて孔47が形成されている。
【解決手段】エアバッグ30には、一対の布帛部33,34を環状に結合する区画結合部39が設けられ、同エアバッグ30の保護領域が、区画結合部39により囲まれ、かつ膨張用ガスGが供給されない非膨張部43と、区画結合部39よりも外側に位置し、かつ膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部44とに区画されている。両布帛部33,34を断続的に結合することにより区画結合部39が形成されることで、両布帛部33,34間であって、区画結合部39における隣り合う結合部分間には、膨張部44内の膨張用ガスGを排気するための排気孔45が設けられている。両布帛部33,34のうち、保護対象から遠い側の車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分の少なくとも一部が刳りぬかれて孔47が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員、歩行者等を保護対象として衝撃から保護すべく同車両に装備されるエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員、歩行者等を衝撃から保護する装置としてエアバッグ装置が広く知られている。このエアバッグ装置は、一対の布帛部の周縁部を縫合してなるエアバッグと、そのエアバッグ内に配置されたインフレータとを備えている。
【0003】
また、こうしたエアバッグ装置のうち、例えば、側突等による衝撃から乗員を保護するサイドエアバッグ装置では、上記エアバッグがインフレータとともに車両の座席のシートバック(背もたれ)等に組み込まれている。
【0004】
上記サイドエアバッグ装置では、車両のボディサイド部に側方から衝撃が加わると、インフレータから膨張用ガスがエアバッグ内に供給される。この膨張用ガスによりエアバッグが膨張展開を開始し、一部をシートバック内に残した状態でシートバックから飛び出す。このエアバッグは、座席に着座した乗員とボディサイド部との間の狭い空間において、前方へ向けて膨張展開される。膨張展開したエアバッグが、乗員と車室内に侵入してくるボディサイド部との間に介在して乗員を拘束する。また、膨張展開したエアバッグ内のガスは、そのエアバッグに設けられた排気孔(ベントホール)を通じてエアバッグの外部へ排出される。これらのエアバッグの膨張展開、及び膨張用ガスの排気に伴う内圧低下により、ボディサイド部を通じて乗員へ伝わる側方からの衝撃が緩和される。
【0005】
なお、排気孔は、膨張展開を完了した状態のエアバッグについて、車外側の布帛部に設けられることが望ましい。これは、エアバッグの車内側の布帛部から乗員側へ膨張用ガスが直接排出されないようにするためである。ただし、エアバッグが膨張展開したときに排気孔の近傍がボディサイド部に接触すると、排気孔が塞がれてしまい、膨張用ガスの排出が妨げられる。
【0006】
そこで、特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、排気孔が、エアバッグの膨張展開時に、車両のボディサイド部から離間する箇所に設けられている。より詳しくは、特許文献1では、両布帛部を当接させた状態で結合するシームが設けられており、このシームによりエアバッグの内部が複数のチャンバに区画形成されている。そして、車外側の布帛部において、上記シームの近傍に排気孔があけられている。
【0007】
シームは、エアバッグの内部空間を区画する機能に加え、エアバッグが膨張するときの車幅方向の厚みを規制する機能も発揮する。この機能により、シームの設けられた箇所は、エアバッグの膨張展開時にボディサイド部から遠ざかる。そのため、シームの近傍に設けられた排気孔もボディサイド部から遠ざかり、ボディサイド部によって塞がれにくくなる。
【特許文献1】特開2003−335208号公報
【特許文献2】特開2007−283786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、排気孔がボディサイド部によって最も塞がれにくくなるのは、同排気孔が、膨張展開時のエアバッグの厚みの最小となる箇所に設けられた場合である。上述した特許文献1の場合、シームの設けられた箇所が、膨張展開時のエアバッグの厚みの最小となる箇所に該当する。しかしながら、上記特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、排気孔をシームに近付けるにも限度があり、エアバッグが膨張展開したときに、排気孔をボディサイド部から遠ざけるにも限度がある。従って、排気孔がより一層確実に塞がれないようにするには、エアバッグに別途の工夫が必要となる。
【0009】
こうした問題は、上述したサイドエアバッグ装置に限らず、エアバッグに排気孔を有する他の種類のエアバッグ装置に共通して起こり得る。
例えば、特許文献2には、車両の座席に着座した乗員の頭部と、同車両の車室内の側部との間で頭部保護用エアバッグをカーテン状に膨張させるエアバッグ装置が記載されている。この頭部保護用エアバッグは、複数枚の基布の周縁が周縁接合部で接合されるとともに、内側が内側接合部で接合されて袋状に形成されている。また、車室外側(車外側)の基布には、内側接合部の内側位置にベントホール(排気孔)が形成され、さらに、内側接合部には内部開口部が形成されている。そして、ベントホール(排気孔)は、内部開口部を介してバッグ内空間部に導入されたエアバッグ内の膨張用ガスを外に排出する。
【0010】
しかし、この特許文献2に記載のエアバッグ装置でも、上記と同様の問題が生じ得る。これは、ベントホール(排気孔)の周り、すなわち、車室外側の基布において、ベントホールの周縁と内側接合部との間に膨張可能な布部(厚みを生じ得る布部)が残っているためである。その結果、特許文献2でも、上記布部が車外側の車両構成物(ドア等のボディサイド部)に接触してベントホールが塞がれて、排気の継続が困難となる。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、膨張用ガスが乗員等の保護対象側に直接排出されるのを抑制しつつ、ボディサイド部等の車両構成物により排気孔が塞がれるのを確実に抑制することのできるエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、互いに重ね合わされた一対の布帛部により袋状に形成され、かつ衝撃から保護対象を保護するための保護領域が設けられたエアバッグを備え、前記エアバッグには、両布帛部を環状に結合する区画結合部が設けられており、前記保護領域が、前記区画結合部により囲まれ、かつ膨張用ガスが供給されない非膨張部と、前記区画結合部よりも外側に位置し、かつ膨張用ガスが供給されて膨張する膨張部とに区画されており、前記両布帛部を断続的に結合することにより前記区画結合部が形成されることで、両布帛部間であって、前記区画結合部における隣り合う結合部分間には、前記膨張部内の前記膨張用ガスを前記非膨張部側へ排気するための排気孔が設けられており、さらに、前記両布帛部のうち、前記保護対象から遠い側の布帛部について、前記区画結合部により囲まれた部分の少なくとも一部が刳りぬかれていることを要旨とする。
【0013】
ここで、エアバッグ装置による保護対象としては、車両の乗員又は歩行者が該当する。
上記の構成によれば、エアバッグの保護領域では、膨張部に膨張用ガスが供給され、非膨張部に膨張用ガスが供給されない。そのため、膨張部が膨張し、非膨張部が膨張しない。エアバッグの厚みは、非膨張部で最小となり、膨張部で非膨張部よりも大きくなる。特に、膨張部での厚みは、非膨張部に近づくに従い小さくなる。
【0014】
ここで、保護領域を膨張部と非膨張部とに区画する区画結合部が、両布帛部を断続的に結合することにより環状に結合されている。膨張部と非膨張部とが、両布帛部間であって、区画結合部における隣り合う結合部分間(排気孔)を通じて相互に連通している。そのため、膨張部に供給されて、その膨張に供された膨張用ガスは、これらの排気孔を通じて非膨張部側へ排出可能である。しかも、排気孔が設けられた区画結合部は、膨張部と非膨張部との境界部分に位置していることから、同排気孔は、膨張状態のエアバッグにおいて厚みの最小となる箇所に位置している。
【0015】
さらに、両布帛部のうち、保護対象から離れた側の布帛部について、区画結合部により囲まれた部分の少なくとも一部が刳りぬかれている。そのため、上記のようにして、膨張部から排気孔を通って非膨張部側へ排出された膨張用ガスは、両布帛部のうち保護対象から離れた側の布帛部において刳りぬかれた箇所を通り、両布帛部の外部へ排出される。よって、エアバッグが膨張して、同エアバッグを挟んで保護対象とは反対側の車両構成物に接触したとしても、排気孔は同車両構成物から採り得る範囲のうち最も遠ざかった箇所に位置することとなる。
【0016】
その結果、膨張用ガスが保護対象側に直接的に排出されないばかりか、排気孔が車両構成物に塞がれにくくなる。従って、膨張用ガスが適切にエアバッグの外部へ排出されれば、膨張部の内圧が低下してゆく。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記両布帛部のうち、前記保護対象に近い側の布帛部について、前記非膨張部に対応する部分は閉塞されていることを要旨とする。
【0018】
上記の構成によれば、非膨張部では、保護対象から遠い側の布帛部が刳りぬかれ、保護対象に近い側の布帛部が閉塞されている。保護対象から遠い側の布帛部では、刳りぬかれた部分を通って膨張用ガスの流通が可能であるのに対し、保護対象に近い側の布帛部では、こうした膨張用ガスの流通が規制される。そのため、膨張部から区画結合部の排気孔を通って非膨張部へ排出された膨張用ガスの大部分は、保護対象から遠い側の布帛部の刳りぬかれた部分を通り、エアバッグを挟んで保護対象とは反対側へ排出される。膨張用ガスは、保護対象側へはほとんど排出されなくなる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記区画結合部は、前記両布帛部を縫製することにより形成され、前記排気孔は、前記縫製の上糸と下糸とが交差する交絡部位同士の間に形成されることを要旨とする。
【0020】
上記の構成によれば、両布帛部は縫製されること、すなわち、上糸と下糸とが多数の箇所で交差することにより断続的に環状に結合される。この縫製の際の両布帛部の結合により、区画結合部が形成される。そして、両布帛部間であって、区画結合部における上糸と下糸とが交差する交絡部位同士の間が排気孔となる。膨張部内の膨張用ガスは、これらの排気孔を通じて非膨張部へ排出される。
【0021】
この構成では、縫製に際し、上糸及び下糸の縫い目長さを調整することで、交絡部位同士の間隔を変えて、排気孔の大きさ(流路面積)を簡単に変更することが可能である。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記区画結合部は、前記両布帛部を断続的に接着することにより形成され、前記排気孔は、前記区画結合部において隣り合う接着部分間に形成されることを要旨とする。
【0022】
上記の構成によれば、両布帛部が断続的に接着されることにより同布帛部が環状に結合されて、区画結合部が形成される。そして、両布帛部間であって、区画結合部において隣り合う接着部分間が排気孔となる。膨張部内の膨張用ガスは、これらの排気孔を通じて非膨張部へ排出される。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記エアバッグは袋織りにより形成されるものであり、前記排気孔を有する区画結合部は、前記エアバッグを袋織りする過程で形成されるものであり、前記排気孔は、前記袋織りの隣合う接結部間に形成されることを要旨とする。
【0024】
上記の構成によれば、エアバッグを袋織りする過程で両布帛部が断続的に結合されて、環状の区画結合部が形成される。そして、両布帛部間であって、区画結合部において隣り合う接結部間が排気孔となる。膨張部内の膨張用ガスは、これらの排気孔を通じて非膨張部へ排出される。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明において、前記エアバッグは、車両の座席に着座した乗員と同車両のボディサイド部との間で膨張するサイドエアバッグであり、前記非膨張部は、前記サイドエアバッグにおいて前記乗員の腕部、胸部及び腹部の少なくとも1つに対応する箇所に設けられることを要旨とする。
【0026】
上記の構成によれば、側突等により車両に対し側方から衝撃が加わると、エアバッグの膨張部に膨張用ガスが供給される。この膨張用ガスにより、車両のボディサイド部と座席に着座した乗員との間でエアバッグが膨張展開し、ボディサイド部を通じて乗員へ伝わる車両側方からの衝撃が緩和される。この際、エアバッグの多くの部分では車幅方向の厚みが増すが、乗員の腕部、胸部、腹部の少なくともいずれか1つに対応する箇所に設けられた非膨張部では車幅方向の厚みが増さない。そのため、エアバッグによって腕部を通じて間接的に、又は直接的に、乗員側部のうち耐衝撃性のあまり高くない胸部や腹部が圧迫されにくい。このように非膨張部は、膨張部内の膨張用ガスを、保護対象から遠い側の布帛部を通じてエアバッグの外部へ排出するほか、エアバッグが腕部を介して胸部や腹部を圧迫するのを抑制する。
【0027】
そのため、腕部に対応する箇所の厚みを小さくすることで、胸部や腹部を圧迫するのを抑制する構成をもともと備えたエアバッグの場合には、その構成とは別の箇所に、膨張部内の膨張用ガスを保護対象から遠い側の布帛部を通じてエアバッグの外部へ排出する構成を設けなくてもすむ。
【0028】
なお、前記エアバッグは、請求項7に記載の発明によるように、車両の座席に着座した乗員の頭部と、同車両の車室内の側部との間でカーテン状に膨張することにより同頭部を保護する頭部保護用エアバッグ、前記車両の最後部座席の後方近傍で膨張することにより同乗員を保護する後突用エアバッグ、前記車両と歩行者との間で膨張することにより同歩行者を保護する歩行者保護用エアバッグのいずれかであってもよい。この場合、前記頭部保護用エアバッグ、前記後突用エアバッグ、及び前記歩行者保護用エアバッグの各前記保護領域が複数の領域に区画され、前記非膨張部が、前記頭部保護用エアバッグ、前記後突用エアバッグ、及び前記歩行者保護用エアバッグにおいて、前記保護領域を区画する区画部に対応する箇所に設けられてもよい。
【0029】
通常、頭部保護用エアバッグ、後突用エアバッグ、及び歩行者保護用エアバッグの各保護領域では、これを複数の領域に区画する区画部が設けられていて、その区画部では厚みが他の箇所よりも小さく設定される。そのため、エアバッグにおいて区画部に対応する厚みの小さな箇所であれば、他の箇所に比べ非膨張部を容易に設けることが可能である。
【0030】
また、前記エアバッグは、請求項8に記載の発明によるように、車両の座席に着座した乗員の前下方で膨張することにより、同乗員の脛部から膝部にかけての部位を保護する膝保護用エアバッグであってもよい。この場合、前記非膨張部は前記膝保護用エアバッグにおいて前記乗員の前記脛部に対応する箇所に設けられてもよい。
【0031】
通常、膝保護用エアバッグでは、乗員の膝部に対応する箇所の厚みが大きく設定され、脛部に対応する箇所の厚みが小さく設定される。そのため、同エアバッグにおいて膝部に対応する厚みの小さな箇所であれば、他の箇所に比べ非膨張部を容易に設けることが可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明のエアバッグ装置によれば、膨張用ガスが保護対象側に直接排出されるのを抑制しつつ、車両構成物により排気孔が塞がれるのを確実に抑制することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明をサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を車両前方として説明する。
【0034】
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、車両10においてボディサイド部11の車内側の近傍には、座席(車両用シート)12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両10の側部に配置された部材を指す。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リアドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リアクォータ等である。
【0035】
上記座席12は、シートクッション(座部)13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾き調整機構(図示略)を有するシートバック(背もたれ部)14とを備えて構成されている。シートバック14の車外側の側部には収納部15が設けられており、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMがこの収納部15に収容されている。収納部15の位置は、座席12に着座した乗員Pの斜め後方近傍となる。
【0036】
エアバッグモジュールAMは、図4(A)に示すように、インフレータアセンブリ20及びサイドエアバッグ(以下、単に「エアバッグ」という)30を主要な構成部材として備えている。
【0037】
次に、これらの構成部材の各々について説明する。ここで、本実施形態では、エアバッグモジュールAM及びその構成部材について「上下方向」、「前後方向」というときは、座席12のシートバック14を基準としている。シートバック14の起立する方向を「上下方向」とし、この方向に対し車両10の略前後方向に直交する方向を「前後方向」としている。通常、シートバック14は傾斜した状態で使用されることから、「上下方向」は厳密には鉛直方向ではなく、多少傾斜している。同様に、「前後方向」は厳密には水平方向ではなく、多少傾斜している。
【0038】
<インフレータアセンブリ20>
図5及び図6の少なくとも一方に示すように、インフレータアセンブリ20は、ガス発生源としてのインフレータ21と、そのインフレータ21の外側に装着されたリテーナ22とを備えて構成されている。インフレータ21は、略上下方向に細長い略円柱状をなしており、その内部には、外部からの作動信号に応じて反応して膨張用ガスGを生ずるガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ21の上部には、生成した膨張用ガスGを径方向外方へ噴出する複数のガス噴出孔23が設けられている。インフレータ21の下端部にはコネクタ部24が設けられており、同インフレータ21への制御信号の印加配線となるハーネス25がコネクタ部24に接続されている。
【0039】
なお、インフレータ21としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスGを噴出させるタイプが用いられてもよい。
【0040】
一方、リテーナ22は、ディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ21をエアバッグ30と一緒にシートバック14内のシートフレーム16(図6の二点鎖線参照)に固定する機能を有する部材である。リテーナ22の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって上下方向に細長い略筒状に形成されている。リテーナ22の上部前側には、インフレータ21の一部のガス噴出孔23をリテーナ22から露出させる窓部26が設けられており、ガス噴出孔23からの膨張用ガスGが、この窓部26を通じ概ね車両前方へ向けて導出される。
【0041】
リテーナ22には、これを上記シートフレーム16に取付けるための係止部材として、複数本(本実施形態では2本)のボルト27が固定されている。表現を変えると、両ボルト27が、リテーナ22を介してインフレータ21に間接的に固定されている。これらのボルト27は、インフレータ21の軸線に直交する方向へ向けて延びている。
【0042】
なお、インフレータアセンブリ20は、インフレータ21とリテーナ22とが一体になったものであってもよい。
<エアバッグ30>
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、エアバッグ30は、座席12に着座した乗員Pを保護対象とし、側突等により衝撃が車両10の外側方からボディサイド部11に加わったときに、インフレータ21からの膨張用ガスGにより膨張展開する。そして、エアバッグ30は、自身の一部(後部)を収納部15内に残した状態で同収納部15から略前方へ向けて飛び出し、乗員P及びボディサイド部11間で膨張展開することにより乗員Pを拘束して上記衝撃から保護するためのものである。
【0043】
図4(A)は、エアバッグ30が膨張用ガスGを充填させることなく展開させられた状態のエアバッグモジュールAMを模式的に示している。また、図7は、エアバッグ30の製作途中の状態を示している。これらの図4(A)及び図7の少なくとも一方に示すように、エアバッグ30は、単一の布帛からなるパネル布(基布とも呼ばれる)31を、その中央部分に設定した折り線32に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ30の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを車内側布帛部33といい、車外側に位置するものを車外側布帛部34というものとする。パネル布31においては、車内側布帛部33及び車外側布帛部34の外形形状が、折り線32を対称軸として互いに線対称の関係にある。なお、車内側布帛部33及び車外側布帛部34を特に区別する必要がない場合には、単に「布帛部33,34」と記載する。
【0044】
上記パネル布31としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。車内側布帛部33及び車外側布帛部34の形状・大きさは、エアバッグ30が座席12及びボディサイド部11間で膨張展開したときに、座席12に着座している乗員Pの外側方近傍で、腹部PBから肩部PSに対応する領域を占有し得るように設定されている(図4(A)参照)。
【0045】
車内側布帛部33において、上記折り線32の近傍の上下方向に互いに離間した2箇所には、ボルト孔35があけられている。
車内側布帛部33及び車外側布帛部34の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部36においてなされている。本実施形態では、周縁結合部36は、車内側布帛部33及び車外側布帛部34の周縁部のうち後縁部を除く大部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。この周縁結合部36は太い破線で図示されている。後述する区画結合部39についても同様である。車内側布帛部33及び車外側布帛部34間であって、周縁結合部36によって囲まれた空間は、衝撃から乗員Pを保護するための保護領域Zとなっている。
【0046】
なお、エアバッグ30は、互いに独立した一対のパネル布31を車幅方向に重ね合わせ、車内側に位置するパネル布31を車内側布帛部33とし、車外側に位置するパネル布31を車外側布帛部34とし、両布帛部33,34を袋状となるように結合させることにより形成されたものであってもよい。また、周縁結合部36は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。
【0047】
上記エアバッグ30において、車内側布帛部33の内側の前下部には、環状の補強布37が配置されている。同様に、上記エアバッグ30において、車外側布帛部34の内側の前下部には環状の補強布38が配置されている。各補強布37,38は、上記折り線32を対称軸として互いに線対称の関係にある。両補強布37,38の配置箇所は、標準的な体格を有する乗員P(大人)が、標準的な姿勢で着座しているときの腕部(上腕部)PAの側方近傍に対応する箇所である。例えば、運転者がステアリングホイールを握ったときの姿勢を、標準的な姿勢とすることができる。補強布37は、上記箇所において車内側布帛部33に接着され、同車内側布帛部33に密着している。また、補強布38は、上記箇所において車外側布帛部34に接着され、同車外側布帛部34に密着している。
【0048】
なお、上記両補強布37,38を布帛部33,34に接着しない場合には、両補強布37,38が分かれて対応する布帛部33,34に密着するか、又は両補強布37,38が分かれず、重なった状態で一方の布帛部33(又は34)のみに密着するような構成とすることが望ましい。
【0049】
上記折り線32に沿って重ね合わされた両布帛部33,34と、それらの間に配置された両補強布37,38とは、同補強布37,38に沿って環状に設けられた区画結合部39によって、一体に結合されている。区画結合部39は、図4(A),(B)及び図8(A)の少なくとも1つに示すように、上述した周縁結合部36と同様にして、両布帛部33,34及び両補強布37,38を縫糸で縫合(縫製)すること、すなわち、上糸41及び下糸42を交差させることにより形成されている。なお、図8(A)では、補強布37,38の図示が省略されている。前述したエアバッグ30の保護領域Zは、区画結合部39により囲まれ、かつ膨張用ガスGが供給されない非膨張部43と、区画結合部39よりも外側に位置し、かつ膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部44とに区画されている。
【0050】
本実施形態では、両布帛部33,34を断続的に結合することにより区画結合部39が形成されている。この形成により、両布帛部33,34間であって、区画結合部39における隣り合う結合部分間には、膨張部44内の膨張用ガスGを排気するための排気孔45が設けられている。より詳しくは、排気孔45は、前記縫製の上糸41と下糸42とが交差する交絡部位46同士の間(図8(A),(B)においてハッチングで示された部分K)によって構成されている。各部分Kの断面形状は、膨張部44における膨張用ガスGの充填状況に応じて変化する。
【0051】
膨張部44に膨張用ガスGが充填されていないときには、各部分Kの断面形状が図8(A)に示すように扁平となり、各排気孔45が閉じられた状態となる。なお、図8(A)では、布帛部33,34、上糸41、下糸42等の関係が模式的に描かれている。実際には、布帛部33,34は相互に密着した状態又はそれに近い状態となっている。これに対し、膨張部44に膨張用ガスGが充填されると、部分Kの断面形状が図8(B)に示すように略円形となり、各排気孔45が開かれた状態となる。
【0052】
ここで、排気孔45の流路面積は、交絡部位46同士間の間隔(縫い目長さ:ピッチP1)によって左右される。ピッチP1が短くなるに従い流路面積が小さくなり、過度に短くなると膨張用ガスGを排出する能力が損なわれる。反対に、ピッチP1が長くなるに従い流路面積が大きくなって膨張用ガスGの排出能が高くなる反面、両布帛部33,34を結合する強度(結合強度)が低下する。そのため、ピッチP1の設定に際しては、膨張用ガスGの排出能と結合強度とを両立できるような値に設定することが望ましい。具体的には、通常の結合としての縫製の場合、糸同士が交差する部位の間のピッチは、1.0〜2.0mm未満で設定される。本実施形態のように、この部位で排気孔45を形成する場合には、図4(B)及び図8(A)に示すように、ピッチP1は、2.0〜15.0mm程度に設定することが望ましく、5.0〜10.0mm程度に設定することがさらに望ましい。
【0053】
また、排気孔45の流路面積は、上糸41及び下糸42の少なくともいずれか一方の張力からも影響を受ける。張力が高い縫い目の場合には排気孔45の流路面積が小さくなる。
【0054】
さらに、図4(A),(B)及び図9(A)の少なくとも1つに示すように、両布帛部33,34のうち、乗員Pから遠い側の車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分の多くの部分が刳りぬかれている。この刳りぬきにより車外側布帛部34に孔47があけられている。これに対し、両布帛部33,34のうち、乗員Pに近い側の車内側布帛部33について、非膨張部43に対応する部分は刳りぬかれておらず閉塞されている。
【0055】
また、図4(A),(B)及び図7に示すように、孔47の端部(周縁)から区画結合部39までの距離(縫い代M1)は、2.0〜25.0mm程度に設定することが望ましく、5.0〜10.0mm程度に設定することがさらに望ましい。なお、縫い代M1における、糸同士が交差する部位の中間の部位に、孔47の端部(周縁)から区画結合部39までを切断したスリットSLや切欠部KK(図4(B)参照)を設けてもよい。これらスリットSLや切欠部KKを設けることで、さらに排気効率が向上する。さらに、孔47の周縁について、対向する2箇所の間隔の最小値を距離D1とすると、同距離D1は10mm以上であることが望ましく、25mm以上であることがさらに望ましい。
【0056】
図4(A)に示すように、インフレータアセンブリ20は、略上下方向へ延びる姿勢でエアバッグ30内に配置されている。そして、リテーナ22の2本のボルト27が、車内側布帛部33の対応するボルト孔35(図7参照)に挿通されている。こうした挿通により、インフレータアセンブリ20がエアバッグ30に対し位置決めされた状態で係止されている。さらに、エアバッグ30の後部下端は、環状の締結具28により、インフレータアセンブリ20の下部に気密状態で締付けられている。
【0057】
上記エアバッグモジュールAMは、展開状態のエアバッグ30(図4(A)参照)が図6に示すように折り畳まれることにより、コンパクトな収納用形態にされる。これは、エアバッグモジュールAMをシートバック14における限られた大きさの収納部15に確実に収納するためである。
【0058】
上記収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、リテーナ22のボルト27がシートフレーム16に挿通され、ナット17が締め付けられることにより、同シートフレーム16に固定されている。なお、リテーナ22は、上述したボルト27とは異なる部材によって車両10(シートフレーム16)に固定されてもよい。
【0059】
サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに図1に示す衝撃センサ51及び制御装置52を備えている。衝撃センサ51は加速度センサ等からなり、車両10のボディサイド部11(図2及び図3参照)等に取付けられており、ボディサイド部11に外側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づきインフレータ21の作動を制御する。
【0060】
上記のようにして、本実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。このサイドエアバッグ装置では、車両10のボディサイド部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52からインフレータ21に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ21では、図5及び図6に示すように、ガス発生剤が高温高圧の膨張用ガスGを発生し、これを複数のガス噴出孔23から径方向外方へ噴出しようとする。この際、複数のガス噴出孔23のうち後ろ側のものがリテーナ22によって閉塞され、前側のものが窓部26から露出している。そのため、前側のガス噴出孔23から膨張用ガスGが窓部26を通じ略車両前方へ向けて噴出される。この略車両前方には、前方のほか、前上方及び前下方も含まれる。
【0061】
噴出された膨張用ガスGは、エアバッグ30の保護領域Z(図4(A)参照)のうち膨張部44に供給されるが、非膨張部43には供給されない。そのため、エアバッグ30は、折り状態を解消(展開)しながら膨張し、自身の後端部を、インフレータアセンブリ20とともに収納部15内に残した状態でシートバック14から車両前方へ飛び出す。その後も膨張用ガスGの供給されるエアバッグ30は、図2及び図3の少なくとも一方に示すように、車両10のボディサイド部11と座席12に着座した乗員Pとの間で車両前方へ向けて膨張展開する。このエアバッグ30が、乗員Pと、車室内に侵入してくるボディサイド部11との間に介在する。このエアバッグ30によって乗員Pが車幅方向内側へ押圧されて拘束される。そして、ボディサイド部11を通じて乗員Pへ伝わる側方からの衝撃がエアバッグ30によって緩和される。
【0062】
この際、図9(B)に示すように、エアバッグ30の車幅方向(図9(B)では左右方向)の厚みは、非膨張部43で最小となり、膨張部44で非膨張部43よりも大きくなる。特に、膨張部44での厚みは、非膨張部43に近づくに従い小さくなる。膨張展開したエアバッグ30における非膨張部43の位置は、乗員Pの腕部PAと対応している(図4(A)参照)。そのため、標準体格を有する乗員P(大人)の腕部PAが非膨張部43に対応する箇所に位置している状況下でエアバッグ30が膨張展開した場合には、その乗員Pの腕部PAがエアバッグ30によって車幅方向内側へ過度に押されることがない。腕部PAの車幅方向内側は、耐衝撃性のあまり高くない腹部PBや胸部PTであるが、これらが腕部PAによって過度に圧迫されることが起こりにくく、胸部PTや腹部PBのエアバッグ30による保護が適切に行なわれる。
【0063】
ここで、図8(A),(B)の少なくとも一方に示すように、両布帛部33,34を縫製すること、すなわち、上糸41と下糸42とを一定間隔毎に多数の箇所で交差させることにより、両布帛部33,34が断続的に結合されている。本実施形態では、円環状に縫製が行なわれている。この縫製による両布帛部33,34の結合により環状の区画結合部39が形成されている。そして、区画結合部39における隣り合う結合部分間、ここでは、上糸41と下糸42とが交差する交絡部位46同士の間(部分K)が排気孔45となる。膨張部44と非膨張部43とが、これらの排気孔45を通じて相互に連通している。そのため、膨張部44に供給されて、その膨張に供された膨張用ガスGは、これらの排気孔45において両布帛部33,34を押し広げる。排気孔45が開き、膨張用ガスGが排気孔45を通過して非膨張部43側へ排出可能である。しかも、排気孔45が設けられた区画結合部39は、膨張部44と非膨張部43との境界部分に位置していることから、同排気孔45は、膨張状態のエアバッグ30において厚みの最小となる箇所に位置している。
【0064】
さらに、非膨張部43では、乗員Pから遠い側の車外側布帛部34が刳りぬかれている一方、乗員Pに近い側の車内側布帛部33は刳りぬかれておらず、閉塞されている。乗員Pから遠い側の車外側布帛部34では、刳りぬかれた部分(孔47)を通って膨張用ガスGの流通が可能であるのに対し、乗員Pに近い側の車内側布帛部33では、こうした膨張用ガスGの流通が規制される。そのため、膨張部44から区画結合部39の排気孔45を通って非膨張部43へ排出された膨張用ガスGは、専ら孔47を通り、エアバッグ30を挟んで乗員Pとは反対側(車外側)へ排出されることとなり、乗員P側への膨張用ガスGの排出が略完全に抑制される。
【0065】
よって、エアバッグ30が膨張して、同エアバッグ30を挟んで乗員Pとは反対側(車外側)の車両構成物(ボディサイド部11)に接触したとしても、排気孔45は採り得る範囲のうち同車両構成物(ボディサイド部11)から最も遠ざかった箇所に位置することとなる。その結果、膨張用ガスGが乗員P側に直接的に排出されないばかりか、排気孔45が車両構成物(ボディサイド部11)によって塞がれにくくなる。
【0066】
この点において、本実施形態は、エアバッグの膨張展開時に、車両のボディサイド部から離間する箇所に排気孔を設ける上記特許文献1や、内側接合部の内側にベントホールを設け、内側接合部に内部開口部を設ける上記特許文献2と異なる。
【0067】
特に、本実施形態は次の点で特許文献2とは異なる。ここでは、特許文献2に記載された事項を、比較例(図9(C)参照)として説明する。
図9(C)に示すように、比較例では、車内側及び車外側の基布(布帛部33,34)が内側接合部(区画結合部39)によって複数のバッグ内空間部(膨張部44、非膨張部43)に区画されている。車外側の基布(布帛部34)において、内側接合部(区画結合部39)の内側位置にはベントホール(孔47)が形成されるとともに、内側接合部(区画結合部39)自体に内部開口部(排気孔45)が形成されている。そして、ベントホール(孔47)は、内部開口部(排気孔45)を介してバッグ内空間部(非膨張部43)に導入された膨張用ガスをエアバッグの外部へ排出する。なお、括弧内の部材は、本実施形において対応する部材名である。
【0068】
しかし、比較例では、ベントホールの端部(周縁)から内側接合部までの距離(縫い代M1)が大きい。表現を変えると、ベントホール(排気孔)の周り、すなわち、車外側の基布において、ベントホールの周縁と内側接合部との間に膨張可能な布部(厚みを生じ得る布部)が多く残っている。そのため、内部開口部を介して流入する膨張用ガスによりバッグ内空間部が膨張して、車幅方向の厚みが増す。これに伴い、ベントホールが車外側へ変位する。車外側の基布がボディサイド部に接触するとベントホールが塞がれやすく、排気の継続が困難となる。
【0069】
この点、縫い代M1が小さな本実施形態では、図9(B)に示すように、孔47の周縁と区画結合部39との間に膨張可能な布帛部(厚みを生じ得る布帛部)は僅か(必要最小限)にしか残っていない。そのため、排気孔45を介して膨張用ガスGが流入しても、非膨張部43が膨張して車幅方向の厚みが増すことはない。孔47は車外側へ変位しにくく、膨張部44における車外側布帛部34がボディサイド部11に接触しても、孔47が塞がれにくい。膨張用ガスGの排気が良好に継続される。
【0070】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)互いに重ね合わされた車内側布帛部33及び車外側布帛部34を断続的に結合することにより区画結合部39を形成することで、両布帛部33,34間であって、区画結合部39における隣り合う結合部分(交絡部位46)間に、膨張部44内の膨張用ガスGを非膨張部43側へ排気するための排気孔45を設けている。また、両布帛部33,34のうち、保護対象(乗員P)から遠い側の車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分の多くを刳りぬいて孔47をあけている。そのため、膨張用ガスGが保護対象(乗員P)側に直接排出されるのを抑制しつつ、車両構成物(ボディサイド部11)によって排気孔45が塞がれるのを確実に抑制することができる。その結果、膨張用ガスGを適切にエアバッグ30の外部へ排出させて、膨張部44の内圧を、保護対象(乗員P)の保護にとって望ましい値にまで低下させることができる。
【0071】
(2)両布帛部33,34のうち、保護対象(乗員P)に近い側である車内側の布帛部33,34について、非膨張部43に対応する部分を閉塞している。そのため、膨張部44から排気孔45を通って非膨張部43へ排出された膨張用ガスGが保護対象(乗員P)側へ排出されるのを、略完全に抑制することができる。非膨張部43の膨張用ガスGのほとんどを、保護対象(乗員P)から遠い側である車外側へ排出することができる。
【0072】
(3)両布帛部33,34を縫製することにより区画結合部39を形成している。そして、縫製の上糸41と下糸42とが交差する交絡部位46同士の間を排気孔45としている。そのため、膨張部44の膨張用ガスGを、これらの排気孔45を通過させて非膨張部43へ確実に排出することができる。
【0073】
また、縫製の場合には、上糸41及び下糸42の縫い目長さ(ピッチP1)を調整することで、交絡部位46同士の間隔を変えて、排気孔45の大きさ(流路面積)を簡単に変更することができる利点もある。
【0074】
(4)エアバッグ30を、車両10の座席12に着座した乗員Pと車両10のボディサイド部11との間で膨張させるもの(サイドエアバッグ30)としている。そして、非膨張部43を、エアバッグ30において乗員Pの腕部PAに対応する箇所に設けることで、非膨張部43が、膨張部44内の膨張用ガスGを保護対象(乗員P)から遠い側の車外側布帛部34を通じてエアバッグ30の外部へ排出するだけでなく、エアバッグ30が腕部PAを介して胸部PTや腹部PBを圧迫するのを抑制するようにしている。そのため、胸部PTや腹部PBを圧迫するのを抑制する構成(腕押し抑制シーム等)をもともと備えたエアバッグ30の場合には、その構成とは別の箇所に、膨張部44内の膨張用ガスGを、車外側布帛部34を通じてエアバッグ30の外部へ排出する構成を設けなくてもすむ。
【0075】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<インフレータアセンブリ20について>
・エアバッグ装置は、インフレータアセンブリ20がエアバッグ30の外部に配置されたものであってもよい。この場合には、インフレータ21とエアバッグ30とをパイプ等によって繋ぎ、インフレータ21から噴出された膨張用ガスGを、パイプ等を通じてエアバッグ30に供給してもよい。
【0076】
<区画結合部39について>
・区画結合部39の側面形状を、環状であることを条件に、上記実施形態(略扇形状)とは異なる形状、例えば円形状、楕円形状、三角形状等に変更してもよい。
【0077】
・図10(A)は、エアバッグ30を車外側から見たときの区画結合部39の近傍部分を示している。また、図10(B),(C)は、区画結合部39を図10(A)の矢印E方向から見た状態を拡大して示している。これらの図10(A)〜(C)の少なくとも1つに示すように、縫製に代え、両布帛部33,34を断続的に接着することにより結合させて環状の区画結合部39を形成してもよい。この場合、区画結合部39において隣り合う接着部分61間を排気孔45とする。このようにすると、膨張部44内の膨張用ガスGを、排気孔45を通じ非膨張部43へ排出させることが可能である。
【0078】
・図11(A)は、エアバッグ30を車外側から見たときの区画結合部39の近傍部分を示している。また、図11(B),(C)は、区画結合部39を図11(A)の矢印F方向から見た状態を拡大して示している。これらの図11(A)〜(C)の少なくとも1つに示すように、エアバッグ30を袋織りにより形成し、その袋織りの過程で、排気孔45を有する区画結合部39も一緒に形成してもよい。この場合、区画結合部39において、袋織りの隣り合う接結部62間を排気孔45とする。このようにしても、膨張部44内の膨張用ガスGを、排気孔45を通じ非膨張部43へ排出させることが可能である。
【0079】
ここで、図12(A),(B)は、図11(A)のS−S線に沿った断面構造を示す図であって、袋織りによってエアバッグ30を形成した後に、車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分を刳りぬく工程を示している。
【0080】
エアバッグ30を袋織りした後には、図12(A)に示すように、両布帛部33,34のうち、保護対象から遠い側(図12(A)の上側)の車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分の少なくとも一部43Aをカットする。カットしたこの一部43Aを、二点鎖線の矢印で示すように、エアバッグ30(車外側布帛部34)から分離する。この分離により、車外側布帛部34において区画結合部39によって囲まれた部分の多くが刳りぬかれた状態となり、図12(B)に示すように孔47が形成される。その結果、上記実施形態と同様、膨張部44から排気孔45を通じて非膨張部43へ排出された膨張用ガスGは、孔47を通って車外側へ排出される。
【0081】
・サイドエアバッグ30において、非膨張部43を上記実施形態とは異なる箇所に設けてもよい。この場合、非膨張部43を、乗員Pの腕部PA、胸部PT及び腹部PBの少なくともいずれか1つに対応する箇所に設けると、同非膨張部43を腕部PAに対応する箇所に設けた上記実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、胸部PTや腹部PBが圧迫されるのを抑制する構成をもともと備えたエアバッグ30の場合、その構成とは別の箇所に、膨張部44内の膨張用ガスGを保護対象から遠い側の車外側布帛部34を通じてエアバッグ30の外部へ排出する構成を設けなくてもすむ。
【0082】
<補強布37,38について>
・補強布37,38の使用を省略してもよい。この場合、互いに重ね合わされた車内側布帛部33及び車外側布帛部34を直接結合して、区画結合部39を形成してもよい。また、使用する補強布37,38の枚数を3枚以上に変更してもよい。
【0083】
<エアバッグモジュールAMの収容箇所について>
・座席12のシートバック14に代えて、ボディサイド部11にエアバッグモジュールAMの収納部15を設けてもよい。
【0084】
<本発明の適用対象となるエアバッグの種類について>
・本発明は、サイドエアバッグ30のほかにも、頭部保護用エアバッグ65、後突用エアバッグ70、前滑り抑制用エアバッグ75、歩行者保護用エアバッグ80〜83にも適用可能である。
【0085】
図13に示す頭部保護用エアバッグ65は、車体のフロントピラー、ルーフサイドレール及びクォーターピラーに収納されている。頭部保護用エアバッグ65の保護領域Zは、区画部65Bによって複数の領域65Aに区画されている。側突等により車両に側方から衝撃が加わると、頭部保護用エアバッグ65は膨張用ガスにより、車室内の側部にてカーテン状に膨張展開して、前席乗員の頭部と後席乗員の頭部とを保護する。
【0086】
この頭部保護用エアバッグ65では、区画結合部39が区画部65Bの近傍に設けられている。これは、区画部65Bの近傍では、頭部保護用エアバッグ65の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0087】
図14及び図15に示す後突用エアバッグ70は、車両10のルーフ71の後部に収納されている。後突用エアバッグ70の保護領域Zは、区画部70Bによって複数の領域70Aに区画されている。車両10に対し後方から衝撃が加わると、後突用エアバッグ70は膨張用ガスによりルーフ71から出て、最後部座席12Rの後方近傍でリヤウインドウ72の多くの領域を覆うようにして膨張展開する。最後部座席12Rに着座している乗員Pとリヤウインドウ72とが後突用エアバッグ70を介して隔離される。従って、膨張展開された後突用エアバッグ70により、車両10に対し後方から加えられた衝撃が吸収されるだけでなく、後方からの飛散物や、侵入物等による車室内への影響が低減される。さらには、乗員Pの後方への姿勢変化が抑制される。
【0088】
この後突用エアバッグ70では、区画結合部39が区画部70Bの近傍に設けられている。これは、区画部70Bの近傍では、後突用エアバッグ70の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0089】
図16及び図17に示す前滑り抑制用エアバッグ75は、1枚のパネル布73を、その中央部分に設定した折り線74に沿って折り返して上下方向に重ね合わせ、周縁結合部79によって結合することによって形成されている。パネル布73内であって、周縁結合部79によって囲まれた領域は保護領域Zとなる。保護領域Zは、区画部75Bによって複数の領域75Aに区画されている。
【0090】
この前滑り抑制用エアバッグ75は、座席12のシートクッション13におけるシートクッションパッド18とシートパン76との間に収納されている。前突等により、車両10に前方から衝撃が加わったことがセンサによって検知されると、前滑り抑制用エアバッグ75は膨張用ガスにより膨張して、同シートクッション13の座面13Aを隆起させる。この隆起により、乗員Pの大腿部PFの前部が上方へ押圧されてシートベルト装置77のラップベルト部78に押し付けられる。ラップベルト部78の拘束力が高められ、腰部PPが前方へ滑る現象(サブマリン現象)が抑制される。
【0091】
この前滑り抑制用エアバッグ75では、区画結合部39が区画部75Bの近傍に設けられている。これは、区画部75Bの近傍では、前滑り抑制用エアバッグ75の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0092】
図18〜図20に示す歩行者保護用エアバッグ80〜83は、歩行者85(図19参照)を保護対象とし、車両10と歩行者85との間で膨張することにより同歩行者85を保護する。
【0093】
図18に示す歩行者保護用エアバッグ80は、車両10のフードパネル86とフロントガラス87との間のカウル88に収納されている。歩行者保護用エアバッグ80の保護領域Zは、区画部80Bによって複数の領域80Aに区画されている。歩行者85の車両10との接触がセンサによって検知されると、歩行者保護用エアバッグ80が膨張用ガスにより膨張展開し、そのピラーカバー部89がフロントピラー91の前面を覆い、フードカバー部92がフードパネル86の上面を覆う。これらのピラーカバー部89及びフードカバー部92は、歩行者保護用エアバッグ80における膨張部に該当する。歩行者85が、硬質のフロントピラー91やフードパネル86側の固い部品と接触することを歩行者保護用エアバッグ80によって抑制されて、その接触に伴う衝撃から保護される。
【0094】
この歩行者保護用エアバッグ80では、区画結合部39が区画部80Bの近傍に設けられている。これは、区画部80Bの近傍では、歩行者保護用エアバッグ80の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0095】
図19において二点鎖線で示す歩行者保護用エアバッグ81は、車両10の前面側、例えばフロントバンパ93の内部に収納されている。歩行者保護用エアバッグ81の保護領域Zは、区画部81Bによって複数の領域81Aに区画されている。歩行者85の車両10への接近がセンサによって検知されると、歩行者保護用エアバッグ81は膨張用ガスによりフロントバンパ93から出て、車両10の前面を覆うように略鉛直方向へ膨張展開する。歩行者85は歩行者保護用エアバッグ81と接触した場合、上半身と下半身とを大きく屈曲させるような衝撃を受けにくい。
【0096】
この歩行者保護用エアバッグ81では、区画結合部39が区画部81Bの近傍に設けられている。これは、区画部81Bの近傍では、歩行者保護用エアバッグ81の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0097】
図20において二点鎖線で示す一方(車両前方側)の歩行者保護用エアバッグ82は、車両10のフロントバンパ93に収納されている。歩行者保護用エアバッグ82の保護領域Zは、区画部82Bによって複数の領域82Aに区画されている。歩行者85の車両10への接近がセンサによって検知されると、歩行者保護用エアバッグ82は膨張用ガスによりフロントバンパ93から出て、フロントグリル94付近の前面からフードパネル86の前部側上面を覆うように膨張する。歩行者85は、車両10のフロントグリル94やフードパネル86の前部側に直接接触することを歩行者保護用エアバッグ82によって抑制されて、接触に伴う衝撃から保護される。
【0098】
図20において二点鎖線で示す他方(車両後方側)の歩行者保護用エアバッグ83は、車両のカウル88付近におけるフードパネル86内に収納されている。歩行者保護用エアバッグ83の保護領域Zは、区画部83Bによって複数の領域83Aに区画されている。歩行者85の車両10への接近がセンサによって検知されると、フードパネル86が開口されるとともに、歩行者保護用エアバッグ83が膨張用ガスにより、フードパネル86の後部上面付近からフロントガラス87の下部前面付近まで覆うように膨張する。歩行者85は、カウル88付近に接触することを歩行者保護用エアバッグ83によって抑制されて、その接触に伴う衝撃から保護される。
【0099】
上記2種の歩行者保護用エアバッグ82,83では、区画結合部39が区画部82B,83Bの近傍に設けられている。これは、区画部82B,83Bの近傍では、歩行者保護用エアバッグ82,83の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0100】
・本発明は、図21及び図22に示す膝保護用エアバッグ100にも適用可能である。膝保護用エアバッグ100は、車両10の座席12に着座した乗員Pの前下方で膨張することにより、同乗員Pの脛部PDから膝部PKにかけての部位を保護するものである。膝保護用エアバッグ100は、例えば運転者の車両前方側であるステアリングコラム101の下方に設けられた収納部103に収納されている。なお、この収納部103は、インストルメントパネルにおいて助手席の乗員Pの前下方に設けられてもよい。前突等により、車両10に前方から衝撃が加わったことが検知されると、膝保護用エアバッグ100は膨張用ガスGにより膨張を開始し、収納部103から後方側へ出て、乗員Pとステアリングコラム101との間において、乗員Pの両足の脛部PDから膝部PKにかけての領域で膨張展開する。
【0101】
この場合、非膨張部43は、膝保護用エアバッグ100において乗員Pの脛部PDに対応する箇所に設けられることが望ましい。膝保護用エアバッグ100では、通常、乗員Pの膝部PKに対応する箇所の厚みが大きく設定され(換言すれば、膨張部44にて膝部PKが保護され)、脛部PDに対応する箇所の厚みが小さく設定されるため、同膝保護用エアバッグ100において膝部PKに対応する箇所であれば、他の箇所に比べ非膨張部43を設けることが容易だからである。
【0102】
<その他の事項>
・サイドエアバッグ30は、乗員Pの胸部PT及び腹部PBを含み、それよりも広い部位を拘束(保護)するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明をサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態において、同サイドエアバッグ装置が装備された座席を乗員とともに示す概略側面図。
【図2】座席及びボディサイド部の位置関係を乗員とともに示す概略平断面図。
【図3】同じく、座席及びボディサイド部の位置関係を乗員とともに示す概略正断面図。
【図4】(A)はエアバッグが膨張用ガスを充填させることなく展開させられた状態のエアバッグモジュールを、乗員とともに模式的に示す側面図、(B)は(A)におけるQ部を拡大して示す部分側面図。
【図5】図4(A)におけるインフレータアセンブリの概略側面図。
【図6】図5のインフレータアセンブリを、斜め後ろ上方から見た状態を、エアバッグ、シートフレーム、ボルト等とともに示す概略平面図。
【図7】エアバッグモジュールを製作する途中の状態を示す図であり、展開状態のパネル布と、補強布と、インフレータアセンブリとの位置関係を示す展開図。
【図8】(A)は、膨張部に膨張用ガスが充填されないときの区画結合部の状態を示す概略断面図、(B)は、膨張部に膨張用ガスが充填されたときの区画結合部の状態を示す概略断面図。
【図9】(A)は図4(A)におけるR−R線に沿った断面構造を示す概略断面図、(B)は膨張用ガスが排気孔を通過するときのエアバッグの状態を示す概略断面図、(C)は比較例のエアバッグが膨張するもののボディサイド部により孔が塞がれる状態を示す概略断面図。
【図10】接着により区画結合部を形成した別の実施形態を示す図であり、(A)はエアバッグを車外側から見たときの区画結合部の近傍部分を示す部分側面図、(B)は区画結合部を(A)の矢印E方向から見た図であって、膨張部に膨張用ガスが充填されないときの区画結合部の状態を示す概略断面図、(C)は膨張部に膨張用ガスが充填されたときの区画結合部の状態を示す概略断面図。
【図11】袋織りにより区画結合部を形成した別の実施形態を示す図であり、(A)はエアバッグを車外側から見たときの区画結合部の近傍部分を示す部分側面図、(B)は区画結合部を(A)の矢印F方向から見た図であって、膨張部に膨張用ガスが充填されないときの区画結合部の状態を示す概略断面図、(C)は膨張部に膨張用ガスが充填されたときの区画結合部の状態を示す概略断面図。
【図12】図11(A)のS−S線に沿った断面構造を示す図であって、(A)は車外側布帛部に孔を形成する前の状態を示す部分断面図、(B)は布帛部の一部を刳りぬいて孔を形成した後の状態を示す部分断面図。
【図13】エアバッグとして頭部保護用エアバッグを用いた別の実施形態を示す側面図。
【図14】エアバッグとして後突用エアバッグを用いた別の実施形態において、同後突用エアバッグが装備された車両後部を示す部分側面図。
【図15】図14の車両を後方から見た状態を示す背面図。
【図16】エアバッグとして前滑り抑制用エアバッグを用いた別の実施形態において、同前滑り抑制用エアバッグを上方から見た状態を示す平面図。
【図17】前滑り抑制用エアバッグが装備された座席を、乗員とともに示す側断面図。
【図18】エアバッグとして歩行者保護用エアバッグを用いた別の実施形態において、同歩行者保護用エアバッグを車両とともに示す部分斜視図。
【図19】エアバッグとして歩行者保護用エアバッグを用いた別の実施形態において、同歩行者保護用エアバッグを歩行者及び車両とともに示す部分側面図。
【図20】エアバッグとして歩行者保護用エアバッグを用いた別の実施形態において、同歩行者保護用エアバッグを車両とともに示す部分側面図。
【図21】エアバッグとして膝保護用エアバッグを用いた別の実施形態において、膨張展開状態の同膝保護用エアバッグを下方から見た状態を示す底面図。
【図22】膝保護用エアバッグが装備されたステアリングコラムの近傍部分を乗員の膝部とともに示す部分側面図。
【符号の説明】
【0104】
10…車両、11…ボディサイド部、12…座席、12R…最後部座席、30…(サイド)エアバッグ、33…車内側布帛部、34…車外側布帛部、39…区画結合部、41…上糸、42…下糸、43…非膨張部、44…膨張部、45…排気孔、46…交絡部位、61…接着部分、62…接結部、65…頭部保護用エアバッグ、65A,70A,75A,80A〜83A…領域、65B,70B,75B,80B〜83B…区画部、70…後突用エアバッグ、75…前滑り抑制用エアバッグ、80〜83…歩行者保護用エアバッグ、85…歩行者(保護対象)、100…膝保護用エアバッグ、G…膨張用ガス、P…乗員(保護対象)、PA…腕部、PB…腹部、PD…脛部、PH…頭部、PK…膝部、PT…胸部、Z…保護領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員、歩行者等を保護対象として衝撃から保護すべく同車両に装備されるエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の乗員、歩行者等を衝撃から保護する装置としてエアバッグ装置が広く知られている。このエアバッグ装置は、一対の布帛部の周縁部を縫合してなるエアバッグと、そのエアバッグ内に配置されたインフレータとを備えている。
【0003】
また、こうしたエアバッグ装置のうち、例えば、側突等による衝撃から乗員を保護するサイドエアバッグ装置では、上記エアバッグがインフレータとともに車両の座席のシートバック(背もたれ)等に組み込まれている。
【0004】
上記サイドエアバッグ装置では、車両のボディサイド部に側方から衝撃が加わると、インフレータから膨張用ガスがエアバッグ内に供給される。この膨張用ガスによりエアバッグが膨張展開を開始し、一部をシートバック内に残した状態でシートバックから飛び出す。このエアバッグは、座席に着座した乗員とボディサイド部との間の狭い空間において、前方へ向けて膨張展開される。膨張展開したエアバッグが、乗員と車室内に侵入してくるボディサイド部との間に介在して乗員を拘束する。また、膨張展開したエアバッグ内のガスは、そのエアバッグに設けられた排気孔(ベントホール)を通じてエアバッグの外部へ排出される。これらのエアバッグの膨張展開、及び膨張用ガスの排気に伴う内圧低下により、ボディサイド部を通じて乗員へ伝わる側方からの衝撃が緩和される。
【0005】
なお、排気孔は、膨張展開を完了した状態のエアバッグについて、車外側の布帛部に設けられることが望ましい。これは、エアバッグの車内側の布帛部から乗員側へ膨張用ガスが直接排出されないようにするためである。ただし、エアバッグが膨張展開したときに排気孔の近傍がボディサイド部に接触すると、排気孔が塞がれてしまい、膨張用ガスの排出が妨げられる。
【0006】
そこで、特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、排気孔が、エアバッグの膨張展開時に、車両のボディサイド部から離間する箇所に設けられている。より詳しくは、特許文献1では、両布帛部を当接させた状態で結合するシームが設けられており、このシームによりエアバッグの内部が複数のチャンバに区画形成されている。そして、車外側の布帛部において、上記シームの近傍に排気孔があけられている。
【0007】
シームは、エアバッグの内部空間を区画する機能に加え、エアバッグが膨張するときの車幅方向の厚みを規制する機能も発揮する。この機能により、シームの設けられた箇所は、エアバッグの膨張展開時にボディサイド部から遠ざかる。そのため、シームの近傍に設けられた排気孔もボディサイド部から遠ざかり、ボディサイド部によって塞がれにくくなる。
【特許文献1】特開2003−335208号公報
【特許文献2】特開2007−283786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、排気孔がボディサイド部によって最も塞がれにくくなるのは、同排気孔が、膨張展開時のエアバッグの厚みの最小となる箇所に設けられた場合である。上述した特許文献1の場合、シームの設けられた箇所が、膨張展開時のエアバッグの厚みの最小となる箇所に該当する。しかしながら、上記特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、排気孔をシームに近付けるにも限度があり、エアバッグが膨張展開したときに、排気孔をボディサイド部から遠ざけるにも限度がある。従って、排気孔がより一層確実に塞がれないようにするには、エアバッグに別途の工夫が必要となる。
【0009】
こうした問題は、上述したサイドエアバッグ装置に限らず、エアバッグに排気孔を有する他の種類のエアバッグ装置に共通して起こり得る。
例えば、特許文献2には、車両の座席に着座した乗員の頭部と、同車両の車室内の側部との間で頭部保護用エアバッグをカーテン状に膨張させるエアバッグ装置が記載されている。この頭部保護用エアバッグは、複数枚の基布の周縁が周縁接合部で接合されるとともに、内側が内側接合部で接合されて袋状に形成されている。また、車室外側(車外側)の基布には、内側接合部の内側位置にベントホール(排気孔)が形成され、さらに、内側接合部には内部開口部が形成されている。そして、ベントホール(排気孔)は、内部開口部を介してバッグ内空間部に導入されたエアバッグ内の膨張用ガスを外に排出する。
【0010】
しかし、この特許文献2に記載のエアバッグ装置でも、上記と同様の問題が生じ得る。これは、ベントホール(排気孔)の周り、すなわち、車室外側の基布において、ベントホールの周縁と内側接合部との間に膨張可能な布部(厚みを生じ得る布部)が残っているためである。その結果、特許文献2でも、上記布部が車外側の車両構成物(ドア等のボディサイド部)に接触してベントホールが塞がれて、排気の継続が困難となる。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、膨張用ガスが乗員等の保護対象側に直接排出されるのを抑制しつつ、ボディサイド部等の車両構成物により排気孔が塞がれるのを確実に抑制することのできるエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、互いに重ね合わされた一対の布帛部により袋状に形成され、かつ衝撃から保護対象を保護するための保護領域が設けられたエアバッグを備え、前記エアバッグには、両布帛部を環状に結合する区画結合部が設けられており、前記保護領域が、前記区画結合部により囲まれ、かつ膨張用ガスが供給されない非膨張部と、前記区画結合部よりも外側に位置し、かつ膨張用ガスが供給されて膨張する膨張部とに区画されており、前記両布帛部を断続的に結合することにより前記区画結合部が形成されることで、両布帛部間であって、前記区画結合部における隣り合う結合部分間には、前記膨張部内の前記膨張用ガスを前記非膨張部側へ排気するための排気孔が設けられており、さらに、前記両布帛部のうち、前記保護対象から遠い側の布帛部について、前記区画結合部により囲まれた部分の少なくとも一部が刳りぬかれていることを要旨とする。
【0013】
ここで、エアバッグ装置による保護対象としては、車両の乗員又は歩行者が該当する。
上記の構成によれば、エアバッグの保護領域では、膨張部に膨張用ガスが供給され、非膨張部に膨張用ガスが供給されない。そのため、膨張部が膨張し、非膨張部が膨張しない。エアバッグの厚みは、非膨張部で最小となり、膨張部で非膨張部よりも大きくなる。特に、膨張部での厚みは、非膨張部に近づくに従い小さくなる。
【0014】
ここで、保護領域を膨張部と非膨張部とに区画する区画結合部が、両布帛部を断続的に結合することにより環状に結合されている。膨張部と非膨張部とが、両布帛部間であって、区画結合部における隣り合う結合部分間(排気孔)を通じて相互に連通している。そのため、膨張部に供給されて、その膨張に供された膨張用ガスは、これらの排気孔を通じて非膨張部側へ排出可能である。しかも、排気孔が設けられた区画結合部は、膨張部と非膨張部との境界部分に位置していることから、同排気孔は、膨張状態のエアバッグにおいて厚みの最小となる箇所に位置している。
【0015】
さらに、両布帛部のうち、保護対象から離れた側の布帛部について、区画結合部により囲まれた部分の少なくとも一部が刳りぬかれている。そのため、上記のようにして、膨張部から排気孔を通って非膨張部側へ排出された膨張用ガスは、両布帛部のうち保護対象から離れた側の布帛部において刳りぬかれた箇所を通り、両布帛部の外部へ排出される。よって、エアバッグが膨張して、同エアバッグを挟んで保護対象とは反対側の車両構成物に接触したとしても、排気孔は同車両構成物から採り得る範囲のうち最も遠ざかった箇所に位置することとなる。
【0016】
その結果、膨張用ガスが保護対象側に直接的に排出されないばかりか、排気孔が車両構成物に塞がれにくくなる。従って、膨張用ガスが適切にエアバッグの外部へ排出されれば、膨張部の内圧が低下してゆく。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記両布帛部のうち、前記保護対象に近い側の布帛部について、前記非膨張部に対応する部分は閉塞されていることを要旨とする。
【0018】
上記の構成によれば、非膨張部では、保護対象から遠い側の布帛部が刳りぬかれ、保護対象に近い側の布帛部が閉塞されている。保護対象から遠い側の布帛部では、刳りぬかれた部分を通って膨張用ガスの流通が可能であるのに対し、保護対象に近い側の布帛部では、こうした膨張用ガスの流通が規制される。そのため、膨張部から区画結合部の排気孔を通って非膨張部へ排出された膨張用ガスの大部分は、保護対象から遠い側の布帛部の刳りぬかれた部分を通り、エアバッグを挟んで保護対象とは反対側へ排出される。膨張用ガスは、保護対象側へはほとんど排出されなくなる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記区画結合部は、前記両布帛部を縫製することにより形成され、前記排気孔は、前記縫製の上糸と下糸とが交差する交絡部位同士の間に形成されることを要旨とする。
【0020】
上記の構成によれば、両布帛部は縫製されること、すなわち、上糸と下糸とが多数の箇所で交差することにより断続的に環状に結合される。この縫製の際の両布帛部の結合により、区画結合部が形成される。そして、両布帛部間であって、区画結合部における上糸と下糸とが交差する交絡部位同士の間が排気孔となる。膨張部内の膨張用ガスは、これらの排気孔を通じて非膨張部へ排出される。
【0021】
この構成では、縫製に際し、上糸及び下糸の縫い目長さを調整することで、交絡部位同士の間隔を変えて、排気孔の大きさ(流路面積)を簡単に変更することが可能である。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記区画結合部は、前記両布帛部を断続的に接着することにより形成され、前記排気孔は、前記区画結合部において隣り合う接着部分間に形成されることを要旨とする。
【0022】
上記の構成によれば、両布帛部が断続的に接着されることにより同布帛部が環状に結合されて、区画結合部が形成される。そして、両布帛部間であって、区画結合部において隣り合う接着部分間が排気孔となる。膨張部内の膨張用ガスは、これらの排気孔を通じて非膨張部へ排出される。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記エアバッグは袋織りにより形成されるものであり、前記排気孔を有する区画結合部は、前記エアバッグを袋織りする過程で形成されるものであり、前記排気孔は、前記袋織りの隣合う接結部間に形成されることを要旨とする。
【0024】
上記の構成によれば、エアバッグを袋織りする過程で両布帛部が断続的に結合されて、環状の区画結合部が形成される。そして、両布帛部間であって、区画結合部において隣り合う接結部間が排気孔となる。膨張部内の膨張用ガスは、これらの排気孔を通じて非膨張部へ排出される。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明において、前記エアバッグは、車両の座席に着座した乗員と同車両のボディサイド部との間で膨張するサイドエアバッグであり、前記非膨張部は、前記サイドエアバッグにおいて前記乗員の腕部、胸部及び腹部の少なくとも1つに対応する箇所に設けられることを要旨とする。
【0026】
上記の構成によれば、側突等により車両に対し側方から衝撃が加わると、エアバッグの膨張部に膨張用ガスが供給される。この膨張用ガスにより、車両のボディサイド部と座席に着座した乗員との間でエアバッグが膨張展開し、ボディサイド部を通じて乗員へ伝わる車両側方からの衝撃が緩和される。この際、エアバッグの多くの部分では車幅方向の厚みが増すが、乗員の腕部、胸部、腹部の少なくともいずれか1つに対応する箇所に設けられた非膨張部では車幅方向の厚みが増さない。そのため、エアバッグによって腕部を通じて間接的に、又は直接的に、乗員側部のうち耐衝撃性のあまり高くない胸部や腹部が圧迫されにくい。このように非膨張部は、膨張部内の膨張用ガスを、保護対象から遠い側の布帛部を通じてエアバッグの外部へ排出するほか、エアバッグが腕部を介して胸部や腹部を圧迫するのを抑制する。
【0027】
そのため、腕部に対応する箇所の厚みを小さくすることで、胸部や腹部を圧迫するのを抑制する構成をもともと備えたエアバッグの場合には、その構成とは別の箇所に、膨張部内の膨張用ガスを保護対象から遠い側の布帛部を通じてエアバッグの外部へ排出する構成を設けなくてもすむ。
【0028】
なお、前記エアバッグは、請求項7に記載の発明によるように、車両の座席に着座した乗員の頭部と、同車両の車室内の側部との間でカーテン状に膨張することにより同頭部を保護する頭部保護用エアバッグ、前記車両の最後部座席の後方近傍で膨張することにより同乗員を保護する後突用エアバッグ、前記車両と歩行者との間で膨張することにより同歩行者を保護する歩行者保護用エアバッグのいずれかであってもよい。この場合、前記頭部保護用エアバッグ、前記後突用エアバッグ、及び前記歩行者保護用エアバッグの各前記保護領域が複数の領域に区画され、前記非膨張部が、前記頭部保護用エアバッグ、前記後突用エアバッグ、及び前記歩行者保護用エアバッグにおいて、前記保護領域を区画する区画部に対応する箇所に設けられてもよい。
【0029】
通常、頭部保護用エアバッグ、後突用エアバッグ、及び歩行者保護用エアバッグの各保護領域では、これを複数の領域に区画する区画部が設けられていて、その区画部では厚みが他の箇所よりも小さく設定される。そのため、エアバッグにおいて区画部に対応する厚みの小さな箇所であれば、他の箇所に比べ非膨張部を容易に設けることが可能である。
【0030】
また、前記エアバッグは、請求項8に記載の発明によるように、車両の座席に着座した乗員の前下方で膨張することにより、同乗員の脛部から膝部にかけての部位を保護する膝保護用エアバッグであってもよい。この場合、前記非膨張部は前記膝保護用エアバッグにおいて前記乗員の前記脛部に対応する箇所に設けられてもよい。
【0031】
通常、膝保護用エアバッグでは、乗員の膝部に対応する箇所の厚みが大きく設定され、脛部に対応する箇所の厚みが小さく設定される。そのため、同エアバッグにおいて膝部に対応する厚みの小さな箇所であれば、他の箇所に比べ非膨張部を容易に設けることが可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明のエアバッグ装置によれば、膨張用ガスが保護対象側に直接排出されるのを抑制しつつ、車両構成物により排気孔が塞がれるのを確実に抑制することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明をサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を車両前方として説明する。
【0034】
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、車両10においてボディサイド部11の車内側の近傍には、座席(車両用シート)12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両10の側部に配置された部材を指す。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リアドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リアクォータ等である。
【0035】
上記座席12は、シートクッション(座部)13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾き調整機構(図示略)を有するシートバック(背もたれ部)14とを備えて構成されている。シートバック14の車外側の側部には収納部15が設けられており、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMがこの収納部15に収容されている。収納部15の位置は、座席12に着座した乗員Pの斜め後方近傍となる。
【0036】
エアバッグモジュールAMは、図4(A)に示すように、インフレータアセンブリ20及びサイドエアバッグ(以下、単に「エアバッグ」という)30を主要な構成部材として備えている。
【0037】
次に、これらの構成部材の各々について説明する。ここで、本実施形態では、エアバッグモジュールAM及びその構成部材について「上下方向」、「前後方向」というときは、座席12のシートバック14を基準としている。シートバック14の起立する方向を「上下方向」とし、この方向に対し車両10の略前後方向に直交する方向を「前後方向」としている。通常、シートバック14は傾斜した状態で使用されることから、「上下方向」は厳密には鉛直方向ではなく、多少傾斜している。同様に、「前後方向」は厳密には水平方向ではなく、多少傾斜している。
【0038】
<インフレータアセンブリ20>
図5及び図6の少なくとも一方に示すように、インフレータアセンブリ20は、ガス発生源としてのインフレータ21と、そのインフレータ21の外側に装着されたリテーナ22とを備えて構成されている。インフレータ21は、略上下方向に細長い略円柱状をなしており、その内部には、外部からの作動信号に応じて反応して膨張用ガスGを生ずるガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ21の上部には、生成した膨張用ガスGを径方向外方へ噴出する複数のガス噴出孔23が設けられている。インフレータ21の下端部にはコネクタ部24が設けられており、同インフレータ21への制御信号の印加配線となるハーネス25がコネクタ部24に接続されている。
【0039】
なお、インフレータ21としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスGを噴出させるタイプが用いられてもよい。
【0040】
一方、リテーナ22は、ディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ21をエアバッグ30と一緒にシートバック14内のシートフレーム16(図6の二点鎖線参照)に固定する機能を有する部材である。リテーナ22の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって上下方向に細長い略筒状に形成されている。リテーナ22の上部前側には、インフレータ21の一部のガス噴出孔23をリテーナ22から露出させる窓部26が設けられており、ガス噴出孔23からの膨張用ガスGが、この窓部26を通じ概ね車両前方へ向けて導出される。
【0041】
リテーナ22には、これを上記シートフレーム16に取付けるための係止部材として、複数本(本実施形態では2本)のボルト27が固定されている。表現を変えると、両ボルト27が、リテーナ22を介してインフレータ21に間接的に固定されている。これらのボルト27は、インフレータ21の軸線に直交する方向へ向けて延びている。
【0042】
なお、インフレータアセンブリ20は、インフレータ21とリテーナ22とが一体になったものであってもよい。
<エアバッグ30>
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、エアバッグ30は、座席12に着座した乗員Pを保護対象とし、側突等により衝撃が車両10の外側方からボディサイド部11に加わったときに、インフレータ21からの膨張用ガスGにより膨張展開する。そして、エアバッグ30は、自身の一部(後部)を収納部15内に残した状態で同収納部15から略前方へ向けて飛び出し、乗員P及びボディサイド部11間で膨張展開することにより乗員Pを拘束して上記衝撃から保護するためのものである。
【0043】
図4(A)は、エアバッグ30が膨張用ガスGを充填させることなく展開させられた状態のエアバッグモジュールAMを模式的に示している。また、図7は、エアバッグ30の製作途中の状態を示している。これらの図4(A)及び図7の少なくとも一方に示すように、エアバッグ30は、単一の布帛からなるパネル布(基布とも呼ばれる)31を、その中央部分に設定した折り線32に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ30の上記の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを車内側布帛部33といい、車外側に位置するものを車外側布帛部34というものとする。パネル布31においては、車内側布帛部33及び車外側布帛部34の外形形状が、折り線32を対称軸として互いに線対称の関係にある。なお、車内側布帛部33及び車外側布帛部34を特に区別する必要がない場合には、単に「布帛部33,34」と記載する。
【0044】
上記パネル布31としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。車内側布帛部33及び車外側布帛部34の形状・大きさは、エアバッグ30が座席12及びボディサイド部11間で膨張展開したときに、座席12に着座している乗員Pの外側方近傍で、腹部PBから肩部PSに対応する領域を占有し得るように設定されている(図4(A)参照)。
【0045】
車内側布帛部33において、上記折り線32の近傍の上下方向に互いに離間した2箇所には、ボルト孔35があけられている。
車内側布帛部33及び車外側布帛部34の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部36においてなされている。本実施形態では、周縁結合部36は、車内側布帛部33及び車外側布帛部34の周縁部のうち後縁部を除く大部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。この周縁結合部36は太い破線で図示されている。後述する区画結合部39についても同様である。車内側布帛部33及び車外側布帛部34間であって、周縁結合部36によって囲まれた空間は、衝撃から乗員Pを保護するための保護領域Zとなっている。
【0046】
なお、エアバッグ30は、互いに独立した一対のパネル布31を車幅方向に重ね合わせ、車内側に位置するパネル布31を車内側布帛部33とし、車外側に位置するパネル布31を車外側布帛部34とし、両布帛部33,34を袋状となるように結合させることにより形成されたものであってもよい。また、周縁結合部36は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。
【0047】
上記エアバッグ30において、車内側布帛部33の内側の前下部には、環状の補強布37が配置されている。同様に、上記エアバッグ30において、車外側布帛部34の内側の前下部には環状の補強布38が配置されている。各補強布37,38は、上記折り線32を対称軸として互いに線対称の関係にある。両補強布37,38の配置箇所は、標準的な体格を有する乗員P(大人)が、標準的な姿勢で着座しているときの腕部(上腕部)PAの側方近傍に対応する箇所である。例えば、運転者がステアリングホイールを握ったときの姿勢を、標準的な姿勢とすることができる。補強布37は、上記箇所において車内側布帛部33に接着され、同車内側布帛部33に密着している。また、補強布38は、上記箇所において車外側布帛部34に接着され、同車外側布帛部34に密着している。
【0048】
なお、上記両補強布37,38を布帛部33,34に接着しない場合には、両補強布37,38が分かれて対応する布帛部33,34に密着するか、又は両補強布37,38が分かれず、重なった状態で一方の布帛部33(又は34)のみに密着するような構成とすることが望ましい。
【0049】
上記折り線32に沿って重ね合わされた両布帛部33,34と、それらの間に配置された両補強布37,38とは、同補強布37,38に沿って環状に設けられた区画結合部39によって、一体に結合されている。区画結合部39は、図4(A),(B)及び図8(A)の少なくとも1つに示すように、上述した周縁結合部36と同様にして、両布帛部33,34及び両補強布37,38を縫糸で縫合(縫製)すること、すなわち、上糸41及び下糸42を交差させることにより形成されている。なお、図8(A)では、補強布37,38の図示が省略されている。前述したエアバッグ30の保護領域Zは、区画結合部39により囲まれ、かつ膨張用ガスGが供給されない非膨張部43と、区画結合部39よりも外側に位置し、かつ膨張用ガスGが供給されて膨張する膨張部44とに区画されている。
【0050】
本実施形態では、両布帛部33,34を断続的に結合することにより区画結合部39が形成されている。この形成により、両布帛部33,34間であって、区画結合部39における隣り合う結合部分間には、膨張部44内の膨張用ガスGを排気するための排気孔45が設けられている。より詳しくは、排気孔45は、前記縫製の上糸41と下糸42とが交差する交絡部位46同士の間(図8(A),(B)においてハッチングで示された部分K)によって構成されている。各部分Kの断面形状は、膨張部44における膨張用ガスGの充填状況に応じて変化する。
【0051】
膨張部44に膨張用ガスGが充填されていないときには、各部分Kの断面形状が図8(A)に示すように扁平となり、各排気孔45が閉じられた状態となる。なお、図8(A)では、布帛部33,34、上糸41、下糸42等の関係が模式的に描かれている。実際には、布帛部33,34は相互に密着した状態又はそれに近い状態となっている。これに対し、膨張部44に膨張用ガスGが充填されると、部分Kの断面形状が図8(B)に示すように略円形となり、各排気孔45が開かれた状態となる。
【0052】
ここで、排気孔45の流路面積は、交絡部位46同士間の間隔(縫い目長さ:ピッチP1)によって左右される。ピッチP1が短くなるに従い流路面積が小さくなり、過度に短くなると膨張用ガスGを排出する能力が損なわれる。反対に、ピッチP1が長くなるに従い流路面積が大きくなって膨張用ガスGの排出能が高くなる反面、両布帛部33,34を結合する強度(結合強度)が低下する。そのため、ピッチP1の設定に際しては、膨張用ガスGの排出能と結合強度とを両立できるような値に設定することが望ましい。具体的には、通常の結合としての縫製の場合、糸同士が交差する部位の間のピッチは、1.0〜2.0mm未満で設定される。本実施形態のように、この部位で排気孔45を形成する場合には、図4(B)及び図8(A)に示すように、ピッチP1は、2.0〜15.0mm程度に設定することが望ましく、5.0〜10.0mm程度に設定することがさらに望ましい。
【0053】
また、排気孔45の流路面積は、上糸41及び下糸42の少なくともいずれか一方の張力からも影響を受ける。張力が高い縫い目の場合には排気孔45の流路面積が小さくなる。
【0054】
さらに、図4(A),(B)及び図9(A)の少なくとも1つに示すように、両布帛部33,34のうち、乗員Pから遠い側の車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分の多くの部分が刳りぬかれている。この刳りぬきにより車外側布帛部34に孔47があけられている。これに対し、両布帛部33,34のうち、乗員Pに近い側の車内側布帛部33について、非膨張部43に対応する部分は刳りぬかれておらず閉塞されている。
【0055】
また、図4(A),(B)及び図7に示すように、孔47の端部(周縁)から区画結合部39までの距離(縫い代M1)は、2.0〜25.0mm程度に設定することが望ましく、5.0〜10.0mm程度に設定することがさらに望ましい。なお、縫い代M1における、糸同士が交差する部位の中間の部位に、孔47の端部(周縁)から区画結合部39までを切断したスリットSLや切欠部KK(図4(B)参照)を設けてもよい。これらスリットSLや切欠部KKを設けることで、さらに排気効率が向上する。さらに、孔47の周縁について、対向する2箇所の間隔の最小値を距離D1とすると、同距離D1は10mm以上であることが望ましく、25mm以上であることがさらに望ましい。
【0056】
図4(A)に示すように、インフレータアセンブリ20は、略上下方向へ延びる姿勢でエアバッグ30内に配置されている。そして、リテーナ22の2本のボルト27が、車内側布帛部33の対応するボルト孔35(図7参照)に挿通されている。こうした挿通により、インフレータアセンブリ20がエアバッグ30に対し位置決めされた状態で係止されている。さらに、エアバッグ30の後部下端は、環状の締結具28により、インフレータアセンブリ20の下部に気密状態で締付けられている。
【0057】
上記エアバッグモジュールAMは、展開状態のエアバッグ30(図4(A)参照)が図6に示すように折り畳まれることにより、コンパクトな収納用形態にされる。これは、エアバッグモジュールAMをシートバック14における限られた大きさの収納部15に確実に収納するためである。
【0058】
上記収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、リテーナ22のボルト27がシートフレーム16に挿通され、ナット17が締め付けられることにより、同シートフレーム16に固定されている。なお、リテーナ22は、上述したボルト27とは異なる部材によって車両10(シートフレーム16)に固定されてもよい。
【0059】
サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに図1に示す衝撃センサ51及び制御装置52を備えている。衝撃センサ51は加速度センサ等からなり、車両10のボディサイド部11(図2及び図3参照)等に取付けられており、ボディサイド部11に外側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づきインフレータ21の作動を制御する。
【0060】
上記のようにして、本実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。このサイドエアバッグ装置では、車両10のボディサイド部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52からインフレータ21に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ21では、図5及び図6に示すように、ガス発生剤が高温高圧の膨張用ガスGを発生し、これを複数のガス噴出孔23から径方向外方へ噴出しようとする。この際、複数のガス噴出孔23のうち後ろ側のものがリテーナ22によって閉塞され、前側のものが窓部26から露出している。そのため、前側のガス噴出孔23から膨張用ガスGが窓部26を通じ略車両前方へ向けて噴出される。この略車両前方には、前方のほか、前上方及び前下方も含まれる。
【0061】
噴出された膨張用ガスGは、エアバッグ30の保護領域Z(図4(A)参照)のうち膨張部44に供給されるが、非膨張部43には供給されない。そのため、エアバッグ30は、折り状態を解消(展開)しながら膨張し、自身の後端部を、インフレータアセンブリ20とともに収納部15内に残した状態でシートバック14から車両前方へ飛び出す。その後も膨張用ガスGの供給されるエアバッグ30は、図2及び図3の少なくとも一方に示すように、車両10のボディサイド部11と座席12に着座した乗員Pとの間で車両前方へ向けて膨張展開する。このエアバッグ30が、乗員Pと、車室内に侵入してくるボディサイド部11との間に介在する。このエアバッグ30によって乗員Pが車幅方向内側へ押圧されて拘束される。そして、ボディサイド部11を通じて乗員Pへ伝わる側方からの衝撃がエアバッグ30によって緩和される。
【0062】
この際、図9(B)に示すように、エアバッグ30の車幅方向(図9(B)では左右方向)の厚みは、非膨張部43で最小となり、膨張部44で非膨張部43よりも大きくなる。特に、膨張部44での厚みは、非膨張部43に近づくに従い小さくなる。膨張展開したエアバッグ30における非膨張部43の位置は、乗員Pの腕部PAと対応している(図4(A)参照)。そのため、標準体格を有する乗員P(大人)の腕部PAが非膨張部43に対応する箇所に位置している状況下でエアバッグ30が膨張展開した場合には、その乗員Pの腕部PAがエアバッグ30によって車幅方向内側へ過度に押されることがない。腕部PAの車幅方向内側は、耐衝撃性のあまり高くない腹部PBや胸部PTであるが、これらが腕部PAによって過度に圧迫されることが起こりにくく、胸部PTや腹部PBのエアバッグ30による保護が適切に行なわれる。
【0063】
ここで、図8(A),(B)の少なくとも一方に示すように、両布帛部33,34を縫製すること、すなわち、上糸41と下糸42とを一定間隔毎に多数の箇所で交差させることにより、両布帛部33,34が断続的に結合されている。本実施形態では、円環状に縫製が行なわれている。この縫製による両布帛部33,34の結合により環状の区画結合部39が形成されている。そして、区画結合部39における隣り合う結合部分間、ここでは、上糸41と下糸42とが交差する交絡部位46同士の間(部分K)が排気孔45となる。膨張部44と非膨張部43とが、これらの排気孔45を通じて相互に連通している。そのため、膨張部44に供給されて、その膨張に供された膨張用ガスGは、これらの排気孔45において両布帛部33,34を押し広げる。排気孔45が開き、膨張用ガスGが排気孔45を通過して非膨張部43側へ排出可能である。しかも、排気孔45が設けられた区画結合部39は、膨張部44と非膨張部43との境界部分に位置していることから、同排気孔45は、膨張状態のエアバッグ30において厚みの最小となる箇所に位置している。
【0064】
さらに、非膨張部43では、乗員Pから遠い側の車外側布帛部34が刳りぬかれている一方、乗員Pに近い側の車内側布帛部33は刳りぬかれておらず、閉塞されている。乗員Pから遠い側の車外側布帛部34では、刳りぬかれた部分(孔47)を通って膨張用ガスGの流通が可能であるのに対し、乗員Pに近い側の車内側布帛部33では、こうした膨張用ガスGの流通が規制される。そのため、膨張部44から区画結合部39の排気孔45を通って非膨張部43へ排出された膨張用ガスGは、専ら孔47を通り、エアバッグ30を挟んで乗員Pとは反対側(車外側)へ排出されることとなり、乗員P側への膨張用ガスGの排出が略完全に抑制される。
【0065】
よって、エアバッグ30が膨張して、同エアバッグ30を挟んで乗員Pとは反対側(車外側)の車両構成物(ボディサイド部11)に接触したとしても、排気孔45は採り得る範囲のうち同車両構成物(ボディサイド部11)から最も遠ざかった箇所に位置することとなる。その結果、膨張用ガスGが乗員P側に直接的に排出されないばかりか、排気孔45が車両構成物(ボディサイド部11)によって塞がれにくくなる。
【0066】
この点において、本実施形態は、エアバッグの膨張展開時に、車両のボディサイド部から離間する箇所に排気孔を設ける上記特許文献1や、内側接合部の内側にベントホールを設け、内側接合部に内部開口部を設ける上記特許文献2と異なる。
【0067】
特に、本実施形態は次の点で特許文献2とは異なる。ここでは、特許文献2に記載された事項を、比較例(図9(C)参照)として説明する。
図9(C)に示すように、比較例では、車内側及び車外側の基布(布帛部33,34)が内側接合部(区画結合部39)によって複数のバッグ内空間部(膨張部44、非膨張部43)に区画されている。車外側の基布(布帛部34)において、内側接合部(区画結合部39)の内側位置にはベントホール(孔47)が形成されるとともに、内側接合部(区画結合部39)自体に内部開口部(排気孔45)が形成されている。そして、ベントホール(孔47)は、内部開口部(排気孔45)を介してバッグ内空間部(非膨張部43)に導入された膨張用ガスをエアバッグの外部へ排出する。なお、括弧内の部材は、本実施形において対応する部材名である。
【0068】
しかし、比較例では、ベントホールの端部(周縁)から内側接合部までの距離(縫い代M1)が大きい。表現を変えると、ベントホール(排気孔)の周り、すなわち、車外側の基布において、ベントホールの周縁と内側接合部との間に膨張可能な布部(厚みを生じ得る布部)が多く残っている。そのため、内部開口部を介して流入する膨張用ガスによりバッグ内空間部が膨張して、車幅方向の厚みが増す。これに伴い、ベントホールが車外側へ変位する。車外側の基布がボディサイド部に接触するとベントホールが塞がれやすく、排気の継続が困難となる。
【0069】
この点、縫い代M1が小さな本実施形態では、図9(B)に示すように、孔47の周縁と区画結合部39との間に膨張可能な布帛部(厚みを生じ得る布帛部)は僅か(必要最小限)にしか残っていない。そのため、排気孔45を介して膨張用ガスGが流入しても、非膨張部43が膨張して車幅方向の厚みが増すことはない。孔47は車外側へ変位しにくく、膨張部44における車外側布帛部34がボディサイド部11に接触しても、孔47が塞がれにくい。膨張用ガスGの排気が良好に継続される。
【0070】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)互いに重ね合わされた車内側布帛部33及び車外側布帛部34を断続的に結合することにより区画結合部39を形成することで、両布帛部33,34間であって、区画結合部39における隣り合う結合部分(交絡部位46)間に、膨張部44内の膨張用ガスGを非膨張部43側へ排気するための排気孔45を設けている。また、両布帛部33,34のうち、保護対象(乗員P)から遠い側の車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分の多くを刳りぬいて孔47をあけている。そのため、膨張用ガスGが保護対象(乗員P)側に直接排出されるのを抑制しつつ、車両構成物(ボディサイド部11)によって排気孔45が塞がれるのを確実に抑制することができる。その結果、膨張用ガスGを適切にエアバッグ30の外部へ排出させて、膨張部44の内圧を、保護対象(乗員P)の保護にとって望ましい値にまで低下させることができる。
【0071】
(2)両布帛部33,34のうち、保護対象(乗員P)に近い側である車内側の布帛部33,34について、非膨張部43に対応する部分を閉塞している。そのため、膨張部44から排気孔45を通って非膨張部43へ排出された膨張用ガスGが保護対象(乗員P)側へ排出されるのを、略完全に抑制することができる。非膨張部43の膨張用ガスGのほとんどを、保護対象(乗員P)から遠い側である車外側へ排出することができる。
【0072】
(3)両布帛部33,34を縫製することにより区画結合部39を形成している。そして、縫製の上糸41と下糸42とが交差する交絡部位46同士の間を排気孔45としている。そのため、膨張部44の膨張用ガスGを、これらの排気孔45を通過させて非膨張部43へ確実に排出することができる。
【0073】
また、縫製の場合には、上糸41及び下糸42の縫い目長さ(ピッチP1)を調整することで、交絡部位46同士の間隔を変えて、排気孔45の大きさ(流路面積)を簡単に変更することができる利点もある。
【0074】
(4)エアバッグ30を、車両10の座席12に着座した乗員Pと車両10のボディサイド部11との間で膨張させるもの(サイドエアバッグ30)としている。そして、非膨張部43を、エアバッグ30において乗員Pの腕部PAに対応する箇所に設けることで、非膨張部43が、膨張部44内の膨張用ガスGを保護対象(乗員P)から遠い側の車外側布帛部34を通じてエアバッグ30の外部へ排出するだけでなく、エアバッグ30が腕部PAを介して胸部PTや腹部PBを圧迫するのを抑制するようにしている。そのため、胸部PTや腹部PBを圧迫するのを抑制する構成(腕押し抑制シーム等)をもともと備えたエアバッグ30の場合には、その構成とは別の箇所に、膨張部44内の膨張用ガスGを、車外側布帛部34を通じてエアバッグ30の外部へ排出する構成を設けなくてもすむ。
【0075】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<インフレータアセンブリ20について>
・エアバッグ装置は、インフレータアセンブリ20がエアバッグ30の外部に配置されたものであってもよい。この場合には、インフレータ21とエアバッグ30とをパイプ等によって繋ぎ、インフレータ21から噴出された膨張用ガスGを、パイプ等を通じてエアバッグ30に供給してもよい。
【0076】
<区画結合部39について>
・区画結合部39の側面形状を、環状であることを条件に、上記実施形態(略扇形状)とは異なる形状、例えば円形状、楕円形状、三角形状等に変更してもよい。
【0077】
・図10(A)は、エアバッグ30を車外側から見たときの区画結合部39の近傍部分を示している。また、図10(B),(C)は、区画結合部39を図10(A)の矢印E方向から見た状態を拡大して示している。これらの図10(A)〜(C)の少なくとも1つに示すように、縫製に代え、両布帛部33,34を断続的に接着することにより結合させて環状の区画結合部39を形成してもよい。この場合、区画結合部39において隣り合う接着部分61間を排気孔45とする。このようにすると、膨張部44内の膨張用ガスGを、排気孔45を通じ非膨張部43へ排出させることが可能である。
【0078】
・図11(A)は、エアバッグ30を車外側から見たときの区画結合部39の近傍部分を示している。また、図11(B),(C)は、区画結合部39を図11(A)の矢印F方向から見た状態を拡大して示している。これらの図11(A)〜(C)の少なくとも1つに示すように、エアバッグ30を袋織りにより形成し、その袋織りの過程で、排気孔45を有する区画結合部39も一緒に形成してもよい。この場合、区画結合部39において、袋織りの隣り合う接結部62間を排気孔45とする。このようにしても、膨張部44内の膨張用ガスGを、排気孔45を通じ非膨張部43へ排出させることが可能である。
【0079】
ここで、図12(A),(B)は、図11(A)のS−S線に沿った断面構造を示す図であって、袋織りによってエアバッグ30を形成した後に、車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分を刳りぬく工程を示している。
【0080】
エアバッグ30を袋織りした後には、図12(A)に示すように、両布帛部33,34のうち、保護対象から遠い側(図12(A)の上側)の車外側布帛部34について、区画結合部39により囲まれた部分の少なくとも一部43Aをカットする。カットしたこの一部43Aを、二点鎖線の矢印で示すように、エアバッグ30(車外側布帛部34)から分離する。この分離により、車外側布帛部34において区画結合部39によって囲まれた部分の多くが刳りぬかれた状態となり、図12(B)に示すように孔47が形成される。その結果、上記実施形態と同様、膨張部44から排気孔45を通じて非膨張部43へ排出された膨張用ガスGは、孔47を通って車外側へ排出される。
【0081】
・サイドエアバッグ30において、非膨張部43を上記実施形態とは異なる箇所に設けてもよい。この場合、非膨張部43を、乗員Pの腕部PA、胸部PT及び腹部PBの少なくともいずれか1つに対応する箇所に設けると、同非膨張部43を腕部PAに対応する箇所に設けた上記実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、胸部PTや腹部PBが圧迫されるのを抑制する構成をもともと備えたエアバッグ30の場合、その構成とは別の箇所に、膨張部44内の膨張用ガスGを保護対象から遠い側の車外側布帛部34を通じてエアバッグ30の外部へ排出する構成を設けなくてもすむ。
【0082】
<補強布37,38について>
・補強布37,38の使用を省略してもよい。この場合、互いに重ね合わされた車内側布帛部33及び車外側布帛部34を直接結合して、区画結合部39を形成してもよい。また、使用する補強布37,38の枚数を3枚以上に変更してもよい。
【0083】
<エアバッグモジュールAMの収容箇所について>
・座席12のシートバック14に代えて、ボディサイド部11にエアバッグモジュールAMの収納部15を設けてもよい。
【0084】
<本発明の適用対象となるエアバッグの種類について>
・本発明は、サイドエアバッグ30のほかにも、頭部保護用エアバッグ65、後突用エアバッグ70、前滑り抑制用エアバッグ75、歩行者保護用エアバッグ80〜83にも適用可能である。
【0085】
図13に示す頭部保護用エアバッグ65は、車体のフロントピラー、ルーフサイドレール及びクォーターピラーに収納されている。頭部保護用エアバッグ65の保護領域Zは、区画部65Bによって複数の領域65Aに区画されている。側突等により車両に側方から衝撃が加わると、頭部保護用エアバッグ65は膨張用ガスにより、車室内の側部にてカーテン状に膨張展開して、前席乗員の頭部と後席乗員の頭部とを保護する。
【0086】
この頭部保護用エアバッグ65では、区画結合部39が区画部65Bの近傍に設けられている。これは、区画部65Bの近傍では、頭部保護用エアバッグ65の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0087】
図14及び図15に示す後突用エアバッグ70は、車両10のルーフ71の後部に収納されている。後突用エアバッグ70の保護領域Zは、区画部70Bによって複数の領域70Aに区画されている。車両10に対し後方から衝撃が加わると、後突用エアバッグ70は膨張用ガスによりルーフ71から出て、最後部座席12Rの後方近傍でリヤウインドウ72の多くの領域を覆うようにして膨張展開する。最後部座席12Rに着座している乗員Pとリヤウインドウ72とが後突用エアバッグ70を介して隔離される。従って、膨張展開された後突用エアバッグ70により、車両10に対し後方から加えられた衝撃が吸収されるだけでなく、後方からの飛散物や、侵入物等による車室内への影響が低減される。さらには、乗員Pの後方への姿勢変化が抑制される。
【0088】
この後突用エアバッグ70では、区画結合部39が区画部70Bの近傍に設けられている。これは、区画部70Bの近傍では、後突用エアバッグ70の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0089】
図16及び図17に示す前滑り抑制用エアバッグ75は、1枚のパネル布73を、その中央部分に設定した折り線74に沿って折り返して上下方向に重ね合わせ、周縁結合部79によって結合することによって形成されている。パネル布73内であって、周縁結合部79によって囲まれた領域は保護領域Zとなる。保護領域Zは、区画部75Bによって複数の領域75Aに区画されている。
【0090】
この前滑り抑制用エアバッグ75は、座席12のシートクッション13におけるシートクッションパッド18とシートパン76との間に収納されている。前突等により、車両10に前方から衝撃が加わったことがセンサによって検知されると、前滑り抑制用エアバッグ75は膨張用ガスにより膨張して、同シートクッション13の座面13Aを隆起させる。この隆起により、乗員Pの大腿部PFの前部が上方へ押圧されてシートベルト装置77のラップベルト部78に押し付けられる。ラップベルト部78の拘束力が高められ、腰部PPが前方へ滑る現象(サブマリン現象)が抑制される。
【0091】
この前滑り抑制用エアバッグ75では、区画結合部39が区画部75Bの近傍に設けられている。これは、区画部75Bの近傍では、前滑り抑制用エアバッグ75の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0092】
図18〜図20に示す歩行者保護用エアバッグ80〜83は、歩行者85(図19参照)を保護対象とし、車両10と歩行者85との間で膨張することにより同歩行者85を保護する。
【0093】
図18に示す歩行者保護用エアバッグ80は、車両10のフードパネル86とフロントガラス87との間のカウル88に収納されている。歩行者保護用エアバッグ80の保護領域Zは、区画部80Bによって複数の領域80Aに区画されている。歩行者85の車両10との接触がセンサによって検知されると、歩行者保護用エアバッグ80が膨張用ガスにより膨張展開し、そのピラーカバー部89がフロントピラー91の前面を覆い、フードカバー部92がフードパネル86の上面を覆う。これらのピラーカバー部89及びフードカバー部92は、歩行者保護用エアバッグ80における膨張部に該当する。歩行者85が、硬質のフロントピラー91やフードパネル86側の固い部品と接触することを歩行者保護用エアバッグ80によって抑制されて、その接触に伴う衝撃から保護される。
【0094】
この歩行者保護用エアバッグ80では、区画結合部39が区画部80Bの近傍に設けられている。これは、区画部80Bの近傍では、歩行者保護用エアバッグ80の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0095】
図19において二点鎖線で示す歩行者保護用エアバッグ81は、車両10の前面側、例えばフロントバンパ93の内部に収納されている。歩行者保護用エアバッグ81の保護領域Zは、区画部81Bによって複数の領域81Aに区画されている。歩行者85の車両10への接近がセンサによって検知されると、歩行者保護用エアバッグ81は膨張用ガスによりフロントバンパ93から出て、車両10の前面を覆うように略鉛直方向へ膨張展開する。歩行者85は歩行者保護用エアバッグ81と接触した場合、上半身と下半身とを大きく屈曲させるような衝撃を受けにくい。
【0096】
この歩行者保護用エアバッグ81では、区画結合部39が区画部81Bの近傍に設けられている。これは、区画部81Bの近傍では、歩行者保護用エアバッグ81の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0097】
図20において二点鎖線で示す一方(車両前方側)の歩行者保護用エアバッグ82は、車両10のフロントバンパ93に収納されている。歩行者保護用エアバッグ82の保護領域Zは、区画部82Bによって複数の領域82Aに区画されている。歩行者85の車両10への接近がセンサによって検知されると、歩行者保護用エアバッグ82は膨張用ガスによりフロントバンパ93から出て、フロントグリル94付近の前面からフードパネル86の前部側上面を覆うように膨張する。歩行者85は、車両10のフロントグリル94やフードパネル86の前部側に直接接触することを歩行者保護用エアバッグ82によって抑制されて、接触に伴う衝撃から保護される。
【0098】
図20において二点鎖線で示す他方(車両後方側)の歩行者保護用エアバッグ83は、車両のカウル88付近におけるフードパネル86内に収納されている。歩行者保護用エアバッグ83の保護領域Zは、区画部83Bによって複数の領域83Aに区画されている。歩行者85の車両10への接近がセンサによって検知されると、フードパネル86が開口されるとともに、歩行者保護用エアバッグ83が膨張用ガスにより、フードパネル86の後部上面付近からフロントガラス87の下部前面付近まで覆うように膨張する。歩行者85は、カウル88付近に接触することを歩行者保護用エアバッグ83によって抑制されて、その接触に伴う衝撃から保護される。
【0099】
上記2種の歩行者保護用エアバッグ82,83では、区画結合部39が区画部82B,83Bの近傍に設けられている。これは、区画部82B,83Bの近傍では、歩行者保護用エアバッグ82,83の他の箇所よりも厚みが小さく、厚みの大きな膨張部44と、厚みの小さな非膨張部43とを区画する区画結合部39を他の箇所よりも設定しやすいからである。
【0100】
・本発明は、図21及び図22に示す膝保護用エアバッグ100にも適用可能である。膝保護用エアバッグ100は、車両10の座席12に着座した乗員Pの前下方で膨張することにより、同乗員Pの脛部PDから膝部PKにかけての部位を保護するものである。膝保護用エアバッグ100は、例えば運転者の車両前方側であるステアリングコラム101の下方に設けられた収納部103に収納されている。なお、この収納部103は、インストルメントパネルにおいて助手席の乗員Pの前下方に設けられてもよい。前突等により、車両10に前方から衝撃が加わったことが検知されると、膝保護用エアバッグ100は膨張用ガスGにより膨張を開始し、収納部103から後方側へ出て、乗員Pとステアリングコラム101との間において、乗員Pの両足の脛部PDから膝部PKにかけての領域で膨張展開する。
【0101】
この場合、非膨張部43は、膝保護用エアバッグ100において乗員Pの脛部PDに対応する箇所に設けられることが望ましい。膝保護用エアバッグ100では、通常、乗員Pの膝部PKに対応する箇所の厚みが大きく設定され(換言すれば、膨張部44にて膝部PKが保護され)、脛部PDに対応する箇所の厚みが小さく設定されるため、同膝保護用エアバッグ100において膝部PKに対応する箇所であれば、他の箇所に比べ非膨張部43を設けることが容易だからである。
【0102】
<その他の事項>
・サイドエアバッグ30は、乗員Pの胸部PT及び腹部PBを含み、それよりも広い部位を拘束(保護)するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明をサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態において、同サイドエアバッグ装置が装備された座席を乗員とともに示す概略側面図。
【図2】座席及びボディサイド部の位置関係を乗員とともに示す概略平断面図。
【図3】同じく、座席及びボディサイド部の位置関係を乗員とともに示す概略正断面図。
【図4】(A)はエアバッグが膨張用ガスを充填させることなく展開させられた状態のエアバッグモジュールを、乗員とともに模式的に示す側面図、(B)は(A)におけるQ部を拡大して示す部分側面図。
【図5】図4(A)におけるインフレータアセンブリの概略側面図。
【図6】図5のインフレータアセンブリを、斜め後ろ上方から見た状態を、エアバッグ、シートフレーム、ボルト等とともに示す概略平面図。
【図7】エアバッグモジュールを製作する途中の状態を示す図であり、展開状態のパネル布と、補強布と、インフレータアセンブリとの位置関係を示す展開図。
【図8】(A)は、膨張部に膨張用ガスが充填されないときの区画結合部の状態を示す概略断面図、(B)は、膨張部に膨張用ガスが充填されたときの区画結合部の状態を示す概略断面図。
【図9】(A)は図4(A)におけるR−R線に沿った断面構造を示す概略断面図、(B)は膨張用ガスが排気孔を通過するときのエアバッグの状態を示す概略断面図、(C)は比較例のエアバッグが膨張するもののボディサイド部により孔が塞がれる状態を示す概略断面図。
【図10】接着により区画結合部を形成した別の実施形態を示す図であり、(A)はエアバッグを車外側から見たときの区画結合部の近傍部分を示す部分側面図、(B)は区画結合部を(A)の矢印E方向から見た図であって、膨張部に膨張用ガスが充填されないときの区画結合部の状態を示す概略断面図、(C)は膨張部に膨張用ガスが充填されたときの区画結合部の状態を示す概略断面図。
【図11】袋織りにより区画結合部を形成した別の実施形態を示す図であり、(A)はエアバッグを車外側から見たときの区画結合部の近傍部分を示す部分側面図、(B)は区画結合部を(A)の矢印F方向から見た図であって、膨張部に膨張用ガスが充填されないときの区画結合部の状態を示す概略断面図、(C)は膨張部に膨張用ガスが充填されたときの区画結合部の状態を示す概略断面図。
【図12】図11(A)のS−S線に沿った断面構造を示す図であって、(A)は車外側布帛部に孔を形成する前の状態を示す部分断面図、(B)は布帛部の一部を刳りぬいて孔を形成した後の状態を示す部分断面図。
【図13】エアバッグとして頭部保護用エアバッグを用いた別の実施形態を示す側面図。
【図14】エアバッグとして後突用エアバッグを用いた別の実施形態において、同後突用エアバッグが装備された車両後部を示す部分側面図。
【図15】図14の車両を後方から見た状態を示す背面図。
【図16】エアバッグとして前滑り抑制用エアバッグを用いた別の実施形態において、同前滑り抑制用エアバッグを上方から見た状態を示す平面図。
【図17】前滑り抑制用エアバッグが装備された座席を、乗員とともに示す側断面図。
【図18】エアバッグとして歩行者保護用エアバッグを用いた別の実施形態において、同歩行者保護用エアバッグを車両とともに示す部分斜視図。
【図19】エアバッグとして歩行者保護用エアバッグを用いた別の実施形態において、同歩行者保護用エアバッグを歩行者及び車両とともに示す部分側面図。
【図20】エアバッグとして歩行者保護用エアバッグを用いた別の実施形態において、同歩行者保護用エアバッグを車両とともに示す部分側面図。
【図21】エアバッグとして膝保護用エアバッグを用いた別の実施形態において、膨張展開状態の同膝保護用エアバッグを下方から見た状態を示す底面図。
【図22】膝保護用エアバッグが装備されたステアリングコラムの近傍部分を乗員の膝部とともに示す部分側面図。
【符号の説明】
【0104】
10…車両、11…ボディサイド部、12…座席、12R…最後部座席、30…(サイド)エアバッグ、33…車内側布帛部、34…車外側布帛部、39…区画結合部、41…上糸、42…下糸、43…非膨張部、44…膨張部、45…排気孔、46…交絡部位、61…接着部分、62…接結部、65…頭部保護用エアバッグ、65A,70A,75A,80A〜83A…領域、65B,70B,75B,80B〜83B…区画部、70…後突用エアバッグ、75…前滑り抑制用エアバッグ、80〜83…歩行者保護用エアバッグ、85…歩行者(保護対象)、100…膝保護用エアバッグ、G…膨張用ガス、P…乗員(保護対象)、PA…腕部、PB…腹部、PD…脛部、PH…頭部、PK…膝部、PT…胸部、Z…保護領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わされた一対の布帛部により袋状に形成され、かつ衝撃から保護対象を保護するための保護領域が設けられたエアバッグを備え、
前記エアバッグには、両布帛部を環状に結合する区画結合部が設けられており、前記保護領域が、前記区画結合部により囲まれ、かつ膨張用ガスが供給されない非膨張部と、前記区画結合部よりも外側に位置し、かつ膨張用ガスが供給されて膨張する膨張部とに区画されており、
前記両布帛部を断続的に結合することにより前記区画結合部が形成されることで、両布帛部間であって、前記区画結合部における隣り合う結合部分間には、前記膨張部内の前記膨張用ガスを前記非膨張部側へ排気するための排気孔が設けられており、
さらに、前記両布帛部のうち、前記保護対象から遠い側の布帛部について、前記区画結合部により囲まれた部分の少なくとも一部が刳りぬかれていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記両布帛部のうち、前記保護対象に近い側の布帛部について、前記非膨張部に対応する部分は閉塞されている請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記区画結合部は、前記両布帛部を縫製することにより形成され、
前記排気孔は、前記縫製の上糸と下糸とが交差する交絡部位同士の間に形成される請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記区画結合部は、前記両布帛部を断続的に接着することにより形成され、
前記排気孔は、前記区画結合部において隣り合う接着部分間に形成される請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグは袋織りにより形成されるものであり、
前記排気孔を有する区画結合部は、前記エアバッグを袋織りする過程で形成されるものであり、
前記排気孔は、前記袋織りの隣合う接結部間に形成される請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグは、車両の座席に着座した乗員と同車両のボディサイド部との間で膨張するサイドエアバッグであり、
前記非膨張部は、前記サイドエアバッグにおいて前記乗員の腕部、胸部及び腹部の少なくとも1つに対応する箇所に設けられる請求項1〜5のいずれか1つに記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグは、車両の座席に着座した乗員の頭部と、同車両の車室内の側部との間でカーテン状に膨張することにより同頭部を保護する頭部保護用エアバッグ、前記車両の最後部座席の後方近傍で膨張することにより同乗員を保護する後突用エアバッグ、前記車両と歩行者との間で膨張することにより同歩行者を保護する歩行者保護用エアバッグのいずれかであり、
前記頭部保護用エアバッグ、前記後突用エアバッグ、及び前記歩行者保護用エアバッグの各前記保護領域は複数の領域に区画されており、
前記非膨張部は、前記頭部保護用エアバッグ、前記後突用エアバッグ、及び前記歩行者保護用エアバッグにおいて、前記保護領域を区画する区画部に対応する箇所に設けられる請求項1〜5のいずれか1つに記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグは、車両の座席に着座した乗員の前下方で膨張することにより、同乗員の脛部から膝部にかけての部位を保護する膝保護用エアバッグであり、
前記非膨張部は、前記膝保護用エアバッグにおいて前記乗員の前記脛部に対応する箇所に設けられる請求項1〜5のいずれか1つに記載のエアバッグ装置。
【請求項1】
互いに重ね合わされた一対の布帛部により袋状に形成され、かつ衝撃から保護対象を保護するための保護領域が設けられたエアバッグを備え、
前記エアバッグには、両布帛部を環状に結合する区画結合部が設けられており、前記保護領域が、前記区画結合部により囲まれ、かつ膨張用ガスが供給されない非膨張部と、前記区画結合部よりも外側に位置し、かつ膨張用ガスが供給されて膨張する膨張部とに区画されており、
前記両布帛部を断続的に結合することにより前記区画結合部が形成されることで、両布帛部間であって、前記区画結合部における隣り合う結合部分間には、前記膨張部内の前記膨張用ガスを前記非膨張部側へ排気するための排気孔が設けられており、
さらに、前記両布帛部のうち、前記保護対象から遠い側の布帛部について、前記区画結合部により囲まれた部分の少なくとも一部が刳りぬかれていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記両布帛部のうち、前記保護対象に近い側の布帛部について、前記非膨張部に対応する部分は閉塞されている請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記区画結合部は、前記両布帛部を縫製することにより形成され、
前記排気孔は、前記縫製の上糸と下糸とが交差する交絡部位同士の間に形成される請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記区画結合部は、前記両布帛部を断続的に接着することにより形成され、
前記排気孔は、前記区画結合部において隣り合う接着部分間に形成される請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグは袋織りにより形成されるものであり、
前記排気孔を有する区画結合部は、前記エアバッグを袋織りする過程で形成されるものであり、
前記排気孔は、前記袋織りの隣合う接結部間に形成される請求項1又は2に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグは、車両の座席に着座した乗員と同車両のボディサイド部との間で膨張するサイドエアバッグであり、
前記非膨張部は、前記サイドエアバッグにおいて前記乗員の腕部、胸部及び腹部の少なくとも1つに対応する箇所に設けられる請求項1〜5のいずれか1つに記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記エアバッグは、車両の座席に着座した乗員の頭部と、同車両の車室内の側部との間でカーテン状に膨張することにより同頭部を保護する頭部保護用エアバッグ、前記車両の最後部座席の後方近傍で膨張することにより同乗員を保護する後突用エアバッグ、前記車両と歩行者との間で膨張することにより同歩行者を保護する歩行者保護用エアバッグのいずれかであり、
前記頭部保護用エアバッグ、前記後突用エアバッグ、及び前記歩行者保護用エアバッグの各前記保護領域は複数の領域に区画されており、
前記非膨張部は、前記頭部保護用エアバッグ、前記後突用エアバッグ、及び前記歩行者保護用エアバッグにおいて、前記保護領域を区画する区画部に対応する箇所に設けられる請求項1〜5のいずれか1つに記載のエアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグは、車両の座席に着座した乗員の前下方で膨張することにより、同乗員の脛部から膝部にかけての部位を保護する膝保護用エアバッグであり、
前記非膨張部は、前記膝保護用エアバッグにおいて前記乗員の前記脛部に対応する箇所に設けられる請求項1〜5のいずれか1つに記載のエアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−137779(P2010−137779A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317390(P2008−317390)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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