説明

エアロゾル生成装置およびエアロゾル生成方法

【課題】粉体収容室に収容された材料粒子の凝集を適切に低減して、エアロゾルを長期間に亘り安定的に生成できるエアロゾル生成装置およびエアロゾル生成方法を提供する。
【解決手段】材料粒子Mをキャリアガスに分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成装置101は、材料粒子Mの粉体8を収容するための粉体収容室9を有する本体5と、本体5の外部から粉体収容室9にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給手段(11、12、15)と、粉体収容室9における、粉体8の粉面8Aよりも下方の位置に入口開口40Aを有し、粉面8Aよりも上方の位置に出口開口40Bを有する粉体流路40と、粉体流路40内の粉体8を、粉体流路40の入口開口40Aから出口開口40Bへ向かう方向に移送する移送手段41と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル生成装置およびエアロゾル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾルデポジション法(以下、「AD法」という)は、キャリアガスとの混合によりエアロゾル化された材料粒子を成膜チャンバ内の減圧空間に導き、成膜チャンバの内圧とノズルの内圧との間の差圧に基づいてノズル内から材料粒子を基板に向けて高速噴射させ、これにより、基板上に材料粒子の被膜を形成させる技術である。このようなAD法では、材料粒子の粒子径などを調整して適切な成膜条件を選ぶと、材料粒子の緻密な被膜が常温において高速に形成できる。
【0003】
ところで、AD法を用いた成膜装置には、予め準備された粉体中の材料粒子をキャリアガスに混合分散させてエアロゾル化できるエアロゾル生成装置が標準装備されている。
【0004】
このエアロゾル生成装置については、当該装置の長期間使用により、材料粒子が凝集するという粒径増大化が、従来から問題視されている。材料粒子同士が凝集して固まった材料粒子の凝集塊(以下、「材料粒子の凝集体」と略す)は、エアロゾル生成装置の粉体の下方部分に溜まり易い。このため、粉体には下方に行くほど材料粒子の凝集体の粒子径が大きくなるという粒度分布が生じ、粉体の下層の材料粒子がキャリアガス中に分散され難くなる。また、材料粒子の凝集体により、エアロゾル生成装置内の粉体全体の、キャリアガスによる適切な撹拌作用や流動化が阻害され、材料粒子の凝集が更に助長される。一方、キャリアガスのガス流量の多少は、基板への材料粒子の被膜特性に重大な影響を及ぼすので、キャリアガスの流量調整によって、粉体の撹拌状態や流動状態を変更して、材料粒子の凝集を抑制するには自ずと限界がある。
【0005】
最終的には、粉体の下方部分の材料粒子はエアロゾル化できなくなって、エアロゾル生成装置によるエアロゾルの長期間の安定的な生成に支障をきたす。つまり、従来のエアロゾル生成装置では、エアロゾル中の材料粒子の濃度を長期間に亘り一定に保つことが極めて困難である。そして、このことが、AD法を用いた成膜装置の実用化(工業化)に向けた重大な障害になっていた。
【0006】
上述の問題に対しては、エアロゾル生成容器に微小な振動などを与える駆動手段を備えた従来の成膜装置がある(特許文献1や特許文献2参照)。例えば、特許文献1に記載のエアロゾル生成装置によれば、エアロゾルが生成されるエアロゾル生成容器に、微小な振動とともに所定の運動を与えることができるので、材料粒子の凝集体が容器の一部に偏在して留まることがなくなり、安定的にエアロゾルを生成することができるとされている。
【特許文献1】特開2004−113931号公報
【特許文献2】特開2004−339565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述の従来の成膜装置の如く、エアロゾル生成容器に振動や運動を与えると、この容器の壁部などへの材料粒子の固着が進む場合があり、却って、エアロゾルの安定的な生成が阻害されることがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、粉体収容室に収容された材料粒子の凝集を適切に低減して、エアロゾルを長期間に亘り安定的に生成できるエアロゾル生成装置およびエアロゾル生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、材料粒子をキャリアガスに分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成装置であって、材料粒子の粉体を収容するための粉体収容室を有する本体と、前記本体の外部から前記粉体収容室に前記キャリアガスを供給するためのキャリアガス供給手段と、前記粉体収容室室内において開口する入口開口と出口開口とを有するとともに、入口開口が出口開口よりも鉛直方向において下方に位置する粉体流路と、前記粉体流路内の前記粉体を、前記粉体流路の前記入口開口から前記出口開口へ向かう方向に移送する移送手段と、を備えたエアロゾル生成装置を提供する。
【0010】
これにより、粉体の循環型の流動が起こり、粉体の内部に流動層を形成できる。この粉体内の循環型の流動により、エアロゾル生成装置の長期間使用に際しても材料粒子の凝集を適切に低減できる。例えば、上述の粉体内の流動により、材料粒子の凝集体が擦れ合い、凝集体が解砕されるという効果がある。また、粉体を落下位置から粉面に自重落下させると、材料粒子の凝集体を、凝集体の自重落下の際の落下エネルギーにより解砕できるという効果もある。
【0011】
そして、以上に述べた材料粒子の凝集体の解砕効果により、エアロゾル生成装置によるエアロゾルの長期間に亘る安定的な生成が可能になる。
【0012】
なお、本発明においては、粉体流路の入口開口が粉体の粉面よりも下方に位置し、出口開口が粉体の粉面よりも上方に位置ことが望ましい。
【0013】
前記移送手段は、例えば、前記粉体流路を形成する流路部材を振動させる振動子を有し、前記振動子で前記流路部材を振動させることにより、前記粉体流路内の前記粉体を移送するようなものであってもよい。
【0014】
以上の構成により、流路部材の入口開口から流路部材内に入った粉体は、振動子による粉体の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材の出口開口へ向かう方向に適切に移送される。
【0015】
なお、ここで、前記流路部材における、前記入口開口の近傍部分と前記出口開口の近傍部分とのいずれか一方に、又は、その両方に、前記振動子を取り付けてもよいが、前記流路部材における、前記入口開口の近傍部分と前記出口開口の近傍部分とのうちの、前記出口開口の近傍部分にのみ前記振動子を取り付ける方が好ましい。前記出口開口の近傍部分にのみ前記振動子を取り付けると、粉体を効率的(スムーズ)に搬送できると考えられる。
【0016】
また、前記本体は、前記粉体収容室の下方にキャリアガス導入室を有し、これらの室が複数の透孔が形成された透孔部材によって仕切られており、前記キャリアガス供給手段が、キャリアガスを吐出する吐出開口を有し、前記吐出開口が前記キャリアガス導入室に連通してもよい。
【0017】
これにより、キャリアガス導入室から透孔部材を経て粉体収容室に導かれるキャリアガスが略一様な流れとなり、粉体収容室内に入ることができる。
【0018】
前記粉体流路が、管状部材により形成されており、前記入口開口が前記粉体収容室内に収容された粉体の層の内部に位置していてもよい。
【0019】
例えば、前記管状部材は、その中心軸が略鉛直方向に延びる直管状の管状部材であり、前記管状部材が、前記粉体収容室の前記粉面高さにおける水平断面をその略中央部において貫通してもよい。
【0020】
このように、流路部材の入口開口は粉体収容室内に収容された粉体の中央の内部に位置しているので、この部分から粉体を吸い上げることができる。流路部材は、直管状になっており、強力な粉体の吸い上げ力を発揮でき好適である。
【0021】
また、前記透孔部材が、排出口を有する漏斗状の透孔部材であってもよく、この場合、前記粉体流路の前記入口開口が前記漏斗状の透孔部材の排出口に接続され、前記粉体流路の前記出口開口が前記粉体収容室の内側に配されてもよい。
【0022】
また、前記粉体流路の前記入口開口が前記粉体収容室の前記内壁面に形成され、前記粉体流路の前記出口開口は、前記粉体収容室の内側に配されてもよい。
【0023】
そして、この場合、前記粉体収容室の内壁面において前記入口開口が対向する位置と、前記出口開口とを結ぶ直線が、水平面に対してなす角が、前記材料粒子の粉体の安息角よりも大きい方が好ましい。
【0024】
これにより、流路部材の入口開口から充分に離れた位置から粉体を粉面に戻すことができ、その結果、上述の対向する位置において安息角が作る粉体の壁を崩しながら、粉体の広範囲な領域を流動化できるようになる。
【0025】
また、前記入口開口と前記出口開口とを結ぶ直線が、水平面に対してなす角が、前記材料粒子の粉体の安息角よりも大きい方が好ましい。
【0026】
これにより、粉体のエアロゾル化の進行に伴い粉体の量が減少した場合であっても、入口開口において安息角が作る粉体の壁により、粉体が入口開口にまで到達しないという状況を回避できるようになる。
【0027】
また、前記透孔部材が、板状に構成され、前記材料粒子の粉体をその自重により前記入口開口に向けて移動させるように傾斜してもよい。
【0028】
これにより、入口開口から離れた位置にある粉体を、粉体の自重によって強制的に入口開口に移動させることができる。
【0029】
また、前記粉体流路の前記出口開口から前記粉面に落下する粉体に向けてキャリアガスを噴射するガス噴射手段を更に備えてもよい。
【0030】
なお、この場合、前記粉体流路の前記出口開口から前記粉面に落下する粉体の落下経路が、前記ガス噴射手段の噴射領域と交差するように、前記ガス噴射手段の噴射口を前記粉体収容室内に配置させてもよい。
【0031】
これにより、粉面へ落下途中の粉体は、ガス噴射手段の噴射領域において解砕または破砕される。そして、粉面への落下途中の粉体が充分に微細になると、粉面に落ちることなく、キャリアガスによりエアロゾル化される。
【0032】
特に、材料粒子の凝集体の解砕に加え、材料粒子の破砕をも適切に行えるので、エアロゾル生成装置は、上述の粉体の循環型の流動との協働により、粉体に溜まったエアロゾル化に適さない程度の粒子径の大きな材料粒子であってもエアロゾル化に適するように破砕でき、その結果、収容容器を開放させて粉体を外部に取り出すことなく、粉体を使い切るまで連続的にエアロゾルを生成できる。
【0033】
また、本発明は、材料粒子をキャリアガスに分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成方法であって、前記材料粒子の粉体を粉体収容室に収容する粉体収容工程と、前記粉体収容室内に前記キャリアガスを供給するキャリアガス供給工程と、前記粉体収容室に収容された前記粉体の粉面よりも下方にある粉体を、前記粉面よりも上方の落下位置にまで移送する移送工程と、前記落下位置にまで移送された粉体を前記粉面に落下させる落下工程と、を含む、エアロゾル生成方法を提供する。
【0034】
これにより、粉体の循環型の流動が起こり、粉体の内部に流動層を形成できる。この粉体内の循環型の流動により、粉体収容室の材料粒子の凝集を適切に低減できる。例えば、上述の粉体内の流動により、材料粒子の凝集体が擦れ合い、凝集体が解砕されるという効果がある。また、粉体を落下位置から粉面に自重落下させると、材料粒子の凝集体を、凝集体の自重落下の際の落下エネルギーにより解砕できるという効果もある。
【0035】
そして、以上に述べた材料粒子の凝集体の解砕効果により、粉体収容室におけるエアロゾルの長期間に亘る安定的な生成が可能になる。
【0036】
また、前記移送工程において、前記粉体収容室に収容された前記粉体の粉面よりも下方に入口開口を有し、前記粉面よりも上方に出口開口を有する粉体流路を形成する流路部材を、振動子で振動させることにより、前記粉面より下方にある粉体を、前記粉体流路を介して前記落下位置まで移送してもよい。
【0037】
これにより、流路部材の入口開口から流路部材内に入った粉体は、振動子による粉体の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材の出口開口へ向かう方向に適切に移送される。
【0038】
また、前記落下位置から前記粉面に落下する粉体に向けて、ガス噴射手段からキャリアガスを噴射するガス噴射工程をさらに含んでもよい。
【0039】
これにより、粉面へ落下途中の粉体は、ガス噴射手段から噴射されたキャリアガスにより、解砕または破砕される。そして、粉面への落下途中の粉体が充分に微細になると、粉面に落ちることなく、キャリアガスによりエアロゾル化される。
【0040】
特に、材料粒子の凝集体の解砕に加え、材料粒子の破砕をも適切に行えるので、上述の粉体の循環型の流動との協働により、粉体に溜まったエアロゾル化に適さない程度の粒子径の大きな材料粒子であってもエアロゾル化に適するように破砕でき、その結果、収容容器を開放させて粉体を外部に取り出すことなく、粉体を使い切るまで連続的にエアロゾルを生成できる。
【0041】
また、円柱状の内部の断面積が前記粉体流路を形成する流路部材の開口断面積の10%である管部材に前記粉体を収容した際に、前記粉体を流下させるに必要な大きさの前記管部材への振動による最大加速度を前記流路部材に与えることができる振動子を備えてもよい。
【0042】
これにより、流路部材に取り付けられた振動子の振動条件の適切な設定がなされ、流路部材内の粉体の流動性を増すことができ、ひいては、粉体の流路部材の内壁などへの堆積を適切に防止できる。
【0043】
前記振動子の振動による最大加速度を、前記最大加速度と前記管部材を流れる前記粉体の流量との間の相関関係に基づいた前記粉体の流量プロファイルの立ち上がり位置に対応する前記最大加速度以上に設定してもよい。
【0044】
また、前記振動子の振動による最大加速度を、前記流量プロファイルの最大値の半分となる前記流量プロファイルの位置に対応する前記最大加速度以上に設定してもよい。
【0045】
また、前記振動子の振動による最大加速度を、前記流量プロファイルの立ち上がり位置に対応する前記最大加速度の20倍以下に設定してもよい。
【発明の効果】
【0046】
本発明のエアロゾル生成装置およびエアロゾル生成方法によれば、粉体収容室に収容された材料粒子の凝集を適切に低減して、エアロゾルを長期間に亘り安定的に生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一または相当部分には同一符号を付し、各実施の形態やそれらの変形例において重複する内容は、適宜、省略乃至略説する。
【0048】
また、以下の説明の便宜上、必要に応じて、重力の作用する方向を「下方向」といい、その反対方向を「上方向」という。また、必要に応じて、このような上下方向を「鉛直方向」と言い換え、この方向に直交する方向を「水平方向」という。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるエアロゾル生成装置を装備した成膜装置の構成例を示した模式図である。なお、図1(以下の実施の形態1、2、3および4においても同じ)では、収容容器5の内部の様子が図示されている。また、図1では、成膜チャンバ30の内部の様子も図示されている。
【0049】
AD法に用いた成膜装置400は、図1に示すように、粉体8中の材料粒子Mとキャリアガスとを混合してエアロゾルEを生成するエアロゾル生成機構100と、エアロゾル生成機構100で生成されたエアロゾルEを基板20に向けて噴射して成膜する成膜機構200と、エアロゾル生成機構100および成膜機構200の動作を制御する制御装置300とを備える。
【0050】
まず、成膜装置400のエアロゾル生成機構100について説明する。
【0051】
エアロゾル生成機構100は、図1に示すように、エアロゾル生成装置101と、ガスボンベ11(ガス供給源)と、流量調整器12と、を備える。
【0052】
エアロゾル生成装置101は、その本体に相当する収容容器5と、収容容器5内に配置された粉体8の循環流動機構とを備え、収容容器5は、鉛直方向に中心軸を有する円筒状の壁部1と、収容容器5の内部空間を塞ぐ円盤状の第1および第2蓋部材2、3とを備えるが、収容容器5内の詳細な構成については後述する。
【0053】
ガスボンベ11は、エアロゾル生成装置101の内部への供給用キャリアガスを充填している。エアロゾル生成装置101に供給されるキャリアガスとして、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスや、空気、酸素ガス、窒素ガスなどを使用することができる。
【0054】
収容容器5の壁部1には、収容容器5のキャリアガス導入室10(後述)の内部に連通するキャリアガス配管15(図2参照)が設けられている。また、第1蓋部材2には、エアロゾル生成装置101の粉体収容室9(後述)の内部に連通するエアロゾル配管17が設けられている。
【0055】
エアロゾル生成装置101のキャリアガス配管15は、キャリアガスを吐出する先端開口15A(吐出開口;図2参照)を有し、この先端開口15Aがキャリアガス導入室10と連通するようになっている。キャリアガス配管15の基端開口(図示せず)は、ガスボンベ11のガス出口(図示せず)と連通している。また、キャリアガス配管15の途中には、上述の流量調整器12が設けられている。流量調整器12により、ガスボンベ11からキャリアガス導入室10へのガス供給量を調整できる。この流量調整器12として、ここでは、マスフローコントローラを使用している。
【0056】
以上説明したガスボンベ11、流量調整器12及びキャリアガス配管15によって、収容容器5のキャリアガス導入室10にキャリアガスを供給するキャリアガス供給手段が構成される。
【0057】
次に、成膜装置400の成膜機構200について説明する。
【0058】
成膜機構200は、図1に示すように、成膜チャンバ30と、成膜チャンバ30の内部を排気する第1および第2真空ポンプ31、32とを備える。
【0059】
成膜チャンバ30の側壁部に、第1および第2真空ポンプ31、32が設けられている。これらの第1および第2真空ポンプ31、32により、成膜チャンバ30は内部が、適宜の真空度(例えば、1kPa程度)に減圧される。第1真空ポンプ31は、公知の機械式のブースターポンプであり、第2真空ポンプ32は、公知の機械式のロータリーポンプである。但し、これらの真空ポンプとして、他の種類の真空ポンプを使用してもよい。これらの真空ポンプによって、成膜チャンバ30内を1kPa程度にまで減圧することができることが望ましい。
【0060】
また、上述のエアロゾル配管17は、成膜チャンバ30の底壁部を貫通して成膜チャンバ30の内部を上方に延び、エアロゾルEの噴射用の噴射ノズル19の内部と連通している。なお、噴射ノズル19の噴射部19Aは、その先端開口(エアロゾル出口;図示せず)がスリット状に形成され、その内壁の一部が先端開口に向かうにつれて狭くなるように(テーパ状に)形成されている。これにより、エアロゾルEは、噴射部19A内で適切に加速される。
【0061】
また、成膜チャンバ30の内部に、噴射ノズル19(正確には、噴射部19Aの先端開口)と対向するように基板ホルダ21が設けられている。基板ホルダ21は、ホルダ部21Aおよび支持部21Bを有する。基板ホルダ21のホルダ部21Aは、基板20を保持することができる。基板ホルダ21の支持部21Bは、基板ホルダ駆動機構22と連結され、これにより、基板ホルダ駆動機構22は、基板ホルダ21に対し水平方向の駆動力を与えることができる。このため、基板ホルダ21に保持された基板20は、噴射ノズル19(正確には、噴射部19Aの先端開口)に対して相対的に移動することができる。なお、噴射ノズル19と基板20との間にマスク部材(図示せず)を設置して、基板20上の被膜を、任意の位置や任意の形状に形成できるようにしてもよい。基板20の例として、例えば、金属基板、シリコン基板(半導体基板)、または、樹脂基板がある。
【0062】
次に、成膜装置400の制御装置300について説明する。
【0063】
制御装置300は、マイコン等のコンピュータによって構成されており、CPUからなる演算処理部、ROMやRAMなどのメモリからなる記憶部、表示モニタなどの出力部、および、キーボードなどの操作入力部を有する(いずれも図示せず)。演算処理部は、記憶部に格納された所定の制御プログラムを読み出し、この制御プラグラムに基づいて成膜装置400に関する各種の制御を行う。
【0064】
制御装置300は、流量調整器12を用いて、エアロゾル生成装置101に供給されるガスの流量を調整することにより、エアロゾル生成装置101内で生成されるエアロゾルE中の材料粒子Mの濃度やエアロゾルEの流量を制御できる。例えば、制御装置300は、適宜の検知器(図示せず)によるエアロゾルE中の材料粒子Mの濃度検知に基づいて、材料粒子Mの濃度が所望の濃度になるように、操作量としてのガスの流量を調整することができる。
【0065】
また、制御装置300は、駆動装置6(後述)を用いて圧電振動子41(後述)の出力を調整できる。これにより、制御装置300は、粉体収容室9に収容された粉体8の循環型流動の動作(例えば循環される粉体8の量)を制御できる。この粉体8の循環型流動の具体的な内容については、後述する。
【0066】
また、制御装置300は、適宜の真空計(図示せず)により成膜チャンバ30内の真空度を検知して、この検知真空度に基づいて成膜チャンバ30内を所望の真空状態に保つように、第1および第2真空ポンプ31、32の排気バルブ(図示せず)の開度をフィードバック制御する。
【0067】
また、制御装置300は、基板20の所望の領域に所望の厚みの成膜がなされるよう基板ホルダ駆動機構22を制御する。
【0068】
本明細書において、制御装置とは、単独の制御装置だけでなく、複数の制御装置が協働して成膜装置の制御を実行する制御装置群をも意味する。このため、制御装置は、単独の制御装置から構成される必要はなく、複数の制御装置が分散配置され、それらが協働して成膜装置を制御するように構成されていてもよい。
【0069】
次に、本実施の形態のエアロゾル生成装置101について、図2を参照しながら詳しく説明する。
【0070】
図2は、本発明の実施の形態1によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【0071】
上述の収容容器5の内部には、その内部空間を2つの室に仕切るように板状の透孔部材4が設けられている。収容容器5の内部空間のうち、透孔部材4で仕切られた上方の空間が材料粒子Mの粉体8を収容するための粉体収容室9として機能する。下方の空間がキャリアガスを粉体収容室9に導くためのキャリアガス導入室10として機能する。
【0072】
透孔部材4は、多数の透孔(図示せず)を有し、透孔部材4の上には材料粒子Mの粉体8が堆積された状態で収容されている。本明細書において、透孔とは、板状の部材を厚み方向に貫通する孔を意味し、これには、パンチメタルの微小なパンチング孔やマイクロシーブの微細なふるい目も含まれる。材料粒子Mとしては、AD法に使用できる材料であればよい。例えば、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や、アルミナなどの無機粉末、樹脂などの有機粉末を使用することができる。材料粒子Mの粒子径としては、AD法による成膜プロセスに使用可能な粒子径であればよい。例えば、この材料粒子Mは、数百nm〜数十μmの範囲の微粉末であってもよい。
【0073】
このようにして、キャリアガス配管15から排出されたキャリアガスは、キャリアガス導入室10から透孔部材4の透孔を通って材料粒子Mの粉体8に入る。これにより、材料粒子Mが、粉体8から吹き上がり、キャリアガスに分散されて、エアロゾル化される。このとき、キャリアガスは、多数の材料粒子Mからなる粉体8を、恰も液体の如く流動できる状態(流動化)にさせる。つまり、このキャリアガスは、材料粒子Mを運んでエアロゾルEを生成する機能の他、粉体収容室9内で粉体8を流動させる流動ガスとしての機能を備えている。但し、上述のとおり、キャリアガスのガス流量の多少は、基板20への材料粒子Mの被膜特性に重大な影響を及ぼすので、キャリアガスの流量調整によって粉体の撹拌状態や流動状態を変更して、材料粒子Mの凝集を抑制するには自ずと限界がある。
【0074】
なお、本明細書において、このように液体の如く振舞う粉体8の層を流動層といい、粉体収容室9に堆積された粉体8の層の表面(最上面)のことを「粉面8A」という。
【0075】
次に、エアロゾル生成装置101において、粉体8の循環型の流動を起こす循環流動機構について説明する。
【0076】
本実施の形態の循環流動機構は、粉体収容室9の内部に配置された直管状の流路部材40(管状部材)と、流路部材40に超音波振動を与える圧電振動子41(移送手段)と、圧電振動子41に駆動電力としての交流電力を供給する駆動装置6と、を備える。
【0077】
流路部材40は、粉体8を移送させる粉体流路を構成するものであり、ここでは、樹脂製(例えばアクリル製)の円筒形の配管である。この流路部材40の中心軸は、図2に示すように、鉛直方向に延びている。また、流路部材40は、粉体8の粉面8Aの高さの位置における水平仮想断面をその中心部において貫通し、透孔部材4の近傍にまで奥深く延びている。つまり、流路部材40の入口開口40Aが粉体収容室9内に収容された粉体8の中央の最下層付近に位置し、出口開口40Bが粉面8Aよりも上方に位置している。
【0078】
このように、入口開口40Aは粉体8の粉面8Aよりも下方に位置し、出口開口40Bが粉面8Aよりも上方に位置することになるが、圧電振動子41による粉体8の超音波搬送(後述)の作用により、重力に逆らって、流路部材40の入口開口40Aから流路部材40内に入った粉体8を、流路部材40の出口開口40Bに向かう方向(上方向)に移送することができる。これにより、粉体8の堆積層の内部にある粉体8を粉面8A上まで搬送することができる。このような重力に逆らった循環搬送を行うには、入口開口40Aの位置を出口開口40Bの位置よりも鉛直方向において下方に設定する必要があり、加えて、粉面8Aの鉛直方向における位置が入口開口40Aと出口開口40Bの間となるように、粉体収容室9内に充填される粉体8の充填量を決める必要がある。したがって、流路部材40は、入口開口40Aと出口開口40Bとが鉛直方向においてある程度離れて位置することが望ましい。流路部材40内の粉体8の超音波搬送は、圧電振動子41により流路部材40に発生する定常波および進行波の2つの波を利用してなされている。つまり、流路部材40の壁面近傍の定常波により流路部材40内に空気の疎密(空気の圧力差)が形成される。これにより、空気の疎な位置に粉体8(材料粒子M)がトラップされ、流路部材40の壁部から離れて浮揚される。この状態で、流路部材40上に進行波が生じると、定常波と進行波からなる合成波が発生し、流路部材40内の粉体8を上方向に非接触浮揚状態で搬送させることができる。なお、圧電振動子41により流路部材40に発生させる定常波の周波数例は、400kNzであり、その進行波の周波数例は、定常波の周波数を基準とし粉体流速に応じて調整される。駆動電力は例えば4Wである。
【0079】
但し、このような超音波搬送の原理自体は、公知であり、ここでは、より詳細な説明は省く。
【0080】
本実施の形態では、流路部材40を伝播する定常波および進行波(超音波)を発生させる圧電振動子41を、流路部材40の出口開口40Bの近傍に取り付けているが、これに限らず、このような圧電振動子41を流路部材40の入口開口40Aの近傍に取り付けてもよい。但し、本実施の形態の如く、圧電振動子41を、流路部材40の出口開口40Bの近傍に取り付ける方が、粉体8を効率的(スムーズ)に超音波搬送できると考えられる。
【0081】
また、流路部材40の入口開口40Aの近傍および流路部材40の出口開口40Bの近傍のそれぞれに、各1個ずつ圧電振動子41を取り付けてもよい。この場合、一方の圧電振動子41により、流路部材40に定常波が伝播され、他方の圧電振動子41により、流路部材40に進行波が伝播されることになる。
【0082】
また、流路部材40の上端の出口開口40Bの周囲には、環状の傘状板42が配置されている。この傘状板42は、流路部材40の出口開口40Bから流出した粉体8を、その適切な落下位置(具体的には傘状板42の端の位置)から粉面8Aに自重落下させる部材であるが、この落下位置の設定法については、後述(実施の形態4)のジェットミル80との関係で説明する。
【0083】
次に、本実施の形態のエアロゾル生成装置101を装備した成膜装置400の動作例について図1および図2を参照しながら説明する。
【0084】
まず、成膜チャンバ30内の基板ホルダ21に基板20をセットし、収容容器5の粉体収容室9の内部に(正確には透孔部材4上)材料粒子Mの粉体8を収容する。
【0085】
次に、ガスボンベ11からキャリアガス配管15を介して粉体収容室9内にガスが供給される。キャリアガス配管15から排出されたキャリアガスは、一旦、収容容器5のキャリアガス導入室10に導かれる。これにより、キャリアガスの管内流れの流速分布の影響が緩和され、キャリアガス導入室10から透孔部材4を経て粉体収容室9に導かれるキャリアガスは略一様な流れとなり、粉体収容室9内に入ることができる。このようにして、キャリアガスが、粉体8中の材料粒子Mを吹き上げ、吹き上げられた材料粒子Mがキャリアガスに分散し混合することにより、粉体収容室9内にエアロゾルEが生成される。このとき、制御装置300は、流量調整器12を用いて収容容器5(キャリアガス導入室10)に供給されるガスの流量を調整し、これにより、粉体収容室9内で生成されるエアロゾルE中の材料粒子Mの濃度やエアロゾルEの流量を制御している。
【0086】
また、制御装置300は、駆動装置6を用いて圧電振動子41に印加する交流電圧を調整する。この圧電振動子41により、流路部材40に超音波(定常波および進行波)振動が発生し、流路部材40内の粉体8が、重力に逆らって超音波搬送される。このため、流路部材40内の粉体8を、流路部材40の入口開口40Aからその出口開口40Bへ向かう方向に移送できる。そして、最終的に、流路部材40内の粉体8は、その粉面8Aよりも上方の落下位置(ここでは、上述の傘状板42の端の位置)に移送される。その後、粉体8は、落下位置から自重により粉面8Aに落ちる。以上の粉体8の移送動作が連続的になされ、粉体8内に循環型の流動が起こる。
【0087】
一方、第1および第2ポンプ31、32の真空引きによって、成膜チャンバ30内が減圧状態になっている。これにより、成膜チャンバ30の内圧と収容容器5の内圧との間の差圧により、収容容器5(粉体収容室9)内のエアロゾルEが、エアロゾル配管17に吸い込まれ、エアロゾル配管17を流れたエアロゾルEは、噴射ノズル19の先端から成膜チャンバ30内の基板20に向けて高速に噴出される。そして、高速噴射されたエアロゾルE中の材料粒子Mが基板20の表面に衝突する。この衝突エネルギーにより、材料粒子Mが破砕され、材料粒子Mを砕いた破片が基板20の表面に堆積して成膜される。
【0088】
以上に述べたように、本実施の形態のエアロゾル生成装置101は、粉体収容室9における、粉面8Aより下方位置の入口開口40A、および、粉面8Aより上方位置の出口開口40Bを有する流路部材40と、流路部材40を伝播する定常波および進行波(超音波)が発生するように、流路部材40を振動させる圧電振動子41と、を備える。
【0089】
以上の構成により、流路部材40の入口開口40Aから流路部材40内に入った粉体8は、圧電振動子41による粉体8の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材40の出口開口40Bへ向かう方向に移送され、その落下位置(ここでは傘状板42の端)に到達する。粉体8は、その後、上述の落下位置から自重により粉面8Aに落ちる。一方、流路部材40の入口開口40Aは粉体収容室9内に収容された粉体8の中央の最下層付近に位置しているので、この部分から粉体8を吸い上げることができる。特に、流路部材40は、直管状になっており、強力な粉体8の吸い上げ力を発揮でき好適である。
【0090】
このようにして、粉体8の循環型の流動を起こすことにより、粉体8の内部に流動層を形成できる。
【0091】
粉体8内の循環型の流動により、エアロゾル生成装置101の長期間使用に際しても材料粒子Mの凝集を適切に低減できる。つまり、本実施の形態では、粉体8内の流動により、材料粒子Mの凝集体が擦れ合い、凝集体が解砕される(つまり材料粒子Mの凝集体が材料粒子Mに解される)という効果がある。また、本実施の形態では、粉体8を落下位置から粉面8Aに自重落下させているので、材料粒子Mの凝集体を、凝集体の自重落下の際の落下エネルギーにより解砕できるという効果がある。この場合、落下位置と粉面8Aとの間の高さ方向の距離(粉体8の落差)は、落下位置における材料粒子Mの凝集体の位置エネルギーと材料粒子M間に働く凝集エネルギーとの間の比較から適宜設定すればよい。
【0092】
なお、エアロゾル生成装置101は、仮に粉体8の落差がゼロに近くても、上述の粉体8内の流動に基づく凝集体の解砕効果を発揮することから、本明細書における「落下」とは、このような状況をも含むものとする。
【0093】
以上に述べた材料粒子Mの凝集体の解砕効果により、エアロゾル生成装置101によるエアロゾルEの長期間に亘る安定的な生成(つまりエアロゾルE中の材料粒子Mの長期間に亘る濃度一定化)が可能になる。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【0094】
本実施の形態のエアロゾル生成装置301によれば、実施の形態1のエアロゾル生成装置101の流路部材40および透孔部材4が、以下の如く改変されている。
【0095】
図3に示すように、収容容器5の内部には、その内部空間を2つの室に仕切るように漏斗状(ホッパー状)の透孔部材4Aが設けられている。収容容器5の内部空間のうち、透孔部材4Aで仕切られた上方の空間が材料粒子Mの粉体8を収容するための粉体収容室9として機能する。下方の空間がキャリアガスを粉体収容室9に導くためのキャリアガス導入室10として機能する。
【0096】
透孔部材4Aは、多数の透孔(図示せず)を有し、透孔部材4Aの上に材料粒子Mの粉体8が収容されている。材料粒子Mの材料や粒子径は、実施の形態1で述べた内容と同じである。また、透孔部材4Aは、その中央部に排出口4Bを有し、この排出口4Bは、後述の流路部材50の入口開口50Aに接続されている。
【0097】
流路部材50は、粉体8を移送させる粉体流路を構成するものであり、ここでは、樹脂製(例えばアクリル製)の円筒形の配管である。この流路部材50は、図3に示すように、収容容器5の内部からその外部に水平方向に向かって突出する形態で略U字状に曲がっている。また、流路部材50は、粉体収容室9の内壁面9Aにおける粉面8Aよりも上の箇所で、この内壁面9Aと交差する上交差部53と、キャリアガス導入室10の内壁面10Aと交差する下交差部52とを有する。
【0098】
このため、流路部材50の入口開口50Aから流路部材50の下交差部52までの部分は、キャリアガス導入室10の内側に配置されている。流路部材50の上交差部53から流路部材50の出口開口50Bまでの部分は、粉体収容室9の内側において粉面8Aよりも上方に配置されている。流路部材50の下交差部52から流路部材50の上交差部53までの部分は、収容容器5の内部空間の外側に配置されている。
【0099】
このようにして、流路部材50は、粉体8の粉面8Aよりも下方に位置する入口開口50A、および、粉面8Aよりも上方に位置する出口開口50Bを有する。そして、流路部材50の入口開口50Aから流路部材50内に入った粉体8を、圧電振動子51による粉体8の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材50の出口開口50Bに向かう方向(上方向)に移送できる。
【0100】
なお、本実施の形態では、流路部材50を伝播する定常波および進行波(超音波)を発生させる圧電振動子51を、流路部材50の出口開口50Bの近傍に取り付けているが、実施の形態1で述べた内容と同様に、このような圧電振動子51を流路部材50の入口開口50Aの近傍に取り付けてもよい。また、流路部材50の入口開口50Aの近傍および流路部材50の出口開口50Bの近傍のそれぞれに、各1個ずつ圧電振動子51を取り付けてもよい。
【0101】
以上の構成により、流路部材50の入口開口50Aから流路部材50内に入った粉体8は、圧電振動子51による粉体8の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材50の出口開口50Bへ向かう方向に移送され、その落下位置(ここでは出口開口50B)に到達する。粉体8は、その後、落下位置からの自重により粉面8Aに落ちる。一方、透孔部材4Aの排出口4B近傍の粉体8が、入口開口50Aから流路部材50内に吸い込まれる。特に、この排出口4Bは、粉体8の中央の最下層に位置しており、この部分の粉体8が吸い込まれ好適である。
【0102】
このようにして、粉体8の循環型の流動を起こすことにより、粉体8の内部に流動層を形成できる。
【0103】
粉体8内の循環型の流動により、エアロゾル生成装置301の長期間使用に際しても材料粒子Mの凝集を適切に低減できる。つまり、本実施の形態では、粉体8内の流動により、材料粒子Mの凝集体が擦れ合い、凝集体が解砕されるという効果がある。また、本実施の形態では、粉体8を落下位置から粉面8Aに自重落下させているので、材料粒子Mの凝集体を、凝集体の自重落下の際の落下エネルギーにより解砕できるという効果がある。この場合、落下位置と粉面8Aとの間の高さ方向の距離(粉体8の落差)は、落下位置における材料粒子Mの凝集体の位置エネルギーと材料粒子M間に働く凝集エネルギーとの間の比較から適宜設定すればよい。
【0104】
以上に述べた材料粒子Mの凝集体の解砕効果により、エアロゾル生成装置301によるエアロゾルEの長期間に亘る安定的な生成(つまりエアロゾルE中の材料粒子Mの長期間に亘る濃度一定化)が可能になる。
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【0105】
本実施の形態のエアロゾル生成装置401によれば、実施の形態1のエアロゾル生成装置101の流路部材40が、以下の如く改変されている。
【0106】
エアロゾル生成装置401の流路部材60は、粉体8を移送させる粉体流路を構成するものであり、ここでは、樹脂製(例えばアクリル製)の円筒形の配管である。この流路部材60は、図4に示すように、収容容器5の内部からその外部に水平方向に向かって突出する形態で略U字状に曲がっている。また、流路部材60は、粉体収容室9の内壁面9Aにおける粉面8Aよりも上の箇所で、この内壁面9Aと交差する上交差部63を有する。また、流路部材60の入口開口60Aは、粉体収容室9の内壁面9Aにおける粉面8Aよりも下の箇所で、この内壁面9Aに形成されている。
【0107】
このため、流路部材60の上交差部63から流路部材60の出口開口60Bまでの部分は、粉体収容室9の内側において粉面8Aよりも上方に配置されている。流路部材60の入口開口60Aから流路部材60の上交差部63までの部分は、収容容器5の内部空間の外側に配置されている。
【0108】
このようにして、流路部材60は、粉体8の粉面8Aよりも下方に位置する入口開口60A、および、粉面8Aよりも上方に位置する出口開口60Bを有する。そして、流路部材60の入口開口60Aから流路部材60内に入った粉体8を、圧電振動子61による粉体8の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材60の出口開口60Bに向かう方向(上方向)に移送できる。また、本実施の形態では、流路部材60の入口開口60Aは、図4に示すように、透孔部材4の上の直近に設けられており、これにより、粉面8Aから離れた最下層付近の粉体8を流路部材60の入口開口60Aから吸い込むことができる。
【0109】
なお、本実施の形態では、流路部材60を伝播する定常波および進行波(超音波)を発生させる圧電振動子61を、流路部材60の出口開口60Bの近傍に取り付けているが、実施の形態1で述べた内容と同様に、このような圧電振動子61を流路部材60の入口開口60Aの近傍に取り付けてもよい。また、流路部材60の入口開口60Aの近傍および流路部材60の出口開口60Bの近傍のそれぞれに、各1個ずつ圧電振動子61を取り付けてもよい。
【0110】
以上の構成により、流路部材60の入口開口60Aから流路部材60内に入った粉体8は、圧電振動子61による粉体8の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材60の出口開口60Bへ向かう方向に移送され、その落下位置(ここでは出口開口60B)に到達する。粉体8は、その後、落下位置からの自重により粉面8Aに落ちる。一方、粉体8は、流路部材60の入口開口60Aから流路部材60内に吸い込まれる。
【0111】
このようにして、粉体8の循環型の流動を起こすことにより、粉体8の内部に流動層を形成できる。
【0112】
粉体8内の循環型の流動により、エアロゾル生成装置401の長期間使用に際しても材料粒子Mの凝集を適切に低減できる。つまり、本実施の形態では、粉体8内の流動により、材料粒子Mの凝集体が擦れ合い、凝集体が解砕されるという効果がある。また、本実施の形態では、粉体8を落下位置から粉面8Aに自重落下させているので、材料粒子Mの凝集体を、凝集体の自重落下の際の落下エネルギーにより解砕できるという効果がある。この場合、落下位置と粉面8Aとの間の高さ方向の距離(粉体8の落差)は、落下位置における材料粒子Mの凝集体の位置エネルギーと材料粒子M間に働く凝集エネルギーとの間の比較から適宜設定すればよい。
【0113】
以上に述べた材料粒子Mの凝集体の解砕効果により、エアロゾル生成装置401によるエアロゾルEの長期間に亘る安定的な生成(つまりエアロゾルE中の材料粒子Mの長期間に亘る濃度一定化)が可能になる。
【0114】
更に、本実施の形態では、流路部材60の出口開口60Bの水平位置は、その入口出口60Aの位置および粉体8の安息角との関係から、以下の如く設定されている。
【0115】
図5は、流路部材における出口開口の水平位置の設定法を説明する図である。
【0116】
まず、流路部材60の入口開口60A(正確には入口開口60Aの下端)が粉体収容室9の内壁面9Aにおいて対向する対向位置64と、流路部材60の出口開口60Bの中心との間を結ぶ第1仮想直線64Aが、水平面に対してなす角を角度θとする。そして、この場合のなす角θが材料粒子Mの粉体8の安息角θ(ここでは、50〜60°)よりも大きくなるように、流路部材60の出口開口60Bを流路部材60の入口開口60Aから離す方が好ましい。これにより、図4の細い2点鎖線で示したように、流路部材60の入口開口60Aから充分に離れた位置から粉体8を粉面8Aに落とすことができ、その結果、対向位置64において安息角θが作る粉体8の壁を崩しながら、粉体8の広範囲な領域を流動化できるようになる。
【0117】
一方、流路部材60の入口開口60Aの上端位置65と、流路部材60の出口開口60Bの中心との間を結ぶ第2仮想直線64Bが、水平面に対してなす角を角度θとする。この場合のなす角θが材料粒子Mの粉体8の安息角θよりも大きくなるように、流路部材60の出口開口60Bを、上述の場合とは逆に、流路部材60の入口開口60Aに近づける方が好ましい。これにより、粉体8のエアロゾル化の進行に伴い粉体8の量が減少した場合、図5の太い2点鎖線で示したように、入口開口60Aにおいて安息角θが作る粉体8の壁により、粉体8が入口開口60Aにまで到達しないという状況を回避できるようになる。
【0118】
以上の2つの理由により、流路部材60の出口開口60Bの水平位置は、図5に示すように、対向位置64から安息角θの方向に引いた線(図5の点線参照)よりも上方、かつ、上端位置65から安息角θの方向に引いた線(図5の点線参照)より上方の領域に存在することが最適であると考えられる。
【0119】
なお、上述の粉体8の安息角θは、材料粒子Mの収容容器5への投入前に、JISに準拠した適宜の安息角測定器により求めればよい。
(変形例1)
以下、実施の形態3のエアロゾル生成装置401の透孔部材4の構成を改変した変形例について説明する。
【0120】
図6は、実施の形態3における変形例1によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【0121】
図6に示すように、エアロゾル生成装置501の収容容器5の内部には、その内部空間を2つの室に仕切るように板状の透孔部材4Cが設けられている。収容容器5の内部空間のうち、透孔部材4Cで仕切られた上方の空間が材料粒子Mの粉体8を収容するための粉体収容室9として機能する。下方の空間がキャリアガスを粉体収容室9に導くためのキャリアガス導入室10として機能する。
【0122】
透孔部材4Cは、多数の透孔(図示せず)を有し、透孔部材4Cの上に材料粒子Mの粉体8が収容されている。材料粒子Mの材料や粒子径は、実施の形態1で述べた内容と同じである。
【0123】
また、透孔部材4Cは、材料粒子Mの粉体8をその自重により流路部材60の入口開口60Aに向けて移動させるように傾斜している。これにより、入口開口60Aから離れた位置にある粉体8を、粉体8の自重によって入口開口60Aに移動させることができる。
(変形例2)
図7は、実施の形態3における変形例2によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【0124】
本変形例のエアロゾル生成装置601によれば、実施の形態3のエアロゾル生成装置401の流路部材60の設計と、実施の形態1のエアロゾル生成装置101の流路部材40の設計との組合せに基づいて、エアロゾル生成装置601の流路部材70が構成されている。
【0125】
本実施の形態では、流路部材70の入口開口70Aは、実施の形態3のエアロゾル生成装置401によりも粉体8の中央寄りに位置しており好適である。また、実施の形態2(図3)の如く、透孔部材4Aに排出口4Bを設ける必要がなく作り易さの点で有益である。
【0126】
エアロゾル生成装置601の流路部材70は、粉体8を移送させる粉体流路を構成するものであり、ここでは、樹脂製(例えばアクリル製)の円筒形の配管である。
【0127】
流路部材70は、図7に示すように、略L字状に曲がり、粉体収容室9内に収容された粉体8の内部に埋没している部分と、収容容器5の内部からその外部に水平方向に向かって突出する形態で略U字状に曲がっている部分とを有する。つまり、流路部材70は、粉体収容室9の内壁面9Aにおける粉面8Aよりも下の箇所で、この内壁面9Aと交差する下交差部72を有する。また、流路部材70は、粉体収容室9に内壁面9Aにおける粉面8Aよりも上の箇所で、この内壁面9Aと交差する上交差部73を有する。
【0128】
このため、流路部材70の上交差部73から流路部材70の出口開口70Bまでの部分は、粉体収容室9の内側において粉面8Aよりも上方に配置されている。流路部材70の下交差部72から流路部材70の入口開口70Aまでの部分は、粉体8内に埋没している。流路部材70の下交差部72から流路部材60の上交差部73までの部分は、収容容器5の内部空間の外側に配置されている。
【0129】
このようにして、流路部材70は、粉体8の粉面8Aよりも下方に位置する入口開口70A、および、粉面8Aよりも上方に位置する出口開口70Bを有する。そして、流路部材70の入口開口70Aから流路部材70内に入った粉体8を、圧電振動子71による粉体8の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材70の出口開口70Bに向かう方向(上方向)に移送できる。一方、粉体8は、流路部材70の入口開口70Aから流路部材70内に吸い込まれる。特に、流路部材70の入口開口70Aが粉体収容室9内に収容された粉体8の内部の最下層付近に位置しているので、この部分から粉体8を吸い上げることができる。
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。図9は、図8のエアロゾル生成装置の粉体収容室内を上下方向から平面視した図である。但し、図9では、ジェットガス導入配管81(後述)および循環流動機構の図示を省略している。
【0130】
本実施の形態のエアロゾル生成装置701によれば、実施の形態1のエアロゾル生成装置101に、以下のジェットミル85が付加されている。
【0131】
エアロゾル生成装置701のジェットミル85(ガス噴射手段)は、円筒状のジェットミル本体80を備える。
【0132】
図8および図9に示すように、ガス噴射用の6個のジェットノズル(ガス噴射口)83が、ジェットミル本体80の周方向に等間隔にジェットミル本体80に設けられている。また、このジェットノズル83に高圧状態のガス(具体的には上述のキャリアガスと同じ種類のガス)を導くためのジェットガス導入配管81が、ジェットノズル83に連通している。
【0133】
上述の6個のジェットノズル83は何れも、図9に示すように、そのガスの噴射方向が、ジェットミル本体80の動径方向に対して同じ角度で時計回りの方向に傾いている。これにより、ジェットミル本体80の内部に、ガスの旋回流を発生でき、その結果、円環状の噴射領域86を形成できる。
【0134】
ここで、実施の形態1で述べた粉体8の落下位置(傘状板42の端の位置)は、噴射領域86との関係で設定されている。つまり、ジェットノズル83は、流路部材40の出口開口40Bから傘状板43を経て落下する粉体8の落下経路との関係で設定され、具体的には、この落下経路が、図9に示すように、噴射領域86内の所定のポイントで交差するようになっている。このポイントは、噴射領域86内であれば何処でもよいが、ジェットノズル83のガス噴射方向の延長線上に存在することが好ましい。
【0135】
これにより、ジェットノズル83から噴射される超高速のガスを、噴射領域86において粉面8Aへ落下途中の粉体8に当てて、材料粒子Mの凝集体同士の衝突、材料粒子M同士の衝突、または、材料粒子Mの凝集体と材料粒子M間との衝突によって、材料粒子Mの凝集体の解砕や材料粒子Mの破砕(つまり材料粒子Mのその破片への粉砕)がなされる。
【0136】
ジェットノズル83から噴射されるガスの噴射圧を適切に弱めると、材料粒子Mの凝集体の解砕のみを実行できる。この場合、上述の噴射領域86は、材料粒子Mの凝集体の解砕領域として機能する。また、ジェットノズル83から噴射されるガスの噴射圧を適切に強めると、材料粒子Mの凝集体の解砕および材料粒子Mの破砕の両方を実行できる。この場合、上述の噴射領域86は、材料粒子Mの凝集体の解砕領域および材料粒子Mの破砕領域として機能する。
【0137】
以上の構成により、流路部材40の入口開口40Aから流路部材40内に入った粉体8は、圧電振動子41による粉体8の超音波搬送の作用により、重力に逆らって、流路部材40の出口開口40Bへ向かう方向に移送され、上述の落下位置に到達する。粉体8は、その後、この落下位置からの自重により粉面8Aに落ちる。このとき、粉面8Aへ落下途中の粉体8は、噴射領域86において解砕または破砕される。粉面8Aへの落下途中の粉体8が充分に微細になると、粉面8Aに落ちることなく、キャリアガスによりエアロゾル化される。一方、粉面8Aへの落下途中の粉体8の微細化が不充分な場合、粉体8は粉面8Aに落ちる。
【0138】
このような粉体8の噴射領域86における材料粒子Mの凝集体の解砕効果および材料粒子Mの破砕効果により、エアロゾル生成装置101によるエアロゾルEの長期間に亘る安定的な生成(つまりエアロゾルE中の材料粒子Mの長期間に亘る濃度一定化)が可能になる。特に、本実施の形態では、材料粒子Mの凝集体の解砕に加え、材料粒子Mの破砕をも適切に行える。このため、本実施の形態のエアロゾル生成装置701は、上述の粉体8の循環型の流動との協働により、粉体8に溜まったエアロゾル化に適さない程度の粒子径の大きな材料粒子Mであってもエアロゾル化に適するように破砕でき、収容容器5を開放させて粉体8を外部に取り出すことなく、粉体8を使い切るまで連続的にエアロゾルEを生成できる。
【0139】
更に、本実施の形態では、ジェットノズル83から噴射されるガスの噴射圧および循環型の流動により循環される粉体8の量を調整することにより、エアロゾルE中の材料粒子Mの濃度を調整することができる。
【0140】
なお、ここでは、詳細な説明を省略するが、図10に示すように、実施の形態2のエアロゾル生成装置301に、ジェットミル85を付加してもよい。この場合のエアロゾル生成装置801は、上述の如く、粉体8の落下位置(ここでは流路部材50の出口開口50B)を噴射領域86との関係で適切に設定することにより、以上に述べた効果と同じ効果を奏する。
(粉体8の移送手段についての変形例)
実施の形態1、2、3および4では、流路部材内の粉体8を、重力に逆らって、流路部材の入口開口から出口開口へ向かい方向に移送させる移送手段として、電歪効果を利用して超音波を発生する圧電振動子を例示した。しかし、このような移送手段は、圧電振動子に限らない。例えば、移送手段は、圧電振動子に代えて、超音波を発生する他の振動子(例えば、磁歪効果を利用した振動子)であってもよい。また、移送手段は、超音波搬送以外の粉体の搬送原理を用いたアクチュエータ(例えば、ダイアフラムポンプやスクリューフィーダ)であってもよい。また、後述のとおり(実施の形態5)、実施の形態1、2、3および4に記載のエアロゾル生成装置に、超音波搬送以外の他の移送手段(ダイアフラムポンプ、スクリューフィーダ、または、一軸偏心ポンプなど)を組み込んでもよい。
(収容容器にガスを供給するガス供給手段についての変形例)
実施の形態1、2、3および4では、収容容器5にキャリアガスを供給させるキャリアガス供給手段のガス供給配管として、収容容器5のキャリアガス導入室10に連通するキャリアガス配管15を例示した。しかし、このようなキャリアのガス供給配管は、収容容器5の粉体収容室9とガスボンベ11との間を連通する連通配管であってもよい。例えば、本変形例のエアロゾル生成装置は、収容容器5のキャリアガス導入室10に連通する上述のキャリアガス配管15(図1参照)、および、ガスボンベ11と収容容器5の粉体収容室9との間を連通する上述の連通配管の両方を備えてもよい。
【0141】
この連通配管は、具体的には、収容容器5の第1蓋部材2を貫通して粉体収容室9の内部を下方に延びている。そして、連通配管は、そのキャリアガスを吐出する先端開口が、粉面8Aより下方の粉体8内であって、透孔部材よりも上方に位置している。また、連通配管の途中には、マスフローコントローラ(流量調整器)が設けられている。
【0142】
このようにして、ガスボンベ11から排出される適量のガスが、上述の連通配管を介してキャリアガスとして収容容器5の粉体収容室9の粉体8内に供給される。なお、連通配管とキャリアガス配管15とを連通する適宜の集合配管を使用することにより、一つのガスボンベ11により、連通配管を流れるガスおよびキャリアガス配管15を流れるガスの供給を賄うことができる。
(エアロゾル生成装置の収容容器についての変形例)
本実施の形態1、2、3および4では、収容容器5と噴射ノズル19との間にエアロゾル配管17を引き回して、このエアロゾル配管17により両者を接続する構成を述べたが、これは飽くまで一例に過ぎない。この収容容器5は、様々な形態に改変できる。例えば、噴射ノズル19と一体化した収容容器を、成膜チャンバ30内に組み込んでもよい。この場合、成膜チャンバ30内において、材料粒子Mの粉体8を収容するための粉体収容室として機能する部分やキャリアガス導入室として機能する部分が、エアロゾル生成装置の本体に相当する。
【実施例】
【0143】
図11は、実施の形態1で述べた粉体の循環型の流動に基づいて発揮されるエアロゾル安定供給効果、および、実施の形態4で述べた粉体の循環型の流動と粉体へのジェットミルによるガス噴射との組合せに基づいて発揮されるエアロゾル安定供給効果を説明する図である。
【0144】
図11の横軸には、エアロゾル生成装置によるエアロゾル生成開始時からの経過時間(h)をとっている。図11の縦軸には、エアロゾル生成装置により生成されたエアロゾルE中の材料粒子Mの濃度をとっている。この縦軸の数値は、実際には、基板20(図1参照)の電位(−mV)であり、このような電位の変化が、材料粒子Mが基板20に衝突する際に生じる電気エネルギーの多少を表すものと推定されることから、材料粒子Mの個数(濃度)に相関する値であると考えられる。
【0145】
図11の実線で示されたプロファイル120は、粉体8の循環型の流動および粉体8へのジェットガス噴射の両方とも実行しなかった場合において、実測データのプロットをつないだ線である。これに対し、図11の細い二点鎖線で示されたプロファイル121は、粉体8の循環型の流動のみを実行した場合に予想される傾向を表した線である。図11の太い二点鎖線で示されたプロファイル122は、粉体8の循環型の流動および粉体8へのジェットミル85によるガス噴射の両方を実行した場合に予想される傾向を表した線である。
【0146】
図11に示すように、プロファイル121では、プロファイル120に比べて、エアロゾルE中の材料粒子Mが安定供給(つまり材料粒子Mの濃度が一定)となる時間を適切に延ばせると期待される。また、プロファイル122では、プロファイル121よりも更に、エアロゾルE中の材料粒子Mの濃度が安定供給(つまり材料粒子Mの濃度が一定)となる時間を適切かつ充分に延ばせると期待される。
(実施の形態5)
以上に述べたエアロゾル生成装置を、様々な種類の粉体8(材料粒子M)を移送可能に構成することが好ましいが、材料粒子Mの特性(例えば、凝集し易い材料粒子)によっては、粉体流路を形成する流路部材の内壁などに材料粒子Mが堆積する場合がある。材料粒子Mが流路部材の内壁に堆積すると、流路部材の粉体8による目詰まりによって、粉体8の移送量を一定に保つことが困難になり、最悪、粉体8を移送できなくなる。
【0147】
特に、粉体8の超音波搬送のみでは、粉体8を循環させる移送量を充分に確保できない場合、実施の形態1、2、3および4に記載のエアロゾル生成装置に、超音波搬送以外の他の移送手段(ダイアフラムポンプ、スクリューフィーダ、または、一軸偏心ポンプなど)を組み込むことがある。この場合、スクリューフィーダのスクリューのブレードなどにも材料粒子Mが堆積することになり、流路部材の粉体8による目詰まりの可能性が更に高くなる。例えば、特開平9−253476号公報には、スクリューフィータでの材料粒子の堆積の問題がすでに指摘されている。
【0148】
そこで、本実施形態のエアロゾル生成装置は、以上の不都合に適切に対処でき、様々な種類の粉体8(材料粒子M)を移送可能に構成されている。
【0149】
図12は、本発明の実施の形態5によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。図12のエアロゾル生成装置501Aでは、図6のエアロゾル生成装置501の流路部材60内に、スクリューフィーダのスクリュー92を組み込んだ例が図示されている。
【0150】
スクリューフィーダのスクリュー92は、多数のブレード、又は一の螺旋状のブレードを有する棒状に構成されており、駆動モータ90の回転駆動力により、その軸周りに回転できる。スクリュー92の回転数を変更すると、粉体8の移送量を適切に調整でき、粉体8を循環させる移送量を適切に確保できる。なお、流路部材60の直線部分が、スクリュー92のケーシング部に相当する。
【0151】
また、本実施形態のエアロゾル生成装置501Aでは、図12に示すように、流路部材60の適所に所定の振動を与えることができる振動子91が配されている。振動子91の振動条件が適切に設定されると、流路部材60内の粉体8の流動性を増すことができ、粉体8の流路部材60の内壁などへの堆積を適切に防止できると考えられる。振動子91の振動条件の具体的な設定法については後述する。
【0152】
制御装置300Aは、図12に示すように、駆動装置6を用いて超音波搬送用の圧電振動子61の出力を調整するとともに、駆動装置96を用いて粉体堆積防止用の振動子91の出力を調整している。また、制御装置300Aは、モータ駆動装置97を用いて駆動モータ90の出力を調整でき、これにより、スクリュー92の回転数が制御されている。
【0153】
次に、本実施形態の特徴部である振動子91の振動条件の設定法について説明する。ここでは、振動子91の振動条件として、後述する振動子91の振動による最大加速度が用いられている。
【0154】
図13は、粉体堆積防止用の振動子の振動による最大加速度を求めるための振動試験機の概要を示した模式図である。
【0155】
図13に示すように、振動試験機150は、エアロゾル生成装置501Aにおいて使用されている粉体8(材料粒子M)が収容されたホッパー153と、ホッパー153から流下する際の粉体8を溜める受け皿152と、を備える。
【0156】
受け皿152は、適宜の重量測定器(図示せず)に支持されており、この重量測定器により、ホッパー153から鉛直方向に流下する際の粉体8の流量(単位時間当たりのグラム数)を測定できるように構成されている。
【0157】
また、ホッパー153は、図13に示すように、円柱状の内部が形成された円管部(管部材)153Aを備える。この円管部153Aの断面積S1(ここでは、図13のI−I断面図に示すように振動子151を取り付けた部分の断面積)は、ホッパー153の底から重力により粉体8を流出させる場合に、円管部153Aにおける粉体8の閉塞作用により上方の粉体8の層が支えられ、粉体8の流出が止まる現象を起こすような大きさとなっている。
【0158】
ここで、上述の粉体8の閉塞については、図13に示すように、円管部153Aに振動子151を取り付け、円管部153Aに一定レベル以上の振動を与えると、崩せることが一般的に知られている。
【0159】
図14は、図13の振動試験機を用いて得られる粉体の流量プロファイルの予測傾向を表した図(イメージ図)である。図14の横軸は、振動子151の振動による最大加速度を表し、図14の縦軸は、円管部153Aを流下する粉体8の流量(単位時間当たりのグラム数)を表している。つまり、図14には、振動子151の振動による最大加速度と粉体8の流量との間の相関関係に基づいた粉体8の流量プロファイル141の予測傾向が示されている。
【0160】
ところで、振動の変位(x)、速度(v)および加速度(G)は、例えば、正弦波振動の場合で例示すると、図15に示すような関係にあり、振動加速度は、振動の変位(振幅)や振動数(周波数)により変化する。また、振動加速度の大きさの単位として、重力加速度G(9.8m/s)を用いることが多い。本明細書では、振動子の振動による最大加速度とは、正弦波振動の場合、図15に示すように、振動変位(x)の片振幅の最大値Xmax(振動速度(v)であれば、ゼロ値V0)に対応する加速度(G)の最大値Amaxを指すものとする。よって、振動子151用の駆動電源(図示せず)を用いて、振動子151の振動による振幅や周波数を変更(操作)すれば、振動子151の振動による最大加速度を適宜、変えることができる。
【0161】
上述の振動試験機150を用いた振動試験の結果、本件発明者は、円管部153Aの断面積S1を流路部材60の開口断面積S2(正確には、図12のII−II断面図に示すように、振動子91を取り付けた部分の開口断面積)の10%にすると、粉体8の閉塞が崩れて粉体8が円管部153Aを流下する場合の振動子151の振動による最大加速度を把握することにより、粉体堆積防止用の振動子91の振動による最大加速度が適切に求まることを見出した。
【0162】
そこで、まず、円管部153Aの断面積S1を流路部材60の開口断面積S2の10%にして、図14に示すような粉体8の流量プロファイル141を求める。すると、流路部材60に取り付けられた振動子91の振動による最大加速度の好適な範囲を、粉体8の流量プロファイル141の立ち上がり位置Aに対応する最大加速度以上として特定できる。
【0163】
また、振動子91の振動による最大加速度の更なる好適な範囲を、流量プロファイルの最大値Qmaxの半分となる流量プロファイル141の位置Bに対応する最大加速度以上として特定できる。
【0164】
但し、振動子91の振動による最大加速度が大き過ぎると、様々な不都合(例えば、振動91による構造体破損や振動エネルギーロス増大など)を生じることがあるので、振動子91の振動による最大加速度は、流量プロファイル141の立ち上がり位置Aに対応する最大加速度の20倍以下であることが好ましく、更に、その10倍以下であることがより好ましい。
【0165】
以上に述べたように、流路部材60に取り付けられた振動子91は、内部の断面積S1が流路部材60の開口断面積S2の10%である円管部153Aに粉体8を収容した際に、この粉体8を流下させるに必要な大きさの円管部153Aへの振動による最大加速度を流路部材60に与えている。これにより、流路部材60に取り付けられた振動子91の振動条件の適切な設定がなされ、流路部材60内の粉体8の流動性を増すことができ、ひいては、粉体8の流路部材60の内壁などへの堆積を適切に防止できる。そして、このような状態が長期に亘り保たれることにより、流路部材60の粉体8による目詰まりの懸念がなくなる。その結果、本実施形態のエアロゾル生成装置501Aは、様々な種類の粉体8(材料粒子M)を適切に移送できる。
【0166】
なお、ここまで、エアロゾル生成装置501の流路部材60に、粉体堆積防止用の振動子91に配した例を述べた。しかしながら、本実施形態の粉体堆積防止技術は、これに限定されず、粉体を扱う様々な移送手段(ダイアフラムポンプ、スクリューフィーダ、または、一軸偏心ポンプなど)に適用できる。
【0167】
例えば、図16には、スクリューフィーダのケーシング部98に、上述の振動子91と同じ類の振動子91Aを取り付けた例が示されている。これにより、スクリューフィーダのホッパー95の内面、スクリュー99の表面およびケーシング部98の内壁などへの粉体の堆積を適切に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明のエアロゾル生成装置およびエアロゾル生成方法によれば、粉体収容室に収容された粉体の材料粒子の凝集を適切に低減して、エアロゾルを長期間に亘り安定的に生成できる。よって、本発明は、AD法を用いた成膜装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の実施の形態1によるエアロゾル生成装置を装備した成膜装置の構成例を示した模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【図3】本発明の実施の形態2によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【図4】本発明の実施の形態3によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【図5】実施の形態3における流路部材の出口開口の水平位置の設定法を説明する図である。
【図6】実施の形態3における変形例1のエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【図7】実施の形態3における変形例2のエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【図8】本発明の実施の形態4によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【図9】図8のエアロゾル生成装置の粉体収容室内を上下方向から平面視した図である。
【図10】本発明の実施の形態4によるエアロゾル生成装置の他の構成例の要部を示した模式図である。
【図11】実施の形態1で述べた粉体の循環型の流動に基づいて発揮されるエアロゾル安定供給効果、および、実施の形態4で述べた粉体の循環型の流動と粉体へのジェットミルによるガス噴射との組合せに基づいて発揮されるエアロゾル安定供給効果を説明する図である。
【図12】本発明の実施の形態5によるエアロゾル生成装置の構成例の要部を示した模式図である。
【図13】粉体堆積防止用の振動子の振動による最大加速度を求めるための振動試験機の概要を示した模式図である。
【図14】図13の振動試験機を用いて得られる粉体の流量プロファイルの予測傾向を表した図である。
【図15】正弦波振動の場合における振動の変位(x)、速度(v)および加速度(G)の関係を示した図である。
【図16】粉体堆積防止用の振動子が取り付けられたスクリューフィータの構成例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0170】
1 収容容器の壁部
2 第1蓋部材
3 第2蓋部材
4 透孔部材
5 収容容器
6 駆動装置
8 粉体
9 粉体収容室
10 キャリアガス導入室
11 ガスボンベ
12 流量調整器
15 キャリアガス配管
17 エアロゾル配管
19 噴射ノズル
20 基板
21 基板ホルダ
22 基板ホルダ駆動機構
30 成膜チャンバ
31 第1真空ポンプ
32 第2真空ポンプ
41、51、61、71 超音波搬送用の圧電振動子
91 粉体堆積防止用の振動子
100 エアロゾル生成機構
101 301、401、501、501A、601、701、801 エアロゾル生成装置
200 成膜機構
300、300A 制御装置
400 成膜装置
E エアロゾル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料粒子をキャリアガスに分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成装置であって、
材料粒子の粉体を収容するための粉体収容室を有する本体と、
前記本体の外部から前記粉体収容室に前記キャリアガスを供給するためのキャリアガス供給手段と、
前記粉体収容室内において開口する入口開口と出口開口とを有するとともに、入口開口が出口開口よりも鉛直方向において下方に位置する粉体流路と、
前記粉体流路内の前記粉体を、前記粉体流路の前記入口開口から前記出口開口へ向かう方向に移送する移送手段と、を備えたエアロゾル生成装置。
【請求項2】
前記移送手段は、前記粉体流路を形成する流路部材を振動させる振動子を有し、前記振動子で前記流路部材を振動させることにより、前記粉体流路内の前記粉体を移送する、請求項1記載のエアロゾル生成装置。
【請求項3】
前記流路部材における、前記入口開口の近傍部分と前記出口開口の近傍部分とのいずれか一方に、又は、その両方に、前記振動子が取り付けられた、請求項2記載のエアロゾル生成装置。
【請求項4】
前記流路部材における、前記入口開口の近傍部分と前記出口開口の近傍部分とのうちの、前記出口開口の近傍部分にのみ前記振動子が取り付けられた、請求項3記載のエアロゾル生成装置。
【請求項5】
前記本体は、前記粉体収容室の下方にキャリアガス導入室を有し、これらの室が複数の透孔が形成された透孔部材によって仕切られており、
前記キャリアガス供給手段が、キャリアガスを吐出する吐出開口を有し、
前記吐出開口が前記キャリアガス導入室に連通する、請求項1乃至4のいずれかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記粉体流路が、管状部材により形成されており、前記入口開口が前記粉体収容室内に収容された粉体の層の内部に位置している、請求項1乃至5のいずれかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記管状部材は、その中心軸が略鉛直方向に延びる直管状の管状部材であり、
前記管状部材が、前記粉体収容室の前記粉面高さにおける水平断面をその略中央部において貫通する、請求項6記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記透孔部材が、排出口を有する漏斗状の透孔部材であり、
前記粉体流路の前記入口開口が前記漏斗状の透孔部材の排出口に接続され、
前記粉体流路の前記出口開口が前記粉体収容室の内側に配された、請求項5記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記粉体流路の前記入口開口が前記粉体収容室の前記内壁面に形成され、
前記粉体流路の前記出口開口は、前記粉体収容室の内側に配された、請求項5記載のエアロゾル発生装置
【請求項10】
前記粉体収容室の内壁面において前記入口開口が対向する位置と、前記出口開口とを結ぶ直線が、水平面に対してなす角が、前記材料粒子の粉体の安息角よりも大きい、請求項9記載のエアロゾル発生装置
【請求項11】
前記入口開口と前記出口開口とを結ぶ直線が、水平面に対してなす角が、前記材料粒子の粉体の安息角よりも大きい、請求項9又は10記載のエアロゾル発生装置。
【請求項12】
前記透孔部材が、板状に構成され、前記材料粒子の粉体をその自重により前記入口開口に向けて移動させるように傾斜している、請求項9記載のエアロゾル発生装置。
【請求項13】
前記粉体流路の前記出口開口から前記粉面に落下する粉体に向けてキャリアガスを噴射するガス噴射手段を更に備えた、請求項1乃至12の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項14】
前記粉体流路の前記出口開口から前記粉面に落下する粉体の落下経路が、前記ガス噴射手段の噴射領域と交差するように、前記ガス噴射手段の噴射口が前記粉体収容室内に配置された、請求項13記載のエアロゾル発生装置。
【請求項15】
材料粒子をキャリアガスに分散させることによりエアロゾルを生成するエアロゾル生成方法であって、
前記材料粒子の粉体を粉体収容室に収容する粉体収容工程と、
前記粉体収容室内に前記キャリアガスを供給するキャリアガス供給工程と、
前記粉体収容室に収容された前記粉体の粉面よりも下方にある粉体を、前記粉面よりも上方の落下位置にまで移送する移送工程と、
前記落下位置にまで移送された粉体を前記粉面に落下させる落下工程と、を含む、エアロゾル生成方法。
【請求項16】
前記移送工程において、前記粉体収容室に収容された前記粉体の粉面よりも下方に入口開口を有し、前記粉面よりも上方に出口開口を有する粉体流路を形成する流路部材を、振動子で振動させることにより、前記粉面より下方にある粉体を、前記粉体流路を介して前記落下位置まで移送する、請求項15記載のエアロゾル生成方法。
【請求項17】
前記落下位置から前記粉面に落下する粉体に向けて、ガス噴射手段からキャリアガスを噴射するガス噴射工程をさらに含む、請求項15又は16記載のエアロゾル生成方法。
【請求項18】
円柱状の内部の断面積が前記粉体流路を形成する流路部材の開口断面積の10%である管部材に前記粉体を収容した際に、前記粉体を流下させるに必要な大きさの前記管部材への振動による最大加速度を前記流路部材に与えることができる振動子を備えた、請求項1記載のエアロゾル生成装置。
【請求項19】
前記振動子の振動による最大加速度は、前記最大加速度と前記管部材を流れる前記粉体の流量との間の相関関係に基づいた前記粉体の流量プロファイルの立ち上がり位置に対応する前記最大加速度以上に設定されている、請求項18記載のエアロゾル生成装置。
【請求項20】
前記振動子の振動による最大加速度は、前記流量プロファイルの最大値の半分となる前記流量プロファイルの位置に対応する前記最大加速度以上に設定されている、請求項19記載のエアロゾル生成装置。
【請求項21】
前記振動子の振動による最大加速度は、前記流量プロファイルの立ち上がり位置に対応する前記最大加速度の20倍以下に設定されている、請求項19又は20記載のエアロゾル生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−28709(P2009−28709A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341564(P2007−341564)
【出願日】平成19年12月29日(2007.12.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】