説明

エキシマ照射装置

【課題】平面状の被照射体に対して効率よく均一に、かつ安定してエキシマ光を照射することができるとともに、使用する放電用ガスの交換によって複数種類の波長のエキシマ光の何れかを選択的に照射することができるようにする。
【解決手段】放電容器2を、側面に流入口211及び流出口212を備えるとともに厚さ方向に直交する2面の一方が開放面にされた筐体形状の本体21と、開放面に接合される平板状の蓋体22で構成した。蓋体22は、加工容易な平板状であるため、広い波長域のエキシマ光に対する透過性の高いフッ化物で構成できる。本体21の流入口211を経由して放電容器2内に放電用ガス供給装置9から処理内容に応じた波長のエキシマ光を発生する放電用ガスを選択的に供給できる。放電容器2内で発生したエキシマ光は、平板状の蓋体22の全面から均一に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造における成膜、ドライ洗浄、表面活性化処理又はソフトアッシング等に用いられ、高周波放電によって紫外線(エキシマ光)を照射するエキシマ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造技術の分野におけるドライ洗浄、表面活性化処理及びソフトアッシング、並びに環境技術の分野におけるオゾンの生成、水や大気の汚染浄化及び超純水製造等に利用されるエキシマ光の光源として、エキシマランプを備えたエキシマ照射装置が用いられる。
【0003】
エキシマランプは、放電用ガスの種類に応じて126nm、146nm、172nm、193nm、222nmまたは308nmなどの単波長の紫外線(以下「エキシマ光」という。)を処理すべき被照射体に照射する。
【0004】
従来のエキシマ照射装置は一般に、チューブ形状のエキシマランプ(チューブ型エキシマランプ)を備えている(例えば、特許文献1又は2参照。)。チューブ型エキシマランプは、石英からなる主に円筒形状の放電容器と、その外側に配置された外部電極と、外部電極を保護するための石英管と、で構成されている。さらに、放電容器と石英管との間は、窒素ガスでパージされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−185089号公報
【特許文献2】特開2002−343306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のチューブ型エキシマランプは、円筒形状の放電容器の外周部の全周からエキシマ光を照射する。このため、円筒形状の放電容器の外周面から平面状の被照射体までの距離が外周面の曲率に応じて変化し、シリコンウエハ等の平板状の被照射体に対してエキシマランプで発生したエキシマ光の一部のみが照射されるに過ぎず処理効率が低い。また、エキシマ光は、大気中での透過性も低く、放電容器の外周面から約8mm以上離れた空気中の酸素をオゾン若しくは励起酸素原子又はOHラジカル若しくはOラジカルに十分に変化させることができない。このため、例えば、被照射体が成膜されたウエハである場合、外周面からの距離が十分に近い一部の有機化合物は分解されるが、外周面からの距離が長くなるに従って有機化合物を十分に分解することができなくなる。
【0007】
しかも、石英を素材とした放電容器では透過性の高いエキシマ光の波長も制限され、使用用途が限定される。例えば、172nm以下の波長のエキシマ光は、放電容器の素材である合成石英に対する透過性が低く、十分な光子エネルギを被照射体に照射できない。このため、従来のエキシマ照射装置では、処理可能な被処理物及び処理内容が限られ、被処理物自体や被処理物に対する処理内容の変化に対応することができない問題もある。
【0008】
この発明の目的は、平面状の被照射体に対して効率よく均一に、かつ安定してエキシマ光を照射することができるとともに、使用する放電用ガスの交換によって複数種類の波長のエキシマ光の何れかを選択的に照射することができるエキシマ照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のエキシマ照射装置は、放電容器、窓側電極層、背面側電極層、電源手段、及び放電用ガス供給手段を備えている。放電容器は、本体及び蓋体からなる。本体は、放電用ガスの流入口及び流出口を備え、厚さ方向に直交する互いに平行な2平面のうちの一方の面を開放面とした筐体である。蓋体は、エキシマ光を透過させる材料で構成された平板状を呈し、本体の開放面を被覆するように本体に接合される。窓側電極層は、蓋体の外側面に貼付され、エキシマ光を透過させる例えば網状電極である。背面側電極層は、本体における開放面に対向する背面の外側面に配置される。電源手段は、窓側電極層と背面側電極層との間に高周波電圧を印加する。放電用ガス供給手段は、本体の流入口から放電容器内に放電用ガスを供給する。
【0010】
この構成では、放電用ガス供給手段によって放電容器内に放電用ガスを供給しつつ、電源手段から窓側電極層と背面側電極層との間に高周波電圧を印加すると、放電容器内の放電用ガスがその種類に応じた波長のエキシマ光を発生する。放電容器内で発生したエキシマ光は、放電容器における厚さ方向に直交する互いに平行な2平面のうちの一方の面に配置された平板状の蓋体を被照射体に向かって全面にわたって均一に透過し、蓋体の外側に配置された窓側電極層を透過して被照射体に照射される。
【0011】
放電容器の蓋体は、平板状を呈するために素材として加工性を考慮する必要がなく、専らエキシマ光の透過性のみを考慮して素材を選択できる。放電容器は流入口及び流出口を介して外部に開放しており、必要とされるエキシマ光の波長に応じた放電用ガスを選択的に放電容器内に供給できる。したがって、広い範囲の各波長のエキシマ光について透過性の高い素材で蓋体を構成し、発生するエキシマ光の波長が異なる複数種類の放電用ガスの何れかを選択的に放電容器内に供給することで、複数種類の波長のエキシマ光が選択的に照射される。
【0012】
この構成において、放電容器の蓋体の素材としては、フッ化マグネシュウム、フッ化リチュウム、フッ化カルシュウムなどのフッ化物を用いることが好ましい。これらのフッ化物は、切削加工等には適さないが平板状に成形することが容易で、紫外線域内の比較的広い帯域にわたって高い光透過性を有し、多数種類の放電用ガスに適用できる。
【0013】
また、放電容器の本体の少なくとも開放面に対向する背面が遮光性を有するか、又は背面側電極が遮光性を有することが好ましい。背面から外部にエキシマ光が放出されることを防止し、蓋体を経由して被照射体に効率的にエキシマ光を照射することかできる。
【0014】
さらに、窓側電極層の外側面に密着して配置されてエキシマ光を透過させる電極側窓部材、及び電極側窓部材の外側に所定の間隙を設けて配置されてエキシマ光を透過させる被照射体側窓部材を設けた場合、被照射体側窓部材の外側に、エキシマ光を透過させるフィルタを被照射体側窓部材の外側面との間を無酸素状態にして着脱自在に備えることが好ましい。エキシマ光を照射された被照射体の表面に発生する塵埃により、被照射体側窓部材が汚損することを防止できる。また、フィルタの交換により、被照射体に対するエキシマ光の照射効率を回復することができる。なお、無酸素状態には、真空状態及び不活性ガスで置換された状態を含む。
【0015】
この場合には、電極側窓部材と被照射体側窓部材との間隙に不活性ガスを流通させる不活性ガス供給手段を備えることが好ましい。エキシマ光の発生時に放電容器内に生じた熱が間隙を流通する不活性ガスによって奪われ、放電容器を冷却することができる。
【0016】
加えて、放電容器における窓面以外の面の蛍光状態を検出するセンサと、センサの検出信号に応じてエキシマ光の照射状態を検出する制御部と、を備えることが好ましい。放電容器内におけるエキシマ光の発生状態を容易に確認することができる。この場合に、制御部は、センサの検出信号に応じて電源手段の出力を制御するようにしてもよい。
【0017】
さらに、背面電極層の外側に流体冷却手段を配置することで、放電容器の温度制御をより正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、平面状の被照射体に対して効率よく均一に、かつ安定してエキシマ光を照射することができるとともに、使用する放電用ガスの交換によって複数種類の波長のエキシマ光の何れかを選択的に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るエキシマ照射装置の断面図である。
【図2】同エキシマ照射装置に備えられる放電容器の断面図である。
【図3】同エキシマ照射装置の要部の拡大断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係るエキシマ照射装置の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、この発明の実施形態に係るエキシマ照射装置1は、下方の図示しないチャンバ内を水平方向に搬送される被照射体に対して、紫外線であるエキシマ光を照射する。このため、エキシマ照射装置1は、放電容器2、窓側電極層3、背面側電極層4、電源装置5、電極側窓部材6、被照射体側窓部材7、フィルタ8、放電用ガス供給装置9、不活性ガス供給装置10、フレーム20、カバー30、センサ40、制御部50、表示器60を備えている。放電容器2は、本体21及び蓋体22からなる。
【0021】
図2に示すように、本体21は、厚さ方向に直交する2面のうちの一方の面が開放面21Aにされた筐体であり、側面に流入口211及び流出口212が形成されている。このため、本体21は、加工性を考慮して例えば、厚さが1〜8mm程度の石英又は合成石英等の誘電体を素材としている。流入口211には、放電用ガス供給装置9が接続されている。流出口212には、圧力調整装置213が備えられている。圧力調整装置213は、流出口212の開口状態を変化させて、放電容器2内をエキシマ光の照射に適した圧力(例えば、通常1〜110KPa程度)に調整する。本体21の側面における流入口211及び流出口212の配置位置及び配置数は、放電用ガスの流通状態に応じて決定される。
【0022】
蓋体22は、エキシマ光を透過させる材料で構成された平板状を呈し、本体21の開放面21Aを被覆するように本体に接合される。蓋体22は、平板状を呈するために素材として加工性を考慮する必要がなく、専らエキシマ光の透過性のみを考慮して、例えば、フッ化マグネシュウム、フッ化リチュウム、フッ化カルシュウム等のフッ化物を素材としている。これらフッ化物は、切削加工等には適さないが平板状に成形することが容易で、紫外線域内の比較的広い帯域にわたって高い光透過性を有する。
【0023】
放電容器2は、本体21の流入口211及び流出口212を介して外部に開放している。このため、本体21と蓋体22との接合部分に気密性は要求されない。放電容器2は、例えば、縦及び横が3〜50cm、高さが1〜2cm程度に形成することができる。
【0024】
図3に示すように、窓側電極層3は、蓋体22の外側面に貼付される。窓側電極層3は、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、酸化銅、又はそれらの合金を素材として網目状に形成されている。窓側電極層3は、網目状に限るものではないが、蓋体22の全面にわたって均一に開口部を備える必要がある。蓋体22を透過したエキシマ光は、窓側電極層3の開口部を透過して被照射体に向かう。
【0025】
図3に示すように、背面側電極層4は、本体21の背面21B(本体21における厚さ方向に直交する方向の2面のうちの開放面21Aの反対側の面)の外側面に貼付される。背面側電極層4は、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、酸化銅、又はそれらの合金を素材として構成された網電極42とその上側に配置されるアルミニウム薄板の板電極43とからなる。板電極43は、放電容器2の背面(上面)側を遮光するこの発明の遮光部材であり、放電容器2内で発生したエキシマ光を放電容器2の前面(下面)側に向けて反射する。背面側電極層4は、エキシマ光が放電容器2内の各部で均一に放電して蓋体22での照射分布が均一になるように、背面21Bの全面に均一に配置される。
【0026】
背面側電極層4の上面は、背面部材41で被覆されている。背面部材41は、放電容器2をフレーム20に向けて押し付けて固定する。図1に示すように、背面側電極層4には、貫通孔4Aが形成されている。背面部材41は、石英又は合成石英を素材とした板状を呈している。放電容器2内で発生したエキシマ光の一部は、貫通孔4Aを通過して背面部材41に導かれる。背面部材41は、貫通孔4Aから漏出したエキシマ光によって蛍光する。
【0027】
なお、背面電極4を網電極42のみで構成した場合には、背面部材41を遮光性材料で構成し、この発明の遮光部材とすることもできる。この場合には、背面部材41の貫通孔4Aに対向する位置に貫通孔を形成する。
【0028】
図4に示すように、背面側電極層4を板状とすることで、別体の背面部材41を設けることなく、背面21Bに向かうエキシマ光が放電容器2の外部に漏出することを防止できる。この場合には、背面側電極層4が、この発明の遮光部材に相当する。また、背面21Bが遮光性を有する場合には、必ずしも背面側電極層4を板状とする必要もない。
【0029】
図1に示す電源装置5は、窓側電極層3と背面側電極層4との間に高周波電圧を印加する。窓側電極層3と背面側電極層4との間への高周波電圧の印加により、放電容器2内で放電用ガス11がエキシマ光を発生する。
【0030】
図1に示すように、電極側窓部材6は、上面の全面を窓側電極層3に密着させて配置されている。電極側窓部材6は、例えば、光透過性に優れたフッ化マグネシウム又はフッ化カルシウム等を素材として、板状に形成されている。
【0031】
被照射体側窓部材7は、フレーム20の開口部20A内に上方から嵌入させ、パッキン62を介して装着されている。被照射体側窓部材7は、例えば、光透過性に優れたフッ化マグネシウム又はフッ化カルシウム等を素材として、板状に形成されている。被照射体側窓部材7の上面の周縁部には、矩形断面の管体からなる支持体61が載置されている。支持体61の上面に電極側窓部材6が載置されている。被照射体側窓部材7の上方には、支持体61によって電極側窓部材6の底面との間に間隙12が形成されている。
【0032】
フレーム20の上面には、開口部20Aの外縁部に複数の支柱63が取り付けられている。支柱63には、上面から内部に向かってネジ穴が形成されている。このネジ穴には、背面部材41を上下に貫通した固定ネジ65が螺合する。固定ネジ65のネジ部の上部には、スプリング64が外嵌している。スプリング64は、固定ネジ65の頭部と背面部材41との間で圧縮されることにより、背面部材41を下方に押圧する。スプリング64の押圧力により、フレーム20に、被照射体側窓部材7、支持体61、電極側窓部材6、窓側電極層3、放電容器2、背面側電極層4及び背面部材41が下からこの順に積層して固定して配置される。
【0033】
フィルタ8は、光透過性に優れたフッ化マグネシウム又はフッ化カルシウム等を素材として、薄板状に形成されている。フィルタ8は、例えば、固定ネジを介して、全面を被照射体側窓部材7の底面に密着させて着脱自在に配置されている。被照射体の表面において発生した塵埃は、フィルタ8に付着し、被照射体側的度部材や電極側窓部材6に付着することがない。フィルタ8のみを交換又は清掃することで塵埃の付着によるエキシマ光の照射効率を回復することができ、エキシマ照射装置1のランニングコストを低減できる。
【0034】
なお、エキシマ照射装置1とその下方に配置されるチャンバとの間が、真空状態又は不活性ガスで置換された状態のように無酸素状態に維持される環境では、チャンバの上面にフィルタ8を装着することができる。チャンバの上面にフィルタ8を装着すると、フィルタ8をチャンバの上面に固定部材を介して固定する必要がなく、エキシマ照射装置1をチャンバの上方から排除するだけでフィルタ8の交換ができるため、フィルタ8の着脱作業を簡略化できる。処理内容に応じて被照射体側窓部材7の底面が汚損しない場合には、フィルタ8を省略することもできる。
【0035】
放電用ガス供給装置9は、この発明の放電用ガス供給手段であり、放電容器2の本体21に形成されている流入口211から放電容器2内に放電用ガスを供給する。放電用ガス供給装置9から放電容器2内に供給する放電用ガスは、被処理物に対する処理に必要とされるエキシマ光の波長に応じて、選択的に変更される。なお、流入口211及び流出口212を放電用ガス供給装置9に接続し、放電用ガス供給装置9が放電容器2内をエキシマ光の発生に適した圧力とするように、放電用ガスの供給量を変化させることで、圧力調整装置213を省略できる。
【0036】
蓋体22は、平板状を呈するために素材として加工性を考慮する必要がなく、専らエキシマ光の透過性のみを考慮して素材を選択できる。放電容器2は流入口211及び流出口212を介して外部に開放しており、必要とされるエキシマ光の波長に応じた放電用ガスを選択的に放電容器2内に供給できる。
【0037】
したがって、蓋体22の素材として、広い範囲の波長域にわたってエキシマ光の透過性が高い素材を選択することで、発生するエキシマ光の波長が異なる複数種類の放電用ガスの何れかを選択的に放電容器2内に供給して複数種類の波長のエキシマ光を選択的に照射することができる。
【0038】
不活性ガス供給装置10は、この発明の不活性ガス供給手段であり、支持体61の外周部に全周にわたって配置されたダクト9Aを介して、一例として窒素ガス等の不活性ガスを導入する。ダクト9Aの内側面及び支持体61の内外側面には所定の間隔で水平方向に孔部が形成されている。ダクト9Aの孔部から吐出された不活性ガスは、支持体61の内部を経由して間隙12内に導入される。間隙12は、不活性ガスによってパージされ、空気が排除される。また、エキシマ照射装置1から被照射体にエキシマ光を照射している間に、ガス供給装置10による間隙12への不活性ガスの供給を継続することで、間隙12に不活性ガスが流通し、電極側窓部材6を介して放電容器2が冷却される。
【0039】
なお、蓋体22の法線方向に沿って被照射体側窓部材7を電極側窓部材6に対して変位自在に支持する支持手段を備えることが好ましい。蓋体22の法線方向における間隙12の幅を調整することができ、間隙12における不活性ガスの流通量を調整することで温度制御が可能になる。
【0040】
放電容器2、窓側電極層3、背面側電極層4、電源装置5、電極側窓部材6及び背面部材41は、フレーム20の上面に載置された状態で配置され、カバー30で被覆されている。カバー30は、上面に窓部30A及び孔部30Bが形成されている。窓部30Aは、貫通孔4Aに対向する位置に配置されている。本体2が透光性を有する素材で形成されている場合には、放電容器2内で発生したエキシマ光の一部は、貫通孔4Aを経由して上方に露出する可能性がある。孔部30Bは、貫通孔41Bに対向する位置に形成されている。孔部30Bには、配線管70が挿入されている。配線管70の下端部は貫通孔41Bを貫通する。配線管70内には、電源装置5と窓側電極層3及び背面側電極層4とを接続する電源線が挿入される。
【0041】
センサ40は、カバー30の窓部30Aの外部に配置されている。センサ40は、窓部30Aを介して、貫通孔4Aから漏出したエキシマ光の背面部材41における蛍光を受光し、受光量に応じたレベルの検出信号を制御部50に出力する。放電容器2の側面が被覆されていない場合には、センサ40を放電容器2の側面に対向するように配置してもよい。
【0042】
制御部50は、センサ40が出力した検出信号に基づいて、表示器60の点灯状態を制御する。制御部50は、センサ40から所定レベル以下の検出信号が入力されると、表示器60を点灯させる。表示器60の点灯状態を視認することにより、エキシマ照射装置1から被照射体にエキシマ光が照射されているか否かを確認できる。
【0043】
また、制御部50は、検出信号のレベルに基づいて、電源装置5の出力を制御する。制御部50は、検出信号のレベルに応じた制御データを電源装置5に出力する。例えば、制御部40は、検出信号のレベルを基準レベルと比較し、比較結果に応じて駆動回路の高周波電圧を昇降させるように制御データを出力する。出力電源装置5は、制御データに応じた周波数の高周波電圧を窓側電極層3と背面側電極層4との間へ印加する。放電容器2内におけるエキシマ光の発生状態に基づいて電源装置5の出力をフィードバック制御することができ、被照射体に対する処理に適した光量のエキシマ光を安定して照射することができる。
【0044】
なお、制御部50による表示器60の点灯制御、及び電源装置5の出力制御は、必ずしも必須ではなく、何れか一方又は両方を省略することもできる。
【0045】
電源装置5から窓側電極層3と背面側電極層4との間に高周波電圧を印加することによって、放電容器2内で無声放電が起こり、蓋体22から均一且つ十分なエキシマ光が照射される。電源装置5は、例えば、1MHz〜20MHzの周波数で高周波電圧を印加する。これによって、発光効率や熱効率を向上させることができ、消費電力を小さくすることができる。より好ましい高周波電圧の周波数は、1MHz〜4MHzである。この時の高周波電圧は、1〜20kVが好ましい。高周波電圧が1kV未満の場合には、外部電極6と背面側電極層4との間で均一且つ十分な放電が起こらず、蓋体22から十分なエキシマ光を均一に照射することができない。
【0046】
また、高周波電圧が20kVを超える場合には、エキシマ照射量が飽和し、入力電力に対して十分な発光効率を得ることができないとともに、消費電力が大きくなるので効率が悪くなる。高周波電圧は、放電開始時と放電時のランプ静電容量が異なる。このため、例えば、電源装置5に放電開始時の印加周波数と放電時の印加周波数を切り換える機能を設け、電源装置5の出力をトランスにより昇圧して窓側電極層3と背面側電極層4との間に印加するようにしてもよい。
【0047】
エキシマ照射装置1は、大面積の蓋体22から均一にエキシマ光を照射できる。そのため、一度に多くの光量のエキシマ光を被照射体へ照射することができる。また、エキシマ光が蓋体22の全面から均一に照射される。このため、蓋体22と被照射体との間隔を一定にすることによって、均一な強度のエキシマ光を効率よく被照射体に照射することができ、被照射体には、減衰の少ないエキシマ光が大面積で照射され、表面改質処理や有機化合物の分解処理が効率的に行われる。
【0048】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1−エキシマ照射装置
2−放電容器
3−窓側電極層
4−背面側電極層
5−電源装置(電源手段)
6−電極側窓部材
7−被照射体側窓部材
8−フィルタ
9−放電用ガス供給装置(放電用ガス供給手段)
10−不活性ガス供給装置(不活性ガス供給手段)
21−本体
22−蓋体
211−流入口
212−流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電用ガスの流入口及び流出口を備え、厚さ方向に直交する互いに平行な2平面のうちの一方の面を開放面とした本体と、
エキシマ光を透過させる材料で構成された平板状を呈し、本体の開放面を被覆するように本体に接合される蓋体と、
前記開放面の外側面に配置され、エキシマ光を透過させる窓側電極層と、
前記放電容器における前記窓面に対向する背面の外側面に配置される背面側電極層と、
前記窓側電極層と前記背面側電極層との間に高周波電圧を印加する電源手段と、
前記流入口から放電用ガスを供給する放電用ガス供給手段と、
を備えたエキシマ照射装置。
【請求項2】
前記蓋体は、フッ化物を素材とする請求項1に記載のエキシマ照射装置。
【請求項3】
前記本体における前記開放面に対向する背面が遮光性を有する請求項1又は2に記載のエキシマ照射装置。
【請求項4】
前記本体における前記開放面に対向する背面の外側面の全面に遮光部材を配置した請求項1又は2に記載のエキシマ照射装置。
【請求項5】
前記窓側電極層の外側面に密着して配置されてエキシマ光を透過させる電極側窓部材と、
前記電極側窓部材の外側に所定の間隙を設けて配置されてエキシマ光を透過させる被照射体側窓部材と、
前記間隙に不活性ガスを流通させる不活性ガス供給手段と、
をさらに備えた請求項1乃至4の何れかに記載のエキシマ照射装置。
【請求項6】
前記被照射体側窓部材の外側に、紫外線を透過させるフィルタを前記被照射体側窓部材の外側面との間を無酸素状態にして着脱自在に備える請求項5に記載のエキシマ照射装置。
【請求項7】
前記窓側電極層は前記窓面の面方向に沿って複数の開口を有する網状電極である請求項1乃至6の何れかに記載のエキシマ照射装置。
【請求項8】
前記放電容器における前記窓面以外の面の蛍光状態を検出するセンサと、前記センサの検出信号に応じて前記紫外線の照射状態を検出する制御部と、を備えた請求項1乃至7の何れかに記載のエキシマ照射装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記センサの検出信号に応じて前記電源手段の出力を制御する請求項8に記載のエキシマ照射装置。
【請求項10】
前記背面電極層の外側に流体冷却手段を配置した請求項1乃至9の何れかに記載のエキシマ照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−3463(P2011−3463A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146779(P2009−146779)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(508335668)株式会社クォークテクノロジー (4)
【出願人】(000108753)タツモ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】