説明

エストロゲン様作用剤

【目的】カンナ、カンラン及びロッダの抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含有するエストロゲン様作用剤および抗老化用皮膚外用剤を提供する。
【構成】本発明のカンナ、カンラン及びロッダの抽出物から選ばれる1種又は2種以上含有物は、優れたエストロゲン様作用を発揮することにより、加齢に伴って起こるエストロゲン量の減少や欠乏状態が一因であると考えられている皮膚の萎縮やしわ、たるみ等の変化を抑制または改善させる抗老化用皮膚外用剤を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナ、カンランおよびロッダの抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含有するエストロゲン様作用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エストロゲンは、糖代謝や骨、脳や血管など様々な器官に影響を及ぼしていることが知られている性ステロイドホルモンである。エストロゲンの天然の型としては、エストラジオール―17β、エストロンおよびエストリオールなどが挙げられるが、生体で産生されるエストロゲンの中で最も作用が強いのは、エストラジオール―17βである。
【0003】
エストロゲンには、コラーゲンの合成を促進し、生合成されて間もない若い低架橋コラーゲンの割合を増やす効果が認められている。このことは、真皮の若さを保ち皮膚に張りを与える効果につながる。さらに、エストロゲンには紫外線ストレスの軽減効果がある。同一線量の紫外線を雌雄のマウスに照射したとき、そのダメージは雄の方が大きく、雌の有するエストロゲンが紫外線に対して抵抗性を与えることが示唆されている(非特許文献1)。また、エストロゲンの減少は、紫外線によるコラーゲン分解酵素の活性を高め、シワやタルミを引き起こすことから、女性ホルモンの分泌を促進することは、シワやタルミなどの皮膚の老化予防につながると考えられる(非特許文献2)。
【非特許文献1】河合 徳久,外1名,「イソフラボンのスキンケアへの応用」,フレグランスジャーナル 2000−12,p.129―131
【非特許文献2】田中 浩,外4名,「長期紫外線照射による卵巣摘出マウスの皮膚変化に及ぼすウリ科植物の影響」,第18回和漢医薬学会大会要旨,p.122
【0004】
さらに閉経後の女性では、エストロゲン量が減少し、欠乏状態となることが報告されており(非特許文献3)、加齢によるエストロゲン量低下と皮膚の老化症状は密接に関係していると考えられる。
【非特許文献3】Shah MG,Maibach HI.Am J Clin Dermatol.2001;2(3):143−50
【0005】
この様な事情により、エストロゲンには、スキンケアの分野において有用な効果が期待できるが、ホルモンそのものを人体に投与または皮膚外用剤等により投与することは、安全性や規制の面から困難であると考えられる。本発明者らは鋭意研究検討した結果、カンナ、カンランおよびロッダの抽出物がエストロゲン様作用を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明においては、エストロゲン様作用を発揮することにより、加齢によって起こる皮膚の萎縮やしわ、たるみ等の変化を抑制または改善させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明でいうカンナには、ハナカンナ(Canna generalis Bailey)、ダンドク(Canna indica L. var. orientalis Hook. fil.)およびその種間雑種あるいは属間雑種などカンナ科に含まれる植物が挙げられ、カンナやその種間雑種などは市販されている品種を、そして、ダンドクは九州などに自生するものを利用することができる。
本発明に用いるカンナの抽出物とは、植物体の葉、茎、花、実、根茎等の植物体の一部又は全草から抽出したものである。好ましくは、植物体の根茎から抽出して得られるものが良い。
【0008】
本発明でいうカンランは、学名がCanarium albumであり、南ベトナム原産の常緑小高木で、インドシナ、中国南部に分布している。果実が食べられるので、中国や台湾でも栽培され、鹿児島、沖縄地方にも植えられていることがある。民間では未熟果実を解毒薬とし、台湾では乾果を健胃薬とする。
本発明に用いるカンランの抽出物とは、植物体の葉、茎、樹皮、花、実等の植物体の一部又は全草から抽出したものである。好ましくは、植物体の葉から抽出して得られるものが良い。
【0009】
本発明に用いるロッダは、学名がSymplocos racemosaであり、インド原産のものは、アーユルヴェーダ生薬として、止血、下痢、目・肌の炎症、月経不順などに対して利用され、清涼剤・収斂剤としても名高い。
本発明に用いるロッダの抽出物とは、植物体の葉、茎、樹皮、花、実、根等の植物体の一部又は全草から抽出したものである。好ましくは、植物体の葉、茎及び樹皮から抽出して得られるものが良い。
【0010】
本発明のカンナ、カンランおよびロッダの抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温又は低温で抽出したものであっても良い。
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いても良い。
【0011】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭等の処理をして用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良いし、カラム精製等を行って有効成分を濃縮したり単離してから用いても良い。
【0012】
本発明のカンナ、カンランおよびロッダの抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含有するエストロゲン様作用剤を加齢による皮膚の萎縮やしわ、たるみ等の変化を抑制または改善する目的で用いるには、通常全身的又は局所的に外用により投与される。投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間などにより異なるが、通常成人1人当たり1回に1mg〜1g、好ましくは20mg〜200mgの範囲で1日1回から数回投与される。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0013】
本発明のエストロゲン様作用剤は、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤等の皮膚に適用されるものが挙げられる。上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤等の成分を配合することもできる。
【0014】
本発明に用いる上記抽出物の配合量は、本発明のエストロゲン様作用剤あるいは抗老化用皮膚外用剤に対し、固形物に換算して0.0001重量%以上、好ましくは0.001〜50重量%の配合が良い。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。50重量%を越えて配合した場合、効果の増強はみられにくく不経済である。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカンナ、カンランおよびロッダの抽出物およびこれを有するエストロゲン様作用剤および抗老化用皮膚外用剤は、エストロゲン様効果を発揮することにより、加齢によって起こる皮膚の萎縮やしわ、たるみ等の変化を抑制または改善することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、本発明の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を示し、%は重量%を示す。
【実施例1】
【0017】
製造例1 カンナの熱水抽出物
ハナカンナの茎と葉および根茎をそれぞれ生のまま細かく切断し、各100gに1000mlの水をそれぞれ加えた後に100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、濃縮した後に凍結乾燥してカンナの熱水抽出物を得た。茎と葉からは0.25g、そして、根茎からは0.5gの熱水抽出物を得た。
【0018】
製造例2 カンナのエタノール抽出物
ハナカンナの茎と葉および根茎をそれぞれ乾燥した後に細かく切断し、各100gに1000mlのエタノールをそれぞれ加えた後に50℃で8時間還流抽出した。得られた抽出液を濾過した後に濃縮乾固してカンナのエタノール抽出物を得た。茎と葉からは2.0g、そして、根茎からは4.5gのエタノール抽出物を得た。
【0019】
製造例3 カンナの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ハナカンナの根茎を生のまま細かく切断し、100gに、1,3−ブチレングリコール(1,3−BG)と水の混合液(1:1)を1000g加え、室温で2日間抽出した。抽出後、その抽出液を濾過してカンナの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を950g得た。
【0020】
製造例4 カンランの熱水抽出物
カンランの葉の乾燥物を細かく切断し、その100gに1000mlの水を加えた後に100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、濃縮した後に凍結乾燥してカンランの熱水抽出物7.0gを得た。
【0021】
製造例5 カンランの50%エタノール抽出物
カンランの葉の乾燥物を細かく切断し、その100gに1000mlの50%エタノールをそれぞれ加えた後に50℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過した後に乾燥してカンランの50%エタノール抽出物を10g得た。
【0022】
製造例6 カンランの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
カンランの葉の乾燥物を細かく切断し、その50gに精製水200g及び1,3−ブチレングリコール200gを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、カンランの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を370g得た。
【0023】
製造例7 ロッダの熱水抽出物
ロッダの樹皮の乾燥物20gに精製水400mlを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮した後凍結乾燥してロッダの熱水抽出物を4.0g得た。
【0024】
製造例8 ロッダのエタノール抽出物
ロッダの樹皮の乾燥物100gにエタノール1000mlを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮乾固して、ロッダのエタノール抽出物を5.8g得た。
【0025】
製造例9 ロッダの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
ロッダの樹皮の乾燥物20gに精製水200g及び1,3−ブチレングリコール200gを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、ロッダの50%1,3−ブチレングリコール抽出物を380g得た。
【実施例2】
【0026】
処方例1 クリーム1
処方 配合量
1.カンナの熱水抽出物(製造例1、根茎) 1.0部
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.1,3−ブチレングリコール 8.5
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.精製水 67.15
[製造方法]成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0027】
処方例2 クリーム2
処方 配合量
1.カンランの熱水抽出物(製造例4) 0.5部
2.ロッダの熱水抽出物(製造例7) 0.5
3.スクワラン 5.5
4.オリーブ油 3.0
5.ステアリン酸 2.0
6.ミツロウ 2.0
7.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
8.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
9.ベヘニルアルコール 1.5
10.モノステアリン酸グリセリン 2.5
11.香料 0.1
12.1,3−ブチレングリコール 8.5
13.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.精製水 67.15
[製造方法]成分3〜10を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び2と成分12〜15を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分11を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0028】
処方例3 クリーム3
処方例1において、カンナの熱水抽出物を、ロッダの50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例9)に置き換えたものをクリーム3とした。
【0029】
比較例1 従来のクリーム
処方例1において、カンナの熱水抽出物を精製水に置き換えたものを従来のクリームとした。
【0030】
処方例4 化粧水
処方 配合量
1.カンランの50%エタノール抽出物(製造例5) 0.1部
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 0.1
11.精製水 84.47
[製造方法]成分2〜6及び11と、成分1及び成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0031】
処方例5 乳液1
処方 配合量
1.カンナの50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例3) 0.5部
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水 72.7
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0032】
処方例6 乳液2
処方例5において、カンナの50%1,3−ブチレングリコール抽出物0.5部をカンランの熱水抽出物(製造例4)0.25部とロッダの熱水抽出物(製造例7)0.25部に置き換えたものを乳液2とした。
【0033】
処方例7 ゲル剤
処方 配合量
1.ロッダの50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例9) 1.0部
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
5.香料 0.05
6.1,3−ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水 83.25
[製造方法]成分2〜5と、成分1及び6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0034】
処方例8 パック
処方 配合量
1.ロッダのエタノール抽出物(製造例8) 0.1部
2.カンナの熱水抽出物(製造例1、根茎) 0.1
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3−ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 0.05
11.精製水 73.65
[製造方法]成分1〜11を均一に溶解し製品とする。
【0035】
処方例9 ファンデーション
処方 配合量
1.カンナのエタノール抽出物(製造例2、根茎) 0.5部
2.カンランの50%エタノール抽出物(製造例5) 0.5
3.ステアリン酸 2.4
4.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
5.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
6.セタノール 1.0
7.液状ラノリン 2.0
8.流動パラフィン 3.0
9.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
10.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
11.ベントナイト 0.5
12.プロピレングリコール 4.0
13.トリエタノールアミン 1.1
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.二酸化チタン 8.0
16.タルク 4.0
17.ベンガラ 1.0
18.黄酸化鉄 2.0
19.香料 0.1
20.精製水 60.1
[製造方法]成分3〜9を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分20に成分10をよく膨潤させ、続いて、成分1、2及び11〜14を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分15〜18を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分19を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0036】
処方例10 軟膏
処方 配合量
1.カンナの熱水抽出物(製造例1、根茎) 0.01部
2.カンランの50%1,3−ブチレングリコール抽出物(製造例6) 0.5
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水 66.39
[製造方法]成分3〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0037】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【実施例3】
【0038】
実験例1 エストロゲン受容体結合能検討
エストロゲンR(α)コンペチタブルスクリーニングキット(和光純薬)を用い、カンナ、カンランおよびロッダのエストロゲン受容体結合能を検討した。カンナ、カンランおよびロッダをDMSOに溶解し、Reaction solutionとの混合液をERα固相化ドライマイクロプレートに移し、室温で2時間反応後、洗浄液によりフリーの蛍光試薬などを洗浄した。その後、固相化ERαに結合している蛍光エストラジオール量を蛍光マルチプレートリーダースペクトロフルオロメーターを用い、Extraction 485nm、Emission 535nm、Flash Number 10回の条件下で検出した。比較試料として、エストロゲン様作用を持つことが報告されている大豆イソフラボンを用いた。
【0039】
これらの実験結果を表1に示した。その結果、カンナ、カンラン及びロッダの抽出物は、大豆イソフラボンと比較して優れたエストロゲン受容体結合能を示した。
【0040】


【0041】
カンナ、カンラン及びロッダの抽出物から選ばれる2種以上の混合物についても同様にエストロゲン受容体結合能を測定したところ、優れたエストロゲン受容体結合能を示した。
【0042】
実験例2 エストロゲン様効果検討
エストロゲンが受容体に結合した後、そのmRNA発現量が増加することが近年報告されているcyclinD2を指標として、カンナ、カンランおよびロッダのエストロゲン様作用を検討した(非特許文献4)。
ヒトケラチノサイト由来HaCaT細胞を10% FCSを含むDMEM培地にて37℃、5%CO条件下で4日間培養した。コンフルエントな状態の細胞をPBS(−)で一度洗浄した後、血清無添加のDMEM培地に交換し1μg/mlの各試料を添加した。コントロールとしては試料無添加の細胞を用いた。さらに3時間培養した後、ISOGENを用いて総RNAの抽出を行った。細胞から抽出した総RNAを基にリアルタイムPCR法によりcyclinD2 mRNA発現量の測定を行った。リアルタイムPCR法にはTaKaRa SYBR ExScriptTM RT−PCR Kit(Perfect Real Time)を用いた。cyclinD2用のprimerとしては5‘CCCTCTGCTGAGCGGTACTAA3’および5’TCTTATCCTGCCAATTCAGTGTGA3’を用いた。逆転写反応としては、42℃15分の後、95℃2分を行った。さらに、初期変性として95℃10秒を行った後、PCR反応として95℃5秒、60℃31秒を1cycleとして40cycle行った。さらにDissociation stageとして、95℃15秒、60℃1分、95℃15秒を行った。また、内部標準としてはGAPDHを用いた。その他の操作は定められた方法に従い、cyclinD2 mRNAの発現量を内部標準であるGAPDH mRNA発現量に対する割合として求めた。
(非特許文献4)
Naoko Kanda and Shinichi Watanabe.Invest Dermatol. 123:319−328,2004.
【0043】
これらの実験結果を表1に示した。その結果、カンナ、カンラン及びロッダの抽出物は、コントロールと比較して優れたcyclinD2 mRNA発現量の増加が示された。
【0044】
【表2】

【0045】
カンナ、カンラン及びロッダの抽出物から選ばれる2種以上の混合物についても同様にcyclinD2 mRNA発現量の変化を測定したところ、優れたcyclinD2 mRNA発現量促進効果を示し、エストロゲン様作用をもつことが確認された。
【0046】
実験例3 使用試験1
カンナの熱水抽出物、カンランの熱水抽出物、ロッダの熱水抽出物の1%水溶液を用いて、加齢による皮膚の変化を感じている女性30人(50才〜80才)を対象に4ヶ月間の使用試験を行った。使用後、皮膚のたるみ、しわ及びはりの改善作用をアンケートにより判定した。なお対照としては精製水を用いた。
【0047】
これらの試験結果を表3に示した。その結果、カンナの熱水抽出物、カンランの熱水抽出物、ロッダの熱水抽出物の1%水溶液を用いた場合は、対照として精製水を用いた場合よりも、優れた皮膚のたるみ、しわ及びはりの改善効果を示した。すなわち、カンナの熱水抽出物、カンランの熱水抽出物、ロッダの熱水抽出物の1%水溶液は顕著な効果を示した。なお、試験期間中、皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。
【0048】
【表3】

【0049】
カンナ、カンラン及びロッダの抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含有するその他の水溶液についても同様に使用試験を行ったところ、安全であり、優れた皮膚のたるみ、しわ及びはりの改善効果を示した。
【0050】
実験例4 使用試験2
処方例1〜3のクリーム、比較例1の従来のクリームを用いて、加齢による皮膚の変化を感じている女性30人(50才〜80才)を対象に3ヶ月間の使用試験を行った。使用後、皮膚のたるみ、しわ及びはりの改善作用をアンケートにより判定した。
【0051】
これらの試験結果を表4に示した。その結果、処方例1〜3で得られるクリームは、比較例1で得られる従来のクリームよりも、皮膚のたるみ、しわ及びはりの改善効果に優れていた。なお、試験期間中、皮膚トラブルは一人もなく、安全性においても問題なかった。また、処方成分の劣化についても問題なかった。
【0052】
【表4】

【0053】
処方例4〜10についても同様に使用試験を行ったところ、安全であり、優れた皮膚のたるみ、しわ及びはりの改善効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のカンナ、カンラン及びロッダの抽出物から選ばれる1種又は2種以上は優れたエストロゲン様作用剤および抗老化用皮膚外用剤として用いることが出来、加齢によって起こる皮膚の萎縮やしわ、たるみ等の変化を抑制または改善させることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナ、カンランおよびロッダの抽出物から選ばれる1種又は2種以上を含有するエストロゲン様作用剤。
【請求項2】
請求項1記載のエストロゲン様作用剤を含有する抗老化用皮膚外用剤。


【公開番号】特開2007−191452(P2007−191452A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13290(P2006−13290)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】