説明

エッチング方法

【課題】被加工材とレジストのエッチングの選択比を高くすることのできるエッチング方法、、このエッチング方法により加工されたサファイア基板、及び、このサファイア基板を備える発光素子を提供する。
【解決手段】プラズマエッチング装置を用いたエッチング方法であって、被加工材上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記レジスト膜に所定のパターンを形成するパターン形成工程と、前記パターンが形成された前記レジスト膜を所定の変質用条件にてプラズマに曝し、前記レジスト膜を変質させてエッチング選択比を高くするレジスト変質工程と、被加工材を変質用条件と異なるエッチング用条件にてプラズマに曝し、エッチング選択比が高くなった前記レジスト膜をマスクとして被加工材のエッチングを行う被加工材のエッチング工程と、を含むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いたエッチング方法、このエッチング方法により加工されたサファイア基板、及び、このサファイア基板を備える発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工材のエッチング方法として、表面にレジスト膜が形成された基板を、レジスト膜をマスクとしてエッチングするものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載のエッチング方法では、エッチングガスに炭素系ガスを添加した混合ガスをプラズマ状態に励起してサファイア基板をエッチングすると共に、炭素系ガスの流量を調整することで凸部のテーパ形状を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−134800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のエッチング方法では、被加工材とレジストの材質により定まる選択比を考慮して、エッチング加工が行われている。しかしながら、被加工材に微細で深い形状の加工を施す場合、適切な選択比の材料が存在しないと、所望の形状の加工を施すことができない。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工材とレジストのエッチングの選択比を高くすることのできるエッチング方法、このエッチング方法により加工されたサファイア基板、及び、このサファイア基板を備える発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、被加工材上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記レジスト膜に所定のパターンを形成するパターン形成工程と、前記パターンが形成された前記レジスト膜を所定の変質用条件にてプラズマに曝し、前記レジスト膜を変質させてエッチング選択比を高くするレジスト変質工程と、前記被加工材を前記変質用条件と異なるエッチング用条件にてプラズマに曝し、エッチング選択比が高くなった前記レジスト膜をマスクとして前記被加工材のエッチングを行う被加工材のエッチング工程と、を含むエッチング方法が提供される。
【0007】
上記エッチング方法において、前記変質用条件は、前記エッチング用条件よりも、バイアス出力が低くともよい。
【0008】
上記エッチング方法において、前記被加工材は、所定の被加工基板上に形成された基板用マスク層であってもよい。
【0009】
上記エッチング方法において、エッチングされた基板用マスク層をマスクとして、前記被加工基板のエッチングを行う基板のエッチング工程を含んでもよい。
【0010】
上記エッチング方法において、前記基板のエッチング工程にて、前記被加工基板に1μm以下の周期の凹凸形状を形成してもよい。
【0011】
上記エッチング方法において、前記被加工基板に深さ300nm以上の凹凸形状を形成してもよい。
【0012】
上記エッチング方法において、前記被加工基板はサファイアであってもよい。
【0013】
また、本発明では、上記エッチング方法により、凹凸加工が施されたサファイア基板が提供される。
【0014】
さらに、本発明では、上記サファイア基板と、前記サファイア基板上に形成された半導体発光層と、を有する発光素子が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被加工材とレジストのエッチングの選択比を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示すプラズマエッチング装置の概略説明図である。
【図2】図2は、エッチング方法を示すフローチャートである。
【図3A】図3Aは被加工基板及びマスク層のエッチング方法の過程を示し、(a)は加工前の被加工基板を示し、(b)は被加工基板上にマスク層を形成した状態を示し、(c)はマスク層上にレジスト膜を形成した状態を示し、(d)はレジスト膜にモールドを接触させた状態を示し、(e)はレジスト膜にパターンが形成された状態を示す。
【図3B】図3Bは被加工基板及びマスク層のエッチング方法の過程を示し、(f)はレジスト膜の残膜を除去した状態を示し、(g)はレジスト膜を変質させた状態を示し、(h)はレジスト膜をマスクとしてマスク層をエッチングした状態を示し、(i)はマスク層をマスクとして被加工基板をエッチングした状態を示す。
【図3C】図3Cは被加工基板及びマスク層のエッチング方法の過程を示し、(j)はマスク層をマスクとして被加工基板をさらにエッチングした状態を示し、(k)は被加工基板から残ったマスク層を除去した状態を示し、(l)は被加工基板にウェットエッチングを施した状態を示す。
【図4】図4は被加工基板を示し、(a)は模式斜視図を、(b)はA−A断面図をそれぞれ示す。
【図5】図5は、被加工基板を備えた発光素子の模式断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態を示すプラズマエッチング装置の概略説明図である。
図1に示すように、プラズマエッチング装置1は、誘導結合型(ICP)であり、被加工基板100を保持する平板状の基板保持台2と、基板保持台2を収容する容器3と、容器3の上方に石英板6を介して設けられたコイル4と、基板保持台2に接続された電源5と、を有している。コイル4は立体渦巻形のコイルであり、コイル中央から高周波電力を供給し、コイル外周の末端が接地されている。エッチング対象の被加工基板100は直接或いは搬送用トレーを介して基板保持台2に載置される。基板保持台2には被加工基板100を冷却するための冷却機構が内蔵されており、冷却制御部7によって制御される。容器3は供給ポートを有し、Oガス、Arガス等の各種ガスが供給可能となっている。
【0018】
このプラズマエッチング装置1でエッチングを行うにあたっては、基板保持台2に被加工基板100を載置した後、容器3内の空気を排出して減圧状態とする。そして、容器3内に所定の処理ガスを供給し、容器3内のガス圧力を調整する。その後、コイル4及び基板保持台2に高出力の高周波電力を所定時間供給して、反応ガスのプラズマ8を生成させる。このプラズマ8によって被加工基板100のエッチングを行う。
【0019】
次いで、図2、図3A及び図3Bを参照して、プラズマエッチング装置1を用いたエッチング方法について説明する。
図2は、エッチング方法を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態のエッチング方法は、マスク層形成工程S1と、レジスト膜形成工程S2と、パターン形成工程S3と、残膜除去工程S4と、レジスト変質工程S5と、マスク層のエッチング工程S6と、被加工基板のエッチング工程S7と、マスク層除去工程S8と、湾曲部形成工程S9と、を含んでいる。
【0020】
図3Aは被加工基板及びマスク層のエッチング方法の過程を示し、(a)は加工前の被加工基板を示し、(b)は被加工基板上にマスク層を形成した状態を示し、(c)はマスク層上にレジスト膜を形成した状態を示し、(d)はレジスト膜にモールドを接触させた状態を示し、(e)はレジスト膜にパターンが形成された状態を示す。
図3Bは被加工基板及びマスク層のエッチング方法の過程を示し、(f)はレジスト膜の残膜を除去した状態を示し、(g)はレジスト膜を変質させた状態を示し、(h)はレジスト膜をマスクとしてマスク層をエッチングした状態を示し、(i)はマスク層をマスクとして被加工基板をエッチングした状態を示す。尚、変質後のレジスト膜は、図中、塗りつぶすことで表現している。
図3Cは被加工基板及びマスク層のエッチング方法の過程を示し、(j)はマスク層をマスクとして被加工基板をさらにエッチングした状態を示し、(k)は被加工基板から残ったマスク層を除去した状態を示し、(l)は被加工基板にウェットエッチングを施した状態を示す。
【0021】
まず、図3A(a)に示すように、加工前の被加工基板100を準備する。エッチングに先立って、被加工基板100を所定の洗浄液で洗浄しておく。本実施形態においては、被加工基板100はサファイア基板である。
【0022】
次いで、図3A(b)に示すように、被加工基板100にマスク層110を形成する(マスク層形成工程:S1)。本実施形態においては、マスク層110は、被加工基板100上のSiO層111と、SiO層111上のNi層112と、を有している。各層111,112の厚さは任意であるが、例えばSiO層を1nm以上100nm以下、Ni層112を1nm以上100nm以下とすることができる。尚、マスク層110は、単層とすることもできる。マスク層110は、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等により形成される。
【0023】
次に、図3A(c)に示すように、マスク層110上にレジスト膜120を形成する(レジスト膜形成工程:S2)。本実施形態においては、レジスト膜120として熱可塑性樹脂が用いられ、スピンコート法により均一な厚さに形成される。レジスト膜120は、例えばエポキシ系樹脂からなり、厚さが例えば100nm以上300nm以下である。
【0024】
そして、レジスト膜120を被加工基板100ごと加熱して軟化させ、図3A(d)に示すように、モールド130でレジスト膜120をプレスする。モールド130の接触面には凹凸構造131が形成されており、レジスト膜120が凹凸構造131に沿って変形する。
【0025】
この後、プレス状態を保ったまま、レジスト膜120を被加工基板100ごと冷却して硬化させる。そして、モールド200をレジスト膜120から離隔することにより、図3A(e)に示すように、レジスト膜120に凹凸構造121が転写される(パターン形成工程:S3)。ここで、凹凸構造121の周期は1μm以下となっている。本実施形態においては、凹凸構造121の周期は500nmである。また、本実施形態においては、凹凸構造121の凸部123の幅は100nm以上300nm以下となっている。また、凸部123の高さは100nm以上300nm以下となっている。この状態で、レジスト膜120の凹部には残膜122が形成されている。
【0026】
以上のようにレジスト膜120が形成された被加工基板100を、プラズマエッチング装置1の基板保持台2に取り付ける。そして、例えばプラズマアッシングにより残膜122を取り除いて、図3B(f)に示すように被加工材であるマスク層110を露出させる(残膜除去工程:S4)。本実施形態においては、プラズマアッシングの処理ガスとしてOガスが用いられる。このとき、レジスト膜120の凸部123もアッシングの影響を受け、凸部123の側面124は、マスク層110の表面に対して垂直でなく、所定の角度だけ傾斜する。
【0027】
そして、図3B(g)に示すようにレジスト膜120を変質用条件にてプラズマに曝して、レジスト膜120を変質させてエッチング選択比を高くする(レジスト変質工程:S5)。本実施形態においては、レジスト膜120の変質用の処理ガスとして、Arガスが用いられる。また、本実施形態においては、変質用条件は、後述のエッチング用条件よりも電源5のバイアス出力が低く設定される。
【0028】
この後、エッチング用条件にてプラズマに曝し、エッチング選択比が高くなったレジスト膜120をマスクとして被加工材としてのマスク層110のエッチングを行う(マスク層のエッチング工程:S6)。本実施形態においては、レジスト膜120のエッチング用の処理ガスとして、Arガスが用いられる。これにより、図3B(h)に示すように、マスク層110にパターン113が形成される。
【0029】
ここで、変質用条件とエッチング用条件について、処理ガス、アンテナ出力、バイアス出力等を適宜に変更できるが、本実施形態のように同一の処理ガスを用いてバイアス出力を変えることが好ましい。具体的に、変質用条件について、処理ガスをArガスとし、コイル4のアンテナ出力を350W、電源5のバイアス出力50Wとすると、レジスト膜120の硬化が観察された。そして、エッチング用条件について、処理ガスをArガスとし、コイル4のアンテナ出力を350W、電源5のバイアス出力を100Wとすると、マスク層110のエッチングが観察された。尚、エッチング用条件に対してバイアス出力を低くする他、アンテナ出力を低くしたり、ガス流量を少なくしても、レジストの硬化が可能である。
【0030】
次に、図3B(i)に示すように、マスク層110をマスクとして、被加工基板100のエッチングを行う(被加工基板のエッチング工程:S7)。本実施形態においては、マスク層110上にレジスト膜120が残った状態でエッチングが行われる。また、処理ガスとしてBClガス等の塩素系ガスを用いたプラズマエッチングが行われる。
【0031】
そして、図3C(j)に示すように、エッチングが進行していくと、被加工基板100に凹凸構造101が形成される。本実施形態においては、凹凸構造101の高さは、500nmである。尚、凹凸構造101の高さを500nmより大きくすることもできる。ここで、凹凸構造101の高さが、例えば300nmのように比較的浅くするのならば、図3B(i)に示すように、レジスト膜120が残留した状態でエッチングを終了しても差し支えない。
【0032】
本実施形態においては、マスク層110のSiO層111により、サイドエッチングが助長されて、凹凸構造101の凸部102の側面103が傾斜している。また、レジスト膜120の側面123の傾斜角によっても、サイドエッチングの状態を制御することができる。尚、マスク層110をNi層112の単層とすれば、凸部102の側面103を主面に対してほぼ垂直にすることができる。
【0033】
この後、図3B(k)に示すように、所定の剥離液を用いて被加工基板100上に残ったマスク層110を除去する(マスク層除去工程:S8)。本実施形態においては、高温の硝酸を用いることでNi層112を除去した後、フッ化水素酸を用いてSiO層111を除去する。尚、レジスト膜120がマスク層110上に残留していても、高温の硝酸でNi層112とともに除去することができるが、レジスト膜120の残留量が多い場合はOアッシングにより予めレジスト膜120を除去しておくことが好ましい。
【0034】
そして、図3B(l)に示すように、ウェットエッチングにより凸部102の角を除去して湾曲部を形成する(湾曲部形成工程:S9)。ここで、エッチング液は任意であるが、例えば170℃程度に加温したリン酸水溶液、いわゆる“熱リン酸”を用いることができる。尚、この湾曲部形成工程は、適宜省略することができる。以上の工程を経て、表面に凹凸構造101を有する被加工基板100が作製される。
【0035】
この被加工基板100のエッチング方法によれば、レジスト膜120をプラズマに曝して変質させたので、マスク層110とレジスト膜120のエッチングの選択比を高くすることができる。これにより、マスク層110に対して微細で深い形状の加工を施しやすくなり、微細な形状のマスク層110を十分に厚く形成することができる。
【0036】
また、プラズマエッチング装置1により、レジスト膜120の変質と、マスク層110のエッチングとを連続的に行うことができ、工数が著しく増大することもない。本実施形態においては、電源5のバイアス出力を変化させることにより、レジスト膜120の変質とマスク層110のエッチングとを行っており、簡単容易にレジスト膜120の選択比を高くすることができる。
【0037】
さらに、十分に厚いマスク層110をマスクとして、被加工基板100のエッチングを行うようにしたので、被加工基板100に対して微細で深い形状の加工を施しやすくなる。特に、サファイア基板において、周期が1μm以下で深さが300nm以上の凹凸構造101を形成することは、マスク層が形成された基板上にレジスト膜を形成し、レジスト膜を利用してマスク層のエッチングを行うエッチング方法では従来は不可能であったが、本実施形態のエッチング方法では可能となる。特に、本実施形態のエッチング方法では、周期が1μm以下で深さが500nm以上の凹凸構造を形成するのに好適である。
【0038】
ナノスケールの周期的な凹凸構造はモスアイと称されるが、このモスアイの加工をサファイアに行う場合、サファイアは難削材であることから、200nm程度の深さまでしか加工ができなかった。しかしながら、200nm程度の段差では、モスアイとして不十分な場合があった。本実施形態のエッチング方法は、サファイア基板にモスアイ加工を施す場合の新規な課題を解決したものといえる。
【0039】
尚、ナノインプリント技術を用いてレジストパターンを形成するものを示したが、例えばステンシルマスク等を用いて電子線照射によりレジストパターンを形成するものであってもよい。
【0040】
また、被加工材として、SiO/Niからなるマスク層110を示したが、マスク層110がNiの単層であったり他の材料であってもよいことは勿論である。要は、レジストを変質させて、マスク層110とレジスト膜120のエッチング選択比を高くすればよいのである。
【0041】
さらに、マスク層110を用いて被加工基板100をエッチングするものを示したが、マスク層110を用いることなく被加工基板100をエッチングするようにしてもよい。この場合、被加工基板100が被加工材となり、被加工基板100にレジスト膜120を形成して、レジストを変質させてエッチング選択比を高くすることとなる。
【0042】
また、プラズマエッチング装置1のバイアス出力を変化させて変質用条件とエッチング用条件とするものを示したが、アンテナ出力、ガス流量を変化させる他、例えば処理ガスを変更することで設定してもよい。要は、変質用条件は、レジストがプラズマに曝された際に変質してエッチング選択比が高くなる条件であればよい。
【0043】
また、被加工基板100としてサファイアを用い、マスク層110としてNi層110が含まれるものを示したが、他の材料のエッチングであっても本発明を適用可能なことはいうまでもない。例えば、エッチング加工の対象を、SiC、Si、GaAs、GaN、InP、ZnO等を基板とすることもできる。
【0044】
図4は被加工基板を示し、(a)は模式斜視図を、(b)はA−A断面図をそれぞれ示す。
前述の工程を経て作製される被加工基板100について説明する。本実施形態においては、図4(a)及び(b)に示すように、凹凸構造101は、周期的に形成された複数の凸部102を有し、各凸部102の間が凹部をなしている。本実施形態においては、各凸部102の形状は、円錘の上部を切り落とした円錘台状である。尚、凸部102の形状は、円錐台状の他、多角錘台等の他の錘台状としたり、円錐、多角錘等の錘状とすることができる。尚、凸部102でなく凹部が、錘状、円錘台、錘台状等の形状をなしていてもよい。本実施形態においては、凹凸構造101は、平面視にて、各凸部102の中心が正三角形の頂点の位置となるように、所定の周期で仮想の三角格子の交点に整列して形成される。
【0045】
本実施形態においては、各凸部102の周期は、500nmである。尚、ここでいう周期とは、隣接する凸部102における高さのピーク位置の距離をいう。また、各凸部102は、基端部の直径が200nmであり、高さは600nmとなっている。尚、各凸部102の周期、寸法、形状等は適宜に変更可能である。
【0046】
そして、この被加工基板100を用いて、例えば図5に示す発光素子200を製造することができる。この発光素子200は、フェイスアップ型のLEDであり、被加工基板100の凹凸構造101を有する面上に、III族窒化物半導体層が形成されたものである。III族窒化物半導体層は、バッファ層210、n型GaN層212、多重量子井戸活性層214、電子ブロック層216、p型GaN層218を被加工基板100側からこの順に有している。p型GaN層218上にはp側電極220が形成されるとともに、n型GaN層212上にはn側電極224が形成されている。また、サファイア基板2の裏面側には、例えばAlからなる反射膜226が形成されている。
【0047】
バッファ層210はAlNで、n型GaN層212はn−GaNで、多重量子井戸活性層214はGalnN/GaNで、それぞれ構成される。本実施形態においては、多重量子井戸活性層214の発光のピーク波長は450nmである。また、電子ブロック層216はp―AIGaNで、p型GaN層218はp−GaNで、それぞれ構成される。n型GaN層212からp型GaN層218までは、III族窒化物半導体のエピタキシャル成長により形成され、被加工基板100に凹凸構造101が存在するが、III族窒化物半導体の成長初期に横方向成長による平坦化が図られる。
【0048】
p側電極220は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明な材料からなる。また、n側電極224は、p型GaN層218からn型GaN層212をエッチングして、露出したn型GaN層212上に形成される。n側電極224は、例えばTi/Al/Ti/Auから構成される。
【0049】
この発光素子200においては、反射膜226の被加工基板100側の面が反射面228をなしており、活性層214から発せられた光が凹凸構造101における界面を回折作用によって透過し、透過した光を反射面228にて反射する。これにより、回折作用により透過した光を当該界面に再入射させて、当該界面にて再び回折作用を利用して透過させることにより、複数のモードで光を素子外部へ取り出すことができる。この回折作用を得るため、各凸部101の周期は、多重量子井戸活性層214から発せられる光の光学波長より大きく、当該光のコヒーレント長より小さくすることが好ましい。
【0050】
ここで、光学波長とは、実際の波長を屈折率で除した値を意味する。また、コヒーレント長とは、所定のスペクトル幅のフォトン群の個々の波長の違いによって、波の周期的振動が互いに打ち消され、可干渉性が消失するまでの距離に相当する。コヒーレント長lcは、光の波長をλ、当該光の半値幅をΔλとすると、おおよそlc=(λ/Δλ)の関係にある。ここで、各凸部102の周期は、多重量子井戸活性層214から発せられる光の光学波長の2倍より大きいことが好ましい。また、各凸部102の周期は、多重量子井戸活性層214から発せられる光のコヒーレント長の半分以下であることが好ましい。
【0051】
本実施形態においては、各凸部102の周期は、500nmである。活性層214から発せられる光の波長は450nmであり、III族窒化物半導体層の屈折率が2.4であることから、その光学波長は187.5nmである。また、活性層214から発せられる光の半値幅は63nmであることから、当該光のコヒーレント長は、3214nmである。すなわち、凹凸構造101の周期は、活性層214の光学波長の2倍より大きく、かつ、コヒーレント長の半分以下となっている。
【0052】
このように、サファイアからなる被加工基板100を発光素子200に用いたものを例示したが、被加工基板100を他のデバイスに用いることもできるし、その他、具体的な用途等については適宜に変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 プラズマエッチング装置
2 基板保持台
3 容器
4 コイル
5 電源
6 石英板
7 冷却制御部
8 プラズマ
100 被加工基板
101 凹凸構造
102 凸部
103 側面
200 発光素子
210 バッファ層
212 n型GaN層
214 多重量子井戸活性層
216 電子ブロック層
218 p型GaN層
220 p側電極
224 n側電極
226 反射膜
228 反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板上の基板用マスク層上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜に所定のパターンを形成するパターン形成工程と、
変質用条件のバイアス出力を加えて、Arガスのプラズマを前記基板用マスク層へ誘導し、前記パターンが形成された前記レジスト膜を変質させてエッチング選択比を高くするレジスト変質工程と、
前記変質用条件より高いバイアス出力を加えて、Arガスのプラズマを前記基板用マスク層へ誘導し、エッチング選択比が高くなった前記レジスト膜をマスクとして前記基板用マスク層のエッチングを行う被加工材のエッチング工程と、
エッチングされた基板用マスク層をマスクとして、前記サファイア基板のエッチングを行って、前記サファイア基板に凹凸形状を形成する基板のエッチング工程と、を含むエッチング方法。
【請求項2】
前記基板のエッチング工程にて、前記サファイア基板に深さ300nm以上の凹凸形状を形成する請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記パターン形成工程の後、プラズマアッシングにより前記レジスト膜の残膜を取り除く残膜除去工程を含む請求項1または2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記パターン形成工程にて、モールドで前記レジスト膜をプレスした後、プレス状態を保ったまま前記レジスト膜を硬化させ、前記レジスト膜に前記モールドの凹凸構造を転写する請求項1から3のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記基板のエッチング工程にて、前記基板用マスク層上に前記レジスト膜が残った状態で、前記サファイア基板のエッチングを行う請求項1から4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記基板用マスク層は、前記サファイア基板上のSiO層と、前記SiO層上のNi層と、を有し、
前記基板のエッチング工程にて、前記SiO層と、前記Ni層と、前記レジスト膜と、が積層した状態で、前記サファイア基板のエッチングを行う請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記基板のエッチング工程の後、所定の剥離液を用いて前記サファイア基板上に残った前記基板用マスク層を除去するマスク層除去工程を含む請求項5または6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記マスク層除去工程にて、Oアッシングにより予め前記レジスト膜を除去してから、所定の剥離液を用いて前記サファイア基板上に残った前記基板用マスク層を除去する請求項7に記載のエッチング方法。
【請求項9】
サファイア基板上にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜に所定のパターンを形成するパターン形成工程と、
所定のバイアス出力を加えて、Arガスのプラズマを前記レジストへ誘導し、前記パターンが形成された前記レジスト膜を変質させてエッチング選択比を高くするレジスト変質工程と、
エッチング選択比が高くなった前記レジスト膜をマスクとして前記サファイア基板のエッチングを行って、前記サファイア基板に凹凸形状を形成する基板のエッチング工程と、を含むエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−106044(P2013−106044A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247290(P2012−247290)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2011−249370(P2011−249370)の分割
【原出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(507134714)エルシード株式会社 (8)
【Fターム(参考)】