説明

エッチング装置

【課題】大型基板を均一にエッチング処理できるエッチング装置を提供する。
【解決手段】ラジカル生成室3の内部に、プラズマ形成装置12を突き出させ、プラズマ形成装置12の内側ドーム24と外側ドーム26との間にエッチングガスを導入し、内側ドーム24の内側に配置したアンテナ25から915MHzのマイクロ波を照射し、プラズマ化して外側ドーム26の小孔27から放出させ、ラジカル形成室3の内部でエッチングガスのラジカルを生成し、エッチング室4に導入し、処理対象物22のエッチングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング装置の技術分野にかかり、特に、エッチング対象物をラジカルでエッチングするエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4の符号100は、従来技術のエッチング装置を示している。
このエッチング装置100は、真空槽111を有しており、真空槽111の天井には、複数の誘電体ドーム124が設けられている。各誘電体ドーム124の内部には、それぞれアンテナ125が配置されており、各アンテナ125は、誘電体ドーム124内に配置された状態で、真空槽111の内部に突き出されている。
【0003】
真空槽111の底壁上には 基板電極121が配置されており、真空排気系118によって真空槽111内を真空排気した後、エッチングガス導入系113から真空槽111内にエッチングガスを導入し、プラズマ励起用電源117によって各アンテナ125に高周波電圧を印加して各アンテナ125からマイクロ波を放出させ、エッチングガスに照射すると誘電体ドーム124の近傍にエッチングガスプラズマが形成される。
【0004】
エッチングガスプラズマ中でエッチングガスが励起されるとラジカルが生成され、基板電極121上に配置された基板122方向に向かって移動し、ラジカルが基板122の表面と接触すると、基板122の表面がエッチングされる。基板122表面のエッチング対象の薄膜上にパターニングした他の薄膜をマスクとして配置しておくと、薄膜のパターニングを行なうことができる。
【特許文献1】特開2004−186531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来用いられていたプラズマ励起用電源が出力する励起周波数は13.56MHzであり、励起周波数が低いため、大電力を投入することが出来ない。従って、大面積基板の表面を均一にエッチング処理するためには、多数のプラズマ発生源を設ける必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、ラジカル生成室と、小孔を有するシャワープレートを介して前記ラジカル生成室に接続されたエッチング室とを有し、前記エッチング室に配置されたエッチング対象物を前記ラジカル生成室内で発生させたエッチングガスラジカルでエッチングするエッチング装置であって、前記ラジカル生成室の内部に突き出され、ガス噴出孔が形成された外側ドームと、前記外側ドームの内側に配置された内側ドームと、前記外側ドームと前記内側ドームの隙間にプラズマ形成ガスを供給する第一のガス供給系と、前記ラジカル生成室内の前記外側ドームの外部にエッチングガスを供給する第二のガス導入系と、前記内側ドームの内側に配置されたアンテナと、前記アンテナに915MHzの交流電圧を印加するマグネトロン発振器と、を有するエッチング装置である。
また、本発明は、前記エッチング室に配置され、前記エッチング対象物が配置される基板電極と、前記基板電極に接続された交流電源とを有するエッチング装置である。
また、本発明は、前記基板電極に配置された前記エッチング対象物を加熱する加熱装置を有するエッチング装置である。
【発明の効果】
【0007】
アンテナから放射されるマイクロ波の波長が短いので、高濃度のプラズマが形成され、生成された高濃度ラジカルが大面積の基板表面と均一に接触し、面内のエッチング分布が均一になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1の符号10は本発明のエッチング装置であり真空槽11を有している。
真空槽11の壁面(ここでは天井)には、複数のプラズマ放出装置12が設けられており、真空槽11内部の、プラズマ放出装置12とは反対側の壁面(ここでは底壁)には、基板電極21が設けられている。
【0009】
真空槽11の内部のプラズマ放出装置12と基板電極21の間の位置にはシャワープレート30aが配置されており、真空槽11の内部空間は、シャワープレート30aによって、プラズマ放出装置12が配置されたラジカル生成室3と、基板電極21が配置されたエッチング室4とに二分されている。
【0010】
真空槽11の壁面(ここでは天井)には、複数のガス噴出板28a、28b(例えばAl等の金属製カバー)が気密に挿入され、各ガス噴出板28a、28bの先端は、ラジカル生成室3の内部に位置するようにされている。
【0011】
ここでは、筒状のガス噴出板28aと、板状のガス噴出板28bが挿入され、板状のガス噴出板28bで筒状のガス噴出板28aの内部空間が複数に区分けされ、区分けされた空間に、プラズマ放出装置12が一つずつ配置されている。
【0012】
シャワープレート30aは、金属等の導電性材料が板状に成型されて成る導電部材31aと、導電部材31aに形成された複数の小孔32a(1mmφ程度)とで構成されている。シャワープレート30aの導電部材31aはガス噴出板28a、28bの先端に取り付けられており、ガス噴出板28a、28bと同電位になるようにされている。
【0013】
ガス噴出板28a、28bは真空槽11に接触して真空槽11と同電位にされている。ここでは真空槽11は接地されており、従って、シャワープレート30aは接地電位に置かれている。
小孔32aは導電部材31aを厚み方向に貫通しており、ラジカル生成室3の内部空間とエッチング室4の内部空間は小孔32aによって接続されている。
【0014】
エッチング室4には真空排気系18が接続されており、真空排気系18によってエッチング室4の内部を真空排気すると、小孔32aやシャワープレート30aと真空槽11の壁面との間の隙間を介してラジカル生成室3の内部も真空排気される。
【0015】
プラズマ放出装置12は、外側ドーム26と、内側ドーム24と、アンテナ25と、マグネトロン発振器13とを有している。
内側ドーム24は、外側ドーム26の内側に配置されている。内側ドーム24と外側ドーム26とは離間し、隙間が形成されており、内側ドーム24と外側ドーム26の間には、隙間から成るプラズマ形成空間29が形成されている。
【0016】
アンテナ25は、内側ドーム24の内側に配置されており、外側ドーム26と、内側ドーム24と、アンテナ25とは、ラジカル生成室3の天井に形成された孔から、ラジカル生成室3の内部に突き出されている。
【0017】
各アンテナ25は、それぞれマグネトロン発振器13に接続されており、プラズマ形成電源44から各マグネトロン発振器13に電力が供給され、マグネトロン発振器13が発振すると、915MHzの周波数の交流電圧がアンテナ25にそれぞれ印加される。この交流電圧により、各アンテナ25から915MHzの周波数のマイクロ波が放出される。
【0018】
真空槽11の外部には、希ガス等のプラズマ形成ガスが配置された第一のガス導入系41と、エッチング対象物と反応するエッチングガスが配置された第二のガス導入系42が配置されている。
【0019】
各プラズマ放出装置12のプラズマ形成空間29は、第一のガス導入系41に接続されており、第一のガス導入系41からプラズマ形成空間29の内部にプラズマ形成ガスを導入しながら、アンテナ25から915MHzのマイクロ波が放射されると、プラズマ形成空間29にプラズマ形成ガスのプラズマが発生する。
【0020】
外側ドーム26には、複数の小孔27が設けられており、プラズマ形成空間29とラジカル生成室3の内部空間の外側ドーム26の外側の部分とは、小孔27によって接続されている。
【0021】
内側ドーム24の周囲は真空槽11の壁面と密着され、気密にされている。また、内側ドーム24には小孔は設けられておらず、従って、ラジカル生成室3の内部雰囲気やプラズマ形成空間29は、真空槽11の外部雰囲気や内側ドーム24の内側の雰囲気とは分離されている。
【0022】
プラズマ形成空間29で発生したプラズマ形成ガスのプラズマは、小孔27からラジカル生成室3の内部に放出される。
各ガス噴出板28a、28bは中空であり、各ガス噴出板28a、28bのシャワープレート30aと真空槽11天井の間の先端部分には噴出口39が設けられている。
【0023】
各ガス噴出板28a、28bは、それぞれ第二のガス導入系42に接続されており、第二のガス導入系42から各ガス噴出板28a、28bにエッチングガスを供給すると、各ガス噴出板28a、28bの噴出口39から、ラジカル生成室3の内部にエッチングガスが導入される。
【0024】
各プラズマ放出装置12から、プラズマ形成ガスのプラズマを放出させながら、ラジカル生成室3の内部にエッチングガスを導入すると、エッチングガスとプラズマとが接触し、エッチングガスが励起され、エッチングガスのラジカルが生成される。
【0025】
シャワープレート30aは接地電位に接続されており、荷電粒子は、シャワープレート30aに引き付けられるようになっている。
エッチング室4に接続された真空排気系18により、ラジカル生成室3内のガスはエッチング室4に移動するようになっており、プラズマ放出装置12から放出されたプラズマと、生成されたラジカルがラジカル生成室3からエッチング室4に移動する場合、生成されたラジカルは電気的には中性であり、シャワープレート30aの小孔32aを通って、ラジカル生成室3からエッチング室4に移動できるが、プラズマ中のイオンは、小孔32aを通過する際に、導電部材31aに引き付けられ、導電部材31aと接触すると中性化する。
【0026】
したがって、イオンはシャワープレート30aを通過できず、ラジカルや中性分子、中性原子がシャワープレート30aを通過する。
エッチング室4の内部では、基板電極21上にエッチング対象物22が配置されており、エッチング対象物22は、基板電極21の内部に配置された加熱装置45によって昇温されている。
【0027】
エッチング対象物22のエッチングされる表面は、シャワープレート30aに向けられており、シャワープレート30aを通過したラジカルは、エッチング対象物22の表面と接触し、エッチング対象物22表面の露出部分と反応し、気体が生成されると、その部分がエッチングされる。
【0028】
エッチング対象物22の表面は、レジスト等の保護膜で部分的に覆っておき、保護膜に設けた開口の底面下に一部を露出させておくと、薄膜等の露出された部分だけをエッチングによって除去することができる。
【0029】
本発明では、従来技術よりも高周波の915MHzの周波数の交流電圧によってプラズマを形成し、エッチングガスと接触させてラジカルを発生させており、高密度のプラズマによって、高濃度のラジカルが生成されるので、少ない個数のプラズマ発生源12によって大面積のエッチング対象物22を均一にエッチング処理することが出来る。
【0030】
交流電源19によって基板電極21に、アンテナ25から放射するマイクロ波よりも低周波(ここでは13.56MHz)の交流電圧を印加しながらエッチングすると、エッチング対象物22の表面に弱いプラズマが形成され、エッチング速度が速くなる。
【0031】
エッチング対象の薄膜がMo薄膜の場合、第二のガス導入系42からSF6ガスとO2ガスとを導入してエッチングガスとし、プラズマ形成ガスのプラズマと接触させると、生成されたSF6ガスのラジカルとO2ガスのラジカルによってMo薄膜をエッチングすることができる。
【0032】
図2は、第一のガス導入系41からプラズマ形成ガスとしてArガスを200sccm導入し、第二のガス導入系42からエッチングガスとしてSF6ガスを500sccm、O2ガスを140sccm導入したときの、エッチング室4の内部圧力とエッチング速度及びエッチング分布の関係を示すグラフである。
【0033】
図3は、O2ガスの導入量を変えたときの、O2ガス導入量とMo薄膜のエッチング速度の関係を示すグラフである。プラズマ形成ガスとしてArガスを200sccm導入し、SF6ガスは1000sccm導入した。
【0034】
上記実施例では加熱装置45をヒータで構成したが、赤外線ランプや他の加熱装置を用いてもよい。
なお、外側ドーム26と内側ドーム24は石英に限定されるものではなく、気密性を有し、エッチングガスと反応せず、電波を遮蔽しない誘電体で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一例のエッチング装置
【図2】エッチング室の内部圧力とエッチング速度及びエッチング分布の関係を示すグラフ
【図3】O2ガスの導入量を変えたときの、O2ガス導入量とMo薄膜のエッチング速度の関係を示すグラフ
【図4】従来技術のエッチング装置
【符号の説明】
【0036】
3……ラジカル生成室
4……エッチング室
10……エッチング装置
11……真空槽
13……マグネトロン発振器
21……基板電極
22……エッチング対象物
24……内側ドーム
25……アンテナ
26……外側ドーム
27……小孔
32a……小孔
41……第一のガス導入系
42……第二のガス導入系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル生成室と、
小孔を有するシャワープレートを介して前記ラジカル生成室に接続されたエッチング室とを有し、
前記エッチング室に配置されたエッチング対象物を前記ラジカル生成室内で発生させたエッチングガスラジカルでエッチングするエッチング装置であって、
前記ラジカル生成室の内部に突き出され、ガス噴出孔が形成された外側ドームと、
前記外側ドームの内側に配置された内側ドームと、
前記外側ドームと前記内側ドームの隙間にプラズマ形成ガスを供給する第一のガス供給系と、
前記ラジカル生成室内の前記外側ドームの外部にエッチングガスを供給する第二のガス導入系と、
前記内側ドームの内側に配置されたアンテナと、
前記アンテナに915MHzの交流電圧を印加するマグネトロン発振器と、
を有するエッチング装置。
【請求項2】
前記エッチング室に配置され、前記エッチング対象物が配置される基板電極と、
前記基板電極に接続された交流電源とを有する請求項1記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記基板電極に配置された前記エッチング対象物を加熱する加熱装置を有する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載のエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−87432(P2010−87432A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257795(P2008−257795)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】