説明

エポキシ官能性有機シランの制御された加水分解及び縮合並びに該エポキシ官能性有機シランと他の有機官能性アルコキシシランとの共縮合のための方法

本発明は、一般式I R1−SiR’m(OR)3-m(I)[式中、R1は、基(III)又は(IV)であり、かつ基R、R’並びにR’’は同じか又は異なっており、かつそれぞれ、水素(H)か、又は、1〜6個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式の、置換されていてもよいアルキル基を表し、基A及びA’は同じか又は異なっており、かつそれぞれ、1〜10個のC原子を有する二価のアルキル基を表し、基R2は同じか又は異なっており、かつR2は1〜20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式の、置換されていてもよいアルキル基を表し、かつ、mは0又は1である]のエポキシ官能性シラン、及び場合により一般式II R2−SiR’n(OR)3-n(II)[式中、R2は既に上記した意味を有する有機官能基を表し、R’はメチルを表し、基Rは無関係に、水素か、又は1〜6個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式アルキル基を表し、かつnは0又は1である]の少なくとも1の他の有機官能性シランの、制御された加水分解及び縮合を実施するための方法において、使用するシランのアルコキシ官能基1モル当たり0.001〜5モル以下の水を使用し、加水分解触媒及び縮合成分としてのホウ酸の他に他の加水分解−ないし縮合触媒を使用せず、かつ反応の際に形成される縮合物がSi−O−B−及び/又はSi−O−Si−結合をベースとすることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解触媒の存在下で、エポキシ官能性アルコキシシラン、又は、有機アルコキシシランのエポキシ官能性アルコキシシラン含有混合物の、制御された加水分解及び縮合を実施するための特別な方法に関する。
【0002】
以下で「縮合」との概念には、相応する加水分解−及び/又は縮合生成物の共縮合もが包含される。
【0003】
有機アルコキシシラン並びにその調製物、特に環境に優しい水性系は、現在、工業的製造及び日常生活の多くの分野における重要な物質である、例えばEP 0 832 911 A1を参照のこと。
【0004】
シラン、例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)を定着剤、プライマー等として使用する場合、大抵、加水分解に必要な水は高過剰で使用される。この場合の目的は、可能な限り完全な加水分解の達成である。特定の適用においては、明らかにより少量の水を用いた加水分解が必要とされる。アルコキシ官能基1モル当たり1モル未満の水が使用される場合には、加水分解及び縮合の際には特にわずかな量の水が存在する。このことは例えば、シランが、遊離水が邪魔でありかつそれにもかかわらずアルコキシ官能基の加水分解が必要であるような適用において使用される場合に、例えば、重合又はポリマー変性の際にコモノマーとして使用される場合に常に必要とされる。
【0005】
化学量論的加水分解:
≡SiOR+H2O→≡SiOH+ROH (R=アルキル)
加水分解の場合、反応後に過剰の水が反応室中に残留する。化学量論的及び化学量論的過少の加水分解の場合には、全ての水が加水分解反応により消費される。
【0006】
残念なことに多くのシランは、わずかに化学量論的過剰、化学量論的及び化学量論的過少の加水分解の条件下では完全には加水分解しない。例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの加水分解の場合には、酸性触媒、例えばHCl又は酢酸の濃度が高く、数時間後でかつ高められた温度での加水分解後であっても、約90%(面積パーセント GC WLD)のモノマー分が残留する。酸性触媒、特にHClは、多くの適用において、例えばコーティングの際に欠点を示す。更に、HClを含有する系は、環境保護の観点から、及び腐食問題に基づき、コーティングにはあまり望ましくない。
【0007】
ホウ素化合物は、例えばガラス織物仕上剤、ゾルゲル系、防食−及びバリヤコーティングにおいて、並びにゾルゲルハイブリッド系において使用される[とりわけChem. Mater.(1999), 第11(7), 第1672-1679頁;CN1299169A; EP1204784A1; JP2000302932A2; US2001024685A1 ; US2002051888A1 ; WO02/038686A2]。
【0008】
さらにEP 1 362 904 A1から、抗菌並びに殺真菌作用を利用するために、アルキル/アミノアルキル官能性共縮合物を含有する組成物にホウ酸を混合することが公知である。
【0009】
JP04080030A2(1992年3月13日)から、熱可塑性表面及びSi−O−B−結合を含有しかつゾルゲルポリマーから形成される直鎖ポリマーからのバリヤ層が公知である。ゾルゲル系は、テトラエトキシシラン25g、エタノール25g、2n HCl 1.86g及び水1.51gを80℃で1〜2時間混合し、引き続き該バッチにエポキシシラン2.5g及び酸化ホウ素1.0gを添加し、かつ再度1〜2時間混合することにより得られる。さらに有機アミンのエタノール溶液を0.5g添加した後、該調製物をPET下地に施与し、170〜300℃で処理する。
【0010】
有機官能性アルコキシシラン、特に3−グリシジルオキシプロピルアルコキシシラン自体又は相応する有機アルコキシシランの3−グリシジルオキシプロピルアルコキシシラン含有混合物を、使用される量の水を用いて、特に化学量論的過少量の水であっても、確実でかつ可能な限り完全に加水分解しかつ少なくとも部分的に縮合することのできる、他の、即ち、従来技術から従来公知でなかった方法を提供するという課題が存在していた。
【0011】
前記課題は、本発明によれば特許請求の範囲の記載に相応して解決される。
【0012】
驚異的にも、有利に、使用されるアルコキシ官能基1モル当たり水0.05〜5、有利に0.1〜2、特に0.15〜1モルの水量で、ホウ酸の使用又は存在下に、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)の実質的に完全な加水分解が実施されることが見出された。特に、わずか7時間以内で、ホウ酸触媒を用いて、ほぼ全てのGLYMOをオリゴマー生成物へと変換することができる。これに関連して、実質的に完全な加水分解とは、加水分解の実施後に、当初使用したモノマーシランの20質量%又は面積%(GC−WLD−%)未満が反応室中に加水分解されずに残存していることを意味する。
【0013】
本発明による方法により、有利に、従来は入手不可能であったオリゴマーシランの製造が可能となる。特に、オリゴマーGLYMO自体及び相応する共縮合物ないしその混合物を、ホウ酸触媒を用いて初めて製造することができる。
【0014】
さらに驚異的にも、上記の縮合物ないし共縮合物及びその相応する混合物の場合、ホウ酸も、オリゴマー−ないしシロキサン鎖中に少なくとも部分的に重合導入されることが見出された。
【0015】
そのようなエポキシ官能性縮合物ないし共縮合物は理想的に以下の構造式により表すことができ、この場合、該構造は直鎖、環式又は分枝鎖であってよい:
【化1】

ここで、
1は、基:
【化2】

又は
【化3】

を表し、かつ
基R、R’並びにR’’は同じか又は異なっており、かつそれぞれ、水素(H)か、又は、1〜6個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式の、置換されていてもよいアルキル基、有利に、H、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルを表し、基A及びA’は同じか又は異なっており、かつそれぞれ、1〜10個のC原子を有する二価のアルキル基を表し、有利にA’は−(CH22−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH)(CH3)(CH2)−を表し、かつAは−(CH2)−を表し、基R2は同じか又は異なっており、かつR2は1〜20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式の、置換されていてもよいアルキル基を表し、該基は例えばN−、O−、S−、ハロゲンを有する基、例えば、フルオロアルキル、アミノアルキル、メルカプトアルキル、メタクリルオキシアルキル、又はOR、即ちOH又はアルコキシ、特にメトキシ又はエトキシで置換されており、かつ、xは1以上の整数、有利に1〜50を表し、かつyは0〜50の整数を表し、かつx+yは2以上である。
【0016】
さらに、ホウ素化合物はその他ではエポキシ樹脂系のための架橋触媒として使用されるにもかかわらず、オキシラン環が、存在するホウ酸により分解されないことは驚異的である。
【0017】
本発明により得られる"GLYMO"水解物ないし縮合物並びに共縮合物は、特にポリエステル樹脂の変性に好適である。この場合、例えば発明の名称「無機変性ポリエステルバインダー調製物、その製造法及びその使用」のドイツ連邦共和国特許出願から引用することができるように、コーティングの明らかに改善された付着性及び耐化学薬品性が達成される。
【0018】
従って本発明の対象は、一般式I
【化4】

[式中、
1は、基:
【化5】

又は
【化6】

を表し、かつ
基R、R’並びにR’’は同じか又は異なっており、かつそれぞれ、水素(H)か、又は、1〜6個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式の、置換されていてもよいアルキル基、有利に、H、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルを表し、基A及びA’は同じか又は異なっており、かつそれぞれ、1〜10個のC原子を有する二価のアルキル基を表し、有利にA’は−(CH22−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH)(CH3)(CH2)−を表し、かつAは−(CH2)−を表し、基R2は同じか又は異なっており、かつR2は1〜20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式の、置換されていてもよいアルキル基を表し、該基は例えばN−、O−、S−、ハロゲンを有する基、例えば、フルオロアルキル、アミノアルキル、メルカプトアルキル、メタクリルオキシアルキル、又はOR、即ちOH又はアルコキシ、特にメトキシ又はエトキシで置換されており、かつ、mは0又は1である]
のエポキシ官能性シランを、ホウ酸[H3BO3ないしB(OH)3]、及び場合により一般式II
【化7】

[式中、
2は既に上記した意味を有する有機官能基を表し、R’はメチルを表し、基Rは無関係に、水素、並びに1〜6個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式アルキル基を表し、かつnは0又は1である]
の少なくとも1の他の有機官能性シランの使用下に、制御された加水分解及び縮合を実施するための方法において、使用するシランのアルコキシ官能基1モル当たり0.001〜5モル以下の水を使用し、加水分解触媒及び縮合成分としてのホウ酸の他に他の加水分解−ないし縮合触媒を使用せず、かつ反応の際に形成される縮合物がSi−O−B−及び/又はSi−O−Si−結合をベースとすることを特徴とする方法に関する。
【0019】
式Iによる有利な成分は、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランである。しかしながら、式Iから誘導可能な他のシランを有利に使用することもできる。
【0020】
有利に、そのようにして得られた生成物混合物は、残量(痕跡分)の水及び/又は1以上のアルコール、例えばメタノール、エタノールないし相応する加水分解アルコールの他に、他の溶剤、安定剤又は他の添加剤ないし助剤を含有しない。本発明による混合物は特に有機アミンを含有しない。
【0021】
式IIによれば、本発明による方法において有利にメトキシ又はエトキシシランを使用することができ、前記シランは特に、メトキシ、エトキシ、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、n−オクチル、i−オクチル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルの系列(これらは若干の例を挙げたものに過ぎない)からの官能基R2を有し、例えばこれに限定されるものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランである。
【0022】
本発明においても、ホウ酸は、殺生剤としてではなく有利に触媒として及び/又は縮合成分として使用される。
【0023】
有利に、本発明による反応において、式I及び/又はIIによる使用されるアルコキシ官能基1モル当たり、0.05〜5、特に有利に0.1〜2、極めて特に有利に0.15〜1、特に0.15〜1の全ての中間数値のモル、例えばこれに限定されるものではないが、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9モルの水が使用される。
【0024】
さらに有利に、本発明による方法において、使用されるシラン1モル当たり、0.001〜1モルのホウ素、特に有利に0.01〜0.5、特に0.07〜0.76モルのホウ素が、有利にホウ酸の形で使用される。
【0025】
本発明による方法においても、反応は有利に0〜200℃、有利に40〜150℃、特に有利に50〜100℃、極めて特に有利に60〜80℃の範囲内の温度で実施される。
【0026】
本発明による方法は特に、0.1〜100h、有利に0.5〜20h、特に有利に1〜10h、極めて特に有利に2〜6hにわたる十分な混合下に実施される。
【0027】
同様に、本発明による方法において、そのようにして得られた生成物混合物から、該生成物混合物中に存在するアルコール及び/又はホウ酸エステルを、減圧下での慣用の蒸留で少なくとも部分的に除去することが有利である。しかしながら、そのような成分をショートパス式−ないし薄膜式蒸発装置を用いて生成物から除去することもできる。
【0028】
さらに、そのようにして得られた生成物を必要な場合には濾過又は遠心分離し、浮遊粒子を分離することができる。そのために、例えばフィルター又は遠心分離器を使用することができる。
【0029】
一般に、本発明による方法を以下のように実施することができる:
上記有機官能性シラン及び触媒並びに場合により好適な溶剤、例えばエタノール又はメタノールを順に混合容器に装入することができる。撹拌下に、温度を有利に40〜80℃の範囲内の値に調節し、かつ、触媒が溶解するまでの間撹拌する。引き続き、好適な様式で、撹拌下に加水分解水を場合により好適な溶剤、例えばエタノール又はメタノールと混合して、数分〜数時間以内、有利に0.5h未満以内に計量供給する。その後、反応を完全に進行させるために、前記混合物を、シランモノマー濃度が所望の値、有利に0〜15 GC WLD%に達するまでの間温度処理し、かつ例えば40〜100℃で後撹拌することができる。生じる溶剤含有オリゴマー混合物を、引き続き、生じたままで使用することができるが、しかしながら、溶剤、即ち添加された溶剤及び加水分解アルコールを、減圧下、例えば0〜1000ミリバール、有利に100〜500ミリバールで、かつ高められた温度、例えば40〜200℃、有利に50〜150℃で蒸留することにより除去することもできる。生成物が混濁物を含有する場合、例えば加圧フィルターにより通常通りに濾過することができる。生成物は通常無色から黄色の液状であり、かつ主に1〜1000mPasの範囲内、有利に100mPas未満の粘度を有する。該生成物は有利に室温で数ヶ月にわたって、かつ大抵の場合、高められた温度(50℃)であっても貯蔵安定性である。
【0030】
反応制御(反応混合物中のモノマーシランの濃度の測定)は、有利に標準ガスクロマトグラフィー(HP 5890シリーズII、熱伝導度検出器)により行う。温度測定は通常熱電対を用いて行うことができる。圧力測定は例えば圧電式圧力ピックアップ(例えばVacubrand DVR 2)により行う。さらに、生成物中の残留モノマー含分は29Si NMR分光法により試験することができ、有利に5〜17モル%の範囲内である。生成物の架橋度を29Si NMR分光法によるM、D、T構造単位の測定により測定した。本発明によるシラン縮合物中で、M構造単位の割合は有利に14〜35モル%の範囲内であり、D構造の割合は36〜42モル%の範囲内であり、かつT構造の割合は15〜34%の範囲内である。エポキシ基の加水分解−メタノリシスを13C NMR分光法により測定することができる。本発明による生成物組成物は、当初使用したエポキシ分に対して有利にわずか3〜7モル%の開環エポキシドを含有するに過ぎない。
【0031】
HClを用いた触媒(比較例)によって、29Si NMRによれば、共縮合物においてGC分析による39%の明らかにより高いシランモノマー割合がもたらされるのに対して、相応するB触媒を用いた共縮合物はわずか2GC WLD−%未満のモノマーシラン割合を示すに過ぎず;単独縮合物については、HCl触媒を用いた加水分解の場合には約80%のモノマー割合が得られるのに対して、ホウ酸触媒を用いた相応する試験では14GC WLD−%のモノマー割合がもたらされるに過ぎない。アルキルチタネートを用いた触媒は確かにわずかなモノマー割合をもたらすが、生成物は貯蔵安定性でない(ゲル化)。
【0032】
本発明による生成物は、有利に0.1%までのアルコール含分に調節することができる。所望の場合には、本発明による縮合物を、有機溶剤、例えばアルコール、ケトン、エステル、エーテル、グリコール、グリコールエーテル並びにベンジン炭化水素及び芳香族溶剤で希釈することができる。例えばポリマー合成のための添加剤としての適用は、通常、希釈せずに、又は上記のような相容性溶剤を用いて行われる。
【0033】
本発明による縮合物ないし組成物は有利に、ポリマー合成における変性剤として、ポリマー合成におけるコモノマーとして、定着剤として、染料及び塗料の配合並びに接着剤工業における成分として、充填剤及び顔料のための被覆剤として、表面変性剤として使用されるが、これらは若干の例を挙げたものに過ぎない。
【0034】
従って、バインダーにおける、定着剤としての、重合合成における変性剤としての、重合合成におけるコモノマーとしての、染料及び塗料の配合並びに接着剤工業におけるバインダーとしての、充填剤及び顔料のための被覆剤としての、表面変性剤としての、本発明によるシランベースの縮合物の混合物ないし本発明による方法により製造されたか又は得られたシランベースの縮合物の混合物の使用も、同様に本発明の対象である。
【0035】
本発明を以下の実施例により詳説するが、対象はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】比較試験1に対する図
【図2a】比較例2に対する1H−NMR−スペクトル
【図2b】比較例2に対する13C−NMR−スペクトル
【図2c】比較例2に対する29Si−NMR−スペクトル
【図3】比較例3に対する29Si−NMR−スペクトル
【図4】実施例1に対する図
【図5a】実施例1に対する1H−NMR−スペクトル
【図5b】実施例2に対する13C−NMR−スペクトル
【図5c】実施例2に対する29Si−NMR−スペクトル
【図5d】実施例2に対する11B−NMR−スペクトル
【図6a】実施例3に対する1H−NMR−スペクトル
【図6b】実施例3に対する13C−NMR−スペクトル
【図6c】実施例3に対する29Si−NMR−スペクトル
【図7a】実施例5に対する1H−NMR−スペクトル
【図7b】実施例5に対する29Si−NMR−スペクトル
【図7c】実施例5に対する13−NMR−スペクトル
【図7d】実施例5に対する13C−NMR−スペクトル
【図7e】実施例5に対する11B−NMR−スペクトル
【図8a】実施例6に対する1H−NMR−スペクトル
【図8b】実施例6に対する13−NMR−スペクトル
【図8c】実施例6に対する29Si−NMR−スペクトル
【図8d】実施例6に対する11B−NMR−スペクトル
【実施例】
【0037】
比較例1
20mlのシンチレーションフラスコ中にDynasylan(R) GLYMO9.4gを装入し、濃塩酸7.5μlを撹拌(電磁撹拌機)下に添加し、65℃に加熱した。次いで、脱塩水0.864gを撹拌混入した。底部温度60〜70℃で24時間更に撹拌した。79面積%のシランモノマー含分(GC−WLD)を有する無色澄明な液体が得られた。以下の図1を参照のこと。
【0038】
比較例2
加水分解触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを使用したDynasylan(R) GLYMO縮合物の製造
実施例2と同様に実施したが、但しホウ酸触媒をテトラ−n−ブチル−オルトチタネートに換えた。
【0039】
強粘性の黄色の液体が得られた。50℃で4週間の貯蔵時間後に、該生成物は固体であった。該生成物を分光分析により分析した。以下の図2a、2b及び2cを参照のこと(A060029949)。
【0040】
比較例3
HClを使用したDynasylan(R) GLYMO/Dynasylan(R) Aからの共縮合物の製造
実施例2と同様に製造したが、但しホウ酸の代わりに塩酸(37%)9.12gを使用した。後撹拌時間を4時間から60℃〜73℃で8時間に増加させた。29Si−NMRにおいてシランモノマー27モル%が検出された。以下の図3を参照のこと(A060031330)。
【0041】
実施例1
20mlのシンチレーションフラスコ中にDynasylan(R) GLYMO9.4gを装入し、ホウ酸0.188gを撹拌(電磁撹拌機)下に添加し、60℃で30分間加熱し、次いで脱塩水0.864gを撹拌混入した。底部温度60〜70℃で24時間更に撹拌した。
【0042】
14面積%のシランモノマー含分(GC−WLD)を有する無色澄明な低粘性液体が得られた(図4)。
【0043】
実施例2
Dynasylan(R) GLYMO/Dynasylan(R) MTESからの共縮合物の製造
1L−四ッ口フラスコ撹拌装置中に、Dynasylan(R) GLYMO 118.05g、Dynasylan(R) MTES 89.15g及び触媒としてのホウ酸15.46gを順に装入した。底部温度を約60℃に調節し、かつ、触媒が溶解するまで約30分間にわたって撹拌した。底部温度50℃で、5分以内で、水8.1g及びメタノール64.1gからの混合物を滴加した。底部温度約70〜75℃で、該混合物を5.5時間、後撹拌した。モノマー割合(GC−WLD)はわずか5面積%未満であった。一晩冷却した後、約50℃の塔底温度でかつ500〜100ミリバールの真空で、遊離メタノール及びエタノールを留去した。次いで、反応生成物を1ミリバール未満で65℃で2時間蒸留した。この場合、底部生成物中になおも存在するホウ酸エステルをも留去した。わずかに混濁した液体が生じ、該液体をSEITZ−EK 1を備えた加圧フィルターで濾過した。
【0044】
43mPasの粘度及び34.8%のSiO2含分を有する無色澄明な液体が得られた。エポキシ環は97モル%と推定された。貯蔵安定性は50℃で3ヶ月超であった。さらに生成物を分光法により試験した。以下の図5a、5b、5c及び5d(A060029721)を参照のこと。
【0045】
実施例3
Dynasylan(R) GLYMO縮合物の製造
500ml四ッ口フラスコ中に、Dynasylan(R) GLYMO 235.6g及びホウ酸15.9gを撹拌下に装入し、約60℃に加熱した(白色懸濁液)。約30分後、ホウ酸が完全に溶解した。約46℃の底部温度で、5分以内に、脱塩水8.2g及びメタノール64.2gからの混合物を強力な撹拌下に滴加した。無色澄明な液体が生じた。60〜70℃の底部温度で10.5時間、後撹拌した。約50℃の塔底温度でかつ500〜100ミリバールの真空で、全アルコールを4時間以内で留去した。次いで、反応生成物を1ミリバール未満で約2時間、最高で70℃の底部温度まで蒸留した。ここで、底部生成物中になおも存在するホウ酸エステルを留去した。わずかに混濁した液体が生じ、該液体をSEITZ−EK 1を備えた加圧フィルターで濾過した。
【0046】
55mPasの粘度及び22.1%のSiO2含分を有する無色澄明な液体が得られた。エポキシ環(1H−NMR)は約93モル%と推定された。モノマー割合(29NMR分析)は10%であった。これに関しては、以下の図6a、6b及び6c(A060029949)を参照のこと。貯蔵安定性は50℃で2.5ヶ月超であった。
【0047】
実施例4
Dynasylan(R) GLYMO/Dynasylan(R) Aからの共縮合物の製造
0.5L−四ッ口フラスコ撹拌装置中に、Dynasylan(R) GLYMO 118.05g、Dynasylan(R) A 104.17g及びホウ酸15.46gを装入した。底部温度を約60℃に調節し、かつ1時間後、塔底温度44℃で、水8.10g及びメタノール64.10gからの混合物を4分以内に滴加した。底部温度約60〜70℃で、該混合物を約4時間、後撹拌した。約50℃の塔底温度でかつ500〜100ミリバールの真空で、遊離メタノール及びホウ酸エステルを約5時間以内に留去した。蒸留終了の2時間前に、1ミリバール未満の真空で留去した。その後、常圧でかつ室温でn−ブタノール64.1gを混入した。わずかに混濁した液体が生じ、該液体をSEITZ−EK 1を備えた加圧フィルターで濾過した。
【0048】
25.4%のSiO2含分及び62mPasの粘度を有する無色澄明な液体が得られた。シランモノマー含分(GC−WLD)は面積%未満であった。
【0049】
実施例5
Dynasylan(R) GLYMO/Dynasylan(R) PTMOからの共縮合物の製造
4L−四ッ口フラスコ撹拌装置中に、Dynasylan(R) GLYMO 707.3g、Dynasylan(R) PTMO 492.1g及びホウ酸92.4gを装入した。底部温度を約60℃に調節した。1時間後、ホウ酸は完全に溶解していた。底温度約40〜50℃で、水81.3g及びメタノール384.6gからの混合物を6分以内に滴加した。底部温度約60〜70℃で、該混合物を6時間、後撹拌した。約50℃の底部温度でかつ500〜100ミリバールの真空で、遊離メタノール及びホウ酸エステルを6時間以内に留去した。蒸留終了の30分前に、60℃の底部温度及び1ミリバール未満の圧力で留去した。25.5%のSiO2含分を有する無色澄明な液体が得られた。粘度を、26%n−ブタノールの混合により23mPasに調節した。モノマーシラン含分(29Si−NMR)は5モル%未満であった。以下の図7a、7b、7c、7d及び7eを参照のこと(A060013391)。反応生成物を26%n−ブタノールで希釈することにより、50℃で8日間の貯蔵安定性が50℃で5ヶ月超に高められた。
【0050】
実施例6
Dynasylan(R) GLYMO縮合物の製造
Dynasylan(R) GLYMO 233.4gをホウ酸12.4gと500ml−四ッ口フラスコ中に撹拌下に装入し、約60℃に加熱した(白色懸濁液)。約30分後、ホウ酸は完全に溶解していた。底部温度約39℃で5分以内で、脱塩水7.3gを極めて強力な撹拌下に滴加した。無色澄明な液体が生じた。底部温度60〜70℃で9時間、後撹拌した。約50℃の塔底温度でかつ500〜100ミリバールの真空で、全アルコールを15分以内に留去した。次いで、反応生成物を1ミリバール未満で約2時間、最高70℃までの底部温度で蒸留した。この場合、底部生成物中になおも存在するホウ酸エステルを留去した。
【0051】
341mPasの粘度及び23.0%のSiO2含分を有する無色澄明な液体が得られた。エポキシ環(1H−NMR)は約96モル%と推定された。モノマー割合(29NMR分析)は16.8%であった。以下の図8a、8b、8c及び8d(A060029950)を参照のこと。貯蔵安定性は50℃で2.5ヶ月超であった。
【0052】
粘度を低下させるために、生成物を約3:1でn−ブタノールで希釈した。その後、粘度は19.0mPasであった。
【0053】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、
1は、基
【化2】

又は
【化3】

を表し、かつ
基R、R’並びにR’’は同じか又は異なっており、かつそれぞれ、水素(H)か、又は、1〜6個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式の、置換されていてもよいアルキル基を表し、基A及びA’は同じか又は異なっており、かつそれぞれ、1〜10個のC原子を有する二価のアルキル基を表し、基R2は同じか又は異なっており、かつR2は1〜20個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式の、置換されていてもよいアルキル基を表し、かつ、mは0又は1である]
のエポキシ官能性シラン、
及び場合により一般式II
【化4】

[式中、
2は既に上記した意味を有する有機官能基を表し、R’はメチルを表し、基Rは無関係に、水素か、又は1〜6個のC原子を有する直鎖、分枝鎖又は環式アルキル基を表し、かつnは0又は1である]
の少なくとも1の他の有機官能性シランの、制御された加水分解及び縮合を実施するための方法において、使用するシランのアルコキシ官能基1モル当たり0.001〜5モル以下の水を使用し、加水分解触媒及び縮合成分としてのホウ酸の他に他の加水分解−ないし縮合触媒を使用せず、かつ反応の際に形成される縮合物がSi−O−B−及び/又はSi−O−Si−結合をベースとすることを特徴とする方法。
【請求項2】
反応の際に、使用するシランのアルコキシ官能基1モル当たり0.05〜2モルの水を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
特に化学量論的及び化学量論的過少の運転方式で、反応の際に0.15〜1モルの水を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
使用するシラン1モル当たり0.001〜1モルのホウ酸を使用する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
反応を0〜200℃の範囲内の温度で実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
反応を十分な混合下に0.1〜100時間にわたって実施する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
得られた生成物混合物から、該生成物混合物中に存在するアルコール及び/又はホウ酸エステルを減圧下に少なくとも部分的に除去する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により得られたシランベースの縮合物の混合物。
【請求項9】
40〜100GC−WLD%の含分のシランベースの縮合物、0〜20GC−WLD%の含分のモノマーシラン、及び場合により0〜50GC−WLD%の含分の少なくとも1のアルコールからの混合物であって、その際、該表記はそれぞれ全組成物に対するものであり、かつ合計で100GC−WLD%となる混合物。
【請求項10】
バインダーとしての、又はバインダーにおける、定着剤としての、重合合成における変性剤としての、重合合成におけるコモノマーとしての、染料及び塗料の配合並びに接着剤工業におけるバインダーとしての、充填剤及び顔料のための被覆剤としての、並びに基材表面の変性剤としての、請求項8又は9記載のシランベースの縮合物の混合物又は請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造されたシランベースの縮合物の混合物の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【公表番号】特表2010−535915(P2010−535915A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520509(P2010−520509)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057590
【国際公開番号】WO2009/021766
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】