説明

エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた目地形成方法

【課題】水洗しても白化することがなく、かつ水洗で容易に目地外に付着した部分を除去できるエポキシ樹脂組成物およびそれを用いた目地形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも(a)エポキシ樹脂、(b)非水溶性ポリアミン化合物、(c)水溶性アミン化合物、さらに好ましくは(d)グリコール化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物であり、該エポキシ樹脂組成物を塗布し、目地外に付着した部分を水洗することにより除去することを特徴とする目地形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗性を向上し、水による白化を改良したエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
建築現場における工期短縮や品質安定化などを目的として、工場においてモルタルやタイルをパネル状に加工した各種建築パネルが用いられている。このような建築パネルを製造する際、現場で施工する場合と同様に目地にはひび割れ防止、防水、美観の維持などを目的として目地材が塗布されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
目地材の施工において、目地材を目地に塗布後に目地外に付着した部分を除去する必要があり、この除去工程の簡略化が求められている。特許文献1には、硬化の極めて遅いモルタルを目地部に充填し、硬化前に高圧水洗浄を行うことにより該モルタルを除去して目地を形成する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平7-299813号公報
【0004】
また、水周りに用いられる床材として、金属板にタイルを接着したものが用いられている(例えば特許文献2)。このようなユニットにおいてもタイル間に目地材を塗布する必要があるが、金属板とタイルの接着と目地形成を同じ樹脂で行うことにより、生産性を向上したいとの要望がある。
【特許文献2】特開2008-38447号公報
【0005】
金属への密着に優れるエポキシ樹脂も目地材として使用されているが、水洗による除去を行おうとすると目地が白化するという問題が生じ、白化を改善しようとすると目地外に付着した部分を除去できないという問題が発生する。しかしながら、現状では目地外に付着した部分を水洗する際に白化してしまうことなく容易に除去できるエポキシ樹脂組成物はなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は水洗しても白化することがなく、かつ水洗で容易に目地外に付着した部分を除去できるエポキシ樹脂組成物およびそれを用いた目地形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも(a)エポキシ樹脂、(b)非水溶性ポリアミン化合物、(c)水溶性アミン化合物、さらに好ましくは(d)グリコールエーテルを含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物であり、該エポキシ樹脂組成物を塗布し、余剰部を水洗することにより除去することを特徴とする目地形成方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエポキシ樹脂組成物は水洗しても白化することがなく、かつ水洗で容易に除去できる。したがって、建築パネルの製造において、目地部にエポキシ樹脂組成物を充填し、余剰部分をヘラなどで簡易的にはく離した後、水洗を行うことで目地外に付着した部分を除去することが可能となる。また、金属板との接着に使用することもできるため、建築パネルの生産性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用する(a)エポキシ樹脂は特に限定されず、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型のエポキシ樹脂、それらの水添化物、ノポラック型、グリシジル型及びグリシジルアミン型のエポキシ樹脂のほか、ポリオキシプロピレンやポリオキシエチレンのグリシジルエーテル、ウレタン結合を持つウレタン変性エポキシ樹脂、エステル結合を持つエステル変性エポキシ樹脂、ゴム成分で変性されたゴム変性エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化剤として、(b)非水溶性ポリアミン化合物を用いる。非水溶性ポリアミン化合物として、脂肪族ポリアミン化合物、脂環式ポリアミン化合
物などが挙げられる。脂肪族ポリアミン化合物は、1,2−ジアミノエタン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ジアミノブタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサンなどの脂肪族アミンにエポキサイドの付加、不飽和化合物のマイケル付加、メチロール化合物とのマンニッヒ反応、ケトン化合物との反応、カルボン酸との反応などを行うことによってポリマー化したものである。また、脂環式ポリアミン化合物は、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式アミン化合物にエポキサイドの付加、不飽和化合物のマイケル付加、メチロール化合物とのマンニッヒ反応、ケトン化合物との反応、カルボン酸との反応などを行うことによってポリマー化したものである。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物の耐白化性と水洗性を両立させるため、前記(b)に加えて(c)水溶性アミン化合物を硬化剤として用いる。水溶性アミン化合物として、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリアミノアミドなどが挙げられる。
【0012】
前記(b)非水溶性ポリアミン化合物と(c)水溶性アミン化合物の配合量は、両者のアミン価からエポキシ樹脂に対する配合量が求められる。白化が生じる場合は(b)非水溶性ポリアミン化合物の割合を増やし、水洗性が悪い場合は(c)水溶性アミン化合物の割合を増やすことにより、耐白化性と水洗性を両立できる。
【0013】
さらに、(d)グリコールエーテルの使用により、エポキシ樹脂組成物の水洗性を向上することができる。グリコールエーテルを構成するグリコールとしてモノグリコール、ジグリコールやそれ以上の多価グリコールを用いることができ、それらをエーテル化したものが使用されるが、水酸基を含有していた方が水洗性に優れるため、モノエーテルが好ましい。具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。グリコールエーテルの配合量は、耐水性を考慮するとエポキシ樹脂組成物全体に対して20重量部以下が好ましい。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物には前記必須成分の他、各種の配合材料を添加することができる。具体的には、充填材、希釈剤、粘性調整剤、分散剤、レベリング剤、架橋剤、老化防止剤、防腐剤、消泡剤、防錆剤などが挙げられる。
【0015】
充填材の添加により、エポキシ樹脂組成物の粘度調整、粘性調整、軽量化、樹脂の補強などを行うことができる。具体例として、炭酸カルシウム、硅砂、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、カオリンなどの無機充填材、ガラス繊維などの補強材、シラスバルーン、ガラスバルーンなどの中空体などが挙げられる。
【0016】
希釈剤の配合によりエポキシ樹脂組成物に柔軟性、流動性などを付与することができる。その具体例としてフタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどフタル酸エステル系の希釈剤、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコンーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジアルキル、セバシン酸ジブチル、エポキシ化大豆油、ポリプロピレングリコール、アクリルポリマーなどが挙げられる。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂組成物は水洗しても白化することがなく、かつ水洗で容易に除去できる。したがって、建築パネルの製造において、目地部にエポキシ樹脂組成物を充填し、余剰部分をヘラなどで簡易的にはく離した後、水洗を行うことで目地外に付着した部分を除去することが可能となり、建築パネルの生産性を向上することができる。
【0018】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。もちろん、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
主剤組成物の調整
ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるEP−4100(ADEKA社製、商品名)200重量部、シリカであるRY−200S(日本アエロジル社製、商品名)2.5重量部、炭酸カルシウムであるMホワイト(丸尾カルシウム社製、商品名)140重量部、炭酸カルシウムである08重炭(丸尾カルシウム社製、商品名)140重量部を混合し、主剤組成物1を得た。
【0020】
硬化剤組成物の調整
非水溶性ポリアミン化合物として脂肪族ポリアミン化合物であるFXS−854(富士化成工業社製、商品名)95重量部、水溶性アミン化合物であるTXH−674B(富士化成工業社製、変性ポリアミノアミド、商品名)50重量部、08重炭140重量部、炭酸カルシウムであるライトンA(備北粉化工業社製、商品名)135重量部、炭酸カルシウムであるカルファイン200M(丸尾カルシウム社製、商品名)50重量部、グリコールエーテルであるブチルジグリコール30重量部を混合し、硬化剤組成物1を得た。また、表1記載の配合にて同様に硬化剤組成物2〜4を得た。
【0021】
実施例1
主剤組成物1と硬化剤組成物1を重量比1:1で混合し、実施例1のエポキシ樹脂組成物を得た。同様に主剤組成物1と硬化剤組成物2〜4を重量比1:1で混合することにより、実施例2、比較例1、比較例2の各エポキシ樹脂組成物を得た。
【0022】
耐白化性
表1記載の配合に基づいてエポキシ樹脂組成物を50g調製し、100mLポリカップに入れた。ポリカップのエポキシ樹脂組成物層の上に水を30g注ぎ、30分間静置した。水を除去後、室温で1日間放置し、エポキシ樹脂組成物層の外観を確認した。白化が見られないものを○、白化したものを×と評価した。
水洗性
表1記載の配合に基づいてエポキシ樹脂組成物を調製し、タイルが接着されたフレキシブルボードの目地部に充填後、余剰部分をヘラで取り除いた。水を流しながらタイル上に付着したエポキシ樹脂組成物をスポンジでこすり、水洗性を評価した。数回こすることによって完全除去できるものを○、数十回こすることによって完全除去できるものを△、全く除去できないものを×と評価した。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
耐白化性、水洗性とも良好であった実施例1のエポキシ樹脂組成物について、金属への密着性および耐水性を確認した。金属板(SUS430、厚み1.5mm)に実施例1のエポキシ樹脂組成物を100g/m塗布し、さらに別の金属板(SUS430、厚み1.5mm)を貼り合せた(接着面積25mm×12.5mm)。30℃雰囲気下で3日間養生後、引張り速度5mm/分でせん断試験を行ったところ、強度は15.1N/mmであった。また、同様に試験体を作成して30℃雰囲気下で3日間養生後、50℃温水に2ヵ月間浸漬した後にせん断試験を行ったところ、強度は9.8N/mmであった。したがって、実施例1のエポキシ樹脂組成物は目地材として優れているだけではなく、金属板との接着にも優れた性能を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)エポキシ樹脂、(b)非水溶性ポリアミン化合物、(c)水溶性アミン化合物を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記非水溶性ポリアミン化合物が脂肪族ポリアミン化合物であることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(d)グリコールエーテルを含有することを特徴とする請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を塗布し、目地外に付着した部分を水洗することにより除去することを特徴とする目地形成方法。

【公開番号】特開2010−106235(P2010−106235A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93527(P2009−93527)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】