説明

エポキシ樹脂組成物

【課題】低粘度で高流動性を有し保存安定性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)と、シランカップリング剤(E)とを含むエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ化合物(A)は、エポキシ化シクロヘキサンを2個有する特定な脂環式ジエポキシ化合物(a1)20〜80重量%、及び前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)以外のエポキシ化合物(a2)80〜20重量%からなり、前記無機充填材(D)は、シランカップリング剤で表面処理された無機微粒子である、エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関し、より詳しくは、半導体樹脂封止材料、とりわけフリップチップ実装におけるアンダーフィル材料として好適なエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、携帯電話機等の小型電子機器の普及に伴い、LSI装置の小型化が求められている。そこで、従来のワイヤーボンディング実装に代わり、半導体チップをフェースダウンにし、直接回路基板へ実装することにより実装面積の極小化を図るフリップチップ実装と呼ばれる実装方法が普及してきている。
【0003】
フリップチップ実装では、チップの接続用パッドが形成された面を下側に向けて、この接続用パッドと、対向するパッケージやプリント配線基板(PCB)の表面の電極とを半田バンプにより電気的及び機械的に接続する。この際に、実装基板とチップとの間には半田バンプによる空隙が生じるため、この空隙に、実装基板とチップとの間を封止するアンダーフィル材と呼ばれる樹脂組成物が注入される。アンダーフィル材は、通常、エポキシ樹脂とシリカ充填材とを含んでいる。アンダーフィル材は上記空隙を埋めるだけでなく、半田バンプを用いた電気的接点を密封して周囲から保護する(大気中の水分の侵入を防止する)と共に、機械的接合点である半田バンプ接合部に過度の力が作用することを防ぐ(接合強度を向上させる)目的も併せもっている。
【0004】
最近では、フリップチップ実装の半田バンプの狭ギャップ化、狭ピッチ化によりアンダーフィルの注入性の高さが強く求められている。これらの課題を解決すべく、アンダーフィル材の構成成分の一つであるシリカ充填材に注目し、異なる粒子径の充填材をブレンドすること(特開2007−204511号公報)、表面処理を施すこと(特開2002−146233号公報、特開2003−238141号公報、特開2006−193595号公報、特開2007−254543号公報、特開2008−297373号公報)等、アンダーフィル材の流動性を上げる試みがなされている。
【0005】
また、上記のアンダーフィル材の流動性と相関する物性の一つに粘度がある。アンダーフィル材の粘度を低くすれば、流動性が上がることが期待できる。しかしながら、粘度を決定づける大きな因子であるシリカ粒子含量を少なくすれば、相対的に樹脂成分の含量が多くなり、アンダーフィル材の硬化後の状態での線膨張が大きくなり、信頼性が低下してしまう問題がある。
【0006】
アンダーフィル材の低粘度化のもう一つのアプローチとして、アンダーフィル材を構成する樹脂自体の粘度を下げるという手法も考えられる。しかしながら、一般に入手できるエポキシ樹脂として挙げられるグリシジルタイプのエポキシ化合物は粘度が高い。低粘度であり容易に入手できるエポキシ化合物として、脂環式エポキシが挙げられる。例えば、特許第4322047号公報には、特定構造の脂環式ジエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−204511号公報
【特許文献2】特開2002−146233号公報
【特許文献3】特開2003−238141号公報
【特許文献4】特開2006−193595号公報
【特許文献5】特開2007−254543号公報
【特許文献6】特開2008−297373号公報
【特許文献7】特許第4322047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、脂環式エポキシは非常に反応性が高く、シリカと混合した状態にすると増粘してしまう。脂環式エポキシとシリカとを含むエポキシ樹脂組成物は、その保存安定性に問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、低粘度で高流動性を有し保存安定性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。特に、本発明の目的は、低粘度で高流動性を有し保存安定性に優れるフリップチップ実装におけるアンダーフィル材料として好適なエポキシ樹脂組成物を提供することにある。さらに、本発明の目的は、前記エポキシ樹脂組成物がアンダーフィル材料として用いられた半導体パッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)と、シランカップリング剤(E)とを含むエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ化合物(A)は、下記一般式(I):
【化1】

(ここで、R1 〜R18は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
又は下記一般式(II):
【化2】

(ここで、R21〜R38は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
で表される脂環式ジエポキシ化合物(a1)20〜80重量%、及び前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)以外のエポキシ化合物(a2)80〜20重量%からなり、
前記無機充填材(D)は、シランカップリング剤で表面処理された無機微粒子である、エポキシ樹脂組成物。
【0011】
(2) 前記硬化剤(B)の配合割合は、(A)成分1当量に対して0.6〜1.05当量であり、
前記硬化促進剤(C)の配合割合は、(A)成分100重量部に対して0.1〜10重量部であり、
前記無機充填材(D)の配合割合は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計量を基準として30〜80重量%であり、
前記シランカップリング剤(E)の配合割合は、(A)成分100重量部に対して0.1〜5重量部である、上記(1) に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0012】
(3) 前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)は、前記一般式(I)においてR1 〜R18が水素原子である化合物、及び/又は前記一般式(II)においてR21〜R31が水素原子である化合物である、上記(1) 又は(2) に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0013】
(4) 前記無機微粒子は、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、又は酸化チタン微粒子である、上記(1) 〜(3) のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0014】
(5) 前記無機微粒子が表面処理されているシランカップリング剤は、エポキシ基含有シランカップリング剤、又はアミノ基含有シランカップリング剤である、上記(1) 〜(4) のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0015】
(6) 前記無機微粒子の平均粒径は、0.1〜50μmである、上記(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0016】
(7) 前記無機微粒子には、少なくとも一部のシランカップリング剤が化学的に結合しており、化学的に結合しているシランカップリング剤が前記微粒子表面を被覆している面積割合は、前記微粒子の全表面積を基準として10%以上である、上記(1) 〜(6) のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0017】
(8) アンダーフィル材料用の上記(1) 〜(7) のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0018】
(9) 実装基板と、前記実装基板上にバンプを介して配置された半導体チップとを含む半導体パッケージであって、
前記実装基板と前記半導体チップとの間隙は、上記(1) 〜(8) のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されている半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂成分として上記特定の脂環式ジエポキシ化合物を含み、無機充填材としてシランカップリング剤で表面処理された無機微粒子を含んでいるので、室温付近(例えば、5〜30℃)において低い粘度と高い流動性とを有しており、長時間にわたり保存安定性(ポットライフ)に優れている。また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化物の経時安定性にも優れている。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、室温付近において低い粘度と高い流動性とを有しており、長時間にわたり保存安定性(ポットライフ)に優れているので、フリップチップ実装における実装基板と半導体チップとの間隙に充填するアンダーフィル材料として非常に好適である。
【0021】
すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は、アンダーフィル注入作業が行われる室温付近において低い粘度と高い流動性とを有しているので、実装基板と半導体チップとが狭ギャップ化、狭ピッチ化されている場合であっても、極めて短時間で注入面全域に均質にアンダーフィル注入を行うことができる。
【0022】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ポットライフに優れており、室温付近における低い粘度と高い流動性とが長時間にわたり維持される。そのため、アンダーフィル注入の作業性が非常に向上するという利点がある。アンダーフィル材料としてのエポキシ樹脂組成物の粘度が高い場合、一般には、該樹脂組成物の温度を上げて注入時の粘度を下げる方法が採られる。しかしながら、該樹脂組成物の温度を上げるとエポキシ樹脂組成物の硬化反応も促進され、結果として、さらに粘度が上昇する。場合によっては、注入面すべてに該樹脂組成物が流入する前に硬化してしまう恐れすらある。本発明のエポキシ樹脂組成物によれば、ポットライフに優れており、室温付近における低い粘度と高い流動性とが長時間にわたり維持されるので、アンダーフィル注入作業に際して、加温による粘度調整の必要はなく、安定且つ均質にアンダーフィル注入を行うことができる。
【0023】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物によって封止された半導体パッケージ(半導体装置)は、均質なアンダーフィル材料の注入がなされているので信頼性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)と、シランカップリング剤(E)とを含んでいる。
【0025】
前記エポキシ化合物(A)は、下記一般式(I):
【化3】

(ここで、R1 〜R18は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
又は下記一般式(II):
【化4】

(ここで、R21〜R38は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
で表される脂環式ジエポキシ化合物(a1)、及び前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)以外のエポキシ化合物(a2)からなる。
【0026】
前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)としては、前記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物、及び前記一般式(II)で表される脂環式ジエポキシ化合物のいずれを用いてもよく、両者を併用してもよい。前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)は、室温(例えば、5〜30℃)付近において低粘度であり、エポキシ樹脂組成物に高い流動性を付与することができる。
【0027】
前記一般式(I)において、R1 〜R18が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
1 〜R18が表す炭化水素基としては、炭素数1〜10の低級アルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基等が挙げられる。炭化水素基は、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい。ハロゲン原子としては、前述と同様のものが挙げられる。酸素原子を含んでいる場合とは、置換基としてOH基や、カルボキシル基を有している場合を意味している。
1 〜R18が表すアルコキシ基としては、炭素数1〜10の低級アルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロパノキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、低級アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0028】
本発明において、前記一般式(I)においてR1 〜R18が水素原子である化合物(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)が好ましい。3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートは、例えば、ダイセル化学工業社製のセロキサイドCEL−2021P、ユニオンカーバイド製のERL4221として入手可能である。
【0029】
前記一般式(II)において、R21〜R38が表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
21〜R38が表す炭化水素基としては、炭素数1〜10の低級アルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基等が挙げられる。炭化水素基は、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい。ハロゲン原子としては、前述と同様のものが挙げられる。酸素原子を含んでいる場合とは、置換基としてOH基や、カルボキシル基を有している場合を意味している。
21〜R38が表すアルコキシ基としては、炭素数1〜10の低級アルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロパノキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、低級アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0030】
本発明において、前記一般式(II)においてR21〜R38が水素原子である化合物(ビシクロヘキシル−3,3’−ジエポキシド)が好ましい。
【0031】
前記一般式(II)の化合物は、例えば、ビシクロヘキシル−3,3’−ジエン骨格を持つ不飽和化合物と酸化剤、特に、有機過カルボン酸(過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過イソ酪酸、トリフルオロ過酢酸等)とを反応させることによって製造することができる。有機過カルボン酸の中でも過酢酸は、反応性、安定度の点から好ましいエポキシ化剤である。前記一般式(II)の化合物の製造については、特許第4322047号公報を参照するとよい。
【0032】
前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)以外のエポキシ化合物(a2)としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば如何なるものでも使用可能であるが、特にビスフェノールA及びF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが例示される。これらの中でも、低粘度化のためにはビスフェノールA及びF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
本発明において、前記エポキシ化合物(A)として、前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)20〜80重量%と、前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)以外のエポキシ化合物(a2)80〜20重量%とを配合する。化合物(a1)と化合物(a2)の合計量は100重量%である。化合物(a1)の配合量が20重量%未満であると、エポキシ樹脂組成物への流動性付与効果が弱くなる。一方、化合物(a1)の配合量が80重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物の硬化物が脆くなり、耐衝撃性が低下する。好ましい配合量は、化合物(a1)25〜75重量%、化合物(a2)75〜25重量%であり、より好ましい配合量は、化合物(a1)30〜70重量%、化合物(a2)70〜30重量%である。
【0034】
エポキシ化合物(A)を上記のような構成とすることによって、室温付近において低粘度であり、高い流動性を有するエポキシ樹脂組成物が得られる。なお、エポキシ化合物(A)は、それら自身でエポキシ樹脂と称されることが多い。
【0035】
上記エポキシ化合物(A)を硬化させる硬化剤(B)としては、フェノール樹脂、酸無水物、アミン系化合物を用いることができる。これらの中でも、組成物の低粘度化の観点から酸無水物が好ましい。
【0036】
硬化剤(B)としての酸無水物としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキル化メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、無水メチルハイミック酸、無水ドデセニルコハク酸、無水メチルナジック酸等が例示される。
【0037】
前記酸無水物(B)の配合割合は、前記エポキシ化合物(A)中のエポキシ基1当量あたり前記酸無水物当量が0.60〜1.05となることが好ましく、さらに好ましくは0.80〜1.00当量である。酸無水物(B)の配合量が0.60当量未満では硬化性が不十分となる場合があり、一方、1.05当量を超えると未反応の酸無水物が多く存在し、得られた硬化物のガラス転移温度の低下を招く場合がある。なお、エポキシ化合物(A)と酸無水物(B)との当量関係については、化合物(A)中のエポキシ基1個に対して、酸無水物中の酸無水物基が1個の場合を1当量とする。前記硬化剤(B)を上記範囲の配合量で用いることにより、特に硬化性と流動性のバランスが優れたものとなる。これらの硬化剤は単独でも2種以上併用してもよい。
【0038】
硬化剤(B)としてのフェノール樹脂は、フェノール性水酸基を2個以上含む化合物であり、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、トリフェノールプロパン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型フェノール樹脂、ビスフェノール化合物などが挙げられる。
【0039】
硬化剤(B)としてのアミン系化合物は、1級アミン又は2級アミンを2個以上含む化合物であり、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシリレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、m−フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0040】
フェノール樹脂やアミン系化合物を用いる場合の配合量は、エポキシ基1当量あたりフェノール樹脂のOH基当量(活性水素当量)、アミン系化合物のアミン基当量(活性水素当量)が0.60〜1.05となるようにするとよい。
【0041】
本発明の組成物には硬化促進剤(C)を配合する。
前記硬化促進剤(C)としては、イミダゾール系、第3級アミン系、リン化合物系等のエポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられるものが挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール系; ベンジルジメチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエチレンジアミン等の第3級アミン系; テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩; ジアザビシクロウンデセン(DBU)やDBUの有機酸塩; トリフェニルホスフィン、リン酸エステル等のリン化合物系などが挙げられる。これらのマイクロカプセルコーティング及び錯塩形成等で潜在化されたものを用いてもよい。これらは硬化条件に合わせて、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0042】
前記硬化促進剤(C)の配合量は、前記エポキシ化合物(A)100重量部に対して0.1〜10重量部とすることが好ましく、0.5〜5重量部とすることがより好ましい。硬化促進剤(C)の配合量が0.1重量部未満では、硬化促進効果が得られにくく、一方、配合量が10重量部を超えると、硬化反応が速くなりすぎる。前記硬化促進剤(C)を上記範囲の配合量で用いることにより、速やかに硬化が進行し、封止工程のスループットの向上が期待できる。
【0043】
本発明の組成物には無機充填材(D)を配合する。前記無機充填材(D)は、シランカップリング剤で表面処理された無機微粒子である。前記無機微粒子は、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子等から選ばれる。これらのうち、線膨張係数の低さからシリカが好ましい。シリカを組成物に含有させることにより、エポキシ樹脂組成物の硬化後の線膨張係数を小さくすることができる。これにより、エポキシ樹脂組成物を半導体パッケージのアンダーフィル材として用いた場合に、硬化後のアンダーフィル材の線膨張係数を半導体チップや基板の線膨張係数に近づけることができ、その結果、半田バンプ接合部への応力集中を回避でき、ヒートサイクル処理時の接続信頼性を向上させることができる。
【0044】
前記無機充填材(D)としての前記無機微粒子は、シランカップリング剤で表面処理されたものである。ここでのシランカップリング剤は、エポキシ基含有シランカップリング剤、又はアミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩などが挙げられる。
【0045】
前記無機微粒子の形状としては球状のものが好ましく、特に溶融シリカで真球に近いものが流動性の観点から好ましい。また、アルミナの中でも溶融アルミナで真球に近いものが好ましい。前記無機微粒子の平均粒径は、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。このような範囲の平均粒径を有するシリカ等の粒子を使用することにより、狭い隙間への侵入性を確保することができる。ここで、平均粒径とは、メジアン径d50を指す。
【0046】
前記無機微粒子の表面処理方法としては、無機微粒子をよく攪拌しながらシランカップリング剤を噴霧するか蒸気状態で吹き込み、必要に応じて加熱処理を行う乾式法; 無機微粒子を溶剤中に分散させ、一方、シランカップリング剤を水又は有機溶剤に希釈し、両者をスラリー状態で攪拌しながら混合し、その後溶剤を除去する湿式法が挙げられる。化学結合的にシランカップリング剤がシリカ表面に結合するような処理が好ましい。
【0047】
前記無機微粒子の表面処理において用いるシランカップリング剤の理論添加量(シリカの全表面積を被覆するためのシランカップリング剤の量)は次式で表される。以下、シリカの場合について説明する。他の無機粒子についても同様である。
[式]
シランカップリング剤の理論添加量(g) = [シリカ重量(g) ×シリカ比表面積(m2/g)] /シランカップリング剤の最小被覆面積(m2/g)
【0048】
各シランカップリング剤の最小被覆面積は、以下のようにして計算される。
官能基がトリアルコキシシランの場合、加水分解して得られるSi(O)3 を、半径2.10オングストロームの球形からなるSi原子1個と半径1.52オングストロームの球形からなるO原子3個、Si−Oの結合距離1.51オングストローム、四面体角109.5°と仮定し、更にモデル中の3個のO原子全てがシリカ表面のシラノール基と反応すると仮定して、3個のO原子が被覆することができる最小の円形面積を計算する。その結果、1分子当たりの被覆面積は13.3×10-20 2 /分子となる。例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(分子量:236.3)の場合、最小被覆面積は330m2 /gとなる。計算された最小被覆面積を上記の式にあてはめると、シランカップリング剤の理論添加量が求められる。
【0049】
シランカップリング剤の最小被覆面積は次式で表される。
[式]
シランカップリング剤の最小被覆面積(m2/g)= [6.02×1023×13.3×10-20 ] /シランカップリング剤の分子量
【0050】
本発明において、シランカップリング剤の理論添加量に対するシリカ表面に化学結合しているシランカップリング剤の量の割合、すなわち、シリカの全表面積に対するシリカ表面に化学結合しているシランカップリング剤により被覆されているシリカの表面積の面積割合(これを本明細書において「化学結合表面処理率」と称する)は、10%以上であることが好ましい。
【0051】
この化学結合表面処理率は、示差熱分析(DTA)を用いて分析することができる。
シランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子を熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)に付し、室温付近から800℃まで昇温する。
用いられたシランカップリング剤の沸点近傍でシリカ粒子の重量減少が見られる。この重量減少は、シリカ粒子表面に化学結合ではなく物理的又は化学的に付着していたシランカップリング剤がその沸点近傍の温度で飛散したことに起因する。
沸点近傍の温度を超えて、さらに800℃まで昇温すると、シリカ粒子の更なる重量減少が見られる。この重量減少は、シリカ粒子表面にSi−O−Si化学結合を介して結合していたシランカップリング剤が、高温により熱分解し、シランカップリング剤の有機部分が消失したことに起因する。
【0052】
従って、用いられたシランカップリング剤の沸点に応じて、(シランカップリング剤の沸点+30℃の温度)〜800℃の温度範囲におけるシリカ粒子の重量減少を測定することにより、次式により前記化学結合表面処理率(%)が算出される。
【0053】
[式]
化学結合表面処理率(%)= [シランカップリング剤の沸点+30℃〜800℃におけるシリカ1g当たりの重量減少(g) /シリカ1g当たりのシランカップリング剤の理論添加量(g) ] ×100
【0054】
上記で例示したシランカップリング剤の沸点は、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(分子量:246.4,沸点:310℃)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(分子量:236.3,沸点:290℃)であるので、これらの場合には、実質的に350℃〜800℃におけるシリカの重量減少を測定するとよい。
【0055】
本発明において、前記化学結合表面処理率が10%以上のシリカ等の無機微粒子を使用することが好ましく、30%以上の無機微粒子を使用することがより好ましく、60%以上の無機微粒子を使用することがさらに好ましく、80%以上の無機微粒子を使用することが最も好ましい。このような化学結合表面処理率のシリカ等の無機微粒子を使用することによって、樹脂成分との親和性が向上し、また、シリカ等の無機微粒子表面の酸性(例えばシラノール基)が少なくなるため、エポキシ樹脂組成物の保存安定性を向上させることができ、粘度上昇が抑制される。
【0056】
前記無機充填材(D)の配合割合は、前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計量を基準として30〜80重量%とすることが好ましく、35〜80重量%とすることがより好ましく、45〜75重量%とすることがさらに好ましい。無機充填材(D)の配合割合が30重量%未満であると、相対的に樹脂成分が多くなり、得られる硬化物の線膨張係数が大きくなりやすい。一方、無機充填材(D)の配合割合が80重量%を超えると、組成物の粘度が上昇し、流動性が低下する傾向にある。
【0057】
本発明の組成物にはシランカップリング剤(E)を配合する。
シランカップリング剤(E)としては、公知のものを使用でき、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤; 例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩などのアミノ基含有シランカップリング剤などを用いることが好ましい。前記無機充填材(D)の表面処理剤として用いたものと、同種のものを用いてもよいが、異なるものを用いてもよい。
【0058】
前記シランカップリング剤(E)の配合割合は、前記エポキシ化合物(A)100重量部に対して0.1〜5重量部とすることが好ましく、0.5〜3重量部とすることがより好ましい。このような範囲にすることによって、シリコンチップや基板表面への密着性が高くなり、信頼性を高めることができる。
【0059】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、以上に説明した各成分(A)〜(E)のほかに、本発明の目的に反しない範囲において、顔料、染料、変性剤、チキソ付与剤、着色防止剤、酸化防止剤、離型剤、界面活性剤、希釈剤等の添加剤を配合することができる。
【0060】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分(A)〜(E)を所定割合にて配合して調製することができる。配合は、自転公転型ミキサー、ドライブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の公知のものを使用して、常温(例えば、5〜30℃)にて行うとよい。
【0061】
調製されたエポキシ樹脂組成物を接着剤をはじめ種々の用途に用いることができる。半導体パッケージのアンダーフィル材として用いる場合には、実装基板と、前記実装基板上にバンプを介して配置された半導体チップとの間隙に、ディスペンサーによってエポキシ樹脂組成物を注入する。注入は、室温(5〜30℃)において行うことができる。その後、所望の硬化条件、例えば、温度100〜200℃、好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは100〜180℃で、硬化時間30〜600分、好ましくは45〜540分、さらに好ましくは60〜480分にて硬化させる。硬化温度は段階的に上昇又は下降させてもよい。
【0062】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、アンダーフィル注入作業が行われる室温付近において低い粘度と高い流動性とを有しているので、注入に先立ってエポキシ樹脂組成物を加温して粘度調整する必要はなく、また実装基板と半導体チップとが狭ギャップ化、狭ピッチ化されている場合であっても、極めて短時間で注入面全域に均質に(各部材との隙間や気泡を残すことなく)アンダーフィル注入を行うことができる。
【0063】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、アンダーフィル材料としての用途のみならず、狭い間隙をおいて配置された互いに接着されるべき物体(部材)同士を接着する用途に適している。例えば、小型撮像装置、光センサ、携帯用モジュールカメラなどに使用される撮像レンズユニットにおけるレンズホルダーとレンズとの接着にも好適に用いることができる。
【0064】
撮像レンズユニットにおけるレンズホルダーに使用される材料は特に限定されないが、例えば、液晶ポリマー:LCP(液晶ポリマー(黒色))、PPS(ポリフェニレンスルファイド) PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。また、光学レンズの材料としては、シリコン;ガラス;エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの反応性を有する有機モノマーを重合、架橋して得られる樹脂組成物などが挙げられる。
【0065】
撮像レンズユニットの製造において、レンズホルダーとレンズとの間には狭い間隙が存在する。この間隙に、本発明のエポキシ樹脂組成物を注入する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、低い粘度と高い流動性とを有しているので、前記間隙に短時間で均質に浸透する。その後、前述のような硬化条件で硬化させると、レンズホルダーとレンズとは強固に接着される。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。まず、各測定方法について示す。
【0067】
[実施例1]
脂環式ジエポキシ化合物として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P、一般式(I)においてR1 〜R18=H)10.0重量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE−303L)10.0重量部、硬化剤としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製、MH700、酸無水物当量:約168)23.3重量部、硬化促進剤としてイミダゾールのエポキシ樹脂アダクト硬化剤(旭化成イーマテリアルズ社製、ノバキュアHX−3088)1.2重量部、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成社製)0.4重量部、及び充填材としてシリカSC4500−SQ(株式会社アドマテックス製、平均粒径1.0μm、比表面積4.0m2 /g、γ−アミノプロピルトリエトキシシランで表面処理した真球状溶融シリカ)67.4重量部を自転公転型ミキサーで室温にて攪拌・混合して、接着剤組成物を得た。
【0068】
[実施例2]
充填材としてシリカSC4500−SQの代わりに、シリカSC4500−SEJ(株式会社アドマテックス製、平均粒径1.0μm、比表面積4.0m2 /g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した真球状溶融シリカ)67.4重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。
【0069】
[実施例3]
脂環式ジエポキシ化合物として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P、一般式(I)においてR1 〜R18=H)10.0重量部の代わりに、ビシクロヘキシル−3,3’−ジエポキシド(一般式(II)においてR21〜R38=H)10.0重量部を用いた以外は、実施例2と同様にして接着剤組成物を得た。
【0070】
[比較例1]
充填材としてシリカSC4500−SQの代わりに、シリカSC−C3(株式会社アドマテックス製、平均粒径1.0μm、比表面積4.0m2 /g、表面処理されていない真球状溶融シリカ)67.4重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして接着剤組成物を得た。
【0071】
[比較例2]
脂環式ジエポキシ化合物セロキサイド2021P(ダイセル化学工業社製)10.0重量部を用いないで、20.0重量部のビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE−303L)を用いた以外は、実施例2と同様にして接着剤組成物を得た。
【0072】
各実施例及び比較例の組成物の配合組成を表1に示す。表1中において、各配合量は重量部を示す。
【0073】
【表1】

【0074】
用いた原料は以下のとおりである。
<脂環式ジエポキシ化合物>
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2021P、一般式(I)においてR1 〜R18=H)
・ビシクロヘキシル−3,3’−ジエポキシド(一般式(II)においてR21〜R38=H)
【0075】
<エポキシ樹脂>
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(日本化薬社製、RE−303L)
【0076】
<硬化剤>
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化社製、MH700、酸無水物当量:約168)
【0077】
<硬化促進剤>
・イミダゾールのエポキシ樹脂アダクト硬化剤(旭化成イーマテリアルズ社製、ノバキュアHX−3088)
【0078】
<充填材>
・SC4500−SQ(株式会社アドマテックス製、平均粒径1.0μm、比表面積4.0m2 /g、γ−アミノプロピルトリエトキシシランで表面処理した真球状溶融シリカ) TG/DTAによる350℃〜800℃での重量減少率は0.40%であった。
【0079】
・シリカSC4500−SEJ(株式会社アドマテックス製、平均粒径1.0μm、比表面積4.0m2 /g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランで表面処理した真球状溶融シリカ)
TG/DTAによる350℃〜800℃での重量減少率は1.01%であった。
【0080】
・シリカSC−C3(株式会社アドマテックス製、平均粒径1.0μm、比表面積4.0m2 /g、表面処理されていない真球状溶融シリカ)
TG/DTAによる350℃〜800℃での重量減少率は0.17%であった。
【0081】
<シランカップリング剤>
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成社製)
【0082】
[評価方法]
(シリカの化学結合表面処理率)
各シリカSC4500−SQ、SC4500−SEJ、SC−C3について、TG/DTA(EXSTAR6300、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、試料を室温から800℃まで加熱して(昇温速度:20℃/min)、350℃から800℃における重量減少を測定し、上記のように重量減少率を算出した。
【0083】
そして、シランカップリング剤によって表面処理されたSC4500−SQ、SC4500−SEJについては、以下の式から化学結合表面処理率を算出した。
[式]
化学結合表面処理率(%)= [350℃〜800℃におけるシリカ1g当たりの重量減少(g) /シリカ1g当たりのシランカップリング剤の理論添加量(g) ] ×100
【0084】
実施例及び比較例で得られた各組成物に対して、以下のようにして粘度、浸透性の評価を行った。評価は、調製直後の組成物(初期)と、温度25℃、湿度50%の環境下にて調製から24時間放置した組成物(24時間後)とについて行った。その結果を表2に示す。
【0085】
(粘度)
レオメーター(PHYSICA、UDS200/Paar、Physica社製)を用いて、25℃におけるせん断速度15−25s-1領域の粘度の平均から求めた(単位Pa・s)。
【0086】
(浸透性)
マツナミ沈査用プレート(18×18mm、間隙70μm、松浪硝子工業社製)を50℃に保持した状態で、組成物(室温)を1辺に注入し、間隙に充填されるまでの時間(秒)を計測した。
【0087】
(充填性)
上記浸透性試験において、組成物を注入した後のガラスプレートを目視で観察し、気泡のないものを○、気泡があるものを×とした。
【0088】
【表2】

【0089】
表2から、実施例1、2のエポキシ樹脂組成物は、粘度が低く、浸透性及び充填性に非常に優れており、また、24時間経過後においても良好な結果を示し保存安定性にも非常に優れていた。実施例3のエポキシ樹脂組成物は、初期の粘度が0.8Pa・sと非常に低いものであった。これらエポキシ樹脂組成物は半導体パッケージのアンダーフィル材として好適に用いることができる。
【0090】
[実施例4]
半導体装置モデル(3cm×4cm)として、チップサイズ:1mm×1mm、バンプピッチ:200μm、ギャップ(隙間):43〜45μmの装置試験品に対し、実施例1の接着剤組成物を60℃でギャップに注入、浸透させ、その後、100℃で1時間、次いで150℃で2時間加熱することで硬化させた。硬化後に観察したところ、装置試験品に対する接着剤組成物の浸透状態は良好であり、装置試験品に接着剤組成物の未浸透部、残留気泡等の欠陥は見られなかった。また、硬化後の装置試験品を−50℃で30分、125℃で30分のヒートサイクル試験に供したところ、200サイクル経過後も接着面の剥がれもなく、反り返りも実用に支障を生じない程度に留まった。
【0091】
また、実施例1の接着剤組成物それ自体を上記と同条件で硬化させて硬化物サンプルとした。得られた硬化物サンプルのガラス転移温度(Tg)は171℃であり、硬化物サンプルは良好な耐熱性を有していることが確認できた。
【0092】
[実施例5]
実施例1の接着剤組成物の代わりに、実施例2の接着剤組成物を用いた以外は実施例4と同様に半導体装置モデル(3cm×4cm)を用いて注入、硬化、ヒートサイクル試験を行った。硬化後に観察したところ、装置試験品に対する接着剤組成物の浸透状態は良好であり、装置試験品に接着剤組成物の未浸透部、残留気泡等の欠陥は見られなかった。また、200サイクル経過後も接着面の剥がれもなく、反り返りも実用に支障を生じない程度に留まった。
【0093】
また、実施例2の接着剤組成物それ自体を上記と同条件で硬化させて硬化物サンプルとした。得られた硬化物サンプルのガラス転移温度(Tg)は165℃であり、硬化物サンプルは良好な耐熱性を有していることが確認できた。
【0094】
[実施例6]
小型撮像装置、光センサ、携帯用モジュールカメラなどに使用される撮像レンズユニットのモデルとして、代表的なレンズホルダー部材として黒色LCP(液晶ポリマー)を、レンズとしてシリコン凸レンズを用いて、両者の接着を行った。
【0095】
黒色LCP製の円筒状レンズホルダー内のレンズ保持部(円筒内にホルダー内面から突き出した円筒状のリブ)上にレンズを取り付けてレンズの中心をホルダーの中心に位置をあわせた。この際、ホルダー内周面とレンズ外周端面との間には100μm程度の隙間があった。次いで、実施例1の接着剤組成物を前記隙間より注入して、ホルダー内周面及びリブとレンズ外周部との隙間に接着剤組成物を充填し、直ちに100℃で1時間、次いで150℃で2時間加熱して硬化させ、レンズ付きホルダーを得た。硬化後のレンズ付きホルダーを目視で観察し、接着剤組成物の浸透性と充填性を評価したところ、ホルダー内周面及びリブとレンズ外周部との隙間に均等に接着剤組成物が行き渡ると共に、未浸透部や気泡などの残留が見られなかった。このように、良好な浸透性、充填性を示した。
【0096】
また、ここで得られたレンズ付きホルダーを−50℃で30分、125℃で30分のヒートサイクル試験に供したところ、100サイクル経過後もレンズは強固にホルダーに接着されており、良好な接着性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)と、シランカップリング剤(E)とを含むエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ化合物(A)は、下記一般式(I):
【化1】

(ここで、R1 〜R18は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
又は下記一般式(II):
【化2】

(ここで、R21〜R38は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
で表される脂環式ジエポキシ化合物(a1)20〜80重量%、及び前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)以外のエポキシ化合物(a2)80〜20重量%からなり、
前記無機充填材(D)は、シランカップリング剤で表面処理された無機微粒子である、エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化剤(B)の配合割合は、(A)成分1当量に対して0.6〜1.05当量であり、
前記硬化促進剤(C)の配合割合は、(A)成分100重量部に対して0.1〜10重量部であり、
前記無機充填材(D)の配合割合は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計量を基準として30〜80重量%であり、
前記シランカップリング剤(E)の配合割合は、(A)成分100重量部に対して0.1〜5重量部である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂環式ジエポキシ化合物(a1)は、前記一般式(I)においてR1 〜R18が水素原子である化合物、及び/又は前記一般式(II)においてR21〜R31が水素原子である化合物である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機微粒子は、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、又は酸化チタン微粒子である、請求項1〜3のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機微粒子が表面処理されているシランカップリング剤は、エポキシ基含有シランカップリング剤、又はアミノ基含有シランカップリング剤である、請求項1〜4のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機微粒子の平均粒径は、0.1〜50μmである、請求項1〜5のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機微粒子には、少なくとも一部のシランカップリング剤が化学的に結合しており、化学的に結合しているシランカップリング剤が前記微粒子表面を被覆している面積割合は、前記微粒子の全表面積を基準として10%以上である、請求項1〜6のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
アンダーフィル材料用の請求項1〜7のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
実装基板と、前記実装基板上にバンプを介して配置された半導体チップとを含む半導体パッケージであって、
前記実装基板と前記半導体チップとの間隙は、請求項1〜8のうちのいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されている半導体パッケージ。

【公開番号】特開2011−168650(P2011−168650A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31652(P2010−31652)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】