説明

エポキシ硬化剤及びエポキシ樹脂組成物、並びに半導体装置及びそのリペア方法

【課題】リペア時に基板及び半導体素子がダメージを受けない、実装信頼性及びクリーニング性に優れ、アンダーフィル材として好適なエポキシ硬化剤及びエポキシ樹脂組成物、並びに半導体装置及びそのリペア方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるエポキシ硬化剤、及び該エポキシ硬化剤及びエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物である。


一般式(1)中、Xは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、直接結合、酸素原子及び硫黄原子のいずれかを表す。Yは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OH、NH、NHR(Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)及び酸無水物基のいずれかを表す。Rは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、アルキル基、フッ素化アルキル基、アリール基及びフッ素化アリール基のいずれかを表す。Arは、芳香族環を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエポキシ硬化剤及び該エポキシ硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物、並びに該エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置及び半導体装置のリペア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を配線回路基板に実装してなる半導体装置には様々なものがある。これらの中でも、フリップチップ実装により半導体素子が搭載されたものは、半導体装置の小型化にとって有用である。
このような半導体装置では、半導体素子と回路基板の間に熱膨張率の差があるので、高温高湿試験や熱サイクル試験において半導体素子の外部接続端子が回路基板の電極パッドからずれてしまい、半導体素子と回路基板の間で接続不良が発生することがある。そのため、フリップチップ実装においては、図1に示すように、「Ball Grid Array(BGA、ボール・グリッド・アレイ)」2と配線回路基板1との間にアンダーフィル3を形成することで、BGA 2の外部接続端子4に加わるせん断応力を分散させて、接続不良が発生しないようにしている。
【0003】
一方、アンダーフィル内のボイドの存在、半導体素子とアンダーフィル、又はアンダーフィルと基板の界面の接着性が悪い場合には、リフロー工程で半田の流出や界面剥離が生じる。同様に、アンダーフィルを利用してBGAをマザーボードに接続すると接合部が破損すること、又は接続後にBGAパッケージそのものの不良が発見されることがある。このような不良が発生した場合に半導体装置を廃棄したのでは、ここまでコストをかけて作製した半導体装置を無駄にしてしまう。そのため、実装後であっても回路基板から半導体素子を剥離できるリペアラブルな実装構造を有する半導体装置が求められている。
【0004】
前記アンダーフィルは、半導体素子と回路基板との接続信頼性の向上に寄与する一方で、回路基板と半導体素子とを機械的に強固に接着してしまうため、回路基板から半導体素子を剥離するのが困難になるので、リペアラブルな構造には不向きなものである。例えば、アンダーフィル材としては熱硬化性エポキシ樹脂が好適に用いられるが、この熱硬化性エポキシ樹脂は硬化後に三次元網目構造が形成されるため、アンダーフィルの耐熱性と耐薬品性が高まって、回路基板から半導体素子を剥離するのが困難になるという問題がある。
【0005】
一方、半導体素子が基板との実装後に不良であると認識された場合には、従来のリペア方法としては、アンダーフィル用樹脂のガラス転移点以上に加熱し、基板との密着強度を低下させ、リペア用加熱吸着ツールを用いて半導体素子を引き上げ、半導体素子を基板から取り外す方法が種々提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5参照)。
しかし、これらの提案は、いずれも高温での信頼性が劣ること、又は半導体素子を基板から取り外した後、基板側と半導体素子側の樹脂残渣を除去する際に、強力な有機溶剤を使用しなければならないので基板及び半導体素子にダメージを与えてしまうという問題がある。
【0006】
また、高温加熱によるダメージを無くすため、低温(100℃〜250℃)分解性樹脂をアンダーフィル材として用いることが種々提案されている(特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、及び特許文献11参照)。しかし、これらの提案のアンダーフィル材は、いずれも熱に弱く、二次実装時に不良が発生して信頼性が低下してしまうという課題がある。
【0007】
また、酸により分解可能なアンダーフィル材を用いる方法が提案されている(特許文献12参照)。しかし、この提案のアンダーフィル材は加水分解が起こりやすく、吸水によるアンダーフィル材の劣化が問題になる。
更に、低ガラス転移点の熱可塑性樹脂層と、熱硬化性樹脂層とからなる2層構造のアンダーフィルが提案されている(特許文献13参照)。しかし、この提案では、熱硬化性樹脂層側の部品のリペアが困難であるという課題がある。
【0008】
前記課題を解決するため、例えば、半導体素子側に熱硬化性樹脂層と、基板側に熱可塑性ポリマー層とからなる2層構造のアンダーフィルが提案されている(特許文献14参照)。この提案によれば、加熱により熱可塑性ポリマー層を溶融させ、半導体素子を引き上げて、該半導体素子を基板から取り外すことができる。その際、半導体素子側に残存する熱硬化性樹脂の除去が困難であり、半導体素子の再利用が図れないという問題がある。また、信頼性確保が可能な熱可塑性ポリマーとして用いられているポリフェニレンスルフォン(Polyphenylenesulfone)、ポリエーテルスルフォン(Polyethersulfone)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)等はコストが高く、信頼性確保と低コストの両立が困難である。更に、基板側の熱可塑性ポリマー残渣を除去する時に、強力なハロゲン系溶媒等の使用が不可欠であり、該ハロゲン系溶媒により基板にダメージを与えてしまうという課題がある。
【0009】
また、半導体素子と基板の間に、第1の熱硬化性樹脂層と、熱可塑性樹脂層と、第2の熱硬化性樹脂層との3層構造からなるアンダーフィルが提案されている(特許文献15参照)。しかし、この提案の3層構造のアンダーフィルにおいても、半導体素子を剥離した後に基板や半導体素子に熱硬化性樹脂が残存し、回路基板と半導体素子を再利用するのが困難であるという課題がある。
【0010】
したがってリペア時に基板及び半導体素子がダメージを受けない、実装信頼性及びクリーニング性に優れ、アンダーフィル材として好適なエポキシ硬化剤及び該エポキシ硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物、並びに半導体装置及び半導体装置のリペア方法は未だ提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−44240号公報
【特許文献2】特開2001−127094号公報
【特許文献3】特開2004−87965号公報
【特許文献4】特開2005−35067号公報
【特許文献5】特開2008−214381号公報
【特許文献6】米国特許第6,916,890号明細書
【特許文献7】米国特許第6,570,029号明細書
【特許文献8】米国特許第6,172,141号明細書
【特許文献9】米国特許第5,930,598号明細書
【特許文献10】米国特許第5,821,456号明細書
【特許文献11】米国特許第5,760,337号明細書
【特許文献12】米国特許第6,919,420号明細書
【特許文献13】米国特許第6,590,287号明細書
【特許文献14】特開2001−185582号公報
【特許文献15】特開平10−189652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、新規なエポキシ硬化剤及び該エポキシ硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物、並びに該エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置及び半導体装置のリペア方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
開示のエポキシ硬化剤は、下記一般式(1)で表されるエポキシ硬化剤である。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、Xは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、直接結合、酸素原子及び硫黄原子のいずれかを表す。
Yは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OH、NH、NHR(ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)及び酸無水物基のいずれかを表す。
は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、アルキル基、フッ素化アルキル基、アリール基及びフッ素化アリール基のいずれかを表す。
Arは芳香族環を表し、該芳香族環は、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基及びフッ素化アルコキシ基のいずれかを有していてもよく、複素環を含んでいてもよい。
開示のエポキシ樹脂組成物は、開示の前記エポキシ硬化剤及びエポキシ樹脂を含有する。
開示の半導体装置は、基板と、該基板に電気的に接続された半導体素子との間を、開示の前記エポキシ樹脂組成物で封止してなる。
開示の半導体装置のリペア方法は、開示の前記半導体装置から半導体素子を取り外す半導体装置のリペア方法であって、
前記半導体装置のリペア対象領域を加熱して半導体素子を基板から取り外す取外工程と、
基板側及び半導体素子側の少なくともいずれかに付着したエポキシ樹脂組成物の硬化物を酸化剤溶液で分解する分解工程と、
基板側及び半導体素子側の少なくともいずれかに残存した硬化物の分解物を溶剤で除去する除去工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
開示のエポキシ硬化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、特定の酸化剤(例えばNaOCl、H等)で酸化分解可能なジアシルヒドラジン結合を有しており、リペア時に半導体素子と基板にダメージのないリペア性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供できる。
開示のエポキシ樹脂組成物によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、実装信頼性及びクリーニング性に優れ、アンダーフィル材として好適である。開示のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、半田の融点以下のガラス転移点を有し、かつ特定の酸化剤で酸化分解可能であるため、リペア性に優れている。
開示の半導体装置及びそのリペア方法によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、アンダーフィルにより樹脂封止された半導体素子を樹脂残渣が少なく、かつ基板表面を傷付けることなく基板から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、BGA実装方法の一例を示す図である。
【図2】図2は、BGA実装方法における配線電極上に半田ペースト塗布した状態を示す工程図である。
【図3】図3は、BGA実装方法におけるBGA突起電極を配線電極と位置合わせし、BGAを搭載し、リフロー実装方法を行った状態を示す工程図である。
【図4】図4は、BGA実装方法におけるエポキシ樹脂組成物の封入を行った状態を示す工程図である。
【図5】図5は、BGAの取り外しを行った状態を示す工程図である。
【図6】図6は、基板側又はBGA側の樹脂残渣に酸化剤溶液を浸透させ、硬化物を分解し、硬化物を溶剤で除去する状態を示す工程図である。
【図7】図7は、リペア後の回路基板表面の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(エポキシ硬化剤)
本発明のエポキシ硬化剤は、分子中にジアシルヒドラジン結合を有しており、下記一般式(1)で表される。
【化2】

【0017】
前記一般式(1)において、Xは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、直接結合、酸素原子及び硫黄原子のいずれかを表す。
【0018】
前記一般式(1)において、Yは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OH、NH、NHR(ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)及び酸無水物基のいずれかを表す。
におけるアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、炭素数が1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基が好適に挙げられ、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、シクロペンチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、などが好適に挙げられる。
前記酸無水物基としては、例えば、(CO)O、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸からなる基、下記式で表される化合物からなる基などが挙げられる。
【化3】

ただし、前記式中、R’は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示す。
【0019】
前記一般式(1)において、Rは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、アルキル基、フッ素化アルキル基、アリール基及びフッ素化アリール基のいずれかを表す。
前記アルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記Rと同じものが好適に挙げられる。
前記フッ素化アルキル基としては、前記アルキル基を構成する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
前記アリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニル、トリル、キシリル、クメニル、スチリル、メシチル、シンナミル、フェネチル、ベンズヒドリル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、インデニル、アズレニル、ベンズアントラセニル、などが挙げられる。
前記フッ素化アリール基としては、前記アリール基を構成する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものなどが挙げられる。
前記フッ素化アルコキシ基としては、前記アルコキシ基を構成する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものなどが挙げられる。
前記複素環としては、例えばイミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、オキサジアゾリン、インドリン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノン、ピラロジン、イミダゾリジン、ピペリジンなどが挙げられる。
前記一般式(1)において、Arは芳香族環を表し、該芳香族環としては、例えばベンゼン環などが挙げられる。
前記芳香族環は、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基及びフッ素化アルコキシ基のいずれかを有していてもよく、複素環を含んでいてもよい。
【0020】
前記一般式(1)で表されるエポキシ硬化剤の具体例としては、下記構造式で表される化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【化4】

【0021】
前記エポキシ硬化剤の合成方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、下記構造式(3)で表されるエポキシ硬化剤は、以下の手順により合成することができる。
【化5】

【化6】

【化7】

【0022】
まず、16.6g(100ミリモル)の3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸、3.8g(20ミリモル)のp−トルエンスルホン酸モノ水和物、及びエチルアルコール200mLからなる混合液を24時間還流する。反応混合液に500mLの水を加え、析出した液体を取り出し、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=10:2)で精製した。以上により、上記構造式(1)で表されるエチル 3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステルが合成される。
次に、合成したエチル 3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステル15.6g(80mmol)のメタノール100mL溶液に抱水ヒドラジン(ヒドラジン1水和物)50mL(1000mmol)を加え、室温で24時間還流する。溶媒を減圧留去し、残渣のオイルを放置すると、ヒドラジドが結晶化する。結晶を減圧ろ過で取り出し、少量のエタノールで洗浄した後真空乾燥する。以上により、上記構造式(2)で表される3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパニルヒドラジドが合成される。
次に、オキソン(oxone)67.5g(110mmol)を水に分散し、ここに3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパニルヒドラジド9.0g(50mmol)を加えて終夜撹拌する。反応混合物を水に注ぎ、沈殿をろ過して取り出し、水洗した後真空乾燥する。以上により、上記構造式(3)で表される1,2−ビス{3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシンが得られる。
得られた1,2−ビス{3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシンの同定はNMR、IRで行うことができる。
【0023】
前記エポキシ硬化剤は、分子中に、特定の酸化剤(例えばNaOCl、H等)で酸化分解可能なジアシルヒドラジン結合を有しているので、該エポキシ硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物はリペアラブルな半導体装置のアンダーフィル材として好適に用いられ、以下に説明する本発明のエポキシ樹脂組成物として特に好適に用いられる。
【0024】
(エポキシ樹脂組成物)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の前記エポキシ硬化剤、及びエポキシ樹脂を含有し、フィラー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0025】
<エポキシ硬化剤>
前記エポキシ硬化剤としては、本発明の前記エポキシ硬化剤が用いられる。
前記エポキシ硬化剤の前記エポキシ樹脂組成物における含有量については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エポキシ硬化剤における硬化官能基と、エポキシ樹脂におけるエポキシ基とのモル比は0.3〜1.0が好ましく、0.5〜0.8がより好ましい。前記モル比が、0.3未満であると、硬化物の酸化分解は困難となることがあり、1.0を超えると、硬化物の機械特性が低下することがある。
【0026】
<エポキシ樹脂>
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば単官能エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、エポキシ変性熱可塑性樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化分解性と機械特性の点から多官能(2官能又は3官能)エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0027】
−単官能エポキシ樹脂−
前記単官能エポキシ樹脂は、分子内に1個のエポキシ基を有する化合物であり、例えば、アルキルグリシジルエーテル、脂肪酸グリシジルエステル、アルキルフェノールグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
−多官能エポキシ樹脂−
前記多官能エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばビキシレノール型もしくはビスフェノール型エポキシ樹脂又はこれらの混合物、イソシアヌレート骨格等を有する複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、グリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール、o−クレゾール、ナフトール等のフェノール化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合反応により得られるポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応物;フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応によって得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物;4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合物を過酢酸等でエポキシ化したもの;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環を有するエポキシ樹脂;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化物分解性、柔軟性、強度、吸水性と汎用性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はこれらの併用が特に好ましい。
【0029】
−エポキシ変性熱可塑性樹脂−
前記エポキシ変性熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン系共重合体、エポキシ化水素化スチレン−ブタジエン系共重合体、エポキシ化アクリロニトリル−スチレン樹脂、エポキシ化エチレン−メタクリレート共重合体などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<フィラー>
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機フィラー及び有機フィラーのいずれも好適に用いることができる。
前記有機フィラーとしては、例えばポリアクリル樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;シリコーン樹脂、架橋アクリルポリマーなどからなる粒子が挙げられる。
前記無機フィラーとしては、例えばシリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニウム、酸化チタン、タルク、ケイ酸アルミニウム、マイカ、亜鉛末、カーボンブラック、炭化ケイ素、クレー、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、マグネシアなどが挙げられる。これらの中でも、低熱膨張性、電気絶縁性、低吸湿性の点からシリカが特に好ましい。
【0031】
前記フィラーは、表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。前記表面処理剤としては、特に制限はなく、公知の表面処理剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸、などが挙げられる。
【0032】
前記フィラーの前記エポキシ樹脂組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90質量%以下が好ましく、1質量%〜50質量%がより好ましい。
【0033】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、公知の添加剤の中から適宜選択することができ、例えば硬化促進剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、チクソ剤、難燃剤などが挙げられる。
前記硬化促進剤としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール等のイミダゾール又はその誘導体、トリフェニルホスフィン,三級アミンなどが挙げられる。
【0034】
前記エポキシ樹脂組成物は、常法に従って製造することができ、例えば前記エポキシ硬化剤、前記エポキシ樹脂、前記フィラー、及び必要に応じて前記その他の成分を同時にもしくは別々に、任意のタイミングで、必要に応じて加熱を伴って、撹拌、溶解、混合、分散等の一連の処理を行うことによって、目的とするエポキシ樹脂組成物を製造することができる。前記一連の処理のため、例えばライカイ機、ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。
【0035】
前記エポキシ樹脂組成物は、加熱することにより、下記反応式で示すように、下記一般式(1)で表されるエポキシ硬化剤と、下記一般式(2)で表されるエポキシ化合物とが熱硬化反応して、下記一般式(3)で表される硬化物が得られる。
前記加熱は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、常温〜240℃の温度で行うことが好ましい。
【化8】

ただし、前記一般式(2)中、Rはエポキシ樹脂のエポキシ基以外の化学構造を表し、nは一分子あたりのエポキシ基の数を表す。
前記一般式(3)中、X、Y、R、R、及びArは、上記一般式(1)と同じ意味を表す。
【0036】
前記エポキシ樹脂組成物を熱硬化させた硬化物のガラス転移点は、100℃〜220℃であることが好ましく、125℃〜200℃であることがより好ましい。前記ガラス転移点が、125℃未満であると、半導体素子接合の熱サイクル信頼性が低下することがあり、220℃を超えると、半田(SAC)が溶融しても樹脂が軟化しないので、リペアが困難となることがある。
ここで、前記ガラス転移点は、例えば熱機械測定装置(TMA)により測定することができる。
【0037】
前記エポキシ樹脂組成物を熱硬化させた下記一般式(3)で表される硬化物は、前記一般式(1)で表されるエポキシ硬化剤由来の特定の酸化剤(例えばNaOCl、H)で酸化分解可能なジアシルヒドラジン結合を有しているので、下記反応式で示すように、特定の酸化剤)水溶液により、下記一般式(3a)で表される化合物と下記一般式(3b)で表される化合物に酸化分解される。
前記酸化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、NaOCl及びHのいずれかであることが好ましい。
ここで、前記硬化物が酸化剤を含む酸化剤溶液で酸化分解可能であるとは、20質量%のNaOCl水溶液中で10分間〜30分間で溶解することを意味する。
【0038】
【化9】

【0039】
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の分解物は、溶剤により容易に除去することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、接合金属材料である半田の融点以下のガラス転移点を有し、かつ特定の酸化剤で酸化分解可能であるため、本発明のエポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材として用いると、リペア性に優れた半導体装置が得られるので、以下に説明する本発明の半導体装置に好適に用いられる。
【0041】
(半導体装置)
本発明の半導体装置は、基板と、該基板に電気的に接続された半導体素子との間を、本発明の前記エポキシ樹脂組成物で封止してなる。
前記エポキシ樹脂組成物を用いた封止方法としては、例えば、予め半田ボールを有する半導体素子と、該半田ボールに対向する接続用電極部を備えた配線回路基板を、半田金属接続する。次いで、前記半導体素子と配線回路基板との間(空隙)に毛細管現象を利用して、エポキシ樹脂組成物を充填し、熱硬化して封止樹脂層を形成することにより樹脂封止することができる。
【0042】
−基板−
前記基板としては、配線パターンが形成された配線回路基板が用いられ、該回路基板は、単層回路基板(単層プリント配線基板)であってもよいし、多層回路基板(多層プリント配線基板)であってもよい。
後者の場合、前記回路基板は、積層構造体となるが、該積層構造体としては、異なる機能を有する基板を2以上有してなり、2以上の機能を有する多機能モジュールであるのが特に好ましい。
【0043】
−半導体素子−
前記半導体素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフリップチップ、ベアチップ、Chip Size Package(CSP、チップサイズパッケージ)、BGA(ボール・グリッド・アレイ)などが挙げられる。
【0044】
ここで、図2〜図4は、半導体装置の製造方法を示す工程図である。
図2に示すように、配線回路基板11上に設けられた配線電極12上にSAC半田ペースト(融点220℃)13をスクリーン印刷方法で塗布する。
次に、図3に示すように、BGA 14の突起電極を配線電極12と位置合わせし、BGA 14を搭載し、半田ボール16を溶融させてリフロー(最大温度230℃〜260℃)実装を行う。
次に、図4に示すように、回路基板11とBGA 14の間に調製したエポキシ樹脂組成物を注入し、180℃で1時間熱硬化を行い、アンダーフィル18を形成する。以上により、半導体装置が製造される。
【0045】
(半導体装置のリペア方法)
本発明の半導体装置のリペア方法は、本発明の前記半導体装置から半導体素子を取り外す方法であって、
取外工程と、分解工程と、除去工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0046】
−取外工程−
前記取外工程は、半導体装置のリペア対象領域を加熱して半導体素子を基板から取り外す工程である。前記取外工程は、取外具を用いて行うことが好ましい。
前記取外具としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば半導体素子側を掴んで引く挙げることができるクランプ、釣り針状のフックなどが挙げられる。
前記加熱温度としては、半田及びエポキシ樹脂組成物の硬化物を溶融させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、220℃〜260℃が好ましい。これにより、配線回路基板から半導体素子を容易に取り外すことができる。
【0047】
−分解工程−
前記分解工程は、基板側及び半導体素子側の少なくともいずれかに付着したエポキシ樹脂組成物の硬化物を酸化剤溶液で分解する工程である。
前記分解は、硬化物に酸化材溶液が浸透すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酸化剤溶液中に浸漬する方法などが挙げられる。
【0048】
−除去工程−
前記除去工程は、基板側及び半導体素子側の少なくともいずれかに残存した硬化物の分解物を溶剤で除去する工程である。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール,n−プロピルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、トルエン、キシレン、ジオキサン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
前記溶剤による除去は、溶剤を直接塗布するか、又は脱脂綿に溶剤をしみ込ませたものを配設することにより付与することができる。
【0049】
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば水洗工程、乾燥工程などが挙げられる。
【0050】
ここで、図5及び図6は、本発明の半導体装置のリペア方法の一例を示す工程図である。
図5に示すように、半導体装置のリペア対象部分を加熱(260℃)することにより半田及びエポキシ樹脂組成物の硬化物を溶融させ、BGA 14側を取外具19で引っ張ることにより、BGA 14を配線回路基板11から取り外す(取外工程)。
次に、図6に示すように、配線回路基板11側及びBGA 14側の少なくともいずれかに付着したエポキシ樹脂組成物の硬化物に20質量%のNaOCl水溶液を滴下により10分間〜30分間浸透させ、該硬化物を分解する(分解工程)。
次に、配線回路基板11側及びBGA 14側の少なくともいずれかに残存した硬化物の分解物をメチルエチルケトンで除去する(除去工程)。リペア後の基板表面の状態を図7に示す。
以上により、半導体素子と基板にダメージのないリペア性に優れ、両面実装可能な半導体素子の実装を実現することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。
下記実施例では、以下のようにして、NMR及びガラス転移点を測定した。
【0052】
<NMRの測定>
日本電子株式会社製JEOL AL300装置を用いて、NMR測定を行った(TMS標準)。
【0053】
<ガラス転移点の測定>
接着剤の機械物性の把握を目的として、示差走査熱量計(TMA100、セイコーインスツルメント社製)を用いて、昇温速度4℃/min、温度範囲25℃〜250℃の条件で、熱機械測定(TMA:Thermal Mechanical Analysis)によるガラス転移温度の測定を行った。
【0054】
(実施例1)
<ジアシルヒドラジン結合を有するエポキシ硬化剤の合成>
ジアシルヒドラジン結合を有するエポキシ硬化剤としての下記構造式(3)で表される1,2−ビス{3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシンを以下に示す手順で合成した。
【化10】

【化11】

【化12】

【0055】
−エチル 3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステルの合成−
まず、16.6g(100ミリモル)の3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸、3.8g(20ミリモル)のp−トルエンスルホン酸モノ水和物、及びエチルアルコール200mLからなる混合液を24時間還流した。反応混合液に500mLの水を加え、析出した液体取り出し、フラッシュ・クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:酢酸エチル=10:2)で精製し、17.0g(87質量%)の上記構造式(1)で表されるエチル 3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステルを合成した。
得られたエチル 3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステルのNMRの分析結果は、以下に示すとおりであった。
H−NMR(CDCl3、δppm)1.25(3H、t、CH)、2.63(2H、t、Ph−CH)、2.86(2H、t、COCH)、4.09(2H、q、CH)、6.90(2H、d、Ph−H)、7.06(2H、d、Ph−H)
【0056】
−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパニルヒドラジドの合成−
合成したエチル 3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エステル15.6g(80mmol)のメタノール100mL溶液に抱水ヒドラジン(ヒドラジン1水和物)50mL(1000mmol)を加え、室温で24時間還流した。溶媒を減圧留去し、残渣のオイルを放置すると、ヒドラジドが結晶化した。結晶を減圧ろ過で取り出し、少量のエタノールで洗浄した後真空乾燥した。12.0g(83質量%)の上記構造式(2)で表される3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパニルヒドラジドを合成した(収率80.0%)。
得られた3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパニルヒドラジドのNMRの分析結果は、以下に示すとおりであった。
H−NMR(DMSO、δppm)2.24(2H、t、COCH)、2.65(2H、t、Ph−CH)、4.14(2H、S、NH)、6.64(2H、d、Ph−H)、6.98(2H、d、Ph−H)、8.91(1H、S、CONH)、9.09(1H、S(b)、OH)
【0057】
−1,2−ビス{3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシンの合成−
オキソン(oxone)67.5g(110mmol)を水に分散し、ここに、合成した3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパニルヒドラジド9.0g(50mmol)を加えて終夜撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、沈殿をろ過して取り出し、水洗した後真空乾燥した。6.64g(80質量%)の上記構造式(3)で表される1,2−ビス{3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシンを合成した(収率60.0%)。
得られた1,2−ビス{3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシンのNMRの分析結果は、以下に示すとおりであった。
H−NMR(DMSO、δppm)2.48(4H、t、Ph−CH)、2.63(4H、t、COCH)、6.66(4H、d、Ph−H)、6.97(4H、d、Ph−H)、9.15(2H、S、CONH)、9.72(2H、S、OH)
【0058】
(実施例2)
−1,2−ビス{4−ヒドロキシフェニル)アシチル}ヒドロシンの合成−
実施例1と同様にして、下記構造式(4)で表される1,2−ビス{4−ヒドロキシフェニル)アシチル}ヒドロシンを合成した(収率68.0%)。
【化13】

得られた1,2−ビス{4−ヒドロキシフェニル)アシチル}ヒドロシンのNMRの分析結果は、以下に示すとおりであった。
H−NMR(DMSO、δppm)2.90(4H、s、COCH)、6.21(4H、d、Ph−H)、6.51(4H、d、Ph−H)、9.6(2H、S、CONH)、9.82(2H、S、OH)
【0059】
(実施例3)
−1,2−ビス{4−ヒドロキシベンジル}ヒドロシンの合成−
実施例1と同様にして、下記構造式(5)で表される1,2−ビス{4−ヒドロキシベンジル}ヒドロシンを合成した(収率72%)。
【化14】

得られた1,2−ビス{4−ヒドロキシベンジル}ヒドロシンのNMRの分析結果は、以下に示すとおりであった。
H−NMR(DMSO、δppm)6.90(4H、d、Ph−H)、7.80(4H、d、Ph−H)、9.82(2H、S、OH)、10.2(2H、S、CONH)
【0060】
(実施例4)
−エポキシ樹脂組成物(アンダーフィル材)の調製−
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(Epon828、Shell社製、エポキシ当量184〜194)50質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(830LVP、大日本インキ化学工業株式会社製、エポキシ当量163)50質量部、エポキシ硬化剤として上記構造式(3)で表される1,2−ビス{3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシン80質量部、イミダゾール(HX2931、旭化成株式会社製)5質量部、シリカフィラー(シリカアエロジールR972、日本アエロジル社製)3質量部、チクソ剤(ステリアリン酸アミド)2質量部、及びシリコーンカップリング剤(KBM803、信越化学工業株式会社製)1質量部を混合して、実施例4のエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を180℃で1時間熱硬化させた硬化物のガラス転移点は、172℃であった。
また、得られた硬化物(厚み:約80μm)は、20質量%のNaOCl水溶液中で30分間以内に溶解し、酸化剤溶液で酸化分解可能であった。
【0061】
−BGA(ボール・グリッド・アレイ)実装−
図2に示すように、配線回路基板11上に設けられた配線電極12上にSAC半田ペースト(融点220℃)13をスクリーン印刷方法で塗布した。
次に、図3に示すように、BGA 14の突起電極を配線電極12と位置合わせし、BGA 14を搭載し、半田ボール16を溶融させてリフロー(最大温度260℃)実装を行った。
その後、図4に示すように、配線回路基板11とBGA 14の間に、調製したエポキシ樹脂組成物を注入し、180℃で1時間熱硬化を行い、アンダーフィル18を形成した。以上により、半導体装置を作製した。
【0062】
−BGA(ボール・グリッド・アレイ)のリペア−
図5に示すように、半導体装置のリペア対象部分を加熱(260℃)することにより半田及びエポキシ樹脂組成物の硬化物を溶融させ、BGA 14側を取外具19で引っ張ることにより、BGA 14を配線回路基板11から取り外した(取外工程)。
次に、図6に示すように、配線回路基板11側及びBGA 14側の少なくともいずれかに付着したエポキシ樹脂組成物の硬化物に20質量%のNaOCl水溶液を滴下により30分間浸透させ、該硬化物を分解した(分解工程)。
次に、配線回路基板11側及びBGA 14側の少なくともいずれかに残存した硬化物の分解物をメチルエチルケトンで除去した(除去工程)。リペア後の基板表面の状態を図7に示す。
以上の結果から、実施例4では、エポキシ樹脂組成物が耐熱性及び耐加水分解性に優れ、特定酸化剤で酸化分解可能であるため、BGAと基板にダメージのないリペア性に優れた、チップ実装が実現できることが分かった。
【0063】
(実施例5)
実施例4において、エポキシ硬化剤として上記構造式(3)で表される1,2−ビス{3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシンを、上記構造式(4)で表される1,2−ビス{4―ヒドロキシフェニル)アシチル}ヒドロシンに代えた以外は、実施例4と同様にして、実施例5のエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を180℃で1時間熱硬化させた硬化物のガラス転移点は、176℃であった。
また、得られた硬化物は、20質量%のNaOCl水溶液中で30分間以内に溶解し、酸化剤溶液で酸化分解可能であった。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例4と同様にして、チップ実装を行った。その結果、実施例4と同レベルの良好な結果が得られた。
【0064】
(実施例6)
実施例4において、エポキシ硬化剤として上記構造式(3)で表される1,2−ビス{3−(4―ヒドロキシフェニル)プロパニル}ヒドロシンを、上記構造式(5)で表される1,2−ビス{4―ヒドロキシベンジル}ヒドロシンに代えた以外は、実施例4と同様にして、実施例6のエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を180℃で1時間熱硬化させた硬化物のガラス転移点は、181℃であった。
また、得られた硬化物は、20質量%のNaOCl水溶液中で30分間以内に溶解し、酸化剤溶液で酸化分解可能であった。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、実施例4と同様にして、チップ実装を行った。その結果、実施例4と同レベルの良好な結果が得られた。
【0065】
(比較例1)
特開2008−214381号公報の実施例1に準拠して、比較例1のエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を180℃で1時間熱硬化させた。
得られた硬化物は、20質量%のNaOCl水溶液中で溶解しなかった。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いて、除去工程でメチルエチルケトンの代わりにN−メチルピロリドンを用いた以外は、実施例4と同様にして、チップ実装を行った。その結果、基板側のアンダーフィルを取り除くとき、基板のレジストがダメージを受けた。
【符号の説明】
【0066】
1 配線回路基板
2 半導体素子(BGA)
3 アンダーフィル
4 外部接続端子
11 配線回路基板
12 配線電極
13 半田ペースト
14 BGA
15 絶縁層
16 半田ボール
17 接合部
18 アンダーフィル
19 取外具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするエポキシ硬化剤。
【化15】

ただし、前記一般式(1)中、Xは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、直接結合、酸素原子及び硫黄原子のいずれかを表す。
Yは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、OH、NH、NHR(ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)及び酸無水物基のいずれかを表す。
は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、アルキル基、フッ素化アルキル基、アリール基及びフッ素化アリール基のいずれかを表す。
Arは、芳香族環を表し、該芳香族環は、アルキル基、フッ素化アルキル基、アルコキシ基及びフッ素化アルコキシ基のいずれかを有していてもよく、複素環を含んでいてもよい。
【請求項2】
下記構造式で表される化合物のいずれかである請求項1に記載のエポキシ硬化剤。
【化16】

【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載のエポキシ硬化剤及びエポキシ樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂が、単官能エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂及びエポキシ変性熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1種である請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
フィラーを含有する請求項3から4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
フィラーが無機フィラーである請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
エポキシ樹脂組成物を熱硬化させた硬化物のガラス転移点が125℃〜220℃である請求項3から6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
硬化物が酸化剤を含む酸化剤溶液で酸化分解可能であり、該酸化剤がNaOCl及びHのいずれかである請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
基板と、該基板に電気的に接続された半導体素子との間を、請求項3から8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物で封止してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置から半導体素子を取り外す半導体装置のリペア方法であって、
前記半導体装置のリペア対象領域を加熱して半導体素子を基板から取り外す取外工程と、
基板側及び半導体素子側の少なくともいずれかに付着したエポキシ樹脂組成物の硬化物を酸化剤溶液で分解する分解工程と、
基板側及び半導体素子側の少なくともいずれかに残存した硬化物の分解物を溶剤で除去する除去工程と、を含むことを特徴とする半導体装置のリペア方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−236381(P2011−236381A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111047(P2010−111047)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】