説明

エレクトロルミネッセンス材料用自己接着性ベースポリマー

比誘電率が4.5より大きい接着性ポリマーを提供する。このようなポリマーは、シアノ基および/またはニトロ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも45重量%含有する、モノマー混合物から得ることができる。このポリマーは、同様に比誘電率が4.5より大きい接着剤のベースポリマーとして使用され、接着性エレクトロルミネッセンス材料の粒子状発光物質のマトリックスとしても使用される。このようなエレクトロルミネッセンス材料で、実装高さの低いエレクトロルミネッセンス装置が得られ、これは非常に高輝度であるだけでなく特に長寿命である。さらに、接着剤またはエレクトロルミネッセンス材料を含む接着性面状部材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの技術分野に関し、電子装置に使用される自己接着性ポリマー、このポリマーを有する自己接着剤、この自己接着剤を有するエレクトロルミネッセンス材料、このような自己接着剤またはエレクトロルミネッセンス材料を有する自己接着性面状部材(Flaechenelemente)、および、このエレクトロルミネッセンス材料を有するエレクトロルミネッセンス装置に関する。さらに、本発明は、電子装置の構成要素を接着する際の自己接着剤の使用、および、光学表示装置および/または照明装置の構成要素を接着する際のエレクトロルミネッセンス材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自己接着剤は、多くの技術分野で加工補助手段として使用され、それによって、容易に装置の様々な構成要素を互いに結合することが可能である。自己接着剤の概念は、感圧接着剤およびホットメルト接着剤、即ち、自ずから各被着面(基板、接着基材、または接着面)との接着を可能にする全ての接着剤を包含する。これらの自己接着剤は様々な方法で使用することができる。容易に取り扱うことができるように、自己接着剤は、典型的には、例えば、ロールの形態の自己接着テープとして、または、溶剤を使用しないで得ることができる押出成形された薄い自己接着フィルムとして、自己接着性面状部材の一部である接着剤層の形態で使用される。自己接着剤層は、さらに、塗布法または印刷法で液体の溶液または分散体として自己接着剤を塗布して製造することもできる。
【0003】
特に電子装置に使用するには、自己接着剤に対して非常に高い要件がある。低アウトガス性の他に、自己接着剤は、広い温度範囲で使用可能でなければならず、特定の光学的および電気的特性を有していなければならない。電子機器はますます小型化しているため、接着剤層に関して基本的な目標は、接着剤層内で、接着性の他に、装置の製造時にプロセス工程を削減できるように他の機能を実現することである。さらに、それによって追加の機能要素を使用しなくて済むため、対応する構造要素(Bauelements)のサイズと重量が減少する。
【0004】
高機能化自己接着剤および自己接着テープは、様々な電子部品および電気部品に使用される。従って、それらは、剛性または可撓性の小型電子回路において、部品および部品構成要素の信号カップリングまたはデカップリング(signaltechnische Kopplung oder Entkopplung)を可能にし、ここで、自己接着剤は、柔軟性が高いため、機械的変形を受けても高い長期安定性を有し、その上、加工が容易であるため、それらは不規則な形状の表面でも使用することができる。
【0005】
特に、自己接着剤および自己接着テープは、例えば、携帯電話、コンピュータ画面、テレビ、ならびにノートブック、ラップトップもしくは携帯情報端末(PDA)のような小型コンピュータの追加の機能層を有する液晶ディスプレイ(LCD)の場合、または接触式表示器(タッチパネル)の場合、表示装置を接着するのに使用される。
【0006】
近年エネルギー消費は著しく減少しているため、これらの表示装置では、ルミネッセンス発光体をベースにする光源が重要性を増してきた。例えば、白熱電球などの放熱体と異なり、このような光源では、放射される光は、発光物質中で生じるルミネッセンス過程の中で発生する。ルミネッセンスとは、励起された発光物質が電磁放射線を放射して、より低いエネルギー状態に移行するプロセス(放射失活)を指す。実際、特に、電界中で発光物質の励起が起こるこのような系がルミネッセンス発光体として重要である。ここで発生する光の放射および他の電磁放射線をエレクトロルミネッセンスと称する。
【0007】
発光ダイオード(LED)の他に、いわゆるコンデンサ−発光膜もエレクトロルミネッセンスを技術的に使用する。コンデンサ−発光膜(エレクトロルミネッセンス膜またはEL膜、発光膜(Leuchtfolie)、発光膜(Lichtfolie))では、発光物質は特別なコンデンサ配置において2つの電極間に位置する。電極に交番電界を印加することによって発光物質の励起が起こる。
【0008】
コンデンサ−発光膜にも、多機能に調製されている自己接着剤を使用することができる。例えば、特許文献1は、エレクトロルミネッセント発光物質用のバインダーマトリックスとして使用される感圧接着剤を開示している。この文献には、基本的に使用可能な感圧接着剤の例として、例えば、ポリ(メタ)アクリレート類、シリコーン類、ポリシロキサン類、合成ゴム類、ポリウレタン類をベースにする接着剤系、およびブロック共重合体をベースにする接着剤系などの様々な接着剤系が全般的に記載されている。
【0009】
特許文献1は、ポリ(メタ)アクリレートをベースにする自己接着剤、即ち、ベースポリマーとして、(メタ)アクリレートモノマー混合物からなるポリマーを含有する自己接着剤を特に詳細に記載している(以下、(メタ)アクリレートの記載は、略記するために使用され、アクリレートとメタクリレートの両方、即ち、それらの酸およびその誘導体(例えば、エステル)を含む)。特に、この文献には、炭素数1〜30のアルキルアルコールでエステル化されている1種または2種以上の(メタ)アクリル酸エステルをモノマー混合物の70重量%〜100重量%含有し、さらに、場合により、官能基を有する1種または2種以上のオレフィン性不飽和モノマーを30重量%以下有し得る混合物が記載されている。実際、これらの自己接着剤系を市販の発光物質と共に使用すると、良好な発光力(Leuchtkraft)および長期安定性を有するエレクトロルミネッセンス装置を実現できることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006013834A1号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology”von Donatas Satas(van Nostrand,New York 1989)
【非特許文献2】T.G.Fox,Bull.Am.Phys.Soc.1(1956)123
【非特許文献3】Skelhorne,“Electron Beam Processing,in Chemistry and Technology of UV and EB Formulation for Coatings,Inks and Paints”,Vol.1,1991,SITA,London
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、エレクトロルミネッセンス装置におけるバインダーマトリックスとして、従来技術から既知のポリマーよりさらに大きい発光力および改善された長期安定性を付与する自己接着剤用のベースポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、意外なことに、本発明により、比誘電率が4.5より大きい冒頭に記載した種類のポリマーによって解決される。このように高い比誘電率(Permittivitaetszahl,relative Dielektrizitaetskonstante;式記号:ε)を有する感圧接着性ポリマーの場合、これらのポリマーで製造された自己接着性エレクトロルミネッセンス材料の輝度(Leuchtdichte)は、エレクトロルミネッセンス材料の層厚が同じであるとき、既知の自己接着性エレクトロルミネッセンス材料系の場合より著しく高いことが分かった。
【0014】
有利な実施形態では、自己接着性ポリマーは、シアノ基とニトロ基を含む群から選択される少なくとも1つの官能基をそれぞれ有する(メタ)アクリル酸誘導体を含むモノマー混合物からなるポリマーである。これらのモノマーを使用することによって、一方では自己接着性であり、他方では得られるポリマー中のこれらのモノマーの割合を変えることによって広い範囲で比誘電率が変化し得るポリマーを得ることが可能である。ただし、これらの特別なモノマーを使用する場合、本発明により必要な4.5より大きい比誘電率を有するポリマーが得られるように、これらをポリマー中に少なくとも45重量%の割合で含有することが重要である。
【0015】
これらの極性が大きいモノマー類は自己接着性ポリマーを製造するのに適していることが分かったが、これは全く予想外であった。このような極性のモノマー類は、通常、内部結合力(凝集力)が非常に高いポリマー類を得るのに使用され、それは、特に、これらのポリマー類で接着される物体が再配置可能でなければならない場合に望ましい。しかし、同様に、一般に凝集力が高くなるにつれ、ポリマー類の接着力および瞬間的接着性(Anfassklebrigkeit)の低下が起こることも当業者には既知である。そのため、シアノ基および/またはニトロ基を有する(メタ)アクリレートモノマー類を使用すると、高い凝集力を有すると同時に高い接着力および瞬間的接着性を有する極性の大きいポリマーが得られるということは意外である。
【0016】
この場合、少なくとも1つのシアノ基および/またはニトロ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体が自己接着性ポリマー中に最大で90重量%の割合で存在することが特に有利であると分かったが、この理由は、それより高い割合では、得られるポリマー類は、もはや自己接着剤のベースポリマーとして使用できるのに十分な自己接着性がないからである。特に、ポリマー類は、このようなモノマー類の含有量が約70重量%以下のとき、まだ非常に優れた感圧接着性を有し、含有率が約80重量%以下のとき、まだ非常に良好なホットメルト接着性を有し、そして80重量%〜90重量%の含有量のとき、まだかろうじてホットメルト接着性を有することが分かる。特に、少なくとも1つのシアノ基および/またはニトロ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体の割合が50重量%〜60重量%であるとき、具体的な用途に応じて、自己接着剤のベースポリマーとして極めて適していると同時に優れた輝度を有する自己接着性ポリマー類が得られる。
【0017】
ポリマーが、非置換または置換シアノメチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノメチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、およびO−(ペル)シアノエチル化糖類を有する(メタ)アクリル酸誘導体を含む群から選択されるモノマー類を含有するとき、特に良好な結果が達成される。この場合、従来の自己接着性ポリマーと比較して、長期安定性が著しく高い自己接着性ポリマーが得られる。これは、ポリマーの比誘電率がかなり長い時間にわたって少なくとも実質的に一定であること、および、さらに、エレクトロルミネッセンス材料にこれらのポリマー類を使用した場合、経時的な輝度の減少がかなり遅いことに現れている。
【0018】
さらに、自己接着性ポリマーが、一般式CH=CR−COOR(式中、RはHおよびCHを含む群から選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有する置換および非置換アルキル鎖を含む群から選択される)の置換および/または非置換(メタ)アクリル酸エステルをさらに含むモノマー混合物からなるポリマーであることが有利である。このようにして、広い範囲にわたって接着技術的特性が変化し、従って具体的な要件に適合し得る自己接着性ポリマーが得られる。自己接着性ポリマーが、官能基を有するオレフィン性不飽和モノマー類をさらに有するモノマー混合物からなるポリマーである場合、さらに良好に接着技術的特性を変化させることができる。
【0019】
本発明の中心的態様は、エレクトロルミネッセンス装置におけるバインダーマトリックスとして使用される自己接着剤用の改善されたベースポリマーに関する。従って、本発明の別の特定の課題は、エレクトロルミネッセンス装置におけるバインダーマトリックスとして高い発光力および改善された長期安定性を提供する自己接着剤を提供することである。本発明によれば、これらの課題を解決するために、4.5より大きい比誘電率を有する自己接着剤が使用される。自己接着剤のこれらの実施形態は、従来の接着剤と比較して、この自己接着剤を使用して製造されたエレクトロルミネッセンス装置で輝度が著しく高く、寿命がより長いという利点を提供する。
【0020】
この場合、自己接着剤でも対応して前述の利点が得られるように、この自己接着剤のベースポリマーとして前述の自己接着性ポリマーを使用することが特に有利である。
【0021】
この場合、特に、自己接着剤が全体として25未満の比誘電率を有することが有利である。このようにして、一方のできるだけ高い輝度と他方のできるだけ小さい性能損失(Verlustleistung)との特に好都合なバランスが得られるように、エレクトロルミネッセンスで誘電損失(誘電率の虚数部)を低く保つことができる。
【0022】
さらに、本発明により、電子装置の構成要素を接着するための前述の自己接着剤の使用が提案され、それによって特に低い実装高さ(Einbauhoehe)を有する機能装置を実現することができる。容易に取り扱うことができるように、さらに、自己接着剤が自己接着性面状部材に存在することが好都合であると分かった。
【0023】
本発明の別の態様は、従来の自己接着性エレクトロルミネッセンス材料と比較して高い輝度を有するだけでなく、これをより長時間にわたって提供することができる自己接着性エレクトロルミネッセンス材料を提供するという課題に基づく。これは、本発明において、発光物質の他に前述の自己接着剤を含有するエレクトロルミネッセンス材料によって達成される。
【0024】
本発明により、さらに、光学表示装置および/または照明装置の構成要素を接着するための前述の自己接着性エレクトロルミネッセンス材料の使用が提案されるが、これは、二重機能系の利点を提供するため、別個の固定手段を必要としない。また、このエレクトロルミネッセンス材料に関して、より容易に接着できるようにこれが自己接着性表面要素に存在することが特に好都合であると分かった。
【0025】
これに関して、同様に、自己接着性エレクトロルミネッセンス材料中の粒子状発光物質の割合が1重量%〜90重量%であることが有効であったが、その理由は、エレクトロルミネッセンス材料の層厚が厚くても1重量%未満の発光物質含有量では視覚的に知覚され得る輝度(Helligkeit)をもはや達成できず、それに対してエレクトロルミネッセンス材料は、発光物質含有量が比較的多いと、十分に高い内部結合力および十分な接着力を有しないため、90重量%超の発光物質含有量では、十分な自己接着特性を実現できないからである。エレクトロルミネッセンス材料は、40重量%〜75重量%の発光物質含有量を有するとき特に有利であるが、その理由は、この場合、良好な輝度が得られ、その上、良好な自己接着性も達成されるからである。発光物質の含有量が55重量%〜65重量%のとき、この2つの相反する効果の最適なバランスが得られる。
【0026】
さらに、粒子状発光物質として、カプセル化された硫化亜鉛をベースにする発光物質を使用することが好都合である。この場合には、発光物質の安定性が著しく高まり、従ってエレクトロルミネッセンス材料の寿命、即ち、ある電圧で達成可能な輝度がこの電圧における初期輝度の半分未満に減少する平均時間が改善される。発光物質粒子をカプセル化することによって、輝度を減少させる物質の作用から、例えば、腐食性薬剤からまたは吸着剤から発光物質粒子を保護することが可能であるが、吸着剤は、粒子表面における吸着質として無放射の再結合プロセスの中心を形成する可能性がある。
【0027】
最後に、本発明の別の課題は、容易に製造することができ、その上、高い輝度と長期安定性を有する改善されたエレクトロルミネッセンス装置を提供することである。この課題は、エレクトロルミネッセンス装置に本発明のエレクトロルミネッセンス材料を使用することによって解決することができるが、それはさらに少なくとも実質的に透明な第1の電極と第2の電極を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
従って、本発明は、新規な種類の自己接着性ポリマーを提供する。本出願の意味において自己接着性とは、感圧接着性またはホットメルト接着性に形成されている、即ち、自ずから接着基材との耐久接着を可能にする物質を指す。従って、自己接着剤の概念も同様に、感圧接着剤およびホットメルト接着剤を含む。
【0029】
感圧接着性とは、室温で比較的弱い力で押し当てるだけで基材と接着できるポリマーを指す。それに対して、ポリマーが高温において初めて基材と接着する場合、ポリマーをホットメルト接着性と称し、ここで、このようにして得られた接着は、その後、接着を室温に冷却しても維持される。感圧接着性ポリマーとホットメルト接着性ポリマーの接着力は、それらの接着特性に基づく。
【0030】
接着とは、通常、2つの互いに接触する相の境界面における結合力を生じさせる物理的効果を指し、この結合力は、それらの境界面で生じる分子間の相互作用に基づく。従って、接着は、基材表面に対するポリマーまたは接着剤の付着を決定し、瞬間的接着性(いわゆるタック)として、および接着力として測定可能である。ポリマーの接着はポリマーの分子構造だけに依存し、従って具体的なポリマーに固有の大きさを示すが、ポリマーは接着剤中に他の成分と混合されて存在することができる。接着剤の接着に的確に影響を及ぼすように、接着剤に軟化剤および/または粘着付与樹脂(いわゆるタッキファイヤー)を添加することが多い。
【0031】
凝集(Kohaesion)とは、通常、分子間および/または分子内の相互作用に基づく物質または物質の混合物の内部結合力を結果として有する物理的効果を指す。従って、凝集力は、接着剤の粘性および流動性を決定し、それらは、例えば、粘度およびせん断抵抗時間(Scherstandzeit)として測定できる。また、凝集もポリマーの分子構造によって決定され、ポリマーまたは接着剤をさらに架橋させることによって、凝集力を的確に向上させることが可能であり、このために、ポリマーまたは接着剤は反応性(従って、架橋性)成分を有していなければならない(これは、ある種の接着剤では、化学架橋剤として別々に添加することもできる)、および/または接着剤は後処理において化学(高エネルギー)線に暴露される。
【0032】
感圧接着性ポリマーの接着技術的特性は、まず第1に、接着特性と凝集特性との関係によって決定される。従って、例えば、幾つかの用途では、使用されるポリマー類の凝集力が高いこと、即ち、特に強い内部結合力を有することが重要であり、他方、別の用途では、特に高い接着力が必要である。
【0033】
本発明では、ポリマーが自己接着性であるように形成されており、且つ4.5より大きい比誘電率を有することが決定的に重要である。この2つの特性は、ポリマーの固有の特性、即ち、ポリマー自体の特性であり、例えば、専ら助剤によって生じる特性ではないが、ただし、これは、当該特性を有するポリマーが、これらの特性にさらに影響を及ぼす助剤と混合して存在し得ることを除外しない。
【0034】
従来の大部分のポリマー類は比誘電率が約3であり、従って、本発明の教示の実現に適していない。重合中の反応プロセスに関連する反応パラメータ、例えば、反応温度、反応時間、反応器圧力、モノマー類、開始剤、連鎖移動剤および溶媒の供給プロファイル、使用する撹拌機の種類、撹拌機の回転数、反応混合物の粘度およびpH値の他に、特に、モノマー類(または場合によってはマクロモノマー類)の選択が、得られるポリマーの比誘電率に強い影響を及ぼし得る。この場合、重合で、ポリウレタン、アクリレート、合成ゴム、ポリシロキサンまたはポリエステルをベースにする自己接着性ポリマーが生じるように、対応するモノマー類を選択することができる。
【0035】
従って、例えば、ポリマーがハロゲンで一置換または多置換されたモノマー類から製造される場合、高い比誘電率を達成することができる。しかし、ここでは、前記ポリマーが自己接着性であることに注意しなければならない。従って、例えば、ポリフッ化ビニリデンは十分に高い比誘電率を有し得るが、自己接着性ではないため、これらは、通常、本発明のポリマーとして適していない。しかし、高い比誘電率を有するポリマー類用のモノマー類として使用できる対応する化合物は当業者に十分知られていない。本発明により、これらのうち、フッ素で置換された化合物の他に、特に、ニトロ基(−NO)またはシアノ基(−CN)で一置換または多置換されたこのようなモノマー類が有利であることが分かった。
【0036】
アクリレートをベースにするポリマー(即ち、基本骨格がアクリル酸またはメタクリル酸に由来し得るモノマー類を少なくとも50重量%含有するモノマー混合物から製造されたポリマー)では、これらが、1つまたは2つ以上のシアノ基および/またはニトロ基をそれぞれ有するモノマー類を少なくとも45重量%含有するモノマー混合物から製造されている場合、例えば、比誘電率が4.5より大きくなり、ここで、これらのモノマー類は、特に90重量%以下の割合で、または、さらには50重量%〜60重量%の割合で存在してもよい。この場合、該ポリマー類は、任意に、例えば、ブロック共重合体またはランダム重合体として構成されていてもよい。
【0037】
少なくとも1つのニトロ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体として、通常のおよび適した化合物を基本的に全て使用することができる。同様に、少なくとも1つのシアノ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体として、通常のおよび適した化合物を基本的に全て選択することができる。シアノ基を有するモノマー類を使用すると、特に極性の高いポリマーが得られるが、これは感湿性または水溶性も吸湿性もなく、せいぜい僅かな水分吸収しか示さない。シアノ基を有するモノマー類として、例えば、一般式CH=C(R)(COOR)[式中、Rは、アクリル酸またはアクリル酸誘導体の場合、Hを表し、メタクリル酸またはメタクリル酸誘導体の場合、CHを表し、Rは、一般式−(CH−CH(CN)−(CH−H(式中、c=0〜10、d=0〜10であってもよい)から誘導される基である]のモノマー類、従って、例えば、シアノメチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノメチルメタクリレートおよびシアノエチルメタクリレートを使用することができるが、これらに限定されない。これらのシアノアルキル(メタ)アクリレートに加えてまたはその代わりに、他のシアノ官能化(メタ)アクリル酸誘導体、例えば、上記の基RがO−(ペル)シアノエチル化糖単位を含有するもの(即ち、1つのヒドロキシ基、2つ以上のヒドロキシ基または全てのヒドロキシ基がシアノエタノールエーテルとして存在する糖類)、例えば、O−ペルシアノエチル化2−(グリコシルオキシ)エチルアクリレートまたは対応する二糖類、オリゴ糖類および多糖類も使用することができる。これらの化合物は、もちろん、グルコースの代わりにまたはそれに加えて、他の糖類から、例えば、マンノースおよびキシロース等から出発することもできる。
【0038】
しかし、シアノ基および/またはニトロ基を有するモノマー類を使用する代わりに、同様に高い比誘電率を有する別のモノマー類(例えば、ハロゲン化ビニリデンなど)を使用して(メタ)アクリレートをベースにする感圧接着性ポリマーを製造することも可能であり、その場合、上記の基Rは、例えば、一般式−(CHCX−CH(式中、n=1〜50であり、XはF、ClおよびBrを含む群から選択される)に由来する。
【0039】
従って、このようにして、自己接着性であり対応する比誘電率を有するだけでなく、非常に優れた絶縁特性(Isolationseigenschaften)、低い(または、特定の用途では、高い)損失係数、および高い光学的透明度を有するポリマー類を得ることができる。
【0040】
しかし、このような(メタ)アクリレートをベースにするポリマーの他に、基本的に、自己接着剤に通常使用される他の全てのポリマー類を使用することもできる。これに関して、例えば、ポリシロキサン、ポリエステル、合成ゴムおよび/またはポリウレタンをベースにする自己接着剤ポリマー類が挙げられるが、これらに限定される必要はない。適した感圧接着剤ポリマーとしては、また、ブロック共重合体をベースにするもの、例えば、アクリレートブロック共重合体またはスチレンブロック共重合体がある。このような接着剤は、従来技術から十分に知られており、これらの場合も、シアノ基、ハロゲン基またはニトロ基を有する官能化されたモノマー類を使用することによって比誘電率を的確に高くすることができる。
【0041】
感圧接着性ポリマーとして、好適な感圧接着特性を有するポリマー系、即ち、感圧接着系が基本的に全て考慮の対象になる。感圧接着性ポリマー類の製造に使用されるモノマー類は、特に、得られるポリマー類が室温またはより高い温度で感圧接着剤として使用できるように選択される。
【0042】
ポリマーが、非特許文献1に従って感圧接着特性を有する場合、該ポリマーは本発明の意味において感圧接着性である。
【0043】
感圧接着性ポリマー類のために好ましいT≦25℃のポリマーガラス転移温度Tを達成するため、通常、モノマー類の選択およびモノマー混合物の量的組成の選択は、これらがFoxによって表された式に類似した挙動を示し(非特許文献2を参照)、得られるポリマーのガラス転移温度Tに望ましい値が、
【数1】

に従って得られるように行う。上式中、nは、使用されるモノマー類の通し番号(Laufzahl)を表し、wは各モノマーnの割合(重量%)を表し、TG、nは、各モノマーnからなるホモポリマーの各(静的)ガラス転移温度(単位、K)を表す。
【0044】
得られるポリマーの比誘電率に関する要件を満たす限り、感圧接着性ポリマーとして、基本的に全ての感圧接着性ポリマー類、例えば、アクリレートおよび/またはメタクリレート、シリコーンおよび/または合成ゴムをベースにするものが考慮の対象になる。
【0045】
従って、特に、アクリル酸および/またはメタクリル酸をベースにする、および/または、前述の化合物のエステルをベースにする感圧接着性ポリマー類、または水素添加合成ゴムをベースにする感圧接着性ポリマー類を使用することができるが、その理由は、これらは特に老化安定性があるからである。
【0046】
特に、例えば、ラジカル重合によって得られ、一般式CH=C(R)(COOR)(式中、Rは同様にHまたはCH基であり、Rは同様にHであるかまたは飽和、非分岐もしくは分岐、置換もしくは非置換C〜C20アルキル基からなる群から選択される)の少なくとも1種類のアクリルモノマーを含有するアクリレートベースのポリマーが適している。
【0047】
具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレートおよびその分岐鎖異性体、例えば、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレートまたはイソオクチルメタクリレートがあるが、これらに限定されない。
【0048】
使用可能であるが、ただし、通常は少量の割合でのみ使用される他の化合物の種類としては、一官能性アクリレートまたはメタクリレートがあり、式中、R基は、炭素数が少なくとも6の架橋または非架橋シクロアルキル基からなる群から選択される。シクロアルキル基は、また、例えば、C〜Cアルキル基で置換されていてもよい。具体例としては、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートおよび3,5−ジメチルアダマンチルアクリレートがある。
【0049】
好ましい方法では、1つまたは2つ以上の置換基、特に、極性置換基、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基、ラクタム基、ラクトン基、N−置換アミド基、N−置換アミン基、カルバメート基、エポキシ基、チオール基、アルコキシ基およびエーテル基などを有するアクリルモノマー類および/またはコモノマー類を使用する。
【0050】
有利な実施形態によれば、アクリルモノマーに加えて、官能基を有するオレフィン性不飽和モノマー類をコモノマー類として有するモノマー混合物から製造されるポリマー類をさらに使用することができる。これらは、例えば、官能基を有するビニル化合物(例えば、ビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、α位に芳香環およびヘテロ環を有するビニル化合物)、無水マレイン酸、スチレン、スチレン化合物、酢酸ビニル、アクリルアミド、および二重結合で官能化された光開始剤を含む群から選択できるが、これらに限定されない。
【0051】
基本的に官能性コモノマー類として適しているモノマー類は、N−アルキルで一置換または二置換されたアミド、特にアクリルアミドなどの中程度の塩基性のコモノマー類である。ここで、具体例としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、およびN−イソプロピルアクリルアミドがあるが、これらに限定されない。
【0052】
このようなコモノマー類の他の好ましい例としては、(同様に、以下に限定されるものではないが)ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、イタコン酸、グリセリジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、グリセリルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、酢酸ビニル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸およびジメチルアクリル酸がある。
【0053】
他の好ましい方法では、コモノマー類として、ビニル化合物、特にビニルエステル、ビニルエーテル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、ならびに、α位に芳香環およびヘテロ環を有するビニル化合物が使用され、非限定例として、例えば、酢酸ビニル、ビニルホルムアミド、4−ビニルピリジン、エチルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、N−ビニルフタルイミド、メチルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、およびアクリロニトリルが挙げられる。
【0054】
特に有利には、少なくとも1種類のコモノマーは、共重合性二重結合を有する光開始剤、特に、Norrish−I−光開始剤、Norrish−II−光開始剤、アクリル酸ベンゾインまたはアクリル化ベンゾフェノンを含む群から選択されるものであってもよい。
【0055】
従って、本発明のポリマーはまた、例えば、モノマー混合物に関して、式CH=C(R)(COOR)(式中、R基は、置換基HまたはCHを表し、R基は炭素数1〜30のアルキル鎖を表す)の1種または2種以上のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを70〜100重量%有する感圧接着性ポリマーを含むことができ、それは、場合により、官能基を有する1種または2種以上のオレフィン性不飽和モノマーを30重量%以下有する。
【0056】
ポリマーの接着性を的確に改善するために、式G1に従って、得られるポリマーの(静的)ガラス転移温度Tを低下させるこのようなモノマー類が重合混合物に添加され;ホモポリマーが特に低いガラス転移温度を有するこのようなモノマー類としては、例えば、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレートまたはn−オクチルメタクリレートがあるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明のポリマー類から製造される感圧接着剤の平均分子量M(Molekularmasse)は、非常に好ましくは、20,000g/mol〜2,000,000g/molの範囲である。特に、他に溶融型感圧接着剤(Schmelzhaftkleber)としての使用には、好ましくは100,000g/mol〜500,000g/molの範囲の分子量Mを有するポリマー類が使用される。1,000,000g/molの分子量Mを有する非架橋ポリマーは、非常に優れたバランスを提供する。
【0058】
ここで、平均分子量Mの記載は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定に関するものであり、このために、清澄ろ過された試料(試料濃度4g/l)100μlを、テトラヒドロフラン中0.1体積%のトリフルオロ酢酸からなる混合物を溶離剤として用いて、1つのプレカラムと複数の分離カラムからなるカラムの組み合わせに注入する。プレカラムとして、PSS−SDV(Polymer Standards Service社)タイプのカラム、5μ、10Å、ID8.0mm×50mmを使用する。PSS−SDV(Polymer Standards Service社)タイプのカラム、5μ、10Åならびに10Åおよび10Å、各ID8.0mm×300mmを使用し(25℃)、1.0ml/分の流量で分離する;検出は示差屈折率計(Shodex RI71)で行った。較正のため、PMMA標準物質を使用した(ポリメチルメタクリレート較正)。
【0059】
自己接着性ポリマーとして、(メタ)アクリレートを含有しないポリマー、即ち、例えば、合成ゴムまたはシリコーンも考慮の対象になる。
【0060】
合成ゴムとして、通常のおよび適した合成により製造可能なゴムを基本的に全て使用することができる。同様に、シリコーンとして、当業者に既知の、各要件プロファイルを満たす、従って好適なシリコーンが全て使用可能である。シリコーンをベースにする感圧接着剤のベースポリマーを製造するために、例えば、縮合架橋性ポリマー系(例えば、シリケート樹脂、ポリジメチルシロキサンまたはポリジフェニルシロキサンなど)、付加架橋性ポリマー系(例えば、シリケート樹脂、ポリジメチルシロキサンまたはポリジフェニルシロキサンなど)を使用することができ、これらはそれぞれさらに追加で架橋剤物質(いわゆる架橋剤、例えば、官能基で置換されたヒドロシラン)を含有するが、ただし、これらに限定されない。
【0061】
従って、シリコーン感圧接着剤に使用されるものとして、例えば、DC280(商標)、DC282(商標)、Q2−7735(商標)、DC7358(商標)およびQ2−7406(商標)(Dow Corning製)、PSA750(商標)、PSA518(商標)およびPSA910(商標)(GE Bayer Silikones製)、KRT001(商標)、KRT002(商標)およびKRT003(商標)(ShinEtsu製)、PSA45559(商標)(Wacker Silikones製)、またはPSA400(商標)(Rhodia製)の名称の縮合架橋性ポリマー系、ならびに、DC7657(商標)およびDC2013(商標)(Dow Corning製)、PSA6574(商標)(GE Bayer Silikones製)、またはKR3700(商標)およびKR3701(商標)(ShinEtsu製)の名称の付加架橋性ポリマー系が市販されているが、本発明の対象はこれらに限定されない。
【0062】
さらに、感圧接着剤のベースポリマーとして使用する場合、化学的にまたは物理的に架橋可能に構成されており、感圧接着剤中で架橋して使用されるこのようなシリコーンも基本的に使用可能である(具体的なシリコーンに限定して選択されるものではない)。これは、特に、ラジカル反応で架橋できるシリコーンであってもよい。これによって、シリコーンをベースにする感圧接着剤の時間依存性の老化作用が著しく減少するが、それは凝集力の増加と接着力の低下に反映される。このようなラジカル架橋は、例えば、いわゆるBPO誘導体(過酸化ベンゾイルの誘導体)を使用することによって化学的に、および/または、いわゆる電子線硬化(ESH)における電子線を使用することによって引き起こすことができる。
【0063】
シリコーンから、とりわけ、非極性基材、またはシリコーン化および/またはシリコーン含有基材、例えば、シリコーンゴムおよび/またはシリコーン発泡体に対する接着力が大きい感圧接着剤も得ることができる。このようなシリコーンをベースにする感圧接着剤は、シリコーンから、とりわけ、最後に電子線硬化で接着剤を架橋することによって得ることができ、これは多数の利点を提供する:従って、例えば、電子線硬化で生じるラジカルによって、シリコーンをベースにする感圧接着剤の架橋が起こる。さらに、電子線硬化の結果として、感圧接着剤と、感圧接着剤が接着される対応する(非極性)基材(例えば、PETフィルム)との強固な結合を達成することができる。それによって、さもなければ起こり得る接着アセンブリ(Klebeverbunds)の成分(この成分は、軟化特性を有し、従って、その結果として接着アセンブリ中での接着力が低下し得る)の接着面への移動が著しく減少し、特性の変化が防止されるため、感圧接着剤は高い温度安定性を維持する。
【0064】
しかし、本発明のポリマーは、ホットメルト接着性に形成されていてもよい。ホットメルト接着性ポリマー類として、好適なホットメルト接着特性を有するポリマー系、即ち、ホットメルト接着系が基本的に全て考慮の対象になる。被着面に溶融物の形態で塗布し、次いで冷却した後、ASTM D3330−04(接着された被着面で300mm/分の剥離速度)に従った室温での接着力が1N/cmより大きい、特に3N/cmより大きい、またはさらには5N/cmより大きい場合、ポリマーは、本発明の意味においてホットメルト接着性である。
【0065】
本発明のホットメルト接着性ポリマーとして、全ての通常のおよび適したホットメルト接着性ポリマー、例えば、合成ゴム、熱可塑性材料、改質樹脂を有するエラストマー、アクリル酸誘導体−ビニル共重合体、およびアクリレート含有ブロック共重合体をベースにするものを使用することができる。
【0066】
これらの自己接着性ポリマー類のうち、とりわけポリオレフィンおよびポリオレフィンの共重合体およびそれらの酸変性誘導体、アイオノマー、ポリアミドとその共重合体、ならびにスチレンブロック共重合体などのブロック共重合体を含む群から選択されるものも基本的に使用可能であることが分かった。
【0067】
ホットメルト接着特性に鑑みて、これらのポリマー類を後で架橋してもよい。例えば、電子線を用いた架橋工程で高い架橋度を達成することができる。電子線加速器である限り、リニアカソード型装置、走査型装置(スキャナ型装置)、またはセグメントカソード型装置(Segmentkathodensysteme)などの典型的な照射装置を使用することができる。従来技術の詳細な記載および重要なプロセスパラメータは、非特許文献3に見出される。典型的な加速電圧は、50kV〜500kVの範囲、好ましくは80kV〜300kVの範囲である。使用される照射線量(Streudosen)は、5kGy〜150kGy、特に20kGy〜100kGyの範囲である。また、高エネルギー照射を可能にする他の方法を使用することもできる。
【0068】
架橋反応に必要な線量を減少させるために、さらに架橋剤および/または架橋促進剤、特に、電子線でまたは熱により励起可能なものを含有するモノマー混合物からホットメルト接着性ポリマーを製造することができる。電子線架橋に適した架橋剤としては、例えば、二官能性または多官能性アクリレートまたはメタクリレートまたはトリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートがある。熱により活性化可能な架橋剤として、好ましくは二官能性または多官能性エポキシド、水酸化物、イソシアネートまたはシランが使用される。
【0069】
本発明の他の態様は、比誘電率が4.5より大きい自己接着剤に関する。自己接着剤と称されるのは、自己接着性接着剤、即ち、感圧接着性接着剤(感圧接着剤)およびホットメルト接着性接着剤(ホットメルト接着剤)である。接着剤は、少なくとも1種類のベースポリマーを含有し、その他に、場合によっては他の配合成分、例えば、別のポリマー類またはフィラーなどが存在していてもよい。接着剤のベースポリマーとは、その基本的な特性が接着剤全体の接着技術的特性を決定するポリマーを指すが、言うまでもなく、接着剤中に改質助剤もしくは添加剤または他のポリマー類を使用することによって接着剤の全体的特性にさらに影響を及ぼすという可能性がないわけではない。最も簡単な場合、接着剤はそのベースポリマーのみからなる。
【0070】
本発明によれば、接着剤は、比誘電率が4.5より大きい、特に比誘電率が4.5〜25である。この場合、接着剤は、前述の自己接着性ポリマーを有してもよい。しかし、接着剤が、このポリマーの他に、比誘電率が小さいこのような他の配合成分をだけを含有する場合、自己接着剤の比誘電率が全体として4.5の値を超えるように、それに応じて、より高い比誘電率を有するポリマーを使用することが必要である。
【0071】
4.5未満の比誘電率を有する自己接着性ポリマーを使用する場合も同様に、本発明の自己接着剤を実現することができる。しかし、この場合、自己接着剤はさらに、例えば、それ自体高い比誘電率を有する添加剤などの他の配合成分を含有しなければならない。その場合、この配合成分は、自己接着剤に全体として4.5より大きい比誘電率を付与するのに十分に多い量で含有されていなければならない。この理由から、場合によっては起こり得る発光物質の分解プロセスまたは発光物質粒子の表面における水の吸着の発生が減少するように、好ましくは、比誘電率が特に高く、同時に低い含水率を有する添加剤をそれに使用する;この添加剤は、例えば、無機フィラーまたは有機添加剤であってもよい。
【0072】
基本的に使用可能な無機フィラーの例としては、チタン酸ストロンチウム粒子またはチタン酸バリウム粒子が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらは、本発明の概念を実現するために、自己接着剤中に十分に高い濃度で存在しなければならない。好都合には、非常に小さい、好ましくはナノメートルの範囲の平均粒径を有するこのような粒子系が使用される。このようにして、高い接着力を有し、光散乱が僅かしか発生しない自己接着剤を得ることができる。従って、後で発光物質を特に容易に混入することができる特に透明な自己接着剤、および、同様に、外側から知覚できる特に高い輝度を有する対応するエレクトロルミネッセンス材料が得られる。
【0073】
有機添加剤の例としては、ポリマー添加剤、例えば、通常の溶剤と高い相溶性および良好な混合性を有するハロゲン化ポリマーが挙げられるが、これに限定されない。特に、これらには、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルロース、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリ(イミノアジポリ−イミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノヘキサメチレン−イミノセバコイル)、ポリ酢酸ビニル、ポリ[イミノ(1−オキソドデカメチレン)]、ポリ[イミノ(1−オキソヘキサメチレン)]、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、またはフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン三元共重合体をベースにするポリマーが挙げられる。これらのポリマーの接着技術的特性を改善するために、これらを、高い誘電率を有する樹脂と、例えば、それに応じて変性された不飽和および飽和炭化水素樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンをベースにする樹脂、ならびにα−ピネン−および/またはβ−ピネン−および/またはδ−リモネン単位から構成されているポリテルペン樹脂と混合(配合)してもよい。
【0074】
従って、自己接着剤は、ベースポリマーに加えて、他の配合成分および/または混和剤も含んでもよい。接着剤の比誘電率を高くする配合成分の他に、これは、例えば、助剤、顔料、レオロジー添加剤、接着を改善するための添加剤、軟化剤(可塑剤)、樹脂、エラストマー、老化防止剤(酸化防止剤)、光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、ならびに、その他の助剤および添加剤、例えば、乾燥剤(例えば、モレキュラーシーブ−ゼオライトまたは酸化カルシウム)、流動化剤(Fliessmittel)およびレベリング剤(Verlaufmittel)、界面活性剤などの湿潤剤、または触媒であってもよい。
【0075】
助剤として、全ての微粉砕された固体添加剤、例えば、チョーク、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、カオリン、硫酸バリウム、または酸化カルシウムを使用することができる。他の例としては、タルク、マイカ、ケイ酸またはシリケートがある。もちろん、前述の物質の混合物も使用することができる。
【0076】
使用される顔料は、有機顔料であってもまたは無機顔料であってもよい。光安定性および紫外線安定性を改善するために、全ての種類の有機または無機着色顔料、例えば、白色顔料が考慮の対象になる。
【0077】
レオロジー添加剤の例としては、ヒュームドシリカ、層状ケイ酸塩(例えば、ベントナイト)、高分子量ポリアミド粉末またはひまし油誘導体をベースにする粉末がある。
【0078】
接着を改善するための添加剤は、例えば、ポリアミド、エポキシドまたはシランからなる群から選択される物質であってもよい。
【0079】
接着力を改善するための軟化剤の例としては、フタル酸エステル、トリメリト酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、および他の非環式ジカルボン酸のエステル、脂肪酸エステル、ヒドロキシカルボン酸エステル、フェノールのアルキルスルホン酸エステル、脂肪族、脂環式および芳香族鉱油、炭化水素、液状または半固体ゴム(例えば、ニトリルゴムまたはポリイソプレンゴム)、ブテンおよび/またはイソブテンからなる液状または半固体重合体、アクリル酸エステル、ポリビニルエーテル、粘着付与樹脂のベースでもある原料をベースにする液状樹脂および軟質樹脂、ラノリンおよび他のワックス、シリコーンならびにポリマー可塑剤、例えば、ポリエステルまたはポリウレタンなどがある。
【0080】
蛍光増白剤はスペクトルの紫外領域の光を吸収し、スペクトルの可視領域の、好ましくは、約400nm〜約500nmの波長の蛍光放射を有する化合物であり、蛍光は、同じ波長領域で起こる自己接着剤の自己吸収を上回り、従って自己接着剤は全体として光学的に、より明るく見える。この例としては、スチルベン誘導体、エチレン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体またはピラゾール誘導体があるが、これらに限定されない。これらは、純粋な形態でまたは様々な蛍光増白剤の混合物として自己接着剤に添加されてもよい。
【0081】
他の成分(例えば、助剤および軟化剤など)と接着剤の配合は、従来技術と同様である。
【0082】
さらに、接着技術的特性を最適化するために、本発明の自己接着剤に樹脂を添加混合してもよい。添加され得る粘着付与樹脂(接着力を増加させる樹脂)として、既知のおよび文献に記載されている接着樹脂が例外なく全て使用可能である。代表として、ピネン樹脂、インデン樹脂およびロジン樹脂、これらの不均化、水素添加、重合、エステル化誘導体および塩、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂およびテルペンフェノール樹脂、ならびに、C−〜C−および他の炭化水素樹脂が挙げられる。得られる接着剤の特性を要件に応じて調整するために、上記および他の樹脂の任意の組み合わせを使用してもよい。一般に、対応するベースポリマーと相溶性のある(可溶性の)全ての樹脂を使用することができ、特に、全ての脂肪族、芳香族、アルキル芳香族炭化水素樹脂、純粋なモノマーをベースにする炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、官能性炭化水素樹脂ならびに天然樹脂が挙げられる。
【0083】
本発明の自己接着剤は、電子装置の構成要素を接着するために使用することができる。これは、基本的に全ての構成要素、例えば、これに通常の全ての材料、特に、ポリマー類、ガラス、セラミックおよび金属からなるパッケージ部品、保護部品または表示窓(Sichtfenster)または電子回路部品であってもよい。重要な機能例として、コンデンサ電極の接着も挙げられ、この場合、本発明の自己接着剤は、電極の固定に加えて誘電体の役割も果たし、従って、発光物質を添加混合する必要がない。
【0084】
最も簡単な場合、即ち、自己接着剤の高い誘電率がベースポリマーの固有特性である場合、自己接着剤は、他の添加剤を有することなく、ベースポリマーのみからなってもよい。大部分の用途には最適でないが、この最も簡単なポリマーは、従って、対応する誘電率を有する固有感圧接着性ホモポリマーである。しかし、有利には、本発明の自己接着剤はエレクトロルミネッセンス材料の成分として使用され、それは、最も簡単な場合、自己接着剤と発光性粒子または非粒子状発光物質からなる。
【0085】
本発明の自己接着剤は、仮支持体もしくは永久支持体に塗布しても、または被着面に直接塗布してもよい。これには、当業者に既知の基本的に全ての方法、例えば、溶融液(例えば、予め濃縮した後)から、分散体から、または溶液からの塗工が適している。溶液から自己接着剤を塗布するために、自己接着剤を適した溶剤に溶解させる。このために、アセトン、ベンジン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロパノールまたはトルエンなどの従来使用されている溶剤の他に、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルグリコールアセテートおよびエチレングリコールモノアセテートなどの高沸点溶剤も有利である。溶剤を選択する場合、各基材に対するポリマー溶液の塗工性が良好であること、およびポリマーもしくはポリマー混合物との相溶性が良好であることが重要である。各塗工方法に応じて、固体含有量を変えることができる。
【0086】
従って、自己接着剤は、エレクトロルミネッセンス材料の成分として存在してもよい。エレクトロルミネッセンス材料とは、十分に高い電界強度の電界を印加すると、エレクトロルミネッセンスプロセスで生じる電磁線を放射するように構成された化学組成物を指す。従って、エレクトロルミネッセンス材料は、本発明の自己接着剤中に誘電性マトリックスとして埋め込まれているエレクトロルミネッセント中心を必ず有する。このエレクトロルミネッセンス添加物は、ここでは、例えば、エレクトロルミネッセンス材料中の粒子状発光物質であってもよい。そのためにエレクトロルミネッセンス材料に、特に、エレクトロルミネッセントフィラーおよび/または残光粒子が添加混合されていてもよい。
【0087】
発光物質は、例えば、重合するモノマー混合物に既に添加されても、重合過程で得られるベースポリマーに添加されても、または自己接着剤の混合時にようやく添加されてもよいが、これは、例えば、溶剤プロセスで、好ましくは、含水率のできるだけ低い溶剤を使用して行ってもよい。代替の方法では、発光物質はまた、熱溶融プロセス(ホットメルトプロセス)で、溶融した感圧接着剤に均質に混入されてもよい。このために、濃縮押出機(Aufkonzentrationsextruder)内に場合によっては溶融物中に存在し得る溶剤残留物を除去し、発光物質粒子を自己接着剤に、無溶剤または溶剤の少ない状態で添加する。
【0088】
エレクトロルミネッセンス材料中の発光物質の割合は、任意に適切に選択されてもよく、本発明の系では、通常1重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜75重量%、特に55重量%〜65重量%である。
【0089】
発光物質として、既知のおよび適した系を全て使用することができ、これらは、ケイ酸塩またはドープされたII/VI半導体(例えば、硫化亜鉛など)をベースにすることが多い。市販のエレクトロルミネッセンス顔料は、例えば、OSRAM SylvaniaからGlacierGLO(商標)の名称で、様々な色(例えば、青色、青緑色、緑色、橙色および白色)で入手可能である。場合によっては感湿性のこともあるエレクトロルミネッセンス蛍光物質粒子の長期安定性を改善するために、これらは、バンドギャップの大きい不活性物質の薄層で被覆されていてもよく、従って、カプセル化された粒子として、例えば、ドープされ酸化アルミニウムで被覆された平均粒径30μm〜40μmの範囲の硫化亜鉛粒子として存在してもよい。
【0090】
このようなエレクトロルミネッセンス材料は、光学表示装置および/または照明装置の構成要素、即ち、例えば、電子部品、パッケージ部品および表示窓等の接着に使用することができる。しかし、これらの可能な用途のうち、エレクトロルミネッセンス材料のエレクトロルミネッセント光源としての使用が重要な位置を占める。このような光源はエレクトロルミネッセンス装置、即ち、エレクトロルミネッセンスプロセスで光を発生させる装置に、例えば、ランプおよび他の電気照明装置に使用される。ここで、低輝度で、連続駆動で間接的な室内照明を可能にする大面積照明装置としての、例えば、発光壁紙(Leuchttapete)としての、または液晶ディスプレイ−画面のバックライトとしての用途を示すが、これはあくまでも例示に過ぎない。さらに、このような照明装置は、機能的用途にも、例えば、夜間照明または非常用照明として、照明される広告媒体として、室内設備の分野の装飾要素として、自己照明型表示板として、または、表示装置、例えば、モバイルディスプレイ、コンピュータモニタまたはテレビの能動発光型画素(aktiv leuchtende Bildpunkte)に使用される。
【0091】
エレクトロルミネッセンス装置は、通常、少なくとも2つの互いに離間した電極を有し、リード線がそれらとそれぞれ電導接続している。本発明によれば、電極間のスペースにエレクトロルミネッセンス材料が配置されている。電極に交番電界が印加されると、発光物質が励起され、このようにして高エネルギー状態に移行し、電磁放射線を放射して緩和が起こる。この場合、できるだけ高い照度(Beleuchtungsintensitaet)が得られるように、発光物質粒子の位置で電界勾配が特に高いことが必要である。放射された電磁放射線は、好ましくは、可視光の波長領域、紫外線スペクトルの領域、または赤外線の波長領域にある。本発明によれば、これらのエレクトロルミネッセンス装置を複数並べて配置すること、例えば、的確に制御可能なラスター(自由に選択可能なディスプレイ)の形態で、または固定された形態構造として配置することもできる。このようなエレクトロルミネッセンス装置に典型的な駆動電圧は、50kHz〜1kHzの周波数で20V〜約400Vの範囲であるが、これに限定されない。
【0092】
基本的に、エレクトロルミネッセンス装置は様々な構造を有することができる。電極とエレクトロルミネッセンス材料が少なくとも3層、即ち、下部電極、エレクトロルミネッセンス材料層および上部電極からなる層構造として存在する配置が実際に有効であることが分かった。
【0093】
電極は、全ての通常のおよび適した導電性材料から、例えば、金属(例えば、アルミニウム、銀、銅、または金など)から、導電性ポリマー類(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、例えば、Baytron(商標)))から、または導電性ポリマー混合物(例えば、グラファイトまたはカーボンブラック添加剤を有するポリマーなど)から、特に、導電性接着剤からなってもよい。この場合、上部電極(前面電極)が少なくとも実質的に透明に、例えば、酸化インジウム錫層(ITO層)として、アンチモンがドープされた二酸化錫層(ATO)として、フッ素がドープされた二酸化錫層(FTO)として、またはアルミニウムがドープされた酸化亜鉛層(AZO)として形成されていることが特に好都合である。これらの層は、例えば、光学的に透明な支持体、例えば、剛性のガラス支持体または可撓性のフィルム支持体上に存在してもよく、または、支持体のないコーティング、例えば、ナノ構造化粉末(例えば、酸化インジウム錫粉末からなるもの)として提供されてもよい。下部電極(背面電極)は、上部電極と同一であってもよく、または、これと異なり、例えば、金属箔、不織布またはメッシュからなってもよい。もちろん、電極としてこれらの材料の組み合わせを使用することも可能であり、そのため、例えば、酸化インジウム錫層を有機導電性ポリマーコーティング(例えば、PEDOTを含有するコーティング)と組み合わせて、上部電極としておよび/または下部電極として使用することもでき、それによって、さもなければ比較的脆性の酸化インジウム錫層の柔軟性を著しく高めることができる。電極の幾何学的形態は、具体的な使用目的に応じて選択される。
【0094】
前述の構成で、特に薄いエレクトロルミネッセンス装置、例えば、厚さが全体で100μm以下のものを製造することができる。50Vの駆動電圧で、エレクトロルミネッセンス材料層の厚さは、まず第1にエレクトロルミネッセンス装置の達成可能な輝度に関して重要であるではあるが、より高い駆動電圧で、例えば、230Vの交流電圧で、層が電圧破壊、従ってエレクトロルミネッセンス装置の不可逆的損傷を回避するのに十分な厚さを有することも必要である。また同様に、層厚が大きい場合、放射される放射線の波長で、エレクトロルミネッセンス材料ができるだけ小さい吸収および散乱を示すことも必要である。
【0095】
本発明によれば、自己接着剤とエレクトロルミネッセンス材料は両方とも、被着面に直接塗布しても、または自己接着性面状部材の構成要素として使用してもよい。本出願の範囲において面状部材と見なされるのは、特に、実質的に平面状の広がりを有する全ての通常のおよび適した形成物である。これらは接着を可能にし、その上、特に可撓性に、接着フィルム、接着テープ、接着ラベルとしてまたはダイカットシート(Formstanzling)として様々に形成されていてもよい。面状部材は、片面または両面が接着性になっていてもよく、その場合、永久支持体を有してもよく、または支持体なしで、例えば、転写接着テープとして形成されていてもよい。
【0096】
従って、特に簡単な面状部材の構成は、例えば、本発明の自己接着剤またはエレクトロルミネッセンス材料の支持体のない自己接着剤層からなっても、本発明の自己接着剤またはエレクトロルミネッセンス材料を有する片面自己接着性の永久支持体からなっても、または、両面自己接着性の支持体からなってもよく、この場合、2つの自己接着剤層の両方または少なくとも一方が本発明の自己接着剤またはエレクトロルミネッセンス材料を含有する。
【0097】
永久または仮支持体の機能がある、たいてい実質的に平面状のどのような構造要素も支持体(Traegers)と称される。支持体は、全ての適した支持体材料、例えば、プラスチックフィルム、テキスタイル面状部材(例えば、織物、レイドファブリック(Gelege)、編物および不織布)またはこのような材料の組み合わせを含むことができ、ここで、支持部材は、全面的に隙間なくまたはオープンワーク(durchbrochen)に形成されていてもよい。これに典型的な材料としては、例えば、BOPP(二軸配向ポリプロピレン)、MOPP(一軸配向ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PUR(ポリウレタン)、PE(ポリエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PE/EVA(ポリエチレン−エチレン酢酸ビニル共重合体)およびEPDM(エテン−プロピレン−ジエン三元共重合体)が挙げられる。永久支持体とは異なり、仮支持体は少なくとも一面が低粘着性になっている。仮支持体として、例えば、剥離紙、例えば、グラシン紙、クラフト紙またはポリオレフィン塗工紙も使用することができる。
【0098】
自己接着剤またはエレクトロルミネッセンス材料を有するこのような面状部材を製造するために、通常のおよび適した方法を全て使用することができる。従って、例えば、自己接着剤またはエレクトロルミネッセンス材料を溶融液から仮支持体または永久支持体上に、好ましくはロールコート法(Walzenverfahren)または押出法で、例えば、140℃で塗工押出機で塗工することが可能である。仮支持体に塗布する場合、その後、例えば、積層工程で自己接着剤を永久支持体と結合させてもよい。最後に、このようにして得られた材料層を電子線の作用により架橋することができる。
【0099】
接着剤層および任意の支持体に加えて、面状部材はさらに別の機能層も含むことができる。従って、本発明の面状部材は、複数の層からなる積層体、例えば、接着剤、プラスチック、セラミック、酸化インジウム錫および/または金属からなるものであってもよく、さらに他の機能層を有してもよい。
【実施例】
【0100】
他の利点および応用可能性は、例として選択された実施例から明らかになる。このために、比誘電率が4.5より大きいシアノアクリレートをベースにする本発明の感圧接着性ポリマー、および比較例として他の2つの感圧接着性ポリマー、即ち、シアノアクリレートをベースにするポリマーとシアノアクリレートを含まない比較ポリマーを製造した。
【0101】
比誘電率の測定は、可変の測定間隙を有する平板コンデンサで、23℃の温度で行ったが、その電極板の直径は60mmである。測定のため、均一な厚さの試料を誘電体としてその測定間隙に入れ、両方の電極板と全面的に隙間がないように接触させた。この場合に生じる電極板間の距離(理想的な場合、試験試料の厚さと同一でなければならない)は、ノギス(Messschiebers)で測定する。さらに、バックグラウンド測定(Blindmessung)を同一の電極間距離で行ったが、このために、試験物質を除去し、バックグラウンド測定時は既知の誘電率を有する誘電体として空気を使用した。測定およびバックグラウンド測定のため、1kHzの測定周波数の測定用構造の容量をLCR測定装置(型式:GWInstec LCR821)で測定した。試料材料の比誘電率は、測定された2つの静電容量を比較して求めた;計算は、例えば、規格ASTM D150に定められているように、従来の算出方法に従って行った。
【0102】
比誘電率が4.5より大きいシアノアクリレートをベースにする本発明の感圧接着性ポリマーを製造するために、容量2Lのガラス反応器に、アセトンとイソプロパノール(比率90:10)からなる溶媒混合物300gにおいて、アクリル酸3重量%、2−シアノアクリレート50重量%および2−エチルヘキシルアクリレート47重量%の混合物300gを仕込んだ。撹拌下に45分間窒素パージして反応溶液を脱気した後、これを58℃の温度に加熱し、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(DuPont社のVazo 67(商標))0.2gをラジカル開始剤(開始剤)として添加した。添加後、反応溶液を75℃の温度に加熱し、この温度で重合反応を実施した。反応開始1時間後に、反応混合物に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)をさらに0.2g添加した。反応開始4時間後に、反応混合物を溶媒混合物100gで希釈した。さらに4時間後に(即ち、反応開始8時間後に)、溶媒混合物をさらに100g添加した。反応混合物中に残存する残りのラジカル開始剤を減少させるために、反応開始8時間後と10時間後にそれぞれ、反応混合物にビス−(4−tert−ブチルシクロヘキサニル)−ペルオキシ−ジカルボネート(Akzo Nobel社のPerkadox 16(商標))0.6gを添加した。反応開始24時間後に、反応混合物を室温(23℃)に冷却することにより重合反応を停止させた。このようにして得られたポリマーから接着剤を製造するために、反応生成物をアセトン中3%のアルミニウム(III)アセチルアセトネートの溶液(ポリマーの質量に基づいて0.3重量%)と混合した。このようにして得られたポリマーの比誘電率は6.1であった。
【0103】
比誘電率が4.5未満のシアノアクリレートをベースにする感圧接着性ポリマーの製造も、同様にこれらの方法に従って行った。仕込まれる混合物として、ここでは、アクリル酸3重量%と2−エチルヘキシルアクリレート87重量%の混合物300gを使用したが、溶剤は、アセトン、ソルベントナフサ(Siedegrenzbenzin)60.95およびイソプロパノール(比率47:50:3)からなる溶剤混合物200gからなった。このようにして得られたポリマーの比誘電率は4.0であった。
【0104】
シアノアクリレートを含まない感圧接着性比較ポリマーの製造も同様にこの方法に従って行った。仕込まれる混合物として、ここでは、アクリル酸5重量%、メチルアクリレート20重量%、および2−エチルヘキシルアクリレート75重量%の混合物400gを使用したが、溶剤は、アセトン、ソルベントナフサ60.95およびイソプロパノール(比率47:50:3)からなる溶剤混合物266gからなった。このようにして得られたポリマーの比誘電率は3.0であった。
【0105】
3種類のポリマーをそれぞれ溶液中で粒子状発光物質(Osram Glacier GLO43HighBrite)と混合したが、この場合、溶解されるポリマーの質量を基準にして発光物質をそれぞれ1:1の質量比で使用した。このようにして得られ、溶解させたエレクトロルミネッセンス材料を、それぞれコーター(Streichbalken)で各支持体上に下部電極として塗布した。支持体として、片面が薄い導電性アルミニウム層で被覆されている厚さ200μmのポリエステルフィルムを使用した。ポリマーを溶液から支持体の薄い導電性銀層上に塗布し、120℃の乾燥器中で乾燥させた。乾燥後、3層は全て同じ50μmの層厚を有した。
【0106】
最後に、自己接着剤の露出面に、透明ポリエステルフィルムを透明電極として積層したが、それは、アセンブリ(Verbund)中で自己接着剤に接触する面に導電性酸化インジウム錫層を有した。下部電極と透明電極の組立は、各電極の一面がアセンブリ上に露出するように行った。電極の露出部にクランプコネクター(Klemmverbindern)でリード線を固定し、これを電流/電源に接続した。
【0107】
各エレクトロルミネッセンス装置の2つの電極に、100V(400Hz)の交流電圧を印加し、エレクトロルミネッセンスの強度を定量的に評価した。シアノアクリレートを含まない感圧接着性比較ポリマーを有するエレクトロルミネッセンス装置で観察されたエレクトロルミネッセンスと、シアノアクリレートをベースにする本発明ではない感圧接着性ポリマーを有するエレクトロルミネッセンス装置で観察されたエレクトロルミネッセンスは、この場合、ほぼ同じ強度を有した。それと対照的に、本発明の感圧接着性ポリマーを有するエレクトロルミネッセンス装置は、それより著しく高い強度を有した。さらに、本発明のエレクトロルミネッセンス装置では、長期測定で、エレクトロルミネッセンスの強度の経時的減少が、他の2つの装置の場合と比較して著しく小さいことが確認された。
【0108】
定性的実験から、本発明の感圧接着性ポリマーはエレクトロルミネッセンス装置の製造に非常に適していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.5より大きい比誘電率を有する自己接着性ポリマー。
【請求項2】
前記ポリマーがモノマー混合物からなるポリマーであり、該モノマー混合物が、シアノ基およびニトロ基を含む群からの少なくとも1つの官能基をそれぞれ有する少なくとも45重量%の割合の(メタ)アクリル酸誘導体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の自己接着性ポリマー。
【請求項3】
少なくとも1つのシアノ基および/またはニトロ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体が、ポリマー中に90重量%以下の割合で、好ましくは50重量%〜60重量%の割合で存在することを特徴とする、請求項2に記載の自己接着性ポリマー。
【請求項4】
少なくとも1つのシアノ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体が、シアノメチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノメチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、ならびに、O−(ペル)シアノエチル化糖類を有する(メタ)アクリル酸誘導体を含む群から選択されることを特徴とする、請求項2または3に記載の自己接着性ポリマー。
【請求項5】
一般式CH=CR−COOR(式中、RはHおよびCHを含む群から選択され、Rは1〜20個の炭素原子を有する置換および非置換アルキル鎖を含む群から選択される)の置換および/または非置換(メタ)アクリル酸エステルをさらに含むモノマー混合物からなるポリマーであることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の自己接着性ポリマー。
【請求項6】
官能基を有するオレフィン性不飽和モノマーをさらに有するモノマー混合物からなるポリマーであることを特徴とする、請求項6に記載の自己接着性ポリマー。
【請求項7】
4.5より大きい比誘電率を有する自己接着剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の自己接着性ポリマーを含む、請求項7に記載の自己接着剤。
【請求項9】
前記自己接着剤が25未満の比誘電率を有することを特徴とする、請求項7または8に記載の自己接着剤。
【請求項10】
電子装置の構成要素の接着のための請求項7〜9のいずれか一項に記載の自己接着剤の使用。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の自己接着剤を有する自己接着性面状部材(Flaechenelement)。
【請求項12】
粒子状発光物質および請求項7〜9のいずれか一項に記載の自己接着剤を含む、自己接着性エレクトロルミネッセンス材料(Elektrolumineszenzmasse)。
【請求項13】
前記粒子状発光物質が、前記エレクトロルミネッセンス材料において、1重量%〜90重量%、好ましくは40重量%〜75重量%、特に55重量%〜65重量%の割合で存在することを特徴とする、請求項12に記載のエレクトロルミネッセンス材料。
【請求項14】
前記粒子状発光物質が、カプセル化された硫化亜鉛をベースとする発光物質であることを特徴とする、請求項12または13に記載のエレクトロルミネッセンス材料。
【請求項15】
光学表示装置および/または照明装置の構成要素の接着のための、請求項12〜14のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス材料の使用。
【請求項16】
請求項12〜14のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス材料を有する自己接着性面状部材。
【請求項17】
少なくとも実質的に透明な第1の電極、第2の電極および請求項12〜14のいずれか一項に記載のエレクトロルミネッセンス材料を含む、エレクトロルミネッセンス装置。

【公表番号】特表2012−512265(P2012−512265A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540028(P2011−540028)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066380
【国際公開番号】WO2010/072542
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】