説明

エレベータの制御装置

【課題】 戸閉側の行先釦でかご呼びを登録して戸閉中に、異常を感じた時でも容易に戸を反転できるようにしたエレベータの制御装置を得る。
【解決手段】 かご3の2方にそれぞれかごの戸5F、5Rにより開閉する出入口を設けると共に、かご内に出入口に対応して、行先釦1BF、1BR、2BF、2BRが配置されたかご内操作盤7F、7Rがそれぞれ設けられたエレベータにおいて、出入口の1方のかごの戸が開いている時、出入口の他方に対応するかご内操作盤の行先釦でかご呼びを登録できるようにし、かつ、かごの戸が閉まり始めた時、かご内操作盤の全ての行先釦のランプを点灯或いは点滅させるとともに、行先釦に戸開釦機能を持たせたかご内操作盤制御装置22を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かごの2方に出入口を有するエレベータのかご戸を開閉制御するエレベータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、ビルの構造上の必要性及びビル内外からエレベータを使用したいという要請に基づいて、特に荷物用エレベータでは、一つのかごの2方にそれぞれかご戸により開閉される出入口を設けたものが多数設置されている。図1の右側は、従来のかごの2方に出入口を有するエレベータの全体構成を示す構成図である。
図において、1AF、1ARは1階の前側及び後側乗場戸で、図の左側を前側、右側を後側とし、前側に属するものには符号末尾にFを符し、後側に属するものには符号末尾にRを符している(以下同じ)。3はかごで、前側及び後側に出入口を有し、それぞれ前側かご戸5F及び後側かご戸5Rを有しており、前側及び後側出入口に対応して前側及び後側かご内操作盤7F、7Rが設置されている。9F、9Rは前側及び後側のドア装置、11F、11Rは1階の前側及び後側の乗場釦である。
【0003】
従来のかごの2方に出入口を有するエレベータは上記のように構成され、1階の前側乗場釦11Fの呼び釦1NFを押すことにより、前側の1階の乗場呼びが登録される。かご3がこの乗場呼びに応答して1階に到着すると、前側乗場戸1AF及び前側かご戸5F(以下、前側かご戸5Fという)が開くと、荷扱者はかご3内に荷物を搬入する。そして荷扱者が前側かご内操作盤7Fの行先釦2BFを押すと、2階前側のかご呼びが登録され、前側かご戸5Fは戸閉を開始する。
この時、後側かご内操作盤7Rの行先釦2BRは、前側かご戸5Fから離れているので機能しないようにしている。なお、荷物用エレベータでは、最初にかご3を呼び寄せた荷扱者が専用運転できる単式自動運転方式が一般的に採用されているため、戸閉動作は基本的に荷扱者が行先釦を押すまで開始されない。
ところで、2方出入口の戸閉側の行先釦は機能しないようにしているため、荷扱者が荷物を引張ってかご3内に搬入したときなど、荷扱者は戸開きしている側に行って行先釦を操作しなければならず、効率が悪くなる。また、不慣れな荷扱者は、戸閉側の行先釦を押した場合、かご呼びが登録できないので不安感を与える等の問題がある。
そこで、従来技術として、2方出入口の一方のかご戸が開いている時、荷扱者が戸閉側の行先釦を操作すると行先階を登録するようにしたため、戸開側の出入口に戻って行先階を登録し直す必要が無い戸閉指令手段を設けた装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−17248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の装置においては、例えばかご戸が開いている時、荷扱者が戸閉側の行先釦を操作し行先階を登録すると戸閉指令手段により戸閉前に警報を発し、その後通常より戸閉速度を遅くして戸を閉めるようにしている。
しかし、戸閉中にエレベータの戸を反転させるための配慮がされておらず、例えば、工場に設置されているエレベータは、周りの騒音が大きい時に戸閉時の警報が聞こえない事が有り作業者が戸に近づいて来た場合や、作業者が異常を感じて大声で荷扱者に対して戸を開く指示をした時などの緊急時に不慣れな荷扱者は、かご内操作盤の開釦の操作に手間どり、戸の反転が遅れ、作業者が戸に当たったり又は荷物が戸に当たるという問題があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、戸閉側の行先釦でかご呼びを登録して戸閉中に、異常を感じた時でも容易に戸を反転させるようにしたエレベータの制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータの制御装置は、かごの2方にそれぞれかごの戸により開閉する出入口を設けると共に、かご内に出入口に対応して、行先釦が配置されたかご内操作盤がそれぞれ設けられたエレベータにおいて、出入口の1方のかごの戸が開いている時、出入口の他方に対応するかご内操作盤の行先釦でかご呼びを登録できるようにし、かつ、かごの戸が閉まり始めた時、かご内操作盤の全ての行先釦のランプを点灯或いは点滅させるとともに、行先釦に戸開釦機能を持たせたかご内操作盤制御装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は以上説明したように、2方の出入口の一方のかごの戸が開いている時、出入口の他方に対応する行先階釦でかご呼びを登録し、かごの戸が閉まり始めた時、戸の近辺で作業をしている作業者又は荷物が扉に当たりそうになった時でも、かご内のどれかの釦を押せば戸が反転するようにしたので、安全にエレベータを使用することが出来る効果がある。また、かご内操作盤の行先釦の点灯或いは点滅している釦を操作するだけでドア制御装置にドア開放指令を発し扉を反転するようにしたので、荷扱者が戸閉中に異変を感じた時でもすぐに行先釦を操作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の全体構成を示すシステム構成図である。
図1において、1AF、2AFは1階及び2階の前側乗場戸、1AR、2ARは同じく後側乗場戸であり、図の左側を前側、右側を後側とし、以下前側に属するものは符号末尾にFを符し、後側に属するものは符号末尾にRを符している。3は主索4によって昇降するエレベータのかごであり、前側及び後側にそれぞれ出入口を有し、各々前側かごの戸5F及び後側かごの戸5Rを有している。6F、6Rはそれぞれ前側及び後側かごの戸5F、5Rに設けられた戸安全スイッチであり、荷扱者や荷物が接触すると反転開放するものである。7F、7Rはそれぞれかご3内に設けられた前側及び後側のかご内操作盤であり、それぞれ1階及び2階の行先釦1BF、2BF、1BR、2BRと戸開釦8F、8Rが配置されている。9F、9Rは前側及び後側のドア装置である。11F、12Fは1階及び2階の前側の乗場釦であり、乗場呼び釦1NF、2NFと、乗場戸閉め釦1DF、2DFとが配置されている。11R、12Rは1階及び2階の後側の乗場釦であり、乗場呼び釦1NR、2NRと、乗場戸閉め釦1DR、2DRとが配置されている。
21はマイクロコンピュータ等で構成されたエレベータ制御装置であり、荷扱者がかご3内に荷物を搬入後、戸閉側に位置するかご操作盤の行先釦が操作されたことを検出するかご内操作盤の行先釦登録検出手段21A、かご内操作盤制御指令手段21B、及びかごの戸を開閉させるためのドア制御指令手段21A等を含む構成となっている。22はかご内操作盤の釦の信号を処理しエレベータ制御装置21と信号の授受を行うかご内操作盤制御装置である。
【0010】
次に、この実施の形態1の動作について説明する。
戸開中に荷扱者が戸閉側のかご内操作盤の行先釦でかご呼びを登録すると、戸が閉まる前に音声で戸が閉まることを知らせて警告し、ドア速度を通常の速度より遅く、例えば通常の約半分の速度として戸を閉め始める。これら一連の動作がエレベータ制御装置21内において行われ、かご内操作盤の行先階登録検出手段21Aに入力される。これにより、かご内操作盤7F、7Rの全ての行先釦のランプが点灯或いは点滅するようにかご内操作盤制御指令手段21Bに指令が出される。この指令を受けてかご内操作盤制御装置22ではかご内操作盤の全ての行先釦のランプを点灯或いは点滅させる信号を出力するとともに、全ての行先釦に戸開機能を持たせるものである。
一方ドア制御においては、ドア制御指令手段21Cに閉じ指令が送られドア制御装置9F或いは9Rが駆動する。戸閉中に荷扱者が異常を感じて戸を反転させたい場合においても容易に、かご内操作盤の行先釦1BF、2BF、1BR、2BRを操作することが出来る。例えば、戸閉中にかご内操作盤の行先釦1BFが押されると、この入力信号をかご内操作盤制御装置22が処理し、エレベータ制御装置21に送られる。これにより、ドア制御指令手段21Cに開放指令が送られ、ドア制御装置9F或いは9Rが駆動され戸が反転開放される。
【0011】
次に、ドア制御装置9F或いは9Rにドア開放指令を発する設定手順について図2により説明する。
1階の前側の乗場から、かご3内に荷物を搬入した荷扱者が、後側のかご操作盤7Rで行先階を登録する場合について説明する。
まず、ステップS1で1階の前側が戸開中の時に反対側のかご内操作盤7Rの行先釦2BFを押すと、2階前側の行先階を登録する。次に、ステップS2で戸が通常より遅い速度で閉まり始める。ステップS3でかご内操作盤の全ての行先釦が点灯或いは点滅するとともに、開釦機能を持つことになる。ステップS4でかご内操作盤の行先釦を押したか否かを判定し、かご内操作盤の行先釦がいずれかが押された場合はステップS5に進み、戸は反転開放する。ステップS4でかご内操作盤のいずれの行先釦も押されていないと判断すると、ステップS6に進み、戸閉完了したかを判断し、戸閉完了前であればステップS4へ戻る。ステップS6で戸閉完了すると、ステップS7でかご内操作盤の行先釦ランプを消灯し、行先釦が開釦機能から本来の行先釦機能に復帰する。その後、ステップS8で行先階である2階前側に向かって走行する。
【0012】
なお、上記実施の形態1は、1階から2階への運転の場合について記載したが、2階から1階への運転についても同様に説明することができる。また、3階以上のエレベータにも適用が可能である。
更に荷扱者が前側乗場からかご3に乗り込むものとしたが、後側からかご3に乗り込む場合も同様であることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベータの制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0014】
1AF、1AR 1階前側、後側の乗場の戸
2AF、2AR 2階前側、後側の乗場の戸
3 かご
4 主索
5F、5R 前側、後側のかごの戸
6F、6R 前側、後側の戸安全装置
7F、7R 前側、後側のかご内操作盤
8F、8R 前側、後側のかご内操作盤の戸開釦
1BF、2BF 1、2階の前側のかご内操作盤の行先釦
1BR、2BR1、2階の後側のかご内操作盤の行先釦
9F、9R 前側、後側のドア装置
11F、11R 1階前側、後側の乗場釦
1NF、1NR 1階前側、後側の乗場釦の呼び釦
1DF、1DR 1階前側、後側の乗場釦の戸閉釦
12F、12R 2階前側、後側の乗場釦
2NF、2NR 2階前側、後側の乗場釦の呼び釦
2DF、2DR 2階前側、後側の乗場釦の戸閉釦
21 エレベータ制御装置
21A かご内操作盤行先釦登録検出手段
21B かご内操作盤制御指令手段
21C ドア制御指令手段
22 かご内操作盤制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごの2方にそれぞれかごの戸により開閉する出入口を設けると共に、かご内に前記出入口に対応して、行先釦が配置されたかご内操作盤がそれぞれ設けられたエレベータにおいて、
前記出入口の1方のかごの戸が開いている時、前記出入口の他方に対応するかご内操作盤の行先釦でかご呼びを登録できるようにし、かつ、かごの戸が閉まり始めた時、かご内操作盤の全ての行先釦のランプを点灯或いは点滅させるとともに、前記行先釦に戸開釦機能を持たせたかご内操作盤制御装置を備えたことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
かごの戸が閉まり始めた時、ドア速度を通常の速度より遅くしたことを特徴とする請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
かごの戸が閉まり始める前に、音声で戸が閉まることを知らせることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−8277(P2006−8277A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184826(P2004−184826)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】