説明

エレベータシステム

【課題】手動で戸閉操作を行なうための戸閉押釦がオン故障しているときに、乗客が乗りかごに乗降する際に乗りかご扉に挟まれないようにすることを可能とするエレベータシステムを提供することである。
【解決手段】エレベータシステム10において、着床した際に乗りかご扉6を一旦開いた後、所定の時間が経過してから自動的に乗りかご扉6を閉じる自動戸開閉部と、乗りかご扉6が開いているときに押されると、自動戸開閉部による閉動作とは別に乗りかご扉の閉動作を促進させる手動戸閉押釦部と、手動戸閉押釦部がオン故障しているか否かを判断する故障判断部と、手動戸閉押釦部がオン故障しているときに、乗客4が乗りかご扉6に挟まれないように乗りかご扉6の閉動作を促進させる機能を変更する設定変更部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムに係り、特に、着床した際に乗りかご扉を一旦開いた後、所定の時間が経過してから自動的に乗りかご扉を閉じる自動戸開閉制御機能を備えるエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商業施設等の様々な場所において、エレベータシステムが設置されている。エレベータシステムには、着床した際に乗りかご扉を一旦開いた後、所定の時間が経過してから自動的に乗りかご扉を閉じる自動戸開閉制御機能が設けられている。さらに、乗りかご扉が開いているときに押されると、自動戸開閉制御機能による閉動作とは別に乗りかご扉の閉動作を促進させるための押釦である戸閉押釦も併せて設けられており、乗客の手動による戸閉促進操作を可能としている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、エレベータの救出運転装置として、異常発生に応じてエレベータが停止したとき、エレベータ制御装置内の第1の記憶部に記憶される故障判別内容を消去することにより救出運転を可能とする構成が開示されている。そして、エレベータの異常発生時に、上記故障判別内容を上記第1の記憶部から読み出し第2の記憶部に記憶させる故障判別内容収集部と、上記故障判別内容から救出運転が可能か否かを分析する故障判別内容分析部を備える構成が開示されている。さらに、この故障判別内容分析部の分析結果に基づき、上記第1の記憶部に記憶した上記故障判別内容を消去して上記エレベータの救出運転を行なう救出運転信号を上記エレベータ制御装置に出力する故障判別内容消去部と、上記救出運転終了後に上記エレベータを休止させる休止信号を上記エレベータ制御装置に出力する休止信号出力部とを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−100077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乗客が戸閉押釦を押すことで乗りかご扉の閉動作を行えると便利であるが、当該戸閉押釦が長年にわたって使用されると、押釦が押されっぱなしで元の位置に戻らない状態である、いわゆるオン故障となることがある。そして、このようなオン故障となった状態のままで乗りかごが行先階で着床すると、自動戸開閉制御機能によって乗りかご扉が一旦開いた場合にも、当該オン故障により、すぐに乗りかご扉の戸閉動作が促進されることとなる。このため、乗客が乗りかごに乗降する際に乗りかご扉に挟まれてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、手動で戸閉操作を行なうための戸閉押釦がオン故障しているときに、乗客が乗りかごに乗降する際に乗りかご扉に挟まれないようにすることを可能とするエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータシステムは、着床した際に乗りかご扉を一旦開いた後、所定の時間が経過してから自動的に乗りかご扉を閉じる自動戸開閉部と、乗りかご扉が開いているときに押されると、自動戸開閉部による閉動作とは別に乗りかご扉の閉動作を促進させる手動戸閉押釦部と、手動戸閉押釦部がオン故障しているか否かを判断する故障判断部と、手動戸閉押釦部がオン故障しているときに、乗客が乗りかご扉に挟まれないように乗りかご扉の閉動作を促進させる機能を変更する設定変更部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、設定変更部は、手動戸閉押釦部がオン故障しているときに、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能を無効とする無効処理部であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能を無効にした後、手動戸閉押釦部がオン故障から復旧しているか否かを判断する復旧判断部と、手動戸閉押釦部がオン故障から復旧しているときに、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能の無効を解除する無効解除処理部と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、無効処理部によって、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能を無効としたことを監視センタに通知するための情報を送信する無効設定情報送信部を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、無効解除処理部によって、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能の無効を解除したことを監視センタに通知するための情報を送信する無効解除情報送信部を備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、設定変更部は、手動戸閉押釦部がオン故障しているときに、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能において乗りかご扉の閉動作の速度を抑制させる速度抑制処理部であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、乗りかご扉の閉動作の速度を抑制させた後、手動戸閉押釦部がオン故障から復旧しているか否かを判断する復旧判断部と、手動戸閉押釦部がオン故障から復旧しているときに、乗りかご扉の閉動作の速度の抑制を解除する速度抑制解除処理部と、を備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、速度抑制処理部によって、乗りかご扉の閉動作の速度を抑制させたことを監視センタに通知するための情報を送信する速度抑制情報送信部を備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るエレベータシステムにおいて、速度抑制解除処理部によって、乗りかご扉の閉動作の速度の抑制を解除したことを監視センタに通知するための情報を送信する速度抑制解除情報送信部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成のエレベータシステムは故障判断部と設定変更部を備えているため、戸閉押釦がオン故障しているときであっても、乗客が乗りかごに乗降する際に乗りかご扉に挟まれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態の第1実施例であるエレベータシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の第1実施例であるエレベータシステムのエレベータ制御部の各構成図と、エレベータ制御部がネットワークを介して監視センタに接続されている様子を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の第1実施例であるエレベータシステムにおいて、戸閉押釦がオン故障した際に、乗客が乗りかごに乗降する際に乗りかご扉に挟まれないようにする手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る実施の形態の第2実施例であるエレベータシステムのエレベータ制御部の各構成図と、エレベータ制御部がネットワークを介して監視センタに接続されている様子を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の第2実施例であるエレベータシステムにおいて、戸閉押釦がオン故障した際に、乗客が乗りかごに乗降する際に乗りかご扉に挟まれないようにする手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0019】
図1は、本発明に係る実施の形態の第1実施例であるエレベータシステム10の構成を示す図である。エレベータシステム10は、巻上機14を中心として、巻上機14のシーブに巻き架けられた主ロープ7のうちの一方端には乗りかご2が取り付けられ、他方端にはカウンタウエイト16が取り付けられている。そして、エレベータシステム10のシステム全体の制御は、エレベータ制御部22によって行われている。ここで、巻上機14とエレベータ制御部22とが昇降路9の上方に位置するいわゆる機械室20に設置されている。
【0020】
カウンタウエイト16は、釣合い錘とも呼ばれ、いわゆるつるべ式エレベータシステムで用いられる錘である。カウンタウエイト16は、全体の形状は扁平で縦に長く、非常に重い鉄の塊であり、主ロープ7の一方端に接続されている乗りかご2との間でバランスを取っている。
【0021】
巻上機14は、主ロープ7の折り返し中間地点に設置され、電動機(モータ)と、それに連結された滑車(シーブ)に掛かる摩擦力によって、乗りかご2とカウンタウエイト16を昇降(上昇下降)させる機能を有する。この方法によって乗りかご2の昇降を行うと、主ロープ7の両端の重量バランスが良いので、比較的小さい力で主ロープ7に吊るされた乗りかご2を昇降させることができる。
【0022】
乗りかご2は、昇降路9内を昇降し、行先階設定釦部83によって設定された行先階まで乗客4を移動させるための箱型の構造物であって、乗りかご操作盤8と、乗りかご扉6とを含んで構成される。
【0023】
乗りかご扉6は、乗りかご2が乗客4によって設定された行先階に着床したときに開閉する両開き、あるいは、片開き扉である。乗りかご扉6は、エレベータ制御部22の自動戸開閉制御機能(後述するエレベータ制御部22の自動戸開閉処理部による制御)によって開閉され、乗りかご2が着床した際に一旦開かれた後、所定の時間(例えば、10秒)が経過してから自動的に閉じられる。この開閉動作により、乗客4がスムーズに乗りかご2に乗降することができる。
【0024】
乗りかご操作盤8は、表示パネル84と、行先階設定釦部83と、開閉操作釦部86と、を含んで構成される。表示パネル84は、乗りかご2が移動しているときに、乗りかご2が現在位置している階床を表示する機能を有する。
【0025】
行先階設定釦部83は、乗客4が乗りかご2の行先階を設定するための押釦であり、1階設定押釦83aと、2階設定押釦83bと、3階設定押釦83cとを含んで構成される。
【0026】
1階設定押釦83aは、乗りかご2の行先階を1階に設定するための押釦である。2階設定押釦83bは、乗りかご2の行先階を2階に設定するための押釦である。3階設定押釦83cは、乗りかご2の行先階を3階に設定するための押釦である。
【0027】
開閉操作釦部86は、エレベータ制御部22の自動戸開閉制御機能とは別に、乗客4が手動で乗りかご扉6を開閉操作するための押釦であり、戸開押釦86aと、戸閉押釦86bとを含んで構成される。
【0028】
戸開押釦86aは、エレベータ制御部22の自動戸開閉制御機能とは別に、乗りかご扉6を手動操作で開くための押釦であり、乗りかご2が着床している際に押されると、強制的に乗りかご扉6を開くようにエレベータ制御部22に対して戸開信号を送信する機能を有する。戸開押釦86aは、乗客4が手で操作しやすい高さ位置に取り付けられている。
【0029】
戸閉押釦86bは、エレベータ制御部22の自動戸開閉制御機能とは別に、乗りかご扉6を手動操作で閉じるための押釦であり、乗りかご2が着床している際に押されると、強制的に乗りかご扉6を閉じるようにエレベータ制御部22に対して戸閉信号を送信する機能を有する。戸閉押釦86bは、乗客4が手で操作しやすい高さ位置に取り付けられている。
【0030】
エレベータ制御部22は、エレベータシステム10全般を制御する機能を有する。図2は、エレベータ制御部22の各構成図と、エレベータ制御部22がネットワーク26を介して監視センタ28に接続されている様子を示す図である。エレベータ制御部22は、昇降処理部222と、自動戸開閉処理部224と、手動戸開閉処理部226と、故障判断処理部228と、無効処理部230と、復旧判断処理部232と、無効解除処理部234と、無効設定情報送信処理部236と、無効解除情報送信処理部238とを含んで構成される。ネットワーク26は無線ネットワークであるものとして説明するが、もちろん有線ネットワークであってもよい。監視センタ28はネットワーク26を介して接続されているエレベータシステムの情報を集中管理しているセンタである。
【0031】
昇降処理部222は、乗りかご2を行先階設定釦部83によって設定された行先階に昇降させるように巻上機14を制御する機能を有する。また、昇降処理部222は、図示しない乗場のかご呼釦によって呼びが登録されたときも、当該呼び登録された階床(行先階)まで乗りかご2を昇降させるように巻上機14を制御する機能を有する。
【0032】
自動戸開閉処理部224は、乗りかご2が行先階に着床したときに、乗りかご扉6を一旦開くように開作動制御し、その後所定の時間(例えば、10秒)が経過してから自動的に乗りかご扉6を閉じるように閉作動制御をする機能(自動戸開閉制御機能)を有する。
【0033】
手動戸開閉処理部226は、自動戸開閉処理部224の自動戸開閉制御機能とは別に、戸開押釦86aと戸閉押釦86bからの信号に基づいて、乗りかご扉6の開閉作動制御を行う機能を有する。より具体的には、手動戸開閉処理部226は、乗りかご2が行先階に着床したときに、戸開押釦86aが押された場合に戸開押釦86aから送信される戸開信号を受信して、乗りかご扉6を開作動制御する手動戸開機能を有する。さらに、手動戸開閉処理部226は、乗りかご2が行先階に着床したときに、戸閉押釦86bが押された場合に戸閉押釦86bから送信される戸閉信号を受信して、乗りかご扉6を閉作動制御する手動戸閉機能を有する。
【0034】
故障判断処理部228は、戸閉押釦86bが押されたままの状態である、いわゆるオン故障であるか否かを判断する機能を有する。具体的には、故障判断処理部228は、予め定められた所定の故障判定時間(例えば、10秒間)を超える時間押されたままの状態(オン状態)であるときに、オン故障であると判断する。このように判断できる理由としては、乗客4が手動で乗りかご扉6を閉じるために戸閉押釦86bを押すときには、1秒未満程度のごく短い時間しか押釦を押していないことが通常だからである。したがって、故障判定時間は、乗客4が戸閉押釦86bを押し続ける時間よりも十分に長い時間に設定することでオン故障を判定することができる。なお、オン故障が起こる原因の一つとして、長年にわたって戸閉押釦86bを使用にすることにより、押釦を押した際にひっかかって戻らない状態となっていることが考えられる。
【0035】
無効処理部230は、故障判断処理部228によって戸閉押釦86bがオン故障であると判断されたときに、手動戸開閉処理部226の2つの機能のうち、手動戸閉機能を無効とする機能を有する。
【0036】
復旧判断処理部232は、無効処理部230によって手動戸閉機能を無効にした後に、戸閉押釦86bがオン故障から復旧しているか否かを判断する機能を有する。具体的には、復旧判断処理部232は、予め定められた所定の復旧判定時間(例えば、10秒間)を超える時間押されていないままの状態(オフ状態)であるときに、オン故障から復旧したものと判断する。このように復旧する可能性があるのは、上述したように、長期間の戸閉押釦86bの使用により、押釦を押した際にひっかかって戻らない状態となってオン故障となった場合であっても、その後に乗客4が戸閉押釦86bを押すことによってひっかかりがなくなりオン故障から復旧することがあるためである。
【0037】
無効解除処理部234は、戸閉押釦86bがオン故障から復旧していると判断されたときに、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能の無効を解除する機能を有する。
【0038】
無効設定情報送信処理部236は、無効処理部230によって、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能を無効としたことをネットワーク26を介して監視センタ28に通知するための情報を送信する機能を有する。具体的には、監視センタ28において、保守作業員が手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能を無効としたことを容易に把握できるようにするために「○○ビルのエレベータシステムにおいて、△号機の乗りかご扉の手動戸閉機能を無効としました」といったメッセージを送信する。
【0039】
無効解除情報送信処理部238は、無効解除処理部234によって、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能の無効を解除としたことをネットワーク26を介して監視センタ28に通知するための情報を送信する機能を有する。具体的には、監視センタ28において保守作業員が手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能の無効を解除としたことを容易に把握できるようにするために「○○ビルのエレベータシステムにおいて、△号機の乗りかご扉の手動戸閉機能の無効を解除しました」といったメッセージを送信する。
【0040】
上記構成のエレベータシステム10の動作について図1〜図3を用いて説明する。図3は、エレベータシステム10において、戸閉押釦86bがオン故障した際に、乗客4が乗りかご2に乗降する際に乗りかご扉6に挟まれないようにする手順を示すフローチャートである。エレベータ制御部22において、図示しない記憶部に記録されている挟まれ防止制御プログラムが実行されると、まず、戸閉押釦86bがオン故障であるか否かを判断する(S10)。この工程は、エレベータ制御部22の故障判断処理部228の機能によって実行される。戸閉押釦86bがオン故障でないと判断されると再びS10へと戻る。
【0041】
S10において、戸閉押釦86bがオン故障であると判断されると、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能を無効とする(S12)。この工程は、エレベータ制御部22の無効処理部230の機能によって実行される。このように、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能を無効とすることで、戸閉押釦86bのオン故障によって乗りかご扉6の閉動作が促進されることがないため、乗りかご2が着床した際に乗りかご扉6が一旦開いた後にすぐに閉じられることはない。これにより、戸閉押釦86bがオン故障であっても、乗客4が乗りかご2に乗降する際に乗りかご扉6に挟まれることを防止することができる。
【0042】
S12の次工程として、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能を無効とした無効設定情報をネットワーク26を介して監視センタ28に送信する(S14)。この工程は、エレベータ制御部22の無効設定情報送信処理部236の機能によって実行される。このように、無効設定情報、例えば「○○ビルのエレベータシステムにおいて、△号機の乗りかご扉の手動戸閉機能を無効としました」といった情報を送信することにより、監視センタ28において保守作業員の保守作業スケジュールを立てるときの有効な情報とすることができる。
【0043】
次に、戸閉押釦86bがオン故障から復旧しているか否かを判断する(S16)。この工程は、エレベータ制御部22の復旧判断処理部232の機能によって実行される。戸閉押釦86bがオン故障から復旧していないと判断すると再びS16へと戻る。
【0044】
S16において、戸閉押釦86bがオン故障から復旧していると判断すると、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能の無効を解除する(S18)。この工程は、エレベータ制御部22の無効解除処理部234の機能によって実行される。これにより、戸閉押釦86bがオン故障から復旧しているにもかかわらずに、乗客4が戸閉押釦86bを用いて手動によって乗りかご扉6の閉制御をできないという不便が解消する。
【0045】
S18の次工程として、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能の無効を解除した無効解除情報をネットワーク26を介して監視センタ28に送信する(S20)。この工程は、エレベータ制御部22の無効解除情報送信処理部238の機能によって実行される。このように、無効解除情報、例えば「○○ビルのエレベータシステムにおいて、△号機の乗りかご扉の手動戸閉機能の無効を解除しました」といった情報を送信することにより、保守作業員がわざわざ現場に行くことなく、乗りかご扉6の開閉動作を通常の状態(戸閉押釦86bがオン故障となっていない状態)へと復旧させることができるため、作業効率の向上となる。S20の後は、リターン処理へと進む。
【0046】
このように、エレベータシステム10の構成によれば、戸閉押釦86bがオン故障しているときであっても、乗客4が乗りかご2に乗降する際に乗りかご扉6に挟まれないようにすることができる。
【0047】
次に、本発明に係る実施の形態の第2実施例であるエレベータシステム11について説明する。エレベータシステム11とエレベータシステム10の相違は、エレベータ制御部23(エレベータシステム10のエレベータ制御部22に対応)だけであるため、その相違点を中心に説明する。
【0048】
エレベータ制御部23は、エレベータシステム11全般を制御する機能を有する。図4は、エレベータ制御部23の各構成図と、エレベータ制御部23がネットワーク26を介して監視センタ28に接続されている様子を示す図である。エレベータ制御部23は、昇降処理部222と、自動戸開閉処理部224と、手動戸開閉処理部226と、故障判断処理部228と、速度抑制処理部231と、復旧判断処理部232と、速度抑制解除処理部235と、速度抑制情報送信処理部237と、速度抑制解除情報送信処理部239とを含んで構成される。なお、昇降処理部222と、自動戸開閉処理部224と、手動戸開閉処理部226と、故障判断処理部228と、復旧判断処理部232はエレベータシステム10のエレベータ制御部22の各機能と同一のものであるため詳細な説明は省略する。
【0049】
速度抑制処理部231は、故障判断処理部228によって戸閉押釦86bがオン故障であると判断されたときに、手動戸開閉処理部226の2つの機能のうち、手動戸閉機能の変更を行う。具体的には、速度抑制処理部231は、手動戸閉機能によって乗りかご扉6が閉じられる通常の速度(閉動作速度)を、例えば、通常速度の50%程度の速度に抑制する。なお、速度抑制処理部231による速度抑制は通常速度の50%に限定されることはなく、戸閉押釦86bがオン故障が原因で、乗りかご2が着床して乗りかご扉6が一旦開いた後にすぐに乗りかご扉6が閉まった場合であっても乗客4が乗りかご扉6に挟まれない程度にゆっくりとした速度にまで抑制すればよい。
【0050】
速度抑制解除処理部235は、戸閉押釦86bがオン故障から復旧していると判断されたときに、乗りかご扉6の閉動作速度の抑制を解除する機能を有する。
【0051】
速度抑制情報送信処理部237は、速度抑制処理部231によって、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能のうち乗りかご扉6の閉動作速度を抑制したことをネットワーク26を介して監視センタ28に通知するための情報を送信する機能を有する。具体的には、監視センタ28において保守作業員が乗りかご扉6の閉動作速度の抑制としたことを容易に把握できるようにするために「○○ビルのエレベータシステムにおいて、△号機の乗りかご扉の手動戸閉機能のうち、乗りかご扉の閉動作速度を抑制しました」といったメッセージを送信する。
【0052】
速度抑制解除情報送信処理部239は、速度抑制解除処理部235によって、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能のうち乗りかご扉6の閉動作速度の抑制を解除したことをネットワーク26を介して監視センタ28に通知するための情報を送信する機能を有する。具体的には、監視センタ28において保守作業員が乗りかご扉6の閉動作速度の抑制としたことを容易に把握できるようにするために「○○ビルのエレベータシステムにおいて、△号機の乗りかご扉の手動戸閉機能のうち、乗りかご扉の閉動作速度の抑制を解除しました」といったメッセージを送信する。
【0053】
上記構成のエレベータシステム11の動作について図4,5を用いて説明する。図5は、エレベータシステム11において、戸閉押釦86bがオン故障した際に、乗客4が乗りかご2に乗降する際に乗りかご扉6に挟まれないようにする手順を示すフローチャートである。エレベータ制御部23において、図示しない記憶部に記録されている挟まれ防止制御プログラムが実行されると、まず、戸閉押釦86bがオン故障状態であるか否かを判断する(S30)。この工程は、エレベータ制御部23の故障判断処理部228の機能によって実行される。戸閉押釦86bがオン故障状態でないと判断されると再びS30へと戻る。
【0054】
S30において、戸閉押釦86bがオン故障状態であると判断されると、手動戸開閉処理部226の手動戸閉機能のうち乗りかご扉6の閉動作速度を通常速度の50%に抑制する(S32)。この工程は、エレベータ制御部23の速度抑制処理部231の機能によって実行される。このように、乗りかご扉6の閉動作速度を通常速度の50%に抑制することで、乗りかご2が着床した際に乗りかご扉6が一旦開いた後にゆっくりと乗りかご扉6が閉じられることとなる。これにより、戸閉押釦86bがオン故障であっても、乗客4が乗りかご2に乗降する際に乗りかご扉6に挟まれることを防止することができる。
【0055】
S32の次工程として、乗りかご扉6の閉動作速度を通常速度の50%に抑制した速度抑制情報をネットワーク26を介して監視センタ28に送信する(S34)。この工程は、エレベータ制御部23の速度抑制情報送信処理部237の機能によって実行される。このように、速度抑制情報、例えば「○○ビルのエレベータシステムにおいて、△号機の乗りかご扉の手動戸閉機能のうち、乗りかご扉の閉動作速度を抑制しました」といった情報を送信することにより、監視センタ28において保守作業員の保守作業スケジュールを立てるときの有効な情報とすることができる。
【0056】
次に、戸閉押釦86bがオン故障から復旧しているか否かを判断する(S36)。この工程は、エレベータ制御部23の復旧判断処理部232の機能によって実行される。戸閉押釦86bがオン故障から復旧していないと判断すると再びS36へと戻る。
【0057】
S36において、戸閉押釦86bがオン故障から復旧していると判断すると、乗りかご扉6の閉動作速度を通常速度の50%に抑制する速度抑制を解除する(S38)。この工程は、エレベータ制御部23の速度抑制解除処理部235の機能によって実行される。これにより、戸閉押釦86bがオン故障状態から復旧しているにもかかわらずに、乗客4が戸閉押釦86bを用いて手動によって乗りかご扉6の閉制御をできないという不便が解消する。
【0058】
S38の次工程として、乗りかご扉6の閉動作速度を通常速度の50%に抑制する速度抑制を解除した速度抑制解除情報をネットワーク26を介して監視センタ28に送信する(S40)。この工程は、エレベータ制御部23の速度抑制解除情報送信処理部239の機能によって実行される。このように、速度抑制解除情報、例えば「○○ビルのエレベータシステムにおいて、△号機の乗りかご扉の手動戸閉機能のうち、乗りかご扉の閉動作速度の抑制を解除しました」といった情報を送信することにより、保守作業員がわざわざ現場に行くことなく、乗りかご扉6の開閉動作を通常の状態(戸閉押釦86bがオン故障となっていない状態)へと復旧させることができるため、作業効率の向上となる。S40の後は、リターン処理へと進む。
【0059】
このように、エレベータシステム11の構成によれば、戸閉押釦86bがオン故障しているときであっても、乗客4が乗りかご2に乗降する際に乗りかご扉6に挟まれないようにすることができる。
【符号の説明】
【0060】
2 乗りかご、4 乗客、6 乗りかご扉、7 主ロープ、8 乗りかご操作盤、9 昇降路、10,11 エレベータシステム、14 巻上機、16 カウンタウエイト、20 機械室、22,23 エレベータ制御部、26 ネットワーク、28 監視センタ、83 行先階設定釦部、83a 1階設定押釦、83b 2階設定押釦、83c 3階設定押釦、84 表示パネル、86 開閉操作釦部、86a 戸開押釦、86b 戸閉押釦、222 昇降処理部、224 自動戸開閉処理部、226 手動戸開閉処理部、228 故障判断処理部、230 無効処理部、231 速度抑制処理部、232 復旧判断処理部、234 無効解除処理部、235 速度抑制解除処理部、236 無効設定情報送信処理部、237 速度抑制情報送信処理部、238 無効解除情報送信処理部、239 速度抑制解除情報送信処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着床した際に乗りかご扉を一旦開いた後、所定の時間が経過してから自動的に乗りかご扉を閉じる自動戸開閉部と、
乗りかご扉が開いているときに押されると、自動戸開閉部による閉動作とは別に乗りかご扉の閉動作を促進させる手動戸閉押釦部と、
手動戸閉押釦部がオン故障しているか否かを判断する故障判断部と、
手動戸閉押釦部がオン故障しているときに、乗客が乗りかご扉に挟まれないように乗りかご扉の閉動作を促進させる機能を変更する設定変更部と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
設定変更部は、
手動戸閉押釦部がオン故障しているときに、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能を無効とする無効処理部であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータシステムにおいて、
乗りかご扉の閉動作を促進させる機能を無効にした後、手動戸閉押釦部がオン故障から復旧しているか否かを判断する復旧判断部と、
手動戸閉押釦部がオン故障から復旧しているときに、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能の無効を解除する無効解除処理部と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のエレベータシステムにおいて、
無効処理部によって、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能を無効としたことを監視センタに通知するための情報を送信する無効設定情報送信部を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のエレベータシステムにおいて、
無効解除処理部によって、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能の無効を解除したことを監視センタに通知するための情報を送信する無効解除情報送信部を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のエレベータシステムにおいて、
設定変更部は、
手動戸閉押釦部がオン故障しているときに、乗りかご扉の閉動作を促進させる機能において乗りかご扉の閉動作の速度を抑制させる速度抑制処理部であることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のエレベータシステムにおいて、
乗りかご扉の閉動作の速度を抑制させた後、手動戸閉押釦部がオン故障から復旧しているか否かを判断する復旧判断部と、
手動戸閉押釦部がオン故障から復旧しているときに、乗りかご扉の閉動作の速度の抑制を解除する速度抑制解除処理部と、
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のエレベータシステムにおいて、
速度抑制処理部によって、乗りかご扉の閉動作の速度を抑制させたことを監視センタに通知するための情報を送信する速度抑制情報送信部を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のエレベータシステムにおいて、
速度抑制解除処理部によって、乗りかご扉の閉動作の速度の抑制を解除したことを監視センタに通知するための情報を送信する速度抑制解除情報送信部を備えることを特徴とするエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−184145(P2011−184145A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52141(P2010−52141)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】