説明

エンコーダ付車輪用軸受装置

【課題】シールの密封性の向上を図ると共に、管理工数を低減させて低コスト化を図ったエンコーダ付車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】内輪5に嵌合され、シール11のインナー側に配設されたシールリング20を備え、このシールリング20のインナー側の端部にエンコーダ22が一体に設けられたエンコーダ付車輪用軸受装置において、外方部材2のインナー側の端部にキャップ12が装着され、このキャップ12が、外方部材2の端部に内嵌される円筒状の嵌合部14aと、回転速度センサの装着部15が形成された底部14bからなるカップ状に形成されると共に、シールリング20が、内輪5に嵌合される円筒部20aと、このアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部20bを備え、この立板部20bの外縁が外方部材2の端部内周に所定の径方向すきまをδ2介して対峙し、ラビリンスシール21を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、車輪の回転速度を検出する回転速度センサと対をなして回転速度検出装置を構成するエンコーダが内蔵されたエンコーダ付車輪用軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承すると共に、アンチロックブレーキシステム(ABS)を制御するため、車輪の回転速度を検出する回転速度センサと対をなして回転速度検出装置を構成するエンコーダが内蔵されたエンコーダ付車輪用軸受装置として、従来から種々の構造のものが知られている。この従来のエンコーダ付車輪用軸受装置の一例として、図10に示すものがある。
【0003】
このエンコーダ付車輪用軸受装置は、図示しない懸架装置に支持固定され、固定部材となる外方部材51と、この外方部材51に複列のボール53、53を介して内挿された内方部材52とを有している。外方部材51は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ51bを一体に有し、内周に複列の外側転走面51a、51aが形成されている。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図10の左側)、中央寄り側をインナー側(図10の右側)という。
【0004】
内方部材52は、外周に前記した外方部材51の外側転走面51a、51aに対向する複列の内側転走面55a、56aが形成されている。これら複列の内側転走面55a、56aのうちアウター側の内側転走面55aはハブ輪55の外周に一体形成され、インナー側の内側転走面56aは内輪56の外周に形成されている。この内輪56は、ハブ輪55の内側転走面55aから軸方向に延びる円筒状の小径段部55bに圧入されている。そして、複列のボール53、53がこれら両転走面間にそれぞれ収容され、保持器57、57によって転動自在に保持されている。
【0005】
ハブ輪55は、外周に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ54を一体に有し、小径段部55bの端部を径方向外方に塑性変形して加締部58が形成されている。この加締部58によって内輪56が軸方向に固定されている。内方部材52は、このハブ輪55と内輪56を指す。そして、外方部材51の両端部にはシール59、60が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
【0006】
インナー側のシール60は、図11に示すように、内輪56の外周面に嵌装された回転側シールリング61と、外方部材51の端部内周に嵌装された固定側シールリング62とからなる組合せシールで構成されている。回転側シールリング61は、内輪56の外径に圧入される筒部61aと、この筒部61aのインナー側の端部において内径側に折り曲げられた支持リング部61bと、筒部61aのアウター側の端部において外径側に折り曲げられた芯金部61cとを有し、断面が略Z状を呈する板金製で筒状の支持リングに形成されている。
【0007】
固定側シールリング62は、断面が逆L字状とされた板金製で筒状の外側芯金63と、この外側芯金63に焼き付き等の処理によって一体に接合された複数のリップ64a〜64cを有するシール部材64とで構成されている。第1リップ(サイドリップ)64aは、回転側シールリング61の芯金部61cに摺接されるアキシアルリップに形成されており、他の2箇所のリップである第2、第3のリップ64b、64cは、内輪56の外周面に直接摺接されるラジアルリップに形成されている。そして、芯金部61cの先端面と固定側シールリング62との間にはダストの流入を規制するラビリンスシールとして機能する小隙間rが形成されている。
【0008】
回転速度検出装置65は、回転側シールリング61の支持リング部61bの側面に貼着されたトーンホイール66と、このトーンホイール66に近接する状態で図示しないカバーに固定装備された磁気センサ67とで構成されている。トーンホイール66は、ゴム中にフェライト等の磁性粉末を混入したゴム磁石を円輪状に形成したもので、着磁方向は、円周方向に亙って交互に且つ等間隔で変化させている。
【0009】
インナー側のシール60は、トーンホイール66の支持部材である回転側シールリング61を、シール部材64が摺接する芯金部(スリンガ)61cに兼用させているから、専用の芯金部を省略できてコストおよび部品管理上において有利である。また、専用の芯金部を省略した分、シール部材64の配置スペースを径方向に大きくできるため、コンパクト化できるといった利点もある。
【特許文献1】特開2004−239423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来のエンコーダ付車輪用軸受装置では、回転側シールリング61をスリンガと兼用させているため、コストおよび部品管理上において有利となると共に、シール部材64の配置スペースを径方向に大きくできるため、コンパクト化できる利点がある反面、固定側シールリング62と回転側シールリング61を別々に圧入しなければならないため、組立工数が増えるだけでなく、サイドリップ64aのシメシロ設定が面倒となって管理工数が嵩む恐れがあった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、シールの密封性の向上を図ると共に、管理工数を低減させて低コスト化を図ったエンコーダ付車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合された内輪または等速自在継手の外側継手部材からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、これらシールのうちインナー側のシールのインナー側に配設され、前記内方部材に嵌合されたシールリングとを備え、このシールリングのインナー側の端部に、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するエンコーダが一体に設けられたエンコーダ付車輪用軸受装置において、前記シールリングが、前記内方部材に嵌合される円筒部と、この円筒部のアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部を備え、この立板部の外縁と前記外方部材の端部内周との間にシールが形成されている。
【0013】
このように、インナー側のシールのインナー側に配設され、内方部材に嵌合されたシールリングを備え、このシールリングのインナー側の端部に、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するエンコーダが一体に設けられたエンコーダ付車輪用軸受装置において、シールリングが、内方部材に嵌合される円筒部と、この円筒部のアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部を備え、この立板部の外縁と外方部材の端部内周との間にシールが形成されているので、インナー側のシールの密封性の向上を図ると共に、シールのシメシロ設定を簡素化して管理工数を低減させ、低コスト化を図ったエンコーダ付車輪用軸受装置を提供することができる。
【0014】
好ましくは、請求項2の発明のように、前記シールリングの立板部の外縁が前記外方部材の端部内周に0.1〜0.5mmの範囲からなる径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシールが構成されていれば、シールリングと外方部材との干渉が安定して防止できると共に、シールの密封性を効果的に向上させることができる。
【0015】
また、請求項3の発明のように、前記シールリングの立板部の外縁部に、前記外方部材の端部内周にシメシロを介して摺接するシールリップが一体に接合されていれば、インナー側のシールが、例えば、低コストな2リップタイプ等であっても密封性の向上を図ることができると共に、シメシロ設定が不要となって管理工数を低減させ、低コスト化をさらに図ることができる。
【0016】
また、請求項4の発明のように、前記インナー側のシールが、前記外方部材に内嵌される環状の芯金と、この芯金に一体に接合され、前記内方部材の外周面に摺接されるラジアルリップを有するシール部材とで構成されていれば、密封性を確保して低コスト化を図ることができる。
【0017】
また、請求項5の発明のように、前記インナー側のシールが、前記外方部材に内嵌される環状の芯金、およびこの芯金に一体に接合され、前記立板部に摺接される一対のサイドリップと、前記内方部材の外周面に摺接されるグリースリップとを有するシール部材を備えると共に、前記一対のサイドリップが、それぞれ異なった長さで径方向外方に傾斜して形成され、前記シールリングの立板部に対して異なったシメシロに設定されていれば、サイドリップとして実質的にシメシロ範囲を広げることができ、シールリングの圧入時の位置決め精度を緩和することができる。したがって、密封性を向上させると共に、従来のパックシールに比べ管理工数を低減させ、低コスト化を図ることができる。
【0018】
また、請求項6の発明のように、前記シールリングが、防錆能を有する強磁性体の鋼板からプレス加工によって形成されると共に、前記エンコーダが、当該シールリングに一体に接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石で構成されていれば、長期間に亘ってシールリングの発錆を防止すると共に、エンコーダの出力信号が強くなり安定した検出精度を確保することができる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明のように、前記外方部材のインナー側の端部にキャップが装着され、このキャップが、前記外方部材の端部に内嵌される円筒状の嵌合部と、回転速度センサの装着部が形成された底部からなるカップ状に形成され、前記外方部材のインナー側の開口部を閉塞していれば、インナー側のシールが必ずしも強固なシールでなくても良く、また、このシールによって駆動輪側の車輪用軸受装置におけるシールとの標準化が図れると共に、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩を確実に防止することができる。
【0020】
好ましくは、請求項8に記載の発明のように、前記キャップが非磁性の合成樹脂材から射出成形によって形成され、繊維状強化材が充填されていれば、回転速度センサの感知性能に悪影響を及ぼさず、また、耐食性に優れ、長期間に亘って強度・耐久性を向上させることができる。
【0021】
また、請求項9に記載の発明のように、前記キャップの底部における路面から最も近い側の周方向の一箇所にドレーン孔が形成されていれば、車両走行中にキャップ内に泥水や雨水が入り込んだとしても容易に外部に排出され、長時間に亘って滞留するのを防止することができ、泥水等が車両停止時に固着して周辺部品に悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合された内輪または等速自在継手の外側継手部材からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、これらシールのうちインナー側のシールのインナー側に配設され、前記内方部材に嵌合されたシールリングとを備え、このシールリングのインナー側の端部に、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するエンコーダが一体に設けられたエンコーダ付車輪用軸受装置において、前記シールリングが、前記内方部材に嵌合される円筒部と、この円筒部のアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部を備え、この立板部の外縁と前記外方部材の端部内周との間にシールが形成されているので、インナー側のシールの密封性の向上を図ると共に、シールのシメシロ設定を簡素化して管理工数を低減させ、低コスト化を図ったエンコーダ付車輪用軸受装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
外周に車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、これらシールのうちインナー側のシールのインナー側に配設され、前記内輪に嵌合されたシールリングとを備え、このシールリングのインナー側の端部に、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するエンコーダが一体に設けられたエンコーダ付車輪用軸受装置において、前記外方部材のインナー側の端部にキャップが装着され、このキャップが、前記外方部材の端部に内嵌される円筒状の嵌合部と、回転速度センサの装着部が形成された底部からなるカップ状に形成されると共に、前記シールリングが、前記内輪に嵌合される円筒部と、この円筒部のアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部を備え、この立板部の外縁が前記外方部材の端部内周に所定の径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシールが構成されている。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図、図2は図1の側面図、図3は、図1の要部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0025】
この車輪用軸受装置は第3世代と呼称される従動輪用であって、内方部材1と外方部材2、および両部材1、2間に転動自在に収容された複列のボール3、3とを備えている。内方部材1は、ハブ輪4と、このハブ輪4に所定のシメシロを介して圧入された内輪5とからなる。
【0026】
ハブ輪4は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ6を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に延びる小径段部4bが形成されている。車輪取付フランジ6にはハブボルト7が周方向等配に植設されている。
【0027】
内輪5は、外周に他方(インナー側)の内側転走面5aが形成され、ハブ輪4の小径段部4bに圧入されると共に、この小径段部4bの端部を塑性変形させて形成した加締部8によって軸方向に固定されている。
【0028】
ハブ輪4はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面4aをはじめ、車輪取付フランジ6のインナー側の基部6aから小径段部4bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。なお、加締部8は鍛造加工後の表面硬さの生のままとされている。これにより、車輪取付フランジ6に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、内輪5の嵌合部となる小径段部4bの耐フレッティング性が向上すると共に、加締加工時に微小なクラック等の発生がなく加締部8の塑性加工をスムーズに行うことができる。なお、内輪5およびボール3はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0029】
外方部材2は、外周にナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ2bを一体に有し、内周に複列の外側転走面2a、2aが形成されている。すなわち、ハブ輪4の内側転走面4aに対向するアウター側の外側転走面2aと、内輪5の内側転走面5aに対向するインナー側の外側転走面2aが一体に形成されている。これら両転走面間に複列のボール3、3が収容され、保持器9、9によって転動自在に保持されている。
【0030】
外方部材2はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、複列の外側転走面2a、2aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。そして、外方部材2と内方部材1との間に形成される環状空間の開口部にはシール10、11が装着され、さらに、外方部材2のインナー側の開口部を覆う後述するキャップ12が装着されている。これらシール10、11およびキャップ12によって、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0031】
本実施形態では、外方部材2のインナー側の開口部を閉塞するキャップ12が装着されるため、インナー側のシール11は必ずしも強固なシールでなくても良いが、このシール11によって駆動輪側の車輪用軸受装置におけるシールとの標準化が図れると共に、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩を確実に防止することができる。これにより、従来のように潤滑グリースの漏洩を加味して予め余分に封入することなく、潤滑グリースの封入量を必要最小限に抑えることができる。したがって、潤滑グリースの攪拌抵抗による温度上昇を抑制し、長期間に亙って安定した潤滑を図ることができる。なお、ここでは、転動体3をボールとした複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず転動体に円すいころを使用した複列円すいころ軸受で構成されていても良い。
【0032】
ここで、外方部材2に装着されたキャップ12は、耐食性を有する鋼鈑、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)をプレス加工によって形成された芯金13と、この芯金13に一体にモールド成形された有底のカップ状のキャップ本体14とからなる。このキャップ本体14は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の非磁性の特殊エーテル系合成樹脂材から射出成形によって形成され、GF(グラス繊維)からなる繊維状強化材が充填されている。これにより、回転速度センサの感知性能に悪影響を及ぼさず、また、耐食性に優れ、長期間に亘って強度・耐久性を向上させることができる。
【0033】
キャップ本体14は、外方部材2の端部に内嵌される円筒状の嵌合部14aと底部14bからなる。この底部14bには、回転速度センサ(図示せず)の装着部15が形成されると共に、この回転速度センサの取付ボルト(図示せず)が締結されるナット部材16が固着されている。また、底部14bにおける路面から最も近い側の周方向の一箇所にドレーン孔17が形成されている(図2参照)。このドレーン孔17により、車両走行中に底部14b内に泥水や雨水が入り込んだとしても容易に外部に排出され、長時間に亘って滞留することはない。したがって、泥水等が車両停止時に固着して周辺部品に悪影響を及ぼすのを防止することができる。
【0034】
装着部15は、図1に示すように、射出成形によりインナー側に突出して形成され、装着孔15aが開口されている。回転速度センサは、この装着孔15aに嵌挿されている。そして、略長円形をなす取付金具(図示せず)を介して取付ボルトによって締結され(図2参照)、後述するエンコーダ20に所定の軸方向すきま(エアギャップ)を介して対峙されている。また、ナット部材16には、内周に雌ねじ16aが刻設され取付ボルトが螺合される。こうした構成により、回転速度センサは長期間に亘って弛むことなく固定され、装着部15から泥水等が浸入するのを確実に防止することができる。
【0035】
インナー側のシール11は、図3に拡大して示すように、外方部材2に内嵌された環状の芯金18と、この芯金18に加硫接着等によって一体に接合されたシール部材19とからなる。芯金18はオーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)あるいは防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からなり、プレス加工によって断面が略コの字状に、全体として円環状に形成されている。一方、シール部材19はゴム等の弾性部材からなり、二股状に形成されたラジアルリップ19a、19bを有している。これらラジアルリップ19a、19bは内輪5の外周面に摺接されている。
【0036】
また、シール11のインナー側には、僅かな軸方向すきまδ1を介してシールリング20が配設されている。そして、このシールリング20のインナー側の端部にエンコーダ22が一体に接合されている。なお、シール11とシールリング20間の軸方向すきまδ1は、管理面および密封性の面から0.5〜1.0mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0037】
シールリング20は、強磁性体の鋼鈑、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって断面がクランク状に形成され、内輪5に圧入される円筒部20aと、この円筒部20aの端部から折り曲げられた立板部20bと支持部20cとを有している。
【0038】
立板部20bは、円筒部20aのアウター側の端部から径方向外方に延び、その外縁が外方部材2の端部内周に所定の径方向すきまδ2を介して対峙し、ラビリンスシール21を構成している。これにより、インナー側のシール11は、この種の2リップタイプ等の低コストなシール11であっても密封性の向上を図ることができると共に、従来のパックシールのようにサイドリップのシメシロ設定がここでは不要となって管理工数を低減させ、低コスト化を図ったエンコーダ付車輪用軸受装置を提供することができる。なお、ラビリンスシール21の径方向すきまδ2は、外方部材2との干渉を安定して防止でき、また、シール11の密封性を効果的に向上させることができるように0.1〜0.5mmの範囲に設定されている。
【0039】
一方、支持部20cは、円筒部20aのインナー側の端部から径方向内方に延び、そのインナー側の側面には、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されたエンコーダ22が加硫接着等によって一体に接合されている。このエンコーダ22は、図7(a)に示すように、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石からなり、車輪の回転速度検出用の磁気ロータリエンコーダを構成している。このように、シールリング20が強磁性体の鋼板で形成されていれば、エンコーダ22の出力信号が強くなり安定した検出精度を確保することができる。なお、ここでは、エンコーダ22をエラストマ製としたものを例示したが、これに限らず、例えば、フェライト等からなる強磁性体粉を金属バインダーで固めた燒結金属製であっても良い。また、速度検出用のエンコーダ22は、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するエンコーダであれば良く、例えば、図7(b)に示すように、支持部20cに矩形状のポケット24aが周方向等間隔に形成されているエンコーダ24であっても良い。
【0040】
ここで、車輪の回転に伴って内輪5と共にエンコーダ22が回転すると、このエンコーダ22に対向する回転速度センサ23の出力が変化する。この回転速度センサ23は、ホール素子、磁気抵抗素子(MR素子)等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子と、この磁気検出素子の出力波形を整える波形成形回路が組み込まれたICとからなる。この回転速度センサ23の出力が変化する周波数は車輪の回転速度に比例するため、回転速度センサ23の出力信号を図示しない制御器に入力すれば、ABSを適切に制御することができる。なお、本実施形態では、回転速度検出装置として、ゴム磁石からなるエンコーダ22と、ホール素子等の磁気検出素子からなる回転速度センサ23とからなるアクティブタイプの回転速度検出装置を例示したが、これに限らず、例えば、歯車等と、磁石と巻回された環状のコイル等からなるパッシブタイプであっても良い。
【実施例2】
【0041】
図4は、本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す要部拡大図である。なお、本実施形態は、前述した実施形態と基本的にはシールの構成が異なるのみで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品、部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
本実施形態のシール25は、外方部材2のインナー側の端部に内嵌され、断面略L字状に形成された環状のシール板25aを備えている。そして、このシール板25aに対向配置され、内輪5の外径に圧入されたシールリング20の立板部20bとで複合型の所謂パックシールを構成している。
【0043】
シール板25aは、外方部材2のインナー側の端部に内嵌された芯金26と、この芯金26に加硫接着等で一体に接合されたシール部材27とからなる。芯金26は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて断面略L字状に形成されている。一方、シール部材27は合成ゴム等の弾性部材からなり、一対のサイドリップ27a、27bとグリースリップ27cを有している。
【0044】
シール部材27のサイドリップ27a、27bは、シールリング20の立板部20bに摺接されると共に、グリースリップ27cは、内輪5の外周面ににそれぞれ摺接されている。ここでは、一対のサイドリップ27a、27bが、それぞれ異なった長さで径方向外方に傾斜して形成され、シールリング20の立板部20bに対して異なったシメシロに設定されているため、サイドリップ27a、27bとして実質的にシメシロ範囲を広げることができ、シールリング20の圧入時の位置決め精度を緩和することができる。したがって、密封性を向上させると共に、従来のパックシールに比べ管理工数を低減させ、低コスト化を図ることができる。
【実施例3】
【0045】
図5は、本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す要部拡大図である。なお、本実施形態は、前述した第1の実施形態(図3)と基本的にはシールリングの構成が異なるのみで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品、部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
本実施形態のシールリング28は、強磁性体の鋼鈑、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって断面がクランク状に形成され、内輪5に圧入される円筒部20aと、この円筒部20aの端部から折り曲げられた立板部28aと支持部20cとを有している。
【0047】
立板部28aは、円筒部20aのアウター側の端部から径方向外方に延び、その外縁部に外方部材2の端部内周に所定のシメシロを介して摺接するシールリップ28bが加硫接着等によって一体に接合されている。これにより、インナー側のシール11は、この種の2リップタイプであっても一層密封性の向上を図ることができると共に、シメシロ設定が不要となって管理工数を低減させ、低コスト化をさらに図ることができる。
【実施例4】
【0048】
図6は、本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第4の実施形態を示す要部拡大図である。なお、本実施形態は、前述した実施形態(図3、図4)と基本的にはシールリングの構成が異なるのみで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品、部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0049】
本実施形態のシールリング29は、強磁性体の鋼鈑、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工によって断面が略L字状に形成され、内輪5に圧入される円筒部29aと、この円筒部29aのアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部29bと、円筒部29aのインナー側の端部に形成された支持部29cとを有している。
【0050】
支持部29cは円筒部29aよりも小径に形成され、その外径面に、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されたエンコーダ30が加硫接着等によって一体に接合されている。このエンコーダ30は、周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石からなり、回転速度センサ23に所定の径方向すきま(エアギャップ)を介して対峙されている。こうした構成を採用することにより、エンコーダ30と回転速度センサ23とのエアギャップ管理を簡素化でき、一層の低コスト化を図ることができる。
【実施例5】
【0051】
図8は、本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第5の実施形態を示す縦断面図である。なお、本実施形態は、前述した第4の実施形態(図6)と基本的には軸受部の構成が異なるのみで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品、部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0052】
この車輪用軸受装置は第3世代と呼称される駆動輪用であって、内方部材31と外方部材2、および両部材31、2間に転動自在に収容された複列のボール3、3とを備えている。内方部材31は、ハブ輪32と、このハブ輪32に所定のシメシロを介して圧入された内輪5とからなる。
【0053】
ハブ輪32は、アウター側の端部に車輪取付フランジ6を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面4aと、この内側転走面4aから軸方向に延びる小径段部4bが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション(またはスプライン)32aが形成されている。このハブ輪32はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面4aをはじめ、車輪取付フランジ6のインナー側の基部6aから小径段部4bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0054】
本実施形態においても前述した実施形態と同様、シール11のインナー側にシールリング29が配設されている。そして、このシールリング29のインナー側の端部にエンコーダ30が一体に接合されると共に、シールリング29における立板部29bの外縁が外方部材2の端部内周に所定の径方向すきまδ2を介して対峙してラビリンスシール21を構成し、シール11の密封性を向上させている。
【実施例6】
【0055】
図9は、本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第6の実施形態を示す縦断面図である。なお、本実施形態は、前述した各実施形態と基本的には軸受部の構成が異なるのみで、その他前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品、部位には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
この車輪用軸受装置は第2世代と呼称される従動輪用であって、ハブ輪33と、このハブ輪33に外嵌固定された車輪用軸受34とを備えている。車輪用軸受34は、外方部材35と、この外方部材35に複列の円すいころ36、36を介して内嵌された一対の内輪37、38とを備えている。
【0057】
ハブ輪33は、アウター側の端部に車輪取付フランジ6を一体に有し、この車輪取付フランジ6から肩部33aを介して軸方向に延びる小径段部33bが形成されている。ハブ輪33はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、肩部33aから小径段部33bに亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0058】
外方部材35は、外周に車体取付フランジ2bを一体に有し、内周に外向きに開いたテーパ状の複列の外側転走面35a、35aが一体に形成されている。一方、一対の内輪37、38は、外周に外側転走面35a、35aに対向するテーパ状の内側転走面37a、37aが形成されている。そして、各転走面間に保持器39、39を介して複列の円すいころ36、36が転動自在に収容されている。内輪37、38の各内側転走面37a、37aの大径側端部に円すいころ36を案内するための大鍔37b、38aと、小径側端部に円すいころ36の脱落を防止するための小鍔37c、37cがそれぞれ形成されている。車輪用軸受34は、一対の内輪37、38の正面側(小径側)端面が突き合された状態でセットされた背面合せタイプの複列円すいころ軸受を構成し、ハブ輪33の肩部33aにアウター側の内輪37を衝合させ、所定の軸受予圧が付与された状態で加締部8によって軸方向に固定されている。
【0059】
外方部材35はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内輪37、38は、SUJ2(JIS G 4805)等の高炭素クロム軸受鋼、あるいは浸炭鋼からなり、高炭素クロム軸受鋼は820〜860℃で焼き入れされた後、160〜200℃で焼き戻しされ、58〜64HRCの範囲に芯部まで硬化処理されている。浸炭鋼の場合は、表面が58〜64HRCの範囲に硬化処理される。一方、円すいころ36は、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、58〜64HRCの範囲に芯部まで硬化処理されている。
【0060】
外方部材35と一対の内輪37、38との間に形成される環状空間の開口部にはシール40、41が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0061】
本実施形態では、前述した第2の実施形態(図4)と同様、インナー側のシール41は、外方部材35の端部内周に圧入されたシール板25aとシールリング20の立板部20bとでパックシールを構成している。これにより、シール41の密封性の向上を図ると共に、管理工数を低減させて低コスト化を図ることができる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置は、回転側部材に外嵌されたシールリングを備え、このシールリングに設けられた回転速度検出用のエンコーダが内蔵された第1乃至第4世代構造の車輪用軸受装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す要部拡大図である。
【図5】本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す要部拡大図である。
【図6】本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第4の実施形態を示す要部拡大図である。
【図7】(a)は、エンコーダの実施形態を示す模式図である。 (b)は、同上他の実施形態を示す模式図である。
【図8】本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第5の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】本発明に係るエンコーダ付車輪用軸受装置の第6の実施形態を示す縦断面図である。
【図10】従来のエンコーダ付車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【図11】図10の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0065】
1、31・・・・・・・・・内方部材
2、35・・・・・・・・・外方部材
2a、35a・・・・・・・外側転走面
2b・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
3・・・・・・・・・・・・ボール
4、32、33・・・・・・ハブ輪
4a、5a、37a・・・・内側転走面
4b、33b・・・・・・・小径段部
5、37、38・・・・・・内輪
6・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
6a・・・・・・・・・・・基部
7・・・・・・・・・・・・ハブボルト
8・・・・・・・・・・・・加締部
9、39・・・・・・・・・保持器
10、40・・・・・・・・アウター側のシール
11、25、41・・・・・インナー側のシール
12・・・・・・・・・・・キャップ
13、18、26・・・・・芯金
14・・・・・・・・・・・キャップ本体
14a・・・・・・・・・・嵌合部
14b・・・・・・・・・・底部
15・・・・・・・・・・・装着部
15a・・・・・・・・・・装着孔
16・・・・・・・・・・・ナット部材
16a・・・・・・・・・・雌ねじ
17・・・・・・・・・・・ドレーン孔
19、27・・・・・・・・シール部材
19a、19b・・・・・・ラジアルリップ
20、28、29・・・・・シールリング
20a、29a・・・・・・円筒部
20b、28a、29b・・立板部
20c、29c・・・・・・支持部
21・・・・・・・・・・・ラビリンスシール
22、24、30・・・・・エンコーダ
23・・・・・・・・・・・回転速度センサ
24a・・・・・・・・・・ポケット
25a・・・・・・・・・・シール板
27a、27b・・・・・・サイドリップ
27c・・・・・・・・・・グリースリップ
28b・・・・・・・・・・シールリップ
32a・・・・・・・・・・セレーション
34・・・・・・・・・・・車輪用軸受
36・・・・・・・・・・・円すいころ
37c・・・・・・・・・・小鍔
51・・・・・・・・・・・外方部材
51a・・・・・・・・・・外側転走面
51b・・・・・・・・・・車体取付フランジ
52・・・・・・・・・・・内方部材
53・・・・・・・・・・・ボール
54・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
55・・・・・・・・・・・ハブ輪
55a、56a・・・・・・内側転走面
55b・・・・・・・・・・小径段部
56・・・・・・・・・・・内輪
57・・・・・・・・・・・保持器
58・・・・・・・・・・・加締部
59・・・・・・・・・・・アウター側のシール
60・・・・・・・・・・・インナー側のシール
61・・・・・・・・・・・回転側シールリング
61a・・・・・・・・・・筒部
61b・・・・・・・・・・支持リング部
61c・・・・・・・・・・芯金部
62・・・・・・・・・・・固定側シールリング
63・・・・・・・・・・・外側芯金
64・・・・・・・・・・・シール部材
64a・・・・・・・・・・第1リップ
64b・・・・・・・・・・第2リップ
64c・・・・・・・・・・第3リップ
65・・・・・・・・・・・回転速度検出装置
66・・・・・・・・・・・トーンホイール
67・・・・・・・・・・・磁気センサ
r・・・・・・・・・・・・小隙間
δ1・・・・・・・・・・・軸方向すきま
δ2・・・・・・・・・・・径方向すきま

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合された内輪または等速自在継手の外側継手部材からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
この内方部材と前記外方部材間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の開口部に装着されたシールと、
これらシールのうちインナー側のシールのインナー側に配設され、前記内方部材に嵌合されたシールリングとを備え、
このシールリングのインナー側の端部に、周方向に関する特性が交互にかつ等間隔に変化するエンコーダが一体に設けられたエンコーダ付車輪用軸受装置において、
前記シールリングが、前記内方部材に嵌合される円筒部と、この円筒部のアウター側の端部から径方向外方に延びる立板部を備え、この立板部の外縁と前記外方部材の端部内周との間にシールが形成されていることを特徴とするエンコーダ付車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記シールリングの立板部の外縁が前記外方部材の端部内周に0.1〜0.5mmの範囲からなる径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシールが構成されている請求項1に記載のエンコーダ付車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記シールリングの立板部の外縁部に、前記外方部材の端部内周にシメシロを介して摺接するシールリップが一体に接合されている請求項1に記載のエンコーダ付車輪用軸受装置。
【請求項4】
前記インナー側のシールが、前記外方部材に内嵌される環状の芯金と、この芯金に一体に接合され、前記内方部材の外周面に摺接されるラジアルリップを有するシール部材とで構成されている請求項1乃至3いずれかに記載のエンコーダ付車輪用軸受装置。
【請求項5】
前記インナー側のシールが、前記外方部材に内嵌される環状の芯金、およびこの芯金に一体に接合され、前記立板部に摺接される一対のサイドリップと、前記内方部材の外周面に摺接されるグリースリップとを有するシール部材を備えると共に、前記一対のサイドリップが、それぞれ異なった長さで径方向外方に傾斜して形成され、前記シールリングの立板部に対して異なったシメシロに設定されている請求項1乃至3いずれかに記載のエンコーダ付車輪用軸受装置。
【請求項6】
前記シールリングが、防錆能を有する強磁性体の鋼板からプレス加工によって形成されると共に、前記エンコーダが、当該シールリングに一体に接合され、エラストマに磁性体粉が混入されて周方向に交互に磁極N、Sが着磁されたゴム磁石で構成されている請求項1乃至5いずれかに記載のエンコーダ付車輪用軸受装置。
【請求項7】
前記外方部材のインナー側の端部にキャップが装着され、このキャップが、前記外方部材の端部に内嵌される円筒状の嵌合部と、回転速度センサの装着部が形成された底部からなるカップ状に形成され、前記外方部材のインナー側の開口部を閉塞している請求項1乃至6いずれかに記載のエンコーダ付車輪用軸受装置。
【請求項8】
前記キャップが非磁性の合成樹脂材から射出成形によって形成され、繊維状強化材が充填されている請求項7に記載のエンコーダ付車輪用軸受装置。
【請求項9】
前記キャップの底部における路面から最も近い側の周方向の一箇所にドレーン孔が形成されている請求項7または8に記載のエンコーダ付車輪用軸受装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−68597(P2009−68597A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237603(P2007−237603)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】