説明

エンジンの制御装置

【課題】排気浄化装置の浄化能力回復のために空燃比を一時的にリッチにした場合にも粒子状物質の発生を抑制する。
【解決手段】エンジン10は、燃料を直接気筒内に噴射する燃料噴射弁19を備えるとともに、排気管24において酸素吸蔵能を有する触媒31を備えている。ECU40は、燃圧制御として、基本的には、都度のエンジン運転状態に基づいて、燃料噴射弁19に供給される燃料の圧力である噴射弁燃圧を制御する。また、ECU40は、燃料カットの実行中に所定の解除条件が成立したのに伴い燃料カットを解除する場合に、空燃比を一時的にリッチ側で制御するリッチ化制御(触媒中立化制御)を実施する。その際、噴射弁燃圧を、燃料カット解除後のエンジン運転状態に基づき制御する場合の噴射弁燃圧よりも高燃圧で制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御装置に関し、特に、燃料を直接気筒内に噴射する燃料噴射弁を備えるエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとしては、気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射式のものが知られている。この筒内噴射式のエンジンでは、局所的にリッチ雰囲気になりやすいため、エンジンの燃焼に伴い粒子状物質(PM)が発生しやすい。これに鑑み、筒内噴射式のエンジンを対象に、PM排出を抑制するための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また従来、エンジンの排気中に含まれるHCやCO、NOxなどを浄化するための触媒として三元触媒が知られており、ポート噴射式や筒内噴射式のガソリンエンジンにおいて、三元触媒の酸素ストレージ能を利用して排気の浄化が行われている。
【0004】
ここで、エンジン運転中では、所定の燃料カット条件の成立に伴い燃料噴射弁による燃料噴射を一時的に停止してエンジンを燃焼停止状態にすることがある。この場合、燃料を含まない空気が触媒に供給されることにより、触媒が酸素吸蔵過多の状態になり、その結果、燃料カットからの復帰直後において触媒のNOx浄化能が低下することがある。そこで従来、燃料カットからの復帰直後において、燃料噴射量を一時的に増量補正することにより(空燃比をリッチ側に変更することにより)触媒の酸素吸蔵量を低減させることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−206786号公報
【特許文献2】特開2003−172176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、触媒の酸素吸蔵量を低減させるべく空燃比をリッチ側にした場合、リッチ分の燃料の燃焼に伴いPMが発生しやすくなることが懸念される。特に、筒内噴射式のエンジンでは、局所的なリッチ化がより生じやすく、燃料と空気とが不均一な状態で燃焼が行われることによりPM発生が生じやすい。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、排気浄化装置の浄化能力回復のために空燃比を一時的にリッチにした場合にも、粒子状物質の発生を抑制することができるエンジンの制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0009】
本発明は、燃料を直接気筒内に噴射する燃料噴射弁を備えるとともに、酸素吸蔵能を有する排気浄化装置が排気通路に配置されたエンジンに適用される。また、請求項1に記載の発明は、所定の燃料カット条件の成立に伴い一時的に燃料噴射を停止して燃料カットを実行する燃料カット手段と、前記燃料カットの実行中に所定の解除条件が成立したのに伴い前記燃料カットを解除する場合に、空燃比を一時的にリッチ側で制御するリッチ化制御手段と、都度のエンジン運転状態に基づいて、前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力である噴射弁燃圧を制御する第1燃圧制御手段と、前記リッチ化制御手段により空燃比を一時的にリッチ側で制御する場合に、前記噴射弁燃圧を、前記第1燃圧制御手段により燃料カット解除後のエンジン運転状態に基づいて制御する場合の噴射弁燃圧よりも高燃圧で制御する第2燃圧制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
要するに、燃料カットを解除した直後では、エンジンの回転速度や負荷が比較的小さく、このようなエンジン運転状態において設定される噴射弁燃圧は比較的低い。これに対し、上記構成では、燃料カット解除後に空燃比を一時的にリッチ側にする場合に、噴射弁燃圧を、燃料カット解除後のエンジン運転状態に基づいて設定される噴射弁燃圧よりも高燃圧にする。この高燃圧化によって燃料の微粒化が促進され、その結果、排気浄化装置の浄化能力回復のために空燃比を一時的にリッチにしている状況下でも、PMの発生を抑制することができる。
【0011】
リッチ化制御では、燃料カット中の排気浄化装置の酸素吸蔵量が多いほど空燃比のリッチ度合いを大きくすることにより、過剰なリッチ化を抑制しつつ排気浄化装置の浄化能力を速やかに回復させることができる。一方、PMの発生のしやすさは空燃比のリッチ度合いに応じて相違し、目標空燃比のリッチ度合いが大きいほど、エンジンの燃焼室内が局所的にリッチ雰囲気になりやすく、その結果、PMが発生しやすくなると考えられる。
【0012】
その点に鑑み、請求項2に記載の発明では、前記リッチ化制御手段により空燃比をリッチ側で制御する場合の目標空燃比を前記排気浄化装置の酸素吸蔵量に応じて可変に設定する目標設定手段を備え、前記リッチ化制御手段は、前記目標設定手段により設定された目標空燃比で実空燃比を制御することにより空燃比を一時的にリッチ側で制御し、前記第2燃圧制御手段は、前記目標設定手段により設定された目標空燃比に応じて、前記噴射弁燃圧を可変に制御する。この構成によれば、PMの発生しやすさに応じて噴射弁燃圧を可変にすることができ、空燃比の過剰なリッチ化を抑制しつつPMの発生を好適に抑制することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、前記燃料カットの継続時間を計測する燃料カット時間計測手段を備え、前記目標設定手段は、前記燃料カット時間計測手段により計測された継続時間に応じて前記目標空燃比を可変に設定する。
【0014】
燃料カット中の排気浄化装置の酸素吸蔵量は燃料カットの継続時間に応じて相違し、燃料カットの継続時間が長いほど、排気浄化装置と空気との接触時間が長くなり、その結果、酸素吸蔵量が多くなる。したがって、上記構成のように、燃料カットの継続時間に応じて空燃比リッチ化時の目標空燃比を設定するのがよい。このとき、燃料カットの継続時間が長いほど、リッチ化制御時の目標空燃比のリッチ度合いを大きくするとよい。
【0015】
請求項4に記載の発明では、前記燃料カットの実行中にエンジンが所定の運転状態になったこと、及びエンジンが前記所定の運転状態になる前にアクセル操作があったことを前記所定の解除条件として含み、前記目標設定手段は、エンジンが前記所定の運転状態になったのに伴い前記燃料カットが解除された場合と前記アクセル操作があったのに伴い前記燃料カットが解除された場合とで前記目標空燃比を可変に設定する。
【0016】
エンジンが所定の運転状態(例えばアイドル運転状態)になったことを燃料カットの解除条件とする場合には、排気浄化装置の浄化能力回復のための時間を十分に確保することができる。一方、アクセル操作に伴い燃料カットを解除する場合には、ドライバの走行要求に応じたエンジン出力制御に速やかに移行するべく、排気浄化性能を速やかに回復させるのが望ましい。また、排気浄化性能を速やかに回復させるには、空燃比リッチ化時の目標空燃比のリッチ度合いを大きくすることが考えられる。その一方で、目標空燃比のリッチ度合いを大きくするほどPMが発生しやすくなる。その点に鑑み、上記構成では、アクセル操作に基づく燃料カット解除であるかそうでないかに応じて、空燃比リッチ化時の目標空燃比を可変にする。具体的には、アクセル操作による燃料カット解除の場合に、アクセル操作によらない場合に比べて、リッチ化制御の目標空燃比をリッチ側に設定するとよい。
【0017】
請求項5に記載の発明では、前記排気浄化装置の温度を検出する温度検出手段を備え、前記目標設定手段は、前記温度検出手段により検出された温度に応じて前記目標空燃比を可変に設定する。
【0018】
燃料カット中における排気浄化装置の酸素吸蔵量は排気浄化装置の温度に応じても相違し、一般に、温度が高いほど酸素吸蔵量が多くなる。したがって、上記構成のように、排気浄化装置の温度に応じて空燃比リッチ化時の目標空燃比を設定するのがよい。このとき、排気浄化装置の温度が高いほど、空燃比リッチ化時の目標空燃比をリッチ側に設定するとよい。なお、温度検出手段としては、エンジン運転状態に基づいて排気浄化装置の温度を算出(推定)することにより排気浄化装置の温度を検出する構成や、排気浄化装置の温度を検出する温度センサを設け、同センサにより直接検出する構成等が挙げられる。
【0019】
請求項6に記載の発明では、前記第2燃圧制御手段は、前記燃料カットの実行中に、前記噴射弁燃圧を、前記第1燃圧制御手段により燃料カット解除後のエンジン運転状態に基づいて制御する場合の噴射弁燃圧よりも高燃圧にする。本構成では、噴射弁燃圧の燃圧上昇の所要時間を考慮して、燃料カット解除に伴う空燃比のリッチ化を実施するよりも前に噴射弁燃圧を所定燃圧まで昇圧させておく。これにより、排気浄化装置の浄化能力回復のために空燃比をリッチ化する場合に、そのリッチ化の開始当初から噴射弁燃圧を高圧状態にすることができ、PM発生を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】エンジン制御システムの全体概略構成図。
【図2】燃料カット制御の処理手順を示すフローチャート。
【図3】触媒中立化制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】燃圧制御の処理手順を示すフローチャート。
【図5】中立化制御時の目標空燃比と目標燃圧との関係を示す図。
【図6】燃圧制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【図7】他の実施形態の燃圧制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【図8】他の実施形態の燃圧制御を示すフローチャート。
【図9】他の実施形態の燃圧制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、内燃機関である筒内噴射式の車載多気筒4サイクルガソリンエンジンを対象にエンジン制御システムを構築するものとしている。当該制御システムにおいては、電子制御ユニット(以下、ECUという)を中枢として燃料噴射量の制御や点火時期の制御等を実施する。このエンジン制御システムの全体概略構成図を図1に示す。
【0022】
図1に示すエンジン10において、吸気管11の最上流部にはエアクリーナ12が設けられ、エアクリーナ12の下流側には吸入空気量を検出するためのエアフロメータ13が設けられている。また、エアフロメータ13の下流側には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ15によって開度調節されるスロットルバルブ14が設けられている。スロットルバルブ14の開度(スロットル開度)は、スロットルアクチュエータ15に内蔵されたスロットル開度センサにより検出される。
【0023】
スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク16が設けられ、サージタンク16において、吸気管内圧力を検出するための吸気管内圧力センサ17が設けられている。サージタンク16には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド18が接続されている。また、吸気マニホールド18は、更に各気筒の吸気ポートに接続されている。
【0024】
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートには、それぞれ吸気バルブ21及び排気バルブ22が設けられている。この吸気バルブ21の開動作によりサージタンク16内の空気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ22の開動作により燃焼後の排ガスが排気管24に排出される。
【0025】
エンジン10の各気筒の上部には、燃焼室23内に燃料を直接供給する燃料噴射弁19が取り付けられている。燃料噴射弁19には、燃料配管25を介して燃料タンク38が接続されており、燃料配管25において、その最上流部に電磁駆動式のフィードポンプ39が配置され、フィードポンプ39の下流側に機械駆動式の高圧ポンプ26が配置されている。燃料タンク38内の燃料は、フィードポンプ39により汲み上げられて所定のフィード圧(例えば0.3MPa)まで加圧された後、高圧ポンプ26に圧送される。高圧ポンプ26では、フィードポンプ39から圧送されるフィード圧の燃料を更に高圧にして(例えば4〜20MPaにして)デリバリパイプ27に圧送され、デリバリパイプ27から各気筒の燃料噴射弁19に供給される。その後、燃料噴射弁19により燃焼室23内に噴射される。
【0026】
エンジン10のシリンダヘッドには点火プラグ29が取り付けられている。点火プラグ29には、点火コイル等よりなる点火装置(図示略)を通じて、所望とする点火時期において高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ29の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内の混合気が着火され燃焼に供される。
【0027】
排気管24には、排ガス中のCO,HC,NOx等を浄化するための触媒として三元触媒31が設けられている。三元触媒31は、リーン雰囲気で酸素を吸蔵し、リッチ雰囲気で酸素を放出する酸素ストレージ能を有している。本システムでは、この三元触媒31の酸素ストレージ能を利用して排気浄化が行われる。
【0028】
排気管24には、排気を検出対象として混合気の空燃比(酸素濃度)を検出するセンサが設けられている。詳しくは、排気管24において、触媒31の上流側には、排気中の酸素濃度に比例した広域の空燃比信号を出力する広域検出タイプの空燃比センサ32が設けられ、触媒31の下流側には、大気中と排気中の酸素濃度の差により二値の起電力を発生する起電力出力タイプのO2センサ33が設けられている。O2センサ33は、空燃比がリッチかリーンかで異なる起電力を発生し、具体的には、燃料リッチ時には約0.9Vの出力を示し、燃料リーン時には約0Vの出力を示す。なお、本システムには、O2センサ33の下流側において更に触媒(三元触媒等)34が設けられている。
【0029】
その他、エンジン10には、冷却水温を検出する冷却水温センサ35や、エンジン10の所定クランク角毎に(例えば10°CA周期で)矩形状のクランク角信号を出力するクランク角センサ36、デリバリパイプ27内の燃料圧力を検出する燃圧センサ37などが取り付けられている。
【0030】
ECU40は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)41を主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、都度のエンジン運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。すなわち、ECU40のマイコン41は、前述した各種センサなどから各々検出信号を入力し、それらの各種検出信号に基づいて、燃料噴射量や点火時期等を演算して燃料噴射弁19や点火装置の駆動等を制御する。
【0031】
エンジン制御について具体的には、マイコン41は、空燃比センサ32の出力値に基づいて空燃比制御を実施する。具体的には、都度のエンジン運転状態(例えば、エンジン回転速度やエンジン負荷)に基づいて目標空燃比を算出し、その算出した目標空燃比と、空燃比センサ32により検出される実空燃比との偏差を解消するべく空燃比フィードバック制御を実施する。また、マイコン41は、燃圧センサ37の出力値に基づいてデリバリパイプ27内の燃圧制御を実施しており、具体的には、都度のエンジン運転状態(例えば、エンジン回転速度やエンジン負荷)に基づいて、デリバリパイプ27内の燃圧の目標値である目標燃圧を算出し、その算出した目標燃圧と、燃圧センサ37により検出される実燃圧との偏差を解消するべく燃圧フィードバック制御を実施する。なお、デリバリパイプ27内の燃圧を制御することにより、燃料噴射弁19に供給される燃料の圧力である噴射弁燃圧が制御される。また、都度のエンジン運転状態に基づく上記の燃圧制御が、第1燃圧制御手段により実施される燃圧制御に相当する。
【0032】
また、ECU40のマイコン41は、車両減速中に所定の燃料カット条件が成立した場合に、燃料噴射弁19による燃料噴射を一時的に停止する(燃料カットを実施する)とともに、燃料カットの実行中に所定の解除条件が成立した場合に、燃料カットを解除してエンジン10を燃焼停止状態から燃焼状態に復帰させる制御を実施している。ここで、燃料カット条件としては、例えば、アクセル操作量が0であり、かつエンジン回転速度が所定の燃料カット回転速度(例えば1000rpm)以上であることを含む。また、解除条件としては、例えば、燃料カット中にエンジン回転速度が所定の復帰回転速度(例えば、アイドル回転速度又はその近傍)以下になったこと、及びエンジン回転速度が所定の復帰回転速度まで低下する前にアクセル操作が行われたことを含む。
【0033】
ところで、燃料カットによってエンジン10の燃焼が停止された状態では、排気管24内が大気雰囲気となるため、触媒31が酸素吸蔵過多の状態になり、その酸素吸蔵過多に起因して触媒31のNOx浄化能が低下することがある。かかる場合、燃料カットからの復帰直後において排気中に含まれるNOxを触媒31で浄化しきれず、NOx排出量が増加するおそれがある。
【0034】
これに鑑み、本システムでは、燃料カットを解除してエンジン10を燃料停止状態から燃焼状態に復帰させる場合に、空燃比を一時的にリッチ側に制御する触媒中立化制御を実施することとしている。つまり、燃料カットを解除した直後では、触媒31の酸素吸蔵量が過多になることに鑑み、一時的にリッチ燃焼を行わせることで、その燃焼に際し排出される排気中のHCやCOなどの還元成分によって触媒31の酸素吸蔵量を低減させるようにしている。
【0035】
その一方で、触媒中立化制御により空燃比を一時的にリッチ側に制御した場合、燃焼の際に粒子状物質(PM)が発生しやすくなると考えられる。特に直噴式のエンジンでは、燃焼室23内において局所的にリッチ雰囲気が形成されやすく、PM発生が生じやすい。
【0036】
そこで、本実施形態では、触媒中立化制御により空燃比を一時的にリッチ側で制御する期間では、燃料噴射弁19に供給される燃料の圧力である噴射弁燃圧を、燃料カットの解除後のエンジン運転状態に基づき設定される噴射弁燃圧よりも高燃圧で制御することとしている。なお、この燃圧制御が、第2燃圧制御手段により実施される燃圧制御に相当する。つまり、触媒中立化制御による空燃比リッチ時には、噴射弁燃圧を高めることによって燃料の微粒化を促進させ、これにより、触媒能回復のための空燃比リッチの状況下でもPM排出が抑制されるようにしている。
【0037】
次に、本システムにおける燃料カット制御、触媒中立化制御及び燃圧制御について、図2〜図4のフローチャートを用いて説明する。ここで、図2は燃料カット制御の処理手順を示し、図3は触媒中立化制御の処理手順を示し、図4は燃圧制御の処理手順を示す。これらの処理は、ECU40のマイコン41によりそれぞれ所定周期毎に実行される。
【0038】
まず、本システムの前提となる燃料カット制御について図2を用いて説明する。図2において、ステップS101では、エンジン運転中か否かを判定し、エンジン運転中の場合、ステップS102へ進み、所定の燃料カット条件が成立したか否かを判定する。燃料カット条件が成立した場合、ステップS103へ進み、燃料カットフラグFfcをオンにするとともに、燃料噴射弁19による燃料供給を停止する。
【0039】
エンジン10が燃焼停止状態の場合にはステップS101で否定判定され、ステップS104へ進む。ステップS104では、燃料カットの実行中か否かを判定する。燃料カット実行中であればステップS105へ進み、燃料カットを解除する所定の解除条件が成立したか否かを判定する。このとき、解除条件が成立していなければ、一旦そのまま本処理を終了し、燃料カットをそのまま継続する。一方、解除条件が成立した場合にはステップS106へ進み、燃料カットフラグFfcをオフにするとともに、燃料噴射弁19による燃料供給を再開する。
【0040】
次に、触媒中立化制御について図3を用いて説明する。図3において、ステップS201では、燃料カットフラグFfcのオンからオフへの切替タイミングか否かを判定する。ステップS201で肯定判定された場合、ステップS202へ進み、中立化実行フラグFriをオンする。また、触媒中立化実行中の目標空燃比として中立化空燃比λtgaを取得する。なお、中立化空燃比λtgaは、理論空燃比よりもリッチ側の値であり、本実施形態では、図4の燃圧制御によって触媒中立化の実行前に算出される。したがって、ここでは、燃圧制御で算出された値を取得する。続くステップS203では、空燃比センサ32により検出される実空燃比λatを取得し、ステップS204で、その取得した実空燃比λatを目標空燃比(中立化空燃比λtga)に一致させるべく空燃比フィードバック制御を実行する。
【0041】
燃料カット解除のタイミングでなければステップS201で否定判定され、ステップS205へ進む。ステップS205では、中立化実行フラグFriがオンか否かを判定する。Fri=オンの場合(触媒中立化の実行中の場合)、ステップS206へ進み、O2センサ33の出力値を取得する。また、ステップS207において、その出力値がリッチ出力(約0.9V)か否かを判定する。このとき、リーン出力(約0V)の場合にはステップS203及びS204の処理を実行することにより、中立化空燃比λtgaに基づくリッチ化制御を継続する。一方、リッチ出力の場合にはステップS208へ進み、中立化実行フラグFriをオフに切り替える。これにより、触媒31の一時的なリッチ化が終了され、通常時の空燃比制御に移行する。
【0042】
次に、本実施形態の燃圧制御について図4を用いて説明する。図4において、ステップS301では、燃料カットフラグFfcに基づいて燃料カットの実行中か否かを判定する。燃料カットの実行中でなければ、ステップS302へ進み、中立化実行フラグFriに基づいて触媒中立化の実行中か否かを判定する。このとき、触媒中立化の実行中でなければステップS303へ進み、都度のエンジン運転状態に基づいて、デリバリパイプ27内の目標燃圧Ptgを算出する。ここでは、エンジン回転速度とエンジン負荷(例えば吸入空気量)とに基づいて目標燃圧Ptgを算出する。
【0043】
一方、燃料カット実行中の場合にはステップS304へ進み、燃料カット解除後に実施される触媒中立化時の目標空燃比である中立化空燃比λtgaを算出する。本実施形態では、燃料カット開始時の触媒31の温度(触媒温度)を検出し、その検出した触媒温度に基づいて中立化空燃比λtgaを可変に設定している。具体的には、燃料カット中では触媒温度が高いほど触媒31の酸素吸蔵量が多くなることを考慮し、触媒温度が高いほど中立化空燃比λtgaとしてリッチ側の値を設定している。ここで、触媒温度は、エンジン運転状態に基づいて算出(推定)してもよいし、あるいは、触媒31の温度を検出する温度センサを配置し、同センサにより触媒温度を直接検出してもよい。なお、燃料カットの実行中では、触媒中立化時の目標空燃比が算出されるが、空燃比制御は実施されないため、燃料カット時用の目標空燃比については算出されない。
【0044】
続くステップS305では、デリバリパイプ27内の目標燃圧Ptgを算出する。燃料カット実行中では、中立化空燃比λtgaに基づいて目標燃圧Ptgを可変に設定しており、具体的には図5に示すように、中立化空燃比λtgaのリッチ度合いが大きいほど、目標燃圧Ptgが高燃圧に設定されるようになっている。また、ここで設定される目標燃圧Ptgは、燃料カット解除直後における所定期間(例えば数秒)のエンジン運転状態に基づき設定され得る目標燃圧よりも高圧側の値であり、本実施形態では、燃圧の制御範囲の最大値よりも若干低い値を最小目標燃圧とし、その最小目標燃圧Ptg1よりも高圧側の値が設定される。具体的には、燃圧の制御範囲が4〜20MPaであれば、例えば15〜20MPaが目標燃圧Ptgとして設定される。この場合、燃料カットからの復帰直後では、エンジン運転状態は低負荷・低回転の状態であると想定される。特に、エンジン回転速度が復帰回転速度になることで燃料カットが解除される場合は当然そうなる。そのような運転状態では、通常、燃圧が上限値近くに設定されることはないが、本実施形態では、燃料カット解除直後のエンジン運転状態が低負荷・低回転であると想定されていても、比較的高い燃圧(上限値近くの燃圧)が目標燃圧Ptgとして設定される。
【0045】
ステップS306では、燃圧センサ37により検出される実燃圧Patを取得し、ステップS307で、その取得した実燃圧Patが目標燃圧Ptgに一致するよう高圧ポンプ26の駆動を制御する。
【0046】
さて、燃料カットの実行中において所定の解除条件が成立し、燃料カットが解除されると、触媒31の中立化(空燃比リッチ化)が開始される。この場合、ステップS301で否定判定、ステップS302で肯定判定され、ステップS306及びS307の処理を実行する。つまり、触媒中立化の実行中では、燃料カット時の目標燃圧(中立化空燃比Ptgaに基づき算出した目標燃圧)を用い、その目標燃圧Ptgと実燃圧Patとが一致するよう高圧ポンプ26の駆動を制御する。また、本実施形態では、触媒中立化の開始前に、より具体的には燃料カットの実行中に、デリバリパイプ27内の燃圧を予め高圧状態にしておくため、触媒中立化の開始当初から高燃圧の燃料が燃料噴射弁19から噴射される。
【0047】
次に、本実施形態の燃圧制御の具体的態様について、図6のタイムチャートを用いて説明する。図中、(a)はアクセルペダルの踏み込み/踏み込み解除の推移、(b)は車速の推移、(c)はエンジン回転速度の推移、(d)は燃料カットフラグFfcの推移、(e)は中立化実行フラグFriの推移、(f)は目標空燃比の推移、(g)はデリバリパイプ27内の燃圧の推移を示す。なお、(g)中、実線は実燃圧Patを示し、一点鎖線は目標燃圧Ptgを示す。
【0048】
図6において、車両走行中(t11よりも前)では、エンジン回転速度とエンジン負荷(例えば吸入空気量)とに基づいてデリバリパイプ27の目標燃圧Ptgが算出される。また、その算出した目標燃圧Ptgに基づいて高圧ポンプ26の駆動が制御される。そして、車両走行中のタイミングt11で、アクセルペダルが踏み込まれた状態から踏み込み解除の状態になると、エンジン回転速度が所定の燃料カット回転速度以上であることを条件に燃料カットフラグFfcがオンされ、燃料噴射弁19による燃料噴射が停止される。この燃料カットに伴い、エンジン10に吸入された空気がそのまま排気通路に供給され、これにより、触媒31の酸素吸蔵量が増加する。また、タイミングt11では、燃料カットの実行開始に伴い、触媒中立化時の目標空燃比である中立化空燃比Ptgaが算出され、その中立化空燃比Ptgaに基づいてデリバリパイプ27内の目標燃圧Ptgが算出される。
【0049】
燃料カット実行中のタイミングt12で、エンジン回転速度が所定の復帰回転速度Nr以下になると、燃料カットフラグFfcがオンからオフに切り替えられ、燃料噴射弁19による燃料噴射が再開される。また、タイミングt12では、中立化実行フラグFriがオンされるとともに、中立化空燃比λtgaに基づく空燃比制御が開始される。この空燃比リッチの期間(t12〜t13)では、中立化空燃比λtgaに基づき算出した目標燃圧Ptgでの燃圧制御が継続される。
【0050】
ここで、燃料カット解除後のエンジン運転状態は低回転及び低負荷であり、これらのエンジン運転状態パラメータに基づき算出した目標燃圧(例えばアイドル運転時の目標燃圧P1、「解除後燃圧」に相当)での燃圧制御(第1燃圧制御)を実施すると、噴射弁燃圧が低いため、リッチ分の燃料の燃焼に伴いPM排出量が多くなることが懸念される。これに対し、本実施形態では、空燃比リッチの期間(t12〜t13)では、エンジン運転状態に基づき設定される目標燃圧で実燃圧を制御するのではなく、これよりも高燃圧側での燃圧制御(第2燃圧制御)を実施することにより、燃料の微粒化を促進させる。
【0051】
そして、O2センサ33においてリッチ出力が検出されると、そのタイミングt13で中立化実行フラグFriがオンからオフに切り替えられる。また、タイミングt13では、燃料カット解除後の都度のエンジン運転状態(エンジン回転速度及びエンジン負荷)に基づいて目標燃圧Ptgを再設定する。なお、図6では、燃料カット後においてエンジン10がアイドル運転状態になった場合を想定しており、タイミングt13では、アイドル運転時の目標燃圧P1(例えば4MPa)に設定されている。この目標燃圧の変更により、デリバリパイプ27内の燃圧が、現在のエンジン運転状態に対応する燃圧まで低下する。
【0052】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0053】
燃料カット解除後に空燃比を一時的にリッチ側にする触媒中立化制御を実施する場合に、噴射弁燃圧を、燃料カット解除後のエンジン運転状態に基づいて設定される噴射弁燃圧よりも高燃圧で制御する構成とした。これにより、触媒中立化制御の実施中において燃料の微粒化を促進させることができ、その結果、触媒31の浄化能力回復のために空燃比を一時的にリッチにしている状況下でも、PMの発生を抑制することができる。
【0054】
触媒中立化制御により空燃比をリッチ側で制御する場合の目標空燃比である中立化空燃比λtgaを触媒31の酸素吸蔵量に応じて可変に設定し、より具体的には、燃料カット開始時の触媒31の温度(触媒温度)を検出し、その検出した触媒温度に基づいて中立化空燃比λtgaを可変に設定する構成とした。酸素吸蔵量にかかわらず触媒中立化時の目標空燃比を一定にした場合には、触媒31の酸素吸蔵量が多いほど触媒中立化に要する時間が長くなることが考えられるが、上記構成によれば、燃料カット中の酸素吸蔵量に応じて目標空燃比が設定されるため、触媒中立化制御による触媒31の浄化能力回復を速やかに実施することができる。また、その設定した中立化空燃比λtgaに応じて噴射弁燃圧を可変に制御する構成としたため、PMの発生しやすさに応じて噴射弁燃圧を可変にすることができ、PMの発生を好適に抑制することができる。
【0055】
燃料カットの実行中に噴射弁燃圧を高圧状態にしておく構成としたため、より具体的には、燃料カットの開始タイミングで、エンジン運転状態に基づき目標燃圧を算出する第1燃圧制御から、触媒中立化制御での目標空燃比に基づき目標燃圧を算出する第2燃圧制御に切り替える構成としたため、燃料カット解除に伴い空燃比のリッチ化を実施するよりも前に噴射弁燃圧を所定燃圧まで昇圧させておくことができる。これにより、触媒31の浄化能力回復のための空燃比リッチ化の開始当初から高圧の燃料を噴射することができる。
【0056】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0057】
・燃料カットの継続時間を計測し、その計測した継続時間に応じて触媒中立化時の目標空燃比である中立化空燃比λtgaを可変に設定する。触媒31の酸素吸蔵量は燃料カットの継続時間に応じて相違し、燃料カットの継続時間が長いほど空気との接触時間が長くなり、その結果、触媒31の酸素吸蔵量が多くなる。したがって、燃料カットの継続時間が長いほど、触媒中立化時の目標空燃比をリッチ側に設定するとよい。
【0058】
図7は、本構成の具体的態様を示すタイムチャートである。図中、(a)はエンジン回転速度の推移、(b)は燃料カットフラグFfcの推移、(c)は燃料カット時間カウンタの推移、(d)は中立化実行フラグFriの推移、(e)は目標空燃比の推移、(f)はデリバリパイプ27内の燃圧の推移を示す。なお、(f)中、実線は実燃圧Patを示し、一点鎖線は目標燃圧Ptgを示す。
【0059】
図7において、タイミングt21で所定の燃料カット条件が成立し、燃料カットフラグFfcがオンされると、燃料カット時間カウンタのカウントアップが開始される。また、燃料カット開始時の触媒温度に基づいて中立化空燃比λtgaが算出されるとともに、その中立化空燃比λtgaをパラメータとして目標燃圧Ptgが算出される。ここでは、中立化空燃比λtgaとしてλ1が設定されている。そして、燃料カットの実行中のタイミングt22で、燃料カット時間カウンタが判定値THを超えると、中立化空燃比λtgaが、λ1よりもリッチ度合いの大きいλ2に変更されるとともに、その変更後の空燃比λ2に基づいて目標燃圧Ptgが高燃圧側に再設定される。ここでは、目標燃圧Ptgが、現在の設定値に対してΔPだけ高燃圧の値に変更される。また、タイミングt23で燃料カットが解除されると、中立化空燃比λtgaをλ2として空燃比制御が実施され、これにより触媒31の中立化が実行される。
【0060】
・燃料カットを解除する場合としては、燃料カットの実行中にアクセル操作があり、アクセル操作量に基づく通常のエンジン制御に移行する場合や、燃料カット中にアクセル操作はないがエンジンストール回避のために燃焼復帰する場合がある。ここで、アクセル操作に伴い燃料カット解除を行う場合には、ドライバの走行要求に応じたエンジン出力制御に速やかに移行するべく、排気浄化性能を速やかに回復させるのが望ましい。また、排気浄化性能を速やかに回復させるには、空燃比リッチ化時の目標空燃比のリッチ度合いを大きくすることが考えられる。その一方で、目標空燃比のリッチ度合いを大きくするほどPMが発生しやすくなる。これに鑑み、本構成では、燃料カット実行中においてアクセル操作に伴い燃料カットを解除する場合と、アクセル操作を伴わずにエンジンが所定の運転状態(例えばエンジン回転速度が所定の復帰回転速度以下)になったのに伴い燃料カットを解除する場合とで、触媒中立化時の目標空燃比(中立化空燃比)を異なる空燃比に設定する。具体的には、アクセル操作による燃料カット解除の場合に、アクセル操作がない場合に比べて、触媒中立化時の目標空燃比をリッチ側に設定する。
【0061】
図8は、本実施形態の燃圧制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理はECU40のマイコン41により所定周期毎に実行される。なお、図8中、図4と同じ処理については図4と同じステップ番号を付してその説明を省略する。図8において、ステップS401では燃料カットの実行中か否かを判定する。燃料カット中であれば、ステップS404〜S407において、図4のステップS304〜S307と同様の処理を実行する。一方、燃料カット解除後ではステップS401で否定判定され、ステップS408へ進む。ステップS408では、燃料カットフラグFfcのオンからオフへの切替タイミング、つまり燃料カット解除のタイミングか否かを判定する。ステップS408で肯定判定された場合、ステップS409へ進み、その燃料カット解除がアクセル操作に伴い実行されたか否かを判定する。このとき、アクセル操作によらない場合には、ステップS404で算出した中立化時の目標空燃比(中立化空燃比λtga)、及びステップS405で算出した目標燃圧Ptgをそのまま維持する。一方、アクセル操作による場合には、ステップS410へ進み、中立化空燃比λtgaをリッチ度合いが大きい側に変更するとともに、その変更後の中立化空燃比に基づいて目標燃圧Ptgを再設定する。
【0062】
図9に、上記構成の具体的態様を表すタイムチャートを示す。図中、(a)はアクセルペダルの踏み込み/踏み込み解除の推移、(b)は燃料カットフラグFfcの推移、(c)は中立化実行フラグFriの推移、(d)は目標空燃比の推移、(e)はデリバリパイプ27内の燃圧の推移を示す。なお、(e)中、実線は実燃圧Patを示し、一点鎖線は目標燃圧Ptgを示す。
【0063】
図9において、タイミングt31で燃料カットが実行されると、そのときの触媒温度に基づき設定した中立化空燃比λtga(ここではλ1)をパラメータとして目標燃圧Ptgが算出される。そして、燃料カットの実行中のタイミングt32で、アクセル操作が行われたのに伴い燃料カットが解除されると、中立化空燃比が、λ1よりもリッチ度合いが大きいλ3に変更されるとともに、その変更後の空燃比λ3に基づいて、目標燃圧Ptgが高燃圧側に再設定される。また、タイミングt32で燃料カットが解除された場合には、中立化空燃比λtgaをλ3として空燃比制御が実施され、これにより触媒31の中立化が実行される。
【0064】
・上記実施形態では、燃料カット開始時の触媒温度に応じて、触媒中立化時の目標空燃比である中立化空燃比を可変にしたが、中立化空燃比については、予め定めた固定値としてもよい。この場合、触媒中立化時の目標燃圧についても固定値が設定される。
【0065】
・燃料カットの開始タイミングの触媒温度に応じて中立化空燃比を算出する構成に代えて、燃料カットの実行中において都度検出(エンジン運転状態に基づいて算出又はセンサで直接検出)される触媒温度に基づいて中立化空燃比を算出する構成としてもよい。燃料カットの実行中では、エンジン10に吸入された空気がそのまま触媒31に供給されるため、触媒温度が都度変化するとともに、その温度変化に伴い酸素吸蔵量が変化することが考えられる。したがって、上記構成とすることにより、触媒中立化時において酸素吸蔵量に応じた目標空燃比を設定することができ、その結果、触媒31の浄化能力回復を速やかに実施することができる。また、その際、空燃比のリッチ度合いに応じて噴射弁燃圧が可変制御されるため、PM排出を好適に抑制することができる。
【0066】
・上記実施形態では、燃料カットの開始タイミングt11で、エンジン運転状態に基づき目標燃圧を算出する制御(第1燃圧制御)から、中立化空燃比λtgaに基づき目標燃圧を算出する制御(第2燃圧制御)に切り替えることにより、燃料カットの実行中に、噴射弁燃圧を、燃料カットの解除後のエンジン運転状態に対応する噴射弁燃圧よりも高燃圧にしておく構成とした。これに対し、本構成では、触媒中立化の開始タイミングt12で、第1燃圧制御から第2燃圧制御に切り替える構成とする。この場合、触媒中立化の開始と同じタイミングで、デリバリパイプ27内の燃圧の高圧側への変更が開始されるが、本構成においても、触媒中立化の実行時において噴射弁燃圧(デリバリパイプ27内の燃圧)を高圧状態にすることができ、触媒中立化に伴うPM排出量を抑制するといった効果を得ることができる。あるいは、燃料カットの実行途中のタイミングで、第1燃圧制御から第2燃圧制御に切り替える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…エンジン、19…燃料噴射弁、26…高圧ポンプ、27…デリバリパイプ、31…三元触媒(排気浄化装置)、32…空燃比センサ、33…O2センサ、37…燃圧センサ、38…燃料タンク、39…フィードポンプ、40…ECU、41…マイコン(燃料カット手段、リッチ化制御手段、第1燃圧制御手段、第2燃圧制御手段、目標設定手段、燃料カット時間計測手段、温度検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を直接気筒内に噴射する燃料噴射弁を備えるとともに、酸素吸蔵能を有する排気浄化装置が排気通路に配置されたエンジンに適用され、
所定の燃料カット条件の成立に伴い一時的に燃料噴射を停止して燃料カットを実行する燃料カット手段と、
前記燃料カット手段による燃料カットの実行中に所定の解除条件が成立したのに伴い前記燃料カットを解除する場合に、空燃比を一時的にリッチ側で制御するリッチ化制御手段と、
都度のエンジン運転状態に基づいて、前記燃料噴射弁に供給される燃料の圧力である噴射弁燃圧を制御する第1燃圧制御手段と、
前記リッチ化制御手段により空燃比を一時的にリッチ側で制御する場合に、前記噴射弁燃圧を、前記第1燃圧制御手段により燃料カット解除後のエンジン運転状態に基づいて制御する場合の噴射弁燃圧よりも高燃圧で制御する第2燃圧制御手段と、
を備えることを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記リッチ化制御手段により空燃比をリッチ側で制御する場合の目標空燃比を前記排気浄化装置の酸素吸蔵量に応じて可変に設定する目標設定手段を備え、
前記リッチ化制御手段は、前記目標設定手段により設定された目標空燃比で実空燃比を制御することにより空燃比を一時的にリッチ側で制御し、
前記第2燃圧制御手段は、前記目標設定手段により設定された目標空燃比に応じて、前記噴射弁燃圧を可変に制御する請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記燃料カットの継続時間を計測する燃料カット時間計測手段を備え、
前記目標設定手段は、前記燃料カット時間計測手段により計測された継続時間に応じて前記目標空燃比を可変に設定する請求項2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記燃料カットの実行中にエンジンが所定の運転状態になったこと、及びエンジンが前記所定の運転状態になる前にアクセル操作があったことを前記所定の解除条件として含み、
前記目標設定手段は、エンジンが前記所定の運転状態になったのに伴い前記燃料カットが解除された場合と前記アクセル操作があったのに伴い前記燃料カットが解除された場合とで前記目標空燃比を可変に設定する請求項2又は3に記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記排気浄化装置の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記目標設定手段は、前記温度検出手段により検出された温度に応じて前記目標空燃比を可変に設定する請求項2乃至4のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記第2燃圧制御手段は、前記燃料カットの実行中に、前記噴射弁燃圧を、前記第1燃圧制御手段により燃料カット解除後のエンジン運転状態に基づいて制御する場合の噴射弁燃圧よりも高燃圧にする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−15065(P2013−15065A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148066(P2011−148066)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】