説明

エンジンの燃料噴射・点火制御方法及び燃料噴射・点火制御装置

【課題】燃料カット中に加速操作が行われたときに混合気の空燃比を適正な範囲に保ちつつ燃料噴射の再開と点火時期の制御とを行わせ得る燃料噴射・点火制御方法を提供する。
【解決手段】燃料カットが行われている間にエンジンを加速する加速操作が行われたときに燃料カットが行われていた時間とエンジンの運転状態とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値を決定し、この加速時噴射復帰用噴射量補正値を加速運転時噴射量補正値に加えることにより求めた総噴射補正量だけ燃料噴射量を定常時より増加させる加速時噴射復帰用噴射制御を行うとともに、加速時噴射復帰制御における総噴射補正量とスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を決定して、この加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値だけ点火時期を定常運転時よりも遅角させる加速時噴射復帰用点火制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料噴射と点火とを制御する燃料噴射・点火制御方法及びこの方法を実施するために用いる燃料噴射・点火制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、エンジンを搭載した車両などにおいては、燃費の節約を図ったり、排気ガスの浄化を図ったりするために、エンジンを減速する際に燃料噴射を停止させて燃料をカットすることが行われている。
【0003】
燃料カットを行った後、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに燃料カットを中止して、燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御を行う。燃料カットが行われている状態では、吸気管の壁面に付着している燃料の量が少なくなっているため、燃料カットを中止して燃料噴射を再開させた際には、噴射した燃料の多くが吸気管の液面に液膜を形成するために使われ、混合気の空燃比がリーンになる傾向がある。そのため、燃料カット中止条件成立時噴射制御においては、燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させるようにしている。
【0004】
しかしながら、燃料カット状態を終了して燃料噴射を再開させる際に、燃料噴射量を増加させると、エンジンの出力トルクが急増して、トルクショックが生じることがある。そこで、特許文献1に示された装置では、燃料噴射を再開する際に、エンジンの点火時期を予め定めた一定の噴射復帰時点火時期遅角量補正値だけ定常時の点火時期よりも遅角させた後、点火時期を時間の経過に伴って徐々に進角させて正規の点火時期に戻す燃料カット中止条件成立時点火制御を行うことにより、出力トルクの急増を防いで、トルクショックを生じさせないようにしている。
【0005】
また燃料噴射装置により燃料が供給されるエンジンにおいては、加速操作が行われたときに、燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように燃料噴射を制御する加速増量制御を行うようにしている。
【特許文献1】特開昭54−145819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両などに搭載されるエンジンにおいては、減速状態から急に加速操作が行われることがしばしばある。加速操作が行われる際には、スロットルバルブが急に開かれて吸入空気量が増加するため、混合気の空燃比を適切な値にするためには、エンジンに供給する燃料量を増加させる必要がある。前述のように、燃料カットを中止して燃料の噴射を再開する際には、燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させる制御が行われ、またエンジンが加速される際には、燃料噴射量を増加させる加速増量制御が行われるが、燃料カット中にエンジンの加速操作が行われたときには、通常の燃料カット中止条件成立時噴射制御における噴射量の増加量と、加速増量制御による増加量とを合わせた分だけ燃料噴射量を増加させてもなお燃料量が不足することがある。このような状態は、特に、燃料カットが行われていた時間が長い場合に顕著に生じる。
【0007】
燃料噴射再開時にエンジンに供給される燃料量が不足していると、混合気がリーンになるため、エンジンを加速することができなくなって、運転者の意に沿うことができない状況が生じ、運転性能が悪化する。また混合気がリーンになると、最悪の場合にはエンジンが焼き付けを起こすおそれがある。
【0008】
上記のような状態が生じるのを防ぐため、燃料噴射再開時の燃料噴射量を十分に多くしておくことが考えられる。しかしながら、燃料噴射再開時の燃料噴射量をむやみに増加させると、燃料カットが実行されていた時間が短く、吸気管の管壁に付着している燃料量がそれほど失われていない状態で燃料噴射が再開された場合に混合気がリッチになりすぎ、排気ガス成分が悪化したり、エンジンの出力トルクが十分に得られなくなって運転性能が低下したりするという問題が生じる。
【0009】
また従来技術では、燃料カット中止条件成立時噴射制御を行う際の点火時期の遅角量(噴射復帰時点火時期遅角量補正値)を一定としていたが、燃料噴射開始時にエンジンに供給される燃料量の如何に関わりなく噴射復帰時点火時期遅角量補正値を一定に設定しておくと、以下のような問題が生じる。
【0010】
即ち、燃料カット中止条件成立時噴射制御を行う際にエンジンに供給される燃料量に対して点火時期の遅角量が多すぎると、エンジンの出力トルクが過度に抑えられるため、加速操作を行った運転者は、加速を行うためにスロットルバルブを更に開くことになる。運転者がスロットルバルブを更に開くと、混合気の空燃比が大幅にリーン側に変化するため、エンジンが加速することができなくなって運転性能が悪化したり、エンジンが焼き付けを起こしたりするおそれがある。このような状態は、燃料カットを開始してから燃料カットを中止するまでの時間が長い場合に顕著に生じる。
【0011】
また燃料カットが開始された直後にエンジンの加速操作が行われた場合のように、燃料噴射再開時にエンジンに与えられる燃料量が多い場合に、点火時期の遅角量が少なすぎると、エンジンの出力トルクの抑制が十分に働かずにトルクショックが生じるおそれがある。
【0012】
本発明の目的は、燃料カット中に加速操作が行われたときに混合気の空燃比を適正な範囲に保ちつつ燃料噴射の再開と点火時期の制御とを行わせることができるようにして、運転性能が低下したりエンジンが焼き付いたりするおそれをなくすことができるようにしたエンジンの燃料噴射・点火制御方法及びこの方法を実施するために用いる燃料噴射・点火制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、エンジンが減速状態にあることが検出されたときにエンジンに燃料を供給する燃料噴射装置からの燃料噴射を停止させる燃料カットを行った後、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御を行い、エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときには燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように燃料噴射を制御する加速増量制御を行うエンジンの燃料噴射・点火制御方法に適用される。
【0014】
本発明においては、燃料カットが行われている間にエンジンを加速する加速操作が行われたことが検出されたときに燃料カットが行われていた時間とエンジンの運転状態とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値を決定して、該加速時噴射復帰用噴射量補正値を加速運転時噴射量補正値に加えることにより求めた総噴射補正量だけ燃料噴射量を定常時より増加させる加速時噴射復帰用噴射制御を行うとともに、加速時噴射復帰用噴射制御における総噴射補正量とスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を決定して、該加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値だけ点火時期を定常運転時よりも遅角させる加速時噴射復帰用点火制御を行う。
【0015】
本発明の好ましい態様では、燃料カットが行われている間に加速操作が検出されたときの加速時噴射復帰用噴射量補正値を、燃料カットが実行された燃焼サイクル数とエンジンのスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値演算マップを検索することにより演算する。また、加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値は、加速時噴射復帰用噴射量補正値と加速運転時噴射量補正値との和からなる総噴射補正量とエンジンのスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値演算マップを検索することにより演算する。
【0016】
本発明の他の好ましい態様では、点火時期が遅れすぎないようにするため、加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値が、設定された最大値を超えないように演算される。
【0017】
本発明はまた、エンジンが減速状態にあることが検出されたときにエンジンに燃料を供給する燃料噴射装置からの燃料噴射を停止させる燃料カット制御手段と、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御を行う燃料カット中止条件成立時噴射制御手段と、エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときに燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように燃料噴射を制御する加速運転時増量制御を行う加速増量制御手段とを備えたエンジンの燃料噴射・点火制御装置に適用される。
【0018】
本発明においては、燃料カットが行われている間に加速操作が行われたことが検出されたときに、燃料カットが行われていた時間とエンジンの運転状態とに対して決定した加速時噴射復帰用噴射量補正値を加速運転時噴射量補正値に加算して求めた総噴射補正量だけ燃料噴射量を定常運転時よりも増加させる加速時噴射復帰用噴射制御を行う加速時噴射復帰用噴射制御手段と、総噴射補正量とスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を決定して、該加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値だけ点火時期を定常運転時よりも遅角させる加速時噴射復帰用点火制御を行う加速時噴射復帰用点火制御手段とが設けられる。
【0019】
本発明の好ましい態様では、上記加速時噴射復帰用噴射制御手段が、燃料カットが行われている間に加速操作が検出されたときの加速時噴射復帰用噴射量補正値を、燃料カットが実行された燃焼サイクル数とエンジンのスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値演算マップを検索することにより演算して、前記加速時噴射復帰用噴射制御を行うように構成される。また加速時噴射復帰用点火制御手段は、総噴射補正量とスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用遅角量補正値演算マップを検索することにより加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を演算して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を演算して加速時噴射復帰用点火制御を行うように構成される。
【0020】
燃料カットを行うと、時間の経過に伴って、吸気管の内面に付着して液膜を形成している燃料の量(吸気管内面付着燃料量)が減少していく。従って上記のように、燃料カットが行われていた時間とエンジンの運転状態(例えばスロットル開度など)とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値を決定して、該加速時噴射復帰用噴射量補正値を加速運転時噴射量補正値に加えて求めた補正量を総噴射補正量として該総噴射補正量だけ燃料噴射量を増加させる加速時噴射復帰用噴射制御を行うと、燃料カットによる吸気管内面付着燃料量の減少分とエンジンの運転状態とを反映させて、燃料カット中に加速操作が行われたときの噴射再開時の燃料噴射量の増量分を定めることができるため、燃料カット中にエンジンの加速操作が行われたときに、エンジンに供給される燃料量が不足したり過剰になったりするのを防いで、混合気の空燃比を適正な範囲に保つことができる。
【0021】
また上記加速時噴射復帰用噴射制御における総噴射補正量とスロットル開度とに応じて加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を決定して加速時噴射復帰用点火制御を行うと、燃料噴射再開時の点火時期の遅角量を燃料噴射再開時にエンジンに供給される燃料量に応じて適正な大きさに定めることができるため、エンジンの出力トルクが急に大きくなってトルクショックが生じたり、混合気の空燃比がリーン側に変化してエンジンの運転性能が悪化したり、エンジンが焼き付いたりするおそれをなくすことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、燃料カットが行われていた時間とエンジンの運転状態とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値を決定して、この加速時噴射復帰用噴射量補正値を加速運転時噴射量補正値に加えて求めた補正量を総噴射補正量として該総噴射補正量だけ燃料噴射量を増加させて噴射復帰時噴射制御を行うようにしたので、常に燃料カットによる吸気管内面付着燃料量の減少分とエンジンの運転状態とを反映させて燃料噴射再開時の燃料噴射量の増量分を定めることができる。従って、燃料カット中にエンジンの加速操作が行われたときに、エンジンに供給される燃料量が不足したり過剰になったりするのを防いで、混合気の空燃比を適正な範囲に保ち、エンジンの運転性能を高めることができる。
【0023】
また上記加速時噴射復帰用噴射制御における総噴射補正量とスロットル開度とに応じて加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を決定して噴射復帰時の点火時期の制御を行うと、燃料噴射再開時の点火時期の遅角量を燃料噴射再開時にエンジンに供給される燃料量に応じて適正な大きさに定めることができるため、エンジンの出力トルクが急に大きくなってトルクショックが生じたり、混合気の空燃比がリーン側に変化してエンジンの運転性能が悪化したり、エンジンが焼き付いたりするおそれをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
本発明の制御方法においては、エンジンが減速状態にあることが検出されたときにエンジンに燃料を供給する燃料噴射装置からの燃料噴射を停止させる燃料カットを行った後、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御を行い、エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときには燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように燃料噴射を制御する加速増量制御を行う。
【0025】
本実施形態では、エンジンが減速運転状態にあることを燃料カット実行条件として、この燃料カット実行条件が成立したときに燃料カットを行う。エンジンが減速運転状態にあることの検出は、例えば、スロットルバルブの開度(スロットル開度)が閉じられたこと、及び(または)エンジンの回転速度の単位時間当たりの低下割合が設定値を超えたことを検出することにより行う。
【0026】
燃料カット中止条件は、燃料カット中にエンジンの回転速度が設定された燃料噴射再開回転速度を下回ったことや、スロットルバルブが開かれたことである。
【0027】
燃料カット中止条件成立時噴射制御においては、燃料カット中止条件が成立したときに、その時点で直ちに非同期噴射を行わせるか、または同期噴射(予め決まったクランク角位置で行わせる噴射)において噴射させる燃料量を増加させることにより、エンジンに供給する燃料量を増加させる。
【0028】
加速増量制御においては、スロットルバルブが開かれたこと、及び(または)エンジンの吸入空気量が増加したことによりエンジンの加速操作が行われたと判定されたときに、加速の度合や、エンジンの運転状態(スロットル開度、回転速度等)に応じて決定される燃料量だけ非同期噴射を行わせるか、または同期噴射において噴射させる燃料量を増加させることにより、エンジンに供給する燃料量を増加させる。吸入空気量は、エアフローセンサにより検出するか、スロットルバルブ開度及び回転速度から推定するか、または吸気管内圧力及び回転速度から推定することにより求める。
【0029】
本発明においては、燃料カットが行われている間に加速操作が行われたことが検出されたときに燃料カットが行われていた時間とエンジンの運転状態とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値を決定して、この加速時噴射復帰用噴射量補正値を加速増量制御における加速運転時噴射量補正値に加えた補正量を総噴射補正量とし、この総噴射補正量だけ定常時よりも燃料噴射量を増加させて加速時噴射復帰用噴射制御を行うとともに、加速時噴射復帰用時点火時期遅角量補正値を加速時噴射復帰用噴射制御における総噴射補正量とスロットル開度とに対して決定して加速時噴射復帰用点火制御を行う。
【0030】
燃料カットが行われていた時間は、燃料カットが実行された燃焼サイクル数により判定することができる。即ち、加速時噴射復帰用噴射量補正値は、燃料カットが実行された燃焼サイクル数とエンジンのスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値演算マップを検索することにより演算することができる。加速時噴射復帰用噴射量補正値演算マップは、燃料カットが実行された燃焼サイクル数とエンジンのスロットルバルブ開度と加速時噴射復帰用噴射量補正値との間の関係をテーブルの形でまとめたもので、予め実験的に作成しておく。
【0031】
上記加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値は、加速時噴射復帰用噴射量補正値演算マップにより演算された加速時噴射復帰用噴射量補正値と加速運転時噴射量補正値との和からなる総噴射補正量とスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用遅角量補正値演算マップを検索することにより演算することができる。加速時噴射復帰用遅角量補正値演算マップは、総噴射補正量とスロットルバルブ開度と加速時噴射復帰用遅角量補正値との関係をテーブルの形でまとめたもので、予め実験的に作成しておく。
【0032】
加速時噴射復帰用点火制御時に点火時期が過度に遅角するのを防ぐため、加速時噴射復帰用噴射制御時の点火時期の遅角量(加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値)に対しては、設定された最大値を超えないように制限をかけておくことが好ましい。
【0033】
図1は本発明に係わる燃料噴射・点火制御方法を実施するために用いる燃料噴射・点火制御装置の全体的な構成の一例を示したものである。同図において、1は車両などに搭載されたエンジン(内燃機関)、2はエンジン1に燃料を供給するインジェクタ(電磁式燃料噴射弁)、3はエンジンの気筒に取り付けられた点火プラグに点火用の高電圧を印加する点火コイル、4は電子式制御ユニット、5はエンジンの所定のクランク角位置でパルス信号を発生するパルサ、6はエンジンのスロットルバルブの位置を検出するスロットルポジションセンサ(TPS)である。
【0034】
エンジン1は、2サイクルエンジンでもよく、4サイクルエンジンでもよい。またエンジンの気筒数は任意である。インジェクタ2は、先端に噴射口を有し、内部に燃料が所定の圧力で供給されるインジェクタボディと、インジェクタボディ内で噴射口を開閉する弁と、インジェクタボディ内に設けられて励磁された際に弁を開位置側に駆動するソレノイド(電磁石)と、弁を閉位置側に付勢する復帰バネとを備えた周知のもので、燃料ポンプからインジェクタボディ内に燃料が所定の圧力で供給される。インジェクタボディ内に供給される燃料の圧力は、圧力調整器により一定に保たれている。
【0035】
この種のインジェクタにおいては、ソレノイドコイルに所定レベル以上の駆動電流が供給されたときに弁が開位置側に変位して噴射口を開き、噴射口から燃料を噴射する。インジェクタから噴射される燃料の量は、インジェクタに与えられる燃料の圧力と、噴射口が開いている時間とにより決まる。通常インジェクタに与えられる燃料の圧力は一定に保たれているため、燃料噴射量は燃料を噴射する時間(燃料噴射時間)により管理される。本実施形態では、インジェクタ2がエンジン1の吸気管に取り付けられていて、吸気管内のスロットルバルブよりも下流側の空間に燃料を噴射する。
【0036】
点火コイル3は鉄心に一次コイル及び二次コイルを巻回したもので、二次コイルが高圧コードを通してエンジンの気筒に取り付けられた点火プラグに接続される。
【0037】
ECU4は、インジェクタ駆動回路4A及び点火回路4Bと、回転速度検出部4Cと、スロットル開度検出部4Dと、加速検出部4Eと、噴射制御部4Fと、点火制御部4Gと、燃料カット制御部4Hとを備えている。これらの部分のうち、インジェクタ駆動回路4A及び点火回路4Bはハードウェア回路により構成され、回転速度検出部4C、スロットル開度検出部4D、加速検出部4E、噴射制御部4F、点火制御部4G及び燃料カット制御部4Hはマイクロプロセッサにより構成される。
【0038】
インジェクタ駆動回路4Aは噴射指令信号が与えられているときにオン状態を保持するスイッチを備えていて、該スイッチがオン状態にある間、図示しない電源からインジェクタのソレノイドコイルに電源電圧を印加して該ソレノイドコイルに駆動電流を供給する。この例では、インジェクタ駆動回路4Aとインジェクタ2とにより燃料噴射装置が構成されている。
【0039】
点火回路4Bは、点火信号が与えられたときに点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせて点火コイルの二次コイルに点火用の高電圧を誘起させる回路で、この点火回路としては、点火コイルの一次側に設けられて充電用電源の出力により充電される点火用コンデンサと、点火信号が与えられたときに導通して点火用コンデンサの電荷を点火コイルの一次コイルを通して放電させる放電用スイッチとを備えて、点火用コンデンサの電荷の放電により点火コイルの二次コイルに高電圧を誘起させるコンデンサ放電式の回路や、点火コイルの一次コイルに流しておいた一次電流を遮断することにより点火コイルの二次コイルに高電圧を誘起させる電流遮断式の回路等を用いることができる。この例では、点火回路4Bと点火コイル3とにより点火装置が構成されている。
【0040】
回転速度検出部4Cは、パルサ5が出力するパルスの発生間隔からエンジンの回転速度を演算するように構成され、スロットル開度検出部4Dは、スロットルポジションセンサ6の出力からスロットルバルブの開度(スロットル開度)を検出するように構成される。また加速検出部4Eは、スロットル開度検出部4Dにより検出されるスロットル開度の増加量が所定の時間内に所定の大きさに達したときにエンジンを加速する操作が行われたことを検出する。
【0041】
噴射制御部4Fは、例えば、エンジンの吸入空気量を検出または推定する吸入空気量検出または推定手段と、検出または推定された吸入空気量に対して混合気の空燃比を所定の値にするために必要な噴射時間を基本噴射時間として演算する基本噴射時間演算手段と、実噴射時間を演算するために基本噴射時間に乗じる噴射時間補正係数を機関の冷却水温度、吸気温度、スロットル開度、回転速度、大気圧などの各種の制御条件に対して演算する補正係数演算手段と、基本噴射時間に補正係数を乗じて実噴射時間を演算する実噴射時間演算手段と、パルサ5が出力するパルスを用いて検出した同期噴射タイミングでインジェクタ駆動回路4Aに与える噴射指令信号を発生するとともに、必要に応じて非同期噴射タイミングにおいても噴射指令信号を発生する噴射指令信号発生手段とにより構成される。
【0042】
点火制御部4Gは、例えば、機関の回転速度などの制御条件に対して機関の点火時期を演算する点火時期演算手段と、演算した点火時期を検出するために点火タイマに計測させる点火時期計時データを演算する点火時期計時データ演算手段と、パルサの出力から検出した点火時期検出開始タイミングで点火タイマに点火時期計時データの計測を開始させて、点火タイマが点火時期計時データの計測を完了したときに点火回路に与える点火信号を発生する点火信号発生手段とにより構成される。
【0043】
また燃料カット制御部4Hは、図2に示したように、エンジンの定常運転時の燃料噴射量を制御する定常時噴射制御手段11と、エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときに燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように燃料噴射を制御する加速運転時増量制御を行う加速増量制御手段12と、エンジンが減速状態にあることが検出されたときにエンジンに燃料を供給する燃料噴射装置からの燃料噴射を停止させる燃料カット制御手段13と、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御を行う燃料カット中止条件成立時噴射制御手段14と、燃料カットが行われている間に加速操作が行われたことが検出されたときに、燃料カットが行われていた時間とエンジンの運転状態とに対して決定した加速時噴射復帰用噴射量補正値を加速運転時噴射量補正値に加算して求めた総噴射補正量だけ燃料噴射量を定常運転時よりも増加させる加速時噴射復帰用噴射制御を行う加速時噴射復帰用噴射制御手段15と、エンジンの定常運転時の点火時期を制御する定常時点火制御部16と、エンジンの加速操作が行われたときに点火時期を加速時に適した点火時期とするように制御する加速時点火制御部17と、エンジンの点火時期を噴射復帰時点火時期遅角量補正値だけ定常時の点火時期よりも遅角させる燃料カット中止条件成立時点火制御を行う燃料カット中止条件成立時点火制御手段18と、上記総噴射補正量とスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を決定して、該加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値だけ点火時期を定常運転時よりも遅角させる加速時噴射復帰用点火制御を行う加速時噴射復帰用点火制御手段19とを備えている。
【0044】
上記加速時噴射復帰用噴射量補正値は、燃料カットが実行された燃焼サイクル数とエンジンのスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値演算マップを検索することにより演算する。
【0045】
また加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値は、上記総噴射補正量とスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値演算マップを検索することにより演算する。
【0046】
図2に示した手段を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを示すフローチャートを図3ないし図5に示した。図3は微少時間間隔で到来するタスク起動タイミングで起動する噴射時間演算タスクのアルゴリズムを示したものである。このタスクが起動すると、先ずステップS101で吸入空気量に対して混合気の空燃比を所定の値にするために必要な噴射時間を基本噴射時間として演算し、ステップS102で基本噴射時間に各種の制御条件に対して演算された噴射時間補正係数(別のタスクにより演算される)を乗じる補正演算を行って、実噴射時間を演算する。
【0047】
ステップS101により基本噴射時間演算手段が構成され、ステップS102により実噴射時間演算手段が構成される。
【0048】
図4は微少時間間隔でタスク起動タイミングが到来する毎に起動する点火時期演算タスクのアルゴリズムを示したものである。このタスクが起動すると、ステップS201で各種の条件に対して点火時期計時データを演算する。この点火時期計時データは、エンジンのクランク軸がその時の回転速度で、基準クランク角位置(パルサ5が所定のパルスを発生するクランク角位置)から点火位置(点火を行わせるクランク角位置)まで回転するのに要する時間の形で演算される。
【0049】
ステップS201で各種の条件に対して点火時期計時データを演算した後、ステップS202に移行して、点火時期を遅角または進角させるための補正値(別のタスク処理で演算される)をステップS202で演算された点火時期計時データに加算または減算することにより補正された点火時期計時データを演算する。図4のステップS201及びS202により点火時期演算手段が構成される。
【0050】
図5は、燃料カット実行条件が成立したとき(エンジンが減速運転状態にあることが検出されたとき)にエンジンの回転に同期した割り込みタイミング(同期噴射が行われるタイミングよりも前のタイミング)で、1燃焼サイクル当たり1回実行される燃料カット割り込みタスク処理である。この処理が開始されると、ステップS301で燃料カット制御を開始させ、続いて到来する同期噴射タイミングでの燃料の噴射を中止させる。エンジンが減速運転状態にあることの検出は、例えば、スロットルバルブが閉じられたこと、及び(または)エンジンの回転速度の単位時間当たりの低下割合が設定値を超えたことを検出することにより行う。
【0051】
次いでステップS302で燃料カットを実施した燃焼サイクル数を計数するカウンタの計数値をインクリメントし、ステップS303でエンジンの加速操作が行われているか否かを判定する。その結果加速操作が行われていないと判定されたときには、ステップS304に進んで、燃料カット中止条件が成立しているか否かを判定し、燃料カット中止条件が成立していないときにはステップS302に戻る。ステップS304で燃料カット中止条件が成立していると判定されたときには、以後何もしないでこの処理から抜ける。
【0052】
燃料カット中止条件が成立したとき(燃料カット実行条件が不成立のとき)には、別のタスクにより、燃料噴射復帰時の噴射量を、定常時の同じ条件下での噴射量よりも増加させるための噴射復帰時噴射量補正値が演算され、この補正値が噴射時間に反映される。またエンジンの点火時期を噴射復帰時点火時期遅角量補正値だけ定常時の点火時期よりも遅角させる燃料カット中止条件成立時点火制御を行う。エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときには燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように燃料噴射を制御する加速増量制御を行う。
【0053】
燃料カット中止条件は、燃料カット中にエンジンの回転速度が設定された燃料噴射再開回転速度を下回ったことや、スロットルバルブが開かれたことである。
【0054】
ステップS303でエンジンを加速する操作が行われていると判定されたときには、ステップS305に進んで燃料カット実施燃焼サイクル数のカウント値とスロットル開度とに対して燃料噴射量補正値演算用マップを検索することにより、エンジンを加速することを加味して、加速操作が行われない状態で燃料噴射を再開させる場合の噴射復帰時噴射量補正値よりも大きい値をとる加速時噴射復帰用噴射量補正値を演算し、ステップS306において上記燃料噴射復帰時噴射量補正値に、別のタスクで演算された加速運転時噴射量補正値を加算して総噴射補正量を演算する。加速時噴射復帰用噴射量補正値は、燃料カット実施燃焼サイクル数のカウント値が大きい場合に大きな値をとり、燃料カット実施燃焼サイクル数のカウント値が小さい場合に小さな値をとる。加速時噴射復帰用噴射量補正値はまた、スロットル開度が大きい場合に大きな値をとり、スロットル開度が小さい場合に小さな値をとる。
【0055】
次いでステップS307において総噴射補正量とスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値演算用マップを検索することにより加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を演算し、ステップS308で上記加速時噴射復帰用噴射量補正値及び加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値をそれぞれ図3のステップS102及び図4のステップS202で実行される燃料噴射量及び点火時期の演算に反映させる。
【0056】
主として図5のステップS302により、燃料カット制御手段が構成され、ステップS302ないしS306と、ステップS308と図3のタスク処理により加速時噴射復帰用噴射制御手段15が構成される。また主として図5のステップS307及びS308と図4のタスク処理により、加速時噴射復帰用点火制御手段19が構成される。
【0057】
上記のように、本発明の制御方法においては、エンジンが減速状態にあることが検出されたときに図5のタスクを実行させて、エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置からの燃料噴射を停止させる燃料カットを行った後、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに、燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御と、エンジンの点火時期を噴射復帰時点火時期遅角量補正値だけ定常時の点火時期よりも遅角させる燃料カット中止条件成立時点火制御とを行う。また、エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときには燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように燃料噴射を制御する加速増量制御を行う。
【0058】
燃料カット中止条件成立時噴射制御においては、燃料カット中止条件が成立したときに、その時点で直ちに非同期噴射を行わせるか、または同期噴射(予め決まったクランク角位置で行わせる噴射)において噴射させる燃料量を増加させることにより、エンジンに供給する燃料量を増加させる。
【0059】
加速増量制御においては、スロットルバルブが開かれたこと、及び(または)エンジンの吸入空気量が増加したことによりエンジンの加速操作が行われたと判定されたときに、加速の度合や、エンジンの運転状態(スロットル開度、回転速度等)に応じて決定される燃料量だけ非同期噴射を行わせるか、または同期噴射において噴射させる燃料量を増加させることにより、エンジンに供給する燃料量を増加させる。吸入空気量は、エアフローセンサにより検出するか、スロットルバルブ開度及び回転速度から推定するか、または吸気管内圧力及び回転速度から推定することにより求める。
【0060】
燃料カットが行われている間に加速操作が行われたことが検出されたときには、燃料カットが行われていた時間とエンジンの運転状態とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値を決定して、この加速時噴射復帰用噴射量補正値を加速運転時噴射量補正値に加えた補正量を総噴射補正量とし、この総噴射補正量だけ燃料噴射量を増加させて噴射復帰時噴射制御を行うとともに、加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を総噴射補正量とスロットル開度とに対して決定して加速時噴射復帰用点火制御を行う。
【0061】
なお図2に示した機能実現手段のうち、エンジンの定常運転時の燃料噴射量を制御する定常時噴射制御手段11と、エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときに燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように燃料噴射を制御する加速運転時増量制御を行う加速増量制御手段12と、エンジンの定常運転時の点火時期を制御する定常時点火制御部16と、エンジンの加速操作が行われたときに点火時期を加速時に適した点火時期とするように制御する加速時点火制御部17とは、図3ないし5に示した処理とは別の処理により実現される。これらの処理は公知の手法によればよいのでその説明は省略する。
【0062】
上記の実施形態では、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに、燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御と、エンジンの点火時期を噴射復帰時点火時期遅角量補正値だけ定常時の点火時期よりも遅角させる燃料カット中止条件成立時点火制御とを行うようにしたが、本発明において、燃料カット中止条件成立時点火制御を行うことは必須ではない。従って、図2において、燃料カット中止条件成立時点火制御手段18を省略して、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに、燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御のみを行わせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係わる燃料噴射・点火制御装置の全体的な構成を示したブロック図である。
【図2】本発明に係わる燃料噴射・点火制御装置においてマイクロプロセッサにより構成される機能実現手段を示したブロック図である。
【図3】本発明の実施形態においてマイクロプロセッサに実行させる噴射時間演算処理のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態においてマイクロプロセッサに実行させる点火時期演算処理のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態においてマイクロプロセッサに実行させる燃料カット割り込みタスク処理のアルゴリズムを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 エンジン
2 インジェクタ
3 点火コイル
4 ECU
5 パルサ
6 スロットルポジションセンサ
11 定常時噴射制御手段
12 加速増量制御手段
13 燃料カット制御手段
14 燃料カット中止条件成立時噴射制御手段
15 加速時噴射復帰用燃料噴射制御手段
16 定常時点火制御手段
17 加速時点火制御手段
18 燃料カット中止条件成立時点火制御手段
19 加速時噴射復帰用点火制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが減速状態にあることが検出されたときに前記エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置からの燃料噴射を停止させる燃料カットを行った後、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて前記燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御を行い、前記エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときには前記燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように前記燃料噴射を制御する加速増量制御を行うエンジンの燃料噴射・点火制御方法において、
前記燃料カットが行われている間に前記エンジンを加速する加速操作が行われたことが検出されたときに前記燃料カットが行われていた時間と前記エンジンの運転状態とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値を決定して、該加速時噴射復帰用噴射量補正値を前記加速運転時噴射量補正値に加えることにより求めた総噴射補正量だけ前記燃料噴射量を定常時より増加させる加速時噴射復帰用噴射制御を行うとともに、
前記加速時噴射復帰制御における総噴射補正量とスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を決定して、該加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値だけ前記点火時期を定常運転時よりも遅角させる加速時噴射復帰用点火制御を行うことを特徴とするエンジンの燃料噴射・点火制御方法。
【請求項2】
前記燃料カットが行われている間に前記加速操作が検出されたときの前記加速時噴射復帰用噴射量補正値は、前記燃料カットが実行された燃焼サイクル数と前記エンジンのスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値演算マップを検索することにより演算し、
前記加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値は、前記加速時噴射復帰用噴射量補正値と加速運転時噴射量補正値との和からなる総噴射補正量と前記エンジンのスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値演算マップを検索することにより演算することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射・点火制御方法。
【請求項3】
前記加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値は、設定された最大値を超えないように演算されることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃料噴射・点火制御方法。
【請求項4】
エンジンが減速状態にあることが検出されたときに前記エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置からの燃料噴射を停止させる燃料カット制御手段と、予め定めた燃料カット中止条件が成立したときに燃料噴射量を噴射復帰時噴射量補正値だけ定常時の燃料噴射量よりも増加させて前記燃料噴射を再開させる燃料カット中止条件成立時噴射制御を行う燃料カット中止条件成立時噴射制御手段と、前記エンジンを加速する操作が行われたことが検出されたときに前記燃料噴射量を加速運転時噴射量補正値だけ増加させるように前記燃料噴射を制御する加速運転時増量制御を行う加速増量制御手段とを備えたエンジンの燃料噴射・点火制御装置において、
前記燃料カットが行われている間に前記加速操作が行われたことが検出されたときに、前記燃料カットが行われていた時間と前記エンジンの運転状態とに対して決定した加速時噴射復帰用噴射量補正値を前記加速運転時噴射量補正値に加算して求めた総噴射補正量だけ前記燃料噴射量を定常運転時よりも増加させる加速時噴射復帰用噴射制御を行う加速時噴射復帰用噴射制御手段と、
前記総噴射補正量とスロットル開度とに対して加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を決定して、該加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値だけ前記点火時期を定常運転時よりも遅角させる加速時噴射復帰用点火制御を行う加速時噴射復帰用点火制御手段と、
を具備してなるエンジンの燃料噴射・点火制御装置。
【請求項5】
前記加速時噴射復帰用噴射制御手段は、前記燃料カットが行われている間に前記加速操作が検出されたときの前記加速時噴射復帰用噴射量補正値を、前記燃料カットが実行された燃焼サイクル数と前記エンジンのスロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用噴射量補正値演算マップを検索することにより演算して、加速時噴射復帰用噴射制御を行うように構成され、
前記加速時噴射復帰用点火制御手段は、前記総噴射補正量と前記スロットルバルブ開度とに対して加速時噴射復帰用遅角量補正値演算マップを検索することにより前記加速時噴射復帰用点火時期遅角量補正値を演算して加速時噴射復帰用点火制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のエンジンの燃料噴射・点火制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−169729(P2008−169729A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2436(P2007−2436)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】