説明

エンジンシリンダ装置

【課題】ピストンの焼き付き等の検知漏れを防止でき、且つ、膜厚検出センサを設けるコストの低減を図ることができるエンジンシリンダ装置を提供する。
【解決手段】クランクシャフトにピストンロッドを介して接続され、シリンダライナs1に沿って往復移動自在なピストン及び、シリンダライナs1に設けられ、ピストンと対向する位置のシリンダライナs1とピストンとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する複数のセンサヘッドを備えるエンジンシリンダ装置であって、センサヘッドは、上記往復移動により変化するピストンの速度に応じて、往復移動方向における所定位置において設けられる個数を異ならせて配置されているという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシリンダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダライナに沿ってピストンが往復移動する内燃機関のエンジンシリンダ装置において、シリンダライナのピストンが摺動する摺動面に潤滑油を供給することにより、シリンダライナとピストンとの間隙に所定の厚さの油膜を形成し、シリンダライナとピストンとの摺動を円滑にさせると共に、ピストンの焼き付き、シリンダライナの磨耗等の発生を回避させることがなされている。
【0003】
エンジンシリンダ装置において、潤滑油の油膜の厚さは焼き付き等の発生のし易さの指標となるため、当該油膜の厚さを検出する膜厚検出センサをシリンダライナに設けて、ピストンと対向させることにより油膜厚さを検出させ、当該検出結果に基づいて潤滑油の供給量を調節等する装置が設けられるものが知られている。
このようなエンジンシリンダ装置として例えば特許文献1には、シリンダライナに設けられた電極センサとピストンのピストンリングと対向させ、電極センサとピストンとの間の静電容量を検出することにより、その間に形成された油膜の厚さを計測する油膜計測装置を備えるものが開示されている。
【特許文献1】特開2007−107947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンシリンダ装置は、焼き付き等の検知漏れが生じないように、シリンダライナのストローク方向及び周方向において、可能な限りの個数の膜厚検出センサを均等に配置していた。例えば、特許文献1に開示されているエンジンシリンダ装置には、実際には合計約40個程度の膜厚検出センサが均等に設けられており、膜厚検出センサの個数が膨大となってコスト高の問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ピストンの焼き付き等の検知漏れを防止でき、且つ、膜厚検出センサを設けるコストの低減を図ることができるエンジンシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、クランク機構に接続され、シリンダライナに沿って往復移動自在なピストン及び、上記シリンダライナに設けられ、上記ピストンと対向する位置の上記シリンダライナと上記ピストンとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する複数の膜厚検出センサを備えるエンジンシリンダ装置であって、上記膜厚検出センサは、上記往復移動により変化する上記ピストンの速度に応じて、上記往復移動方向における所定位置において設けられる個数を異ならせて配置されているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、ピストンの速度に応じて往復移動方向における焼き付き等のし易さが異なるという特性に応じて膜厚検出センサを配置することで、焼き付き等が生じ易い位置に効果的に膜厚検出センサを配置することができる。
【0007】
また、本発明では、上記膜厚検出センサは、上記所定位置において、少なくとも上記クランク機構の回転軸方向及び上記往復移動方向と略直交する方向両側の位置に配置されているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、ピストンがシリンダライナに荷重を加える直交方向において焼き付き等が生じ易いという特性に応じて膜厚検出センサを配置することで、焼き付き等が発生しやすい位置に効果的に膜厚検出センサを配置することができる。
【0008】
また、本発明では、上記所定位置は、上記ピストンの上死点と対応する上死点位置及び、上記ピストンが摺動する摺動面に上記潤滑油を供給する注油ポートが設けられる位置に対応する注油ポート位置及び、上記ピストンの下死点近傍に設けられる掃気ポートの位置と対応する掃気ポート位置及び、上記上死点位置と、上記掃気ポート位置との間に位置するミッドストローク位置を含むという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、往復移動方向において焼き付き等が生じ易い、上死点位置、注油ポート位置、掃気ポート位置、並びにミッドストローク位置に膜厚検出センサを配置することで、焼き付き等の検知漏れを抑制することができる。
【0009】
また、本発明では、上記膜厚検出センサの上記ミッドストローク位置において設けられる個数は、上記膜厚検出センサの上記上死点位置及び、上記注油ポート位置及び、上記掃気ポート位置において設けられる個数よりも、少数であるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、ミッドストローク位置においては、他の位置に比べ焼き付き等が生じ難いという特性に応じて、膜厚検出センサの設ける個数を少数にすることでコスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クランク機構に接続され、シリンダライナに沿って往復移動自在なピストン及び、上記シリンダライナに設けられ、上記ピストンと対向する位置の上記シリンダライナと上記ピストンとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する複数の膜厚検出センサを備えるエンジンシリンダ装置であって、上記膜厚検出センサは、上記往復移動により変化する上記ピストンの速度に応じて、上記往復移動方向における所定位置において設けられる個数を異ならせて配置されているという構成を採用することによって、ピストンの速度に応じて往復移動方向における焼き付き等のし易さが異なるという特性に応じて膜厚検出センサを配置することで、焼き付き等が生じ易い位置に効果的に膜厚検出センサを配置することができる。つまり、本発明では、焼き付き等のし易さの特性に応じて膜厚検出センサを配置することで、従来のように均等に、且つ、多くの膜厚検出センサをシリンダライナに配置せずとも、ピストンの焼き付き等の検知漏れを防止することができる。
したがって、本発明は、ピストンの焼き付き等の検知漏れを防止でき、且つ、膜厚検出センサを設けるコストの低減を図ることができるエンジンシリンダ装置を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるエンジンシリンダ装置Eの機能構成図である。この図に示すように、エンジンシリンダ装置Eは、エンジンシリンダSと、膜厚計測装置Mとを有する構成となっている。
このエンジンシリンダSは、例えば2サイクルエンジンのシリンダであり、図示するように、ピストンP、シリンダライナs1、クランクシャフト(クランク機構)Kとを有する。
【0012】
ピストンPは、クランクシャフトKとピストンロッドp2を介して接続され、シリンダライナs1に沿って往復移動自在な構成となっている。また、ピストンPは、ピストンリングp1を有しており、ピストンリングp1がピストン摺動面s3に沿って摺動する構成となっている。なお、本実施形態では、説明の容易化のためにピストンリングp1を一つ有する構成となっているが、ピストンリングp1が複数ある構成であっても良い。
シリンダライナs1は、センサヘッド取付孔s2、ピストン摺動面(摺動面)s3及び、図1において不図示(図3参照)の注油ポートs4、掃気ポートs5、排気ポートs6を有する構成となっている。なお、注油ポートs4は、ピストンPの上死点近傍であって、シリンダライナs1の周方向において複数設けられる。
クランクシャフトKは、基端部が図1において紙面垂直方向に延びる回転軸周りに回転自在であり、先端部が同方向に延びる回転軸周りに回転自在にピストンロッドp2に接続されている。
【0013】
膜厚計測装置Mは、センサヘッド(膜厚検出センサ)1、同軸ケーブル2、静電容量検出部3、シリンダ内圧力検出部4、クランク角度検出部5及び信号処理部6から構成されている。このような膜厚計測装置Mは、エンジンシリンダSにおけるシリンダライナs1とピストンPとの間隙、より詳しくは、シリンダライナs1の内壁面(ピストン摺動面s3)とピストンリングp1との間隙に形成されている潤滑油の油膜の厚さを計測するものである。
【0014】
センサヘッド1は、円筒形状のセンサ電極を絶縁材で同心円状に被覆し、さらに上記絶縁材の外周を導電体のセンサケースによって同心円状に被覆した構造となっている。このようなセンサヘッド1は、ピストン摺動面s3に対して面一となるようにセンサ取付孔s2 に圧入されている。センサヘッド1は、ピストンリングp1と対向した場合に、当該ピストンリングp1を対向電極とし、油膜を誘電体とするコンデンサ(計測コンデンサ)を形成するものである。このセンサヘッド1は、同軸ケーブル2を介して静電容量検出部3(具体的には静電容量検出アンプ3a)に接続されている。また、同軸ケーブル2のシールド層を形成する編組線の一端は、センサヘッド1のセンサケースに接続され、他端は静電容量検出部3の接地部(GND:グランド)と接続されている。
【0015】
静電容量検出部3は、静電容量検出アンプ3a、電圧/電流変換器3b、AC/DC電源3c及びシールドケース3dから構成されている。
静電容量検出アンプ3aは、同軸ケーブル2を介してセンサヘッド1に定電流を供給し、当該定電流によって充電される計測コンデンサの充電電圧の変化に基づいて上記計測コンデンサの静電容量を検出し、当該静電容量を示す電圧信号d1(アナログ信号)を電圧/電流変換器3bに出力する。電圧/電流変換器3bは、上記静電容量検出アンプ3aから入力される電圧信号d1を電流信号d2に変換して信号処理部6(具体的には電流/電圧変換器6a)に出力する。
【0016】
AC/DC電源3cは、外部より供給されるAC電源を直流変換して上記静電容量検出アンプ3a及び電圧/電流変換器3bに供給する。なお、このAC/DC電源3cのコモン端子はシールドケース3dと接続されている。シールドケース3dは、上記静電容量検出アンプ3a、電圧/電流変換器3b及びAC/DC電源3cを収納する電磁遮蔽用筐体であり、外部接地されている。
【0017】
シリンダ内圧力検出部4は、エンジンシリンダSの燃焼室内の圧力を検出し、当該圧力を示す圧力信号を信号処理部6(具体的には膜厚演算部6c)に出力する。
クランク角度検出部5は、例えばエンコーダであり、クランクシャフトK、すなわちクランク軸の回転角度を検出し、当該回転角度を示す回転角信号を信号処理部6(具体的には膜厚演算部6c)に出力する。なお、このクランク軸の回転角度は、ピストンリングp1のピストン摺動方向に対する位置を示すものである。
【0018】
信号処理部6は、電流/電圧変換器6a、A/D変換器6b、膜厚演算部6c及び表示部6dから構成されている。
上記信号処理部6において、電流/電圧変換器6aは、静電容量検出部3の電圧/電流変換器3bから入力される電流信号d2を電圧信号d3に変換してA/D変換器6bに出力する。A/D変換器6bは、アナログ信号である上記電圧信号d3をデジタル信号d4に変換して膜厚演算部6cに出力する。
【0019】
膜厚演算部6cは、A/D変換器6bから入力されるデジタル信号d4(つまり静電容量)と、シリンダ内圧力検出部4から入力される圧力信号及びクランク角度検出部5から入力される回転角信号に所定の信号処理を施すことにより、ピストンリングp1とセンサヘッド1との間隙に形成された油膜の膜厚を算出し、当該膜厚を示す膜厚信号を表示部6dに出力する。表示部6dは、例えば液晶表示装置であり、上記膜厚信号に基づいて膜厚情報を表示する。
【0020】
続いて、このように構成されたエンジンシリンダ装置Eにおける、センサヘッド1の配置について、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態におけるシリンダライナs1の展開図である。
図3は、本発明の実施形態におけるエンジンシリンダSの断面図である。
なお、図2における展開図は、シリンダライナs1の図1において手前側を0度(クランク機構の回転軸方向)、右側を90度、奥側を180度(クランク機構の回転軸方向)、左側を270度として示している。
【0021】
センサヘッド1は、図2及び図3に示すように、往復移動により変化するピストンPの速度に応じて、ピストンPの往復移動方向における所定位置において設けられる個数を異ならせて配置されている。本実施形態では具体的に、センサヘッド1は、図2に示すように、往復移動方向の所定位置である上死点位置、注油ポート位置、掃気ポート位置、ミッドストローク位置においてそれぞれ複数設けられている。
なお、図3において、上死点位置はk1、注油ポート位置はk2、掃気ポート位置はk3、ミッドストローク位置はk4の符号で示している。
【0022】
上死点位置k1は、ピストンPの上死点と対応する位置であり、本実施形態では、図3に示すように、ピストンPが上死点に位置するときピストンリングp1と対向する位置となっている。上死点位置k1においてセンサヘッド1は、図2に示すように、シリンダライナs1の周方向において等間隔に、0度、90度、180度及び270度の位置に、計4個配置されている。
【0023】
注油ポート位置k2は、ピストン摺動面s3に潤滑油を供給する注油ポートs4が設けられる位置と対応する位置であり、本実施形態では、図3に示すように、注油ポートs4及び上死点位置k1の近傍、且つ、上死点位置k1よりも下方の位置となっている。注油ポート位置k2において、センサヘッド1は、図2に示すように、シリンダライナs1の周方向において等間隔に、0度、90度、180度及び270度の位置に、計4個配置されている。
【0024】
掃気ポート位置k3は、ピストンPの下死点近傍に設けられる掃気ポートs5の位置に対応する位置であり、本実施形態では、図3に示すように、掃気ポートs5近傍の位置となっている。掃気ポート位置k3において、センサヘッド1は、図2に示すように、シリンダライナs1の周方向において等間隔に、0度、90度、180度及び270度の位置に、計4個配置されている。
【0025】
ミッドストローク位置k4は、上死点位置k1と掃気ポート位置k3との間の略中間の位置であり、本実施形態では、図3に示すように、クランクシャフトKとピストンロッドp2との相対角度が略90度となったときにピストンリングp1と対向する位置となっている。ミッドストローク位置k4において、センサヘッド1は、図2に示すように、シリンダライナs1の周方向において、90度及び270度の位置に、計2個配置されている。
【0026】
続いて、上死点位置k1、注油ポート位置k2、掃気ポート位置k3及びミッドストローク位置k4において、上記のようにセンサヘッド1を配置する根拠及び作用について説明する。
周知のようにエンジンシリンダSは、圧縮工程、爆発工程、排気工程、掃気・吸気工程を有するサイクルを繰り返しており、それらの工程に応じてピストンPはシリンダライナs1内を往復移動している。ピストンPは、当該往復移動の際に、上死点及び下死点において移動方向が逆方向に転換されるため、上死点位置k1及び掃気ポート位置k3近傍では、ピストンPの速度が小さくなる。対して、ミッドストローク位置k4におけるピストンPの速度は、上死点位置k1及び掃気ポート位置k3における速度よりも大きくなる。そして、実験において、ピストンPの焼き付き等は、ピストンPの速度が小さい位置(上死点位置k1及び掃気ポート位置k3)において生じ易いという結果が得られている。
さらに、シリンダライナs1の周方向において、焼き付き等が発生しやすい位置は、ピストンPがシリンダライナs1に対して荷重を与える方向の位置であり、より詳しくは、クランクシャフトKの回転軸方向及びピストンPの往復移動方向と略直交する直交方向両側の位置(図2において、90度及び270度の位置)であるという実験結果が得られている。
【0027】
これらの実験結果は、摩擦と潤滑との関係を示すストライベック曲線において裏付けられる。ストライベック曲線は、周知のように縦軸が摩擦係数、横軸が粘度×速度÷荷重の次元のパラメータを有するゾンマーフェルト数をとるグラフにおいて示される。なお、ストライベック曲線において、ゾンマーフェルト数が大きいと、固体と固体とが連続した油膜により隔てられ円滑に摺動する流体潤滑となり、対して、ゾンマーフェルト数が小さいと、固体と固体とが部分的に固体接触する混合潤滑となることが示されている。
【0028】
すなわち、ピストンPは、往復移動によりその速度が変化するが、ストライベック曲線に示されているように、速度が大きいとゾンマーフェルト数が大きくなり、シリンダライナs1とピストンPとが連続した油膜により隔てられ円滑に摺動する流体潤滑となるため焼き付きが起こり難く、対して、上死点及び下死点近傍は、移動方向の転換により一時的に速度が小さくなることからゾンマーフェルト数が小さくなり、シリンダライナとs1ピストンPとが部分的に固体接触する混合潤滑となり、焼き付きが起こり易くなる。
さらに、シリンダライナs1の直交方向両側の位置は、周方向における他の位置よりピストンPからの荷重が大きく加えられるため、ゾンマーフェルト数が小さくなり、シリンダライナとs1ピストンPとが部分的に固体接触する混合潤滑となり得るため、焼き付きが起こり易くなる。
【0029】
つまり、上死点位置k1においては、往復移動するピストンPの速度が小さくなるため、焼き付き等が生じ易いという特性がある。
また、注油ポート位置k2においては、注油ポートs4から潤滑油が順次供給されるため、油膜の厚さが変動し易く、さらに、注油ポートs4の設けられる位置が上死点近傍であるから、焼き付き等が生じ易いという特性がある。
また、掃気ポート位置k3においては、燃焼用の混合気がエンジンシリンダS内に流入する位置であるため、混合気の流入により油膜が損失し厚さが薄くなる場合があり、さらに、下死点近傍であるからピストンPの速度が小さくなるため、焼き付き等が生じ易いという特性がある。
また、ミッドストローク位置k4においては、往復移動するピストンPの速度が大きく、他の位置に比べ焼き付き等が生じ難いという特性がある。
【0030】
したがって、上死点及び下死点近傍にある上死点位置k1、注油ポート位置k2及び掃気ポート位置k3において重点的にセンサヘッド1を配置し、ミッドストローク位置k4においては、上死点位置k1、注油ポート位置k2及び掃気ポート位置k3よりセンサヘッド1の個数が少数であっても十分に焼き付き等の検知をすることが可能となる。
【0031】
したがって、上述の本実施形態によれば、クランクシャフトKにピストンロッドp2を介して接続され、シリンダライナs1に沿って往復移動自在なピストンP及び、シリンダライナs1に設けられ、ピストンPと対向する位置のシリンダライナs1とピストンPとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する複数のセンサヘッド1を備えるエンジンシリンダ装置Eであって、センサヘッド1は、上記往復移動により変化するピストンPの速度に応じて、往復移動方向における所定位置において設けられる個数を異ならせて配置されているという構成を採用することによって、ピストンPとシリンダライナs1との相対速度に応じて往復移動方向における焼き付き等のし易さが異なるという特性に応じてセンサヘッド1を配置することで、焼き付き等が生じ易い位置に効果的にセンサヘッド1を配置することができる。つまり、本実施形態では、焼き付き等のし易さの特性に応じてセンサヘッド1を配置することで、従来のように均等に、且つ、多くのセンサヘッド1をシリンダライナs1に配置せずとも、ピストンPの焼き付き等の検知漏れを防止することができる。
したがって、本実施形態は、ピストンPの焼き付き等の検知漏れを防止でき、且つ、センサヘッド1を設けるコストの低減を図ることができるエンジンシリンダ装置Eを提供することができる効果がある。
【0032】
また、本実施形態では、センサヘッド1は、上記所定位置において、少なくともクランクシャフトKの回転軸方向及び上記往復移動方向と略直交する直交方向両側の位置に配置されているという構成を採用することによって、ピストンPがシリンダライナs1に荷重を加える直交方向において焼き付き等が生じ易いという特性に応じてセンサヘッド1を配置することで、焼き付き等が発生しやすい位置に効果的にセンサヘッド1を配置することができる。
【0033】
また、本実施形態では、上記所定位置は、ピストンPの上死点と対応する上死点位置k1及び、ピストンPが摺動するピストン摺動面s3に潤滑油を供給する注油ポートs4が設けられる位置に対応する注油ポート位置k2及び、ピストンPの下死点近傍に設けられる掃気ポートs5の位置と対応する掃気ポート位置k3及び、上死点位置k1と、掃気ポート位置k3との間に位置するミッドストローク位置k4を含むという構成を採用することによって、往復移動方向において焼き付き等が生じ易い、上死点位置k1、注油ポート位置k2、掃気ポート位置k3、並びにミッドストローク位置k4にセンサヘッド1を配置することで、焼き付き等の検知漏れを抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、センサヘッド1のミッドストローク位置k4において設けられる個数は、センサヘッド1の上死点位置k1及び、注油ポート位置k2及び、掃気ポート位置k3において設けられる個数よりも、少数であるという構成を採用することによって、ミッドストローク位置k4においては、他の位置に比べ焼き付き等が生じ難いという特性に応じて、センサヘッド1の設ける個数を少数にすることでコスト低減を図ることができる。
【0035】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0036】
例えば、本実施形態では、上死点位置k1、注油ポート位置k2及び掃気ポート位置k3のそれぞれに4個のセンサヘッド1を、また、ミッドストローク位置k4に2個のセンサヘッド1を配置したが、本発明は上記個数に限定されるものではない。例えば、各位置に設けるセンサヘッド1の個数を2倍にして配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態におけるエンジンシリンダ装置の機能構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるシリンダライナの展開図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるエンジンシリンダの断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…センサヘッド(膜厚検出センサ)、E…エンジンシリンダ装置、K…クランクシャフト(クランク機構)、P…ピストン、k1…上死点位置、k2…注油ポート位置、k3…掃気ポート位置、k4…ミッドストローク位置、s1…シリンダライナ、s3…ピストン摺動面(摺動面)、s4…注油ポート、s5…掃気ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク機構に接続され、シリンダライナに沿って往復移動自在なピストン及び、前記シリンダライナに設けられ、前記ピストンと対向する位置の前記シリンダライナと前記ピストンとの間隙に形成された潤滑油の油膜の厚さを検出する複数の膜厚検出センサを備えるエンジンシリンダ装置であって、
前記膜厚検出センサは、前記往復移動により変化する前記ピストンの速度に応じて、前記往復移動方向における所定位置において設けられる個数を異ならせて配置されていることを特徴とするエンジンシリンダ装置。
【請求項2】
前記膜厚検出センサは、前記所定位置において、少なくとも前記クランク機構の回転軸方向及び前記往復移動方向と略直交する方向両側の位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンシリンダ装置。
【請求項3】
前記所定位置は、
前記ピストンの上死点と対応する上死点位置及び、
前記ピストンが摺動する摺動面に前記潤滑油を供給する注油ポートが設けられる位置と対応する注油ポート位置及び、
前記ピストンの下死点近傍に設けられる掃気ポートの位置と対応する掃気ポート位置及び、
前記上死点位置と、前記掃気ポート位置との間に位置するミッドストローク位置を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンシリンダ装置。
【請求項4】
前記膜厚検出センサの前記ミッドストローク位置において設けられる個数は、前記膜厚検出センサの前記上死点位置及び、前記注油ポート位置及び、前記掃気ポート位置において設けられる個数よりも、少数であることを特徴とする請求項3に記載のエンジンシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−275657(P2009−275657A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129613(P2008−129613)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】