説明

エンジン

【課題】未燃炭化水素の排出量の低減を図り、エンジン効率の向上を図る。
【解決手段】燃焼室Nとして、ピストン6に面する主室9と、その主室9に噴孔10を介して連通する副室11とを備え、副室11に燃料ガスを供給する副燃料供給路18には、副室11の圧力低下により開弁して副室11への燃料ガスの供給を許容する逆止弁19が設けられ、主室9に新気を供給する吸気路12に燃料ガスを供給する主燃料供給路13には、その主燃料供給路13を開閉自在なガス制御弁14が設けられ、副燃料供給路18は、主燃料供給路13におけるガス制御弁14と吸気路12に対する接続箇所との間から分岐するように構成され、吸気路12への燃料ガスの供給時期を制御すべく、ガス制御弁14の開閉作動を制御するガス供給時期制御手段23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室として、ピストンに面する主室と、その主室に噴孔を介して連通する副室とを備え、前記副室に燃料ガスを供給する副燃料供給路には、前記副室の圧力低下により開弁して前記副室への燃料ガスの供給を許容する逆止弁が設けられているエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境性・経済性から天然ガスを燃料としたガスエンジンを用いたコージェネレーションシステムの導入が進められている。そして、ガスエンジンを用いたシステムは発電効率が高いことから天然ガスコージェネレーションシステムの主流となってきている。コージェネレーションシステムにおいて、ガスエンジンは1kWクラスの小型から数MWクラスの大型まで実用化されており、エンジンのサイズにより異なったエンジン形式・燃焼方式が採用されている。
例えば、1〜2MWクラスの中型コージェネレーションにおいては、高効率を実現できることから副室式火花点火希薄ミラーサイクルエンジンが主流となってきている。副室式のエンジンは、主室と呼ばれる通常の燃焼室に加え、主室に噴孔を介して連通する副室と呼ばれる燃焼室を備えている。そして、吸気行程にて吸気弁を開いて主室に希薄混合気を、副室に燃料ガスを導入し、圧縮行程にて噴孔を通して主室から副室に流入した希薄混合気等と吸気行程中に副室に供給された燃料ガスとを混合させて混合気を形成する。そして、副室にて形成した混合気を点火プラグにより火花点火して燃焼させ、噴孔を介して副室から主室に火炎ジェットを噴射して、主室に形成された希薄混合気を燃焼させるように構成されている。よって、通常の燃焼室だけを備えた単室式エンジンと比較して、燃焼室全体として空気に対して燃料ガスが希薄な状態で燃焼させる希薄燃焼を実現することができ、高効率化を図ることができる。
【0003】
このような副室式のエンジンとして、副室に燃料ガスを供給する副燃料供給路に機械式開閉弁を設け、その機械式開閉弁の開閉作動を制御する制御装置を備えたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。従来の副室式エンジンでは、上述の機械式開閉弁を設けるものが主流であったが、近年では、機械式開閉弁に代えて、逆止弁が設けられているものが実用化されつつある(例えば、特許文献2参照。)。というのも、逆止弁を設けるものでは、外部からの駆動力で開閉作動させる機械式開閉弁と比較して、構成が簡単になるので、製造が容易になり、小型化及びコストの低減を図ることができるからである。
この逆止弁は、副室から副燃料供給路への逆方向には燃料ガスが流動せず、副燃料供給路から副室への順方向には燃料ガスの流動を許容可能な構造となっている。逆止弁は、バネの付勢力によりボール等の弁体を弁座に当接させて閉弁状態となっている。そして、吸気行程中におけるピストンの下降に伴い副室の圧力が低下して逆止弁の上流側と下流側との圧力差が一定値以上になると、バネの付勢力に抗する方向に圧力が作用して弁体が弁座から離間して開弁状態となり、副室へ燃料ガスを供給するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−278548号公報
【特許文献2】特開2001−3753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
副燃料供給路に逆止弁を設けるエンジンでは、副燃料供給路において逆止弁の上流側と下流側との圧力差が一定値以上になることによって逆止弁が開弁状態となる。よって、吸気行程中におけるピストンの下降に伴って副室の圧力が低下して逆止弁が開弁状態となり、吸気行程中に燃料ガスを副室に供給することができる。しかしながら、排気行程中にも燃焼排ガスの排気により副室の圧力が低下することになり、排気行程中に逆止弁が開弁状態となってしまうことがある。排気行程中に逆止弁が開弁状態となると、副室に供給される燃料ガスが、噴孔を介して副室から主室に供給され、燃焼することなく未燃炭化水素として排気路に排出されてしまう。よって、未燃炭化水素の排出量が増加することになり、エンジン効率の低下を招いてしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、未燃炭化水素の排出量の低減を図り、エンジン効率の向上を図ることができるエンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係るエンジンの特徴構成は、燃焼室として、ピストンに面する主室と、その主室に噴孔を介して連通する副室とを備え、前記副室に燃料ガスを供給する副燃料供給路には、前記副室の圧力低下により開弁して前記副室への燃料ガスの供給を許容する逆止弁が設けられているエンジンにおいて、
前記主室に新気を供給する吸気路に燃料ガスを供給する主燃料供給路には、その主燃料供給路を開閉自在なガス制御弁が設けられ、前記副燃料供給路は、前記主燃料供給路における前記ガス制御弁と前記吸気路に対する接続箇所との間から分岐するように構成され、前記吸気路への燃料ガスの供給時期を制御すべく、前記ガス制御弁の開閉作動を制御するガス供給時期制御手段が設けられている点にある。
【0008】
本特徴構成によれば、副燃料供給路が、主燃料供給路においてガス制御弁と吸気路に対する接続箇所との間から分岐するので、吸気路への燃料ガスの供給を断続させるガス制御弁を利用して、副燃料供給路への燃料ガスの供給をも断続させることができ、構成の簡素化を図ることができる。そして、ガス供給時期制御手段がガス制御弁の開閉作動を制御することで、吸気路への燃料ガスの供給時期を制御できながら、副室への燃料ガスの供給時期をも制御することができる。例えば、排気行程中にはガス制御弁を閉状態とし、それ以外の期間で主室での燃焼が良好となる期間にガス制御弁を開状態とするように、ガス供給時期制御手段がガス制御弁の開閉作動を制御することができる。よって、主室での燃焼を良好にすることができながら、排気行程中に吸気路及び副室の両方に燃料ガスの供給が行われないようにすることができる。よって、排気行程中に、副室への燃料ガスの供給を防止でき、燃料ガスが燃焼することなく未燃炭化水素として排気路に排出されてしまうのを防止できる。
以上のことから、ガス制御弁を有効に活用して構成の簡素化を図りながら、未燃炭化水素の排出量の低減を図り、エンジン効率の向上を図ることができる。
【0009】
本発明に係るエンジンの更なる特徴構成は、前記ガス供給時期制御手段は、排気行程後期から吸気行程中の設定期間が前記吸気路への燃料ガスの供給時期となるように、前記ガス制御弁の開閉作動を制御するように構成されている点にある。
【0010】
本特徴構成によれば、ガス供給時期制御手段により排気行程後期から吸気行程中の設定期間に吸気路及び副室の両方に燃料ガスの供給が行われることになる。この設定期間に吸気路及び副室の両方に燃料ガスの供給を行うことにより、主室での燃焼を良好なものとすることができるとともに、副室にて好適な混合気を形成でき、その混合気の点火を的確に行うことができる。しかも、設定期間以外の期間は、ガス供給時期制御手段がガス制御弁を閉状態に制御するので、副室へ燃料ガスが供給されるのを防止でき、燃料ガスが燃焼することなく未燃炭化水素として排気路に排出されてしまうのを防止できる。
【0011】
本発明に係るエンジンの更なる特徴構成は、前記燃焼室が複数備えられ、前記複数の燃焼室の夫々について、前記主燃料供給路及び前記副燃料供給路が設けられ、前記副燃料供給路は、吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行うクランク軸の回転位相が異なる他の前記燃焼室に対する前記主燃料供給路における前記ガス制御弁と前記吸気路に対する接続箇所との間から分岐するように構成されている点にある。
【0012】
例えば、主室にて最適な燃焼を実現するための吸気路への燃料ガスの供給時期が排気行程後期から吸気行程中の設定期間内に存在しない場合がある。この場合には、ある燃焼室に対する副燃料供給路を同一の燃焼室に対する主燃料供給路から分岐するように設け、吸気路への燃料ガスの供給時期を排気行程後期から吸気行程中の設定期間とすると、主室にて最適な燃焼を実現できなくなる可能性が生じる。
そこで、本特徴構成によれば、吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行うクランク軸の回転位相が異なる他の燃焼室に対する主燃料供給路から分岐するように副燃料供給路を設けることにより、ある燃焼室について、吸気路への燃料ガスの供給時期と副室への燃料ガスを供給可能とする時期とを異ならせることができる。よって、ある燃焼室について、吸気路への燃料ガスの供給時期を排気行程後期から吸気行程中の設定期間以外の期間とすることができ、主室にて最適な燃焼を実現できる時期にできながら、副室への燃料ガスの供給時期を排気行程後期から吸気行程中の設定期間内にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るエンジンの実施形態について、図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、エンジン1は、シリンダヘッド2、シリンダブロック3、クランクケース(図示は省略)、オイルパン(図示は省略)を上下に重ね合わせて連結して構成され、シリンダヘッド2に開閉自在な吸気弁4と排気弁5とを備えている。ピストン6をシリンダブロック3内に摺動自在に収納し、ピストン6の往復作動力をクランク機構7からクランク軸8に伝えて回転動力として出力するように構成されている。図示は省略するが、クランク軸8からの動力を吸気弁4及び排気弁5を開閉動作させるカムシャフト等に伝えるように構成されている。
【0014】
燃焼室Nとして、シリンダヘッド2の下面側でピストン6の上面に面する主室9と、その主室9に噴孔10を介して連通する副室11とを備えている。このエンジン1は、気体燃料ガスあるいは都市ガス等の燃料ガスを使用するものであり、吸気行程にて燃料ガスと空気との希薄混合気(空気と少量の燃料ガスとの混合気)を主室9に供給するとともに、副室11に燃料ガスを供給し、圧縮行程にて噴孔10を通して主室9から副室11に希薄混合気を流入させ副室11内に混合気を形成し、副室11の点火プラグ16での点火によって副室11内で燃焼させた混合気を、噴孔10を介して主室9に火炎ジェットFとして噴射するように構成されている。
【0015】
図1では、1つの燃焼室Nを示しているが、このエンジン1は、複数のピストン6を備え複数の燃焼室Nを有する多気筒式のエンジンにて構成されている。そして、エンジン1は、クランク軸8からの駆動力を発電機(図示は省略)に伝えて発電を行い、エンジンの排熱を熱媒体を介して回収して熱消費端末等に供給可能とするコージェネレーションシステムに用いられている。
【0016】
主室9に希薄混合気である新気を供給する吸気路12が設けられており、その吸気路12に燃料ガスを供給する主燃料供給路13が設けられている。主燃料供給路13には、一定圧力の燃料ガスが供給され、主燃料供給路13を開閉自在なガス制御弁14が設けられている。ガス制御弁14は、高速応答可能な弁として構成されており、このガス制御弁14の開閉作動を制御することにより主室9に供給する希薄混合気の燃料ガス濃度分布を制御するように構成されている。図示は省略するが、吸気路12には、主燃料供給路13との接続箇所よりも上流側に、スロットルバルブや空気を過給する過給機等が配置されている。
【0017】
副室11は、下端に噴孔10が形成された口金15の内部に形成されており、口金15は下端部を主室9に突出させる状態でシリンダヘッド2に支持されている。口金15の上部には点火プラグ16を有する点火ユニット17が設けられており、点火プラグ16は、その点火点16aが副室11内に位置するように設けられている。
【0018】
副室11に燃料ガスを供給する副燃料供給路18は、主燃料供給路13において、ガス制御弁14と吸気路12に対する接続箇所との間から分岐して副室11に燃料ガスを導くように構成されている。副燃料供給路18は、点火ユニット17の外方からその内部に向かって延びて副室11に連通するように構成されている。副燃料供給路18は、主燃料供給路13よりも流路幅が狭い細管状に構成されている。例えば、副燃料供給路18の配管径は、主燃料供給路13の配管径の1/10程度とすることができる。そして、図示は省略するが、副燃料供給路18において、逆止弁19よりも上流側に開度調整弁を備え、その開度調整弁の開度を調整することにより、主燃料供給路13に供給される燃料ガスと副燃料供給路18に供給される燃料ガスとの割合を所望の割合とすることができる。
【0019】
副燃料供給路18には、副室11の圧力低下により開弁して副室11への燃料ガスの供給を許容する逆止弁19が設けられている。逆止弁19は、バネの付勢力によりボール等の弁体を弁座に当接させて閉弁状態としており、副室11の圧力低下により上流側と下流側との圧力差が一定値以上になると、バネの付勢力に抗する方向に圧力が作用して弁体が弁座から離間して開弁状態となり、副室11への燃料ガスの供給を許容するように構成されている。
【0020】
点火プラグ16の作動等を制御してエンジン1を制御する制御装置20が設けられており、この制御装置20には、クランク軸8の回転角を計測するタイミングセンサ21等の検出信号が入力するように構成されている。タイミングセンサ21は、例えば、クランク軸8に備えたギヤ状の磁性体の歯部の位置を電磁的に検出することによりクランク軸8の回転角を検出するように構成されている。
【0021】
制御装置20には、吸気路12への燃料ガスの供給時期を制御すべく、ガス制御弁14の開閉作動を制御するガス供給時期制御手段23が備えられている。ガス供給時期制御手段23は、主室9にて最適な燃焼を実現すべく、排気行程後期から吸気行程中の設定期間が吸気路12への燃料ガスの供給時期となるように、ガス制御弁14の開閉作動を制御するように構成されている。図2に示すように、ガス供給時期制御手段23は、例えば、排気弁5が閉状態となった直後のクランク軸8の回転角が10°から90°までの間を吸気路12への燃料ガスの供給時期となるように、ガス制御弁14の開閉作動を制御する。これにより、吸気行程においては、ガス制御弁14が開状態となり、吸気路12に燃料ガスを供給できるとともに、ピストン6の下降による副室11内の圧力低下により逆止弁19が開状態となって副室11へも燃料ガスを供給できる。圧縮行程、燃焼・膨張行程、排気行程においては、ガス制御弁14が閉状態となり、副燃料供給路18において逆止弁19よりも上流側の圧力を低く保つことができる。よって、排気行程において、逆止弁19が開弁状態となっても、燃料ガスが副室11に供給されて燃焼させることなく排気されるのを防止することができる。
【0022】
このエンジン1は、通常の4ストローク内燃機関と同様に、吸気弁4及び排気弁5を開閉動作させて、吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を順次行うように構成されている。
吸気行程では、吸気弁4を開状態としてピストン6が下降することにより、吸気路12から希薄混合気である新気を主室9に吸引する。このとき、ガス制御弁14は開状態に制御されており、主室9の圧力低下に伴い副室11も圧力低下することから、逆止弁19の上流側と下流側との圧力差が一定値以上となって逆止弁19が開弁状態となり、副室11へ燃料ガスを供給する。
圧縮行程では、ガス制御弁14が閉状態に制御されており、吸気弁4を閉状態としてピストン6が上昇することにより主室9の希薄混合気を圧縮する。このとき、噴孔10を介して主室9から副室11にも希薄混合気が流入することになり、副燃料供給路18にて供給される燃料ガスと希薄混合気とが混合されて、副室11には燃料ガスの濃度が濃い混合気が形成される。逆止弁19については、ピストン6の上昇に伴い副室11の圧力が上昇して閉状態となり、副室11への燃料ガスの供給が停止される。
制御装置20が、タイミングセンサ21の検出信号に基づいて、点火タイミング(上死点又は上死点近くの設定タイミング)になると点火プラグ16を作動させて副室11に火花点火を行う。
燃焼・膨張行程では、副室11内で燃焼させた燃焼ガスを、噴孔10を介して主室9に火炎ジェットFとして噴射することにより、主室9の希薄混合気を燃焼させ、主室9において燃焼ガスの膨張が行われ、ピストン6が下降する。
排気行程では、排気弁5を開状態としてピストン6が上昇することにより、燃焼排ガスが排気路22に排気される。このとき、ガス制御弁14が閉状態に制御されており、燃料ガスが副室11に供給されて燃焼させることなく排気されるのを防止することができる。
【0023】
以上の如く、本発明に係るエンジンは、クランク軸8の回転角が10°から90°までの間を吸気路12への燃料ガスの供給時期となるようにガス制御弁14の開閉作動を制御することにより、未燃炭化水素の排出量の低減を図り、エンジン効率の向上を図ることができる。本発明に係るエンジンは、単に副燃料供給路13に逆止弁19を設けただけの従来のエンジンと比較して、排気ガス中の未燃炭化水素濃度が1/3となり、発電効率が0.5ポイント向上したことを実験により確認している。この実験は、ボア径を180mm、ピストンのストロークを230mm、気筒数を12個、排気量を70.2リットル、回転速度を1200rpm、発電出力を800kWとするエンジンを用いて行った。
【0024】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、複数の燃焼室の夫々について、主燃料供給路13及び副燃料供給路18を設け、副燃料供給路18は、同一の燃焼室に対する主燃料供給路13におけるガス制御弁14と吸気路12に対する接続箇所との間から分岐するように構成されている。第2実施形態では、この構成に代えて、副燃料供給路18が、他の燃焼室に対する主燃料供給路13におけるガス制御弁14と吸気路12に対する接続箇所との間から分岐するように構成されている。複数の燃焼室では、吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行うクランク軸8の回転位相を異ならせるように構成されている。
【0025】
図3に示すものでは、複数の燃焼室のうち、第1の燃焼室N1と第2の燃焼室N2との2つの燃焼室を示している。この図3に基づいて、副燃料供給路18が、他の燃焼室に対する主燃料供給路13におけるガス制御弁14と吸気路12に対する接続箇所との間から分岐するように構成されている点について説明する。
【0026】
例えば、第1の燃焼室N1において、主室9にて最適な燃焼を実現するための吸気路12への燃料ガスの供給時期が排気行程後期から吸気行程中の設定期間内に存在しない場合がある。そこで、諸行程を行うクランク軸8の回転位相が異なる第2の燃焼室N2に対する主燃料供給路13から分岐するように副燃料供給路18を設けることにより、第1の燃焼室N1について、吸気路12への燃料ガスの供給時期と副室11への燃料ガスを供給可能とする時期とを異ならせることができる。よって、第1の燃焼室N1について、吸気路12への燃料ガスの供給時期を排気行程後期から吸気行程中の設定期間以外の期間に設定することができ、主室9にて最適な燃焼を実現できる時期にできながら、副室11への燃料ガスの供給時期を排気行程後期から吸気行程中の設定期間内にすることができる。
【0027】
〔別実施形態〕
(1)上記第1実施形態において、吸気路12への燃料ガスの供給時期とする設定期間は、排気行程後期から吸気行程中の範囲であればどのように設定してもよい。
【0028】
(2)上記第1及び第2実施形態において、吸気路12への燃料ガスの供給時期とする設定期間については、一定期間としたり、変更させることも可能である。設定期間を変更させる場合には、例えば、主室9での燃焼状態に応じて、最適な燃焼状態となるように設定期間を変更させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、燃焼室として、ピストンに面する主室と、その主室に噴孔を介して連通する副室とを備え、前記副室に燃料ガスを供給する副燃料供給路には、前記副室の圧力低下により開弁して前記副室への燃料ガスの供給を許容する逆止弁を設け、未燃炭化水素の排出量の低減を図り、エンジン効率の向上を図ることができる各種のエンジンに適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態におけるエンジンの概略図
【図2】クランク軸回転位相におけるガス制御弁の開閉状態を示すタイミングチャート
【図3】第2実施形態におけるエンジンの概略図
【符号の説明】
【0031】
6 ピストン
9 主室
10 噴孔
11 副室
12 吸気路
13 主燃料供給路
14 ガス制御弁
18 副燃料供給路
19 逆止弁
23 ガス供給時期制御手段
N 燃焼室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室として、ピストンに面する主室と、その主室に噴孔を介して連通する副室とを備え、
前記副室に燃料ガスを供給する副燃料供給路には、前記副室の圧力低下により開弁して前記副室への燃料ガスの供給を許容する逆止弁が設けられているエンジンであって、
前記主室に新気を供給する吸気路に燃料ガスを供給する主燃料供給路には、その主燃料供給路を開閉自在なガス制御弁が設けられ、
前記副燃料供給路は、前記主燃料供給路における前記ガス制御弁と前記吸気路に対する接続箇所との間から分岐するように構成され、
前記吸気路への燃料ガスの供給時期を制御すべく、前記ガス制御弁の開閉作動を制御するガス供給時期制御手段が設けられているエンジン。
【請求項2】
前記ガス供給時期制御手段は、排気行程後期から吸気行程中の設定期間が前記吸気路への燃料ガスの供給時期となるように、前記ガス制御弁の開閉作動を制御するように構成されている請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記燃焼室が複数備えられ、
前記複数の燃焼室の夫々について、前記主燃料供給路及び前記副燃料供給路が設けられ、
前記副燃料供給路は、吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の諸行程を行うクランク軸の回転位相が異なる他の前記燃焼室に対する前記主燃料供給路における前記ガス制御弁と前記吸気路に対する接続箇所との間から分岐するように構成されている請求項1又は2に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−299592(P2009−299592A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155409(P2008−155409)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】