説明

エンジン

【課題】簡素な構成で、冷却損失を低減することができるエンジンを提供する。
【解決手段】エンジン100は、燃焼室13内の混合気に点火する点火プラグ51、52と、圧縮上死点後に混合気に点火するように点火プラグ51、52を制御する制御手段60と、を備え、ピストン上死点位置における機械圧縮比を、圧縮上死点において混合気に点火した場合にノッキングが発生するような高圧縮比に設定する。これによりエンジン出力を確保しつつ、冷却損失を低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却損失を低減するエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のエンジンにおいては、熱効率を改善するために冷却損失を低減することが望ましい。
【0003】
特許文献1には、クランク軸及びクランク軸に対して従動する出力軸にそれぞれ楕円歯車を設け、上死点近傍におけるピストンの変位速度を速めるエンジンが開示されている。特許文献1に記載のエンジンによれば、圧縮上死点での混合気燃焼後に燃焼ガスが速やかに膨張して、燃焼ガス温度が低下しやすくなるので、冷却損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−291103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のエンジンは、クランク軸や出力軸に楕円歯車を設ける必要があり、エンジンの構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、簡素な構成で、冷却損失を低減することができるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために本発明の実施形態に対応する符号を付するが、これに限定されるものではない。
【0008】
本発明のエンジン(100)は、燃焼室(13)内の混合気に点火する点火プラグ(51、52)と、圧縮上死点後に混合気に点火するように点火プラグ(51、52)を制御する制御手段(60)と、を備え、ピストン上死点位置における機械圧縮比を、圧縮上死点において混合気に点火した場合にノッキングが発生するような高圧縮比に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧縮上死点後に混合気に点火することで、混合気燃焼による熱発生から膨張下死点までの時間を短くするので、従来手法よりも簡素な構成で冷却損失を低減することができる。また、機械圧縮比を高圧縮比に設定するので、圧縮上死点後に混合気に点火しても、エンジン出力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態のエンジンの概略構成図である。
【図2】圧縮比の比率と熱効率の向上率との関係を示す図である。
【図3】点火制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図4】エンジンにおけるPV線図である。
【図5】第2実施形態のエンジンの概略構成図である。
【図6】圧縮比の比率と熱効率の向上率との関係を示す図である。
【図7】点火制御及び機械圧縮比制御のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図8】エンジンにおけるPV線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、車両用のエンジン100の概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、エンジン100は吸気ポート噴射式の4ストロークレシプロエンジンである。エンジン100は、シリンダブロック10と、シリンダブロック10の上側に配置されるシリンダヘッド20とを備える。
【0014】
シリンダブロック10には、シリンダ11が形成される。シリンダ11には、ピストン12が摺動自在に嵌合する。シリンダ11の壁面と、ピストン12の冠面と、シリンダヘッド20の下面とによって燃焼室13が形成される。
【0015】
シリンダヘッド20には、燃焼室13に吸気を流す吸気ポート30と、燃焼室13からの排気を流す排気ポート40とが形成される。
【0016】
吸気ポート30には、吸気弁31と燃料噴射弁33が設けられる。吸気弁及31は、吸気カムシャフトに設けられた吸気カム32によって駆動され、ピストン12の上下動に応じて吸気ポート30を開閉する。燃料噴射弁33は、エンジン運転状態に応じて燃料を噴射して、吸気ポート30内に混合気を形成させる。
【0017】
排気ポート40には、排気弁41が設けられる。排気弁41は、排気カムシャフトに設けられた排気カム42によって駆動され、ピストン12の上下動に応じて排気ポート40を開閉する。
【0018】
吸気ポート30と排気ポート40との間であってシリンダヘッド20の中心部には、第1点火プラグ51と第2点火プラグ52とが隣接するように設置される。第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52は、点火部分が燃焼室13内に臨むように配置される。第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52は、エンジン運転状態に応じて燃焼室13内の混合気に点火する。第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52は、コントローラ60によって制御される。
【0019】
コントローラ60は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
【0020】
コントローラ60には、アクセルペダルの踏込み量を検出するアクセルペダルセンサ61からの検出データが信号として入力する。アクセルペダルの踏み込み量はエンジン負荷を代表する信号として用いられる。コントローラ60は、上記した入力信号等に基づいて第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52の点火時期を調整する。
【0021】
上記したエンジン100では、冷却損失を低減して熱効率を高めるために、ピストン12の上死点位置における圧縮比(以下「機械圧縮比」という)を従来手法のエンジンよりも高く設定するとともに、混合気点火時期を圧縮上死点以降に設定する。
【0022】
より具体的には、エンジン100の機械圧縮比は、圧縮上死点において混合気に点火した場合にノッキングが発生する圧縮比であって18程度に設定される。この機械圧縮比は、圧縮上死点での圧縮圧力が混合気燃焼時の燃焼最大圧力よりも小さくなるように設定される。そして、混合気の点火時期は、混合気点火時における圧縮比(以下「点火時圧縮比」という)が10程度となるように圧縮上死点後の膨張行程途中に設定される。
【0023】
図2は、所定のエンジン運転状態における、圧縮比の比率と熱効率の向上率との関係を示す図である。横軸は、機械圧縮比を点火時圧縮比で割った圧縮比の比率である。また、縦軸は、圧縮上死点で点火した時(圧縮比の比率が1である時)の熱効率に対する熱効率の向上率を示す。
【0024】
機械圧縮比を高め、圧縮上死点以降に混合気に点火するエンジン100では、図2に示すように、圧縮比の比率を1.1よりも大きくすると、熱効率の向上率が急増する。これは、混合気の点火時期が膨張行程途中となって、混合気燃焼による熱発生から膨張下死点までの時間が短くなるために、高温の燃焼ガスからシリンダ11等への熱伝達が抑制され、冷却損失が低減されるからである。
【0025】
エンジン100では、点火時圧縮比を10とし機械圧縮比を18として、圧縮比の比率を1.8に設定するので、熱効率の向上率が最大となる。
【0026】
ところで、エンジン100のように点火時圧縮比を10程度に設定すると、エンジン負荷によってはノッキングが発生するおそれがある。そこで、エンジン100では、ノッキングの発生を抑制するために、エンジン負荷に応じて第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52の点火時期を制御する。
【0027】
図3は、コントローラ60が実行する点火制御のメインルーチンを示すフローチャートである。このメインルーチンは、エンジン運転中に一定間隔、例えば10ms間隔で繰り返し実行される。
【0028】
ステップS101では、コントローラ60は、低エンジン負荷時であるか否かをアクセルペダルセンサ61の検出値に基づいて判定する。
【0029】
低エンジン負荷時には、コントローラ60は、ステップS102の処理を実行する。これに対して高エンジン負荷時には、コントローラ60は、ステップS103の処理を実行する。
【0030】
ステップS102では、コントローラ60は、点火時期を圧縮上死点側に向かって進角し、第1点火プラグ51のみによって混合気に点火する。第1点火プラグ51の点火時期は、点火時圧縮比が10となるように制御される。
【0031】
ステップS103では、コントローラ60は、点火時期を圧縮上死点側から離れるように遅角し、第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52の両方で混合気に点火する。第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52の点火時期は、点火時圧縮比が10よりも低くなるように制御される。
【0032】
図4を参照して、第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52の点火制御による作用について説明する。
【0033】
図4は、エンジン100におけるPV線図を示す。点線Aは低エンジン負荷時のPV線図を示し、実線Bは高エンジン負荷時のPV線図を示す。
【0034】
低エンジン負荷時はノッキングが発生しにくいので、点線Aに示すように、第1点火プラグ51の点火時期を高エンジン負荷時よりも圧縮上死点側に進角して、点火時圧縮比を高くする。混合気点火時におけるピストン12の下降速度は高エンジン負荷時よりも遅いので、第1点火プラグ51のみによって点火することで混合気の燃焼期間を長くする。これにより燃焼最大圧力が高くなり過ぎるのを抑えて、燃焼騒音の悪化を抑制する。
【0035】
一方、高エンジン負荷時はノッキングが発生しやすいので、実線Bに示すように、第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52の点火時期を低エンジン負荷時よりも圧縮上死点側から遅角する。これにより点火時圧縮比が低下するので、ノッキングの発生が抑制される。高エンジン負荷では、混合気点火時におけるピストン12の下降速度が低エンジン負荷時よりも速くなるので、混合気の燃焼期間が長くなると破線に示すように等容度が悪化してしまう。エンジン100では、第1点火プラグ51と第2点火プラグ52の両方を使って混合気に点火し、混合気の燃焼期間を短縮させるので、等容度の悪化を抑制できる。
【0036】
以上により、第1実施形態のエンジン100では、下記の効果を得ることができる。
【0037】
エンジン100では、圧縮上死点において混合気に点火した場合にノッキングが発生する圧縮比となるように機械圧縮比を設定し、圧縮上死点後に点火時期を設定するので、エンジン出力を確保しつつ、冷却損失を低減することが可能となる。
【0038】
機械圧縮比は、圧縮上死点での圧縮圧力が混合気燃焼時の燃焼最大圧力よりも小さくなるように設定されるので、圧縮圧力が過大となることがない。したがって、ピストン12やクランク軸等でのフリクションの増加を抑制でき、エンジン100の熱効率を効率的に高めることができる。
【0039】
エンジン高負荷時には、点火時圧縮比が低くなるように点火時期を圧縮上死点から遅角させるので、ノッキングの発生を抑制することができる。また、エンジン高負荷時には、第1点火プラグ51と第2点火プラグ52の両方を用いて混合気に点火して、混合気の燃焼期間を短くするので、混合気点火時におけるピストン12の下降速度が速くなっても等容度の悪化を抑えることができ、熱効率の低下が抑制できる。
【0040】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態におけるエンジン100の概略構成図である。
【0041】
第2実施形態におけるエンジン100は、第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、エンジン負荷や排気温度に応じて機械圧縮比を変更するように構成した点で相違する。以下に、その相違点を中心に説明する。
【0042】
図5に示すように、エンジン100は、排気温度センサ62と、機械圧縮比可変機構70とを備える。
【0043】
排気温度センサ62は、排気ポート40に接続する排気通路43に設置される。排気温度センサ62は、排気通路43を流れる排気の温度を検出する。
【0044】
機械圧縮比可変機構70は、ピストン12とクランクシャフト14とを、アッパリンク71及びロアリンク72で連結し、コントロールリンク73によってロアリンク72の姿勢を制御することで、ピストン上死点位置を変化させて機械圧縮比を変更する。コントロールリンク73は、コントロールシャフト74の偏心軸74Aに連結される。コントロールシャフト74はアクチュエータ75によって回転制御される。
【0045】
アクチュエータ75によってコントロールシャフト74が回転し、偏心軸74Aがコントロールシャフト74の中心軸に対して相対的に低くなる方向に移動すると、コントロールリンク73によってロアリンク72はクランクピン中心に対して図中時計周りに回転してアッパリンク71を押し上げるように傾く。これによりピストン上死点位置が上昇し、エンジン100の機械圧縮比が高くなる。これに対して、偏心軸74Aがコントロールシャフト74の中心軸に対して相対的に高くなる方向に移動すると、コントロールリンク73によってロアリンク72は図中反時計回りに回転してアッパリンク71を引き下げるように傾く。これによりピストン上死点位置が下降して、エンジン100の機械圧縮比が低くなる。
【0046】
図6は、圧縮比の比率と、圧縮比の比率が1の場合の熱効率を基準にした熱効率の向上率との関係を示す図である。線Cは高エンジン負荷時を示し、線Dは低エンジン負荷時を示す。
【0047】
線Cに示すように高エンジン負荷時においては、エンジン100の機械圧縮比を18とし燃焼時圧縮比を10として圧縮比の比率を1.8に設定するので、熱効率の向上率が最大となる。
【0048】
一方、低エンジン負荷時はノッキングが発生しにくいため、さらなる熱効率の向上を図るために燃焼時圧縮比を18程度まで高める。このように低エンジン負荷時の燃焼時圧縮比を設定すると、線Dに示すように、熱効率の向上率が最大となる圧縮比の比率が高エンジン負荷時よりも小さくなる。したがって、エンジン100では、圧縮比の比率が低下するように、燃焼時圧縮比を高くするとともに機械圧縮比も高める。これにより低エンジン負荷時においても、熱効率の向上率を最大とすることができる。
【0049】
図7は、コントローラ60が実行する点火制御及び機械圧縮比制御のメインルーチンを示すフローチャートである。このメインルーチンは、エンジン運転中に一定間隔、例えば10ms間隔で繰り返し実行される。
【0050】
ステップS201では、コントローラ60は、排気温度センサ62によって検出される排気温度Tが所定温度Tよりも大きいか否かを判定する。
【0051】
排気温度Tが所定温度Tよりも小さい場合には、コントローラ60はステップS202の処理を実行する。
【0052】
これに対して、排気温度Tが所定温度Tよりも大きい場合には、コントローラ60はステップS205の処理を実行する。機械圧縮比を高め、圧縮上死点以降に混合気を燃焼させるエンジン100では、冷却損失の低減によって熱効率が高まる一方で、排気温度も上昇する。そこで本実施形態のエンジン100では、排気温度Tが所定温度Tよりも大きい場合にステップS205の処理を実行して、排気温度が過剰に高くなるのを抑制する。
【0053】
ステップS202では、コントローラ60は、低エンジン負荷時であるか否かをアクセルペダルセンサ61の検出値に基づいて判定する。
【0054】
低エンジン負荷時には、コントローラ60はステップS203の処理を実行する。それ以外の場合には、コントローラ60はステップS204の処理を実行する。
【0055】
ステップS203では、コントローラ60は、圧縮比の比率が小さくなるように点火時期を上死点側に進角させるとともに機械圧縮比を高圧縮比に制御して、第1点火プラグ51のみによって混合気に点火する。
【0056】
ステップS204では、コントローラ60は、圧縮比の比率が大きくなるように点火時期を上死点側から遅角させるとともに機械圧縮比を低圧縮比に制御して、第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52の両方で混合気に点火する。
【0057】
ステップS205では、排気温度が過剰に高くなるのを抑制するため、コントローラ60は、ステップS203、S204で設定した高い機械圧縮比(圧縮上死点において混合気に点火した場合にノッキングが発生するような圧縮比)から機械圧縮比を所定量だけ低下させて、例えば圧縮上死点において混合気に点火した場合にノッキングが発生しないような圧縮比にまで低下させ、混合気に点火する。点火時期は、例えば、ステップS203、S204で設定した時期よりも進角させて、上死点付近における通常の点火時期に設定することができる。
【0058】
図8(A)及び図8(B)を参照して、上記した点火制御及び機械圧縮比制御による作用について説明する。図8(A)は排気温度Tが所定温度Tよりも小さい場合のエンジン100におけるPV線図を示し、図8(B)は排気温度Tが所定温度Tよりも大きい場合のエンジン100におけるPV線図を示す。
【0059】
図8(A)の点線Eを参照すると、低エンジン負荷時はノッキングが発生しにくいので、第1点火プラグ51の点火時期を高エンジン負荷時よりも圧縮上死点側に進角し、点火時圧縮比を高くすることにより、圧縮比の比率を小さくする。点火時圧縮比が高く、混合気燃焼時の圧縮比が高いことから熱効率が向上する(排気損失が減少する)。さらに、点火時圧縮比が高い場合において圧縮比の比率を高エンジン負荷時に比べて小さくするので、図6の線Dに示したように低エンジン負荷時において熱効率の向上を図ることができる。機械圧縮比は混合気燃焼時の圧縮比が所望の圧縮比となるように制御され、本実施形態においては高エンジン負荷時に比べて機械圧縮比を高くして所望の圧縮比としている。
【0060】
図8(A)の実線Fを参照すると、高エンジン負荷時はノッキングが発生しやすいので、第1点火プラグ51及び第2点火プラグ52の点火時期を低エンジン負荷時よりも圧縮上死点側から遅角して、点火時圧縮比を低くすることにより、圧縮比の比率を大きくする。点火時圧縮比が低くなるので、混合気燃焼時の圧縮比も低くなる。点火時圧縮比が低い場合において圧縮比の比率を低エンジン負荷時に比べて大きくするので、図6の線Cに示したように高エンジン負荷時において熱効率の向上を図ることができる。機械圧縮比は混合気燃焼時の圧縮比が所望の圧縮比となるように制御され、本実施形態においては低エンジン負荷時に比べて機械圧縮比を低くして所望の圧縮比としている。
【0061】
一方、排気温度Tが所定温度Tよりも大きい場合は、図8(B)の実線Gに示すように、第1点火プラグ51や第2点火プラグ52の点火時期を変更せずに、機械圧縮比を所定量だけ低下させて混合気に点火する。そうすると、圧縮比の比率が小さくなって、混合気燃焼による熱発生から膨張下死点までの時間が長くなるので、冷却損失は僅かに悪化するものの、排気温度の上昇が抑制される。
【0062】
以上により、第2実施形態のエンジン100では、下記の効果を得ることができる。
【0063】
エンジン100では、エンジン負荷に応じて機械圧縮比及び点火時期を制御して圧縮比の比率を調整するので、エンジン負荷によらず熱効率の向上率を最大とすることができる。
【0064】
排気温度が所定温度よりも高くなった場合には、点火時期を変更せずに機械圧縮比を所定量だけ低下させて混合気に点火するため、排気温度の上昇を抑制することができる。これにより、排気温度が過度に高温となるのを回避することができ、排気系を構成する部品の熱劣化を抑制することができる。
【0065】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0066】
上記した各実施形態のエンジンは、混合気点火時の点火プラグの本数を変化させることで混合気の燃焼期間を変更するように構成したが、燃料に水素を供給する水素供給装置を備えて水素の供給割合を変化させることで混合気の燃焼期間を変更するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 エンジン
10 シリンダブロック
11 シリンダ
12 ピストン
13 燃焼室
20 シリンダヘッド
30 吸気ポート
40 排気ポート
43 排気通路
51 第1点火プラグ(燃焼期間変更手段)
52 第2点火プラグ(燃焼期間変更手段)
60 コントローラ(制御手段)
61 アクセルペダルセンサ
62 排気温度センサ(排気温度検出手段)
70 機械圧縮比可変機構(機械圧縮比変更手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内の混合気に点火する点火プラグと、
圧縮上死点後に混合気に点火するように前記点火プラグを制御する制御手段と、を備え、
ピストン上死点位置における機械圧縮比を、圧縮上死点において混合気に点火した場合にノッキングが発生するような高圧縮比に設定する、
エンジン。
【請求項2】
前記機械圧縮比は、圧縮上死点での圧縮圧力が混合気燃焼時の燃焼最大圧力よりも小さくなるように設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記機械圧縮比を混合気点火時における点火時圧縮比で割った圧縮比の比率が、1.1よりも大きくなるように設定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記制御手段は、高エンジン負荷時に、点火時期を圧縮上死点から離れるように遅角させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項5】
ピストン上死点位置を変化させて前記機械圧縮比を変更する機械圧縮比変更手段をさらに備え、
前記制御手段は、エンジン負荷が高いほど、混合気点火時における点火時圧縮比がより低下し、前記機械圧縮比を混合気点火時における点火時圧縮比で割った圧縮比の比率が大きくなるように、点火時期を圧縮上死点からより離れる側へと遅角させつつ機械圧縮比を変更する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項6】
排気温度を検出する排気温度検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、排気温度が所定温度よりも高い場合には、前記機械圧縮比を低下させる、
ことを特徴とする請求項5に記載のエンジン。
【請求項7】
混合気の燃焼期間を変更する燃焼期間変更手段をさらに備え、
前記制御手段は、高エンジン負荷時に、混合気の燃焼期間を短くするように前記燃焼期間変更手段を制御する、
ことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1つに記載のエンジン。
【請求項8】
前記燃焼期間変更手段は、複数の点火プラグによって構成され、
前記制御手段は、エンジン負荷に応じて混合気に点火する点火プラグの数を変更することで、混合気の燃焼期間を変更させる、
ことを特徴とする請求項7に記載のエンジン。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100828(P2013−100828A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−38753(P2013−38753)
【出願日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【分割の表示】特願2009−59182(P2009−59182)の分割
【原出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】