説明

オーバーモールド容器の製造方法、およびオーバーモールド容器の製造装置

【課題】容器の形状に依存することなく、インナーボトルの変形や表面の流動を防止し、高品質で美観に優れたオーバーモールド容器を製造するための方法を提供する。
【解決手段】金型50内に配置されたインナーボトル10の外側に溶融樹脂を射出してアウター20を成形する際、ボトル内にロッド60を挿入して加圧ステップと循環ステップとを実行し、ロッド内にはボトルの外方に露出する外部口(61o〜63o)と、ボトル内にて開口する内部口(61i〜63i)とを連絡する供給管(61,62)と排気管63とに区別された複数の通気管が形成され、加圧ステップでは、供給管の外部口に供給したエアを内部口からインナーボトルの内壁に気体を吹き付けつつ、ボトル内が所定の圧力となるまで加圧し、循環ステップでは、ボトル内に供給した気体を排気管の内部口から外部口を経由してボトル外に排気してインナーボトル内の圧力を維持しつつ気体を循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂製の中空体であるインナーボトルの表層に溶融樹脂の射出成形体であるアウターを覆ったオーバーモールド容器の製造方法に関する。具体的には、アウター成形時にインナーボトルが変形するのを防止することができる製造方法に関する。また、オーバーモールド容器の製造装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
液体やゲルなど、主に液状体(例えば、化粧品)を内容物として収容するための容器として、「オーバーモールド容器」と呼ばれるものがある。このオーバーモールド容器は、内容物が充填される中空の樹脂成形体(以下、インナーボトル)が、溶融樹脂の射出成形体(以下、アウター)で覆われた状態で一体化された構造である。このオーバーモールド容器の製造法としては、例えば、以下の特許文献1に記載されているように、インナーボトルをブロー成形などによって製造した後、そのインナーボトルの外側に溶融樹脂を射出してアウターを成形し、インナーボトルとアウターとを一体化している。
【0003】
このオーバーモールド容器では、例えば、有色樹脂のインナーボトルを、透明、あるいは磨りガラス状や色ガラス状など光透過性樹脂からなるアウターで覆うことで、インナーボトル内の内容物を遮光して外光による品質劣化を防止しつつ、重厚感や高級感といった、ガラスに似た触感や見た目の材質感を備えさせることができる。また、樹脂製故の耐衝撃性や形状の自由度も備えている。さらに、商品表示などの文字や図案(加飾)をインナーボトルの表面に施すとともに、アウターをこの加飾が透けて見えるような光透過性樹脂で成形した場合、商品表示などの文字や図案(加飾)をインナーボトルの表面に施すことで、その加飾部分が、オーバーモールド容器の表層に露出せず、商品表示などの部分が剥がれたり摩耗したりすることが原理的に発生しない、という効果も得られる。
【0004】
しかしながら、オーバーモールド容器では、インナーボトルの外側に溶融樹脂を射出してアウターを一体化させる際、インナーボトルがその溶融樹脂の圧力で変形したり破損したりする可能性がある。そこで、例えば、特許文献1に記載の発明では、予めインナーボトルの内部に高吸水性樹脂などの増粘材料を注入し、これを凍結して固化したものをコア材料として金型内に挿着した状態でアウターを成形する、という方法でオーバーモールド容器を製造している。そして、アウター成形後は、インナーボトル内のコア材料を溶融して排除している。しかし、この製造方法では、各工程における作業が煩雑で、工程数自体も多くなり、製造コストが嵩む。また、コア材料を完全に除去できなければ、実際にインナーボトル内に収納される内容物がそのコア材料の残存物によって汚染されてしまう。
【0005】
そこで、以下の特許文献2に記載の発明では、樹脂製のインナーボトルの内部に空気や液体を充填させるとともに、そのインナーボトルを閉栓し、その状態でアウターを成形している。それによって、インナーボトルの変形を防止し、工程もある程度簡略化することができる。充填物を気体とすれば、汚染源にはなりにくい。液体であっても、除去が容易である。また、充填する液体として、商品として実際に内容物として収納される液状体(化粧品など)を用いれば、成形時の充填物が汚染源となる、という問題が原理的に発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−23758号公報
【特許文献2】特許第4377447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2などに記載の従来の技術では、インナーボトルが球形であればよいが、例えば、円筒状のインナーボトルでは、アウター成形時に、流動する溶融樹脂が、その円筒の側面と端面との境界などの角(かど)の部分、すなわちインナーボトルの外面において屈曲する部分に滞留するため、この角部に大きな圧力と熱が加わり、その角部がつぶれて変形する、という問題を解決することが難しい。また、インナーボトルの表面に加飾が施されている場合、その加飾部分が溶融樹脂による熱で流動し、加飾部分の美観が損なわれたり、加飾として全く機能しなくなったりする可能性もある。
【0008】
そこで、インナーボトルの中空内部を冷却する、という解決法が考えられるが、その冷却部位や冷却のタイミングを誤れば、金型全体にアウターとなる樹脂がまわらずに冷却固化してしまう、いわゆるショートショットが発生する場合がある。なお、上記引用文献2に記載の技術では、インナーボトルを閉栓しているため、冷却すること自体が極めて困難である。
【0009】
本発明は、上述した従来のオーバーモールド容器の製造に関わる問題点に鑑みなされものであり、その主な目的は、煩雑な工程を必要とせずに、容器の形状に依存することなく、インナーボトルの変形や表面の流動を防止し、高品質で美観に優れたオーバーモールド容器を製造するための方法、およびその製造装置を提供することにある。なお、その他の目的は、以下の記載で明らかにする
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、樹脂製の中空体であるインナーボトルの表層に溶融樹脂の射出成形体であるアウターで覆ってなるオーバーモールド容器の製造方法であって、
前記インナーボトルをアウター成形用の金型内に配置するとともに、当該金型内に溶融樹脂を射出して前記アウターを成形する際に、柱状のロッドを用いて加圧ステップと、循環ステップとを実行し、
前記柱状のロッドは、内部には当該ロッドの延長方向に沿う複数の通気管が形成されて、一端が前記インナーボトルの開口から外方に露出され、他端が前記インナーボトルの中空内部に挿入され、
前記複数の通気管は、それぞれ、前記ロッドにおいて前記インナーボトルの外方に露出する部位にて開口する外部口と、前記ロッドにおいて前記インナーボトル内に挿入されている部位にて開口する内部口とを連絡するように形成されているともに、気体の供給管と排気管とに区別され、
前記加圧ステップでは、前記供給管の外部口に気体を供給し、当該供給管の内部口から前記インナーボトルの内壁に気体を吹き付けつつ、当該インナーボトル内が所定の圧力となるまで加圧し、
前記循環ステップでは、前記供給管の外部口に気体を供給しつつ、当該供給した気体を前記排気管の内部口から取り入れて当該排気管の外部口を経由して前記インナーボトルの外方に排気することで、前記加圧ステップにより上昇させた前記インナーボトル内の圧力を維持しつつ、前記インナーボトル内の前記気体を循環させる、
ことを特徴とするオーバーモールド容器の製造方法としている。
【0011】
また、前記インナーボトルは、角部を有する形状に形成されており、前記加圧ステップ、および前記循環ステップでは、前記供給管の少なくとも一部の特定の内部口によって、前記角部に対応する部位に選択的に気体を吹き付けることを特徴としたオーバーモールド容器の製造方法としてもよい。
【0012】
さらに、前記アウターは光透過性樹脂からなるとともに、前記インナーボトルの外表面には加飾が施されており、前記加圧ステップ、および前記循環ステップでは、前記供給管の少なくとも一部の特定の内部口によって、前記加飾が施されている領域に対応する前記インナーボトルの内壁面に向けて選択的に気体を吹き付けるようにしたオーバーモールド容器の製造方法とすることもできる。
【0013】
また、本発明は、オーバーモールド容器の製造装置にも及んでおり、当該製造装置は樹脂製の中空体であるインナーボトルの表層に溶融樹脂の射出成形体であるアウターで覆ってなるオーバーモールド容器を製造するための装置であって、
製造済みの前記インナーボトルを内部に配置した状態で、前記アウターとなる溶融樹脂が射出される金型と、当該インナーボトル内に挿入される柱状のロッドと、気体供給手段と、排気手段とを備え、
前記柱状のロッドは、前記インナーボトルに挿入された状態で、一端が当該インナーボトルの開口から外方に露出するように形成さているとともに、内部に当該ロッドの延長方向に沿う複数の通気管が形成され、
前記複数の通気管は、それぞれ、前記ロッドにおいて前記インナーボトルの外方に露出する部位にて開口する外部口と、前記ロッドにおいて前記インナーボトル内に挿入されている部位にて開口する内部口とを連絡するように形成されているとともに、気体の供給管と排気管とに区別され、
前記気体供給手段は、気体の供給源と、当該気体供給源と前記供給管の外部口とを連絡する気体供給路と、当該気体供給路の途上に介在して、前記気体供給源から前記供給管内に導入される気体の流量を調整するための供給用バルブとを含み、
前記排気手段は、前記排気管の外部口に接続されて、前記インナーボトル内の気体を当該ボトルの外方に排気するための気体排出路と、当該気体排出路の途上に介在して、前記インナーボトル内から排気される気体の流量を調整するための排気用バルブとを含む、
ことを特徴としている。
【0014】
上記製造装置において、前記供給管の内部口は、前記ロッドの内部から外表面に向けて徐々に開口面積が拡大するようにテーパー状に開口していてもよい。あるいは、前記供給管の内部口は、前記ロッドの外表面にスリット状に開口しているオーバーモールド容器の製造装置とすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のオーバーモールド容器の製造方法、および製造装置によれば、容器の形状に依存することなく、インナーボトルの変形や表面の流動を防止でき、高品質で美観に優れたオーバーモールド容器を製造することができる。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が対象とするオーバーモールド容器の一例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る製造装置の概略構成図である。
【図3】上記製造装置を構成するロッドの構造を示す図である。
【図4】上記製造装置を用いてオーバーモールド容器を製造するときの容器内部の状態を示す概略図である。
【図5】加飾が施されたオーバーモールド容器の製造に適した構造を備えたロッドの一例を示す図である。
【図6】上記ロッドのその他の実施形態を示す図である。
【図7】角部を有するオーバーモールド容器の例を示す図である。
【図8】上記ロッドのその他の実施形態を示す図である。
【図9】上記その他の実施形態に係るロッドの変形例を示す図である。
【図10】本発明が対象とするオーバーモールド容器のその他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
===オーバーモールド容器の構造===
図1は、本発明が対象とするオーバーモールド容器1の一例を示す図である。図1(A)は、当該容器1の一部破断斜視図である。図示したオーバーモールド容器1は、開口14を有して、化粧品などの内容物が収納されるインナーボトル10と、そのインナーボトル10の表面を覆うアウター20とが一体化した一般的な構造を有している。
【0018】
ここで、オーバーモールド容器1の開口14を上方、底部15を下方として上下方向または縦方向を規定すると、図1(B)は、当該オーバーモールド容器1の縦断面図に対応する。図示した例では、インナーボトル10は、円筒状の収納部12の上端に、当該収納部12より縮径された円筒状の首部13が一体的に形成された形状であり、内容物は、収納部12の内側となる中空部分11に充填される。当該中空部分11は、首部13の内側を経由して開口14に連絡し、首部13の外表面には、オーバーモールド容器1を閉栓するキャップを螺嵌、あるいは嵌め込むための凹凸19が形成されている。そして、アウター20は、インナーボトル10の収納部12の領域、すなわち、首部13の基部(下端)から底部15までを覆うように成形され、インナーボトル10の首部13は、アウター20から外方に露出している。
【0019】
図1に示したオーバーモールド容器1は、一般的なオーバーモールド容器と同様の構造であるが、本発明は、そのオーバーモールド容器1を製造する際の手順や、その製造に際して使用する装置の構成に特徴がある。そして、その特徴により、製造コストの増加を抑えつつ、アウター20の成形時にインナーボトル10の収納部12の内壁を汚染させずに加圧できるとともに、効率よく冷却して、インナーボトルの変形を確実に防止することができる。
【0020】
また、本発明の実施例によれば、熱や圧力が集中しやすいインナーボトル10の角の部分(17,18)、すなわち、収納部12が円筒状であれば、その円筒の側面と上端面との境界となる周縁部(肩部)17や下端面(底部)15の周縁部18の変形を防止することも可能となる。また、アウター20の射出成形時にインナーボトル10の表面が熱流動して当該表面に施された加飾が劣化することを防止することも可能となる。
【0021】
===製造装置の概略構成===
本発明の実施形態として、図1に示したオーバーモールド容器1の製造装置(以下、製造装置)を挙げる。図2は、当該製造装置40の概略図である。この図では、当該製造装置40の主要部の縦断面と、各種部材や付属装置、配管経路などの概略が示されている。この製造装置40は、アウター20を射出成形する際に用いられる、金型50を主体とした一般的な構成を備えるとともに、インナーボトル10が金型50内に配置された状態で、そのインナーボトル10の収納部12内の中空部分11に挿入される柱状のロッド60、そのロッド60に接続される管路(52〜54)、その管路(52〜54)の延長途上に介在するバルブ(55〜57)、およびポンプや圧搾気体が放出可能に充填されたボンベなどのエア供給部58などを備えている。図2に示したように、アウター成形用の金型50は、インナーボトル10の底部15側をゲート部41とし、インナーボトル10は、保持部材51によって首部13が固定された状態で、その金型50内に配置される。
【0022】
ここで、オーバーモールド容器1における上記の上下関係を踏襲することとすると、柱状のロッド60は、インナーボトル10の上部開口14から首部13の内側を経由して収納部12内側の中空部分11に向かって挿入されている。なお、この例では、ロッド60は、その先端(下端)64が収納部12内側の底面16に当接するまで挿入されている。上端65は、インナーボトル10の開口14から露出し、金型50の外方まで延長している。
【0023】
本発明の実施例に係る製造装置40において、上記ロッド60は、最も特徴的な構成である。ロッド60は、耐熱性の素材(金属、耐熱性樹脂など)によって形成され、その内部には、延長方向(上下方向)に沿って気体(以下、エア)の流路となる通気管(61〜63)が形成されている。その通気管(61〜63)の一端(61o〜63o)は、インナーボトル10の外方にて開口し、他端(61i〜63i)は、ロッド60の側面で、かつインナーボトル10の中空部分11にある部位にて開口している。
【0024】
図3は、図2におけるロッド60の概略構造を示す図である。図3(A)は、インナーボトル10に収納されている状態を透視斜視図にして示している。また、図3(B)〜(D)は、それぞれ、図2におけるa−a、b−b、c−cの各矢視断面図である。例示したロッド60は円柱状で、図3(B)〜(D)に示したように、円形の横断面形状を有している。そして、ロッド60において、インナーボトル10の外方に露出するロッド60の上端65側から、インナーボトル10の首部13の下端に至る部分では、図3(B)に示したように、円形断面の中心と、その周囲の双方に通気管(61〜63)が配置されている。これら複数の通気管(61〜63)には、インナーボトル10外のエアをインナーボトル10内に供給するための通気管(以下、供給管:61,62)と、インナーボトル10内のエアを外方に排気するための通気管(以下、排気管:63)の2種類がある。図3(B)〜(D)では、供給管(61,62)と排気管63の配置の一例が示されており、供給管を黒丸「●」、排気管を白丸「○」で示している。さらに、この例では、供給管(61,62)には、ロッド60の円形断面の中央を貫いて当該ロッド60の下端64まで延長する1本の供給管62と、円形断面の円周に沿って複数配置されて、インナーボトル10の首部13の下端近辺まで延長する供給管61の2種類がある。排気管63は、円形断面の円周に沿って複数配置されて、インナーボトル10内の首部13と底面16までの長さのほぼ中央の位置まで延長している。そして、図3(B)(C)に示したように、円形断面の円周に沿う複数の供給管61と、複数の排気管63は、それぞれ、個別に開口(61i,63i)に連絡し、図3(D)に示したように、円形断面の中央を貫く1本の供給管62は、複数の開口62iに向けて放射状に延長する分岐路66を経てエア吹出口62iに連絡している。
【0025】
一方、上記通気管(61〜63)の他方の開口(61o〜63o)、すなわち、インナーボトル10の外方に露出している開口(61o〜63o)には、エアをロッド60の供給管(61,62)を介してインナーボトル10内にエアを導入したり、インナーボトル10内のエアを排気管62を介してインナーボトル10の外に導出したりするための管路(52〜54)が接続されている。
【0026】
ここで、便宜的に、供給管(61,62)におけるインナーボトル10の外側の開口(61o,62o)と、内側の開口(61i,62i)を、それぞれエア導入口、およびエア吹出口と称し、排気管63におけるインナーボトル10の外側の開口63oをエア導出口、内側の開口63iをエア排出口と称することとすると、該製造装置40では、エア導入口(61o,62o)には、大気や所定の気体(窒素など)を圧縮するポンプ、あるいは圧搾気体(例えば、窒素などの不活性ガス、圧搾した空気など)が充填されたボンベなどのエア供給部58からの管路(以下、エア供給路:52,53)が接続されている。また、エア導出口63oには、例えば、大気開放される管路(以下、エア排出路:54)が接続されて、インナーボトル10内のエアが、当該エア排出路54を経由して当該ボトル10の外部に排気されるようになっている。また、エア供給路(52,53)の途上には、インナーボトル10内に流入させるエアの量を調整するためのバルブ(以下、供給用バルブ、55,56)が介在し、エア排出路54には、インナーボトル10内から当該ボトル10外に流出させるエアの量を調整するためのバルブ(以下、排出用バルブ、57)が介在している。
【0027】
なお、ロッド60内に形成されている供給管(61,62)や排気管63の配置としては、図3に示した例に限らず、例えば、排気管63や、インナーボトル10の肩部17の位置まで延長する供給管61を、ロッド60の先端まで延長する供給管62と同様に1本とし、それぞれの通気管(61〜63)を、図3(D)に示したように、複数のエア吹出口(61i,62i)やエア排出口63iに分岐させてもよい。ロッド60の延長途上で分岐させる際には、その分岐路を他の通気管の間を縫うように分岐させればよい。また、図3に示したロッド60では、エア吹出口(61i、62i)の上下方向の位置に応じて個別の供給管(61,62)が設けられていたが、この例に限らず、例えば、供給管を1本のみとし、その1本の供給管が、肩部17と底部周縁部18のそれぞれに対応する位置で放射状に分岐して各エア吹出口(61i,62i)に連絡していてもよい。
【0028】
===製造方法===
<従来技術の問題点>
周知のごとく、オーバーモールド容器1は、ブロー成形などによって、あらかじめインナーボトル10を製造しておき、そのインナーボトル10をアウター20を成形するための金型50内に配置するとともに、その金型50内に溶融樹脂を射出することで製造される。しかしながら、樹脂製の中空体であるインナーボトル10は、アウター20の射出成形時の熱と圧力とによって、収納部12の中空部分11が内方に変形する可能性がある。オーバーモールド容器1の従来の製造方法では、この変形を防止するために、インナーボトル10の中空部分11に、気体や液体を密閉した状態でアウター20を射出成形していた。しかし、従来の製造方法では、アウター20の成形時にインナーボトル10内部の気体や液体の温度が経時変化し、その温度変化に伴ってインナーボトル10内の内圧が変動する。そして、温度変化と内圧変化とは、時間差があり、インナーボトル10を密閉したときの圧力が小さければ、射出成形時の熱で内圧が上昇する前に、成形圧力によってインナーボトル10が中空内方に変形する。密閉時の内圧が大きすぎれば、射出成形以前に、樹脂製のインナーボトル10が外方に膨張するように変形してしまう。気体に代えて液体を充填する場合でも、射出成形時の熱で液体の温度が上昇するため、冷却効果が持続せず、例えば、インナーボトル10の表面が高温の溶融樹脂と接触することによって溶解、流動することによる変形を確実に防止することが難しくなる。
【0029】
また、充填する液体を最終的に容器内に充填する内容物(化粧品など)とする場合では、その内容物がアウター20の成形時の熱で変性してしまう可能性もある。さらに、図1に示したような円筒型の収納部12を備えたインナーボトル10では、肩部17や底部周縁部18などの角となる部分に溶融樹脂が滞留し易く、この部分(17,18)の角が潰れるなどの変形が起こり易くなる。
【0030】
そこで、本発明の実施例として、上記製造装置40を用いたオーバーモールド容器1の製造方法を挙げる。本実施例によれば、上述したロッド60を備えた製造装置40を用いてアウター20を射出成形することで、インナーボトル10内の温度や圧力を精度良く制御でき、さらには、インナーボトル10がどのような形状であってもその変形を確実に防止できるようになっている。また、アウター20の成形に先立って、気体や液体をインナーボトル10内に充填してそれを密閉する工程が不要であり、工程も簡素となる。そして、従来よりも、歩留まりの向上が期待できるため、製造コストが大きく増加することがない。
【0031】
<実施例>
ここで、本発明の実施例に係る製造方法について、その製造手順の一例を図2に示した製造装置40に基づいて説明する。まず、製造済みのインナーボトル10をアウター20の成形用金型50内に位置決めした状態で配置する。本実施例では、インナーボトル10は、首部13が保持部材51で固定されて金型50内に配置される。そして、インナーボトル10の開口14からロッド60を挿入する。なお、ロッド60は、上端65側がインナーボトル10内に挿入される部位より太く、多段円筒状となっており、ロッド60のその太い円柱部分の側面が、インナーボトル10の保持部材51の上端側の内面と密着している。さらに、その密着部位からインナーボトル10の開口14に至る、保持部材51とロッド60との空隙部分には、密閉部材(例えば、硬質ウレタンフォームなどの樹脂、ゴム)59が充填されており、ロッド60が所定位置まで挿入された状態では、インナーボトル10の内外の気体の流路は、ロッド60内の通気管(61〜63)のみとなるものとする。もちろん、インナーボトル10の開口14を密閉する構造は、上記構造に限るものではなく、例えば、上記の密閉部材59を介在させずに、後端側の太い円筒の前端面を開口14の縁に押圧させても密閉する構造とすることもできる。ロッド60の外側面と首部13の内面とを密着させることで密閉してもよい。いずれにしても、インナーボトル10の内外の気体の流路が、ロッド60内の通気管(61〜63)のみとなれば、どのような構造であってもよい。
【0032】
次に、ロッド60をインナーボトル10内に挿入した状態で、アウター20となる溶融樹脂をゲート部41を介して金型50内に射出する。この樹脂の射出工程に並行して、あるいは前もって、エア供給部58からエア供給路(52,53)、および供給管(61,62)を介してエアをインナーボトル10内に供給し、インナーボトル10の内圧を上昇させる。内圧の調整手法としては、例えば、排気用バルブ57を閉じた状態で、供給用バルブ(55,56)を一定時間開放させておけば、インナーボトル10内の内圧が所定の圧力まで上昇する。
【0033】
インナーボトル10の内圧が高くなったら、エアの供給と排気を並行して行う。それによって、インナーボトル10内では、所定温度の外部からのエアが供給管(61,62)を介してエア吹出口(61i,62i)から供給されつつ、エア排出口63iからそのエアが排気管63と、エア導出口63oに接続されているエア排出路54とを介して排気される。すなわち、インナーボトル10の内外でエアが循環して、インナーボトル10の内部に一定温度のエアが随時供給されることになる。そのため、インナーボトル10内では、時間的な温度変位が生じにくく、インナーボトル10内がほぼ一定の温度に冷却された状態で維持されるととともに、温度変化に伴う内圧の変動が無いため、インナーボトル10内の圧力がほぼ一定に維持される。結果的に、インナーボトル10が変形し難くなる。また、エアの循環動作に伴ってインナーボトル10内のエアが攪拌されるため、温度分布や圧力分布が均一となり、インナーボトル10がさらに変形し難くなる。また、エアがエア吹出口(61i,62i)から放出される際の断熱膨張による冷却効果も期待できる。なお、より積極的にインナーボトル10内を冷却するために、例えば、エア供給源58やエア供給路(52,52)の途上にエアの冷却機構を設けたり、エア供給源として、冷却された圧搾気体の放出が可能なボンベ(例えば、液体窒素が充填されたボンベなど)を用いたりすることも可能である。
【0034】
また、射出成形に際しては、金型50を冷却するのが一般的である。したがって、アウター20は、その金型50の内壁に接することで外側からも冷却される。そして、本実施例では、インナーボトル10の内部の圧力を維持することが可能であるため、インナーボトル10が射出成形時の圧力によって内方に変形せず、インナーボトル10の外方に充填されているアウター20の樹脂が確実に金型50の内壁に押しつけられる。そのため、アウターは、インナーボトル10の内面が冷却されることによって、インナーボトル10と接触する側と、金型50に接触する側の双方が冷却される。すなわち、アウター20が極めて効率的に冷却される。
【0035】
図4は、インナーボトル10内におけるエアの流動状態を示す概略図である。図2に示した製造装置40では、エア吹出口(61i,62i)が、収納部12内の中空部分11における上下両端、すなわち、首部13の基部近傍と底面16近傍にて開口している。そして、エア排出口63iがその首部13の基部と底面16との間のほぼ中央の位置で開口している。そのため、図中にて白抜きの矢印で示したように、インナーボトル10内のエアがより円滑に、かつ隅々まで行きわたるようになっている。さらに、エア吹出口(61i,62i)の上下方向の開口位置が、角部(17,18)に対応する位置で、かつ、その開口方向がロッド60を中心とした放射方向であるため、インナーボトル10内に供給されたエアは、まず、中空部分11において肩部17と底部15の周縁部18に対応する隅の部分(17i,18i)に直接吹き付けられる。上述したように、角部(17,18)は、熱や圧力が滞留する部位で、変形を防止しにくい部位である。しかし、本実施例では、その変形防止が難しい部位(17,18)に対応する隅の部分(17i,18i)に最初に選択的にエアの圧力が加わるとともに、この箇所(17,18)が優先して冷却される。それによって、円筒状の収納部12を備えたインナーボトル10など、インナーボトル10に角となる部位(17,18)があっても確実に変形を防止することができるようになっている。このようにして、インナーボトル10の内外でエアを循環させつつ、溶融樹脂を射出し、溶融樹脂が金型50内に充填されたならば、溶融樹脂の冷却固化を待って金型50を開き、最終成形品であるオーバーモールド容器1を金型50から取り出す。
【0036】
なお、エアの供給開始タイミング、内圧の維持に伴う排気開始のタイミング、維持する内圧、内圧の上昇速度などは、オーバーモールド容器1におけるインナーボトル10やアウター20の形状、使用する樹脂の種類などに応じて適宜に調整すればよい。例えば、インナーボトル10を金型50内に配置して型締めした後に溶融樹脂を射出する以前に内圧を上昇させて気体を循環させておいてもよいし、溶融樹脂がインナーボトル10の表層に接触した時点でエアの循環を開始させてもよい。もちろん、供給用バルブ(56,57)と、排気用バルブ57を調整し、エアを循環させながら内圧を上昇させていってもよい。例えば、アウターの成形工程の始終を通じてインナーボトル10の内圧を上昇させつつ、エアを循環させてもよい。すなわち、一度高めたインナーボトル10内の圧力が下がらないように維持すればよい。いずれにしても、型締めから、溶融樹脂を射出して、アウター20を成形し、金型50を開くまでの一連の工程の期間中に、上述した内圧を上昇させる手順と、インナーボトル10内のエアを循環させる手順とが、順不同で個別に、あるいは並行して、あるいは双方の手順の期間の一部、あるいは全部が重複するように含まれていればよい。
【0037】
===エア吹出口の配置など==
<加飾>
アウター20に光透過性樹脂を用いたオーバーモールド容器1では、インナーボトル10の外表面に加飾が施されることが多い。インナーボトル10の外表面は、アウター20の成形時に高温の溶融樹脂と接触するため、溶解して流動しやすい、という問題が潜在している。加飾は文字や図案の表示部分であり、インナーボトル10の外表面が流動すれば、その文字や図案が歪むことになる。あるいは、加飾部分の表面に微細な凹凸などが生じたりして、加飾の美観が損なわれたり、アウター20自体の品質(ガラスに似た透明感、材質感など)が損なわれたりする。
【0038】
また、加飾は、インクを用いたシルク印刷や、金属箔や樹脂フィルムなどを用いたホットスタンプによって施されており、アウター20の成形時に、その加飾に用いたインクや樹脂が熱で変性する可能性がある。加飾部位が変性すれば、その加飾部位が変色するなどの問題が生じる。金属箔のホットスタンプであれば、その部位に熱が集中するため、樹脂製のインナーボトル10の表面が溶解して流動する可能性が高くなる。
【0039】
そこで、図5に示したように、加飾70が施されたインナーボトル10bでは、その加飾部分70に対応する専用のエア吹出口71を備えたロッド60bを使用し、角部(17,18)と同様に、加飾部分70の内側にも優先的にエアを吹き付けて部分的に冷却効果を高めてもよい。この例では、ロッド50には、収納部12の角部(17,18)に対応する中空部分11の隅の部分(17i,18i)に直接エアを吹き付けるためのエア吹出口(61i,62i)に加え、インナーボトル10bにおける加飾部位70の裏側に対応する領域72に複数のエア吹出口71が集中配置されている。
【0040】
<ロッドの形状、素材>
所定の部位に選択的、優先的にエアを吹き付ける構成としては、その部位にエアが吹き付けられればよく、例えば、図6に示したように、ロッド60cをインナーボトル10の底面付近まで延長させなくても、ロッド60cの先端73を徐々に縮径して、傾斜面74を形成し、その傾斜面74にエア吹出口75を配設してもよい。それによって、ロッド60cの先端73側では、ロッド60cの延長方向に対して斜め下方に、かつ放射状にエアが吹き出され、エア吹出口75からのエアが底面16の隅部分18iに直接吹き付けられ、図3に示したロッド60と同様の効果を得ることができる。
【0041】
ロッドの素材や構造については、例えば、ムクの金属素材を用い、それに供給管や排気管を穿設した構造としたり、耐熱樹脂を成形した構造としたりすることが考えられるが、素材として多孔質金属を用いてもよい。このような場合では、エア吹出口やエア排出口は、多孔質素材の表面全面に均一に形成されることになる。いずれにしても、ロッドの表面に、エアの流通方向が異なる供給管と排気管の2種類の通気管をロッド内部に形成し、その2種類の通気管のそれぞれの両端を開口で連絡し、インナーボトルの内外でエアを循環させればよい。そして、必要に応じて、変形防止が難しい箇所や、優先的に冷却したい箇所に選択的にエアが吹き付けられるようにエア吹出口を設ければよい。
【0042】
<インナーボトルの形状>
エア吹出口の形状や配置は、インナーボトルの形状などに応じて適宜に変更することができる。図7に種々のインナーボトル(10d〜10f)の縦断面形状を示した。図7(A)に示したように収納部12cの底部15が半球状に突出し、底面16がその半球の内面となる、いわゆる試験管タイプのインナーボトル10cであれば、角となる部位は肩部17のみとなり、この部分17に対応する隅の部分17iに選択的にエアが吹き付けられるようにしてもよい。逆に、図7(B)に示したように、収納部12dが首部13に向けて円錐状に収束する、いわゆるフラスコ型の容器10dでは、実質的に肩部17がない。したがって、底面16の隅部分18iに選択的にエアが吹き付けられるエア吹出があればよい。
【0043】
図7(C)に示した収納部12eにくびれ30があるインナーボトル10eや、図7(D)に示した多段筒状のインナーボトル10fもある。このような形状のインナーボトル(10e,10f)では、そのくびれ30によって収納部12eの内方に突出する部位31や、多段円筒の接合部位32が角部となる。このような様々な形状のインナーボトル(10c〜10f)であっても、中空部分11において、それぞれの角部(17,18,31,32)に対応する部位に選択的にエアが吹き付けられるようにロッドやエア吹出口を形成すればよい。もちろん、上述した試験管タイプのインナーボトル10cやフラスコ型のインナーボトル10dであっても、アウターとなる溶融樹脂の流動性などによっては、底部15や首部13の周辺に熱や圧力が集中する場合もあり得る。このような場合は、収納部12の内側の底面16や首部13の周辺にエアが選択的に吹き付けられるようにすればよい。
【0044】
また、その反対に、インナーボトルに角部がない場合や、溶融樹脂の流動性などによって角部があってもその部位が変形しにくい場合もあり得る。このような場合には、ロッドの特定の部位にエア吹出口を偏在させなくてもよく、ロッドの側面に一様にエア吹出口を分布させたり、1箇所にのみ設けたりすることもできる。
【0045】
<ゲート部>
選択的にエアを吹き付ける部位としては、角部に対応する部位以外にも考えられる。例えば、上記実施例では、金型50のゲート部41が、インナーボトル10の底部15側にあり、このゲート部41からの高温の溶融樹脂は、インナーボトル10の底部15に最初に接触する。また、溶融樹脂の射出圧力が直接底部15に加わる。溶融樹脂の射出圧力や温度などの成形条件、あるいはインナーボトル10の底部15の厚さなどによっては、底部15も変形しやすい箇所となる。したがって、この部位を選択的に加圧したり冷却したりできるように、ロッド60の先端64に底面16に向けて開口するエア吹出口を形成してもよい。この場合では、図2や図3に示した、ロッド60の中央を縦貫する供給管62をロッド64の先端64まで延長し、当該先端64にもエア吹出口62iを開口させればよい。なお、ゲート部41とインナーボトル10との位置関係は、上記実施例に限るものではなく、他の位置にゲート部41がある場合でも同様に、インナーボトル10においてゲート部41に対応する部位に選択的にエアを吹き付けるようにすることができる。
【0046】
さらに、ゲート部41からの溶融樹脂が不要に冷却されることで、樹脂の流動性が損なわれてショートショットなどが懸念される場合には、専用のエア供給経路を設けてもよい。具体的には、ロッド60の内部に、先端64の専用のエア吹出口まで貫通する専用の供給管を形成し、その供給管のエア導入口とエア供給源58も、専用の供給用バルブが介在する専用のエア供給路で接続するように製造装置40を構成する。そして、溶融樹脂を金型50内に射出し、不要に溶融樹脂を冷却することで発生する成形不良の懸念が無くなった時点(例えば、インナーボトル10の外表面において、アウター20に被装される部分が全て溶融樹脂に接触した時点や、金型50内に溶融樹脂が充填された時点など)で、上記専用バルブを開き、専用の供給管を介してインナーボトル10の底面16に向けてエアを吹き付けるようにしてもよい。それによって、最も高温なゲート部41の近辺でアウター20を効率的に冷却することができる。もちろん、ゲート部41の近辺に限らず、インナーボトル10の形状などによっては、所定の部位に対して専用のエア供給経路を設けることも可能である。
【0047】
===エア吹出口の開口形状について===
上記実施例では、エア吹出口(61i,62i)やエア排出口63iの開口形状は円形であり、放射状の分岐路64を含め、通気管(61〜63)からこれらの開口(61i〜63i)に至る経路は径が一定の管状であった。しかし、アウター20の成形条件によっては、エアをインナーボトル10の内壁に向けて吹き付けた際、そのエアの噴流が一点に集中し、インナーボトル10の内壁面とその裏側となる外表面が点状に冷却される可能性がある。そのような場合では、アウター20を形成する溶融樹脂がインナーボトル10の外表面に接触した際、その点状に冷却された部分で溶融樹脂が円滑に流動せず、アウター20がインナーボトル10の外表面に均一に被装されず、美観が損なわれる。そこで、エア吹出口(61i,62i)の開口形状を、ロッド60の内方から外方に向かって広げるような形状にしてもよい。図8に、エア吹出口80の開口形状を工夫したロッド60dを示した。図8(A)は、当該ロッド60dの斜視図であり、(B)(C)は、(A)におけるd−d矢視断面である。当該図8に示したロッド60dでは、エア吹出口80の形状が、ロッド60dの内方から外方に向けて径が徐々に広がるテーパー状となっている。このロッド60d内の供給管81と各エア吹出口80との連結構造としては、(B)に示したように、1本の供給管81から分岐路82自体がエア吹出口80の開口に向かって徐々に拡径していく構造とすればよい。もちろん、分岐路82を径が一定となる直線状にして、エア吹出口80の開口端をテーパー状に拡径してもよい。また、(C)に示したように、ロッド60dの円形断面の円周に沿って複数の供給管81が形成されている場合では、各供給管81からロッド60dの外側面に向けてテーパー状に開口させてエア吹出口80を形成した構造とすればよい。なお、図8では、エア吹出口80の開口形状を説明するためのものであり、供給管81や排気管の数や配置、エア吹出口80の数や配置、およびエア排気口の形状や配置については特に限定していない。
【0048】
また、エア吹出口の開口形状は、ロッドの内方から外方に向かって広がっていれば、上記テーパー状に限るものではない。例えば、エア吹出口の開口端の形状が楕円であってもよいし、図9に示したロッド60eのように、エア吹出口90の開口形状がスリット状となっていてもよい。図9(A)は当該ロッド60eの斜視図であり、(B)(C)は、(A)におけるe−e矢視断面である。そして、エア吹出口90は、(B)に示したように、1本の供給管91から放射状に分岐する分岐路92の各先端にてスリット状に形成されていてもよいし、(C)に示したように、ロッド60eの円形断面の円周に沿って複数配置されている各供給管81から直接ロッド60eの側面に向けてスリット状に開口させてもよい。もちろん、(B)において、分岐路92が、エア吹出口90の開口端に向けて幅が徐々に拡大していくような形状であってもよい。また、スリットの延長方向は、ロッド60eの側面の円周方向に沿う方向でなくてもよく、延長方向に沿う縦方向であってもよい。なお、この図9に示したロッド60eにおいても、供給管91や排気管の数や配置、エア吹出口90の数や配置、およびエア排気口の形状や配置については特に限定していない。
【0049】
このように図8、図9に示したロッド(60d,60e)では、エア吹出口(80,90)の開口面積がロッド(60d,60e)の内方より外方の方が広くなっているため、エアが拡散された状態でインナーボトルの内壁に吹き付けられる。それによって、一点にエアが集中せず、冷却ムラなどに起因してアウターが不均一に被装されることがない。したがって、美観に優れた高品質のオーバーモールド容器を提供することが可能となる。
【0050】
===オーバーモールド容器について===
本発明が対象とするオーバーモールド容器は、図1に示したオーバーモールド容器1のように、アウター20がインナーボトル10における首部13の基部から底部15までを覆う構造に限らず、図10(A)に示したオーバーモールド容器1bのように、アウター20bが、首部13の基部から肩部17に至る途中まで覆う構造や、図10(B)に示したオーバーモールド容器1cのように、アウター20cが、底部15から肩部17までの間、すなわち収納部12の一部を覆う構造であってもよい。また、上記実施例では、金型50は、インナーボトル10の底部15側から溶融樹脂を射出していたが、側方にゲート部を設けた金型を用いれば、図10(C)に示したオーバーモールド容器1cのように、底部15がアウター20dで覆われていないオーバーモールド容器も製造可能である。すなわち、本発明は、インナーボトルの外表面の少なくとも一部がアウターで覆われたオーバーモールド容器を対象としている。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明は、液状の化粧品の保存容器など、高級感があり、美観に優れた容器に好適である。
【符号の説明】
【0052】
1,1b〜1d オーバーモールド容器、10,10b〜10f インナーボトル、
11 収納部内の中空部分、12 収納部、13 首部、14 インナーボトルの開口、
15 インナーボトルの底部、16 インナーボトル内側の底面、
17 角部(肩部),18 角部(底面の周縁部),17i 肩部に対応する隅の部分、18i 底面の周縁部に対応する隅の部分、20,20b〜20d アウター、
31,32 収納部の角部、40 製造装置、41 ゲート部、50 金型、
51 インナーボトル保持部材、52,53 エア供給路、54 エア排出路、
55,56 供給用バルブ、57 排気用バルブ、58 エア供給部、
60,60a〜60e ロッド、61,62,81,91 供給管、63 排気管、
61i,62i,71,75,80,90 エア吹出口、
63i エア排出口、61o,62o, エア導入口、63o エア導出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の中空体であるインナーボトルの表層に溶融樹脂の射出成形体であるアウターで覆ってなるオーバーモールド容器の製造方法であって、
前記インナーボトルをアウター成形用の金型内に配置するとともに、当該金型内に溶融樹脂を射出して前記アウターを成形する際に、柱状のロッドを用いて加圧ステップと、循環ステップとを実行し、
前記柱状のロッドは、内部には当該ロッドの延長方向に沿う複数の通気管が形成されて、一端が前記インナーボトルの開口から外方に露出され、他端が前記インナーボトルの中空内部に挿入され、
前記複数の通気管は、それぞれ、前記ロッドにおいて前記インナーボトルの外方に露出する部位にて開口する外部口と、前記ロッドにおいて前記インナーボトル内に挿入されている部位にて開口する内部口とを連絡するように形成されているともに、気体の供給管と排気管とに区別され、
前記加圧ステップでは、前記供給管の外部口に気体を供給し、当該供給管の内部口から前記インナーボトルの内壁に気体を吹き付けつつ、当該インナーボトル内が所定の圧力となるまで加圧し、
前記循環ステップでは、前記供給管の外部口に気体を供給しつつ、当該供給した気体を前記排気管の内部口から取り入れて当該排気管の外部口を経由して前記インナーボトルの外方に排気することで、前記加圧ステップにより上昇させた前記インナーボトル内の圧力を維持しつつ、前記インナーボトル内の前記気体を循環させる、
ことを特徴とするオーバーモールド容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記インナーボトルは、角部を有する形状に形成されており、前記加圧ステップ、および前記循環ステップでは、前記供給管の少なくとも一部の特定の内部口によって、前記角部に対応する部位に選択的に気体を吹き付けることを特徴とするオーバーモールド容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記アウターは光透過性樹脂からなるとともに、前記インナーボトルの外表面には加飾が施されており、前記加圧ステップ、および前記循環ステップでは、前記供給管の少なくとも一部の特定の内部口によって、前記加飾が施されている領域に対応する前記インナーボトルの内壁面に向けて選択的に気体を吹き付けることを特徴とするオーバーモールド容器の製造方法。
【請求項4】
樹脂製の中空体であるインナーボトルの表層に溶融樹脂の射出成形体であるアウターで覆ってなるオーバーモールド容器を製造するための装置であって、
製造済みの前記インナーボトルを内部に配置した状態で、前記アウターとなる溶融樹脂が射出される金型と、当該インナーボトル内に挿入される柱状のロッドと、気体供給手段と、排気手段とを備え、
前記柱状のロッドは、前記インナーボトルに挿入された状態で、一端が当該インナーボトルの開口から外方に露出するように形成さているとともに、内部に当該ロッドの延長方向に沿う複数の通気管が形成され、
前記複数の通気管は、それぞれ、前記ロッドにおいて前記インナーボトルの外方に露出する部位にて開口する外部口と、前記ロッドにおいて前記インナーボトル内に挿入されている部位にて開口する内部口とを連絡するように形成されているとともに、気体の供給管と排気管とに区別され、
前記気体供給手段は、気体の供給源と、当該気体供給源と前記供給管の外部口とを連絡する気体供給路と、当該気体供給路の途上に介在して、前記気体供給源から前記供給管内に導入される気体の流量を調整するための供給用バルブとを含み、
前記排気手段は、前記排気管の外部口に接続されて、前記インナーボトル内の気体を当該ボトルの外方に排気するための気体排出路と、当該気体排出路の途上に介在して、前記インナーボトル内から排気される気体の流量を調整するための排気用バルブとを含む、
ことを特徴とするオーバーモールド容器の製造装置。
【請求項5】
請求項4において、前記供給管の内部口は、前記ロッドの内部から外表面に向けて徐々に開口面積が拡大するようにテーパー状に開口していることを特徴とするオーバーモールド容器の製造装置。
【請求項6】
請求項4において、前記供給管の内部口は、前記ロッドの外表面にスリット状に開口していることを特徴とするオーバーモールド容器の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−91421(P2012−91421A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241283(P2010−241283)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】