説明

オープンカーの後部車体構造

【課題】 オープンカーの剛性を保ったまま、連結部材と車載部材との干渉を回避することができるオープンカーの後部車体構造を提供する。
【解決手段】 左右一対のサイドパネルと、各サイドパネルに取り付けられ開閉式ルーフのリンク機構13を支持するリンクブラケット14と、各リンクブラケット14間に車幅方向に沿って配設されたクロスバー部92と、このクロスバー部92の長手方向両端部および各リンクブラケット14を車幅方向に連結する連結部材15とを備える。連結部材15は、開閉式ルーフとの干渉を回避するための干渉回避凹部150が設けられた連結本体部154aと、この後面壁が車幅方向内方に延出することによりクロスバー部92に重合される重合突出板部154bとを有する。干渉回避凹部150の開口縁部から重合突出板部154bの基端部にかけてこの連結部材15に所定箇所が接合される補強面部材17が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のうち、リンク機構により開閉可能な開閉式ルーフを有し、開状態で当該ルーフを車両の所定部分に収容して車室を上方に開放可能ないわゆるオープンカーの後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオープンカーでは、ルーフパネルが固定的に取り付けられていないため、車体剛性を補うべく種々の補強構造が採用され、また横転時等における乗員保護の観点から種々の安全構造が採用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
例えば、この特許文献1に記載のオープンカーの後部車体構造は、車体側壁を構成する左右一対のサイドパネルと、各サイドパネルに取り付けられ開閉式幌のリンク機構を支持する左右一対のリンクブラケットと、車体の後部に固定された左右一対のロールバーと、車幅方向に延び上記一対のロールバー同士を連結するクロスバー部とを備え、これらロールバーとクロスバー部とで横転時において乗員を保護するように構成されているとともに、上記クロスバー部の長手方向両端部を各リンクブラケットに連結することによりクロスバー部を間接的に車体側壁であるサイドパネルに接続し、これにより部品点数の増加を抑制しつつ車体剛性を効果的に向上させるように構成されている。
【特許文献1】特開平11−321334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のオープンカーでは、クロスバー部の後方空間に種々の車載部材が収容されることがあり、限られた空間内にこの車載部材を効率的に収容することが求められている。そして、この限られた空間内に車載部材を効率的に収容しようとすると、クロスバー部の長手方向両端部とサイドパネルとの間の連結部分が邪魔になることがあった。
【0005】
例えば、オープンカーの開閉式ルーフは、上記特許文献1に記載のように、リンク機構によって開閉可能に構成されており、開状態でロールバーの後方に設けられたルーフ収容空間に収容されるように構成されている。そして、開閉式ルーフが幌などの比較的柔軟な素材によって構成されている場合には、この幌を柔軟に折り畳んで、限られたルーフ収容空間に効率的にソフトタイプの開閉式ルーフおよびリンク機構を収容することができるものとなっているものの、車両長さが短く設計されるなど、このルーフ収容空間が車両長さ方向に短く設計されると、リンク機構が上記連結部分と干渉するという不都合が生じる虞がある。
【0006】
また、開閉式ルーフには鋼板などから構成されるハードタイプのものもあり、このハードタイプの開閉式ルーフをルーフ収容空間に収容する場合には複数のパネル(例えば天板を構成するルーフパネル、リヤピラーを構成するピラーパネル、リヤガラスを構成するガラスパネル等)に分割して各パネルをリンク機構によって回動駆動させ、これによりルーフ収容空間に各パネルを収容するものとなされている。しかしながら、上記特許文献1に記載の後部車体構造において、このハードタイプの開閉式ルーフを限られたルーフ収容空間に収容しようとすると、パネルの一部、中でもピラーパネルの一部が、クロスバー部とサイドパネル間の連結部分に干渉するなど、車幅方向に直線状に延びるクロスバー部とサイドパネルとの間の連結部分が邪魔になって、これらのパネルを効率的に限られた空間内に収容することが困難であった。
【0007】
この点、リンク機構や開閉式ルーフの各パネルと、上記連結部分との干渉を回避するように、当該連結部分の断面積を小さくし、これにより上記不具合の解決を図ることも考えられるが、この場合には、オープンカーの剛性が低下するという新たな問題が生じることになる。
【0008】
本発明は、このような事情のもとなされたものであり、オープンカーの剛性を保ったまま、オープンカーに特有の補強部材(クロスバーおよびこのバーとサイドパネルとの連結部分)と、クロスバー後方の限られた収容空間内に収容される車載部材との干渉を回避することができるオープンカーの後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明に係るオープンカーの後部車体構造は、車体側壁を構成する左右一対のサイドパネルと、各サイドパネルに取り付けられ開閉式ルーフのリンク機構を支持するリンクブラケットと、各リンクブラケット間に車幅方向に沿って配設されたクロスバーと、このクロスバーの長手方向両端部および各リンクブラケットを連結する連結部材とを備えたオープンカーの後部車体構造において、上記連結部材は、後面壁が車両前方に向かって凹入して他の車載部材との干渉を回避するための干渉回避凹部が設けられた連結本体部と、この連結本体部における干渉回避凹部近傍の後面壁が車幅方向内方に延出することによりクロスバーに重合される重合突出板部とを有し、少なくともこの干渉回避凹部の開口縁部から重合突出板部の基端部にかけて配設され、この連結部材に所定箇所が接合される補強面部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、リンクブラケットおよび連結部材を介して車体側壁であるサイドパネル間にクロスバーが架設されているので、ルーフパネルが固定的に設けられていないオープンカーにおいても、既存の部品を利用することにより部品点数の増加を抑制しつつ、捩れ剛性や側突に対する強度等、車体剛性を効果的に向上させることができる。このように、クロスバーの長手方向両端部をリンクブラケットおよび連結部材を介してサイドパネルに連結すると、クロスバーの後方に収容される車載部材と連結部材との干渉が懸念されるが、本発明によれば、連結部材の連結本体部に後面壁が車両前方に向かって凹入して他の車載部材との干渉を回避するための干渉回避凹部が設けられているので、車載部材と連結部材との干渉を効果的に防止することができる。
【0011】
ここで、上記のように、連結部材に干渉回避凹部を設けて当該干渉回避凹部が設けられた部分について断面積が縮小しても、この発明によれば、少なくともこの干渉回避凹部の開口縁部から重合突出板部の基端部にかけて、この連結部材に重ね合わされて所定箇所が接合される補強面部材が設けられているので、補強面部材によって連結部材そのものの強度および連結部材とクロスバーとの連結強度を補強することができるとともに、連結部材にクロスバーに重合される重合突出板部が設けられているので、連結部材とクロスバーとの連結強度を補強することができ、これらによって車体剛性を良好なまま維持することができる。特に、側面衝突等で側面から荷重の入力があった場合には、干渉回避凹部と重合突出板部との境界に荷重が集中し易くなるが、上記のようにこの境界および境界近傍に補強面部材が配設されるので、耐荷重性を向上させることができ、上記入力荷重を的確に車幅方向反対側のサイドパネルへ伝達することができる。
【0012】
なお、上記連結部材は、リンクブラケットと別体に形成されるものだけでなく、一体に形成されるものであってもよく、また単一の部材によって構成されるものだけでなく、複数の部材によって構成されるものであってもよい。
【0013】
上記補強面部材の具体的構成は特に限定するものではないが、上記補強面部材は、その下端縁が上記連結部材の下端縁に対応する位置まで延びて当該下端縁において連結部材の下面壁に沿って車両前方に延出する下端延出部を有し、この下端延出部において上記連結部材の下面壁に接合されているのが好ましい(請求項2)。
【0014】
このように構成すれば、下端延出部が設けられることにより補強面部材の剛性が高まるばかりでなく、下端延出部において連結部材の下面壁に接合されるので、連結部材の強度をさらに向上させることができる。
【0015】
ここで、連結部材について、連結本体部と重合突出板部とを備える構成とすると、これら立体形状と板状形状との境界、ないしは境界近傍に、外縁が内側に入り込んだ変曲部が形成されることがあるが、このような変曲部をさらに有する場合には、上記補強面部材の下端延出部は、この変曲部を筋交状に跨いだ状態で配設されるのが好ましい(請求項3)。
【0016】
このように構成すれば、比較的応力が集中しやすい変曲部において補強面部材を利用して補強することができる。
【0017】
上記干渉回避凹部によって干渉を回避する車載部材は特に限定するものではなく、例えばリンクブラケットに支持されたリンク機構や、クロスバーの後方空間に配置されたエンジン等であってもよいが、上記リンクブラケットに支持された開閉式ルーフとの干渉を回避するために設けてもよく、この場合には干渉回避凹部は開閉式ルーフの移動軌跡に沿って凹入されるのが好ましい(請求項4)。
【0018】
このように構成すれば、開閉式ルーフ、特にルーフの収納について自由度の小さいハードタイプの開閉式ルーフと連結部材との干渉を確実に回避することができるとともに、そのルーフ移動軌跡に沿って凹入されるので、連結部材そのものの強度も可及的に確保することができる。
【0019】
上記重合突出板部は、クロスバーの所定箇所に重ね合わされているだけであってもよいが、この重合突出板部は、クロスバーの所定箇所に接合されているのが好ましい(請求項5)。
【0020】
このように構成すれば、重合突出板部によっても確実に荷重の伝達がなされ、連結部材とクロスバーとの連結強度を高めることができ、車体剛性をより一層向上させることができる。
【0021】
上記重合突出板部の具体的構成は特に限定するものではないが、例えば上記重合突出板部は、その先端部に車両後方側に突出して所定の車載部材を支持する部材支持部が設けられているのが好ましい(請求項6)。
【0022】
このように構成すれば、重合突出板部は高剛性部材であるクロスバーに接合されているので、この重合突出板部を利用して車載部材を高剛性部材に支持させる部材支持部を設けることができ、利便性をも向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
上記構成の発明によれば、クロスバーの長手方向両端部とサイドパネルとを間接的に連結する連結部材と他の車載部材との干渉を確実に回避しつつ、車体剛性を効果的に向上させることができるとともに、干渉回避凹部の形成に伴う車体剛性の低下を抑制して車体剛性を良好なまま維持することができるという利点がある。特に、側面衝突等で側面から荷重の入力があった場合でも、この入力荷重を的確に車幅方向反対側のサイドパネルへ伝達することができ、衝撃を適正に分散させて緩衝効果を効果的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、いわゆるハードタイプの開閉式ルーフを有するいわゆるオープンカーであって、運転席と助手席とを備えるロードスタータイプのオープンカーを例にとって説明するが、本発明に係る後部車体構造を適用し得る車体はこれに限らず、ロードスタータイプ、フェートンタイプ等を問わずオープンカー一般に広く適用可能である。
【0025】
図1は、当実施形態の車両の後部車体構造を示す概略断面図であり、図2はシートやトリムなど車両の一部部品を取り外した状態の後部車体構造を示す斜視図であり、図3は図2について視点を変更した場合の斜視図である。
【0026】
このオープンカーの後部車体構造が適用される車両は、図1および図2に示すように、車両の前後方向に延びるフロントフロアパネル2と、このフロントフロアパネル2の後端部から斜め後方に向かって立ち上がるキックアップ部3と、このキックアップ部3の上端部から後方に向かって延設されたリヤフロアパネル4と、これらのキックアップ部3およびリヤフロアパネル4の車幅方向両端側に配設され車体側壁を構成する左右一対のサイドパネル5と、このサイドパネル5の後端縁から車幅方向内側に向かって延びるリヤエンドパネル6とを備え、フロアパネル2上におけるキックアップ部3の近傍にはフロアトンネル7を挟んで左右一対のシート8が配設されているとともに、これらのシート8の後方近接位置にはロールバーユニット9が車幅方向に沿って配設されている。なお、キックアップ部3とリヤフロアパネル4との間には車幅方向に沿ってリヤクロスメンバ50が配設されている。
【0027】
上記ロールバーユニット9の後方空間、すなわちリアフロアパネル4、サイドパネル5およびリヤエンドパネル6によって囲まれた空間は、車幅方向に延びるバルクヘッド10によって荷室側とルーフ格納部11側とに仕切られている。
【0028】
ルーフ格納部11には、図1に実線で示すように、開閉式ルーフ12が格納可能に構成されている。開閉式ルーフ12は、鋼板製のパネルを複数に分割してルーフ格納部11に格納されて車室上方を開放可能に構成されている。すなわち、この開閉式ルーフ12は、鋼板製のルーフパネル121と、閉状態(車室上方を閉塞したルーフ展開状態)でルーフパネル121の後端縁に連なってリヤエンドピラーを構成するピラーパネル122と、閉状態でこのピラーパネル122に設けられた開口部に嵌め込まれるリヤガラスパネル(図示せず)とを有し、これらの各パネルがリンク機構13(図3参照)により図1に矢印で示すように回動駆動して開閉可能に構成されている。
【0029】
そして、開閉式ルーフ12は、格納状態でルーフパネル121がロールバーユニット9の上部後方のルーフ格納部11に収容され、ピラーパネル122はロールバーユニット9の車幅方向外側に一部収容された状態でルーフ格納部11に収容されている。従って、このピラーパネル122は、その回動軌道の最内端点Aが開閉式ルーフ12の開閉動作に伴って図1に示す軌跡t1に沿って移動する。
【0030】
リンク機構13は、いわゆる開閉式ハードルーフに対応する公知のリンク機構が用いられており、ここではその詳細を省略する。このリンク機構13は、図3に示すように、リンクブラケット14を介してサイドパネル5に接合されている。リンクブラケット14は、図2および図3に示すように、複数の箇所においてボルトによってサイドパネル5に接合されたブラケット本体14aと、このブラケット本体14aにボルトにより接合された保持部14bとを有し、この保持部14bには連結部材15を介してロールバーユニット9(詳しくはクロスバー部92)が接合されている。なお、当実施形態ではリンクブラケット14に直接、連結部材15が取り付けられる場合について説明するが、リンクブラケット14と連結部材15との間に他の部材、例えばリンク機構13を構成する部材を介在させる場合であってもよい。
【0031】
ロールバーユニット9は、車両の横転時等において乗員の頭部を保護するとともに、側突に対する剛性を向上するために設けられ、その全体がトリム(図示せず)によって覆われている。具体的には、ロールバーユニット9は、図2に示すように、左右一対のロールバー本体91と、このロールバー本体91間に架設されたクロスバー部92とを備える。
【0032】
ロールバー本体91は、左右対称に形成され、各ロールバー本体91は各シート8の後方に配置されている。また、各ロールバー本体91は、図4に示すように、下端部が取付フランジ部91aを介してボルトによりリヤフロアパネル4の上面に接合された脚状部93と、この脚状部93の上端縁から上方に向かって延出しかつ車幅方向内側に向かって逆U字状に湾曲形成された頭部保護部94とを備え、一本の鋼管が屈曲されて形成された剛性部材である。
【0033】
脚状部93は、その上端部がシート8(詳しくはシートバック)の上部に略対応する高さに設計されている。また、脚状部93は、下側に向かうに従って前方に傾倒して形成さされ、これによりルーフ格納部11のスペースを確保するように構成されている。この傾倒部分の下端部は、支持ブラケット16によってサイドパネル5に支持されている。頭部保護部94は、運転席或いは助手席に着座する乗員の頭部を保護するために設けられたものであり、シート8(詳しくはヘッドレスト)の上端よりも若干高くなるように設計されている。
【0034】
このロールバー本体91の脚状部93と頭部保護部94との間に、クロスバー部92が配設され、このクロスバー部92がボルトB1により前後方向に貫通された状態でロールバー本体91に接合されている。この接合部分よりも車幅方向内側におけるクロスバー部92の所定部分には、頭部保護部94の他端部が上方より嵌挿されて接合されている。
【0035】
また、クロスバー部92は、上記したように、その両端部が連結部材15およびリンクブラケット14によって間接的に車体側壁であるサイドパネル5に支持されている。従って、ロールバーユニット9は、その取付フランジ部91aを介してその下端部が車体に接合されているだけでなく、これらのリンクブラケット14や支持ブラケット16によっても車体に接合された6点支持形式のものとして構成されている。
【0036】
具体的に、このクロスバー部92は、その長手方向に直交する断面が後方に開放型のコ字状形状に形成された前側部材92aと、この前側部材92aの背面側からその開放部を閉塞して該前側部材92aとともに閉断面を構成する後側部材92bとを備え、前側部材92aの開口縁から段差部を介して後方に突出する接合フランジ部92cに後側部材92bの接合フランジ部92dが重合されてスポット溶接によって接合されている。前側部材92aは、その長手方向両端部の前面壁が外方に突出して形成され、この突出片921(図4、図5参照)で連結部材15に取り付けられている。なお、図5中95によって示される部分は、前側部材92aとともにロールバー本体91を挟み込む後側部材92bの挟着部であり、前側部材92a、ロールバー本体91、後述する背面本体部材154および接合補強プレート20とともにボルトB1によって共締めされている(図7参照)。
【0037】
一方、図2ないし図4に示すように、連結部材15は、上記したように、クロスバー部92とリンクブラケット14とを連結するためのものであり、当実施形態では車両前後方向から車幅方向内側に湾曲形成されている(図6参照)。そして、連結部材15における車幅方向内側に延びる部分であって、上記湾曲部分の近傍位置の後面壁は、車両前方に向かって凹入した干渉回避凹部150が設けられている。この干渉回避凹部150は、連結部材15と他の車載部材との干渉を回避するためのものであり、当実施形態では開閉式ルーフ12の開閉動作に伴って移動するピラーパネル122との干渉を回避するように設定されている。従って、この干渉回避凹部150は、ピラーパネル122の移動軌跡、特に図1の点Aの移動軌跡t1に沿って凹入して形成されている。
【0038】
具体的な連結部材15の構造を、図4ないし図7を用いて説明する。図4はロールバーユニットの一部分を車両後方側から示す部分拡大斜視図であり、図5は図4の要部を異なる視点から拡大して示す要部拡大斜視図であり、図6は連結部材およびその周辺の構成部材を示す底面図であり、図7は連結部材およびその周辺の構成部材を示す平面図に相当する断面図である。
【0039】
すなわち、連結部材15は、図6に明示するように、車両の前後方向に延び一端(前端)がリンクブラケット14の保持部14bに接合された第1本体部材151と、この第1本体部材151の他端部の前面側に接合され車幅方向内側に湾曲する湾曲本体部材152と、この前面湾曲本体部材152に接合され車幅方向に延びる第2本体部材153と、これらの各本体部材151〜153およびクロスバー部92のそれぞれの背面側を覆い各本体部材151〜153およびクロスバー部92に接合される背面本体部材154とを備える。
【0040】
なお、連結部材15は、複数の部材151〜154によって構成されるものに限定されるものではなく、一の部材、例えば一本の鋼管を屈曲等して形成された部材で構成するものであってもよい。
【0041】
第1本体部材151は、偏平角形の鋼管を若干車幅方向内側に屈曲させて形成されている。湾曲本体部材152は、その長手方向に沿って湾曲して形成され、長手方向各端部に、隣接する本体部材151,153の壁面に重合される接合舌片152aが設けられる(図6参照)。また、この湾曲本体部材152は、鋼板がプレス加工により断面視略コ字状に形成されるとともに、その開口縁に上下に突出するフランジ部(図示せず)を第1および第2本体部材151,152に外嵌し、当該フランジ部で背面本体部材154の壁面にスポット溶接により接合されている。すなわち、この湾曲本体部材152は、第1本体部材151、第2本体部材153、および背面本体部材154のそれぞれに所定箇所で接合されている。
【0042】
第2本体部材153は、鋼板がプレス加工されることにより後方に開口する断面視略コ字状に形成されるとともに、その開口縁に上下外方に突出するフランジ部(図示せず)で背面本体部材154の壁面にスポット溶接により接合されている。また、この第2本体部材153は、クロスバー部92の突出片921にボルトB1により締結される。
【0043】
背面本体部材154は、鋼板がプレス加工されることにより形成され、各本体部材151〜153およびクロスバー部92の背面側に配設されている。この背面本体部材154には、上記干渉回避凹部150が設けられている。具体的には、図5ないし図7に示すように、背面本体部材154は、湾曲本体部材152に対して略対向して配置された殻状の連結本体部154aと、この連結本体部154aの車幅方向内側端縁からクロスバー部92の背面に沿って延出して当該クロスバー部92の後面壁に重合される重合突出板部154bとを有する。
【0044】
連結本体部154aは、湾曲形成された周壁部1541と、この周壁部1541の下端縁から各本体部材151〜153の下端面に沿って車両前方に向かって延びる下面壁部1542とを有し、この周壁部1541がその上部および車幅方向外端部を若干残して車両前方に大きく凹入することにより干渉回避凹部150が形成されている。この干渉回避凹部150は、当実施形態では、後方、下方、車幅方向外方の3方向に開口し、ピラーパネル122との干渉を確実に回避可能に構成されている。また、図6に示すように、干渉回避凹部150はその大部分が曲面(曲線)によって形成され、一箇所に過度の応力が作用しないように構成されている。
【0045】
周壁部1541は、図5に示すように、その上端部がクランク状に形成され、連結本体部154aの剛性を向上させている。また、この周壁部1541の車幅方向内端縁には、上記した重合突出板部154bが連設されている。一方、下面壁部1542は、その車幅方向内端縁が、重合突出板部154bの基端部下端から車両前方に向かって延出する下端フランジ部1543に一体的に連設され、この下面壁部1542と下端フランジ部1543との連結部分には図6に示すように各部位1542,1543の外縁が内側(車両前方側)に入り込んだ変曲部1544が形成されている。
【0046】
また、重合突出板部154bは、干渉回避凹部150の近傍位置であって、連結本体部154aの車幅方向内端縁から内方に向かって延びて構成されるとともに、その幅がクロスバー部92の高さに略対応する高さに設定され、クロスバー部92の後面壁と重ね合わされるように構成されている。そして、重合突出板部154bは、その幅方向(車高方向)中央部に重合突出板部154bの強度を向上させるためのビード1545が形成されている。また、重合突出板部154bは、図5に明示するように、ボルトB1によりクロスバー部92に接合され、これにより連結部材15とクロスバー部92と間の伝達荷重を分散させて、両者間の接合強度を向上させている。
【0047】
さらに、重合突出板部154bの先端部には、開閉式ルーフ12が格納された状態で、ルーフパネル121の先端部を下方から支持するパネル支持部156(本発明の部材支持部の一例)が設けられている。このパネル支持部156は、ロールバー本体91の頭部保護部94の車幅方向略中央に、その先端部がクロスバー部92の上端よりも高くなるように上方に突設されており、基端部は外側に拡開されて重合突出板部154bに接合される接合フランジ部156aが形成されているとともに、先端部にはゴム等の緩衝部材157が螺着されている。そして、このパネル支持部156は、図3に示すように、格納状態の開閉式ルーフ12、具体的にはルーフパネル121の先端部がこの緩衝部材157に支承されるように構成されている。なお、図示省略しているが、パネル支持部156は、車幅方向左右に配設された連結部15にそれぞれ設けられている。
【0048】
上記構成の連結部材15は、その背面本体部材154の干渉回避凹部150の開口縁部150aから重合突出板部154bの基端部にかけて、この連結部材15に沿って配設され当該連結部材15に複数の箇所で接合される補強面部材17が配設されている。すなわち、干渉回避凹部150の開口縁部150aから重合突出板部154bの基端部にかけて、言い換えると、殻状に形成されている連結本体部154aと板状に形成されている重合突出板部154bとの境界部分は、その構造上の相違、および境界部分近傍に形成された干渉回避凹部150に起因して応力が集中し易くなっている。従って、この応力が集中し易い境界部分を補強面部材17によって補強することにより、連結部材15の強度を向上させ、ひいては連結部材15とクロスバー部92との接合強度を向上させている。
【0049】
補強面部材17は、所定形状の鋼板をプレス加工することにより形成され、その下端縁が連結部材15の下端縁にまで延びて形成されている。具体的には、補強面部材17は、干渉回避凹部150の開口縁部150aから重合突出板部154bの基端部にかけての所定領域を覆った状態で配設され下端縁が連結部材15の下端縁に対応する位置にまで延びて形成される補強本体部171と、この補強本体部171の下端縁において連結部材15の下面壁に沿って車両前方に延出する下端延出部172とを有し、その補強本体部171において干渉回避凹部150の内面および重合突出板部154bの表面の所定箇所に溶接によって接合されるとともに、下端延出部172において下面壁部1542および下端フランジ部1543の表面に溶接によって接合されている。
【0050】
補強本体部171は、干渉回避凹部150の開口縁部から重合突出板部154bの基端部にかけての連結部材15の表面に沿って形成され、干渉回避凹部150の開口端縁で屈曲されている。一方、下端延出部172は、連結部材15の変曲部1544を被覆可能に構成され、この変曲部1544を筋交状に跨いで配設され、これにより変曲部1544における強度を向上させている。そして、この下端延出部172は、変曲部1544を被覆した状態で溶接痕がこの変曲部1544を跨ぐように溶接され、これにより変曲部1544の強度をさらに向上させている。
【0051】
上記構成の連結部材15とクロスバー部92との連結は、図2および図5に示すように、前側部材92aの突出片921が第2本体部材153の前面壁に接合補強プレート20で補強した上でボルトB2により接合されるとともに、背面本体部材154の重合突出板部154bがクロスバー部92の後面壁にボルトB1により接合されることにより行われている。なお、接合補強プレート20は、鋼板製の矩形板状体であり、ボルトB1とボルトB2とによってクロスバー部92の前面側に接合された補強部材である。
【0052】
上記のような構成のオープンカーの後部車体構造によれば、クロスバー部92がリンクブラケット14および連結部材15を介して間接的にサイドパネル5間に架設されているので、既存の部品を利用することにより部品点数の増加を抑制しつつ、オープンカーにおいても車体剛性を効果的に向上させることができる。特に、側突(側面衝突)で側面から荷重の入力があった場合には、干渉回避凹部150と重合突出板部154bとの境界に荷重が集中し易くなるが、境界および境界近傍に補強面部材17が配設されるので、耐荷重性を向上させることができ、入力荷重を的確に車幅方向反対側のサイドパネル5へ伝達することができる。これにより、衝撃を適正に分散させて緩衝効果を効果的に得ることができる。
【0053】
この場合、ルーフ格納部11に格納される開閉式ルーフ12と連結部材15との干渉が懸念されるが、当実施形態では連結部材15の背面側に当該開閉式ルーフ12との干渉を回避するための干渉回避凹部150が設けられているので、比較的コンパクトに収納することが難しいハードタイプのルーフ12と連結部材15との干渉を確実に回避することができ、限られた空間(ルーフ格納部11)内にハードタイプの開閉式ルーフ12を効率的に収納することができる。
【0054】
ここで、連結部材15に干渉回避凹部150を設けても、この実施形態によれば、干渉回避凹部150の開口縁部150aから重合突出板部154bの基端部にかけて補強面部材17で補強されるので、連結部材15そのものの強度および連結部材15とクロスバー部92との連結強度を補強することができるとともに、連結部材にクロスバーに重合される重合突出板部154bが設けられているので、連結部材とクロスバーとの連結強度を補強することができ、これらによって車体剛性を良好なまま維持することができる。
【0055】
しかもこの補強面部材17には下端延出部172が設けられるとともにこの下端延出部172が変曲部1544を跨いだ状態で接合されるので、補強面部材17の剛性が高まるばかりでなく、下端延出部172において連結部材の下面壁に接合されるので、連結部材15の強度をさらに向上させることができ、さらに変曲部1544を効果的に補強することにより、連結部材15のさらなる剛性の向上が図られる。
【0056】
なお、本発明のオープンカーの後部車体構造の具体的構成は、上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。他の実施形態を以下に説明する。
【0057】
(1)上記実施形態では、補強面部材17は、干渉回避凹部150の開口縁部150aから重合突出板部154bの基端部にかけて連結部材15に重ね合わされるものとなされているが、この補強面部材17の具体的構成は特に限定するものではない。例えば、補強面部材17を車幅方向に延出させて、内端縁については重合突出板部154bの先端部にかけて重ね合わされるものであってもよく、一方外端縁については干渉回避凹部150の底面部にまで重ね合わされるものとしてもよい。特に、補強面部材17を外端縁について干渉回避凹部150の底面部にまで延出させると、応力集中が生じやすい干渉回避凹部150の底面部から周壁面部にかけても補強することができ、車体剛性をより一層向上させることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、補強面部材17について下端延出部172を備えるものとなされているが、下端延出部172は適宜省略することができ、また、下端延出部172に換えて、或いは下端延出部172に加えて補強本体部171を連結部材15の上端縁に対応する位置にまで延出させ、この上端縁から連結部材15の上壁面に沿って延びる上端延出部を設けるものとしてもよい。
【0059】
(2)干渉回避凹部の形状は上記実施形態のものに限定されるものではなく、連結部材15と車載部材との干渉を回避するために必要な形状に適宜変更可能である。この場合でも、連結部材15において、干渉回避凹部150が形成される連結本体部154aから重合突出板部154bの基端部にかけてはその強度の低下が懸念されるため、干渉回避凹部150の開口縁部から重合突出板部154bの基端部にかけて補強面部材17が配設される。
【0060】
(3)上記実施形態では、重合突出板部154bに設けられる部材支持部について、開閉式ルーフ12のルーフパネル121を支持するパネル支持部156として構成されているが、部材支持部が支持する対象はルーフパネル121に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、重合突出板部154bの先端部を車両後方側に立設させて、この立設部1548に例えば開閉式ルーフ12のリンク機構13を支持させるように構成するものであってもよい。このように構成しても、重合突出板部154bを利用して所定の車載部材(例えばリンク機構13)を高剛性部材であるクロスバー部92に支持させることができ、利便性をも向上させることができる。
【0061】
(4)上記実施形態では、補強部材として、補強面部材17と接合補強プレート20とが開示されているが、その他の補強部材を適宜設けるものであってもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】当実施形態の後部車体構造を示す概略断面図である。
【図2】シートやトリムなど車両の一部部品を取り外した状態で後部車体構造を示す斜視図である。
【図3】図2について視点を変更した場合の斜視図である。
【図4】ロールバーユニットの一部分を車両後方側から示す部分拡大斜視図である。
【図5】図5は図4の要部を異なる視点から拡大して示す要部拡大斜視図である。
【図6】連結部材およびその周辺の構成部材を示す底面図である。
【図7】連結部材およびその周辺の構成部材を示す平面図に相当する断面図である。
【図8】部材支持部についての変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
5 サイドパネル(車体側壁)
9 ロールバーユニット
11 ルーフ格納部
12 開閉式ルーフ
13 リンク機構
14 リンクブラケット
15 連結部材
17 補強面部材
121 ルーフパネル
122 ピラーパネル
150 干渉回避凹部
150a 開口縁部
154a 連結本体部
154b 重合突出板部
172 下端延出部
1544 変曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側壁を構成する左右一対のサイドパネルと、各サイドパネルに取り付けられ開閉式ルーフのリンク機構を支持するリンクブラケットと、各リンクブラケット間に車幅方向に沿って配設されたクロスバーと、このクロスバーの長手方向両端部および各リンクブラケットを連結する連結部材とを備えたオープンカーの後部車体構造において、
上記連結部材は、後面壁が車両前方に向かって凹入して他の車載部材との干渉を回避するための干渉回避凹部が設けられた連結本体部と、この連結本体部における干渉回避凹部近傍の後面壁が車幅方向内方に延出することによりクロスバーに重合される重合突出板部とを有し、
少なくともこの干渉回避凹部の開口縁部から重合突出板部の基端部にかけて配設され、この連結部材に所定箇所が接合される補強面部材が設けられていることを特徴とするオープンカーの後部車体構造。
【請求項2】
上記補強面部材は、その下端縁が上記連結部材の下端縁に対応する位置まで延びて当該下端縁において連結部材の下面壁に沿って車両前方に延出する下端延出部を有し、この下端延出部において上記連結部材の下面壁に接合されていることを特徴とする請求項1記載のオープンカーの後部車体構造。
【請求項3】
上記連結部材は、その連結本体部と重合突出板部との境界、ないしは境界近傍に、外縁が内側に入り込んだ変曲部をさらに有し、
上記補強面部材の下端延出部は、この変曲部を筋交状に跨いだ状態で配設されていることを特徴とする請求項2記載のオープンカーの後部車体構造。
【請求項4】
上記干渉回避凹部は、上記リンクブラケットに支持された開閉式ルーフとの干渉を回避するために設けられたものであり、開閉式ルーフの移動軌跡に沿って凹入されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のオープンカーの後部車体構造。
【請求項5】
上記重合突出板部は、クロスバーの所定箇所に接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のオープンカーの後部車体構造。
【請求項6】
上記重合突出板部は、その先端部に車両後方側に突出して所定の車載部材を支持する部材支持部が設けられていることを特徴とする請求項5記載のオープンカーの後部車体構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−160143(P2006−160143A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356848(P2004−356848)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】