説明

カチオン化澱粉及びその製造方法、並びに皮膚毛髪用洗浄剤組成物

【課題】 カチオン化度が高く、かつ未反応のカチオン化剤や副生成物の塩等の不純物が少なく、水溶液としたときに該水溶液の透明性が高く、化粧料の配合剤等に好適なカチオン化澱粉、及びその効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】 澱粉とカチオン化剤とを、塩基性化合物、及び低級アルコールと水とからなる反応溶媒の存在下で反応させてカチオン化澱粉を生成し、反応液中の該カチオン化澱粉を、低級アルコールと水とからなる抽出溶媒で液液抽出することを特徴とするカチオン化澱粉の製造方法である。また、該製造方法により製造されたカチオン化澱粉である。前記澱粉は、カチオン化度が1.0質量%未満である低カチオン化澱粉であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン化度が高く、かつ純度が高いカチオン化澱粉、及びその製造方法、並びに前記カチオン化澱粉を含む皮膚毛髪用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン化澱粉は、製紙工業におけるサイズ剤、毛髪洗浄剤や皮膚洗浄剤等の化粧料の配合剤などとして広く使用されている。該カチオン化澱粉の製造方法としては、カチオン化反応時の溶媒の有無や種類により3つに大別され、湿式法、乾式法、及び溶媒分散法が知られている。
【0003】
前記湿式法は、澱粉を水溶媒中で分散させながらカチオン化する方法である。該湿式法は、澱粉が常にスラリー状であることから、スラリーカチオン化とも呼ばれる方法である。また、カチオン化反応時には、前記澱粉が水溶媒中に部分的乃至完全に溶解することから、ゲルカチオン化とも呼ばれる。
前記製紙工業において使用されるカチオン化澱粉の大半は、前記湿式法又は後述の乾式法で製造されているが、前記湿式法により得られるカチオン化澱粉のカチオン化度(窒素含有量)は、1.0質量%未満であるという問題がある。
【0004】
前記乾式法は、溶媒として水を使用せずに澱粉をカチオン化する方法であり、澱粉が常に粉末状であり、固形成分を85質量%以上とすることができる。
該乾式法としては、例えば、触媒を使用しない方法(特許文献1及び2参照)や、反応性の向上及び反応設備の簡略化を目的として、反応系内に予め中和剤を加える方法(特許文献3)や、乾燥時における溶媒除去効率を向上させる目的で、一価アルコールを反応時に添加する方法(特許文献4)等が提案されている。しかしながら、これらの方法により得られたカチオン化澱粉のカチオン化度は、1.0質量%未満にとどまり、高いカチオン化度のカチオン化澱粉が得られないという問題がある。
【0005】
これらの問題に対し、カチオン化度の高いカチオン化澱粉を得るために、例えば、少量の溶媒を使用した前記乾式法に近い方法(特許文献5参照)、水を溶媒とした湿式法であってカチオン化剤としてアクリルアミド誘導体を使用する方法(特許文献6参照)が提案されている。これらの方法によると、カチオン化度が0.9〜4.3質量%のカチオン化澱粉を得ることができるが、未反応のカチオン化剤を十分に除去できないという問題がある。
【0006】
一方、前記溶媒分散法は、溶媒としてエタノール等の低級アルコール、又は低級アルコールと水との混合溶媒を使用し、澱粉をスラリー状態として、溶媒への溶解を最小限にすることにより、効率よく粉末状のカチオン化澱粉を製造する方法である。前記溶媒分散法は、前記湿式法や前記乾式法に比べてコスト高であるため、化粧料の配合剤としてのカチオン化澱粉の製造方法に使用されている。
該溶媒分散法としては、例えば、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒を使用し、反応性を向上させる目的で、予め澱粉をアルカリ触媒で処理する方法(特許文献7参照)が提案されている。この方法によると、カチオン化度が2.0〜3.0質量%のカチオン化澱粉を得ることができるが、未反応のカチオン化剤や、中和により生成する塩を十分に除去できないという問題がある。
【0007】
したがって、カチオン化度が高く、かつ未反応のカチオン化剤や副生成物の塩等の不純物が少なく、水溶液としたときに該水溶液の透明性が高く、化粧料の配合剤等に好適なカチオン化澱粉、及びその効率的な製造方法は、未だ提供されていないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−87902号公報
【特許文献2】特開平8−73502号公報
【特許文献3】特開平9−12602号公報
【特許文献4】特開昭56−36501号公報
【特許文献5】特開平6−100603号公報
【特許文献6】特開昭63−108001号公報
【特許文献7】特開昭54−105190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、カチオン化度が高く、かつ未反応のカチオン化剤や副生成物の塩等の不純物が少なく、水溶液としたときに該水溶液の透明性が高く、化粧料の配合剤等に好適なカチオン化澱粉、及びその効率的な製造方法、並びに前記カチオン化澱粉を含む皮膚毛髪用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、澱粉とカチオン化剤とを、低級アルコールと水との混合溶媒の存在下で反応させ、反応生成物であるカチオン化澱粉を膨潤状態に維持しながら、低級アルコールと水との混合溶媒で液液抽出することにより、透明で均質なカチオン化澱粉水溶液が得られ、該カチオン化澱粉水溶液からカチオン化度及び純度が高いカチオン化澱粉が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 澱粉とカチオン化剤とを、塩基性化合物、及び低級アルコールと水とからなる反応溶媒の存在下で反応させてカチオン化澱粉を生成し、反応液中の該カチオン化澱粉を、低級アルコールと水とからなる抽出溶媒で液液抽出することを特徴とするカチオン化澱粉の製造方法である。
<2> 澱粉が、下記式(A)で表されるカチオン化度が1.0質量%未満である低カチオン化澱粉である前記<1>に記載のカチオン化澱粉の製造方法である。
【数2】

<3> 反応溶媒及び抽出溶媒が、低級アルコールと水との質量比が3:1〜9:1の混合溶媒である前記<1>から<2>のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法である。
<4> 反応液中の低級アルコールと、反応液中の水との質量比が、3:1〜9:1である前記<1>から<3>のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法である。
<5> 低級アルコールが、イソプロピルアルコールである前記<1>から<4>のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法により製造されたことを特徴とするカチオン化澱粉である。
<7> 水に対する溶解度が、25℃の温度条件下において2質量%以上である前記<6>に記載のカチオン化澱粉である。
<8> 澱粉が、タピオカ澱粉及びワキシーコーンスターチのいずれかから選択され、かつ式(A)で表されるカチオン化度が1.0〜4.0質量%である前記<7>から<8>のいずれかに記載のカチオン化澱粉である。
<9> 前記<6>から<8>のいずれかに記載のカチオン化澱粉を含むことを特徴とする皮膚毛髪用洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、カチオン化度が高く、かつ未反応のカチオン化剤や副生成物の塩等の不純物が少なく、水溶液としたときに該水溶液の透明性が高く、化粧料の配合剤等に好適なカチオン化澱粉、及びその効率的な製造方法、並びに前記カチオン化澱粉を含む皮膚毛髪用洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(カチオン化澱粉の製造方法)
本発明のカチオン化澱粉の製造方法は、前記澱粉と前記カチオン化剤とを、塩基性化合物、及び低級アルコールと水とからなる反応溶媒の存在下で反応させてカチオン化澱粉を生成し、反応液中の該カチオン化澱粉を、低級アルコールと水とからなる抽出溶媒で液液抽出する工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
具体的には、低級アルコールと水とからなる前記反応溶媒中に、前記澱粉、前記塩基性化合物、及び前記カチオン化剤を加え、前記澱粉をカチオン化反応させてカチオン化澱粉を生成し、次いで、反応液中に中和剤を加えて前記塩基性化合物の中和を行った後、低級アルコールと水とからなる抽出溶媒を用いて前記反応液中の前記カチオン化澱粉を液液抽出し、その後、例えば、前記抽出溶媒をトッピングし、脱液して得た固体を加熱乾燥させることにより、前記カチオン化澱粉を製造する。
【0014】
−澱粉−
本発明のカチオン化澱粉の製造に用いる前記澱粉としては、澱粉粒を持つものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サツマイモ、馬鈴薯、タピオカ、トウモロコシ(ワキシーコーン等)、米、小麦等から得られる澱粉が挙げられる。これらの中でも、タピオカ、及びワキシーコーンから得られる澱粉が好ましい。
【0015】
また、前記澱粉としては、下記式(A)で表されるカチオン化度が1.0質量%未満の低カチオン化澱粉であってもよく、酵素処理等が行われていない生澱粉であってもよい。 前記生澱粉を使用する場合には、該生澱粉を予め精製し、不純物を除去し、微細な粉末状として使用することが好ましい。
【0016】
【数3】

式(A)において、カチオン化澱粉中の窒素の測定方法としては、公知の方法から適宜選択することができ、例えば、化香粧品原料公定書窒素定量法ミクロケルダール法1法等が挙げられる。
【0017】
−塩基性化合物−
前記塩基性化合物は、前記澱粉と前記カチオン化剤との触媒として用いられる。
前記塩基性化合物としては、例えば、苛性アルカリ等の無機化合物、及びアルキルアミン等の有機化合物などが挙げられ、前記苛性アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が好ましく、前記アルキルアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミンが好ましい。
【0018】
前記塩基性化合物の添加量としては、前記澱粉100質量部に対して1〜7.5質量部が好ましく、2.5〜5質量部がより好ましい。
前記塩基性化合物の添加量が、前記澱粉100質量部に対して1質量部未満であると、前記澱粉のカチオン化反応が均一に進行せず、反応率が低下し、カチオン化度の高いカチオン化澱粉が得られないことがあり、7.5質量部を超えると、生成した前記カチオン化澱粉が部分的に糊化し、ハンドリング性が悪くなり、性状が良好なカチオン化澱粉が得られないことがあり、更に、反応終了後に前記塩基性化合物を酸で中和した際に、不純物となる塩が多量に生成される。
【0019】
−カチオン化剤−
前記カチオン化剤としては、特に制限はなく、公知のカチオン化剤から選択することができ、例えば、3級アミン化合物、及び4級アンモニウム化合物等が挙げられ、具体的には、2−ジエチルアミノエチルクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらの中でも、前記塩基性化合物の使用量を低減できる点から、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物が好ましい。
【0020】
前記カチオン化剤の添加量としては、前記澱粉100質量部に対して10〜150質量部が好ましく、20〜100質量部がより好ましい。
前記カチオン化剤の添加量が、前記澱粉100質量部に対して10質量部未満であると、カチオン化度の高いカチオン化澱粉が得られないことがあり、150質量部を超えると、得られるカチオン化澱粉の使用感が悪化し、配合した化粧料に、べたつき等の感触を生じさせることがある。
【0021】
前記カチオン化剤は、前記反応溶媒に添加するときに、予め低級アルコール及び水のいずれかに溶解した状態で添加することが好ましい。
【0022】
−カチオン化反応の反応条件−
前記澱粉と前記カチオン化剤とカチオン化反応の反応温度としては、30〜70℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
前記反応温度が30℃より低いと、カチオン化度の高いカチオン化澱粉が得られないことがあり、70℃を超えると、生成したカチオン化澱粉の糊化が生じ、ハンドリング性及び反応性が悪くなることがある。
前記澱粉と前記カチオン化剤とのカチオン化反応の反応時間としては、1〜7時間が好ましく、3〜5時間がより好ましい。
【0023】
−反応溶媒−
前記反応溶媒は、低級アルコールと水との混合溶媒である。前記反応溶媒は、前記澱粉を膨潤させ、前記塩基性化合物、及び前記カチオン化剤を溶解して均一な反応液を形成する。
【0024】
前記反応溶媒は、前記低級アルコールと前記水との質量比が、3:1〜9:1であることが好ましく、4:1〜6:1であることがより好ましい。
前記低級アルコールと前記水との質量比が、3:1よりも前記低級アルコールの割合が小さいと、生成するカチオン化澱粉に糊化が生じ、均一に反応が進まないことがあり、9:1よりも前記低級アルコールの割合が高いと、生成したカチオン化澱粉の膨潤が抑制され、カチオン化反応後の中和により生じる塩や未反応の前記カチオン化剤を低減できないことがある。
【0025】
また、前記反応液において、該反応液中の低級アルコールと、該反応液中の水との質量比が、3:1〜9:1であることが好ましく、4:1〜6:1であることがより好ましい。
前記反応液中の水としては、前記反応溶媒中の水、及び前記澱粉が含有している水などが挙げられ、前記反応液中の水の量は、これらの水の合計量をあらわす。
前記反応液中の水の量としては、前記澱粉100質量部に対して50〜200質量部であることが好ましく、75〜125質量部であることがより好ましい。前記反応液中の水の量が50質量部未満であると、前記澱粉と前記塩基性化合物との付加物が均一に形成されないことがあり、250質量部を超えると、生成したカチオン化澱粉が部分的に糊化し、均質なカチオン化澱粉が得られないことがある。
【0026】
前記低級アルコールは、前記澱粉に対する水の溶解力を減殺し、前記澱粉を反応溶液中で膨潤した状態に維持するために添加される。
前記低級アルコールとしては、炭素数が1〜4のアルコールであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール等が挙げられる。これらの中も、生成するカチオン化澱粉の膨潤性及び歩留まりの観点から、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0027】
−中和剤−
前記中和剤は、前記塩基性化合物を中和するために、前記カチオン化反応終了後に前記反応液に添加される。前記中和剤としては、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、及びシュウ酸などが挙げられ、これらの中でも、塩酸が好ましい。
前記中和剤の添加量としては、前記塩基性化合物全量に対し、80〜120中和当量が好ましく、90〜110中和当量が好ましい。
【0028】
−液液抽出−
前記液液抽出としては、前記反応液中に前記抽出溶媒を加え、前記カチオン化澱粉を抽出する方法であり、例えば、前記カチオン化反応の終了後、前記中和剤により前記塩基性化合物の中和を行った後、前記反応液中に前記抽出溶媒を添加し、室温乃至加温下にて攪拌した後、これを静置し、上下に分離した2層の溶液のうち、前記カチオン化澱粉を含む下層を回収することにより行われる。
【0029】
前記液液抽出において、前記抽出溶媒を添加して攪拌する際の温度としては、20〜50℃が好ましく、攪拌時間としては、10〜60分が好ましい。
また、前記抽出溶媒を添加し、攪拌した後、静置する時間としては、30〜120分が好ましく、60〜90分がより好ましい。
【0030】
前記液液抽出は、前記上下に分離した2層の溶液のうち、除去する上層に含まれる前記中和により生成した塩の濃度が1.0質量%未満、未反応の前記カチオン化剤の濃度が0.05質量%未満となるように、抽出回数及び前記抽出溶媒の添加量を選択することが好ましい。
前記液液抽出を1回抽出で行う場合には、前記澱粉100質量部に対し、前記抽出溶媒を3000質量部以上添加することが好ましい。
【0031】
−抽出溶媒−
前記抽出溶媒は、低級アルコールと水との混合溶媒であり、前記低級アルコールと前記水との質量比が、3:1〜9:1であることが好ましく、4:1〜6:1であることがより好ましい。
前記抽出溶媒中の低級アルコールは、前記反応溶媒中の低級アルコールと同一であってもよく、異なっていてもよいが、作業の効率や便宜上の観点から、同一の溶媒であることが好ましい。
前記低級アルコールとしては、炭素数が1〜4のアルコールであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール等が挙げられる。これらの中も、生成するカチオン化澱粉の膨潤性及び歩留まりの観点から、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0032】
−乾燥−
前記液液抽出により得た前記カチオン化澱粉を含む層を乾燥する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記カチオン化澱粉を含む層を、遠心脱水機等を用いて脱水してケーキ状にした後、真空乾燥機等を用いて加熱乾燥する方法が挙げられる。
【0033】
前記カチオン化澱粉の製造方法によれば、カチオン化度が高く、かつ未反応のカチオン化剤や副生成物の塩等の不純物が少なく、水溶液としたときに該水溶液の透明性が高く、化粧料の配合剤等に好適なカチオン化澱粉を製造することができる。
【0034】
(カチオン化澱粉)
本発明のカチオン化澱粉は、本発明のカチオン化澱粉の製造方法により製造される。
前記カチオン化澱粉としては、下記式(A)で表されるカチオン化度が、1.0質量%以上であり、1.0〜5.0質量%が好ましく、1.5〜4.5質量%がより好ましい。
また、前記カチオン化澱粉の水に対する溶解度としては、25℃の温度条件下において2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
【0035】
【数4】

式(A)において、カチオン化澱粉中の窒素の測定方法としては、公知の方法から適宜選択することができ、例えば、化香粧品原料公定書窒素定量法ミクロケルダール法1法等が挙げられる。
【0036】
前記カチオン化澱粉を、皮膚毛髪洗浄剤等の化粧料に添加する場合、該カチオン化澱粉は、タピオカ澱粉及びワキシーコーンスターチのいずれかから選択された前記澱粉から得られ、かつ前記式(A)で表されるカチオン化度が1.0〜4.0質量%であるものが好ましい。
【0037】
本発明のカチオン化澱粉は、カチオン化度が高く、かつ未反応のカチオン化剤や副生成物の塩等の不純物が少なく、水溶液としたときに該水溶液の透明性が高く、化粧料の配合剤等に好適であり、特に、皮膚毛髪用洗浄剤組成物の配合剤として好適に使用される。
【0038】
(皮膚毛髪用洗浄剤組成物)
本発明の皮膚毛髪用洗浄剤組成物は、少なくとも本発明のカチオン化澱粉を含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記カチオン化澱粉を添加する皮膚毛髪用洗浄剤組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シャンプー、ボディソープ剤等の水で洗い流す洗浄剤組成物が挙げられる。
【0039】
前記皮膚毛髪用洗浄剤組成物の成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤等の界面活性剤;水溶性高分子化合物;ビルダー類;グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ソルビトール等の保湿剤;エチレンジアミン四酢酸誘導体、クエン酸等のキレート剤;シリコーン誘導体;トリクロサン、トリクロロカルバン等の殺菌剤;メチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤;グリチルリチン酸カリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤;ジンクピリチオン、オクトピロックス等の抗フケ剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;パール光沢剤;色素;香料;酵素などが挙げられ、これらの成分は、人体に対して無害で、安全性が高い成分であることが好ましい。
また、これらの成分は、1種又は2種以上を組み合せて配合することができる。
【0040】
前記カチオン化澱粉は、前記皮膚毛髪用洗浄剤組成物に配合することにより、前記アニオン界面活性剤等と複合塩を形成し、該複合塩が皮膚や毛髪に付着して薄い皮膜を形成することにより、コンディショニング効果が発現される。
また、前記皮膚毛髪用洗浄剤組成物のうち、特に、シリコーン誘導体を含むシャンプー剤に本発明のカチオン化澱粉を配合することにより、前記シリコーン誘導体の毛髪への吸着性が向上し、シャンプー剤のすすぎ性や、洗髪後の仕上がり感を良化する。
【0041】
前記皮膚毛髪用洗浄剤組成物に対する前記本発明のカチオン化澱粉の配合量は、前記皮膚毛髪用洗浄剤組成物の全量に対し、0.01〜1質量%が好ましい。
【0042】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。
【0043】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、高級脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル塩、アルキル又はヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテル硫酸塩、N−アルキルアミドアルカノール硫酸エステル塩、N−アルキルアミドアルカノールカルボン酸塩、アシルザルコシン塩、アシルメチルタウリン塩、脂肪酸モノグリセライド硫酸エステル塩、アルキルグリセリルエーテル硫酸塩、アシルイセチオン酸塩、アシルグルタミン酸塩、アシルアスパラギン酸塩などのアシルアミノ酸塩、二級アミド型N−アシルアミノ酸塩、アシル−β−アラニン塩、ポリオキシエチレンスルホコハク酸アルキルモノエステルジ塩などが挙げられる。また、前記アニオン界面活性剤の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アミノアルコール塩などが挙げられる。
【0044】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエトキシレート、蔗糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グルコシド、アルキルグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸2,3−ジヒドロキシプロピルアミド、脂肪酸ポリオキシエチレンアミド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、メチルあるいはエチルグリコシド脂肪酸エステル、アシルグルカミドなどが挙げられる。
【0045】
前記両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、イミダゾリニウムベタイン、アルキルイミノジカルボキシレート系界面活性剤等が挙げられる。
【0046】
前記カチオン界面活性剤としては、モノあるいはジアルキル四級アンモニウム塩、(ポリ)エーテル基あるいはエステル基あるいはアミド基を含有するモノあるいはジアルキル四級アンモニウム塩、あるいはこれらの塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩などが挙げられる。
【0047】
また、前記水溶性高分子化合物としては、本発明のカチオン化澱粉以外に、例えば、ペクチン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、ゼラチン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸塩、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリメチルアクリル酸塩、ポリエチレングリコール、陽イオン性変性セルロースエーテル誘導体、陽イオン性ポリビニルピロリドン誘導体、陽イオン性ポリアクリル酸誘導体、陽イオン性ポリアミド誘導体、ポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム、塩化ジメチルジアリルアンモニウムとアクリル酸アミドの共重合体、及びアルキルポリエチレンイミン等のカチオン化ポリマーなどが挙げられる。
【0048】
前記シリコーン誘導体としては、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0049】
本発明の皮膚毛髪用洗浄剤組成物の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液状、クリーム状、粒状、タブレット状等が挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
−カチオン化澱粉の製造−
(実施例1)
500mLセパラブルフラスコに、タピオカ澱粉(水分:13質量%)を30g投入し、反応溶媒として水分含量16質量%のイソプロピルアルコールを150g加え、攪拌しながら、25質量%苛性ソーダを5g加え、50℃まで昇温した。その後、有効分73質量%のグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(以下、「GTA」と表記する)を11g滴下し、50℃の温度条件下で3時間攪拌し、カチオン化反応を行った。この間、反応容器内の温度を50±1℃に保持した。カチオン化反応終了後、pHが6になるように微量の塩酸を添加して中和を行った。なお、反応液中のイソプロピルアルコールと水との質量比は、3.6:1であった。
次いで、イソプロピルアルコールと水との質量比が3:1である抽出溶媒を150g加え、30分間攪拌した。その後、10分間静置して上下2層に分離させた後、上層の前記抽出溶媒を抜き取り、液液抽出を行った。この液液抽出操作を5回行った後、下層のスラリー液を遠心脱水機でケーキ状にし、これを真空乾燥器を用いて60℃で5時間乾燥させて、粉末状のカチオン化澱粉を得た。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を下記の方法により測定した。結果をそれぞれ表1に示す。
【0052】
(a)強熱残分
得られた前記カチオン化澱粉粉末1gを、電気炉を用いて550℃で1時間加熱した後、硫酸を1mL加え、さらに660℃で2時間加熱した。残存成分の重量を測定し、加熱前の前記カチオン化澱粉に対する比率(質量%)を測定した。
該強熱残分が少ないほど、カチオン化澱粉中の中和により生成した塩の残量が少ないことを表す。
【0053】
(b)カチオン化度
下記式(A)に基づき、カチオン化度を求めた。前記カチオン化澱粉中の窒素量は、化香粧品原料公定書窒素定量法ミクロケルダール法1法により求めた。
【数5】

【0054】
(c)反応率
前記(b)で求めたカチオン化澱粉の窒素量から、前記カチオン化澱粉中のGTA量を算出し、反応液に添加したGTA量に対する比率(質量%)を求めた。
【0055】
(d)未反応カチオン化剤濃度
前記カチオン化澱粉粉末を、50倍量のイソプロピルアルコールで30分間洗浄し、得られた上清をフィルターで濾過した後、LC−MSを用いて前記上清中に含まれるGTA量を定量し、前記カチオン化澱粉に対する濃度(質量%)を求めた。
【0056】
(e)溶解性
前記カチオン化澱粉の2質量%水溶液を25℃の温度条件下で調製し、得られた水溶液の透明度を目視で観察し、前記カチオン化澱粉の溶解性を下記の基準により評価した。前記水溶液が透明であれば、前記カチオン化澱粉が完全に溶解していることを表す。
〔評価基準〕
◎:水溶液は無色透明。
○:水溶液は無色透明〜半透明。
△:水溶液は無色半透明。
×:水溶液は白色不透明。
【0057】
(実施例2)
実施例1において、前記抽出溶媒として、エタノールと水との質量比が3:1である抽出溶媒を用い、攪拌後の静置時間を20分とした以外は、実施例1と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表1に示す。
【0058】
(実施例3)
実施例1において、前記抽出溶媒として、メタノールと水との質量比が3:1である抽出溶媒を用い、攪拌後の静置時間を30分とした以外は、実施例1と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表1に示す。
【0059】
(実施例4)
実施例1において、前記GTAの添加量を32gとした以外は、実施例1と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。なお、反応液中のイソプロピルアルコールと水との質量比は、3.1:1であった。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表1に示す。
【0060】
(実施例5)
実施例1において、前記抽出溶媒として、イソプロピルアルコールと水との質量比が9:1である抽出溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表1に示す。
【0061】
(実施例6)
実施例1において、前記GTAの添加量を32gとし、前記抽出溶媒として、イソプロピルアルコールと水との質量比が9:1である抽出溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。なお、反応液中のイソプロピルアルコールと水との質量比は、3.1:1であった。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表1に示す。
【0062】
(実施例7)
500mLセパラブルフラスコに、ワキシーコーンスターチ(水分:13質量%)を30g投入し、反応溶媒として水分含量16質量%のイソプロピルアルコールを150g加え、攪拌しながら、25質量%苛性ソーダを5g加え、50℃まで昇温した。その後、有効分73質量%のGTAを10g滴下し、50℃の温度条件下で3時間攪拌し、カチオン化反応を行った。この間、反応容器内の温度を50±1℃に保持した。カチオン化反応終了後、pHが6になるように微量の塩酸を添加して中和を行った。なお、反応液中のイソプロピルアルコールと水との質量比は、3.7:1であった。
次いで、イソプロピルアルコールと水との質量比が3:1である抽出溶媒を150g加え、30分間攪拌した。その後、10分間静置して上下2層に分離させた後、上層の前記抽出溶媒を抜き取り、液液抽出を行った。この液液抽出操作を5回行った後、下層のスラリー液を遠心脱水機でケーキ状にし、これを真空乾燥器を用いて60℃で5時間乾燥させて、粉末状のカチオン化澱粉を得た。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表2に示す。
【0063】
(実施例8)
実施例7において、前記GTAの添加量を34gとした以外は、実施例7と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。なお、反応液中のイソプロピルアルコールと水との質量比は、3.1:1であった。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表2に示す。
【0064】
(実施例9)
実施例7において、前記抽出溶媒として、イソプロピルアルコールと水との質量比が9:1である抽出溶媒を用いた以外は、実施例7と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表2に示す。
【0065】
(実施例10)
500mLセパラブルフラスコに、低カチオン化澱粉(水分:13質量%、カチオン化度:0.26質量%)を30g投入し、反応溶媒として水分含量16質量%のイソプロピルアルコールを150g加え、攪拌しながら、25%苛性ソーダを5g加え、50℃まで昇温した。その後、有効分73質量%のGTAを9g滴下し、50℃の温度条件下で3時間攪拌し、カチオン化反応を行った。この間、反応容器内の温度を50±1℃に保持した。カチオン化反応終了後、pHが6になるように微量の塩酸を添加して中和を行った。なお、反応液中のイソプロピルアルコールと水との質量比は、3.7:1であった。
次いで、イソプロピルアルコールと水との質量比が3:1である抽出溶媒を150g加え、30分間攪拌した。その後、10分間静置して上下2層に分離させた後、上層の前記抽出溶媒を抜き取り、液液抽出を行った。この液液抽出操作を5回行った後、下層のスラリー液を遠心脱水機でケーキ状にし、これを真空乾燥器を用いて60℃で5時間乾燥させて、粉末状のカチオン化澱粉を得た。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表2に示す。
【0066】
(実施例11)
実施例10において、GTAを30g滴下した以外は、実施例10と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。なお、反応液中のイソプロピルアルコールと水との質量比は、3.2:1であった。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表2に示す。
【0067】
(実施例12)
実施例10において、前記抽出溶媒として、イソプロピルアルコールと水との質量比が9:1である抽出溶媒を用いた以外は、実施例10と同様にしてカチオン化澱粉を製造した。
得られた前記カチオン化澱粉の強熱残分、カチオン化度、反応率、未反応のカチオン化剤の残存量、及び溶解度を実施例1と同様にして測定した。結果をそれぞれ表2に示す。
【0068】
【表1】

*1:IPAはイソプロピルアルコールを、EtOHはエタノールを、MeOHはメタノールをそれぞれ表す。
【0069】
【表2】

*1:IPAはイソプロピルアルコールを表す。
【0070】
表1及び2の結果から、本発明のカチオン化澱粉の製造方法により製造された実施例1〜12のカチオン化澱粉は、カチオン化度が高く、塩等の不純物の含有量や未反応カチオン化剤の残存量が少なく、さらに溶解性に優れたカチオン化澱粉が得られることがわかった。
【0071】
−皮膚毛髪洗浄剤組成物−
−−シャンプー剤−−
(実施例13〜18、比較例1〜5)
下記表3及び4に示す組成により、実施例13〜18及び比較例1〜5の皮膚毛髪洗浄剤組成物としてシャンプー剤を常法に従って調製した。得られた実施例13〜18及び比較例1〜5のシャンプー剤について、以下の方法により、毛髪へのシリコーン吸着量を測定し、使用感(泡立ち性、洗浄力、すすぎ時の指通り、及び乾燥後の指通り)のモニター評価を行った。結果を表3及び表4にあわせて示す。なお、表3及び表4において、各成分の単位は質量%である。
【0072】
〔シリコーン吸着量〕
長さ30cmの毛髪を束ねた質量10gの毛束を、温水で濡らし、前記シャンプー剤1gを塗布して1分間洗浄し、その後1分間流水すすぎを行った。その後、25℃、湿度50%の部屋で1日乾燥させ、クロロホルム/メタノール溶媒を用いて毛束中の毛髪表面に付着した成分を抽出した後、内部標準としてテレフタル酸ジメチルを用い、NMRでシリコーン量を定量した。前記定量値を、毛髪1gあたりの吸着量に換算した。
【0073】
〔使用感〕
実施例13〜18及び比較例1〜5のシャンプー剤を、それぞれ、男性10人、女性10人の計20人のモニターに使用してもらい、「泡立ち性」、「洗浄力」、「すすぎ時の指通り」、及び「乾燥後の指通り」について5点満点で使用感を採点してもらった。前記20人のモニターの採点結果の平均値を算出し、以下の評価基準に従って評価した。
−評価基準−
○ :モニター回答の平均値が4.0以上
△ :モニター回答の平均値が2.0以上4.0未満
× :モニター回答の平均値が2.0未満
【0074】
【表3】

*1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(3モルのオキシエチレン付加)
*2:テトラデセンスルホン酸ナトリウム
*3:ラウリン酸アミドプロピルベタイン
*4:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド
*5:実施例1で製造したカチオン化澱粉
*6:実施例4で製造したカチオン化澱粉
*7:実施例7で製造したカチオン化澱粉
*8:実施例8で製造したカチオン化澱粉
*9:カチオン化度1.8質量%、2%水溶液の粘度350mPa・s
*10:カチオン化度1.8質量%、1%水溶液の粘度2700mPa・s
*11:レオフローDMS−55(ライオン(株)製)
【0075】
【表4】

*1〜11:表3と同じ
【0076】
−−ボディソープ剤−−
(実施例19〜22、比較例6)
下記表5に示す組成により、実施例19〜22及び比較例6の皮膚毛髪洗浄剤組成物としてボディソープ剤を常法に従って調製した。得られた実施例19〜22及び比較例6のボディソープ剤について、以下の方法により、使用感(泡立ち性、洗浄力、乾燥後のうるおい感、及び乾燥後の保湿感)のモニター評価を行った。結果を表5にあわせて示す。なお、表5において、各成分の単位は質量%である。
【0077】
〔使用感〕
実施例19〜22及び比較例6のボディソープ剤を、それぞれ、男性10人、女性10人の計20人のモニターに使用してもらい、「泡立ち性」、「洗浄力」、「乾燥後のうるおい感」、及び「乾燥後の保湿感」について5点満点で使用感を採点してもらった。前記20人のモニターの採点結果の平均値を算出し、以下の評価基準に従って評価した。
−評価基準−
○ :モニター回答の平均値が4.0以上
△ :モニター回答の平均値が2.0以上4.0未満
× :モニター回答の平均値が2.0未満
【0078】
【表5】

*1:ラウリン酸
*2:ミリスチン酸
*3:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(3モルのオキシエチレン付加)
*4:ラウリン酸アミドプロピルベタイン
*5:実施例1で製造したカチオン化澱粉
*6:実施例4で製造したカチオン化澱粉
*7:実施例7で製造したカチオン化澱粉
*8:実施例8で製造したカチオン化澱粉
*9:50%水溶液
【0079】
表3〜5の結果から、本発明のカチオン化澱粉を配合した実施例13〜22の皮膚毛髪洗浄用組成物であるシャンプー剤及びボディソープ剤は、比較例1〜6と比較して、洗浄剤としての性能に影響を与えることなく、優れた使用感を有することがわかった。特に、実施例13〜18のシャンプー剤は、他の陽イオン高分子化合物を配合したシャンプー剤よりも、毛髪へシリコーン誘導体を多く吸着させることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のカチオン化澱粉の製造方法により製造されたカチオン化澱粉は、カチオン化度が高く、かつ未反応のカチオン化剤や副生成物の塩等の不純物が少なく、水溶液としたときに該水溶液の透明性が高いため、シャンプー剤、ボディソープ剤、及び洗顔剤等の皮膚毛髪用洗浄剤等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉とカチオン化剤とを、塩基性化合物、及び低級アルコールと水とからなる反応溶媒の存在下で反応させてカチオン化澱粉を生成し、反応液中の該カチオン化澱粉を、低級アルコールと水とからなる抽出溶媒で液液抽出することを特徴とするカチオン化澱粉の製造方法。
【請求項2】
澱粉が、下記式(A)で表されるカチオン化度が1.0質量%未満である低カチオン化澱粉である請求項1に記載のカチオン化澱粉の製造方法。
【数1】

【請求項3】
反応溶媒及び抽出溶媒が、低級アルコールと水との質量比が3:1〜9:1の混合溶媒である請求項1から2のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法。
【請求項4】
反応液中の低級アルコールと、反応液中の水との質量比が、3:1〜9:1である請求項1から3のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法。
【請求項5】
低級アルコールが、イソプロピルアルコールである請求項1から4のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法により製造されたことを特徴とするカチオン化澱粉。
【請求項7】
水に対する溶解度が、25℃の温度条件下において2質量%以上である請求項6に記載のカチオン化澱粉。
【請求項8】
澱粉が、タピオカ澱粉及びワキシーコーンスターチのいずれかから選択され、かつ式(A)で表されるカチオン化度が1.0〜4.0質量%である請求項7から8のいずれかに記載のカチオン化澱粉。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載のカチオン化澱粉を含むことを特徴とする皮膚毛髪用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−232886(P2006−232886A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45728(P2005−45728)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】