説明

カラーフィルター保護膜用樹脂組成物およびカラーフィルター

【課題】凹凸のある下地基板に塗布した際に、平坦化能が高く、かつCF保護膜用樹脂組成物の塗布時に液戻りが生じない塗布性の良好なカラーフィルター保護膜用樹脂組成物およびそれを用いるカラーフィルターを提供する。
【解決手段】カラーフィルター保護膜用樹脂組成物は、下記(A)、(B)、(C)および(D)成分を含む。(A)成分と(B)成分の合計が該組成物全体の固形分中50.0〜97.9質量%、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し(C)成分が2.0〜20.0質量部、(D)成分が0.05〜3.0質量部である。
(A)一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物
(B)エポキシ化合物の硬化剤または硬化触媒
(C)炭素数1〜6のアルキル基を有するN−アルキルモルホリン
(D)重量平均分子量が1000〜100000、フッ素含有量が15〜30質量%であるフッ素系ノニオン性界面活性剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)、固体撮像素子(CCD等)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)等に用いられるカラーフィルター保護膜用樹脂組成物および当該樹脂組成物を用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置、固体撮像素子、エレクトロルミネッセンス表示装置等に用いられるカラーフィルター(以降、CFという場合がある)には、赤緑青(RGB)レジストの凹凸を平坦化する目的で、或いはRGBレジストよりブリードアウトするイオン性物質より液晶等を保護する目的で、RGBレジストと、液晶配向膜または透明電極層等との間に保護膜と呼ばれる層が設けられている。この保護膜は熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂といったCF保護膜用樹脂組成物をCFに塗布後硬化させることによって形成されることが多い。
【0003】
近年、CFの構成材料であるブラックマトリックス(以降、BMという場合がある)が、LCD表示モードの多様化や環境問題により、クロムBMから樹脂BMに代替されるようになってきた。樹脂BMでは十分な光学濃度(OD値)を得るために従来のクロムBMの約5〜10倍の膜厚が必要になる。膜厚が大きくなると、樹脂BMと重なったRGBレジスト端部との間に大きな段差が生じる。高品質LCDにおいては、CFと薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板との間の液晶層の厚みに相当するギャップに対して高い精度が要求され、段差が光漏れなどの原因となるため、平坦化膜である保護膜に対してより高い平坦化能を有することが望まれるようになってきた。
【0004】
そこで、CF保護膜用樹脂組成物により高い平坦化能を付与することを目的として、樹脂組成物の表面張力を著しく低下させる界面活性剤が使用されることが多くなってきた。樹脂組成物の表面張力を効率的に低下させる界面活性剤としてはフッ素系ノニオン性界面活性剤が広く普及しており、特許文献1にはフッ素系ノニオン性界面活性剤を添加したCF保護膜用樹脂組成物が開示されている。この開示技術によれば、高い平坦化能を得られるとされているが、実際にはフッ素含有量の高い界面活性剤を添加した場合には、塗布時に、CF保護膜用樹脂組成物の塗布液がガラス基板周辺部まで十分に濡れ覆わなくなるという、いわゆる「液戻り」現象が生じやすくなる。液戻りが発生すると、CF端部に保護膜塗布がなされていない欠陥部が発生することがあり、このことがCF製品の歩留まりの低下などの不具合につながり問題視されてきた。
【0005】
この問題を解決するために、例えば特許文献2には、界面活性剤の代わりにジプロピレングリコールジメチルエーテルを添加したCF保護膜用樹脂組成物が開示されており、ガラス基板周辺部における塗布液の液戻りの改善が図られている。しかしながら、液戻り現象は解消されるものの、保護膜に十分な平坦性が得られず現実的には平坦性と塗布性の両立は達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−291924号公報
【特許文献2】特開2004−198464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、凹凸のある下地基板に塗布した際に、平坦化能が高く、かつCF保護膜用樹脂組成物の塗布時に液戻りが生じない塗布性の良好なCF保護膜用樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、上記の優れたCF保護膜用樹脂組成物を適用して、平坦性が高く、CFの表面段差に起因する光漏れなどの表示不良がないCFを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、CF保護膜用樹脂組成物において、N−アルキルモルホリンと特定構造のフッ素系ノニオン性界面活性剤を特定量配合することにより上記課題が解決されるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は次の〔1〕〜〔5〕である。
〔1〕下記の(A)、(B)、(C)および(D)成分を含むカラーフィルター保護膜用樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計が該組成物全体の固形分中50.0〜97.9質量%であり、また(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分が2.0〜20.0質量部、(D)成分が0.001〜3.0質量部であるカラーフィルター保護膜用樹脂組成物。
(A)一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物
(B)エポキシ化合物の硬化剤または硬化触媒
(C)炭素数1〜6のアルキル基を有するN−アルキルモルホリン
(D)重量平均分子量が1000〜100000であり、フッ素含有量が15〜30質量%であるフッ素系ノニオン性界面活性剤
〔2〕フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)が、下記式(1)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレート(d1)に基づく構成単位20〜70質量%と下記式(2)で表されるモノアルキルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(d2)に基づく構成単位30〜80質量%を含有する重合体である前記の〔1〕に記載のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物。
【0010】
【化1】

(式中Rは炭素数4〜8のパーフルオロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、pは1〜6の整数である。)
【0011】
【化2】

(式中Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、qは1〜100の整数である。)
〔3〕(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(A)成分が30.0〜99.5質量部、(B)成分が0.5〜70.0質量部である、前記の〔1〕または〔2〕に記載のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物。
〔4〕(B)成分が、多価カルボン酸のカルボキシル基にビニルエーテル化合物を付加して得られる多価カルボン酸ヘミアセタールエステル化合物である、前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物。
〔5〕前記の〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するカラーフィルター。
【発明の効果】
【0012】
本発明のCF保護膜用樹脂組成物は、凹凸のある下地基板に塗布した際に、平坦化能が高く、かつCF保護膜用樹脂組成物の塗布時に液戻りが生じない良好な塗布性を発揮することができる。
【0013】
また、本発明によれば、優れたCF保護膜用樹脂組成物を適用して、平坦性が高く、CFの表面段差に起因する光漏れなどの表示不良がないCFを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
〔カラーフィルター保護膜用樹脂組成物〕
本実施形態のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物(単に、樹脂組成物ともいう)は、下記の(A)、(B)、(C)および(D)成分を含有する。
(A)一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物
(B)エポキシ化合物の硬化剤または硬化触媒
(C)炭素数1〜6のアルキル基を有するN−アルキルモルホリン
(D)重量平均分子量が1000〜100000であり、フッ素含有量が15〜30質量%であるフッ素系ノニオン性界面活性剤
以下、カラーフィルター保護膜用樹脂組成物の各構成要素について順に説明する。
<一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)>
このエポキシ化合物すなわち実質的に熱硬化性のエポキシ樹脂は、CF保護膜用樹脂組成物の硬化主剤であり、一分子中にエポキシ基を2個以上有する多価エポキシ化合物であり、エポキシ樹脂の硬化剤または硬化触媒(B)と反応させることにより硬化する。エポキシ樹脂(A)の分子量は、重量平均分子量として200〜100000の範囲が好ましい。重量平均分子量が200を下回ると保護膜の硬度が低下するおそれがあり、100000を上回ると樹脂組成物の流動性が低くなり、必要とされる平坦化能が発現しにくくなるおそれがある。なお、エポキシ樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0015】
また、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は120〜1500g/molが好ましい。エポキシ当量が120g/molを下回ると保護膜の強靭性を失う傾向にあり、1500g/molを上回ると保護膜の耐薬品性が低下する。この際のエポキシ当量とはエポキシ樹脂(A)のエポキシ基の当量を指し、JIS K7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」によって規定される方法によって測定される。
【0016】
エポキシ樹脂(A)としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベンゼン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、DPP(ジ−n−ペンチルフタレート)型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロ無水フタル酸のジグリシジルエステル等の多塩基酸のポリグリシジルエステル、エポキシ変性アクリル樹脂等が挙げられる。エポキシ変性アクリル樹脂は、エポキシ基含有ビニル重合性単量体を単独で重合するか、他のビニル重合性単量体と共重合させることにより得られる。
【0017】
エポキシ基含有ビニル重合性単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、α−エチルアクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル等を挙げることができる。これらの単量体は単独でまたは二種類以上組み合わせて重合させてもよい。エポキシ基含有ビニル重合性単量体との共重合に使用する他のビニル重合性単量体としては、例えばメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、アクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物類、マレイミド化合物類、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物等を挙げることができる。これらの単量体は単独でまたは二種類以上組み合わせて重合させてもよい。
<エポキシ樹脂の硬化剤または硬化触媒(B)>
次に、エポキシ樹脂の硬化剤または硬化触媒(B)は、硬化主剤であるエポキシ樹脂(A)と混合し、加熱させることでCF保護膜用樹脂組成物を硬化させるための化合物である。エポキシ樹脂の硬化剤としては、多価カルボン酸、酸無水物および多価カルボン酸ヘミアセタールエステル化合物が挙げられる。多価カルボン酸ヘミアセタールエステル化合物は、多価カルボン酸のカルボキシル基にビニルエーテル化合物を付加して得られる保護化された化合物であり、硬化反応時に加熱されることで脱保護化が起こり、元の多価カルボン酸が再生される。
【0018】
一方、エポキシ樹脂の硬化触媒としては、アニオン硬化触媒とカチオン硬化触媒が挙げられる。硬化剤と併用せずにエポキシ樹脂の硬化触媒を用いる場合には、エポキシ樹脂のエポキシ基同士の重合反応によって硬化が達成される。
【0019】
カルボキシル基をビニルエーテル化合物により保護化された多価カルボン酸ヘミアセタールエステルは保護化されていない多価カルボン酸と比較し、流動性が著しく向上する。そのため、CF保護膜用樹脂組成物をカラーフィルターへ塗布した際には、保護膜の平坦性に寄与する流動性の保たれる時間が長くなり、保護膜表面を平坦化する作用に優れている。従って、硬化剤(B)としては多価カルボン酸ヘミアセタールエステル化合物(b)が好ましい。
【0020】
多価カルボン酸誘導体(b)は、次の式(3)に示す構造を1分子中に2つ以上有する化合物である。
【0021】
【化3】

(ここで、Rは炭素数1〜10の炭化水素基である。)
CF保護膜用樹脂組成物における多価カルボン酸誘導体(b)に使用する多価カルボン酸(b1)としては、炭素数4〜20で2〜8価のカルボン酸であることが好ましい。入手性および平坦性に寄与する流動性の点から、好ましい例としてイタコン酸、マレイン酸、コハク酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、メリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、およびこれらの水素化物が挙げられる。これらのカルボン酸の中において、さらに硬化膜の硬度の点から、3価以上のカルボン酸が好ましい。
【0022】
多価カルボン酸に付加して保護化するビニルエーテル化合物(b2)としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物が挙げられる。それらの中でも、入手性および硬化温度が保護膜の硬化プロセスに適合する点から、n−プロピルビニルエーテルおよびイソブチルビニルエーテルが好ましい。ビニルエーテル化合物(b2)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<(A)成分と(B)成分の配合量>
前記(A)成分と(B)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計を100質量部としたとき、好ましくは(A)成分が30.0〜99.5質量部であり、(B)成分が0.5〜70.0質量部である。また、より好ましくは(B)成分が多価カルボン酸誘導体の場合にはその配合量は10.0〜60.0質量部であり、(B)成分が硬化触媒の場合にはその配合量は0.5〜10.0質量部であり、(B)成分として硬化触媒と多価カルボン酸誘導体を併用する場合にはその配合量は10.0〜70.0質量部である。(A)成分が30.0質量部より少なく、(B)成分が70.0質量部より多い場合には、下地基板に対する樹脂硬化物の密着性が低下してしまう場合がある。一方、(A)成分が99.5質量部より多く、(B)成分が0.5質量部より少ない場合には、樹脂硬化物の強靭性を損なう傾向にあるため、CF保護膜用樹脂組成物に必要とされる保護膜物性が得られないおそれがある。
【0023】
なお、前記固形分とは溶剤を除いた全ての配合成分の総和のことをいい、N−アルキルモルホリン(C)等の液状の成分も固形分に含まれる。(A)成分と(B)成分の合計がCF保護膜用樹脂組成物の固形分中50.0〜97.9質量%、好ましくは70.0〜97.9質量%、より好ましくは85.0〜97.5質量%である。(A)成分と(B)成分の合計が50.0質量%を下回ると、硬化に必要な成分量が少なくなり過ぎるために保護膜物性が得られない場合が生じ、合計が97.9質量%を上回ると(A)成分と(B)成分に対して十分な量の(C)成分と(D)成分が配合できず、液戻りの抑制や平坦化の効果が得られない場合が生じる。
<N−アルキルモルホリン(C)>
次に、N−アルキルモルホリン(C)は、下記式(4)で表される構造を有する。
【0024】
【化4】

(式中のRは炭素数1〜6の炭化水素基である。)
N−アルキルモルホリン(C)は、CF保護膜用樹脂組成物が下地基板に塗布された際に、下地基板に配向するフッ素系ノニオン性界面活性剤(D)との相互作用により塗布後の液戻りを抑制する機能を発現する。
【0025】
N−アルキルモルホリン(C)のエーテル結合部位は、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)のポリアルキレンオキシド鎖と親和性が高く、第3級アミン部位は、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物との親和性が高い。これら2つの部位を同一分子内に同時に有しており、かつコンパクトな化合物であるので両部位の距離が小さくなっていることによって、目的とする液戻りの抑制効果が得られる。エーテル結合部位とアミン部位の距離が離れているようなN−アルキルモルホリンであった場合、または分子量が大きなN−アルキルモルホリンであった場合には界面活性剤周辺にN−アルキルモルホリンが偏析しにくくなることや、樹脂組成物と界面活性剤との相互作用が小さくなり、液戻りを防ぐ効果が得られない。
【0026】
第3級アミンの置換基Rは炭素数が1〜6、好ましくは1〜2の炭化水素基である。炭素数が6を上回る場合には樹脂組成物との相互作用が小さくなり、本発明の効果が得られにくくなるおそれがある。
【0027】
CF保護膜用樹脂組成物においては、N−アルキルモルホリン(C)の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計を100質量部としたときに2.0〜20.0質量部であり、好ましくは2.5〜15.0質量部である。N−アルキルモルホリン(C)の配合量が2.0質量部より少ないと液戻りを防ぐ効果が低下してしまい、20.0質量部より多いとCF保護膜用樹脂組成物の保存安定性が低下してしまう。
<フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)>
次に、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)は、フッ素セグメントとノンフッ素セグメントからなるフッ素系ノニオン性界面活性剤であり、両セグメントの性質をバランスさせるためにフッ素含有量が15〜30質量%に設定される。フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)のフッ素含有量は、その表面張力低下能に寄与する。フッ素含有量が15質量%を下回る場合には、フッ素系ノニオン性界面活性剤が添加されたCF保護膜用樹脂組成物の表面張力を十分に低下させることができず、目的とする平坦性が得られない。一方、フッ素含有量が30質量%を上回る場合には、その表面張力低下能が高過ぎるため、CF保護膜用樹脂組成物を塗布した際の液戻りといった不具合の解決が困難となる。
【0028】
フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)のフッ素セグメントとノンフッ素セグメントの組合せとしては、例えばフッ素化アルキル基含有アルコールとエチレンオキシド、プロプレンオキシド等のオキシアルキレン基を含む単量体との付加重合体やフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和化合物とポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和化合物との共重合体などの分子設計が挙げられる。これらのうちでは、セグメント間の分離が良く、CF保護膜用樹脂組成物への相溶性、分散性がより好適になることから、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和化合物とポリオキシアルキレン基含有エチレン性不飽和化合物との共重合体がフッ素系ノニオン性界面活性剤(D)としてさらに好ましい。
【0029】
フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和化合物としては、CF保護膜用樹脂組成物に対する相溶性、またはそのような相溶性に基づく平坦性の観点から、(メタ)アクリルエステル基を含有する単量体が適している。具体的には下記式(1)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレート(d1)である。
【0030】
【化5】

(式中Rは炭素数4〜8のパーフルオロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、pは1〜6の整数である。)
フルオロアルキル(メタ)アクリレート(d1)におけるフッ素化アルキル基Rfの炭素数は4〜8が好ましい。炭素数が4を下回ると表面張力低下能力が十分でなくなり、炭素数が8を上回ると他の配合物への相溶性が低下してしまうおそれがある。フルオロアルキル(メタ)アクリレート(d1)は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
さらにフッ素系ノニオン性界面活性剤(D)は、CF保護膜用樹脂組成物の他の配合物への相溶性の制御と、液戻りを防ぐためのN−アルキルモルホリン(C)との相互作用の観点から、モノアルキルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(d2)に基づく構造を含有させることが好ましい。モノアルキルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(d2)は、具体的には下記式(2)で表される。
【0032】
【化6】

(式中Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、qは1〜100の整数である。)
このポリオキシアルキレン基が界面活性剤に含まれない場合には樹脂組成物への相溶性が低下し、樹脂組成物(配合液)の白濁や、平坦性の低下が起こりうる。また、N−アルキルモルホリン(C)との相互作用という点から、N−アルキルモルホリンのもつエーテル結合部位との親和性を持たせるために必要である。ポリオキシアルキレン基としては、エチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基が好ましく、その重合度は、好ましくは1〜100、より好ましくは3〜12である。この重合度が100より大きくなり過ぎる場合にはN−アルキルモルホリンの界面活性剤周辺への偏析が不均一となり、結果として液戻りの抑制効果が得られないことがある。前記の単量体(d1)は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)中のフルオロアルキル(メタ)アクリレート(d1)に基づく構成単位の割合は、好ましくは20〜70質量%であり、モノアルキルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(d2)に基づく構成単位の割合は、好ましくは30〜80質量%である。フルオロアルキル(メタ)アクリレート(d1)の導入量が20質量%を下回ったり、モノアルキルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(d2)の導入量が80質量%を上回ったりすると、樹脂組成物の表面張力を十分に低下させることができず、目的とする平坦性が得られないおそれがある。一方、フルオロアルキル(メタ)アクリレート(d1)の導入量が70質量%を上回ったり、モノアルキルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(d2)の導入量が30質量%を下回ったりする場合には、その表面張力低下能が大き過ぎるため、CF保護膜用樹脂組成物を塗布した際の液戻りといった不具合の解決が困難となるおそれがある。
【0034】
また、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)には単量体(d1)、(d2)以外にも、各種配合物に対する相溶性、重合反応性、CF保護膜用樹脂組成物の塗布性などの点で、これら以外のエチレン性不飽和単量体(d3)を共重合成分として導入することが可能である。具体的には例えば、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体、α、β―エチレン性不飽和カルボン酸およびその誘導体、脂肪酸ビニル化合物などを使用することができる。エチレン性不飽和単量体(d3)は1種類だけ用いても構わないし、2種類以上を同時に用いても構わない。
【0035】
CF保護膜用樹脂組成物においてフッ素系ノニオン性界面活性剤(D)の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.05〜3.0質量部、好ましくは0.1〜2.0質量部である。フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)の配合量が上記範囲内であれば、CF保護膜用樹脂組成物は目的とする高い平坦性と良好な塗布性を両立し得るが、配合量がこの範囲から外れた場合には高い平坦性と良好な塗布性を両立させることができなくなる。
【0036】
CFのカラーレジスト上にCF保護膜用樹脂組成物を塗布した際に、保護膜が盛り上がり、その表面の平坦性が低下する場合がある。このような現象の原因としては、下地カラーレジストの各色材における表面エネルギーが異なることによる保護膜中での対流の影響がある。そこで、フッ素系ノニオン性界面活性剤を配合した場合には塗布液の表面張力が低下し、このような対流の影響による盛り上がりを小さくすることができる。撥油性と親油性の制御されたフッ素系ノニオン性界面活性剤(D)を用いることによって、下地基板への配向性を高め、下地基板の表面エネルギーを均一に低下させることで対流の発生も抑制でき、保護膜表面の平坦性が高くなる。フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)の分子設計において、分子中のフッ素含有量を高めると表面エネルギー低下能が高まり、保護膜表面を平坦化する作用は高まる。しかしながら、フッ素含有量が高くなりすぎると、下地基板の表面エネルギーを低くし過ぎるため、保護膜用塗布液(樹脂組成物)の表面張力とのバランスが崩れ保護膜用塗布液がはじかれてしまい、CF上で保護膜の未塗布部ができるという不具合が生じる。
【0037】
CF保護膜用樹脂組成物においては、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)とN−アルキルモルホリン(C)を併用することにより、はじきや液戻りといった不具合が生じることなく、平坦性の良好なCF保護膜用樹脂組成物が得られる。N−アルキルモルホリンは、酸素原子と窒素原子の双方を含む六員環構造を有している。酸素原子に基づくエーテル結合部位はフッ素系ノニオン性界面活性剤中に含まれるポリオキシアルキレン基と親和性が高く、窒素原子に基づくアミン結合部位が樹脂組成物中の官能基と親和性が高い。このため、下地基板に配向したフッ素系ノニオン性界面活性剤の周辺にN−アルキルモルホリンが偏在する分子の集合形態を取りやすく、結果として下地基板に対する表面エネルギーの過度の低下を抑える効果があるため、はじきや液戻りを防止しながらなお良好な平坦性を発現することができるものと考えられる。
<その他の成分>
CF保護膜用樹脂組成物には、前記の(A)成分〜(D)成分の必須成分の他に、その他の成分として種々の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、下地基板との密着性向上のためのシラン系カップリング剤、チタンカップリング剤等の金属系カップリング剤、粘度調整のための増粘剤、チキソトロピック剤等の粘度調整剤、また線膨張係数の調整、平坦性向上、表面硬度の向上、屈折率の調整、所定波長の光線吸収、密着性の向上等のためのフィラー等が挙げられる。この際用いられるフィラーとしては、透明性を妨げるものでなければ特に限定されないが、シリカゾル、シリカゲル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらのフィラーは1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0038】
さらに、CF保護膜用樹脂組成物には、その目的を逸脱しない範囲で、必要に応じて、赤外線や紫外線の吸収剤、エチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族ポリオール、フェノール化合物等の炭酸ガス発生防止剤、ポリアルキレングリコール等の可撓性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、表面処理剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、レベリング剤、イオントラップ剤、摺動性改良剤、各種ゴム、有機ポリマービーズ、ガラスビーズ、揺変性付与剤、表面張力低下剤、消泡剤、光拡散剤、抗酸化剤、蛍光剤等の添加剤を配合することができる。
<有機溶剤>
CF保護膜用樹脂組成物には、粘度等を調整する目的で有機溶剤を配合しても良い。この際に使用する有機溶剤としては、芳香族炭化水素、エーテル類、エステルおよびエーテルエステル類、ケトン類、リン酸エステル類、ニトリル類、非プロトン性極性溶媒、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて配合できる。また、これら有機溶剤の配合量については特に制限はされず、所定膜厚、表面の平滑性および成膜方法等に応じ、任意の量配合し、塗布適性を付与することができる。
〔カラーフィルター〕
カラーフィルターは、下地基板表面に前述したカラーフィルター保護膜用樹脂組成物を塗布し、硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するものである。前述のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物を用いることにより、カラーフィルターは表面の平坦性が高く、カラーフィルターの表面段差に起因する光漏れなどの表示不良を回避することができる。従って、このカラーフィルターは、液晶表示装置(LCD)、固体撮像素子(CCD等)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0039】
次に、重合例、実施例および比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。以下に実施例および比較例で用いた測定方法および評価方法を示す。
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、カラムとして昭和電工(株)製SHODEX K−801を用い、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
<固形分>
固形分は、溶液1gを精秤し、熱風オーブンで170℃、1時間乾燥後に乾燥前後の質量変化から算出した残存率より求めた。
<エポキシ当量>
エポキシ当量は、JIS K7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に規定される方法によって測定した。
<フッ素含有量>
フッ素含有量は、酸素フラスコ燃焼法における反応により得られたフッ素系ノニオン性界面活性剤を分解した後、DIONEX社製イオンクロマトグラフ装置DX−320を用い、カラムとして同社製IonPacAS12Aを用い、炭酸水素ナトリウム溶液を溶離液とし、電気伝導度検出器により測定して、フッ素イオン標準液〔関東化学(株)製〕により作成した検量線から計算して求めた。
<平坦性>
透明ガラス基板上に光硬化性レジストを用いて、常法により表面にストライプ状の凹凸を有するガラス基板を作製した(ライン/スペース=25μm/25μm)。このガラス基板の表面の凹凸(段差)を微細形状測定機〔(株)小坂研究所製;商標;サーフコーダー ET4000〕によって測定した結果、3.0μmであった。(以下、この基板を「評価基板」と呼ぶ。)
次に、CF保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後、スピンコーターを用いてガラス基板に塗布した。その後、ガラス基板を80℃のクリーンオーブン中にて5分間乾燥処理後、230℃のクリーンオーブン中にて30分間処理し、硬化膜を得た。得られた硬化膜をガラス面が露出するように削り、微細形状測定機を用いて硬化膜の膜厚を測定した。このようにして硬化膜の膜厚を測定して、膜厚が1.8〜2.2μmになるようにスピンコーターの回転数を調整した。次いで、同CF保護膜用の熱硬化性樹脂組成物を孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後、スピンコーターを上記の回転数として評価基板に塗布した。この評価基板を80℃のクリーンオーブン中にて5分間乾燥処理後、230℃のクリーンオーブン中にて30分間処理した。微細形状測定機を用いて得られた硬化膜の段差を測定し、段差低減率の試験を行った。段差低減率は、次式から算出される。
【0040】
段差低減率(%)={(保護膜形成前のCFの段差−保護膜形成後のCFの段差)/保護膜形成前のCFの段差}×100
段差低減率は、80%以上であるとき良好であると判断した。
<液戻り>
平坦性評価と同様にCF保護膜用熱硬化性樹脂組成物をガラス基板〔日本電気硝子(株)製、商品名OA−10、無アルカリガラス〕に膜厚1.8〜2.2μmになるようにスピンコートし、そのまま1分間静置した後、ガラス基板を80℃のクリーンオーブン中にて5分間乾燥処理後、230℃のクリーンオーブン中にて30分間処理し、硬化膜を得た。硬化の操作後に、ガラス基板上において、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜で被覆されていない部分の面積の程度を目視観察によって評価した。判定はガラス基板の端部からの液戻りが全くない状態を○、ガラス基板の端部所々に液戻りによる未塗布部がある状態を△、ガラス基板の四辺全辺に渡って液戻りによる未塗布部があり、その未塗布部はガラス端部から1mm以上ある状態を×とした。
<耐アルカリ性>
平坦性評価と同様にガラス基板上に保護膜を形成し、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液に25℃、30分浸漬させた後、保護膜の膜厚を測定し、次式から算出される膨潤率を評価した。
【0041】
膨潤率(%)=(浸漬後の膜厚/浸漬前の膜厚)×100
<耐NMP性>
耐アルカリ性評価と同様にしてガラス基板上に保護膜を形成し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に25℃、30分浸漬させた後、保護膜の膜厚を測定し、膨潤率を評価した。
【0042】
耐アルカリ性試験と耐NMP試験における膨潤率は100%に近くなる方がよく、105%未満であるとき実用に供することができると判断される。
<硬度>
JIS K5600−5−4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」のうち、試験機法で3H以上であるとき実用に供することができると判断される。
〔重合例1、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D−1)の合成〕
攪拌機および温度調整機を備えたオートクレーブ中にフッ素化アルコール(C13CHCHOH)21質量部、水素化ホウ素ナトリウム(BHNa)0.02質量部およびヨウ素0.02質量部を仕込み100℃まで加熱した。次いで、エチレンオキシドを76質量部導入し、130℃まで昇温して5時間維持した。その後室温まで冷却し、減圧下未反応のエチレンオキシドを除去し、固形分濃度100質量%、重量平均分子量(Mw)1,000、フッ素含有量24質量%の目的化合物D−1を得た。
〔重合例2、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D−2)の合成〕
攪拌機、還流冷却機および温度計を備えたガラスフラスコに、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体(CH=CHCOOC17)24質量部、ポリオキシアルキレン基を有するアクリレート単量体〔CH=CHCOO(CO)CH〕76質量部、イソプロピルアルコール350質量部を仕込み、窒素ガス気流中、還流下で、重合開始剤として2,2−アゾビスブチロニトリル(以下、AIBNと称す)0.5質量部を添加した後、65℃にて6時間還流し、AIBNを0.5質量部加えてさらに75℃にて10時間維持した。その後70℃エバポレーターにて脱溶剤を行い、固形分濃度98質量%、重量平均分子量(Mw)100,000、フッ素含有量15質量%の界面活性剤D−2を得た。
〔重合例3および4、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D−3〜5)の合成〕
フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体(d1)と、ポリオキシアルキレン基を有するアクリレート単量体(d2)と、その他のエチレン性不飽和単量体と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタンと、重合開始剤とを表1に示す割合で用いた。そして、重合開始剤を添加した後、75℃にて6時間還流し、重合開始剤をさらに添加して引き続きその温度に5時間維持した。その後70℃エバポレーターにて脱溶剤を行い、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D−3〜5)を得た。
〔比較重合例1および2、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D’−1および2)の合成〕
フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体(d1)とポリオキシアルキレン基を有するアクリレート単量体(d2)とその他のエチレン性不飽和単量体と連鎖移動剤としてラウリルメルカプタンおよび重合開始剤を表1に示す割合で用いた。そして、重合開始剤を添加した後、75℃にて6時間還流し、重合開始剤をさらに添加して引き続きその温度に5時間維持し、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D’−1および2)を得た。
【0043】
【表1】

(実施例1〜8)
表2に示す配合量で、各成分を十分に攪拌し、溶解してCF保護膜用樹脂組成物を得た。
【0044】
【表2】

各成分は固形分のみを記述した。溶剤は全て最下段に計上した。表2中の略号は次の通りである。
【0045】
A−1はグリシジルメタクリレート(以下、GMAと称す)とスチレン(以下、Stと称す)の共重合体であり、公知の合成手法により重合した。得られた共重合体はMw15,000、固形分50質量%、エポキシ当量が200g/molである。
【0046】
A−2はGMA、St、メタクリル酸(MAA)およびジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)の共重合体であり、A−1と同じ手法により重合した。得られた共重合体はMw17000、固形分30質量%、エポキシ当量が389g/molである。
【0047】
A−3は、エピコート828〔ジャパンエポキシレジン(株)製の商品、エポキシ当量190g/mol、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〕である。
A−4は、ESF−300〔新日鐵化学(株)製の商品、エポキシ当量231g/mol、ビスフェノール−フルオレン型エポキシ樹脂〕を表す。
【0048】
A−5は、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、分子内エポキシ官能基数平均15、エポキシ当量179g/eq〔ダイセル化学工業(株)製、商品名EHPE−3150〕である。
【0049】
B−1は硬化剤であり、無水トリメリット酸を表す。
B−2は硬化剤であり、ピロメリット酸にn−プロピルビニルエーテルを付加して得られたヘミアセタールエステル化合物を表す。
【0050】
B−3は硬化触媒であり、アデカオプトンCP−66〔(株)ADEKA製の商品、熱カチオン硬化触媒〕を表す。
(比較例1〜7)
表2に示す配合量で各成分を十分に攪拌し、溶解してCF保護膜用樹脂組成物を得た。なお、表2に示した必須成分は実施例と同じように各成分の固形分のみを記述し、溶剤は全て最下段に計上した。
【0051】
上記の実施例1〜8および比較例1〜7にて得られたCF保護膜用樹脂組成物を先述したようにガラス基板および評価基板へ塗布して硬化膜を得、平坦性、液戻り、耐アルカリ性、耐NMP性および硬度の評価を行った。それらの結果を併せて表2に示す。
【0052】
表2に示した結果より、実施例1〜8ではN−アルキルモルホリン(C)とフッ素系ノニオン性界面活性剤(D)を併用することにより、平坦性が優れており、なおかつ液戻りの不具合も生じないCF保護膜用樹脂組成物が得られることが明らかになった。
【0053】
これに対し、比較例1〜3ではN−アルキルモルホリン(C)を配合せず、モルホリン骨格を有していない第3級アミン化合物を使用したことから、フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)との相互作用効果が小さく、液戻りの不具合が生じてしまった。比較例4ではエーテル結合を有するTHFを配合したが、液戻りの不具合が生じてしまった。比較例5ではN−メチルモルホリンの配合量を1.8質量部と少量にしたことから、液戻りの不具合が認められる結果を招いた。比較例6ではフッ素含有量が高い界面活性剤を使用したため、平坦性は高いものの、CF保護膜用樹脂組成物の表面張力と下地ガラス基板の表面エネルギー差が大きくなり過ぎてバランスが崩れ、液戻りが生じてしまった。比較例7ではフッ素含有量の低い界面活性剤を使用したため、目的とする程度の平坦性を得ることができなかった。
【0054】
以上のように実施例1〜8で示される本発明のCF保護膜用樹脂組成物では、N−アルキルモルホリン(C)とフッ素系ノニオン性界面活性剤(D)を併用することにより、下地基板表面の平坦化能が高い上に、CF保護膜用樹脂組成物の塗布時に液戻りの発生を防ぐことが可能であることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)、(B)、(C)および(D)成分を含むカラーフィルター保護膜用樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計が該組成物全体の固形分中50.0〜97.9質量%であり、また(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分が2.0〜20.0質量部、(D)成分が0.05〜3.0質量部であるカラーフィルター保護膜用樹脂組成物。
(A)一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物
(B)エポキシ化合物の硬化剤または硬化触媒
(C)炭素数1〜6のアルキル基を有するN−アルキルモルホリン
(D)重量平均分子量が1000〜100000であり、フッ素含有量が15〜30質量%であるフッ素系ノニオン性界面活性剤
【請求項2】
フッ素系ノニオン性界面活性剤(D)が、下記式(1)で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレート(d1)に基づく構成単位20〜70質量%と下記式(2)で表されるモノアルキルポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート(d2)に基づく構成単位30〜80質量%を含有する重合体である請求項1に記載のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物。
【化1】

(式中Rは炭素数4〜8のパーフルオロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、pは1〜6の整数である。)
【化2】

(式中Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜6の炭化水素基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、qは1〜100の整数である。)
【請求項3】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(A)成分が30.0〜99.5質量部、(B)成分が0.5〜70.0質量部である請求項1または2に記載のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分が多価カルボン酸のカルボキシル基にビニルエーテル化合物を付加して得られる多価カルボン酸ヘミアセタールエステル化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のカラーフィルター保護膜用樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物の層を有するカラーフィルター。

【公開番号】特開2011−65051(P2011−65051A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217213(P2009−217213)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】