説明

カルバモイル基、ウレイド基及び置換オキシ基を有する新規インドール誘導体

【課題】カルバモイル基、ウレイド基及び置換オキシ基を有する新規インドール誘導体又はその塩の合成研究及びその誘導体の薬理作用を見出すこと。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物又はその塩はIKKβ阻害活性を有し、IKKβが関与するとされる疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。式中、R1は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、ヒドロキシ基又は置換基を有してもよい低級アルコキシ基等;R2は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基等;R3はハロゲン原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級アルケニル基、置換基を有してもよい低級アルキニル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても複素環基等;mは0、1、2等を示す。

【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬として有用な、カルバモイル基、ウレイド基及び置換オキシ基を有する新規インドール誘導体又はその塩に関する。その誘導体又はその塩はIKKβ阻害活性を有し、IKKβが関与するとされる疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
細胞外から核内へのシグナル伝達に関与するニュークレオファクターκB(以下、「NF−κB」とする)は、免疫・炎症反応において誘導される多くの遺伝子の発現に関わる転写因子である。この転写因子であるNF−κBは、通常、IκBと呼ばれる制御タンパク質と複合体を形成し、不活性型で細胞質に局在している。この複合体のIκBがIKKβと呼ばれる酵素によりリン酸化されると、IκBの分解が進行する。IκBの分解に伴って遊離したNF−κBは活性型となり、細胞質内から核内へ移行して標的遺伝子の転写を活性化し、腫瘍壊死因子(以下、「TNF」とする)、インターロイキン−1(以下、「IL−1」とする)、インターロイキン−6(以下、「IL−6」とする)等のサイトカイン産生や細胞増殖が亢進される。
【0003】
よって、IKKβを制御できれば、NF−κBの活性化を阻害することができ、TNF、IL−1、IL−6等のサイトカイン産生や細胞増殖が抑制されて、これらの因子が関与するとされる疾患の予防及び/又は治療が可能となる。
【0004】
IKKβが関与するとされる疾患として、関節リウマチ、喘息、糖尿病、癌等の種々の疾患が知られている(非特許文献1、特許文献1)。
【0005】
IKKβの阻害活性を有する化合物としては、特許文献1に記載されている縮合フラン誘導体、特許文献2に記載されている芳香族複素5員環カルボキサミド誘導体、特許文献3に記載されている置換チオフェンカルボキサミド誘導体等が知られている。
【0006】
一方、インドール環の2位にウレア構造を有する化合物が非特許文献2に、また、インドール環の3位にアミド構造を有する化合物が特許文献4に開示されている。しかしながら、これらの文献には、インドール環の2位にウレイド基を、その3位にカルバモイル基を、及び、そのインドール環上のベンゼン環構造部分に置換オキシ基を併せ持つ化合物の具体的な開示はなされていない。また、それらの化合物のIKKβ阻害効果についても全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第06/036031号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/58890号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/009582号パンフレット
【特許文献4】国際公開第96/020191号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Molecular Medicine,82,434-448(2004)
【非特許文献2】Gazzete Chimica Italiana 48,II,151-182(1918)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カルバモイル基、ウレイド基及び置換オキシ基を有する新規インドール誘導体又はその塩の合成研究、及び、その誘導体又はその塩の薬理作用を見出すことは非常に興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は新たな化学構造を有する、カルバモイル基、ウレイド基及び置換オキシ基を有する新規インドール誘導体又はその塩の合成研究を行い、数多くの新規化合物を創製することに成功した。
【0011】
さらに、その誘導体又はその塩の薬理作用について研究した結果、本発明者等は、その誘導体又はその塩がIKKβ阻害活性を有し、医薬として有用であることを見出して、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は下記一般式(1)で表される化合物又はその塩(以下、「本発明化合物」とする)、及び、本発明化合物の少なくとも一つを含有する医薬組成物に関する。また、その医薬用途における好ましい発明はIKKβ阻害剤に関するものであり、その対象疾患としては、IKKβが関与するとされる疾患、例えば、炎症性疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患、感染性疾患、変性疾患、血管性疾患、神経・感覚器疾患、内分泌・代謝性疾患、腫瘍性疾患、先天性疾患、外傷性疾患、臓器移植後の拒絶反応等が挙げられ、より具体的には、角膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎、変形性関節症、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、肺炎、肝炎、膵炎、腎炎、敗血症、全身性炎症反応症候群、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、加齢黄斑変性、未熟児網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜静脈閉塞症、糖尿病及びその合併症(糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症)、白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、固形癌、悪液質、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、脳梗塞、脳卒中、緑内障、後天性免疫不全症候群、骨粗鬆症、肥満症、線維症、通風、発熱、頭痛、急性・慢性疼痛、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、心筋梗塞、狭心症、筋ジストロフィー、急性呼吸促拍症候群等が挙げられる。
【0013】
特に好ましい医薬用途発明は、本発明化合物の少なくとも一つを有効成分とする前記対象疾患の予防及び/又は治療剤に関する発明である。
【化1】

【0014】
[R1は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、ヒドロキシ基又は置換基を有してもよい低級アルコキシ基を示し;
2は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し;
3はハロゲン原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級アルケニル基、置換基を有してもよい低級アルキニル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても複素環基、置換基を有してもよい低級アルコキシ基、置換基を有してもよい低級アルケニルオキシ基、置換基を有してもよい低級アルキニルオキシ基、置換基を有してもよい低級シクロアルキルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい複素環オキシ基を示し;
mは0、1、2又は3を示し、mが2又は3の場合、R3は同一又は異なっていてもよい。以下、同じ。]
【発明の効果】
【0015】
本発明は、カルバモイル基、ウレイド基及び置換オキシ基を有する新規インドール誘導体又はその塩を提供する。本発明化合物は優れたIKKβ阻害活性を有し、IKKβ阻害剤として有用である。本発明化合物は特にIKKβが関与するとされる疾患、例えば、炎症性疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患、感染性疾患、変性疾患、血管性疾患、神経・感覚器疾患、内分泌・代謝性疾患、腫瘍性疾患、先天性疾患、外傷性疾患、臓器移植後の拒絶反応等の予防及び/又は治療剤として、より具体的には、角膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎、変形性関節症、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、肺炎、肝炎、膵炎、腎炎、敗血症、全身性炎症反応症候群、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、加齢黄斑変性、未熟児網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜静脈閉塞症、糖尿病及びその合併症(糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症)、白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、固形癌、悪液質、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、脳梗塞、脳卒中、緑内障、後天性免疫不全症候群、骨粗鬆症、肥満症、線維症、通風、発熱、頭痛、急性・慢性疼痛、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、心筋梗塞、狭心症、筋ジストロフィー、急性呼吸促拍症候群等の疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書中で使用される文言(原子、基、環等)の定義について以下に詳しく説明する。また、以下の文言の定義が別の文言の定義を準用する場合、各定義の好ましい範囲も準用できる。
【0017】
「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を示す。
【0018】
「低級アルキル基」とは、炭素原子数が1〜8個、好ましくは1〜6個の直鎖又は分枝のアルキル基を示す。
【0019】
具体例として、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル基等が挙げられる。
【0020】
「低級アルケニル基」とは、炭素原子数が2〜8個、好ましくは2〜6個の直鎖又は分枝のアルケニル基を示す。具体例として、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−ブテニル基等が挙げられる。
【0021】
「低級アルキニル基」とは、炭素原子数が2〜8個、好ましくは2〜6個の直鎖又は分枝のアルキニル基を示す。具体例として、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、イソブチニル、イソペンチニル基等が挙げられる。
【0022】
「低級シクロアルキル基」とは、炭素原子数が3〜8個、好ましくは3〜6個のシクロアルキル基を示す。具体例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチル基が挙げられる。
【0023】
「アリール基」とは、炭素原子数が6〜14個の単環式芳香族炭化水素基又は2環式若しくは3環式の縮合多環式芳香族炭化水素から水素1原子を除いた残基を示す。具体例として、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基等が挙げられる。
【0024】
「複素環」とは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びホウ素原子から選択される1又は複数個のヘテロ原子を環内に有する飽和或いは不飽和単環式複素環又は2環式若しくは3環式の縮合多環式複素環を示す。
【0025】
飽和単環式複素環の具体例として、窒素原子を環内に有するアジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、トリアゾリジン、ピペリジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピリミジン、ピペラジン、ホモピペリジン、ホモピペラジン等が、酸素原子を環内に有するテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、[1,4]ジオキサン、[1,2]ジオキシラン等が、硫黄原子を環内に有するテトラヒドロチオフェン、テトラヒドロチオピラン、ジチオラン等が、窒素原子と酸素原子を環内に有するオキサゾリジン、イソオキサゾリジン、モルホリン等が、窒素原子と硫黄原子を環内に有するチアゾリジン、イソチアゾリジン、チオモルホリン等が、酸素原子とホウ素原子を環内に有するジオキサボラン等が挙げられる。
【0026】
また、それらの飽和単環式複素環はベンゼン環等と縮合してジヒドロインドール、ジヒドロインダゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロシンノリン、テトラヒドロフタラジン、テトラヒドロキナゾリン、テトラヒドロキノキサリン、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、クロマン、イソクロマン、ベンゾ[1,3]ジオキソール、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン、ジヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、チオクロマン、イソチオクロマン、ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾイソオキサゾール、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイソチアゾール、ジヒドロベンゾチアジン、キサンテン、4a−カルバゾール、ペリミジン等の2環式又は3環式の縮合多環式複素環を形成してもよい。
【0027】
不飽和単環式複素環の具体例として、窒素原子を環内に有するジヒドロピロール、ピロール、ジヒドロピラゾール、ピラゾール、ジヒドロイミダゾール、イミダゾール、ジヒドロトリアゾール、トリアゾール、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジン、ピリジン、テトラヒドロピリダジン、ジヒドロピリダジン、ピリダジン、テトラヒドロピリミジン、ジヒドロピリミジン、ピリミジン、テトラヒドロピラジン、ジヒドロピラジン、ピラジン等が、酸素原子を環内に有するジヒドロフラン、フラン、ジヒドロピラン、ピラン等が、硫黄原子を環内に有するジヒドロチオフェン、チオフェン、ジヒドロチオピラン、チオピラン等が、窒素原子と酸素原子を環内に有するジヒドロオキサゾール、オキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、イソオキサゾール、ジヒドロオキサジン、オキサジン等が、窒素原子と硫黄原子を環内に有するジヒドロチアゾール、チアゾール、ジヒドロイソチアゾール、イソチアゾール、ジヒドロチアジン、チアジン等が挙げられる。
【0028】
また、それらの不飽和単環式複素環はベンゼン環等と縮合してインドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ジヒドロキノリン、キノリン、ジヒドロイソキノリン、イソキノリン、フェナントリジン、ジヒドロシンノリン、シンノリン、ジヒドロフタラジン、フタラジン、ジヒドロキナゾリン、キナゾリン、ジヒドロキノキサリン、キノキサリン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン、イソクロメン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、チオクロメン、イソチオクロメン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジン、ベンゾチアゾール、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジン、フェノキサンチン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン等の2環式又は3環式の縮合多環式複素環を形成してもよい。
【0029】
さらにこれらの複素環において、同一の炭素原子上に2つの水素原子を有する複素環の場合、それらの水素原子がオキソ基と置換して、2−ピロリドン、4−ピペリドン、4−チアゾリドン、ピラン−4−(4H)−オン、ピラジン−2−(3H)−オン等の複素環式ケトンを形成してもよく、この複素環式ケトンも本発明の複素環の範囲に包含される。
【0030】
「複素環基」とは、複素環から水素1原子を除いた残基を示す。前記、複素環の定義を準用する。
【0031】
「低級アルコキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルキル基で置換された基を示す。具体例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソペンチルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
「低級アルケニルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルケニル基で置換された基を示す。具体例として、ビニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ、ペンテニルオキシ、ヘキセニルオキシ、ヘプテニルオキシ、オクテニルオキシ、イソプロペニルオキシ、2−メチル−1−プロペニルオキシ、2−メチル−2−ブテニルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
「低級アルキニルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級アルキニル基で置換された基を示す。具体例として、エチニルオキシ、プロピニルオキシ、ブチニルオキシ、ペンチニルオキシ、ヘキシニルオキシ、ヘプチニルオキシ、オクチニルオキシ、イソブチニルオキシ、イソペンチニルオキシ基等が挙げられる。
【0034】
「低級シクロアルキルオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が低級シクロアルキル基で置換された基を示す。具体例として、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0035】
「アリールオキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子がアリール基で置換された基を示す。具体例として、フェノキシ、ナフトキシ、アントリルオキシ、フェナントリルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
「複素環オキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が複素環基で置換された基を示す。具体例については、前記、複素環および複素環基の定義を準用する。
【0037】
「置換基を有してもよい低級アルキル基」、「置換基を有してもよい低級アルケニル基」、「置換基を有してもよい低級アルキニル基」、「置換基を有してもよい低級アルコキシ基」、「置換基を有してもよい低級アルケニルオキシ基」及び/又は「置換基を有してもよい低級アルキニルオキシ基」とは、ハロゲン原子、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ニトロ基、シアノ基、‐ORP、-CORq、-COORr、-CONRst 、-NRuv 及び-NHCORWからなる群(好ましくは、低級シクロアルキル基、アリール基及び複素環基)より選択される1又は複数個の置換基を有してもよい「低級アルキル基」、「低級アルケニル基」、「低級アルキニル基」、「低級アルコキシ基」、「低級アルケニルオキシ基」及び/又は「低級アルキニルオキシ基」を示す。
【0038】
「置換基を有してもよい低級シクロアルキル基」、「置換基を有してもよいアリール基」、「置換基を有してもよい複素環基」、「置換基を有してもよい低級シクロアルキルオキシ基」、「置換基を有してもよいアリールオキシ基」及び/又は「置換基を有してもよい複素環オキシ基」とは、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、ニトロ基、シアノ基、‐ORP、-CORq、-COORr、-CONRst 、-NRuv及び-NHCORWからなる群(好ましくは、ハロゲン原子、低級アルキル基、ニトロ基、‐ORP、-NRuv及び-NHCORWからなる群)より選択される1又は複数個の置換基を有してもよい「低級シクロアルキル基」、「アリール基」、「複素環基」、「低級シクロアルキルオキシ基」、「アリールオキシ基」及び/又は「複素環オキシ基」を示す。
【0039】
ここで、Rp、Rq、Rr、Rs、Rt、Ru、Rv及びRWは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基で置換された低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、低級シクロアルキル基、アリール基及び複素環基からなる群より選択される基を示す。
【0040】
本発明でいう「複数個の基」とは、夫々の基が同一であっても異なるものであってもよく、その個数は2又は3個の場合が好ましく、特に2個の場合が好ましい。また、水素原子、ハロゲン原子及び環も「基」の概念に含む。
【0041】
本発明において「m」が2又は3を示す場合、複数個存在する各R3は同一又は異なっていてもよい。
【0042】
また、「m」が0を示す場合とは、各R3が存在しない場合を示す。
【0043】
本発明でいう「IKKβ阻害剤」とは、IKKβを阻害することにより、医薬的作用を発現させるものをいう。例えば、IKKβが関与するとされる疾患として、炎症性疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患、感染性疾患、変性疾患、血管性疾患、神経・感覚器疾患、内分泌・代謝性疾患、腫瘍性疾患、先天性疾患、外傷性疾患、臓器移植後の拒絶反応等の予防及び/又は治療剤が挙げられる。より具体的には、角膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎、変形性関節症、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、肺炎、肝炎、膵炎、腎炎、敗血症、全身性炎症反応症候群、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、加齢黄斑変性、未熟児網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜静脈閉塞症、糖尿病及びその合併症(糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症)、白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、固形癌、悪液質、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、脳梗塞、脳卒中、緑内障、後天性免疫不全症候群、骨粗鬆症、肥満症、線維症、通風、発熱、頭痛、急性・慢性疼痛、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、心筋梗塞、狭心症、筋ジストロフィー、急性呼吸促拍症候群等が挙げられる。
【0044】
尚、前記した具体的な疾患は、本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、IKKβが関与するとされる疾患であれば、特に制限はない。また、IKKβは転写因子であるNF−κBやサイトカイン産生(TNF、IL−1、IL−6等)とも深く関わっており、これらの因子が関与するとされる疾患も本発明のIKKβが関与するとされる疾患の範囲に入る。
【0045】
本発明化合物における「塩」とは、医薬として許容される塩であれば、特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等の有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチル等との四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛等との金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−メチルアミノ−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
【0046】
本発明化合物に幾何異性体及び/又は光学異性体が存在する場合は、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0047】
また、本発明化合物は水和物及び/又は溶媒和物が存在する場合は、それらの水和物及び/又は溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。
【0048】
本発明化合物にプロトン互変異性が存在する場合は、それらの互変異性体も本発明に含まれる。
【0049】
本発明化合物に結晶多形及び/又は結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合は、それらの結晶多形及び/又は結晶多形群(結晶多形システム)も本発明に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それら結晶の製造、晶出、保存等の条件及び/又は状態(尚、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形及び/又はその過程全体を意味する。
【0050】
(a)本発明化合物の例として、一般式(1)で示される化合物又はその塩において、各基が以下に示す基である化合物又はその塩が挙げられる。
【化2】

【0051】
(a1)R1が水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、ヒドロキシ基又は置換基を有してもよい低級アルコキシ基を示し;及び/又は
(a2)R2が水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し;及び/又は
(a3)R3がハロゲン原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても複素環基、置換基を有してもよい低級アルコキシ基、置換基を有してもよい低級アルケニルオキシ基、置換基を有してもよい低級アルキニルオキシ基、置換基を有してもよい低級シクロアルキルオキシ基、置換基を有してもよい低級アリールオキシ基、置換基を有してもよい複素環オキシ基を示し;及び/又は
(a4)mが0、1、2又は3を示し、mが2又は3の場合、R3は同一又は異なっていてもよい。
【0052】
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)から選択される各組み合わせからなる化合物又はその塩が挙げられる。
【0053】
(b)本発明化合物におけるより好ましい例として、一般式(1)で示される化合物又はその塩において、各基が下記に示す基である化合物又はその塩が挙げられる。
【0054】
(b1)R1が水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基又は低級アルコキシ基を示し;及び/又は
(b2)R2が水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し;及び/又は
(b3)R3がハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級アルキニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基を示し;及び/又は
(b4)mが0、1又は2を示し、mが2の場合、R3は同一又は異なっていてもよい。
【0055】
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(b1)、(b2)、(b3)及び(b4)から選択される1又は2以上の各組み合わせからなる化合物又はその塩が挙げられる。また、その選択された条件は、前記(a)の条件と組み合わせることもできる。
【0056】
(c)本発明化合物における特に好ましい例として、一般式(1)で示される化合物又はその塩において、各基が下記に示す基である化合物又はその塩が挙げられる。
【0057】
(c1)R1が水素原子を示し;及び/又は
(c2)R2が水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し;及び/又は
(c3)R3がハロゲン原子、低級アルケニル基又は複素環基を示し;及び/又は
(c4)mが0、1又は2を示し、mが2の場合、R3は同一又は異なっていてもよい。
【0058】
すなわち、一般式(1)で示される化合物において、上記(c1)、(c2)、(c3)及び(c4)から選択される1又は2以上の各組み合わせからなる化合物又はその塩が挙げられる。また、その選択された条件は、前記(a)及び/又は(b)の条件と組み合わせることもできる。
【0059】
(d)一般式(1)における−O−R2の好ましい結合位置として、一般式(1)のインドール環の6位に結合している化合物又はその塩が挙げられる。また、その選択された条件は、前記(a)、(b)及び/又は(c)の条件と組み合わせることもできる。
【0060】
(e)一般式(1)におけるmの好ましい例として、mが0を示す化合物又はその塩が挙げられる。また、その選択された条件は、前記(a)、(b)及び/又は(c)の条件と組み合わせることもできる。
【0061】
(f)本発明化合物における特に好ましい具体例として下記の化合物又はその塩が挙げられる。
【0062】
・2−アミノカルボニルアミノ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド。
【0063】
・2−アミノカルボニルアミノ−7−メトキシインドール−3−カルボキサミド。
【0064】
・2−アミノカルボニルアミノ−4−フルオロ−7−メトキシインドール−3−カルボキサミド。
【0065】
・2−アミノカルボニルアミノ−6−ヒドロキシインドール−3−カルボキサミド。
【0066】
・2−アミノカルボニルアミノ−6−シクロプロピルメチルオキシインドール−3−カルボキサミド。
【0067】
・2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−ニトロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド。
【0068】
・2−アミノカルボニルアミノ−6−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)インドール−3−カルボキサミド。
【0069】
・2−アミノカルボニルアミノ−6−(2−メチル−4−ニトロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド。
【0070】
・6−(4−アセチルアミノフェニルオキシ)−2−(アミノカルボニルアミノ)インドール−3−カルボキサミド。
【0071】
・2−アミノカルボニルアミノ−4−フルオロ−7−メトキシ−6−ビニルインドール−3−カルボキサミド。
【0072】
・2−アミノカルボニルアミノ−4−フルオロ−6−(フラン−3−イル)−7−メトキシインドール−3−カルボキサミド。
【0073】
・2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−クロロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド。
【0074】
本発明化合物は、以下の方法により製造することができる。尚、個々の具体的な製造方法については、後述の実施例[製造例]の項で詳細に説明する。また、下記の合成経路中で使用されているHalはハロゲン原子を示す。また、(R)iはRで示される任意の置換基を意味し、iは0、1又は2を示す。
【0075】
本発明化合物の製造方法は、以下に示す方法に大別することができ、置換基の種類に応じて、適宜その方法を選択することができる。
【0076】
本発明化合物(I)は、合成経路1に従い製造することができる。すなわち、化合物(II)とイソシアン酸トリクロロアセチルをテトラヒドロフラン(以下、「THF」とする)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」とする)等の有機溶媒中、−80℃から室温で1時間から3時間反応させた後、さらにアンモニア−メタノール溶液を加えて、0℃から室温で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)を得ることができる。
【0077】
合成経路1
【化3】

【0078】
化合物(II)−(a)及び化合物(II)−(b)は、合成経路2に従い製造することができる。すなわち、化合物(III)とシアノアセトアミド(IV)をTHF、DMF等の有機溶媒中、水素化ナトリウム等の塩基存在下、0℃から80℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(V)を得ることができる。得られる化合物(V)をトルエン等の有機溶媒中、鉄、亜鉛等の金属粉末と酢酸を加えて、室温から100℃で30分間から3時間処理することにより化合物(II)−(a)及び化合物(II)−(b)を得ることができる。
【0079】
または、化合物(V)をメタノール、DMF等の有機溶媒中、パラジウム炭素存在下、水素雰囲気下で室温から60℃で1時間から24時間処理するか、もしくは化合物(V)をアンモニア水中、亜二チオン酸ナトリウムを加えて、0℃から室温で30分間から24時間処理することにより化合物(VI)を得ることができる。得られる化合物(VI)を1,4−ジオキサン、DMF等の有機溶媒中、室温から150℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(II)−(a)を得ることができる。
【0080】
合成経路2
【化4】

【0081】
また化合物(II)−(a)は、Journal of Heterocyclic Chemistry,44,419−424(2007)記載の方法に準じて合成経路3に従い製造することができる。すなわち、ヒドロキシルアミン(VII)(Yはアセチル基又はベンゾイル基)とマロノニトリル(VIII)をクロロホルム、THF等の有機溶媒中、トリエチルアミン等の塩基存在下、0℃から80℃で1時間から6時間反応させることにより化合物(IX)を得ることができる。得られる化合物(IX)をメタノール等の有機溶媒中、ナトリウムメトキシド、トリエチルアミン等の塩基存在下、室温から80℃で30分間から3時間処理することにより化合物(II)−(a)を得ることができる。
【0082】
合成経路3
【化5】

【0083】
化合物(VII)は、合成経路4に従い合成することができる。すなわち、化合物(X)をTHF、エタノール等の有機溶媒中、ヒドラジン1水和物とパラジウム炭素存在下、0℃から室温で30分間から24時間処理することにより化合物(XI)を得ることができる。得られる化合物(XI)と塩化アセチル又は塩化ベンゾイル(XII)をTHF、DMF等の有機溶媒中、トリエチルアミン、炭酸カリウム等の塩基存在下、0℃から50℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(VII)を得ることができる。
【0084】
合成経路4
【化6】

【0085】
化合物(II)−(c)(Rは置換基を有してもよい低級アルキル基)は、合成経路5に従い製造することができる。すなわち、化合物(II)−(a)とハロゲン化アルキル(XIII)をTHF、DMF等の有機溶媒中、水素化ナトリウム等の塩基存在下、0℃から100℃で1時間から24時間反応させることにより化合物(II)−(c)を得ることができる。
【0086】
合成経路5
【化7】

【0087】
本発明化合物(I)−(a)及び本発明化合物(I)−(b)は、合成経路6に従い製造することができる(Yは置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示す)。すなわち、本発明化合物(I)−(c)とN−ブロモこはく酸イミド、N−クロロこはく酸イミド等のハロゲン化剤をDMF等の有機溶媒中、0℃から100℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)−(a)を得ることができる。得られる本発明化合物(I)−(a)とボロン酸(XIV)を1,4−ジオキサン、DMF等の有機溶媒と水との混合溶媒中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等の金属錯体触媒と炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下、室温から150℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)−(b)を得ることができる。
【0088】
合成経路6
【化8】

【0089】
本発明化合物(I)−(d)、本発明化合物(I)−(e)及び本発明化合物(I)−(f)は、合成経路7に従い製造することができる(Yは置換基を有してもよい低級アルキル基を示す)。すなわち、本発明化合物(I)−(a)と1−アルキン(XV)を1,4−ジオキサン、DMF等の有機溶媒と水との混合溶媒中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等の金属錯体触媒と、第1ヨウ化銅、第1臭化銅等の銅塩及び炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下、室温から150℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)−(d)を得ることができる。また本発明化合物(I)−(a)とボロン酸エステル(XVI)を1,4−ジオキサン、DMF等の有機溶媒と水との混合溶媒中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等の金属錯体触媒と炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下、室温から150℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)−(e)を得ることができる。また本発明化合物(I)−(d)又は本発明化合物(I)−(e)をメタノール、DMF等の有機溶媒中、パラジウム炭素存在下、水素雰囲気下で室温から100℃で1時間から24時間処理することにより本発明化合物(I)−(f)を得ることができる。
【0090】
合成経路7
【化9】

【0091】
本発明化合物(I)−(g)及び本発明化合物(I)−(h)は、合成経路8に従い製造することができる。すなわち、本発明化合物(I)−(i)を塩化メチレン等の有機溶媒中、三臭化ホウ素等のルイス酸存在下、−80℃から室温で1時間から24時間処理することにより本発明化合物(I)−(g)を得ることができる。得られる本発明化合物(I)−(g)とハロゲン化合物(XVII)(Rは置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示す)をTHF、DMF等の有機溶媒中、炭酸カリウム、水素化ナトリウム等の塩基存在下、0℃から100℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)−(h)を得ることができる。または本発明化合物(I)−(g)とアルコール(XVIII)をTHF、DMF等の有機溶媒中、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィンとアゾジカルボン酸ジエチル、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン等の試薬存在下、0℃から100℃で1時間から24時間反応させることにより本発明化合物(I)−(h)を得ることができる。
【0092】
合成経路8
【化10】

【0093】
前記の合成経路により製造した本発明化合物は、汎用されている技術を使用して、前述の塩、水和物又は溶媒和物の形態とすることもできる。
【0094】
また、この詳細については、後述の実施例「薬理試験の項」で詳細に説明するが、IMAPTM IKKβアッセイキット(モレキュラーデバイス社製、カタログ番号R8115)又はIMAPTM FP Screening Expressキット(モレキュラーデバイス社製、カタログ番号R8127)を使用した蛍光偏光法によるIKKβ阻害アッセイを実施した。その結果、本発明化合物は優れたIKKβ阻害活性を示した。
【0095】
また、前述したようにIKKβは種々の疾患の発現に関与しており、優れたIKKβ阻害活性を有する本発明化合物は、IKKβ阻害剤及び/又は、IKKβが関与するとされる疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。好ましくは、炎症性疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患、感染性疾患、変性疾患、血管性疾患、神経・感覚器疾患、内分泌・代謝性疾患、腫瘍性疾患、先天性疾患、外傷性疾患、臓器移植後の拒絶反応等の予防及び/又は治療剤として有用であり、より具体的には、角膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎、変形性関節症、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、肺炎、肝炎、膵炎、腎炎、敗血症、全身性炎症反応症候群、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、加齢黄斑変性、未熟児網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜静脈閉塞症、糖尿病及びその合併症(糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症)、白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、固形癌、悪液質、アルツハイマー病、パーキンソン症候群、脳梗塞、脳卒中、緑内障、後天性免疫不全症候群、骨粗鬆症、肥満症、線維症、通風、発熱、頭痛、急性・慢性疼痛、高血圧、高脂血症、動脈硬化症、心筋梗塞、狭心症、筋ジストロフィー、急性呼吸促拍症候群等の予防及び/又は治療剤として、特に好ましくは、角膜炎、結膜炎、ブドウ膜炎、関節リウマチ、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫及び/又は緑内障の治療剤として有用である。
【0096】
本発明化合物は経口でも、非経口でも投与することができる。投与剤型として、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、注射剤、点眼剤、坐剤、経皮吸収製剤、軟膏剤、エアゾール剤(吸入剤含む)等が挙げられ、それらは汎用される技術を使用して製剤化することができる。
【0097】
例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤は、乳糖、マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等の賦形剤、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコーン樹脂等のコーティング剤、パラオキシ安息香酸エチル、ベンジルアルコール等の安定化剤、甘味料、酸味料、香料等の矯味矯臭剤等を必要に応じて、必要量を使用して、調製することができる。
【0098】
また、注射剤、点眼剤等の非経口剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、塩化カリウム、ソルビトール、マンニトール等の等張化剤、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸,氷酢酸、トロメタモール等の緩衝化剤、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシ40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等の界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン、塩化ベンゾトニウム、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、クロロブタノール等の防腐剤、塩酸、クエン酸、リン酸、氷酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、ベンジルアルコール等の無痛化剤等を必要に応じて、必要量を使用して、調製することができる。
【0099】
本発明化合物の投与量は、症状、年齢、剤型等により適宜選択して使用することができる。例えば、経口剤は通常1日当たり0.01〜1000mg、好ましくは1〜100mgを1回又は数回に分けて投与することができる。また、点眼剤は通常0.0001%〜10%(w/v)、好ましくは0.01%〜5%(w/v)の濃度のものを1回又は数回に分けて投与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下に本発明化合物の製造例、製剤例及び薬理試験の結果を示す。尚、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0101】

[製造例]
参考例1
N−アセチル−N−(3−メトキシフェニル)ヒドロキシルアミン(参考化合物1−1)

氷冷下、3−ニトロアニソール(7.7g、50mmol)のテトラヒドロフラン−エタノール(1:1)混合溶液(100mL)に、10%パラジウム炭素(0.46g)とヒドラジン一水和物(4.9mL、100mmol)を加え、室温で3時間撹拌した後、約5℃で一晩静置した。セライトを用いてエタノール(100mL)と共に濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣に、炭酸水素ナトリウム(13g、150mmol)と無水N,N−ジメチルホルムアミド(50mL)を加え、氷冷下でさらに塩化アセチル(5.4mL、76mmol)を加え、1時間撹拌した。反応液を水(200mL)で希釈し、酢酸エチル(300mL×1、200mL×1)で抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記参考化合物(9.3g)を橙色油状物として得た(定量的)。
【表1】

【0102】
以下、市販化合物を使用し、参考化合物1−1の製造方法に準じて、参考化合物1−2及び1−3を得た。
【表2】

【0103】

参考例2
2−アミノ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド(参考化合物2−1)
2−アミノ−4−メトキシインドール−3−カルボキサミド(参考化合物2−2)

N−アセチル−N−(3−メトキシフェニル)ヒドロキシルアミン(参考化合物1−1、9.3g、50mmol)及びマロノニトリル(3.4g、51mol)のクロロホルム(130mL)溶液に、トリエチルアミン(7.0mL、50mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。析出した固体を濾取し、クロロホルム(50mL)で洗浄した後、40℃減圧下で乾燥した。得られた固体に無水メタノール(100mL)及び28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液(20mL)を加え、加熱還流下で5時間撹拌した。室温で放冷後、反応液を減圧濃縮し、水(300mL)で希釈した。酢酸エチル(300mL)で抽出し、有機層を飽和食塩水(100mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、得られた固体をクロロホルム−メタノール(20:1)混合溶媒(200mL)で濾取、洗浄した。固体を40℃減圧下で乾燥することにより、標記参考化合物2−1(2.4g)を灰色固体として得た(23%)。また濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記参考化合物2−2(1.3g)を褐色固体として得た(13%)。
【表3】

【0104】
以下、参考化合物1−2又は1−3を使用し、参考化合物2−1の製造方法に準じて、参考化合物2−3及び2−4を得た。
【表4】

【0105】

実施例1
2−アミノカルボニルアミノ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド(化合物1−1)

2−アミノ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド(参考化合物2−1、2.9g、14mmol)の無水テトラヒドロフラン(50mL)溶液に、−40℃でイソシアン酸トリクロロアセチル(1.7mL、14mmol)を10分間で滴下し、2.5時間撹拌した。さらに2.0Mアンモニア−メタノール溶液(40mL、80mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた固体をクロロホルム−メタノール混合溶媒(50mL)で濾取、洗浄した。固体を40℃減圧下で乾燥することにより、標記化合物(3.1g)を灰色固体として得た(88%)。
【表5】

【0106】
以下、参考化合物2−2〜2−4を使用し、化合物1−1の製造方法に準じて、化合物1−2〜1−4を得た。
【表6】

【0107】

実施例2
2−アミノカルボニルアミノ−6−ヒドロキシインドール−3−カルボキサミド(化合物2−1)

2−アミノカルボニルアミノ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド(化合物1−1、3.6g、15mmol)の無水ジクロロメタン(50mL)懸濁液に、−70℃で1.0M三臭化ホウ素−ジクロロメタン溶液(45mL、45mmol)を45分間で滴下し、1時間撹拌した。さらに−40℃で4時間、氷冷下で1.5時間撹拌した後、水(100mL)を加えた。析出した固体を濾取し、水(50mL)及びクロロホルム(50mL)で洗浄した。50℃減圧下で2時間乾燥することにより、標記化合物(2.7g)を褐色固体として得た(78%)。
【表7】

【0108】
以下、化合物1−2を使用し、化合物2−1の製造方法に準じて、化合物2−2を得た。
【表8】

【0109】

実施例3
2−アミノカルボニルアミノ−6−プロポキシインドール−3−カルボキサミド(化合物3−1)

氷冷下、2−アミノカルボニルアミノ−6−ヒドロキシインドール−3−カルボキサミド(化合物2−1、47mg、0.20mmol)の無水テトラヒドロフラン(2mL)懸濁液に、1−プロパノール(60μL、0.80mmol)、n−トリブチルホスフィン(100μL、0.40mmol)及び1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン(98mg、0.39mmol)を加えて2.5時間撹拌した。さらに室温で一晩撹拌した後、50℃で7時間撹拌した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記化合物(7mg)を緑色固体として得た(13%)。
【表9】

【0110】
以下、市販化合物及び化合物2−1を使用し、化合物3−1の製造方法に準じて、化合物3−2を得た。
【表10】

【0111】

実施例4
2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−ニトロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド(化合物4−1)

氷冷下、60%水素化ナトリウム(450mg、11mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(15mL)懸濁液に、2−アミノカルボニルアミノ−6−ヒドロキシインドール−3−カルボキサミド(化合物2−1、1.3g、5.5mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(7mL)懸濁液を5分間で滴下し、5分間撹拌した。さらに4−フルオロニトロベンゼン(640μL、6.0mmol)を加え、室温で15分間撹拌した後、60℃で一晩撹拌した。放冷後、反応液を水(300mL)で希釈し、酢酸エチル(200mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(200mL)及び飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた固体をクロロホルム−ジエチルエーテル(1:2)混合溶媒(60mL)で濾取、洗浄した。固体を40℃減圧下で1時間乾燥することにより、標記化合物(1.2g)を褐色固体として得た(59%)。
【表11】

【0112】
以下、市販化合物及び化合物2−1を使用し、化合物4−1の製造方法に準じて、化合物4−2〜4−7を得た。
【表12−1】

【表12−2】

【0113】

実施例5
2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−アミノフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド(化合物5−1)

2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−ニトロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド(化合物4−1、250mg、0.70mmol)のメタノール(7mL)懸濁液に、10%パラジウム炭素(0.06g)を加え、水素雰囲気下室温で一晩撹拌した。N,N−ジメチルホルムアミド(3mL)を加えた後、不溶物を濾去し、濾液を減圧濃縮した。水(30mL)を加えて析出した固体を濾取し、水(20mL)で洗浄した。40℃減圧下で1時間乾燥することにより、標記化合物(100mg)を褐色固体として得た(44%)。
【表13】

【0114】

実施例6
6−(4−アセチルアミノフェニルオキシ)−2−(アミノカルボニルアミノ)インドール−3−カルボキサミド(化合物6−1)

2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−アミノフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド(化合物5−1、40mg、0.12mmol)、酢酸(8μL、0.14mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(46μL、0.26mmol)及びO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(48mg、0.13mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(1mL)溶液を室温で一晩撹拌した。反応液に水(10mL)を加え、析出した固体を濾取し、水(10mL)で洗浄した。固体を40℃減圧下で乾燥することにより、標記化合物(21mg)を紫色固体として得た(46%)。
【表14】

【0115】
以下、市販化合物及び化合物5−1を使用し、化合物6−1の製造方法に準じて、化合物6−2を得た。
【表15】

【0116】

実施例7
2−アミノカルボニルアミノ−5−ブロモ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド(化合物7−1)

氷冷下、2−アミノカルボニルアミノ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド(化合物1−1、126mg、0.51mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(1.5mL)溶液に、N−ブロモこはく酸イミド(94mg、0.53mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド(1mL)溶液を加え、1.5時間撹拌した。さらに室温で2時間、50℃で3時間撹拌した。反応液を水(60mL)で希釈し、酢酸エチル(50mL)で抽出した後、有機層を飽和食塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、得られた固体をジエチルエーテル−クロロホルム(5:1)混合溶媒(24mL)で濾取、洗浄し、固体を40℃減圧下で乾燥することにより、標記化合物(50mg)を灰色固体として得た(30%)。
【表16】

【0117】
以下、化合物1−4を使用し、化合物7−1の製造方法に準じて、化合物7−2を得た。
【表17】

【0118】

実施例8
2−アミノカルボニルアミノ−6−メトキシ−5−ビニルインドール−3−カルボキサミド(化合物8−1)

2−アミノカルボニルアミノ−5−ブロモ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド(化合物7−1、86mg、0.26mmol)、ビニルボロン酸ピナコールエステル(121μL、0.40mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(32mg、0.027mmol)及び炭酸水素ナトリウム(56mg、0.66mmol)の1,4−ジオキサン−水(3:1)混合溶媒(15mL)懸濁液をアルゴン雰囲気下、110℃で一晩撹拌した。放冷後、酢酸エチル(20mL)と飽和食塩水(15mL)を加え、分配した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記化合物(4mg)を濃緑色固体として得た(6%)。
【表18】

【0119】
以下、市販化合物及び化合物7−2を使用し、化合物8−1の製造方法に準じて、化合物8−2及び8−3を得た。
【表19】

【0120】

実施例9
2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−クロロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド(化合物9−1)

氷冷下、2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−アミノフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド(化合物5−1、99mg、0.30mmol)、無水ジクロロメタン(2mL)と6N塩酸(4mL)懸濁液に、亜硝酸ナトリウム(42mg、0.61mmol)の水(400μL)溶液を加え、2時間撹拌した。さらに塩化銅(I)(162mg、1.6mmol)の濃塩酸(500μL)溶液を加え、30分間撹拌した後、室温で一晩撹拌した。反応液に水(30mL)とメタノール(20mL)で希釈し、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を飽和重曹水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、標記化合物(9mg)を褐色固体として得た(8%)。
【表20】

【0121】
尚、市販化合物はシグマアルドリッチ社、和光純薬工業株式会社、関東化学株式会社、東京化成工業株式会社、ナカライテスク株式会社等の2006年から2008年度カタログに収載されている化合物である。
【0122】

[製剤例]
本発明化合物の代表的な製剤例を以下に示す。
【0123】

1)錠剤(150mg中)
本発明化合物 1mg
乳糖 100mg
トウモロコシデンプン 40mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg

上記処方の錠剤にコーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マクロゴール、シリコーン樹脂等の通常のコーティング剤)3mgを用いてコーティングを施し、目的とする錠剤を得ることができる。また、本発明化合物並びに添加物の種類及び/又は量を適宜変更することで、所望の錠剤を得ることもできる。
【0124】

2)カプセル剤(150mg中)
本発明化合物 5mg
乳糖 135mg
カルボキシメチルセルロースカルシウム 4.5mg
ヒドロキシプロピルセルロース 4mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg

本発明化合物並びに添加剤の種類及び又は量を適宜変更することで、所望のカプセル剤を得ることができる。
【0125】

3)点眼剤(100ml中)
本発明化合物 100mg
塩化ナトリウム 900mg
ポリソルベート80 500mg
水酸化ナトリウム 適量
塩酸 適量
滅菌精製水 適量

本発明化合物及び添加物の種類及び/又は量を適宜変更することで、所望の点眼剤を得ることができる。
【0126】

[薬理試験]
1.IKKβ阻害活性測定試験
本発明化合物のIKKβ阻害活性を評価する為、蛍光偏光法によるIKKβ阻害アッセイを実施した。アッセイには、IMAPTM IKKβアッセイキット(モレキュラーデバイス社製、カタログ番号R8115)又はIMAPTM FP Screening Expressキット(モレキュラーデバイス社製、カタログ番号R8127)を使用し、本キットに添付のプロトコールに準じて行った。以下にその具体的な方法を記載する。
【0127】

(試薬の調製)
1)完全反応緩衝液:最終組成が10mM塩酸トリス(pH 7.2)、10mM塩化マグネシウム、0.1%ウシ血清アルブミン、1mMジチオスレイトールとなるように、完全反応緩衝液を調製した。
【0128】
2)基質ワーキング溶液:蛍光標識IKKβ基質ペプチド(アミノ酸配列:GRHDSGLDSMK)を完全反応緩衝液で溶解及び希釈して、400nM基質ワーキング溶液を調製した。
【0129】
3)酵素ワーキング溶液:IKKβ溶液(アップステート・バイオテクロノジー社製、カタログ番号14-485)を完全反応緩衝液で希釈して、0.2units/mL酵素ワーキング溶液を調製した。
【0130】
4)ATPワーキング溶液:ATPを超純水に溶解後、完全反応緩衝液で希釈して、8μM ATPワーキング溶液を調製した。
【0131】
5)IMAP結合溶液:IMAP結合緩衝液を超純水にて希釈及び調製後、IMAP結合試薬をIMAP結合緩衝液で希釈してIMAP結合溶液を調製した。
【0132】

(被験化合物溶液の調製)
被験化合物をジメチルスルホキシドに溶解した後、完全反応緩衝液で希釈して4μM被験化合物溶液を調製した。
【0133】

(試験方法及び測定方法)
1)384ウェルプレートに被験化合物溶液、酵素ワーキング溶液、基質ワーキング溶液及びATPワーキング溶液を1ウェルあたり各5μLずつ添加した。
【0134】
2)遮光かつ室温で60分間インキュベーションした。
【0135】
3)IMAP結合溶液を1ウェルあたり60μLずつ添加した。
【0136】
4)遮光かつ室温で30分間インキュベーションした。
【0137】
5)マルチモードプレートリーダーAnalystTM HT(モレキュラーデバイス社製)及びCriterion Hostソフトウェアv2.00(モレキュラーデバイス社製)を使用して、各ウェルの蛍光偏光値を測定した。
【0138】
6)被験化合物に代えて0.4%ジメチルスルホキシドを添加し、他は前記1〜5)と同じ操作を実施して、その結果をコントロールとした。
【0139】
7)被験化合物及び酵素ワーキング溶液に代えてそれぞれ0.4%ジメチルスルホキシド及び完全反応緩衝液を添加し、他は前記1〜5)と同じ操作を実施して、その結果をバックグラウンドとした。
【0140】

(IKKβ阻害率の計算式)
IKKβ阻害率(%)は以下の式により算出した。
【0141】
IKKβ阻害率(%) = 100×{1−(被験化合物の蛍光偏光値−バックグラウンドの蛍光偏光値)/(コントロールの蛍光偏光値−バックグラウンドの蛍光偏光値)}

(評価結果)
評価結果の一例として、被験化合物(化合物1−1、1−3、1−4、2−1、3−2、4−1、4−3、4−6、6−1、8−2、8−3及び9−1)の1μMにおけるIKKβ阻害率(%)を表Iに示す。

【表I】

【0142】

表Iに示したとおり本発明化合物は優れたIKKβ阻害活性を示した。よって、本発明化合物はIKKβ阻害剤として使用でき、IKKβが関与するとされる疾患、例えば、炎症性疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患、感染性疾患、変性疾患、血管性疾患、神経・感覚器疾患、内分泌・代謝性疾患、腫瘍性疾患、先天性疾患、外傷性疾患、臓器移植後の拒絶反応等の予防及び/又は治療剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物又はその塩。
【化1】


[R1は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、ヒドロキシ基又は置換基を有してもよい低級アルコキシ基を示し;
2は水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し;
3はハロゲン原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよい低級アルケニル基、置換基を有してもよい低級アルキニル基、置換基を有してもよい低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有しても複素環基、置換基を有してもよい低級アルコキシ基、置換基を有してもよい低級アルケニルオキシ基、置換基を有してもよい低級アルキニルオキシ基、置換基を有してもよい低級シクロアルキルオキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよい複素環オキシ基を示し;
mは0、1、2又は3を示し、mが2又は3の場合、R3は同一又は異なっていてもよい。]
【請求項2】
一般式(1)において、
1が水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基又は低級アルコキシ基を示し;
2が水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、低級シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し;
3がハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、低級シクロアルキル基、アリール基、複素環基、低級アルコキシ基、低級アルケニルオキシ基、低級アルキニルオキシ基、低級シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基を示し;
mが0、1又は2を示し、mが2の場合、R3は同一又は異なっていてもよい請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
一般式(1)において、
[R1が水素原子を示し;
2が水素原子、置換基を有してもよい低級アルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよい複素環基を示し;
3がハロゲン原子、低級アルケニル基又は複素環基を示し;
mが0、1又は2を示し、mが2の場合、R3は同一又は異なっていてもよい請求項1記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
一般式(1)において、−O−R2がインドール環の6位に結合している請求項1〜3記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
一般式(1)において、mが0を示す請求項1〜3記載の化合物又はその塩。
【請求項6】
・2−アミノカルボニルアミノ−6−メトキシインドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−7−メトキシインドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−4−フルオロ−7−メトキシインドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−6−ヒドロキシインドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−6−シクロプロピルメチルオキシインドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−ニトロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−6−(2−クロロピリジン−4−イルオキシ)インドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−6−(2−メチル−4−ニトロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミド、
・6−(4−アセチルアミノフェニルオキシ)−2−(アミノカルボニルアミノ)インドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−4−フルオロ−7−メトキシ−6−ビニルインドール−3−カルボキサミド、
・2−アミノカルボニルアミノ−4−フルオロ−6−(フラン−3−イル)−7−メトキシインドール−3−カルボキサミド、及び
・2−アミノカルボニルアミノ−6−(4−クロロフェニルオキシ)インドール−3−カルボキサミドから選択される化合物又はその塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1記載の化合物又はその塩の少なくとも一つを含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1記載の化合物又はその塩の少なくとも一つを有効成分とするIKKβ阻害剤。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1記載の化合物又はその塩の少なくとも一つを有効成分とするIKKβが関与するとされる疾患の予防又は治療剤。
【請求項10】
IKKβが関与するとされる疾患が炎症性疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患、感染性疾患、変性疾患、血管性疾患、神経・感覚器疾患、内分泌・代謝性疾患、腫瘍性疾患、先天性疾患、外傷性疾患又は臓器移植後の拒絶反応である請求項9記載の予防又は治療剤。
【請求項11】
IKKβが関与するとされる疾患が加齢黄斑変性である請求項9記載の予防又は治療剤。
【請求項12】
IKKβが関与するとされる疾患が糖尿病網膜症又は糖尿病黄斑浮腫である請求項9記載の予防又は治療剤。
【請求項13】
IKKβが関与するとされる疾患が角膜炎、結膜炎又はブドウ膜炎である請求項9記載の予防又は治療剤。
【請求項14】
IKKβが関与するとされる疾患が緑内障である請求項9記載の予防又は治療剤。
【請求項15】
IKKβが関与するとされる疾患が関節リウマチである請求項9記載の予防又は治療剤。

【公開番号】特開2010−43070(P2010−43070A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165185(P2009−165185)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】