説明

カーナビゲーションシステム

【課題】目的地までの経路案内を行う際に、走行履歴のデータに基づいて適切な経路情報を抽出するものにあって、経路全体に関して適切な経路情報をユーザに提供する。
【解決手段】車両のユーザがルートガイダンス機能を実行させたい場合には、ナビゲーション本体部4の各種設定部8により目的地の指定や走行条件の設定を行う。すると、車両の現在位置、目的地、走行条件等が情報サービスセンタ3に送信され、情報サービスセンタ3の制御部20が、走行履歴データベース21を検索し、走行履歴データ中の、走行時間帯や走行条件に合った適切な経路情報(走行経路及び速度等の情報)を抽出する。制御部20は、時間経過による車両の現在位置の変化に伴い、目的地までの一連の連続した走行経路に関する適切な経路情報を逐次検索していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の車両が実際に走行した走行履歴のデータを蓄積記憶する走行履歴データベースに基づいて、適切な経路情報を抽出しユーザに提供することができるカーナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるカーナビゲーション装置は、一般に、自車両の現在位置を検出し表示装置の画面に道路地図に重ね合わせて表示するロケーション機能や、ユーザが指定した目的地までの推奨するルートを計算により探索し、そのルートを表示や音声によって案内するルートガイダンスの機能を備えている。このとき、一般に、ルート探索にあたっては、周知のダイクストラ法が用いられ、出発地から目的地へ向けて、最小コストとなる(走行距離が最短となる、或いは最短時間で到達できる)ルートが求められる。
【0003】
ところで、近年では、ガソリンエンジンと電気モータとを併用するハイブリッド自動車において、自車両における過去の運転履歴を記憶しておき、目的地までのルート設定がなされると、出発地から目的地までの経路を小区間に区切り、道路データと運転履歴とから、各小区間毎に走行速度パターンを推定し、推定した走行速度パターンから、燃費の良い走行を行うためのモータ及びエンジンの運転スケジュールを設定するようにした技術が考えられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
この場合、出発地から目的地までの経路を小区間に区切る手法として、特許文献1では、発進、停止が予測される交差点などで区切ることが行われている。これに対し、特許文献2では、加速(発進)や減速(停止)することなく走行が安定する部分で、小区間を区切ることにより、前後の小区間のつなぎ目における条件(走行状態)を揃えるようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−333305号公報
【特許文献2】特開2005−91112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1、2においては、出発地から目的地までの経路を、小区間に分割し、走行履歴のデータから、各小区間毎に独立して最適な(燃費が最小となる)走行方法を、求めて提示するものとなっている。しかしながら、そのように経路を小区間に分割し、各小区間において最適な走行方法を求めるものでは、各々の小区間に関しては夫々最適な走行方法を提示できたとしても、現在地から目的地までの一連の経路として見ると、複数の走行履歴を組合せていわば継ぎはぎした如き走行方法となることがある。そのため、区間のつなぎ目で急な加速や減速が必要になる等、経路全体として必ずしも最適な走行方法を提示できるとは限らない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、目的地までの経路案内を行う際に、走行履歴のデータに基づいて適切な経路情報を抽出するものにあって、経路全体に関して適切な経路情報をユーザに提供することができるカーナビゲーションシステムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のカーナビゲーションシステムは、車両に搭載され、自車両の現在位置を検出するロケーション機能及び指定された目的地までの経路を案内するルートガイダンス機能を備えるナビ車載器と、多数の車両が実際に走行した、走行軌跡並びに該走行軌跡における速度の情報を含む走行履歴のデータを蓄積記憶する走行履歴データベースと、前記車両の現在位置及びユーザにより指定された目的地に基づいて、前記走行履歴データベースを検索して前記走行履歴データ中の適切な経路情報を抽出する抽出手段とを備えるものであって、前記抽出手段は、時間経過による前記車両の現在位置の変化に伴い、目的地までの一連の連続した走行経路に関する適切な経路情報を逐次検索していくように構成されているところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0009】
ここで、ある地点(現在位置)から所定の目的地に向けて車両を走行させたい場合、そのユーザ(運転者)においては、始めて走る道路であっても、例えば地元の人は当該目的地まで短時間で到着できる経路(いわゆる裏道)を知っていたり、或いは、別の人(車両)がたまたま信号交差点で停止することなく、極めて効率的に走行できていたりすることがある。このような場合、過去の適切な走行ができた走行履歴(他人のものを含む)を、自車両で再現するような走行を行うことによって、同様に適切な走行を行うことが可能となる。
【0010】
上記構成によれば、走行履歴データベースに蓄積記憶されている多数の走行履歴データから、抽出手段により、車両の現在位置から目的地までの適切な経路情報が検索、抽出される。そして、ナビ車載器において、抽出された適切な経路をユーザに対し案内することができ、ひいては適切な走行履歴を再現するような良好な走行を行うことができる。前記走行履歴データベースには、他人の運転の履歴を含む多数の車両が実際に走行した走行履歴の情報が蓄積記憶されているので、そのなかから適切な走行履歴を検索することで、客観的且つ十分に信頼性の高い経路情報を提供することができる。このとき、抽出手段は、車両の現在位置の変化に伴い適切な経路情報を逐次検索していくので、車両が移動した場合でも、その時点の現在位置から目的地までの一連の連続した経路に関して、常に現在位置からの適切な1種類の走行履歴を抽出して、更新していくことができる。
【0011】
従って、本発明によれば、目的地までの経路案内を行う際に、走行履歴のデータに基づいて適切な経路情報を抽出するものにあって、経路を複数の区間に分割し区間毎に最適な走行履歴を抽出しそれらを組合せるものと異なり、常に目的地までの一連の適切な経路情報を抽出することができ、経路全体に関して適切な経路情報をユーザに提供することができる。尚、本発明における経路情報とは、どの経路を走行するかの情報に加えて、その経路をどのような速度で走行するかの情報を少なくとも含んでいる。
【0012】
本発明においては、前記走行履歴データを、走行軌跡を単位距離毎に区切った各区間における速度、加速度、ブレーキの情報を含んで構成し、前記抽出手段を、前記車両の前記単位距離の移動毎に、そこから走行する目的地までの一連の連続した走行経路に関して最適な走行履歴を検索するように構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、抽出手段は、車両の単位距離の移動毎に、最適な走行履歴を検索するようになり、常に適切な走行履歴の抽出、更新を行うことができる。尚、前記単位距離としては、例えば数mというように、例えば交差点における道幅を超えない程度のごく短い距離とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、目的地までの、走行時間が最も短い、停止回数が最も少ない、加速度の変化が最も少ない、平均速度が最も大きい、走行距離が最も少ない、燃料消費量が最も少ない、の6つの走行条件のうち、少なくとも1つ以上の走行条件を、ユーザが優先させたい走行条件として指定する指定手段を設け、前記抽出手段を、前記指定手段の指定に基づいて、走行条件に関する優先順位を付して適切な経路情報を検索するように構成しても良い(請求項3の発明)。これによれば、指定された走行条件に応じた経路情報を、検索、抽出することができ、ユーザが希望する経路情報を提供することができる。尚、上記の6つの走行条件のうち一部を適宜組合せて、ユーザが指定できる選択肢として提示することができる。
【0014】
本発明においては、走行履歴データ中に、実際に走行した時間帯、曜日、天候、車両の車種等の走行環境のデータを含んでおり、前記抽出手段を、前記走行環境のデータを考慮して、現在の走行環境に適合した走行履歴の中から、適切な経路情報を検索するように構成することもできる(請求項4の発明)。これによれば、走行環境に応じた走行履歴を蓄積することにより、特定の時間帯、曜日、天候、車両の車種ごとに、最適な経路情報を抽出することができる。
【0015】
本発明においては、走行履歴データ中の走行軌跡のデータを、絶対位置によって表現されるデータとすることができる(請求項5の発明)。これによれば、走行履歴データの汎用性が高まり、例えば特定メーカのナビ車載器に限定されるようなことなく、道路地図データの様式や種類などを問わずに、各メーカのナビ車載器に関して走行軌跡のデータを広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、カーナビゲーションシステムの構成を概略的に示すブロック図
【図2】走行履歴を選択する場合の具体例を示す図
【図3】走行履歴制御部が実行する経路情報に関する処理手順を示すフローチャート
【図4】システムにおける処理の流れを示すシーケンス図
【図5】走行すべき経路が変更される場合の表示の例を示す図
【図6】走行条件選択画面の例を示す図
【図7】走行軌跡を区切る様子を示す図(a)及び走行履歴のデータ構造を示す図(b)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施例に係るカーナビゲーションシステム1の構成を概略的に示している。このカーナビゲーションシステム1は、車両に搭載されるナビ車載器(ナビゲーション装置)2と、情報サービスセンタ(経路案内センタ)3とを備えて構成される。本実施例では、前記ナビ車載器2は、ナビゲーション本体部4、地図データベース5、現在地測位部6の3つのモジュール(ユニット)を相互に接続して構成されている。
【0018】
前記ナビゲーション本体部4は、コンピュータ(CPU)を主体とする制御装置や、タッチパネル付きの表示装置(LCD)等を備え、経路計算、経路案内、地図表示等の一般的なナビゲーション処理を行うナビ部7を備えている。さらに、ナビゲーション本体部4は、ユーザが目的地の設定や後述する走行条件設定等の各種設定を行うための各種設定部8、外部(前記情報サービスセンタ3)との無線通信を行う通信部9を備えている。通信部9としては、携帯電話機、DSRC、無線LANなど様々なものを採用することができる。また、前記各種設定部8は、表示装置の画面8a(図5、図6参照)上に設けられたタッチパネルを含んでいる。
【0019】
この場合、このナビゲーション本体部4(ナビ部7)は、指定された目的地までの推奨する経路を案内するルートガイダンス機能を実現する。この経路案内は、後述する経路情報(走行すべき経路の情報及び速度の情報)に従って、表示装置の画面8aに、道路地図上の走行すべき経路(ルート)を例えば他の道路と異なる色で表示すると共に、推奨する速度を表示することにより行われる。また、音声出力装置による案内音声の出力を併用することも行われる。尚、このとき、ユーザによる目的地設定時には、ナビ部7において経路計算が行われ、初期経路として設定される。その後、後述するように、走行履歴データに基づく経路情報(走行履歴における適切な走行状態を再現するための情報)の設定(選択)や切替え等の処理が行われる。
【0020】
前記地図データベース5は、例えば日本全土の道路地図データや、それに付随する、各種施設や店舗等の施設データ等を記憶するものである。前記道路地図データは、地図上の道路を、交差点等をノードとして複数の部分に分割し、各ノード間の部分をリンクとして規定したリンクデータとして与えられる。このリンクデータは、リンク固有のリンクID(識別子)、リンク長、リンクの始点、終点(ノード)の位置データ(経度,緯度)、角度(方向)データ、道路幅、道路種別などのデータを含んで構成される。また、道路地図を表示装置の画面8a上に再生(描画)するためのデータも含まれている。
【0021】
前記現在地測位部6は、GPS衛星からの電波を受信することに基づいて自車の絶対位置を測位するGPS測位部10、車両に搭載された方位センサや加速度センサ、車速(距離)センサ等の信号から車両の走行軌跡(相対位置)を求める推測航法部11、地図情報等を利用して道路上の車両の現在位置を特定するマップマッチング部12を備えている。これらにより、自車両の現在位置を検出(測位)するロケーション機能が実現される。また、現在地測位部6は、ナビゲーション本体部4に設定されている目的地や経路等の情報を取得するナビ情報取得部13、走行履歴のデータに関する処理を制御する走行履歴制御部14を備えている。
【0022】
さらに、前記走行履歴制御部14は、詳細には、走行履歴取得部15、走行履歴切替部16、走行履歴記録部17、走行履歴送信部18を備えて構成される。詳しくは後の作用説明にて述べるように、そのうち走行履歴取得部15は、前記ナビゲーション本体部4(通信部9)を介して前記情報サービスセンタ3と通信を行い、走行条件を送信すると共に、走行履歴(経路情報)を受信する。走行履歴切替部16は、走行履歴取得部15が取得した走行履歴(経路情報)をナビゲーション本体部4(ナビ部7)に提供する。走行履歴記録部17は、自車両の走行履歴を記憶し、走行履歴送信部18は、情報サービスセンタ3に自車両の走行履歴のデータを送信する。
【0023】
以上のように構成されたナビ車載器2に対し、前記情報サービスセンタ3は、前記ナビゲーション本体部4(通信部9)との間で無線通信が可能な通信部19、マイコン(CPU)を含んで構成され全体を制御する制御部20、走行履歴データベース21、地図データベース22を備えている。後述するように、前記制御部20は、抽出手段として機能する。前記走行履歴データベース21には、多数の車両が実際に走行した走行履歴のデータが蓄積、記憶される。走行履歴のデータには、車両の走行軌跡及び該走行軌跡における速度変化の情報を含んでいる。
【0024】
本実施例では、図7(a)に示すように、走行履歴データは、走行軌跡Rを単位距離(例えば5m)毎に区切った各区間(図7(a)の例では区間(1)〜区間(4))における速度、加速度、ブレーキの情報を含んでいる。本実施例では、走行履歴データ中には、実際に走行した時間帯(時刻)情報からなる走行環境のデータが含まれている。走行環境のデーとしては、他にも、曜日、天候、車両の車種等を含ませても良い。また、走行軌跡のデータは、地図データ(リンクID)とは異なり、絶対位置(緯度、経度)によって表現されるデータとされている。
【0025】
より具体的には、図7(b)にデータ構造(1つのレコード)を示すように、各区間における、始点座標、始点通過時刻(時間帯)、中間座標列、終点座標(次のレコードと重複する場合は省略)、終点通過時刻(次のレコードと重複する場合は省略)、区間距離(一定の場合は不要)、区間内平均速度、区間内最大速度、区間内最小速度、区間内最大加速度(加速)、区間内最大化速度(減速)、路線番号を含んでいる。尚、走行軌跡のデータを、絶対位置により表現されるデータとしたので、走行履歴データの汎用性が高まり、例えば特定メーカのナビ車載器2に限定されるようなことなく、道路地図データの様式や種類などを問わずに、各メーカのナビ車載器に関して走行軌跡のデータを広く利用することができる。
【0026】
さて、次の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、車両のユーザ(運転者)がルートガイダンス機能を実行させたい場合には、ナビゲーション本体部4の各種設定部8により目的地の指定等の操作を行う。すると、ナビゲーション本体部4は、現在地測位部6により測位された車両の現在位置のデータ、目的地(設定された経路情報)のデータ、後述する走行条件のデータを、通信部9を介して情報サービスセンタ3(通信部19)に送信する。
【0027】
情報サービスセンタ3においては、ナビ車載器2からのデータを受信すると、制御部20が、その車両の現在位置、目的地、走行条件に基づいて、前記走行履歴データベース21を検索し、走行履歴データ中の適切な経路情報を抽出する。経路情報とは、目的地までの走行経路の情報に加えて、その経路をどのような速度で走行するかの情報を少なくとも含んでいる。従って、本実施例では、情報サービスセンタ3の制御部20が抽出手段として機能する。このとき、前記制御部20は、時間経過による車両の現在位置の変化に伴い、目的地までの一連の連続した走行経路に関する適切な経路情報を逐次検索していくように構成されている。
【0028】
また、本実施例では、経路情報を得るにあたって、ユーザが優先させたい走行条件を、走行条件選択画面(図6参照)において予め設定しておくことができる。図6に示すように、この際の走行条件としては、例えば、目的地までの一連の連続した走行経路に関して、走行時間が最も短い、停止回数が最も少ない、加速度の変化が最も少ない、平均速度が最も大きい、走行距離が最も少ない、の5種類がある。ユーザは、その走行条件選択画面において各種設定部8を操作することにより、それら各走行条件を考慮するかどうか、また、考慮する条件が複数ある場合にそれら条件について希望する優先順位を付けることができる。従って、各種設定部8が指定手段として機能する。
【0029】
前記制御部20は、走行履歴データを検索するにあたっては、現在位置と目的地とを含む走行履歴の中から、まず、走行時刻が現在時刻に近いものを選択し、次いで、設定されている走行条件で絞り込みを行う。この場合、優先度が高い走行条件での検索結果が複数あるような場合には、次の条件を用いて走行履歴を選択していくようにする。それでも1つの走行履歴に決定できない場合には、更に、例えば、走行日時が最も新しいもの、履歴として記録された頻度が最も高いもの、交通法規に違反しないもの、最も先に見つけたもの等を採用するようにすれば良い。
【0030】
情報サービスセンタ3は、抽出された経路情報を、通信部19を介してナビ車載器2(ナビゲーション本体部4)に送信する。ナビ車載器2においては、走行履歴取得部15によりその経路情報が取得され、その経路情報に基づいて経路案内が行われる。このとき、現在位置の変化に伴い、検索された走行履歴(経路情報)が変わった場合には、走行履歴切替部16により経路情報が逐次更新される。尚、ナビ車載器2においては、走行履歴記録部17において、目的地までの実際の自車両の走行履歴が記録され、目的地到着後に、走行履歴送信部18において、当該走行履歴のデータが、情報サービスセンタ3に送信され、走行履歴データベース21に蓄積される。
【0031】
次に、上記構成の作用について、図2〜図5も参照して説明する。図3のフローチャートは、ナビ車載器2側(主として走行履歴制御部14)で実行される走行履歴(経路情報)に関する処理手順を示している。また、図4のシーケンス図は、走行履歴取得部15、ナビゲーション本体部4、情報サービスセンタ3間での、データ通信の処理手順(及び情報サービスセンタ3の制御部20における走行履歴検索の処理フローチャート)を示している。
【0032】
今、ユーザ(車両の運転者)が、ナビ車載器2に目的地までのルートガイダンスを実行させたい場合には、ナビゲーション本体部4の各種設定部8を操作して、目的地を指定すると共に、ルートガイダンスの実行を指示する。すると、ナビ部7において、現在位置から目的地までの初期経路が求められ、案内が開始される。そして、この経路案内時においては、図3、図4に示すように、情報サービスセンタ3から、走行履歴データの検索に基づいて適切な経路情報を取得することが行なわれる。尚、ここでは、走行条件として、「停止回数を最少とする」が設定されている場合を具体例とする。
【0033】
まず、図3において、ステップS1では、ナビ情報取得部13により、ナビ部7に設定されている現在の経路を取得する処理が行なわれる。ステップS2では、経路があるかどうかが判断され、経路がない場合には(No)、ステップS1に戻り、経路がある場合には(Yes)、ステップS3に進む。ステップS3では、走行履歴取得部15により、走行履歴(現在において最も適切な経路情報)を取得する処理が実行される。この処理は、走行履歴取得部15(走行履歴制御部14)、ナビゲーション本体部4、情報サービスセンタ3の間において、図4のシーケンス図に示す手順で行われる。
【0034】
即ち、まず、走行履歴取得部15から現在の経路情報がナビゲーション本体部4に送信され(P1)、ナビゲーション本体部4は、車両の現在位置、現在の経路情報、ユーザが設定した走行条件のデータを、通信部9により、情報サービスセンタ3に送信する(P2)。すると、情報サービスセンタ3(制御部20)において、走行履歴の検索の処理が実行される(P3)。この走行履歴の検索処理は、図4中のフローチャートに示す手順で行われる。
【0035】
検索処理が開始されると、まずステップS11にて、走行履歴データベース21を検索するための条件が設定される。このとき、検索キーとしては、車両の現在位置、現在位置の走行時刻、ユーザが指定した走行条件、目的地の位置が設定される。ステップS12では、上記条件による走行履歴データベース21の検索が実行される。
【0036】
具体的には、走行履歴データの中から、車両の現在位置と目的地とを含んでいる一連の連続した走行経路について、走行時刻(時間帯)が現在時刻に近いものが選択される。尚、この走行時刻の考慮については、曜日(休日か平日か)の条件を追加しても良い。さらに、ユーザが指定した走行条件により絞り込みが行われる。優先度が高い走行条件による検索結果が複数ある場合には、次に高い優先度の走行条件による絞り込みを行っていく。このようにして1つの走行履歴を選択(確定)する。
【0037】
該当する走行履歴が見つかった場合には(ステップS13にてYes)、ステップS14にて、検索された1つの走行履歴データが確定される。このようにして走行履歴の検索処理(P3)が完了すると、選択(確定)された走行履歴のデータが適切な経路情報として、情報サービスセンタ3からナビゲーション本体部4に送信される(P4)。さらにそのデータは、ナビゲーション本体部4から走行履歴取得部15に入力されるようになる(P5)。
【0038】
図3のフローチャートに戻って、選択された走行履歴データ(経路情報)が入力されると(ステップS4)、次のステップS5にて、走行履歴切替部16により、現在の経路情報が、新たな走行履歴データ(経路情報)に切替えられ、その経路情報がナビゲーション本体部4(ナビ部7)に出力される(ステップS6)。これにて、ナビゲーション本体部4(ナビ部7)においては、走行履歴切替部16から得られた経路情報に基づいて経路案内が実行される。このとき、新たな経路が設定(変更)された場合には、例えば図5に示すように、表示装置の画面8aに、経路が変更された旨の表示がなされる。
【0039】
ステップS7では、走行履歴記憶部17において、実際に車両が走行した走行履歴のデータが記憶される。この走行履歴のデータは、図7(b)に示すように、走行軌跡Rを単位距離(例えば5m)毎に区切った各区間について記録されることは上記した通りである。ステップS8では、目的地に到着したかどうかが判断される。目的地に到着した場合には(ステップS8にてYes)、ステップS9にて、走行履歴送信部18によるデータ送信の処理が行われ、それまでに記録された走行履歴のデータが、ナビゲーション本体部4に出力され(ステップS10)、処理が終了する。その走行履歴のデータは、さらに情報サービスセンタ3に送信され、走行履歴データベース21に記憶されるようになる。
【0040】
一方、ステップS8にて、車両が未だ目的地に到着していない場合には(No)、ステップS1に戻り、上記したステップS1〜S7の処理が繰返される。これにより、時間経過に伴って車両の現在位置が変化していくにつれ、走行履歴データの検索が逐次行われていくことになる。この場合、車両の単位距離の移動(例えば5mの走行)毎に最適な走行履歴を検索するように構成することもできる。これにより、それまでに選択されていた走行履歴のデータが、現在位置が変わってもそのまま採用されるとは限らず、検索結果(選択される走行履歴)が変わることがある。このように本実施例では、車両の現在位置が移動することに伴い、走行履歴(経路情報)が更新されていくようになる。
【0041】
具体例を、図2を参照しながら説明する。この図2では、ある出発地Sから目的地Gまで走行するにあたり、走行条件として「停止回数が最も少ない」が設定された場合を例としている。図2では、走行履歴のデータ中の停止位置を黒三角で示している。今、車両の現在位置が地点Aの場合、現在位置(地点A)と目的地Gとを含む走行履歴として、走行履歴1と走行履歴2とが検索されたとする。この場合、目的地Gまでの残りの停止回数を数えると、走行履歴1が停止回数4回、走行履歴2が停止回数5回なので、この時点では、走行履歴1が適切な経路情報として選択される。
【0042】
そして、現在位置が移動して、地点Bに至った場合、現在位置(地点B)と目的地Gとを含む走行履歴として、やはり走行履歴1と走行履歴2とが検索されるが、この時点(地点B)では、目的地Gまでの残りの停止回数が、走行履歴1では3回、走行履歴2では2回となる。従って、走行履歴2が適切な経路情報として選択されるようになる。
【0043】
さらに、現在位置が地点Cに至った場合には、現在位置(地点C)と目的地Gとを含む走行履歴として、走行履歴1、走行履歴2、走行履歴3の3つが検索される。これらの目的地Gまでの残りの停止回数を比較すると、走行履歴1では1回、走行履歴2では1回、走行履歴3では0回となる。従って、この時点では走行履歴3が適切な経路情報として選択され、切替えられる(更新される)ようになる。
【0044】
以上のように、車両が移動した場合に、その時点の現在位置から目的地Gまでの一連の連続した経路に関して、常に現在位置からの適切な1種類の走行履歴を抽出して、更新していくことができる。図2の例では、結果的には3つの走行履歴が組合せられた如き経路情報が得られ、出発地Sから目的地Gまでの停止回数が2回となるような最適な経路情報がユーザに提供され、ユーザはそれに従った最適な走行を行うことができるのである。
【0045】
このように本実施例のカーナビゲーションシステム1によれば、ナビ車載器2において目的地までの経路案内を行う際に、情報サービスセンタ3において、走行履歴データベース21を検索して適切な経路情報を抽出するものにあって、時間経過による車両の現在位置の変化に伴い、目的地までの一連の連続した走行経路に関する適切な経路情報を逐次検索していくように構成した。この結果、従来のような経路を複数の区間に分割し区間毎に最適な走行履歴を抽出しそれらを組合せるものと異なり、常に目的地までの一連の適切な経路情報を抽出することができ、経路全体に関して適切な経路情報をユーザに提供することができるという優れた効果を得ることができる。
【0046】
尚、上記実施例では、走行履歴データベースを検索するにあたり、走行時間帯を考慮するようにしたがする、現在の天候(晴れ、雨、雪など)を考慮したり、車両の種類(大型車か小型車か)を考慮したりするようにしても良い。また、ユーザが指定する走行条件についても、6つのうち一部を適宜組合せて選択肢としても良く、さらには別の走行条件を選べるようにしても良い。その他、カーナビゲーションシステムのハードウエア構成としても、例えばナビ車載器全体を1つのユニットとして構成しても良く、また、表示装置の画面における表示の形態などについても様々な変更が可能である等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0047】
図面中、1はカーナビゲーションシステム、2はナビ車載器、3は情報サービスセンタ、4はナビゲーション本体部、6は現在地測位部、8は各種設定部(指定手段)、9は通信部、13はナビ情報取得部、14は走行履歴制御部、15は走行履歴取得部、16は走行履歴切替部、17は走行履歴記録部、18は走行履歴送信部、19は通信部、20は制御部(抽出手段)、21は走行履歴データベースを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、自車両の現在位置を検出するロケーション機能及び指定された目的地までの経路を案内するルートガイダンス機能を備えるナビ車載器と、
多数の車両が実際に走行した、走行軌跡並びに該走行軌跡における速度の情報を含む走行履歴のデータを蓄積記憶する走行履歴データベースと、
前記車両の現在位置及びユーザにより指定された目的地に基づいて、前記走行履歴データベースを検索して前記走行履歴データ中の適切な経路情報を抽出する抽出手段とを備えるカーナビゲーションシステムであって、
前記抽出手段は、時間経過による前記車両の現在位置の変化に伴い、目的地までの一連の連続した走行経路に関する適切な経路情報を逐次検索していくように構成されていることを特徴とするカーナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記走行履歴データは、前記走行軌跡を単位距離毎に区切った各区間における速度、加速度、ブレーキの情報を含んでおり、
前記抽出手段は、前記車両の前記単位距離の移動毎に、そこから走行する目的地までの一連の連続した走行経路に関して最適な走行履歴を検索することを特徴とする請求項1記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項3】
目的地までの、走行時間が最も短い、停止回数が最も少ない、加速度の変化が最も少ない、平均速度が最も大きい、走行距離が最も少ない、燃料消費量が最も少ない、の6つの走行条件のうち、少なくとも1つ以上の走行条件を、ユーザが優先させたい走行条件として指定する指定手段を備え、
前記抽出手段は、前記指定手段の指定に基づいて、前記走行条件に関する優先順位を付して適切な経路情報を検索することを特徴とする請求項1又は2記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項4】
走行履歴データ中には、実際に走行した時間帯、曜日、天候、車両の車種等の走行環境のデータが含まれており、
前記抽出手段は、前記走行環境のデータを考慮して、現在の走行環境に適合した走行履歴の中から、適切な経路情報を検索することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカーナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記走行履歴データ中の走行軌跡のデータは、絶対位置によって表現されるデータであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−63260(P2012−63260A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207915(P2010−207915)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】