説明

カーナビゲーション装置、道路地図データのデータ構造、道路地図データの導入経路情報付加システムおよびその付加方法。

【課題】
ヵーナビゲーション装置において、一方通行、進入禁止などの情報が不正確な細街路であっても、これを目的地までの案内経路に入れて設定することができるようにする。
【解決手段】
主要道路から施設に至るまでの導入経路を、施設の所有者、利用者などから取得し、これを道路データの施設情報に付加する。この導入経路情報を有する地図データを使用するカーナビゲーション装置では、施設が目的地として設定されると、その施設について導入経路情報が存在する場合には、導入経路の主要道路側端点を目的地として経路探索を行い、探索した経路に導入経路を付加した経路を案内経路として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は出発地から目的地までの経路を探索して案内経路を設定可能なカーナビゲーション装置、そのカーナビゲーション装置に使用する道路地図データのデータ構造、道路地図データに主要道路から施設までの導入経路の情報を付加するためのシステムおよびその付加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置では、GPSなどにより車両の現在位置を取得し、その現在位置を表示装置に道路地図と共に表示したり、出発地(一般に現在地)から目的地までの適切な案内経路を設定し、その案内経路に沿って車両が走行できるように、所定の走行案内を行ったりすることができるようになっている。
【0003】
カーナビゲーション装置における経路設定に際しては、一般にダイクストラ法あるいはそれに準じた手法が用いられる。具体的には、ノード間を接続するリンクについてのリンク情報を用いて現在地から各ノードに至るまでの経路コスト(評価値)を算出し、目的地までの全てのコスト計算が終了した時点で、総コストが最小となるリンクを接続して目的地までの案内経路を設定している。
【0004】
なお、道路地図データでは、各道路の交差点、分岐点、屈曲点、行き止まりなどをノード、それぞれのノード間の道路をリンクと定義し、そのリンクを接続することにより道路地図を構成するようにしている。各リンクには、リンクを特定するID(インデックス)、前後のリンクとの接続情報、道路の種類、一方通行か両方向通行か、中央分離帯の有無などの各種情報が付属されている。
【0005】
案内経路を設定する際、道路地図データ中の全てのリンクが探索対象となるのではない。道路種別(リンククラス)には、例えば、高速道路、国道、県道、一般道路(幹線)、一般道路(その他)、細街路などがあり、細街路以外の道路を経路計算に用い、細街路については経路計算に用いないようにしていた。この細街路は、例えば幅員が狭く、主要な道路ではないなどの理由で、道路地図データ作成業者が当該道路についての情報を保障していない場合に分類される。例えば、実際には一方通行であるが、そこまで調査しきれていない場合も想定されるため、そのような道路(細街路)を含む経路が設定された場合に、実際にその道路に直面して初めて一方通行で進入できないことを知る、というのでは好ましくないため、経路計算には用いない道路(細街路)としておくのである。
【0006】
しかしながら、細街路を外して経路計算した場合、目的地の手前で案内経路が途切れ、その先は細街路であるため経路が設定されない場合が出てくる。その場合には、運転者が自分で判断して進行しなければならなかった。また、細街路を外したため、細街路を使用した場合に比べて遠回りになることも考えられる。
【0007】
このような問題を解決するものとして特許文献1に記載されたものがある。これは、細街路を経路計算に使用するが、細街路を使用したことによる信頼性の低下を補うために、車両が案内経路を走行する際、細街路を走行するときに、細街路であることを報知するようにしたものである。
【特許文献1】特開2000−266553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においても、実際に行ってみたら、細街路が一方通行になっていてそこから先へ進入できなかったり、細街路であることはカーナビゲーション装置からの報知で知り得るが、表示装置に表示された道路地図では緩やかなカーブであるのに、進入して行ったところ、急なカーブになっていてそのカーブを曲がりきるには幅員が狭すぎ、結局、後退して元の場所にもどらねばならなかったり、といった種々の不具合を生ずることが予想される。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、細街路であっても、これを目的地までの案内経路に入れて設定することができ、しかも、確実に目的地まで到達することが可能なカーナビゲーション装置を提供するにある。また、本発明の目的は、そのように細街路を案内経路に含めることができる道路地図データの道路データ、そのような道路データを作成するシステムおよびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のカーナビゲーション装置では、前記道路地図データ取得手段が取得する前記道路地図データには、複数の施設情報を含んでいるが、その施設情報中に、主要道路から細街路を通って施設に至るまでの導入経路を示す導入経路情報をもった施設情報がある。この導入経路情報は、例えば、施設の所有者や施設に勤務する人、実際に主要道路から細街路を通って施設まで行った人などのように主要道路から細街路を使用して施設に至る道順を知っている人によって、請求項3の道路地図データの導入経路情報付加システムを使用して、或いは、請求項4の道路地図データの導入経路情報付加方法を使用して作成されるので、その導入経路に従えば車両で主要道路から確実に施設に行き着くことができる。このため出発地から目的とする施設近くの主要道路までは通常の探索によって経路を定めることができ、そこから施設までは施設情報の導入経路情報を使って経路を定めることにより、細街路を通りながらも確実に目的とする施設に行くことができる。
【0011】
請求項2の道路地図データのデータ構造によれば、主要道路から細街路を通って施設に至る導入経路情報を有しているので、細街路を通りながらも確実に目的とする施設に行くことができるデータ構造を提供できる。
【0012】
請求項3の道路地図データの導入経路情報付加システム、および請求項4の道路地図データの導入経路情報付加方法では、施設の所有者や施設に勤務する人、或いは施設に実際に行ったことのある人など、主要道路から細街路を使用して施設に至る道順を知っている人によって容易に導入経路情報を作成できる。これによって取得した導入経路情報を、道路地図データの施設情報とすることにより、安価で正確な導入経路情報を有する道路地図データを作成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態につき図面を参照しながら説明する。
本発明における道路地図データには、道路地図上に各種の施設を表示するために、複数の施設情報が含まれており、それら各施設情報には、後述する主要道路から細街路を通って施設に至る経路の情報(導入経路情報)を含ませることができるようになっている。この導入経路情報は、道路地図データを作成する業者(道路地図データ作成業者)の調査によらず、原則として施設の所有者や施設に勤務する人、更には施設を利用したことのある一般の人などの主要道路から細街路を使用して施設に至る道順を知っている人(情報提供者)から得るものとしている。
【0014】
データ作成業者が情報提供者から導入経路情報を得るためのシステムは、図6に示すように、データ作成業者が有する情報センター1と、情報提供者が有する端末装置2とで構成されている。
【0015】
情報センター1は、サーバ3およびデータベース4を備えている。データベース4には、道路地図データが格納されている。道路地図データにおいては、道路をノードとリンクとで定義する。ノードは、道路の交差点、分岐点、屈曲点、行き止りなどを指し、そのノード間を結ぶ線がリンクであり、リンクを接続することによって道路地図が構成されるようになっている。
【0016】
さて、道路地図データには、道路地図を作成するための情報として、リンク情報、ノード情報、ノード間接続情報などが含まれる。リンク情報は、リンクを特定するための固有の番号であるリンクID、道路種別を識別するためのリンククラス、緯経度で示されるリンクの始端座標および終端座標、リンクの長さを示すリンク長、一方通行か両方向通行か、中央分離帯の有無などの各種情報を含む。ノード情報には、ノード固有の番号であるノードID、交差点での右左折禁止や信号機の有無などの情報が含まれる。また、ノード間接続情報としては、例えば一方通行の場合には、あるリンクからは通行可であるが別のリンクからは通行不可であるといった通行の可・不可の情報などがある。
【0017】
上記のリンククラス(道路種別)には、例えば高速道路、国道、県道、一般道路(幹線)、一般道路(その他)、細街路などがある。細街路には、例えば幅員が狭く、主要な道路ではないなどの理由で、データ作成業者が当該道路についての情報を保障していない道路が分類される。この細街路以外のクラスの道路は、この実施例では主要道路となり、道路地図データ作成業者が当該道路についての情報を保障している道路となる。
【0018】
道路地図データが備える前記施設情報は、図5に例示すように、名称、施設を特定するID、施設区分、電話番号、位置(緯経度)、導入経路などの各情報を含む。施設区分は、ホール、ゴルフ場、飲食店などの施設形態や施設の使用目的などによって分けられた区分名称の情報である。導入経路とは、主要道路から細街路を通って施設に到着する経路であり、導入経路情報は、その細街路を表すリンクを主要道路側から順に並べて構成される。
【0019】
一方、情報提供者の端末装置2は、パソコンなどからなり、制御装置(制御手段)5に、キーボードやマウスなどの入力装置(入力手段)6、カラー液晶ディスプレイなどの表示装置(表示手段)7、通信装置(通信手段)8、記憶装置9を接続して構成されている。制御装置5は、CPU、RAM、ROMなどを備え、端末装置2全体を統括制御する。通信装置8は、情報センター1のサーバ3に対してインターネットなどの通信網10を介して接続できるように構成され、サーバ3から地図データを受信する地図データ受信手段および作成した導入経路をサーバ3に送信する導入経路情報送信手段として機能する。記憶装置9は、ハードディスクなどからなり、導入経路情報を作成するためのプログラムなどを格納している。
【0020】
施設の所有者や施設に勤務している人が、主要道路から施設へ至る導入経路情報を作成して情報センター1に登録するには、端末装置2の記憶装置9に記憶されている導入経路情報作成用プログラムをRAMにダウンロードする。その上で、図7のフローチャートに示すように、端末装置2の通信装置8を通信網10を介して情報センター1のサーバ3に接続し、道路地図データを要求する(ステップS1)。この場合、要求する道路地図データの広狭は、全国、所望の施設が所在する都道府県、或いは所望の施設が所在する狭い地域を指定して行うなど種々考えられる。
【0021】
道路地図データの要求を受け付けると、サーバ3は、データベース4から道路地図データを読み出して端末装置2へ送信する。端末装置2の通信装置8は、サーバ3から送信されてきた道路地図データを受信する(ステップS2)。端末装置2の制御装置5は、受信した道路地図データに基づいて表示装置15に道路地図を表示する(ステップS3)。
【0022】
情報提供者は、表示装置15に表示された道路地図を見て、所望の施設の近傍が表示されていないときには、道路地図を変更するために入力装置6を操作する。これにより、制御装置5が表示装置15に表示されている道路地図を変更し、図8(a)に例示するように、所望の施設Hを含む道路地図が表示装置15に表示されるようにする(ステップS4で「YES」、ステップS5の繰り返し)。そして、表示装置15に所望の施設Hが含まれる道路地図を表示されると、情報提供者は、その表示装置15の道路地図において所望の施設Hにカーソルを合わせてクリックするなどの選択操作を行う(ステップS4で「NO」、ステップS6で「YES」)。すると、制御装置5は、選択された施設をRAMにそのIDで記憶すると共に、図8(b)に示すように、選択された施設を強調表示(例えば、斜線を記入)する(ステップS7)。
【0023】
次に、情報提供者は、導入経路を道路地図上に描く操作を行う。この操作は、道路(リンク)を一つ一つ選択することによって行われる。即ち、図8(a)に示すように、施設Hの近傍の道路は、主要道路がM1,M2で示され、細街路がm1〜m7で示されているが、この細街路のうちから、主要道路から施設まで車両で行くことができる細街路を一つ一つ選択してゆくことで、導入経路が設定できる。ここで、細街路m1〜m7は、全て一方通行で、矢印で示す方向が各細街路の進行方向とする。また、施設Hの入口は、細街路m6に面しているとする。
【0024】
情報提供者が道路選択手段としての入力装置6を操作して1本目のリンクを選択すると、制御装置5は、選択されたリンクをRAMにIDにより記憶すると共に、そのリンク(道路)を強調表示(例えば、特定の色で着色)する(ステップS8で「YES」、ステップS9で「YES」、ステップS11)。図8(c)は、細街路m6が1本目のリンクとして選択されて強調表示された状態を示している。次いで、制御装置5は、主要道路と施設Hとが選択されたリンクによって連結されたか否かを判断し、連結していなかったら次のリンクが選択されるのを待つ(ステップS12で「NO」、ステップS8)。
【0025】
次のリンクが選択されると(ステップS8で「YES」)、制御装置5は、今回選択されたリンクが既に選択されているリンクと接続されたか否かを判断する。そして、今回選択されたリンクが既に選択されたリンクと接続しない場合(ステップS10で「NO」)、例えば、2本目のリンクとしてm4のリンクが選択されたような場合、制御装置5は、表示装置15に図8(d)に示すように、例えば「経路に接続するリンクを選択してください」といったエラー表示を行い(ステップS13)、別のリンクが選択されるのを待つ(ステップS8)。
【0026】
既に選択されているリンクと接続するリンクが今回選択された場合(ステップS10で「YES」)、例えば2本目のリンクとしてm5のリンクを選択した場合、これは1本目に選択したリンクm6と接続するので、制御装置5は、その選択されたリンクを記憶すると共に、図8(d)に示すように、そのリンクm6を強調教示する(ステップS11)。そして、以上のように、既に選択したリンクと接続するリンクを新たに選択することを繰り返すことにより、図8(f)を経て図8(g)に示すように、例えば主要道路M1と施設Hとの間が、選択したリンクによって連結されると、制御装置5は、導入経路の設定を終了したと判断し(ステップS12で「YES」)、選択した一連のリンク群を主要道路側から施設側に向って並べた導入経路情報を編集する(ステップS14;導入経路設定手段)。次いで、制御装置5は、編集した導入経路情報を施設のIDと関連付けて通信装置8から情報センター1へ送信し(ステップS15)、エンドとなる。
【0027】
以上のようにして情報センター1に送信された施設の導入経路情報は、サーバ3によって図5に示す施設情報中に付加されてデータベース4に格納される。データ作成業者は、データベース4に格納された道路地図データを、記録媒体としてのDVD−ROMに、マップマッチング用データなどのデータと共に記録し、販売する。
【0028】
以上のようにして作成された道路地図データは、図1に示すカーナビゲーション装置11に利用される。カーナビゲーション装置11は、制御装置12に対して、現在位置取得手段としての位置検出器13、地図データ記憶手段としての地図データ記憶装置14、表示手段としての表示装置15、操作手段としての操作スイッチ群16、音声出力装置17、リモコン18からの信号を検出するリモコンセンサ19、通信手段としての通信機20、外部記憶手段としての外部メモリ21などを接続して構成されている。
【0029】
上記位置検出器13は、ヨー角速度(ヨーレート)を検出するためのジャイロスコープ22、車速を検出するための車速センサ23およびGPS用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機24から構成されており、車両の現在位置情報(経度・緯度情報)を算出する部分である。この位置検出器13は、各構成要素が性質の異なる検出誤差を有するため、互いに検出誤差を補間しながら精度の高い位置検出を行うようになっているが、要求される検出精度で現在位置を算出可能であれば全部の構成要素を備える必要はない。
【0030】
地図データ記憶装置14は、DVDプレーヤからなり情報記録媒体としてのDVD−ROM25から地図データを読み取る。なお、情報記録媒体としては、ハードディスク、光磁気ディスク、大容量メモリカードなどを用いることもできる。DVD−ROM25が記憶している道路地図データは、前述のようにして作成された導入経路情報を含んでいる。
【0031】
表示装置15は、地図を表示するための例えばカラー液晶ディスプレイ(表示画面)を含んで構成されている。操作スイッチ群16は、表示装置15の周辺に配置されたメカニカルスイッチ26や表示装置15のカラー液晶ディスプレイ上に形成されたタッチパネル27などから成り、各種のデータや設定事項などの操作入力を制御装置12に与えるために設けられている。尚、リモコン18も操作スイッチ群16と同様に操作手段として設けられたもので、リモコンセンサ19がリモコン18からの操作入力を受信して制御装置12に与えるようになっている。音声出力装置17は、音声合成回路、アンプ、スピーカなどを備えたもので、制御回路2からの音声情報に応じた任意の音声出力を発生できるようになっている。
【0032】
外部メモリ21は、RAMやハードディスクなどからなる。通信機20は、無線により基地局28と通信し、前記通信網10を介して道路交通情報センター29のサーバ30と通信する。道路交通情報センター29のデータベース31には、高速道路や各種道路についての渋滞情報、工事情報、気象情報、各種施設のイベント情報、広告情報などを格納している。そして、サーバ30は、カーナビゲーション装置11側の要求に応じて各種情報をデータベース31から読み出してカーナビゲーション装置11へ送信するようになっている。そして、道路交通情報センター29から取得した各種情報は、表示装置15に文字、図形、記号などによって表示される。
【0033】
制御装置12は、マイクロコンピュータからなるが、機能的には、道路地図データ取得手段としての地図データ取得部32、マップマッチング部33、経路設定手段としての経路計算部34、経路案内部35、描画部36、画面制御管理部37、通信制御部38、記憶部39を備えている。記憶部39は、ROMおよびRAMを備え、ROMには、カーナビゲーション用の各種プログラムが記憶されている。
【0034】
地図データ取得部32は、各処理に必要な道路地図データやマップマッチング用データなどを地図データ記憶装置14から取得し、各部33〜38に提供する。この地図データ取得部32が取得したデータは、記憶部39が有するRAMに記憶される。
【0035】
描画部36は、位置検出器13により検出された現在位置周辺の道路地図データに基づいて表示装置15に現在位置を中心とした道路地図を表示する。また、道路地図データ中の施設情報に基づいて各施設を道路地図上に重ねて表示する。画面制御管理部37は、描画部36に表示装置15に表示すべき表示情報を与えて描画指示を行う。
【0036】
マップマッチング部33は、位置検出器13により検出された現在位置、走行経路形状と道路地図データの道路形状との比較などによって、現在の走行道路位置を特定する。走行道路位置を特定した後、その位置を描画部36によって表示装置15の道路地図上にマーク表示させる。また、その走行道路位置を示す情報を、道路交通情報センター29が認識できる形態に変換して平均車速、検出時刻と共に現在位置情報として記憶部39のRAMに記憶させる。
【0037】
通信制御部38は、定期的に、或いはユーザの指示により、記憶部39に記憶された現在位置情報を通信機20により道路交通情報センター29に送信し、各種の情報を道路交通情報センター29から取得する。
経路計算部34は、操作スイッチ群16により出発地(通常は現在位置)、目的地が入力されると、出発地から目的地に至る経路を計算して案内経路を設定し、その案内経路を表示装置15の道路地図上に表示させる。この場合の経路計算は、ダイクストラ法などの手法が採用される。設定された案内経路は、外部メモリ21に記憶される。
【0038】
経路案内部35は、経路計算部34により設定された案内経路と、地図データに記憶されている道路形状データや、交差点の位置情報などから案内に必要なポイントを計算したり、案内を必要とするポイントに達したところで、必要な案内を音声出力装置17から出力させたり、右左折の方向を示す拡大地図を描画制御管理部36を通じて描画部36により表示装置15に表示させたりする。
【0039】
次に上記構成において、案内経路を設定する場合の制御内容を図2のフローチャートをも参照しながら説明する。なお、この実施例では、細街路も経路計算に用いるようにしている。案内経路を設定するには、モード設定手段および目的地入力手段としての操作スイッチ群16を操作して案内経路設定モードにし、出発地(通常は現在地)、目的地を入力する。すると、経路計算部34は、出発地、目的地を受け付け(ステップA1)、目的地が地図データに施設として登録されているか否かを判断する(ステップA2;目的地種別判断手段)。
【0040】
目的地が施設として登録されていない場合(ステップA2で「NO」)、経路計算部34は、目的地に最も近い道路上の点を探索時の目的地に設定する(ステップA3)0目的地が施設として登録されている場合(ステップA2で「YES」)、経路計算部34は、目的地である施設の施設情報中に導入経路情報が含まれているか否かを検索する(ステップA4;付属情報判断手段)。
【0041】
施設情報中に導入経路情報が含まれていない場合(ステップA4で「NO」)、経路計算部34は、ステップA3へ移行して目的地に最も近い道路上の点を探索時の目的地に設定する。施設情報中に導入経路情報が含まれている場合(ステップA4で「YES」)、経路計算部34は、目的地に最も近い道路上の点にではなく、導入経路の主要道路側の端点を探索時の目的地に変更する(ステップA5;目的地変更手段)。
【0042】
このようにして探索時の目的地が定まると、次に、経路計算部34は、ダイクストラ法などの手法を用いて経路計算を行い、経路を探索する(ステップA6)。経路計算を終了して最適経路を求まると、経路計算部34は、経路探索時の目的地が導入経路の主要道路側の端点であったか否かを判断する(ステップA7)。経路探索時の目的地が導入経路の主要道路側の端点でなかった場合(ステップA7で「NO」)、経路計算部34は、経路計算により求めた経路をそのまま案内経路として設定し(ステップA9)、経路設定を終了する。また、経路探索時の目的地が導入経路の主要道路側の端点であった場合(ステップA7で「YES」)、経路計算部34は、経路計算により求めた経路に施設情報中の導入経路を結合し(ステップA8)、これを案内経路として設定し(ステップA9)、経路設定を終了する。
【0043】
ここで、入力された目的地が図8に示す施設Hであったとして、以上の経路探索を要約する。施設Hの施設情報に導入経路情報が付加されていなかった場合、経路探索時の目的地としては、図4に示すように、施設Hに最も近い道路上の点であるP1が目的地に定められ、経路計算が行われる。この経路計算により図Hに実線G1で示す経路が探索されたとすると、これがそのまま案内経路に設定される。
【0044】
これに対し、施設Hの施設情報に導入経路情報が付加されていた場合には、図3に示すように、経路探索時の目的地としては、導入経路の主要道路側の端点P2に定められて経路計算が行われ、これにより、図4にG2で示す経路が探索されたとすると、この経路G2に導入経路情報に示されたリンクからなる導入経路G3を結合し、これを案内経路として設定する。
【0045】
このように、導入経路情報が付加されていない場合に設定された案内経路G1では、主要道路から細街路m1へ入るまでは良いが、細街路m3が進行方向とは逆の一方通行道路であるため、細街路m1から細街路m3へは進めず、案内経路から外れた細街路m2か細街路m4へと進まなければならない。
これに対し、導入経路情報が付加されていた場合の案内経路G1,G3では、主要道路から細街路m1へ入ってからも、案内経路P4に従って進行してゆけば、施設Hの入り口へ到着することができる。
【0046】
このように本実施例によれば、主要道路から細街路を通って施設に行く導入経路を、その施設の所有者、その施設に勤務する人、或いはその施設を利用したことがある人など、施設への経路を良く知っている人からの情報によって取得して、これを地図データに格納することができる。したがって、主要道路から施設への導入経路を容易且つ正確に取得することができる。
また、カーナビゲーション装置11は、そのような導入経路が格納された地図データを使用して案内経路を定めるので、細街路を使用してしか行けない施設であっても、その施設まで到着する正確な案内経路を設定することができる。
【0047】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
導入経路は、全て細街路からなるものに限られず、一部に主要道路が入っていても良い。
端末装置2は、パソコンに限られない。携帯電話など情報センター1と通信可能なものであれば良い。
情報センター1のデータベース4に格納されている道路地図データは施設と道路とを表示できるデータとし、DVD−ROM25に格納されている道路地図データは、道路、施設の他、ランドマークなどが表示可能だったり、三次元表示可能であったりするなど、必ずしも両者の道路地図データは同じものである必要はなく、情報センター1のデータベース4に格納されている道路地図データは、導入経路を選択できるものであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態を示すブロック図
【図2】経路探索のフローチャート
【図3】導入経路情報を有する施設に対する案内経路を示す図
【図4】導入経路情報のない施設に対する案内経路を示す図
【図5】施設情報の一例を示す概念図
【図6】導入経路情報を作成するためのシステムを示すブロック図
【図7】導入経路情報を作成するためのフローチャート
【図8】細街路を通っていく施設の周辺の地図を示す図
【符号の説明】
【0049】
1は情報センター、2は端末装置、5は制御装置(導入経路設定手段)、6は入力装置(道路選択手段)、11はカーナビゲーション装置、12は制御装置、13は位置検出器、14は地図データ記憶装置、15は表示装置、16は操作スイッチ群、25はDVD−ROM、32は地図データ取得部(道路地図データ取得手段)、34は経路計算部(経路設定手段、付属情報判断手段、目的地変更手段)、35は経路案内部、36は描画部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設情報を含む道路地図データを取得する道路地図データ取得手段と、
出発地と目的地とが入力されたとき、前記道路地図データ取得手段により取得された道路地図データに基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を探索して案内経路として設定する経路設定手段と、を備え、前記目的地として前記施設を指定可能なカーナビゲーション装置において、
前記道路地図データ取得手段が取得する前記道路地図データに含まれる前記複数の施設情報には、主要道路から細街路を通って施設に至るまでの導入経路を示す導入経路情報を含む施設情報が存在し、
前記経路設定手段は、
施設が前記目的地として入力されたとき、その入力された施設についての前記施設情報に前記導入経路情報が含まれているか否かを判断する付属情報判断手段と、
前記目的地として入力された前記施設についての前記施設情報に前記導入経路情報が含まれているとき、前記目的地を前記導入経路の前記主要道路側の端点に変更する目的地変更手段とを備え、
前記目的地として入力された前記施設についての前記施設情報に前記導入経路情報が含まれているときには、前記目的地変更手段により変更された位置を目的地として経路探索を行い、その探索した経路と前記導入経路情報により示された前記導入経路とで案内経路を構成することを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項2】
カーナビゲーション装置に使用される道路地図データのデータ構造であって、
前記道路地図データは、前記複数の施設情報を有し、その複数の施設情報には、主要道路から細街路を通って施設に至るまでの導入経路を示す導入経路情報を含む施設情報が存在し、
前記道路地図データは、
前記道路地図データを取得する道路地図データ取得手段と、出発地と目的地とが入力されたとき、前記道路地図データ取得手段により取得された道路地図データに基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を探索して案内経路として設定する経路設定手段と、を備え、前記経路設定手段は、施設が前記目的地として入力されたとき、その入力された施設についての前記施設情報に前記導入経路情報が含まれているか否かを判断する付属情報判断手段と、前記目的地として入力された前記施設についての前記施設情報に前記導入経路情報が含まれているとき、前記目的地を前記導入経路と前記主要道路との接続位置に変更する目的地変更手段とを備え、前記目的地として入力された前記施設についての前記施設情報に前記導入経路情報が含まれているときには、前記目的地変更手段により変更された位置を目的地として経路探索を行い、その探索した経路と前記導入経路情報により示された前記導入経路とで案内経路を構成することを特徴とするカーナビゲーション装置により使用される道路地図データのデータ構造。
【請求項3】
複数の施設情報を含む道路地図データを記憶した記憶手段を有する情報センターと、前記情報センターに通信網を介して接続される端末装置とを備え、
前記端末装置は、前記情報センターから所望の施設の近傍の地図データを受信する地図データ受信手段と、前記情報センターから受信した地図データに基づいて道路地図を表示する表示手段と、前記表示手段に表示された道路地図に基づいて主要道路から細街路を通って前記所望の施設に至る道路を選択する道路選択手段と、前記道路選択手段により選択された道路を導入経路として設定する導入経路設定手段と、前記主要道路から前記所望の施設に至る前記導入経路の情報を前記情報センターに送信する導入経路情報送信手段とを有し、
前記情報センターは、前記端末装置から送られた前記導入経路情報を、前記所望の施設についての施設情報に含ませることを特徴とする道路地図データの導入経路情報付加システム。
【請求項4】
施設情報を含む道路地図データを記憶した記憶手段を有する情報センターと、前記情報センターに通信網を介して接続される端末装置とを有し、
前記情報センターから前記端末装置に、操作者の所望する施設の近傍の地図データを送信する段階と、
前記情報センターから受信した地図データに基づいて道路地図を前記端末装置の表示手段に表示し、その表示された道路地図に基づいて主要道路から細街路を通って前記所望の施設に至る道路を選択する段階と、
選択された道路を前記主要道路から前記所望の施設に至る導入経路として設定し、この導入経路の情報を前記情報センターに送信する段階と、
前記情報センターが、前記端末装置から送られた前記導入経路の情報を、前記所望の施設についての施設情報に含ませる段階と、
を順に実行することを特徴とする道路地図データの導入経路情報付加方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−317335(P2006−317335A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141292(P2005−141292)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】